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審決分類 審判 一部無効 商3条1項6号 1号から5号以外のもの 無効としない Y21
審判 一部無効 商4条1項19号 不正目的の出願 無効としない Y21
管理番号 1206736 
審判番号 無効2008-890126 
総通号数 120 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2009-12-25 
種別 無効の審決 
審判請求日 2008-12-02 
確定日 2009-10-30 
事件の表示 上記当事者間の登録第4952253号商標及び登録第5039288号商標の商標登録無効審判事件について、審理の併合のうえ、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 無効請求に係る商標
1 無効2008-890123号に係る登録第4952253号商標は、別掲(1)の構成からなり、平成17年1月7日に登録出願、第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,仮装用衣服,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」並びに第3類及び第16類に属する商標登録原簿に記載の商品を指定商品として、平成18年5月12日に設定登録されたものである。

2 その外、併合した各審判事件(無効2008-890125、無効2008-890126、無効2008-890127及び無効2008-890128)に係る登録第5039288号商標は、別掲(1)の構成からなり、平成18年9月29日に登録出願、第18類「かばん金具,がま口口金,皮革製包装用容器,愛玩動物用被服類,かばん類,袋物,携帯用化粧道具入れ,傘,ステッキ,つえ,つえ金具,つえの柄,乗馬用具,皮革」、第21類「デンタルフロス,ガラス基礎製品(建築用のものを除く。),かいばおけ,家禽用リング,魚ぐし,おけ用ブラシ,金ブラシ,管用ブラシ,工業用はけ,船舶ブラシ,家事用手袋,ガラス製又は陶磁製の包装用容器,なべ類,コーヒー沸かし(電気式又は貴金属製のものを除く。),鉄瓶,やかん,食器類(貴金属製のものを除く。),携帯用アイスボックス,米びつ,食品保存用ガラス瓶,水筒,魔法瓶,アイスペール,泡立て器,こし器,こしょう入れ・砂糖入れ及び塩振り出し容器(貴金属製のものを除く。),卵立て(貴金属製のものを除く。),ナプキンホルダー及びナプキンリング(貴金属製のものを除く。),盆(貴金属製のものを除く。),ようじ入れ(貴金属製のものを除く。),ざる,シェーカー,しゃもじ,手動式のコーヒー豆ひき器及びこしょうひき,じょうご,すりこぎ,すりばち,ぜん,栓抜,大根卸し,タルト取り分け用へら,なべ敷き,はし,はし箱,ひしゃく,ふるい,まな板,麺棒,焼き網,ようじ,レモン絞り器,ワッフル焼き型(電気式のものを除く。),清掃用具及び洗濯用具,アイロン台,霧吹き,こて台,へら台,湯かき棒,浴室用腰掛け,浴室用手おけ,ろうそく消し及びろうそく立て(貴金属製のものを除く。),家庭用燃え殻ふるい,石炭入れ,はえたたき,ねずみ取り器,植木鉢,家庭園芸用の水耕式植物栽培器,じょうろ,愛玩動物用食器,愛玩動物用ブラシ,犬のおしゃぶり,小鳥かご,小鳥用水盤,洋服ブラシ,寝室用簡易便器,トイレットペーパーホルダー,貯金箱(金属製のものを除く。),お守り,おみくじ,紙タオル取り出し用金属製箱,靴脱ぎ器,せっけん用ディスペンサー,花瓶及び水盤(貴金属製のものを除く。),風鈴,ガラス製又は磁器製の立て看板,香炉,化粧用具,靴ブラシ,靴べら,靴磨き布,軽便靴クリーナー,シューツリー,コッフェル,ブラシ用豚毛」、第28類「スキーワックス,遊園地用機械器具(業務用テレビゲーム機を除く。),愛玩動物用おもちゃ,おもちゃ,人形,囲碁用具,歌がるた,将棋用具,さいころ,すごろく,ダイスカップ,ダイヤモンドゲーム,チェス用具,チェッカー用具,手品用具,ドミノ用具,トランプ,花札,マージャン用具,遊戯用器具,ビリヤード用具,運動用具,釣り具,昆虫採集用具」及び第30類「アイスクリーム用凝固剤,家庭用食肉軟化剤,ホイップクリーム用安定剤,食品香料(精油のものを除く。),茶,コーヒー及びココア,氷,菓子及びパン,調味料,香辛料,アイスクリームのもと,シャーベットのもと,コーヒー豆,穀物の加工品,アーモンドペースト,ぎょうざ,サンドイッチ,しゅうまい,すし,たこ焼き,肉まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,べんとう,ホットドッグ,ミートパイ,ラビオリ,イーストパウダー,こうじ,酵母,ベーキングパウダー,即席菓子のもと,酒かす,米,脱穀済みのえん麦,脱穀済みの大麦,食用粉類,食用グルテン」並びに第9類、第11類、第20類、第24類、第26類、第27類、第29類、第32類及び第34類に属する商標登録原簿に記載の商品を指定商品として、平成19年4月6日に設定登録されたものである(以下、上記した登録第4952253号商標をも含めて「本件各商標」という。)。
以下、審理を併合した審判事件を一括していうときは、「本件各審判」という。

第2 請求人の主張
請求人は、「本件各審判事件について、本件各商標の指定商品中、別掲(3)(ア)ないし(オ)に記載のとおりの商品及び役務の区分に属する商品(以下『無効請求に係る商品及び役務の区分』という。)についての登録を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第41号証(枝番号を含む。)を提出した(甲号証の枝番号を有するものについて、枝番号のすべてを引用するときは、以下枝番号を省略する。)。
1 請求の理由
(1)商標法第4条第1項第19号該当性
「ハーベイ・ボール・ワールド・スマイル財団」及びその関係団体が使用する「スマイリー・フェイス」は、当該財団及びその関係団体に係る商品又は役務を表示するものとして、日本国内又は外国における需要者間に広く認識されている。しかも、被請求人は「スマイリー・フェイス」の創作者でもないにも拘わらず、その著名性に只乗りして不当に使用料収入を得ようとするものである。
したがって、本件各商標は、他人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして、日本国内又は外国における需要者間に広く認識されている商標と同一又は類似のものであって、不当の目的をもって使用するものであるから、商標法第4条第1項第19号に該当する商標である。
(2)商標法第3条第1項第6号該当性
本件各商標は、それによっては「需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識すること」は出来ないものであり、本件図形自体は出所識別機能又は独占適応性は有しておらず、商標法第3条第1項第6号に規定する「前号に掲げるもののほか、需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することの出来ない商標」であるとの商標登録要件(積極的要件)を欠くものであり、商標法第3条第1項第6号により商標登録を受けることが出来ない商標である。
(3)請求人の立場について
「黄色い顔に小さい目」で世界的に有名な「スマイリー・フェイス」は、1963年末に米国マサチューセッツ州ウスター市在住の故ハーベイ・ボール氏(以下「ハーベイ・ボール」という。)によって創作・著作された。
平成13年4月12日の本人死去後、息子でマサチューセッツ州弁護士の「チャールズ・ボール」を会長として「ハーベイ・ボール・ワールド・スマイル財団」(日本国内の著作権・商標権の管理は関連会社である日本法人の「有限会社ハーベイ・ボール・スマイル・リミテッド」が行っている)が設立され、その全ての権利を継承している。
請求人は、同財団と契約して、日本国内での「スマイリー・フェイス」の商品化事業を行っている立場である(甲第1号証)。
(4)日本における「スマイリー・フェイス」の導入について
ア 「スマイリー・フェイス」の日本での始まりは、1970年初めに「ニコニコ・マーク」「スマイル・マーク」「ラブピース」として大ブームがあり、ファンシー文具業界の代表的企業である「サンスター文具」は、「ラブピース」によってビルを建てたと言われている。
当時は歌手の「ヒデとロザンナ」がそのイメージキャラクターとして活躍したので有名になった。その結果小学生からお年寄りまで知らない者はいない程「ラブピース」が有名になった(甲第2号証)。
その当時の「サンスター文具」の関係者が、自分達がアメリカの当時の「文具見本市」を訪問して米国の「スマイリー・フェイス」(ハーベイ・ボールによってもたらされた)のブームを見て、日本で流行を作ったと専門誌等で証言している。
イ その当時「スマイリー・フェイス」に関する各種「商標分野」での「商標登録」が日本人によってなされていた。
その後「スマイリー・フェイス」のブームが終わり、「登録商標権者」は登録を更新せず、殆どを放棄した。
