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審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない 103
管理番号 1208173 
審判番号 取消2009-300056 
総通号数 121 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2010-01-29 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2009-01-14 
確定日 2009-11-09 
事件の表示 上記当事者間の登録第2644438号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第2644438号商標(以下「本件商標」という。)は、「マグマ」の文字と「MAGMA」の文字を二段に横書きしてなり、平成3年10月4日に登録出願、第4類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、平成6年4月28日に設定登録され、その後、平成16年2月17日に商標権の存続期間の更新登録がされ、さらに、平成16年7月14日に、指定商品を第3類「せっけん類,歯磨き,化粧品,香料類」及び第30類「食品香料(精油のものを除く。)」とする指定商品の書換の登録がなされたものであり、その商標権は、現に有効に存続しているものである。

第2 請求人の主張
請求人は、「本件商標の指定商品中、第3類『化粧品』についての登録を取り消す。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のとおり述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第8号証を提出した。
1 請求の理由
本件商標は、その指定商品中「第3類 化粧品」について、継続して3年以上日本国内において、商標権者、通常使用権者又は専用使用権者のいずれによっても使用されていないから、その登録は、商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきである。
2 答弁に対する弁駁
(1)本件商標の商標権者(以下「商標権者」という。)による使用
乙第1号証の1ないし4が、商標権者により、2006年2月から2008年7月までに発行された「マグマ製品一覧カタログ」であることは認めるが、カタログの表紙に記載された「マグマ製品一覧カタログ」は、単に「マグマ製品」という一般的な使い方をしているのであり、本件商標を商標として使用しているものではないことは明らかである。そして、当該カタログには、「マグマ製品」と「それ以外の製品」とが混在しており、「マグマ製品」は、「マグマしじみエキス」、「マグマ活弾力」、「マグマ酢卵」、「マグマ霊芝」、「マグマα-リポ酸200」、「マグマ小麦胚芽エキス」、「マグマヘスペリジン」、「マグマ酵素」などの「健康補助食品」に使用されているものや、「マグマオンセン別府」、「マグマ温泉末」などの「医薬部外品」に使用されているものであって、指定商品中の「化粧品」に使用されているものでもない。
また、カタログ中の商品名「エッチグロウトリートメントリンス」については、商標「H・GROW」が化粧品の範ちゅうに属する商品「ヘアーリンス」に使用されていることは認めるが、本件商標を使用するものではない。
よって、商標権者は、乙第1号証の1ないし4において、本件商標を指定商品中の「化粧品」に使用していないことは明白である。
(2)株式会社ファンタメルー(以下「ファンタメルー社」という。)による使用
商標権者がファンタメルー社との間で、商標権使用許諾契約を2008年8月25日に締結していること、通常使用権者が商標「マグマの湯」を商品「バスソルト」に使用していることは認める。
しかし、商品「バスソルト」の語は、「洋風の浴槽、浴室」を意味する「バス」(甲第3号証)と、「塩、食塩」を意味する「ソルト」(甲第4号証)の結合語であって、このことは、乙第5号証の1に「天然入浴用岩塩」という成分記載があることからも容易に裏付けられる。よって、商標「マグマの湯」中の「湯」が商品「バスソルト」を意味するものであるとの被請求人の主張は失当であり、「バスソルト」の語は、「塩の入った浴槽」という意味であるから、商標「マグマの湯」は、商標法第50条にいう「登録商標と社会通念上同一と認められる商標」として認められるべき商標ではない。
