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審決分類 |
審判 全部申立て 登録を維持 X0912 審判 全部申立て 登録を維持 X0912 審判 全部申立て 登録を維持 X0912 |
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管理番号 | 1205385 |
異議申立番号 | 異議2009-900106 |
総通号数 | 119 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標決定公報 |
発行日 | 2009-11-27 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2009-03-19 |
確定日 | 2009-10-05 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 登録第5187616号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 登録第5187616号商標の商標登録を維持する。 |
理由 |
第1 本件商標 本件登録第5187616号商標(以下「本件商標」という。)は、「ELP」の欧文字を標準文字で書してなり、平成20年4月21日に登録出願、第9類「リチウム電池」及び第12類「電気自動車並びにその部品及び付属品」を指定商品として、同年12月12日に設定登録されたものである。 第2 引用商標 登録異議申立人(以下「申立人」という。)の引用する登録第561129号商標(以下「引用商標」という。)は「ELF」の欧文字を書してなり、昭和34年8月20日に登録出願、第20類「車輛、船舶、その他運搬用機械器具及びその各部」を指定商品として、昭和35年12月10日に設定登録され、その後、3回にわたり商標権の存続期間の更新登録がなされ、さらに、指定商品については、平成13年12月26日に第12類「船舶並びにその部品及び附属品(「エアクッション艇」を除く。),エアクッション艇,航空機並びにその部品及び附属品,鉄道車両並びにその部品及び附属品,自動車並びにその部品及び附属品,二輪自動車・自転車並びにそれらの部品及び附属品,乳母車,人力車,そり,手押し車,荷車,馬車,リヤカー 」とする指定商品の書換登録がなされ、現に有効に存続しているものである。 第3 登録異議の申立ての理由について 1 「ELF」の周知・著名性について (1)申立人の創業は1916年で、前身の株式会社東京石川島造船所と東京瓦斯電気工業株式会社が自動車製造を企画したことに始まり、国内の自動車メーカーの中では最古の歴史を誇っている。1922年にはウーズレーA9型国産第1号乗用車を完成させた。1934年には商工省標準形式自動車を伊勢神宮の五十鈴川に因んで「いすゞ」と命名し、これが申立人の社名の由来となっている。その後、圧倒的な技術力でディーゼルエンジン技術の開発に中核的な役割を担い、「ディーゼルのいすゞ」の名声を不動のものとしていった。1949年には、商号を現在の「いすゞ自動車株式会社」に変更し、トラックを精力的に開発・生産し、戦後の復興や、高度経済成長を支えていった。 (2)朝鮮戦争による特需ブームを迎えるとトラック需要はうなぎ登りに増大し、申立人のディーゼル車の販売台数は急上昇していった。そのような中、1959年、現在も小型トラックナンバーワンを誇る「ELF」の販売が始まった。「初代ELF」の誕生である。 「ELF」の名は、「小さい妖精、いたずら者」の意味から、力があり、小回りのきく機動性の高さを表している。この「初代ELF」は、小型トラック初のCOE(フルキャブオーバーエンジン)型ボディ採用により、エンジンが運転室や車室の下に置かれた。このため、ボンネットが無く、荷台を長く出来ることから、瞬く間に小型トラックのベストセラーカーとなった。このベストセラーカーには、運転席フロントガラス下部の正面中央に付された「ISUZU」のマークの右ないし左上方に「ELF」のマークを付すことにした。この二つのマークの表示方法は現在までほぼ一貫して変わっていない。 (3)そして、2006年、13年ぶりのフルモデルチェンジをした「6代目ELF」が誕生した。「6代目ELF」は、グローバルな視点で安全性・経済性・環境性能を徹底的に追求し、平成17年排出ガス規制適合車、低排出ガス重量車認定車、平成27年度燃費基準達成車であるとともに、2006年度グッドデザイン賞を受賞した。2007年には、「ELFディーゼルハイブリット車」もフルモデルチェンジをした。そして、1959年の「初代ELF」誕生から50周年にあたる2009年の今年、「ELF誕生50周年記念特別限定車」が販売された。 