その当時の日本人には、「スマイルは普遍的な日本の文化」という考え方が定着しており、「一般的なマーク」という認識であると考えられていた。「スマイルマーク」は、普遍的なマークとして日本の「へのへのもへじ」と同様に考えられていた。
特に創作・著作者の「ハーベイ・ボール」の存在が、当時知られていなかった(甲第3号証)。
その為、「商標登録」を行い、権利主張しようと考える者がいるとは信じられなかった。
(5)「ハーベイ・ボール」と「スマイリー・フェイス」の誕生
ア 1963年末、米国マサチューセッツ州ウスター市のグラフィック・デザイナー「ハーベイ・ボール」は、市内の「ステート生命保険会社」の副社長ジョン・アダム・ジュニア氏に同社が合併することを記念したシンボルマークの制作を依頼され、それに応じて制作・著作したのがこの「スマイリー・フェイス」である。
イ 「スマイリー・フェイス」が同「保険会社」の印刷物等に使用されると、やがて全米での大ブームとなった。同時に作られたバッジは、当時1億人の米国市民が「当時のアメリカの不況を乗り切る為」として胸に着けたと言われている。
ウ その当時「ハーベイ・ボール」は、制作費45ドル(5,000円)しか受け取っておらず、その後世界の多くの人達が「スマイリー・フェイスを世界平和の礎にする」ことを望んだ。
エ その後、彼の偉業は「ウスター市」に取り上げられ、「ウスター市」を「スマイルの街」と位置付け全米に宣言し、全世界にアピールした。
オ 1996年7月10日、「レイモンド・マリアーノ市長」により、「スマイリー・フェイス」が1963年に「ハーベイ・ボール」によって創作されたことが公認され、同市は、その7月10日を「ハーベイ・ボールの日」と宣言した(甲第4号証)。
カ 「ウスター歴史博物館」では、「スマイリー・フェイス」と「ハーベイ・ボール」を称えて特別の展示コーナーを設けており、それは現在まで続いている(甲第5号証)。
キ 1998年2月28日、「ウスター市市政150周年記念式典」に来賓として来場した連邦上院議員「ジョン・ケリー」(後の大統領候補)は、演説で「ハーベイ・ボール」が「スマイリー・フェイス」を創作・著作した事を公言した(甲第6号証)。
ク 1999年、アメリカの70年代を代表するイメージとしてアメリカの「郵政公社」の記念切手に「スマイリー・フェイス」が採用された。
1999年10月1日、ウスター市の「ワールド・スマイル・デイ」(第1回)の会場に「郵政公社」の代表が来賓として参加し、「スマイリー・フェイス」は「ハーベイ・ボール」が制作・著作したと公言した(甲第7号証)。
ケ 1994年7月公開の「トム・ハンクス」主演の映画「フォレスト・ガンプ」で、「スマイリー・フェイス」が70年代アメリカを代表するイメージとして紹介され、全世界で再認識された(甲第8号証)。
コ 2001年4月12日に「ハーベイ・ボール」死去
日本の主要新聞である「日本経済新聞」「朝日新聞」「毎日新聞」「読売新聞」等で「ハーベイ・ボール」の死去が報じられた(甲第9号証)。
同時に世界各国でもその報道がされ、被請求人の事務所がある本拠地のロンドン(イギリス)の新聞にもそれが報道された(甲第10号証及び甲第11号証)。
サ アメリカの「公式ビデオ」に70年代の話題として「スマイリー・フェイス」と「ハーベイ・ボール」、それに息子の「チャールズ・ボール」が取り上げられた(甲第12号証)。
シ 2001年4月に「ハーベイ・ボール」は死去し、その息子「チャールズ・ボール」によって「ハーベイ・ボール・ワールド・スマイル財団」が設立され、アメリカで「スマイリー・フェイス」は「ボランティア活動」として活用されている。その資金は、全て請求人関連の日本国内の商品化事業から支出されている。
このボランティア活動は、やがて全世界への拡大が計画されている。
このように、「ハーベイ・ボール」の「スマイリー・フェイス」の商品化事業は、「ボランティア活動」を目的としたものであり、その収入の大部分はそれらの活動に支出されている。
アメリカ国内では、「ハーベイ・ボール」により、1999年から「スマイルを世界平和の礎にする」との目標で「ワールド・スマイル・デイ」のイベントがスマイル発祥の地「ウスター市」(マサチューセッツ州)で実施されており、今年で10回目(10年目)を迎えた。その費用の全ては、請求人等の日本からの送金によるものである(甲第13号証)。
以上のとおり、請求人等の費用の投入と、努力によって、「スマイリー・フェイス」が日本で「価値あるもの」とし、「親しみのあるもの」とし、それに参加する「意義を国民が感じる」ようにし、結果「商品化事業」が行われているものであって、被請求人が所有する「登録商標権」によって商品化事業が行われているものではない。
(6)被請求人の日本における登場
ア 被請求人は、全世界で商標登録を行い、利益を上げている所謂「商標ブローカー」であると紹介された「専門誌」が存在する。
・ライセンシングブックス(ボイス情報(株))1997年12月25日号(甲第2号証)
・マーチャンダイジングライツ・レポート(1997年8月号及び2000年4月号ないし7月号)(甲第14号証)
イ 平成9年4月、被請求人が来日し、国内代理人株式会社イングラム(以下「イングラム社」という。)と共に記者会見を行い、自分達が「スマイリー・フェイス」の「著作権」と「商標権」を所有していると宣言し、同時に平成9年2月11日と4月10日に「日本経済新聞」で全面広告を行った。そこでは「スマイル・マークは登録商標です」「私を勝手に使わないで」「国際化時代にマッチした世界のマーク」と主張がされた(甲第15号証の1及び2)。
ウ 日本のメーカーは、「スマイリー・フェイス」は70年代にヒットしており、その後日本で普遍的なマークとして認知されたとして、当時から「日本人は誰でも使って良いとの認識を持っていた」ので、計30社のメーカーが「スマイリー・フェイス」を使用した商品を製造・販売していた(甲第16号証)。
一方、当時の日本の「登録商標権者」は、そのような認識から「登録商標権」を放棄していた。
エ そのような事態にメーカーは、反発し、驚き、混乱が生じた(甲第15号証)。
オ 被請求人代理人(イングラム社)が後日、上記エについて報道した「朝日新聞社」を提訴したが、後日和解した。
カ その当時、「FM東京」の出演者が被請求人について「詐欺グループ」と発言し、被請求人が提訴して一審(東京地裁)で勝訴、平成12年1月19日に二審(東京高裁)で敗訴した。その判決で被請求人は、「著作権を所有していない」「詐欺の様相」と断定された(甲第17号証及び甲第18号証)。
キ 「日本経済新聞社」は、平成10年3月24日、被請求人の「広告が虚偽」であったことを認め、謝罪同然の文書を「ハーベイ・ボール」の弁護士に提出した(甲第19号証)。
ク 被請求人が平成9年2月10日付「日本経済新聞」に広告し、所有していると主張した「登録商標権」もその登録番号を見る限り、株式会社グンゼの権利である事が判明した(甲第20号証)。
ケ 被請求人が、新聞へ広告掲載した30社の名前が判明している(甲第21号証)。
コ 被請求人は、「スマイリー・フェイス」の正式な権利を所有していない所謂「商標ブローカー」の立場である。
(7)「スマイリー・フェイス」のボランティア活動
ア アメリカ本国で1999年10月1日、第1回「ワールド・スマイル・デイ」が「ウスター市」で開催された。その目的は、「スマイルを世界平和のシンボルとする」である。現在は毎年10月の第一金曜日を期日とし、10年(10回)を重ね、全米で大きく報じられてその存在を認められている(甲第14号証)。
イ 「スマイリー・フェイス」を全米、日本、全世界に普及させる為に「スマイル名誉大使」制度を発足し、会長に「ハーベイ・ボール」の息子であり現在の「ハーベイ・ボール・ワールド・スマイル財団」(2001年6月設立)の会長である「チャールズ・ボール」(マサチューセッツ州弁護士)が就任し、「米国担当」としてゴルフの「ジャック・ニクラウス」、「アジア担当」として俳優の「ジャッキー・チェン」、「ヨーロッパ担当」としてモナコ公国「アルベール2世大公」が就任している。
全世界で1,000名の「スマイル名誉大使」が就任し、それぞれの国で活動している(甲第23号証)。
フランスでは「ブリジット・バルドー」「シャルル・アズナブール」「フランシス・レイ」等が就任している。それらの活動資金は、全て様々な企業から提供されている(甲第24号証)。
ウ 日本国内での上記活動は、「名誉会長」に「舛添要一参議院議員」(大臣就任の為一時辞任)が就任し、「名誉副会長」に「愛川欽也」「朝丘雪路」「篠沢秀夫」「児玉清」等が就任している。500人の「名誉スマイル大使」が身近にスマイルを広める目的で活動している(甲第25号証)。
エ その活動は、「ユニセフ」との共同事業が多く、寄付を行っている。
請求人は、「ユニセフ」から「感謝状」を得ている(甲第26号証)。
オ 2004年7月、「原宿・竹下通り商店街」共同で「夏休みの青少年の健全育成」を目的に「スマイル・タウン」イベントが行われ、原宿警察署、地元小中学校PTAから協力を得て成果を上げた。
そのイベントには多数「著名人」が参加し、「スマイル・パレード」は、マスコミにも大きく取り上げられた(甲第27号証)。