他方で、商標権者は、上記契約後に、商標「マグマの湯」を商品区分「第3類 化粧品、バスオイル、バスソルト」を指定商品として、平成20年12月19日に商標登録出願をしている経緯がある(甲第5号証)。このような事実からしても、商標権者は、商標「マグマの湯」が、本件商標と非類似の商標であることを認識していたことが窺える。
(3)ゴールド興産株式会社(以下「ゴールド興産」という。)による使用
ア 被請求人は、ゴールド興産に対し、本件商標に係る商標権(以下「本件商標権」という。)について通常使用権を許諾していると主張するのみで、ファンタメルー社の場合のように、商標権使用許諾契約書を提出しないのは不自然であるから、両社間に通常使用権の許諾があったことは認めることができない。
イ 仮にゴールド興産に対し通常使用権の許諾があったとしても、ゴールド興産が商標「マグマ温泉玉」(別掲の構成よりなる商標)を商品「浴用化粧品」に使用しているという主張を認めることはできない。
すなわち、商品「マグマ温泉玉」は、88種類のミネラル成分を含む「入浴剤」そのものであり(乙第10号証の1)、多種類の成分が含まれている入浴剤である(乙第8号証の1頁)が故に、遠赤外線、抗菌作用、防カビ作用、界面活性作用、ミネラルイオン効果などの効能を有する(乙第8号証)医薬部外品である。
薬事法の規則第1条(目的)によれば、医薬品、医薬部外品、化粧品とはそれぞれが商品分類されており、同規則第2条第2項(医薬品等の定義)において、「医薬部外品とは、次の各号に掲げることが目的とされており、かつ、人体に対する作用が緩和な物であって機械器具等でないもの及びこれらに準ずる物で厚生労働大臣の指定するものをいう。」と規定され、同条第2項(2)の厚生労働大臣が指定する医薬部外品の中に、「(25)浴用剤」が含まれ、「医薬部外品の効能・効果の範囲」として、「冷え症、腰痛」などが規定されている(薬事日報社発行「化粧品・医薬部外品、製造販売ガイドブック2008」:甲第6号証)。そして、これらの効能・効果は、正に商品「マグマ温泉玉」の特長である「身体が芯から温まり、湯冷めしにくくなります。」、「夜、トイレに行く回数が減ります。」という効能・効果である。
よって、ゴールド興産が販売している商品「マグマ温泉玉」は、第5類に属する「浴剤」であることは明白であり、第3類「浴用化粧品」に使用しているものではない。
このことは、ゴールド興産が商標「温泉玉」を商品区分「第5類 浴剤」を指定商品として出願し登録(登録第3335866号)を得た事実(甲第7号証、及びゴールド興産が出願した特許が「入浴剤」に関する発明(特許第3241173号)であるという事実(甲第8号証)からも容易に窺えることである。
ウ 被請求人は、「商標『マグマ温泉玉』は、『マグマ』の文字部分が『温泉玉』の文字部分よりも大きく、しかも特徴的な書体で書されているため、『マグマ』の文字部分と『温泉玉』の文字部分とがそれぞれ分離して把握される。」と主張するが、このように書体を変えることは、あくまでも商標を目立たせるためのパッケージデザイン上の手法にすぎない。すなわち、乙第9号証の左下及び乙第10号証の1ないし3に示す「マグマ温泉玉」という一連表示からも明らかなように、ゴールド興産は、「マグマ温泉玉」という商品名(商標)で、当該商品を販売しているのである。
エ よって、商標「マグマ温泉玉」の使用が、本件商標の使用である旨の被請求人の主張は、失当であり、ゴールド興産は、本件商標と非類似の商標「マグマ温泉玉」を指定商品「化粧品」とは非類似の商品「浴剤」に使用しているにすぎない。
(4)むすび
以上のように、本件商標は、商標権者及び通常使用権者により、請求に係る指定商品「化粧品」について使用されていないことが明らかであるから、被請求人による答弁には理由がない。

第3 被請求人の答弁(要旨)
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のとおり述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第11号証(枝番を含む。)を提出した。