このような「ELF」の開発・販売の歴史からして、トラック業界は言うに及ばず一般消費者の間においても「ELF」が申立人の商標として広く認識されるに至っていたことは明らかである。 (4)また、「ELF」のシェアについて、「ELF」は、1970年から1999年まで30年連続、2001年から2006年まで6年連続でシェアNo.1を達成するとともに、2006年にはシェア39%を達成していることがわかる。また、発売以来の累計生産台数は、500万台以上にも上り、海外においても高いシェアを誇っていることもわかる。このような高いシェアを常に維持することで、トラックの業界においは、「いずゞ」といえば「ELF」、「ELF」といえば「いずゞ」と言われるほど「ELF」の商標は、周知・著名となっている。 (5)以上より、申立人の「ELF」は、本件商標の出願時である平成20年4月21日及びその登録日である平成20年12月12日時点において、トラックの需要者・取引者の間に広く認識されているばかりでなく、自動車全般の需要者・取引者の間にも広く認識された周知・著名商標であるということは明らかである。 2 商標法第4条第1項第10号及び第11号について (1)引用商標は、本件商標との関係では先願かつ先登録となっているものである。そして、引用商標「ELF」は、上述のとおり、トラックを含む自動車業界において本件商標の出願前に周知・著名商標となっており、登録時現在においてもその周知・著名性を維持しているものである。 (2)ここで、両者の指定商品について比較するに、本件商標における第12類「電気自動車並びにその部品及び付属品」は、引用商標における第12類「自動車並びにその部品及び附属品」の中に含まれるものであり、両者は、指定商品において同一・類似の関係にある。 (3)次に、両者の称呼について比較するに、本件商標「ELP」は、欧文字3文字の標準文字で構成されるものである。したがって、かかる構成から生ずる称呼は、「エルプ」及び「イーエルピー」である。「ELP」は、辞書に載っているものではないが、母音「A」「I」「U」「E」「O」を除くアルファベットの前に位置する「EL」の発音を一般的な英和辞典でみると、「elk」、「elm」、「else」、「elver」、「elves」、「elvish」などのように、いずれも「エル」と称呼されており、また、「help」、「melt」、「nelson」、「pelf」、「pelt」、「self」、「selves」、「te1s1ar」、「velvet」、「welch」、「welcome」、「we1fare」、「welter」のような構成においても、「EL」が「エル」と称呼されていることから、英語の知識を有する日本人にとって、「ELP」の英文字に接したときには、「エルプ」の称呼が生じるとみるのが自然である。さらに、本件商標の権利者の名称が「エリーパワー」であることから、その語頭の読みに呼応して「エルプ」の称呼が生じ得るとみるのが自然である(甲第30号証)。したがって、本件商標「ELP」からは、「エルプ」の称呼が生じることは明らかであり、本件商標から生じる称呼は、「エルプ」及び「イーエルピー」である。 これに対し、現に小型トラックに使用され、周知・著名となっている引用商標「ELF」からは、「エルフ」の称呼が生じることは明らかである。 したがって、本件商標から生じる「エルプ」の称呼と引用商標から生じる「エルフ」の称呼を比較すると、両者は、語頭の「エル」の称呼を共通にし、相違する「プ」と「フ」の称呼は、母音「u」及び調音位置を同じくする極めて近似した音であり、かかる差異が全体に及ぼす影響は僅かなものであって、これらが称呼上重視されない語尾に位置することとも相侯って、両者を一連に称呼するときは、全体の音感・音調が極めて近似したものとなり、彼此聴別することが難しいものである。したがって、両者は、称呼において、彼此混同を生ずるほど類似する商標であることは明らかである。さらに、引用商標は、周知・著名商標であることからも、本件商標が小型トラックに使用された場合、取引者・需要者は、聞きなれた引用商標を想起し出所の混同を生じさせる恐れが極めて大きいものと考えられる。 また、外観については、本件商標「ELP」と引用商標「ELF」は、「E」と「L」の文字を共通にし、相違する「P」と「F」の文字は、右上端が閉じているか開いているかの相違に過ぎず、両者は、構成上極めて近似している。したがって、これらを時と所を異にして観察すると彼此混同するほど近似しているといえ、両者は、外観において、類似する商標であることは明らかである。引用商標の周知・著名性からも両者が混同する可能性は一層高いものといえる。 また、観念については、本件商標「ELP」は、親しまれた成語を形成するものではない一方、引用商標「ELF」は、「ISUZUのトラック」、「小妖精」等の観念を生じるものであるため、観念においては比較することが出来ないものである。 (4)したがって、以上を総合して全体的に考察すると、本件商標は引用商標に類似するというべきであり、本件商標は、商標法第4条第1項第10号及び第11号に該当し、取り消されるべきものである。 3 商標法第4条第1項第15号について (1)上述のとおり、申立人の引用商標「ELF」は、本件商標の出願前にトラック及び自動車について需要者、取引者の間で周知・著名となっており、本件商標の登録時現在においてもその周知・著名性を維持しているものである。 また、申立人は、1990年から電気自動車の開発を進め、「ELF電気配送トラック」、「ELFでんき自動車」を経て、「ELFディーゼルハイブリット車」を2005年に開発、発売し、2007年にこれのフルモデルチェンジを行ったが、周知・著名な「ELF」は、これらについても使用されている。 この電気自動車は、申立人のカタログ及びホームページに詳しく掲載されており、リチウムイオン電池を使用し環境に配慮したトラックであるとして、様々なホームページや雑誌でも紹介されている。 このように、需要者・取引者の間では、「ELFディーゼルハイブリッド車」は、申立人の電気自動車として周知・著名となっているものである。 (2)また、「リチウム電池」と「電気自動車」の関係について言えば、リチウム電池と電気自動車とは部品と完成品の関係にある関連の深い商品であり、本件商標「ELP」を「リチウム電池」について使用した場合には、これに接する需要者・取引者は、申立人の周知・著名商標「ELF」ないしは、申立人の製造・販売に係る商品を連想、想起し、申立人又は同人と経済的、組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのごとく、その出所について混同を生ずるおそれがあり、いわゆる広義の混同を来たすおそれがあることは明らかである。 (3)したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号にも該当するものであって、取り消されるべきものである。 4 むすび よって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号、同第11号及び同第15号に該当し、商標登録を受けることができないものであるから、商標法第43条の3第2項の規定により、その登録は取り消されるべきものである。 第4 当審の判断 1 「ELF」商標の著名性について 甲各号証によれば、申立人会社は、1937年(昭和12年)に設立され、各種ディーゼルエンジンの開発や ディーゼル自動車の製造・販売を行ってきた。1949年(昭和24年)に商号を現在の名称「いすゞ自動車株式会社」とした。そして、1959年(昭和34年)8月から小型トラックの初代エルフ2トン積ガソリン車の販売が開始された。 エルフは、当時としては珍しくエンジンを運転室の下に置いてボンネットをなくし荷台を長くしたフルキャブオーバー型を採用したため、ボンネット型に較べ多くの荷物を積載できるとして、瞬く間に小型トラックのベストセラーカーとなった。1960年(昭和35年)3月には、小型トラックで初めてディーゼルエンジン搭載車を発売した。 1990年代後半からディーゼル車への排ガス規制が厳しくなってきたが、1994年(平成6年)には平成6年排出ガス規制に適合させ、1999年(平成11年)には平成9/10年排出ガス規制適合車を発売し、2002年(平成14年)には国内で初の平成15年排出ガス規制適合車を発売し、2004年(平成16年)には超低PM排出ディーゼル車認定に適合したエルフを発売して、シェアを伸ばした。 そして、2006年(平成18年)には、「6代目エルフ」が誕生し、グローバルな視点で安全性・経済性・環境性能を徹底的に追求し、平成17年排出ガス規制適合車、低排出ガス重量車認定車、平成27年度燃費基準達成車であるとともに、2006年度グッドデザイン賞を受賞した。 申立人は、1959年(昭和34年)8月から現在にいたるまで50年以上2トンから3トンクラスの小型トラックに「ELF」の商標を使用し、上述したとおり、各時代の需要者の要望に応じた多くの先進技術を採用してきた結果、「ELF」の商標を使用した同商品は、1970年度(昭和45年度)ころから2008年度(平成20年度)に至るまで、2000年度(平成12年度)を除き、40年近く国内シェア1位を占め、高い人気を維持してきたことが認められる。 以上によれば、申立人が2トンから3トンクラスの小型トラックに使用する「ELF」の商標は、小型トラックの取引者・需要者間において遅くとも本件商標の登録出願がなされた平成20年4月21日前には著名性を獲得し、その著名性は現在に至るまで継続しているものと認められる。 