カ 「スマイリー・フェイス」は、多数の有名人から成る「名誉スマイル大使」によってテレビ出演が何回にも及び、テレビを通して日本国民へ「スマイリー・フェイス」のアピールがなされた(甲第28号証)。
キ 「スマイリー・フェイス」は、日本の雑誌での商品プレゼント等を通して「スマイリー・フェイス」を広める事と、ボランティア活動への参加をPRした(甲第29号証)。
ク 平成15年、若者に人気がある歌手グループ「V6」のメンバーが出演したテレビドラマで、その登場人物に「スマイリー・フェイス」の商品を着用させて、テレビを通して「スマイリー・フェイス」をアピールする啓蒙活動を行った(甲第30号証)。
ケ 「スマイリー・フェイス」は、今や日本では「ボランティア活動」の代表となっており、「スマイルを絶やさない」と家庭での子供への教育の一環となり、「スマイルで感謝」の運動が各地で広げられている。
その結果、日本では子供からお年寄りまで「スマイリー・フェイス」を知らない人はおらず、それは請求人関連の「ハーベイ・ボール」の権利に基づいたものが根底であることは明らかである。
このようなボランティア活動は、国内で「政財界人」はもとより、「文化人」「ジャーナリスト」「芸能人」「スポーツ選手」等の分野の人々が賛同して協力している。
また、世界的にも「モナリザ以来の笑顔」として知らない人はいない程有名である。
しかし、それに対して被請求人との関連は全く知られておらず、被請求人自身がそれについて努力したことも全くない。
逆に「スマイリー・フェイス」を商売の道具として、各国で「商標登録」を繰り返している人物である。そのような被請求人のビジネスの手法については、「日本経済新聞」(甲第15号証の2)で被請求人自ら語っており、各国で商標登録を行い、日本国内での請求人の行為と同様のことを行っていたらしく、同新聞広告で、「既に世界65カ国で商標登録」と語っている。
日本には独自の「商標登録制度」があるとしても、このような人物の出願商標に登録を認めたこと自体、適切であったとは思えない。
コ 「ハーベイ・ボール」の「スマイリー・フェイス」に関するホームページ(日本版)(http://www.smileyface-jp.com)を提出する。これによって10年間継続して日本国民に対する啓蒙活動を行っている(甲第31号証)。
サ 「ハーベイ・ボール」の「スマイリー・フェイス」に関するホームページ(米国版)を提出する(甲第32号証)。
シ 「ハーベイ・ボール・ワールド・スマイル財団」の「機関誌」を提出する(甲第33号証)。
(8)アメリカでの「スマイル論争」について
ア 「スマイリー・フェイスは誰のものか」として、1998年7月1日にアメリカで有名な経済紙「ウォール・ストリート・ジャーナル」が口火を切って全米を巻き込んでの論争があった。その当時全米で1,000紙以上の新聞に掲載された記事を提出する(甲第34号証)。
イ そして最終的に被請求人代表者「フランクリン・ルフラーニ」(ニコラ・ルフラーニの父)は、1998年8月に週刊誌「PEOPLE」で「自分はスマイリー・フェイスを創作・著作したことは無く、単に登録したに過ぎない」と証言した(甲第35号証)。
このことは、前述の日本の「東京高裁」(平成11年(ネ)第5027号事件)における平成12年1月19日付の「被請求人は著作権を有していない」という判決を裏付けるものである。
以上の事実から、被請求人は、「本件各商標を創作・著作したことは無い」と証言したことになる。即ち本件各商標は本来「ハーベイ・ボール」の著作物(米国郵政公社の「記念切手」に選ばれた事実が証明している)であるものを被請求人が剽窃し、日本国内で勝手に「商標登録」したに過ぎない。
被請求人は、世界各国に「スマイル」の商標登録を行い、その国のメーカーや小売業者から「知的財産権」を利用して金銭を要求することは容認出来ない。
ウ その為、アメリカ国内で「スマイリー・フェイス」について「ハーベイ・ボール」の創作・著作と結論付けられ、認識されたものとなっている。このことがアメリカ国内での「スマイリー・フェイス」についての決定的な認識とされている。これによって被請求人の権利は主張出来ない。
(9)「スマイリー・フェイス」の法律的根拠
ア 平成12年7月、日本国内での「スマイリー・フェイス」の商標権について、請求人が「第16類」(文房具類)で株式会社インセンティブ(以下「インセンティブ社」という。)に対して商標権を有していることを理由に、不法に日本国内で製造・販売されている「スマイリー・フェイス」商品について「東京地裁」に「商品販売差止」の請求(平成12年(ヨ)第22114号仮処分事件)を行ったところ、平成13年10月25日に「禁止権が無い」と判断された等の経緯がある(甲第36号証)。
同仮処分ではインセンティブ社より「日本国内では知らない人は誰もいない普遍的テーマであって、商標登録出来ないものである」との意見が出された。その時の相手方証拠を提出する。
これにより、被請求人が本件各商標登録を行う前に、日本国内で「スマイリー・フェイス」が一般的であったことが判る。
インセンティブ社の主張の要旨は、次のとおりである。
(ア)「スマイリー・フェイス」について、被請求人が「類似商標」を登録した平成10年頃には多くの「スマイル」の「登録商標」が存在していた(甲第37号証)。
(イ)「スマイリー・フェイス」について、被請求人が「類似商標」を登録した平成10年頃には多くの雑誌で「スマイル」が紹介されていた(甲第38号証)。
(ウ)「スマイリー・フェイス」について、被請求人が「類似商標」を登録した平成10年頃には多くの企業が「スマイル」の商品の製造・販売をしていた(甲第39号証)。
イ 同時に平成12年、「大阪地裁」で商標権侵害として株式会社サンメールに対して「販売差し止め」と損害賠償請求(平成12年(ワ)第5986号事件)をしたが、その前に「東京地裁」の判断もあり、その見解が援用され、「禁止権が無い」と判決を得た経緯もある。
その「判決」には多くの条件が付けられていたが、10年前の事で、その後請求人等の努力により、日米で「スマイリー・フェイス」が社会的に認知され、ボランティア活動も多く行われ、アメリカでも「ハーベイ・ボール」の創作権・著作権が認められており、状況が大きく変わっていると思われるので法的判断も請求人に有利なものになると確信している(甲第40号証及び甲第41号証)。
これまで説明したように、本件各商標は、無効と判断されることを求める。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を次のように述べた。
(1)本件各商標と引用商標について
(ア)本件各商標について
本件各商標は、太線で描かれた正円図形内に、上端から全体の高さの4分の1程度のところの中央よりやや左側に黒塗り縦長楕円形(縦横比2:1)をこれと左右対称位置の右側に下向きの横長の弧線を右向松葉状に描き、これら図形の下に、外輪郭を表す円の下半分の曲線に沿うように描かれた中心半径約150度で右上・左上の両端上がりの円弧状の深い弧線と(円周の約40%分の長さで両端は全体の高さの2分の1の位置)、その両端に楕円状の図形(左端)と平たい三角形状の図形(右端)を描いてなるもので、全体としては一見して、ウインクした人の笑顔をデフォルメし、簡潔的・印象的に表現したものと認識されるものである。
(イ)引用商標について
請求人は、請求の理由において「『ハーベイ・ボール・ワールド・スマイル財団』及びその関係団体が使用する『スマイリー・フェイス』は、当該財団及びその関連団体に係る商品又は役務を表示するものとして、日本国内又は外国における需要者間に広く認識されている」と主張しているが、これよりは、請求人が本件各審判の請求の根拠として引用する商標は括弧書きで示された「スマイリー・フェイス」という文字商標なのか、それとも、いわゆる笑顔のマークの範疇に属する図形のことなのかが判然としない。また、これに続けて「本件各商標は、他人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして、日本国内又は外国における需要者間に広く認識されている商標と同一又は類似のものであって」と述べているが、本件各商標は請求人に係る一体どの商標と同一又は類似であるのかについて、個別具体的には一切示されていない。
なお、本件各商標がウインクした人の笑顔をデフォルメした図形よりなるものであること、請求人提出の各証拠には度々笑顔のマークが登場していることより、請求人は「ハーベイ・ボール」が創作したと主張する笑顔のマークを本件各審判請求の引用商標としていると若干ながら推察できるから、そのように取り扱うこととする。
この請求人が引用するとおぼしき笑顔のマークは、例えば甲第3号証の記載によれば、正円図形内に、上端から正円図形の全体の高さの5分の1程度のところの左右対称の位置に黒塗りの縦長楕円形の点を2つ並べ(両目の間隔は直径の約5分の1とかなり狭い)、この2つの縦長楕円形の下に、両端部に黒塗りの潰れた楕円を配する右上・左上の両端上がりの楕円状の鋭角な弧線(弧の下部は下端から高さの4分の1のところに、両端部分は下端から全体の高さの半分からやや上程度に位置する)を描いた図形を表してなるものである。