1 使用の事実
(1)商標権者による使用
ア 商標権者は、商標「マグマ」を商品「ヘアーリンス」に使用している(乙第1号証の1ないし4)。
乙第1号証の1ないし4の表紙には、「マグマ製品一覧カタログ」と記載されていることから、当該カタログには、「マグマ」ブランドの製品が掲載されていることが分かる。そして、当該カタログ中には、「バーリィグリーン」(商品:加工食品)や「エッチグロウ」(商品:ヘアケア製品)といったブランドの商品が掲載されている。これにより、「トリートメントリンス」の取引者は、該商品が、商標権者の「マグマ」という親ブランドに属する「エッチグロウ」という個別ブランドの商品であると容易に認識できる。
よって、商標「マグマ」は、商品「ヘアーリンス」に使用されている。
イ 商標「マグマ」は、本件商標中の片仮名文字部分の使用であり、本件商標より生ずる「岩漿(マグマ)」の観念と同一の観念が生ずるものである。
よって、商標「マグマ」は、本件商標と社会通念上同一と認められる商標と認められる(乙第2号証)。
ウ 使用に係る商品「トリートメントリンス」は「ヘアーリンス」の一種であり、「ヘアーリンス」は「化粧品」の範ちゅうに属するものである(乙第3号証)。
エ 乙第1号証の1ないし4の裏表紙の右下には、それぞれ「I-0602」、「I-0608」、「I-071102」、「I-080703」との表示がある。当該表示は、そのカタログが「どの印刷業者によって(アルファベットの文字部分)」、「いつ印刷されたか(数字部分の最初から4桁目まで)」、「何回改訂されたか(数字部分の後2桁、乙第1号証の3及び4にのみ表示)」を表示している。
してみると、乙第1号証の1は2006年2月に、乙第1号証の2は2006年8月に、乙第1号証の3は2007年11月に、乙第1号証の4は2008年7月に、それぞれ発行されたものである。
よって、乙第1号証の1ないし4が、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において発行されたことは明らかである。商標権者は、これらのカタログを取引先等に配布しており、カタログ等の商品の宣伝用配布物に商標を付して頒布する行為は、商標法第2条第3項第8号の「商品に関する広告を頒布する行為」に該当する。
オ 以上より、商標権者により、本件商標が「化粧品」について、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において使用されていたことは明らかである。
(2)通常使用権者による使用
ア 商標権者は、東京都新宿区四谷2-11-9報友ビルに本社を有するファンタメルー社に対し、本件商標権について通常使用権を許諾している(乙第4号証)。なお、当該使用許諾契約の締結日は、2008年8月25日となっているが、当該使用許諾契約が初めて締結されたのは、平成18年(2006年)12月25日であり、当該契約の更新の際に両者間で交わされた契約書が乙第4号証である。
(ア)ファンタメルー社は、商標権者より本件商標の使用許諾を受けて、商標「マグマの湯」を付した商品「バスソルト」を主にインターネットを通じて販売している。
(イ)商標「マグマの湯」は、本件商標の上段部分であって、本件商標と社会通念上同一と認められる商標「マグマ」と、商品「バスソルト」を表示する語である「湯」とを組み合わせてなる商標であるから、商標法第50条にいう「登録商標と社会通念上同一と認められる商標」である。
また、商品「バスソルト」は「化粧品」の範ちゅうに属する商品である(乙第3号証)。
(ウ)乙第5号証の1及び2は、商標「マグマの湯」を付した商品「バスソルト」に関するファンタメルー社のパンフレットである。
また、乙第6号証の1ないし7は、商標「マグマの湯」を付した商品「バスソルト」の販売を目的としたファンタメルー社のウェブサイトのプリントアウトであり、乙第6号証の1及び2は2006年9月7日に、乙第6号証の3及び4は2006年11月6日に、乙第6号証の5ないし7は2007年7月9日に、それぞれプリントアウトされた。
これにより、本件審判の請求の登録前3年以内に、商標「マグマの湯」を付した商品「バスソルト」の販売を目的としたウェブサイトにおいて、当該商品が表示されていたことは明らかである。そして、上記ウェブサイト上に商標を表示する行為は、商標法第2条第3項第8号の「商品に関する広告を内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供する行為」に該当する。
