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審決分類 審判 査定不服 商4条1項16号品質の誤認 登録しない X41
審判 査定不服 商3条1項3号 産地、販売地、品質、原材料など 登録しない X41
管理番号 1206753 
審判番号 不服2008-29226 
総通号数 120 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2009-12-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-11-17 
確定日 2009-10-26 
事件の表示 商願2007-92299拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 第1 本願商標
本願商標は、「子育て学検定」の文字を横書きしてなり、第41類「育児に関する知識の教授,その他の技芸・スポーツ又は知識の教授,育児に関する知識又は能力の検定,育児に関するセミナー,その他のセミナーの企画・運営又は開催,電子出版物の提供,書籍の制作,教育・文化・娯楽・スポーツ用ビデオの制作(映画・放送番組・広告用のものを除く。)」を指定役務として、平成19年8月28日に登録出願されたものであり、その後、指定役務については、原審における同20年10月8日提出の手続補正書において、第41類「育児に関する知識の教授,育児に関する知識又は能力の検定,育児に関するセミナーの企画・運営又は開催,育児に関する電子出版物の提供,育児に関する書籍の制作,育児教育用ビデオの制作(映画・放送番組・広告用のものを除く。)」に補正されたものである。

第2 原査定の拒絶理由の要旨
原査定は、「本願商標は、『子育てに関する検定』の意味合いを容易に認識させる『子育て学検定』の文字を普通に用いられる方法で書してなるにすぎないものであるから、これを本願指定役務中、『子育てに関する検定に関連する役務』について使用するときは、単に役務の質(内容)を表示するにすぎないものと認める。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、上記役務以外の役務に使用するときは、役務の質の誤認を生じさせるおそれがあるから、同法第4条第1項第16号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

第3 当審における証拠調べ通知の要旨
当審において、本願商標が商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当するか否かについて、職権に基づく証拠調べを実施した結果、下記の事実を発見したので、請求人に対し、同法第56条第1項で準用する特許法第150条第5項の規定に基づく通知を行い、意見を求めた。

(1)「広辞苑」(「広辞苑」第6版。株式会社岩波書店発行)には、「こそだて【子育て】」の項に、「子をそだてること。育児。」との記載、「がく【学】」の項に、「まなび得たもの。体系化された知識。」との記載、及び、「検定」の項に、「検定試験の略。」との記載がそれぞれある。
(2)「大辞林」(第3版。株式会社三省堂発行)には、「こそだて【子育て】」の項に、「子を育てること。育児。」との記載、及び、「がく【学】」の項に、「知識の体系。学問。」との記載がある。
(3)1992年4月15日付け読売新聞東京版朝刊16ページには、「[論点]日本流『子育て学』の創造 田中喜美子(寄稿)」の見出しの下、「日本はいま痛切に、未来を切り開く新しい子育て学を必要としている。それはあくまでも、外国の模倣ではなく、日本の父母の歴史的・社会的・心理的な伝統と現実を総合的に踏まえたものでなければならないだろう。外国の理論を無批判に自分の国の現実に当てはめる習性は、その国の学問的後進性を表しているように私には思える。日本の学問は、新しい育児学をつくり出すために、すでに十分な成熟度を備えているはずなのである。」との記載がある。
(4)1995年10月24日付け朝日新聞東京地方版/埼玉には、「愛川比沙子さん 近所の子育て相談に一役買う(こんにちは) /埼玉」の見出しの下、「川越市児童センターの開所以来、相談員を務める愛川比沙子さん(五九)=写真=は三年前から、『日本流子育て学研究会』をセンターのボランティアと月一回開いてきた。」との記載がある。
(5)1996年3月2日付け西日本新聞夕刊8ページには、「泣いて笑って・青柳先生と奈良屋小2200日<14>-連載」の見出しの下、「◇1260文字の『子育て学』◇母様方へ申し上げます」及び「独身・二十六歳の青柳が、大胆にも母親らに説いた千二百六十字の『子育て学』。親にも劣らぬ愛情を児童に注いだ自負の表れか。あるいは、幼いころ母を亡くした青柳の、胸深く秘めた母親への思慕からの訴えだったろうか。」との記載がある。