(ウ)本件各商標と引用商標の類否について
本件各商標は、引用商標と比べ、特に向かって右側の目の形状に特徴があるものであって、全体としてウインクをしている笑顔をモチーフにし、またそのように認識されるものである。一方、引用商標の両目は共に、全体の構成に比べかなり小さい縦長楕円形であって、まるで「点」のように表されている。本件各商標及び引用商標のような極めて簡潔な構成にあっては、こうした構成要素のうち一又は二以上の相違が、商標全体の視覚的印象に与える影響は大きいものであるから、本件各商標と引用商標とは互いに相紛れるおそれのない、非類似の商標である。
(2)引用商標の周知・著名性について
(ア)請求人は、請求の理由(3)において、「『黄色い顔に小さい目』で世界的に有名な『スマイリー・フェイス』は、1963年末に米国マサチューセッツ州ウスター市在住の『ハーベイ・ボール』によって創作・著作された」と述べているが、仮に「ハーベイ・ボール」が「スマイリー・フェイス」なるものの創作者・著作者であるとしても、そのことから直ちに引用商標の笑顔のマーク自体が周知・著名であることにはならない。なお、引用商標が黄色に塗りつぶされた色彩を有するものであるならば、なおさら本件各商標とは類似しないことになる。
(イ)請求人は、請求の理由(4)アにおいて、「『スマイリー・フェイス』の日本での始まりは、1970年初めに『ニコニコ・マーク』『スマイル・マーク』『ラブピース』として大ブームがあり(中略)『サンスター文具』は、それによってビルを建てたと言われている」「その当時の『サンスター文具』の関係者が、自分たちが(中略)米国の『スマイリー・フェイス』(中略)のブームを見て、日本で流行を作ったと専門誌等で多く証言している」と述べ、甲第2号証を提出している。しかしながら、これら記述は1970年代における笑顔のマークのブームに関する記述であって本件各商標の出願時を含む登録査定時点における請求人の引用商標自体の周知・著名性に係る事情を表したものではない。しかもこれら記述は、請求人の引用商標とは何ら関係のない、サンスター文具社のオリジナルデザイン(60頁前半(通し頁9頁)の笑顔のマークについての記述であるから、請求人の引用商標自体の周知・著名性とは全く関係のないものである。
また、請求の理由(5)においては、「ハーベイ・ボール」が「スマイリー・フェイス」なるものの創作者であることや、マサチューセッツ州の知事が「『スマイリー・フェイス』は『ハーベイ・ボール』氏の創作と明言」(甲第3号証)と紹介されているが、仮に万が一これら記載が事実だとしても、このことと請求人の引用商標自体の周知・著名性とは全く関係のないものである。
(ウ)請求人は、請求の理由(5)において「スマイリー・フェイス」なるものが、「ハーベイ・ボール」によって1963年末に創作され、氏の偉業はその後「ウスター市」に取り上げられ、1996年7月10日にウスター市市長により「スマイリー・フェイス」が1963年に「ハーベイ・ボール」によって創作されたことが公認された旨を述べ、甲第4号証ないし甲第13号証を提出している。しかし、米国の一都市に過ぎないウスター市の市長の単なる宣言(甲第4号証)、ウスター博物館での展示コーナーでの紹介文(甲第5号証)、マサチューセッツ州知事「ジョン・ケリー」氏による1998年の「『スマイリー・フェイス』は『ハーベイ・ボール』氏の創作であると明言」との請求人作成のものと思われる資料(甲第6号証)、アメリカ郵政公社による1998年前後と思われる切手キャンペーン(甲第7号証)、94年に制作された映画「フォレスト・ガンプ」の中で「スマイリー・フェイス」が「70年代アメリカを代表するイメージとして紹介された」事実(甲第8号証)、「ハーベイ・ボール」の死亡記事(甲第9号証ないし甲第11号証)、1994年及び1997年に米国のテレビ番組で放映されたものと思われるが「アメリカの『公式ビデオ』に70年代の大きな話題として『スマイリー・フェイス』(中略)が取り上げられた」事実(甲第12号証)は、仮にそれら内容の通りの事実があるとしても、それらは本件各商標の出願時を含む登録査定時点における請求人の引用商標自体の周知・著名性に係る事情を表したものではない。
なお、甲第5号証の後半(通し頁42頁及び43頁)にかけて、「ハーベイ・ボール」の創作に係る「スマイリー・フェイス」なるもののデザインについて述べられているが、それによれば氏の創作したデザインは「完全な円形の輪郭に僅かに曲がった口を持ち、上がった口の右端は左端よりも厚く長い。目は円形ではなく垂直に並んだ小さな楕円形で、右目がやや左目よりも大きい。オリジナルのスマイリーは明るく鮮やかな黄色である」とのことであるが、本件各審判請求に係る請求人による引用商標の態様がこの通りの態様を想定しているのであれば、これと本件各商標は色彩や目及び口の態様において全く相違するものである。
また、「ハーベイ・ボール」が2001年4月12月に死去した国内主要新聞等における報道(甲第9号証)においてはそれぞれ、「黄色の地に黒で目と口だけを点と曲線で描いた丸い笑顔のデザインを・・・」(産経新聞)、「黄色の丸い顔に単純な線でにっこり笑った・・・」(毎日新聞)、「黄色の笑顔マークを・・・」(朝日新聞)、「黄色の丸い顔に単純な線でにっこり笑った口と目をあしらった・・・」(日本経済新聞)等と記述されているが(そもそもこれら記事の配信元はAP通信、時事通信、共同通信の3社のいずれかによる配信記事をそのままに近い形で掲載しているに過ぎないので、おのずと内容は酷似している)、それらによれば氏の創作したデザインは「黄色の地」「黄色の丸い顔」「黄色の笑顔マーク」であることが伺われるが、本件各審判請求に係る請求人による引用商標の態様がこの通りの態様を想定しているのであれば、これと本件各商標は色彩において全く相違するものであることを念のため述べておく。
最後に、甲第13号証については、単に「スマイリー・フェイスを世界平和の礎として」との目標の下に行われているとおぼしきイベントの紹介記事であって、請求人の引用商標が周知・著名であることを何ら証明するものではないし、請求の理由の(5)シに述べられた請求人の主張も、請求人の引用商標の周知・著名性の立証とは何ら関係がない事柄である。
(エ)以上のとおり、請求の理由(3)ないし(5)及び甲第1号証ないし甲第13号証からは、請求人の引用商標が周知・著名であることは全く明らかにされていない。仮に1963年に「ハーベイ・ボール」によって創作された「スマイリー・フェイス」がある程度知れ渡っているとしても、その「スマイリー・フェイス」が、誰のどのような業務に係る商品又は役務を表示するものとして周知・著名な標章であるのかが、判然としない。本件各審判請求については、請求人は、実際に商標を使用している商品・役務(もちろん、実際に取引の対象となっているもの)はおろか、それら商品・役務の販売高や販売量、営業の規模を明らかにする具体的資料の類いも一切提出しておらず、請求人の引用商標の周知・著名性を認めるには相当の無理がある。
(3)本件各商標が商標法第4条第1項第19号に該当しないことについて
同号は、日本国内又は外国で周知・著名な商標であること、この周知・著名商標と出願商標が同一又は類似の商標であること、出願商標が不正の目的をもって使用するものであること、以上の要件を出願商標が具備している場合には、出願商標が登録されない旨規定している。
そこで、本件各商標が、上記各要件を具備するか検討するが、上記(2)(ウ)にも述べたように、そもそも本件各商標と請求人の引用商標とは非類似である。また、請求人提出の各証拠よりは、ウインクした人の笑顔をデフォルメした本件各商標が、他人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標と同一又は類似の商標であるとも到底認められないものである。つまり、このことよりして、本件各商標は商標法第4条第1項第19号には該当しないものである。
(ア)被請求人は、1971年に自らが創作した、所謂スマイルマークの範疇に属する笑顔のマークについて、1971年から自らフランスで商標登録を行っており、それに基づいてフランスのみならず多くの国でライセンスビジネスを行ってきた。そして、他人に使用許諾を与える自らの独創に係る商標を我が国でも保護するため、平成8年から自己のスマイルマークの商標登録出願を始めたのである。そして、これまで一貫して変化を加えなかった自己のスマイルマークについて、向かって右側の目を松葉状に描き、一見してウインクした人の笑顔を表す外観の図形を新たに創作し、本件各商標登録出願に至ったものである。つまり、自己の創作物を自らの名義で商標登録出願したのであるから、こうした被請求人のごく普通の行為が不正の目的をもって使用する意図があったと非難されるいわれはない。
(イ)請求人は、請求の理由(6)において、被請求人の所謂スマイルマークの範疇に属する商標についての権利主張の是非について述べているが、そもそも請求人提出の甲第14号証ないし甲第22号証においては、ウインクした人の笑顔をデフォルメした本件各商標は一切登場していない。