(エ)乙第7号証は、商標「マグマの湯」を付した商品「バスソルト」の売上伝票の一部であって、平成19年5月22日から平成20年3月27日までの間に、ファンタメルー社が当該商品を販売したことは明らかである。そして、当該販売行為は商標法第2条第3項第2号にいう「譲渡」に該当する。
(オ)以上より、通常使用権者であるファンタメルー社により、本件商標が「化粧品」について、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において使用されていたことは明らかである。
イ 商標権者は、宮城県大崎市古川旭5丁目3番26号に本社住所を有するゴールド興産に対し、本件商標権について通常使用権を許諾している。
(ア)ゴールド興産は、商標権者より本件商標の使用許諾を受けて、商標「マグマ温泉玉」(別掲の構成よりなる商標)を商品「浴用化粧品」に使用している(乙第8号証ないし乙第10号証の3)。
(イ)商標「マグマ温泉玉」は、「マグマ」の文字部分が「温泉玉」の文字部分よりも大きく、しかも特徴的な書体で書されているため、「マグマ」の文字部分と「温泉玉」の文字部分とがそれぞれ分離して把握される。すなわち、商標「マグマ温泉玉」は、「温泉玉」という文字を「マグマ」という商標の横に並べて配置したものと認識することができる。そして、「マグマ」の文字部分は、本件商標の上段部分と外観・称呼・観念のすべてにおいて同一であるから、商標「マグマ温泉玉」の使用は、本件商標の使用であると容易に理解することができる。
(ウ)商品「浴用化粧品」は、「化粧品」と同一の類似群コード(04C01)であって、「化粧品」の範疇に属するものである(乙第11号証)。
(エ)乙第8号証は、商標「マグマ温泉玉」を付した商品「浴用化粧品」のパッケージの画像のプリントアウトであり、被請求人に宛てたものである。当該パッケージの裏側の右上部分には、「’08.12.15」と表示された被請求人の受領印が押されていることから、2008年12月15日の時点でゴールド興産が商品「浴用化粧品」のパッケージに商標「マグマ温泉玉」を付していたことが分かる。そして、このように、商品のパッケージに商標を付す行為は、商標法第2条第3項第1号にいう「商品の包装に標章を付する行為」に該当する。
(オ)乙第9号証は、商標「マグマ温泉玉」を付した商品「浴用化粧品」に関するゴールド興産のパンフレットである。このように、パンフレット等の商品の宣伝用配布物に商標を付して頒布する行為は、商標法第2条第3項第8号の「商品に関する広告を頒布する行為」に該当する。
(カ)乙第10号証の1ないし3は、商標「マグマ温泉玉」を付した商品「浴用化粧品」の販売を目的としたゴールド興産のウェブサイトのプリントアウトであり、乙第10号証の1は2008年10月2日に、乙第10号証の2は2008年6月11日に、乙第10号証の3は2009年3月17日に、それぞれプリントアウトされた。
乙第10号証の3は、本件審判の請求後にプリントアウトされたものであるが、乙第10号証の1ないし3を総合的に検討すると、少なくとも2008年6月11日から本件審判の請求の登録日である2009年1月30日に至るまでの間、ゴールド興産のウェブサイトにおいて、商標「マグマ温泉玉」を付した商品「浴用化粧品」を販売する目的をもって表示していたことが分かる。そして、上記ウェブサイト上に商標を表示する行為は、商標法第2条第3項第8号の「商品に関する広告を内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供する行為」に該当する。
(キ)以上より、通常使用権者であるゴールド興産により、本件商標が「化粧品」について本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において使用されていたことは明らかである。
2 むすび
以上のように、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において商標権者及び通常使用権者によって、本件商標と社会通念上同一の商標が「化粧品」に使用されていたことは明らかである。