(6)1996年6月16日付け河北新報には、「社会意識を高める/一関・麻生東北短大で今年も/『ウィメンズ・カレッジ』開講」の見出しの下、「麻生東北短大での同講座は昨年に続いて2度目。全体学習4回、子育て学、生活学のコース別学習6回の計10回で10月まで行われる。講師は同短大教授らが務める。」との記載がある。
(7)1998年1月30日付け西日本新聞朝刊23ページには、「佐賀県/桑原征平さんが講演 2月1日に三日月町で『子育て学』」の見出しの下、「三日月町教育委員会など主催の『子育て学in三日月』が、一日午前九時から同町のドゥイング三日月で行われる。」との記載がある。
(8)1998年5月8日付け朝日新聞大阪地方版/奈良には、「『子育てとは何か』実践講座を開設 奈良いのちの電話 /奈良」の見出しの下、「二十四時間態勢で悩みごとの電話相談にあたっている社団法人『奈良いのちの電話協会』(阪本竜児理事長)は十三日から八回にわたって講座『実践子育て学』を開く。講師を務めるのは元奈良女子大学教授で、同協会副理事長として相談を受けている高橋史郎さん(七三)。」との記載がある。
(9)1998年5月9日付け毎日新聞 地方版/奈良 23ページには、「13日から『現代“実践子育て学”講座』 子供の心の教育テーマに--奈良市 /奈良」の見出しの下、「乳幼児から青年期までの子供の心の教育をテーマにした『現代“実践子育て学”講座』(奈良いのちの電話協会主催)が5月13日から、奈良市上3条町の市中央公民館で8回にわたって開かれる。子供たちのいじめ、不登校、覚せい剤やシンナーなどの薬物使用などが社会問題になっていることから、同協会が講座を企画。長年、親や子供たちに対してカウンセリングを続けてきた高橋史郎・元奈良女子大教授(教育方法学)が、子供たちの悩みやそれに対する親や学校の受け止め方などについて話す。5月13日の第1回目のテーマは『子供の何を育てるのか・子育て学総論』。」との記載がある。
(10)2000年6月7日付け読売新聞西部版朝刊29ページには、「尚絅学園が公開講座 来月17-25日=熊本」の見出しの下、「講座は尚絅大や尚絅短大の教授陣が担当し、内容は次の通り。時間は、〈1〉が午前九時半-同十時四十分、〈2〉が同十時五十分-正午。【17日】〈1〉『縁側の子育て学』ことはじめ 浜崎幸夫・同短大教授〈2〉腹八分の栄養学 大下健幸・短大教授」との記載がある。
(11)2000年10月11日付け産経新聞東京版夕刊7ページには、「【イブニングマガジン】生涯学習を考える 『子育て学入門』 /川嶋優講師」の見出しの下、「生涯学習の講座には珍しい子育て応援プログラムは、学習院生涯学習センターならではの特色でもある。四講座ある中から『子育て学入門』をのぞいてみた。」との記載がある。
(12)2001年3月3日付け読売新聞西部版朝刊33ページには、「後藤靖宏教授が最終講義で熱弁 大分大教育福祉科学部=大分」の見出しの下、「横顔 緒方町出身。1971年、九州大学大学院教育学研究科修了。4月から長崎外国語大学・短期大学(長崎市)の教授になる。著書に『家庭教育講話・心を通わせる愛と自立の子育て学』(近代文芸社)など。」との記載がある。
(13)2001年6月2日付け熊本日日新聞朝刊には、「浜崎幸夫教授(尚絅短大)が『アザリング』の勧め 抱え込まないで!!お母さん 他人とかかわる子育てを <子育て><本>」の見出しの下、「尚絅短大子育て研究センター(熊本市清水町)の浜崎幸夫教授がこのほど、『縁側の子育て-親しい他人による子育て学』を出版した。」との記載がある。
(14)2006年9月2日付け西日本新聞朝刊29ページには、「福岡県/子育て学講座受講者を募集 12日開講、久留米/ワイドちくご・ありあけ」の見出しの下、「久留米信愛女学院短大は十二日から、久留米市天神町のリベール四階にある学外拠点施設『信愛コラボレーションプラザ リリウム』で、子どもの病気の予防法やしつけなどを学ぶ『新・子育て学講座』(八回)を開く。受講者を募集している。開講日時は十二-十五日、十九-二十二日の午前九時-午後零時半。同短大幼児教育学科の教授や市内の子育て支援団体の代表者、小児科の医師らが交代で講師を務め、年齢別の発達や家庭内で子どもたちがけがをしやすい場所など、子育てに関する話題や知識を提供する。子ども向けの食事やおやつの調理実習もある。」との記載がある。
(15)金沢大学のウェブページ中、「金沢大学概要 2004」(http://www.kanazawa-u.jp/university/outline/gaiyo/2004gaiyou.pdf)には、その32ページに、「公開講座 講座名 幼児教育の現場から考える子育て学」との記載がある。
(16)茨城県鹿嶋市のウェブページ中、「市報かしま 2007年8/20 306号」(http://kouhou.city.kashima.ibaraki.jp/pdf/306.pdf)には、「■キッズクラブ(育児学コース)と子育て学講座」及び「<子育て学講座>時:9月12日(水)」との記載がある。