なお、これら各甲号証で述べられた諸事実について、本件各審判請求はこれら事実の正否を争う場ではなく、また、すでに10年前の事情であって、被請求人としてもそれら事実確認をとることが難しい。しかしながら、請求人は、請求の理由(6)によって被請求人の本件各商標の出願における不正の目的について立証しようと試みているようであるから、請求の理由(6)における請求人の主張及び甲第14号証ないし甲第22号証について、以下簡単に述べる。
(ウ)請求人は、請求の理由(6)アにおいて、「被請求人は全世界で商標登録を行い、多額の利益を上げている所謂『商標ブローカー』であると紹介された『専門誌』が多く存在する」と述べ、甲第2号証及び甲第14号証を、“多くの”専門誌の記事として提出している。しかし、それら記事はすでに10年以上前の内容に基づくものであるし、記事内容を精読しても、ウインクした人の笑顔をデフォルメした本件各商標がどういった不正の目的で使用するために採択・登録出願されたか、どのような不正の目的をもって使用されたか、等についての直接・間接の記載が全く見当たらない。また、これら記事自体は、極めて主観的な観点から書かれたものであり客観的事実というものが一切示されておらず、これら“多くの”専門誌の記事のみをもってして、ウインクした人の笑顔をデフォルメした本件各商標の出願における不正の目的は明らかにされていないし、被請求人としてもこれら事実確認が現在では難しく、本件各商標の登録に係る本件各審判請求におけるこの証拠物件は青天の霹靂である。また、当然のことながら、本件各商標については、過去に類似のマークが取引の場において一切使用されていなかったことから、被請求人としては出願に至ったものである。
(エ)請求の理由(6)イにおいては、「国内代理人『イングラム社』と共に記者会見を行い、自分達が『スマイリー・フェイス』の『著作権』と『商標権』を所有していると宣言・・・」と述べ、甲第15号証を提出しているが、これらは被請求人商標の当時の日本での管理会社であるイングラム社主導で行ったPR活動についてのものであって、本件各商標の出願時及び登録時とは時を異にするばかりか、本件とは態様が異なるマークについてのPR活動であるから、本件各審判請求とは全く事案が異なるものである。また、請求の理由(6)ウにおいて甲第16号証として提出された朝日新聞の1997年11月14日付記事についても、掲載された写真からすると、記事の対象となっている所謂スマイルマークは本件各商標とは態様の異なったものであり、また、記事本文中においても、イングラム社の我が国における所謂スマイルマークについての権利関係について述べられているに留まるから、被請求人によるウインクした人の笑顔をデフォルメした本件各商標の出願に関する事案とは全く関係のないものである。
(オ)請求の理由(6)カにおいて挙げられた甲第17号証及び甲第18号証については、甲第15号証の1及び甲第16号証中の写真内の所謂スマイルマークについての記事及び東京高裁の判決であると推認できるが、上記述べたように、甲第15号証の1及び甲第16号証中の写真に表された所謂スマイルマークは、被請求人によるウインクした人の笑顔をデフォルメした本件各商標とはその態様が異なるのであるから、本件各商標の出願に関する事案とは全く関係のないものである。また、甲第19号証として提出された日本経済新聞社による回答書及びこれに関連した請求の理由(6)クの主張及び甲第20号証についても、これは甲第15号証の1の広告に記載の所謂スマイルマークに関するものと思われるところであるが、甲第15号証の1に表された所謂スマイルマークは、本件各商標とはその態様が異なるのであるから、甲第19号証、請求の理由(6)クの主張及び甲第20号証についてもやはり、本件各商標の出願に関する事案とは全く関係のないものである。
(カ)請求の理由(6)ケについて、請求人は、「被請求人は上記30社から『権利侵害』と圧力を掛けて、噂によると数億円の金額を受け取っており、一部メーカーから『恐喝的』とさえ言われていた」「それらの30社は強制的に新聞への広告掲載をさせられたので、名前が判明している」として甲第21号証及び甲第22号証を提出しているが、この各証拠からは、ライセンス先リストのタイトルとして「スマイリーライセンシー一覧」と書かれているのみで、ライセンス対象の商標が明確ではないし、各証拠からは、被請求人がそれらライセンシー企業にどのように恐喝的な圧力をかけたのか、30社が強制的新聞への広告掲載をさせられた経緯がどのようなものか、全く不明である。
(キ)以上のとおり、被請求人は、請求人引用商標とは類似しない被請求人自身の独創に係る本件各商標(ウインクした人の笑顔を表した図形)を登録出願したのであり、何ら不正の目的をもって使用するものとして登録出願したものではない。また、請求人の各主張及び各証拠よりは、被請求人の不正の目的を全く立証できていないものである。
(4)請求人のその他の請求の理由について
(ア)請求人は、請求の理由(7)アないしエにおいて、「スマイリー・フェイス」のボランティア活動について紹介し、甲第23号証ないし甲第26号証を提出している。その中で、「スマイル名誉大使」制度が発足した旨述べ、各界の有名人を含む全世界で1,000名がその「スマイル名誉大使」に就任、日本国内においても芸能人等が就任し、「『名誉スマイル大使』が身近にスマイルを広める目的で活動している」と説明している。これら事実は本件各商標の出願の経緯とは一切関係がないものと思われるところであるが、念のため「スマイル名誉大使」「名誉スマイル大使」について、インターネット上の検索エンジン「google」を用いて調べてみたところ、前者については3件のみ、後者についてもわずか46件のみがヒットしたに留まり、いったいこの制度は実在するのか、また実在するとして、どのような活動を行っているのかが全く不明である(そもそも、「身近にスマイルを広める」という目的が何を意味するのか全く理解できない)。また、それら「スマイル名誉大使」「名誉スマイル大使」が何らかの活動を行っている話など、これまで一度も聞いたことがない。また、多数の有名人・著名人が「スマイル名誉大使」「名誉スマイル大使」に就任していることや「ユニセフ」と共同事業を行っていることと、「スマイリー・フェイス」の周知・著名性とは、何の繋がりもない別個の事柄である。
(イ)請求の理由(7)オ及び甲第27号証で示された「スマイル・パレード」については、仮にこうしたパレードが頻繁に行われているならともかく、単に2004年7月29日に1回だけ行われただけのようであるから、多数の「著名人」が参加し(多数といってもたかだか十数名である)、「マスコミにも大きく取り上げられた」(甲第27号証には一切その記述がない)のだとしても、こうした事実は「スマイリー・フェイス」が広く知れ渡っていることを何ら証明するものではない。
(ウ)請求の理由(7)カ及び甲第28号証によると、テレビを通して多数の有名人が「スマイリー・フェイス」をアピールをしたことが分かるが、ここでPR活動がされた図形は本件とは態様が異なるものである。また、PR活動の具体的な内容は示されておらず、「スマイリー・フェイス」自体のPRなのか、「スマイリー・フェイス」を附したTシャツについてのPR活動なのか、それとも帽子についてのPR活動なのかが明らかでない(もちろん、「スマイリー・フェイス」自体のPRなのであれば、商標法の予定する商標の周知・著名性を証明する証拠になり得ない)。
(エ)請求の理由(7)キ及び甲第29号証によると、日本の雑誌での商品プレゼント等のキャンペーンを行ったことが分かる。しかしながら、甲第29号証よりは、Tシャツのプレゼントキャンペーンであることは理解できるが、実際に販売されている商品なのか否かが明らかではないし、また掲載された各写真に映されたTシャツからして、果たしてこのような態様での「スマイリー・フェイス」の使用が、自他商品を識別するための標章としての使用と言えるのかどうか、はなはだ疑問である。
(オ)請求の理由(7)ク及び甲第30号証は、テレビドラマの中の登場人物が「スマイリー・フェイス」の商品を着用(ネクタイ等)している事実を表しているが、だからといって視聴者(つまり商品の需要者・消費者)が、「スマイリー・フェイス」から直ちにネクタイを想起するようになるわけでもないし、逆に、ネクタイから直ちに「スマイリー・フェイス」を想起するようになるわけでもない。したがって、甲第30号証は引用商標の周知・著名性を何ら証明するものではない。
(カ)請求の理由(7)ケにおいて述べられている「ボランティア活動」については、上記でも述べたように、本件各審判の事案や本件各商標それ自体とは何の繋がりもない別個の事柄である。また、請求人は、「日本では子供からお年寄りまで『スマイリー・フェイス』を知らない人はおらず」「世界的にも『モナリザ以来の笑顔』として知らない人はいない程有名である」と述べているが、繰り返すように、本件各審判請求は商標法に基づいて判断されるべきであり、商標法が予定する商標の周知・著名性とは、ある標章が特定の商品又は役務について使用された結果、その商品又は役務について標章が周知・著名となっている場合をいうのである。したがって、例え標章自体が「世界的にも『モナリザ以来の笑顔』として知らない人はいない程有名である」としても、請求人は、引用商標が請求人の業務に係るどの商品・役務について有名なのかを明らかにしていないのであるから、請求人のここでの主張は意味をなさない。