第4 当審の判断
1 商標権者による使用
(1)乙第1号証の1ないし4によれば、以下の事実が認められる。
ア いずれも表紙の上段に「マグマ製品一覧カタログ」との文字が表示され、表紙の下部に「日本薬品開発株式会社」の文字が記載されているから、商標権者の取扱いに係る商品のカタログと認めることができる。また、乙第1号証の1ないし3の表紙下部には、「直販店舗用」の文字が表示されている。
イ これらのカタログの3枚目(表紙を含む。)には、「化粧品」との表示のもと、商品の写真と共に、「エッチグロウトリートメントリンス」の文字が記載されているところ、該商品には、「H・GROW」の文字を大きく表し、その下に、「TREATMENT RINSE」の文字を小さく表したラベルが貼付されている。また、商品の説明書きには、「枝毛・切毛を防ぎ、髪に潤いを与える自然派感覚のトリートメントリンスです。」などと記載されている。
ウ これらのカタログの裏表紙には、「マグマ製品一覧価格表」との表題が上段に表示され、その下に記載された「化粧品・医薬部外品」の項目中には、化粧品として「エッチグロウトリートメントリンス」の文字が記載されている。
また、上記「化粧品・医薬部外品」の項目の右下には、それぞれ「I-0602」(乙第1号証の1)、「I-0608」(乙第1号証の2)、「I-071102」(乙第1号証の3)、「I-080703」(乙第1号証の4)と記載され、これらのカタログが2006年(平成18年)2月から2008年(平成20年)7月までの間に商標権者により発行されたものであることについては、当事者間に争いがない。
(2)前記(1)で認定した事実によれば、商標権者は、本件審判の請求の登録(平成21年1月30日)前3年以内である2006年(平成18年)2月から2008年(平成20年)7月までの間に発行したカタログ4冊の表紙に「マグマ製品一覧カタログ」と表示し、該カタログ中に、「H・GROW(エッチグロウ)」なる商品名の「トリートメントリンス(ヘアリンス)」を掲載したこと、カタログの裏表紙にカタログに掲載された商品についての「マグマ製品一覧価格表」を表示したことを認めることができ、該カタログは、上記期間内に、商標権者の業務に係る商品の直販店等に頒布されたものと推認することができる。
そして、「トリートメントリンス(ヘアリンス)」は、本件請求に係る指定商品「化粧品」に含まれる商品と認めることができる。
(3)商標「マグマ」の使用
ア カタログ(乙第1号証の1ないし4)上段に表示された「マグマ製品一覧カタログ」の文字及び裏表紙上段に表示された「マグマ製品一覧価格表」の文字は、該カタログに掲載された商標権者の業務に係る様々な商品すべてについて、「『マグマ』なる商標のもとに販売されている製品の一覧カタログ(価格表)」の意味合いを表したものと判断するのが相当である。
そうとすれば、該「マグマ」の文字部分(以下「使用商標」という。)は、カタログに掲載された商品すべての出所識別標識としての機能を果たしているものといわなければならない。
したがって、「マグマ製品一覧カタログ」及び「マグマ製品一覧価格表」の文字中の「マグマ」の文字部分は、「トリートメントリンス(ヘアリンス)」についても、出所識別標識としての機能を発揮し、「トリートメントリンス(ヘアリンス)」に付された「H・GROW」又は「エッチグロウ」の表示は、「トリートメントリンス(ヘアリンス)」に個別的に付された商標とみるべきである。
イ 使用商標は、本件商標中の片仮名文字部分である「マグマ」と同一の綴り字であり、これより「マグマ」の称呼及び「岩漿(マグマ)」の観念を生ずるものであるから、本件商標とは、「マグマ」の称呼及び「岩漿(マグマ)」の観念を同一にするものである。
そうすると、使用商標は、本件商標と社会通念上同一の商標と認めることができる。
(4)以上によれば、カタログ(乙第1号証の1ないし4)の表紙上段に表示された「マグマ製品一覧カタログ」の文字及び裏表紙上段に表示された「マグマ製品一覧価格表」の文字における「マグマ」の文字部分(使用商標)をもって、商標権者は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において請求に係る指定商品に含まれる商品「トリートメントリンス(ヘアリンス)」に、本件商標と社会通念上同一と認められる商標を使用していたと認めることができる。