(17)日本子育て学会のウェブページ中、「トップページ」(http://www.geocities.jp/kosodategakkai/index.html)には、「『日本子育て学会』は、市民に開かれた学会として、設立されます。」及び「さまざまな分野の研究者が協力して、問題解決に当たり将来的には子育て学の確立を目指します。」との記載がある。
(18)文部科学省のウェブページ中、「平成15年度国立大学等公開講座開設予定一覧表 国立大学(2)」(http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/15/08/03081901/002.htm)には、「機関名 東京学芸大学 講座名 リラックス子育て学」との記載がある。
(19)関東学院大学人間環境学部のウェブページ中、「教員紹介 大豆生田啓友」(http://ningen.kanto-gakuin.ac.jp/~ningenx/modules/teacher11/index.php?id=7)には、「学部担当科目 保育原理I、保育内容総論、保育方法論、子育て学」との記載がある。
(20)独立行政法人科学技術振興機構が運営する「J-GLOBAL科学技術総合リンクセンター」のウェブページ中、「濱崎 幸夫【研究者】」(http://jglobal.jst.go.jp/detail.php?JGLOBAL_ID=200901098532139412&q=%E5%AD%90%E8%82%B2%E3%81%A6%E5%AD%A6&t=0。なお、「崎」の文字は、異字体であるために置き換えて表示したものである。)には、「研究分野キーワード(3件)常民発達心理学 常民教育学 子育て学」との記載がある。
(21)国立大学法人福岡教育大学のウェブサイト中、「ケア・教育・子育て支援を担う保育者養成システムの現状調査」(http://www.fukuoka-edu.ac.jp/~s-kitano/hoikushayouseisytemnogenjouchousa.pdf)には、「3-2-2.ケア、教育、子育て支援を担う専門職としての養成について 乳児のケア:実践・実習重視型授業の実施、保健、栄養、小児医療の分野との連携授業の実施、等。 教育:指導案等教育構想力・記録の技術の欠如、保・幼・小連携に関わる教育の必要、『保育学』『子育て学』等を教養必修科目に、学習の継続に係わる基礎教育の充実と現職卒業生の支援に関する工夫、実践、期待、等。」との記載がある。
(22)ヤフー株式会社が運営する「Yahoo!ブックス」(http://books.yahoo.co.jp/)には、書籍のタイトルとして「縁側の子育て 親しい他人による子育て学」(http://books.yahoo.co.jp/book_detail/AAM07993/)、「育つ育てるふれあいの子育て 胎児期からの子育て学」(http://books.yahoo.co.jp/book_detail/AAL81715/)、「家庭教育講話 心を通わせる愛と自立の子育て学」(http://books.yahoo.co.jp/book_detail/AAK55641/)、「子育て学 親を創る『子育て』の知恵」(http://books.yahoo.co.jp/book_detail/AAU75472/)、「脳をはぐくむ 新・子育て学」(http://books.yahoo.co.jp/book_detail/AAB89198/)、「お母さんこっち向いて 小児科医の子育て学」(http://books.yahoo.co.jp/book_detail/AAB46411/)、「3歳までに決まる 0歳からの新子育て学」(http://books.yahoo.co.jp/book_detail/AAU16606/)及び「6歳までに伸ばす 4歳からの新子育て学」(http://books.yahoo.co.jp/book_detail/AAU17145/)の記載がある。

第4 当審における証拠調べ通知に対する請求人の意見
請求人は、証拠調べ通知書において、「検定」が「検定試験の略」であり、「子育て学」が普通に使用されている例が列挙されているが、これらの事実を否認するものではない。
しかしながら、これらの事実を前提としても、「薬学検定」「環境検定」など「検定試験」の内容を示す言葉と「検定」とが結合した商標が、多数登録されていることからしても、本願商標「子育て学検定」は一連の造語として識別力が認められるべきである。

第5 当審の判断
本願商標は、上記第1のとおり、「子育て学検定」の文字からなるところ、上記第3に記載のとおり、その構成中前半の「子育て」の文字は、「子を育てること。育児。」を意味する語として、また、その中間の「学」の文字は、「体系化された知識。学問。」の意味を有する語として、さらに、その後半の「検定」の文字は、「検定試験の略。」を意味する語(いずれも、前掲「広辞苑」若しくは「大辞林」。)として、いずれも親しまれている語であるから、構成文字全体からは「子を育てること(育児)に関する体系化された知識(学問)についての検定試験」ほどの意味合いを容易に理解、認識させるものである。