(キ)請求人は、請求の理由(8)として、アメリカでの「スマイル論争」について述べ、甲第34号証及び甲第35号証を提出している。ここでは、「スマイリー・フェイス」の創作者及び著作権の帰属先について述べられているが、そもそも請求人が本件各審判請求の根拠とする商標法第4条第1項第19号は周知・著名な「商標」に対し、出願商標の出願の経緯において出願人の商標の使用に係る不正の目的の有無に基づいて判断されるべきものである。本件については、仮に万一、請求人が引用する「スマイリー・フェイス」は請求人の著作物であるという公的な認定や、そのように断定する裁判例があったとしても、請求人提出の全証拠からは、「スマイリー・フェイス」が商標として使用がされている実績が見当たらず、また、商標として周知・著名であるという事実も見出せないことは上記述べた通りである。請求人は、「本来『ハーベイ・ボール』の著作物(中略)であるものを被請求人が剽窃し、日本国内で勝手に『商標登録』した」と述べているが、商標法第4条第1項第19号に該当するためには、他人の周知・著名な「商標」を剽窃したことが立証されなければならないものである。
なお、請求人は、「被請求人『フランクリン・ルフラーニ』の認識は『商標登録すれば全てが自分の権利だ』とのものである」と断定的に述べているが、被請求人にはそのような認識はなく、「商標登録すれば登録商標は自分の権利だ」程度の、商標法や社会一般の通念に照らしまったく正しい認識しかしていない。むしろ請求人の方こそ、本件各審判請求の全主張及び全証拠からは「『ハーベイ・ボール』が『スマイリー・フェイス』の創作者・著作者であるから、『スマイリー・フェイス』については全て彼(及び財団や請求人)の権利だ」と断定的に述べているのではないか。
(ク)請求人が請求の理由(9)に示す「スマイリー・フェイス」の法律的根拠について、まず、理由(9)ア及び甲第36号証は、対象となる「インセンティブ」社の商標が示されていないため、事実の把握が困難である。また、甲第37号証ないし甲第39号証においては、趣旨としては「スマイル」の商品が平成10年頃には多く紹介、製造・販売されていた、とのことであろうが、本件各商標の出願日は平成18年9月29日、登録日は平成19年4月6日であって、時期を大きく異にするものである。また、このように何らかのキャラクターをあしらった商品は、ブームが長続きしないことは常であるから、この時期の差は証拠能力に大きく影響を与えるものである。なお、念のため述べるが、甲第37号証ないし甲第39号証に掲載された、請求人が言うところの「スマイル」と本件各商標とではその態様が異なるものである。
(ケ)請求の理由(9)イは、8年前の事件であり、請求人は、「状況が大きく変わっていると思われるので法的判断も請求人に有利なものになると確信している」ために、甲第40号証及び甲第41号証を提出したと思われるが、そもそも本件各商標はウインクした人の笑顔をデフォルメし、向かって右側の目の態様において構成上の大きな特徴となっている。したがって、円輪郭・2つの楕円の目・弧線で表された口の態様と思われる商標権の効力についての事案である請求人提出の判決は、本件事案とは異なるものであるし、改めて述べるまでもなく、該判決は、商標権の禁止権の効力が及ぶ範囲について判示するものであって、商標登録の要件に関する本件各審判請求とは事案を異にするものである。
(コ)請求人は、本件各審判請求の主張の根拠として、本件各商標が商標法第3条第1項第6号に該当するとの主張も行っている。なお、請求人は、本件各審判請求の主張の根拠として、商標法第4条第1項第19号も挙げているのだが、この規定は、日本国内又は外国で周知・著名な商標との関係で出願人が不正の目的を有して出願したのか否かを判断することを趣旨としている。つまり、商標法第4条第1項第19号は、強力な識別力を有する周知・著名商標の存在を前提としているのである。
請求人は、本件各商標が商標法第4条第1項第19号に該当すると主張するが、それは請求人が引用商標は周知・著名であると信じるからであろう。言ってみれば、請求人は、自身の主張において引用商標は識別力を有すると暗に述べているのである。つまり、請求人は、引用商標は識別力を有すると信じているのであるから、その引用商標に類似すると主張する本件各商標も識別力を有すると暗に述べているに等しいのである。
にもかかわらず、請求人は、本件各商標について「『需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識すること』は出来ないものであり、本件図形自体は出所識別機能又は独占適応性は有しておらず(中略)商標法3条1項6号により商標登録を受けることが出来ない商標である」と述べているが、商標法第4条第1項第19号を根拠にした請求人の他の主張と併せて考えると、これは完全に矛盾した主張であると言わざるを得ない。つまり、商標法第3条第1項第6号及び第4条第1項第19号を請求の主張の根拠とした本件各審判請求は、その根拠条文において既に論理構成が破綻しており、全体の内容において支離滅裂である。
また、所謂スマイルマークの範疇に属する図形は、あえて証拠として提出するまでもなく、多種多様な構成の商標が数多く商標登録されており、そうした登録状況に鑑み、本件各商標が商標法第3条第1項第6号に該当する理由は全く見当たらない。
(5)まとめ
以上のとおり、本件各商標は、商標法第4条第1項第19号及び同法第3条第1項第6号に違反して登録されたものではない。

第4 当審の判断
本件審判請求に関し、当事者間に利害関係については争いがないので本案に入って判断する。
1 商標法第4条第1項第19号該当性について
(1)本件各商標と引用商標との類否について
(ア)本件各商標の構成態様
本件各商標は、別掲(1)の構成のとおり、黒線により描いた円図形内の上部に、目と思しき小さい黒塗り縦長楕円形を左側に、その右側に松葉状の弧線2本を左端が重なるように並べ、当該円形図形の下半分に、円図形に沿って口と思しき両端上がりの弧線及び口元と思しき当該弧線の両端にある短い棒線を描いた図形からなる。
したがって、本件各商標は、全体として片目をつぶった人の顔「ウインク」をモチーフに、目、口、顔の輪郭をデフォルメしたものと認識されるものであるが、図形のみからなる商標であり、その図形も人の顔を構成する一部の要素である目(左目を閉じている)、口を表現したものであるから、直感的に一定の称呼、観念を生ずるものではないと判断するのが相当である。
(イ)引用商標の構成態様
請求人は、引用する商標を明確にしていないが、その主張及び甲各号証により、別掲(2)の構成からなる標章(甲第3号証(通し頁19頁))及びこれとデザインに多少の差はあるものの、基本的には、顔の輪郭を表す円図形の中に2個の縦長楕円形の小さな点で描かれた目と両端上がりの深い弧線で描かれた口及び当該弧線の両端にある短い棒線で描かれた口元を配置した標章(以下「引用商標)」という。)を引用しているから、以下本件各商標と引用商標とについて判断する。
引用商標は、顔の輪郭と思しき部分については、黒線により描いた円図形で、目と思しき部分については、小さい黒塗りで、縦長楕円形を2つ並べて描いてなる図形で、口と思しき部分については、黒塗りの両端上がりの線で描いたものは、いずれも人の笑顔を簡潔に、かつ、象徴的に表現したものと認識されるが、直ちに「スマイルマーク」の称呼、観念を生ずるものとは認められない。
(ウ)本件各商標と引用商標との比較
本件各商標と引用商標とは、その図形部分における構成要素である、目、口、口元、顔の輪郭において、線の太さ、形状が相違し、目の形状、位置及び間隔、口の位置及び円弧状の曲がり具合等が異なるものである。
さらに、本件各商標と引用商標とは、その構成看者に与える印象の骨格を決定付ける図形要素の1つである目において、看者に異なる印象、記憶を生じさせるものというべきであるから、本件各商標からは、全体として人のウインクを、引用商標からは、全体として、人の笑顔を、簡潔、かつ、象徴的に表現したもとして、その表現内容を異にするものと認識されるから、外観上類似しないものと認められる。
本件各商標と引用商標とは、上記のとおり特定の称呼及び観念を生ずるものとは認められないから、これらについては比較することができない。
そうとすれば、両者は、外観、称呼及び観念のいずれの点においても類似しないものである。
(2)引用商標の周知・著名性について
(ア)事実認定
請求人の提出する証拠(及び主張)によれば、以下の事実が認められる。
(a)米国マサチューセッツ州ウスター市在住の「ハーベイ・ボール」は、1963年に別掲(2)の構成よりなる標章(引用商標)を同市に基盤を置く生命保険相互会社のキャンペーン用シンボルマークとしてデザインしたとされ、1970年代に米国及び我が国において引用商標及びこれとデザインに多少の差はあるものの、基本的には、顔の輪郭を表す丸の中に2個の点で描かれた目と両端上がりの弧で描かれた口を配置した標章(以下これらを「スマイルマーク」という。)が流行した(甲第13号証(通し頁142頁))。