そして、商標権者がその発行に係るカタログに本件商標と社会通念上同一と認められる商標を付し、これを頒布した行為は、商標法第2条第3項第8号に規定する「商品に関する広告、価格表、若しくは取引書類に標章を付して展示し、若しくは頒布する行為」に該当するものと認めることができる。
(5)なお、請求人は、カタログの表紙に表示された「マグマ製品一覧カタログ」の文字は、単に「マグマ製品」という一般的な使い方をしているのであり、本件商標を商標として使用しているものではない。カタログには、「マグマ製品」と「それ以外の製品」とが混在しており、「化粧品」には「マグマ」が使用されているものではなく、「ヘアーリンス」に使用されている商標は、「H・GROW」であるから、本件商標は、請求に係る指定商品に使用していない旨主張する。
しかしながら、「マグマ」の文字部分がカタログに掲載された商品すべての出所識別標識としての機能を果たしているものであること上述の認定のとおりであり、他にこれを覆すに足る格別の事情も見当たらないから、請求人の上記主張は採用できない。
2 商標権者以外の者による使用
前記1のとおり、本件審判において、被請求人は、商標権者が本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において請求に係る指定商品に含まれる「トリートメントリンス(ヘアリンス)」について、本件商標と社会通念上同一の商標の使用をしていたことを証明し得たものであるから、商標法第50条第1項の規定からすれば、上記使用をもって、本件審判は、商標法第50条2項の規定に該当しないことは明らかであるが、ファンタメルー社及びゴールド興産による使用に関する争点について、念のため検討する。
(1)ファンタメルー社による使用について
被請求人は、ファンタメルー社の使用に係る商標「マグマの湯」は、本件商標と社会通念上同一と認められる商標「マグマ」と商品「バスソルト」を表示する「湯」とを組み合わせてなる商標であるから、本件商標と社会通念上同一と認められる商標である旨主張する。
しかしながら、商標「マグマの湯」は、同一の書体をもって、同一の大きさ・間隔で書されているばかりでなく、化粧品に含まれる「バスソルト」が「湯」の語をもって、普通に使用されているという事実を明らかにする証拠は見出せない。
また、「マグマ」の語は、「溶融した造岩物質(メルト)を主体とする、地下に存在する流動物体」(広辞苑第六版)であり、マグマの熱で熱せられた熱水を利用した温泉が存在することから、「マグマの湯」の文字は、全体として「マグマで熱せられた湯」なる意味合い(観念)を理解させるものである。
そうすると、商標「マグマの湯」は、その文字全体をもって、商品「入浴用化粧品(バスソルト)」の出所識別標識としての機能を発揮しているものと把握、認識されるというのが相当である。
そこで、商標「マグマの湯」と本件商標を対比すると、両者は、前記に示した構成よりみて、外観上明らかに相違するものである。次に、称呼についてみるに、商標「マグマの湯」は、その構成文字に相応して、「マグマノユ」の称呼を生ずるものであるのに対し、本件商標は、その構成文字より「マグマ」の称呼を生ずるものであるから、両称呼は、後半部分において、「ノユ」の音の有無の差異を有するものである。また、商標「マグマの湯」は、「マグマで熱せられた湯」又は「岩漿(マグマ)から得られる湯」なる意味合い(観念)を生ずるものであるのに対し、本件商標は、「岩漿(マグマ)」の観念を生ずるものである。
してみれば、商標「マグマの湯」は、本件商標と外観、称呼及び観念のいずれの点においても相違するものといわなければならないから、本件商標と社会通念上同一の商標と認めることができない。
したがって、ファンタメルー社による、商品「入浴用化粧品(バスソルト)」についての商標「マグマの湯」の使用は、登録商標の使用ということができない。
(2)ゴールド興産による使用
通常使用権について
一般的に通常使用権に関する契約は、商標権者又は専用使用権者との間で交わされる商標権使用許諾契約に基づいて発生するものであって、同契約は、商標権者等と使用者との意思表示の合意によって成立するものであるから、必ずしも書面による必要はないと解され、仮に当該登録商標を通常使用権者が使用することについて商標権使用許諾契約書が存在しないとしても、そこには黙示の使用許諾があったものと推認するのが相当である。