そして、上記第3の(3)ないし(22)に記載の事実によれば、「子育て学」の文字を表題に含む書籍が、一般に発行、販売されていること、及び、本願の指定役務を取り扱う業界において、「子育て学」の文字が、育児や子育てに関する役務に使用されていること(例えば、上記第3の(6)ないし(11)の新聞記事には、役務「知識の教授」や「講座(講演)の開催」に関して「子育て学」の文字が使用されている。)のそれぞれが認められる。
ところで、「検定(試験)」については、就職・転職等の有利性や、技術能力の向上や自己啓発を目指す等の目的に応じて、国家・公的・民間を問わず各種資格が注目され、その資格認定のための試験が多数実施されている実状が認められるところである。
また、一般的に「知識の教授,セミナーの企画・運営又は開催」の役務に関しては、需要者が受験を希望する検定試験の名称、あるいは当該試験によって取得可能な資格の名称などを、「○○検定講座」「○○検定セミナー」というように、教育の場におけるカリキュラムや各種講座やセミナーの名称を冠して、その提供される役務の内容の表示とすることがしばしば行われているところである。
してみれば、本願商標は、これをその指定役務中「子を育てること(育児)に関する体系化された知識(学問)についての検定試験」、及び、これに関する役務(例えば、子を育てること(育児)に関する体系化された知識(学問)についての検定試験に関する知識の教授、子を育てること(育児)に関する体系化された知識(学問)についての検定試験に関するセミナーの企画・運営又は開催)に使用するときは、役務の質を表示したものと理解させるにとどまり、自他役務の識別標識とは認識し得ないものであり、また、これを上記役務以外の指定役務について使用するときは、役務の質について誤認を生じさせるおそれがあるものといわなければならない。
したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当するものである。
なお、請求人は、「公開講座等において『子育て学』の文字が使用されている例が数件見受けられるものの、何れも確立した学問を表示するものとして『子育て学』が用いられているものではない。そして、『子育て学』がこれらの講座の具体的な内容を表示したものとも認められない。また、その他の使用例にあっても、『子育て』という共通項を有するものの、『子育て学』が意味するところはそれぞれ異なるものであって、特定の意味合いで使用されているということはできない。」旨主張している。
しかし、「商標法3条1項3号は、取引者、需要者に指定商品の品質等を示すものとして認識され得る表示態様につき、それ故に登録を受けることができないとしたものであって、該表示態様が商品の品質を表すものとして必ず使用されるものであるとか、現実に使用されている等の事実は、同号の適用において必ずしも要求されないものと解すべきである」(東京高裁 平成12年(行ケ)第76号、平成12年9月4日判決参照)旨判示されていることからすると、本願商標の構成中「子育て学」の文字は、確立した学問を表示するものとして取引者、需要者の間で認識される必要はなく、当該表示が、学問の一つとして認識され、これが指定役務の質等を示すものとして認識されることで足りるものである。
そうとすれば、「子育て学」の文字を含む本願商標が、その指定役務の取引者、需要者の間で、該役務の質を表示するものとして認識されることは、上記認定のとおりであるから、この点についての請求人の主張は認めることができない。
また、請求人は、「検定」と他の文字とが結合した過去の審決例、登録例を挙げ、本願商標も登録されるべきである旨主張するが、登録出願に係る商標が商標法第3条第1項第3号等に該当するか否かは、当該商標の査定時又は審決時において、指定役務の取引の実情等を考慮し、個別具体的に判断されるべきものであるから、それら過去の審決例、登録例をもって本願商標の登録の適否についての判断基準とするのは、必ずしも適切でない。
したがって、請求人の上記主張は、採用することができない。
以上のとおりであるから、本願商標が商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当するものとして、本願を拒絶した原査定は、妥当であって、取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲
審理終結日 2009-08-11 
結審通知日 2009-08-14 
審決日 2009-08-28 
出願番号 商願2007-92299(T2007-92299) 
審決分類 T 1 8・ 272- Z (X41)
T 1 8・ 13- Z (X41)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 泉田 智宏 
特許庁審判長 小林 由美子
特許庁審判官 杉本 克治
田村 正明
商標の称呼 コソダテガクケンテー、コソダテガク 
代理人 峯 唯夫 

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