(b)引用商標は、1999年には、米国郵政公社発行の記念切手のデザインに採用され(甲第31号証(通し頁218頁)、甲第33号証(通し頁234頁))、1994年に公開された米国映画「フォレスト・ガンプ一期一会」に登場した(甲第8号証(通し頁56頁ないし58頁))。
(c)1996年7月10日、「ハーベイ・ボール」が75歳の誕生日を迎えるにあたって、ウスター市の市長が、この日を「ハーベイ・ボールの日」と定め、引用商標が「ハーベイ・ボール」の創作であることの宣言書を出した(甲第4号証(通し頁23頁ないし25頁))。
(d)1998年2月28日、マサチューセッツ州「ウスター市」市政150周年記念式典に「ハーベイ・ボール」は「名誉市民」として招かれ、州知事より「スマイリー・フェイス」が「ハーベイ・ボール」の創作であると明言したとされる(甲第6号証(通し45頁及び49頁))。
(e)ハーベイ・ボール・ワールド・スマイル財団(以下「ハーベイ・ボール財団」という。)が「JASS INTERNATIONAL」と契約し、「SMILEY FACE及びそのマーク」を使用して独占的に商品化を行うことを委任したことなどを通知する2001年11月13日付けの宛先を「各位」とするお知らせ文書である(甲第1号証(通し頁1頁及び2頁))。
(f)「ハーベイ・ボール」は、2001年4月12日に死亡し、我が国及び米国の新聞が1970年代に流行したスマイルマークの創作者が死亡した記事として多数報道した(甲第9号証ないし甲第11号証(通し頁59頁ないし93頁))。
(g)「ハーベイ・ボール」の死後、長男の「チャールズ・ボール」氏を中心として、2001年にハーベイ・ボール財団が設立され(甲第33号証(通し頁232頁))、その後、請求人は、ハーベイ・ボール財団から、「SMILEY FACE及びそのマーク」について、独占的に商品化を行うことが委任された。日本での「スマイリー・フェイス」の商品化の事業は収益の一部はハーベイ・ボール財団の活動資金になっている(甲第31号証(通し頁218頁))。
なお、委任されたマークがいかなるものかは不明である。
(h)「ハーベイ・ボール」は、「スマイルを世界平和の礎にする」ことを目的に1999年10月1日にウスター市において、第1回「ワールド・スマイル・デイ」のイベントを行い、「ハーベイ・ボール」の死後もハーベイ・ボール財団により毎年行われている。
なお、財団事務所の経費やイベントの金額は全て日本支部が負担している(甲第13号証(通し頁102頁)、甲第31号証(通し頁185頁))。
(i)ハーベイ・ボール財団は、2004年から上記目的の運動の一つとして米国その他の国々の著名人3000名にスマイル大使の就任を依頼し(甲第33号証(通し頁256:SMILE NEWS2004年冬号 VOL.13)、2004年7月にジャック・ニクラウス氏やジャッキー・チェン氏ら一定の者から賛同を得た(甲第27号証(通し頁169頁)、甲第33号証(通し頁264頁ないし266頁))。
(j)我が国においてもハーベイ・ボール財団日本支部により、「スマイル国民運動」が2002年4月から開始され、著名人の賛同者を得た。「スマイリー・フェイス」に係るバッジなどを身につけ、テレビなどに出演した賛同者もいた(甲第33号証(通し頁240頁ないし242頁、252頁及び253頁)。
(k)ハーベイ・ボール財団日本支部は、2004年7月29日から開催された東京・原宿竹下通り商店会主催の「SMILE TOWN あんしんの街・原宿竹下通り」に協賛し、財団日本支部会長がオープニングセレモニーで挨拶したほか、引用商標のデザインした風船(引用商標の黒線による輪郭はない。)やTシャツが用いられた(甲第27号証(通し頁170頁))。 また、同月20日に原宿・竹下通りに「スマイル・オフィシャル・ショップ」がオープンし、「文具、衣類、食品」を含めた総合的な商品販売をした(甲第33号証(通し頁264頁))。
(l)「ハーベイ・ボール財団」の日本版ホームページ(写し)(甲第31号証(通し頁177頁ないし222頁))には、1枚目には、大きく引用商標が表示され、当該図形の上段には、「スマイリー・フェイスは1963年末に米国人の『ハーベイ・ボール』により制作・著作されました」の文字が書され、当該図形の下段には、「ハーベイ・ボール著作」の文字が書されている(通し頁177頁)。
そして、2枚目及び3枚目には、「1.スマイリー・フェイスの誕生と復活」、「2.ウスター市の歴史博物館と公文書」、「3.マサチューセッツ州ウスター市・市政記念式典」、「4.ワールド・スマイル・デイ」、「5.公式ビデオ」、「6.米国映画『フォレスト・ガンプ』に登場」、「7.アメリカ郵政公社・記念切手」、「8.ハーベイ・ボール氏逝去について」、「9.日本での活動 国民運動」、・・・「11.日本での活動 名誉スマイル大使の活動」、「12.日本での活動 ユニセフの協力」、・・・「15.ハーベイ・ボールワールド財団の成立」、「16.米国 マスコミ報道」、・・・「18.スマイル商品事業展開」のメニューが表示されている(通し頁178頁及び179頁)。
また、35枚目には、「12.ユニセフに協力を始める」、「財団法人日本ユニセフの最新の活動で、特に力を入れているのは、『子供の健康と未来のため』の『教育・福祉・救援活動』です。この活動は、私たちの『ハーベイ・ボール・ワールド・スマイル財団』が目指す『スマイリーにより子供たちに平和を』と一致するものであり、新たに『スマイル国民運動』の一つの大きなテーマとするため、一般企業向けのキャンペーン商品の一部を『財団法人日本ユニセフ協会』に寄付し、その活動をバックアップすることにしました。」、「ハーベイ・ボール・ワールド・スマイル財団ではこの度、一般企業向けの『キャンペーン商品』の開発・展開をはじめます。これは、一般企業が『キャンペーン商品』を一括購入してもらい、企業の社員、その家族、取引先などに無料配布してもらうことで、スマイル国民運動を一層拡大させていこうというものです。各企業の参加が待たれています。」等の記載がある(通し頁211頁)。
さらに、46枚目には、「18.スマイル商品事業展開」、「ハーベイ・ボール・ワールド・スマイル財団の『ワールド・スマイル・デイ』活動を支える大きな基金は『スマイル商品化事業』である。現在は、主に日本で行っており、スマイル・フェイス商品を多くの日本人の方々に提供し多くの支持を受けている。この事業は一般の商品販売とは異なり、アメリカのハーベイ・ボール・ワールド・スマイル財団の『ワールド・スマイル・デイ』の活動を支えるものであり、間接的に世界中に大きく貢献している」、スマイリー・フェース商品化代理人は、『JASS INTERNATIONAL INC.』です。商品化は当社の許可を得てください。」等の記載がある(通し頁222頁)。
(イ)小括
以上のことから、「ハーベイ・ボール」の意志及びその創作物の管理を引き継いだハーベイ・ボール財団が引用商標をシンボルマークとして「スマイルを世界平和の礎にする」ことを目的とする活動を行っていること、そして当該財団等による米国の上記活動について米国ウスター市及びマサチューセッツ州が「ワールド・スマイル・デイ」の取組として協力したことは認め得る。
しかしながら、「スマイルを世界平和の礎にする」という慈善活動というには抽象的な目標の活動であって、また、同市及び同州が主体的に取り組んでいるものとまでは認めることはできないし、米国政府の取組とは到底いえないものである。
そして、「ワールド・スマイル・デイ」のイベントも1999年から毎年1回行われているすぎず、米国の一都市であるウスター市において行われているにすぎないものである。
また、我が国において、当該財団日本支部が、2004年頃に、原宿竹下通り商店会のイベントやエイズ撲滅キャンペーンに協力したことは認められるとしても、短期間で限られた地域のイベント等に協賛したにすぎない。
そして、当該団体の活動が著名人を中心に個人的に賛同を得ていること、テレビ番組の出演者が引用商標をデザインした衣装等を使用していたことが認められるにしても、そのことが直ちに財団の活動及び引用商標がそのシンボルマークであるとして広く知られているとは認めることができない。
そのうえ、米国及び日本における上記の活動が新聞等で報道されたとする証拠の提出もなく、日本支部等が発行するニュース「SMILEY NEWS」についても、スマイル大使として著名人の賛同を得ていること、ウスター市において「ワールド・スマイル・デイ」のイベントを行ってきていることはいえるとしても、それ以外に当該団体の活動の内容を周知させるものはほとんどなく、しかも、その発行の回数、部数、配付先等の発行形態は不明であるから、引用商標が当該財団の進める「スマイルを世界平和の礎にする」運動を表示するものとして、我が国において、広く知られているものとは認めることができない。
さらに、「ハーベイ・ボール」の死去を伝える新聞報道についても、「スマイルマーク」が特定の者の出所を表示するものとして知られているとして報道されたものではなく、またその報道もほとんどが2001年の死亡時の一時期にされたにすぎない。