そうすると、本件において、商標権者とゴールド興産との間に、本件商標権についての使用許諾契約書が存在しないとしても、ゴールド興産は、本件商標権の通常使用権者とみて差し支えないといわなければならない。
イ 使用に係る商品について
被請求人は、ゴールド興産が使用する商品は、「浴用化粧品」である旨主張する。
薬事法の規則第2条第2項の厚生労働大臣が指定する医薬部外品の中に、「浴用剤」が含まれ、「医薬部外品の効能・効果の範囲」として、「冷え症、腰痛」などが規定されている(甲第6号証)ところ、証拠によれば、該商品の人体に与える特長として、「身体が芯から温まり、湯冷めしにくくなります。(遠赤外線・ミネラルイオン効果)夜、トイレに行く回数が減ります。」(乙第8号証)、「こんな方にオススメです」として、「腰痛・ひざ痛でお悩みの方、冷え・むくみの気になる方、肌荒れ・乾燥肌の方、夜中にトイレの近い方、ダイエットをしている方、温泉好きの方」(乙第9号証)との記載がある。
一方、薬事法第2条第3項に規定する「化粧品」は、「人の身体を清潔にし、美化し、魅力を増し、容貌を変え、又は皮膚若しくは毛髪を健やかに保つために、身体に塗擦、散布その他これらに類似する方法で使用されることが目的とされている物で、人体に対する作用が緩和なものをいう。」ところ、化粧品の範ちゅうに含まれる浴用化粧品の効能表示は、同規定の趣旨からすると、せいぜい「皮膚を清潔にする」、「皮膚を健やかに保つ」といった表現にとどまるものといえる。
そうすると、ゴールド興産の使用に係る商品は、少なくとも「化粧品」の範ちゅうには属しない商品とみるのが相当である。
ウ 商標「マグマ温泉玉」について
請求人は、商標「マグマ温泉玉」の態様は、商標を目立たせるためのパッケージデザイン上の手法にすぎず、「マグマ温泉玉」という一連表示の商標を使用している旨主張する。
しかし、同一の書体で、同一の大きさ、同一の間隔で表した「マグマ温泉玉」の文字とは別にパッケージには、別掲のとおりの構成の商標が使用されていることは明らかな事実である。
そして、当該商標は、「マグマ」の文字部分と「温泉玉」の文字部分とが文字の大きさ・態様において異なるものであるから、それぞれの文字部分が分離して看取されやすい上に、該表示に接する需要者は、大きく表され、かつ、やや丸みを帯び図案化された「マグマ」の文字部分に強く印象づけられるものというのが相当である。
そうすると、当該商標中の「マグマ」の文字部分は、本件商標中の片仮名文字部分と同一の綴り字よりなるものであるから、使用商標と同様の理由により、本件商標と社会通念上同一の商標と認めることができる。
エ 以上によれば、本件商標権の通常使用権者と認められるゴールド興産は、本件商標と社会通念上同一の商標を使用していたとしても、その使用に係る商品は、請求に係る指定商品に含まれるものとはいえない。
3 むすび
商標権者による使用については、上記1のとおりであるから、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、本件商標と社会通念上同一と認められる商標を、取消請求に係る指定商品中に含まれる「トリートメントリンス(ヘアリンス)」について、本件商標を使用したことを証明したものと認めることができる。
したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により、取り消すべきものではない。
よって、結論のとおり審決する。



別掲



(色彩については、原本を参照されたい。)
審理終結日 2009-09-10 
結審通知日 2009-09-15 
審決日 2009-09-29 
出願番号 商願平3-102195 
審決分類 T 1 32・ 1- Y (103)
最終処分 不成立  
特許庁審判長 森吉 正美
特許庁審判官 小畑 恵一
瀧本 佐代子
登録日 1994-04-28 
登録番号 商標登録第2644438号(T2644438) 
商標の称呼 マグマ 
代理人 竹内 耕三 
代理人 水野 清 
代理人 北村 仁 
代理人 森田 俊雄 
代理人 深見 久郎 
代理人 向口 浩二 

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