そして、ハーベイ・ボール財団日本支部が引用商標をイベントに使用したことは認められ、商品プレゼントの広告がなされたことは認められるが、他に商品に付して使用された事実は認められない。そして、ハーベイ・ボール財団又はハーベイ・ボール財団から使用許諾を受けている者が、「スマイルマーク」の商品をいつから、どの程度販売したか等の販売実績について何らの証拠の提出もなく、また、取引者・需要者が当該商品が、ハーベイ・ボール財団又はハーベイ・ボール財団から使用許諾を受けている者の業務に係る商品であると認識していたとする証拠の提出もない。
また、「ハーベイ・ボール財団」の日本版ホームページについては、日本支部等が発行するニュース「SMILEY NEWS」の内容と一致するとしても、掲載時期、更新回数、アクセス回数等が不明であるから、これによってどの程度、本件各商標がその指定商品に使用して日本国内の取引者、需要者間において広く認識されるに至ったかは明らかにされていない。
さらに、請求人は、米国郵政公社発行の記念切手のデザインに採用され、1994年に公開された米国映画「フォレスト・ガンプ一期一会」に登場したとしても、本件各商標の登録査定時において、引用商標が米国において平和のシンボルマーク若しくは慈善活動に使用され、広く知られているとする証左は見あたらない。
また、ハーベイ・ボール財団の活動は財団が著名人に働きかけ、一定の賛同を得ていることは認められるものの、一個人としての賛同にすぎないし、それらの賛同者が長年にわたって何らかの活動を行っている証拠もなく、また多数の企業がその慈善活動のために資金を提供しているという証拠もなく、結局、請求人の提出する証拠によっては、米国において、一財団としての活動の事実があるというにすぎず、引用商標が当該活動を表示するシンボルマークとして知られているとするような証拠はないから、請求人が引用商標の著名性を主張するがこの主張は採用できない。
その他に、引用商標が周知、著名であることを証する証左の提出はない。
したがって、引用商標がハーベイ・ボール財団等の業務に係る商品等を表示するものとして広く認識されているものと認めることができない。

(3)不正の目的について
商標法第4条第1項第19号における「不正の目的」とは、不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的であり、図利目的・加害目的をはじめとする取引上の信義則に反するような目的と解される(特許庁編「工業所有権法逐条解説」)が、商標法が使用許諾制度を採用していることからすれば、被請求人が、「スマイルマーク」商標の使用を許諾し、使用料を得ることが必ずしも不正の目的に該当するとはいえない。
そもそも、本件商標と引用商標とは、上記1(1)(ウ)のとおり、別異の商標であるが、請求人が「被請求人が、日本国内で、過去に行った不正な行為」として挙げる事実は、人の笑顔を描いた図形に関するものであるから、本件商標とは無関係であること明らかである。
したがって、被請求人が日本国内で過去に行った行為を理由として、「不正の目的」に該当するという請求人の主張は前提において誤りがあると言わなければならない。

(4)まとめ
上記(1)ないし(3)で認定、判断したとおり、本件各商標と引用商標とは、同一又は類似の商標ではなく、引用商標がハーベイ・ボール財団及びその関係者の業務に係る商品を表示する商標として広く知られているとは認められないし、本件商標を不正の目的をもって登録出願したとはいえない。
したがって、本件各商標は、商標法第4条第1項第19号に該当しない。

2 商標法第3条第1項第6号該当性について
本件各商標は、別掲(1)の構成のとおり、顔の輪郭を表す円輪郭内の上部左側に小さい黒塗り縦長楕円形を、その右側に松葉状の弧線2本を左端が重なるように並べた目と円弧状の口を配した図形であるから、自他商品の識別力を有するものであり、請求人は本件各商標が識別力がないとする具体的な理由を述べていないし、何ら証拠の提出もないと言わなければならない。
したがって、本件各商標は、商標法第3条第1項第6号に該当しない。

3 まとめ
以上のとおり、本件各商標は、商標法第4条第1項第19号及び同法第3条第1項第6号に違反して登録されたものではないから、同法第46条第1項の規定により、登録第4952253号の指定商品中、請求に係る第25類並びに登録第5039288号の指定商品中、請求に係る第18類、第21類、第28類及び第30類についての登録を無効とすべきでない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲
(1)本件各商標(登録第4952253号商標、登録第5039288号商標)


(2)引用商標(色彩については原本を参照)


(3)無効請求に係る商品及び役務の区分
(ア)登録第4952253号に係る第25類
「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,仮装用衣服,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」
(無効2008-890123)

(イ)登録第5039288号に係る第18類
「かばん金具,がま口口金,皮革製包装用容器,愛玩動物用被服類,かばん類,袋物,携帯用化粧道具入れ,傘,ステッキ,つえ,つえ金具,つえの柄,乗馬用具,皮革」
(無効2008-890125)

(ウ)登録第5039288号に係る第21類
「デンタルフロス,ガラス基礎製品(建築用のものを除く。),かいばおけ,家禽用リング,魚ぐし,おけ用ブラシ,金ブラシ,管用ブラシ,工業用はけ,船舶ブラシ,家事用手袋,ガラス製又は陶磁製の包装用容器,なべ類,コーヒー沸かし(電気式又は貴金属製のものを除く。),鉄瓶,やかん,食器類(貴金属製のものを除く。),携帯用アイスボックス,米びつ,食品保存用ガラス瓶,水筒,魔法瓶,アイスペール,泡立て器,こし器,こしょう入れ・砂糖入れ及び塩振り出し容器(貴金属製のものを除く。),卵立て(貴金属製のものを除く。),ナプキンホルダー及びナプキンリング(貴金属製のものを除く。),盆(貴金属製のものを除く。),ようじ入れ(貴金属製のものを除く。),ざる,シェーカー,しゃもじ,手動式のコーヒー豆ひき器及びこしょうひき,じょうご,すりこぎ,すりばち,ぜん,栓抜,大根卸し,タルト取り分け用へら,なべ敷き,はし,はし箱,ひしゃく,ふるい,まな板,麺棒,焼き網,ようじ,レモン絞り器,ワッフル焼き型(電気式のものを除く。),清掃用具及び洗濯用具,アイロン台,霧吹き,こて台,へら台,湯かき棒,浴室用腰掛け,浴室用手おけ,ろうそく消し及びろうそく立て(貴金属製のものを除く。),家庭用燃え殻ふるい,石炭入れ,はえたたき,ねずみ取り器,植木鉢,家庭園芸用の水耕式植物栽培器,じょうろ,愛玩動物用食器,愛玩動物用ブラシ,犬のおしゃぶり,小鳥かご,小鳥用水盤,洋服ブラシ,寝室用簡易便器,トイレットペーパーホルダー,貯金箱(金属製のものを除く。),お守り,おみくじ,紙タオル取り出し用金属製箱,靴脱ぎ器,せっけん用ディスペンサー,花瓶及び水盤(貴金属製のものを除く。),風鈴,ガラス製又は磁器製の立て看板,香炉,化粧用具,靴ブラシ,靴べら,靴磨き布,軽便靴クリーナー,シューツリー,コッフェル,ブラシ用豚毛」
(無効2008-890126)

(エ)登録第5039288号に係る第28類
「スキーワックス,遊園地用機械器具(業務用テレビゲーム機を除く。),愛玩動物用おもちゃ,おもちゃ,人形,囲碁用具,歌がるた,将棋用具,さいころ,すごろく,ダイスカップ,ダイヤモンドゲーム,チェス用具,チェッカー用具,手品用具,ドミノ用具,トランプ,花札,マージャン用具,遊戯用器具,ビリヤード用具,運動用具,釣り具,昆虫採集用具」
(無効2008-890127)

(オ)登録第5039288号に係る第30類
「アイスクリーム用凝固剤,家庭用食肉軟化剤,ホイップクリーム用安定剤,食品香料(精油のものを除く。),茶,コーヒー及びココア,氷,菓子及びパン,調味料,香辛料,アイスクリームのもと,シャーベットのもと,コーヒー豆,穀物の加工品,アーモンドペースト,ぎょうざ,サンドイッチ,しゅうまい,すし,たこ焼き,肉まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,べんとう,ホットドッグ,ミートパイ,ラビオリ,イーストパウダー,こうじ,酵母,ベーキングパウダー,即席菓子のもと,酒かす,米,脱穀済みのえん麦,脱穀済みの大麦,食用粉類,食用グルテン」
(無効2008-890128)


審理終結日 2009-09-08 
結審通知日 2009-09-11 
審決日 2009-09-28 
出願番号 商願2006-91003(T2006-91003) 
審決分類 T 1 12・ 16- Y (Y21)
T 1 12・ 222- Y (Y21)
最終処分 不成立 
前審関与審査官 石塚 利恵加園 英明 
特許庁審判長 井岡 賢一
特許庁審判官 鈴木 修
内山 進
登録日 2007-04-06 
登録番号 商標登録第5039288号(T5039288) 
代理人 太田 恵一 
代理人 金塚 彩乃 
代理人 唐牛 歩 
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