2 商標法第4条第1項第10号及び第11号の該当性について 本件商標と引用商標との類否について検討するに、本件商標は、「ELP」の欧文字よりなるところ、その構成文字は我が国において特定の意味合いを有する語としては知られていないものであり、しかも構成文字数は3文字と少ないことから、これに接する看者はアルファベット一文字一文字を読むというのが自然であり、構成文字に相応して「イイエルピイ」の称呼のみを生じ、観念を有しないものと認められる。 引用商標は、「ELF」の欧文字よりなるところ、その構成文字は「小妖精」の意味を有する英語「elf」に通ずるものであるが我が国において同英語は未だ広く知られているとまでは認められないものであり、またその構成文字は我が国において申立人が2トンから3トンクラスのトラックに使用する商標であって「エルフ」の読みをもって広く知られているものであるから、「エルフ」の称呼のみを生じ、申立人が小型トラックに使用する商標として、「いすゞ自動車のエルフ」という程の観念を生ずるものと認められる。 そこで、本件商標と引用商標とを比較すると、外観においては、両者は、本件商標が標準文字で表されているのに対し引用商標はゴシック体で表されているものであるから、書体を異にしており、いずれも3文字の欧文字からなり、そのうち第1文字及び第2文字の「E」「L」の各文字を共通にするが、第3文字における「P」の文字と「F」の文字とを異にするものである。 しかして、相違する「P」と「F」の文字は、書体が異なっていること、構成文字が少ないこと、「P」と「F」の文字が相違すること、「P」の文字は上部の右側端が半楕円形をしているのに対し「F」の文字は上部の右側端が上段が長く下段が短い長さの異なる不揃いの二本の平行線をもって表されるものであるから、明確に区別し得るものである。 そして、ここにおける類否判断は、高価品(例えば、「エルフディーゼルハイブリッド車」の価格は、479万3250円である。:甲第16号証の1、甲第17号証、甲第47号証)を取り扱うときの注意力を基準として判断すべきであるから、高価品を取り扱うときの注意力をもって離隔観察をした場合には、慎重な比較、検討がなされるため、十分区別し得る外観上の差異を有するというのが相当である。 そうすると、本件商標と引用商標とは、外観上において相紛れるおそれのない非類似の商標である。 次に、称呼においては、本件商標より生ずる称呼「イイエルピイ」と引用商標より生ずる称呼「エルフ」とは、音構成が全く相違するので、明確に聴別し得るものであり、両商標は、称呼上において非類似の商標である。 更に、観念においては、本件商標は観念を生じないものであるから、両商標は観念上比較することができない。 したがって、本件商標は、引用商標と外観、称呼及び観念のいずれの点からしても、相紛れるおそれのない非類似の商標であるから、商標法第4条第1項第10号及び第11号のいずれの規定にも該当するものではない。 3 商標法第4条第1項第15号の該当性について 引用商標は、上記したとおり、申立人が2トンから3トンクラスの小型トラックに使用し、小型トラックの取引者・需要者間において遅くとも本件商標の登録出願がなされた平成20年4月21日前には著名性を獲得し、その著名性は現在に至るまで継続していると認められるものである。 しかしながら、本件商標と引用商標とは、上記2のとおり、別異の商標として看取されるものであるから、本件商標は、引用商標の周知・著名性を考慮しても、これをその指定商品に使用するときに申立人の業務に係る商品と出所の混同を生じさせるおそれがある商標とはいえないものである。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号の規定にも該当するものではない。 4 結論 以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第10号、第11号及び第15号の規定のいずれにも違反してされたと認められないから、同法第43条の3第4項の規定により、維持すべきものである。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2009-09-11 |
出願番号 | 商願2008-31363(T2008-31363) |
審決分類 |
T
1
651・
26-
Y
(X0912)
T 1 651・ 25- Y (X0912) T 1 651・ 271- Y (X0912) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 橋本 浩子 |
特許庁審判長 |
渡邉 健司 |
特許庁審判官 |
鈴木 修 井出 英一郎 |
登録日 | 2008-12-12 |
登録番号 | 商標登録第5187616号(T5187616) |
権利者 | エリーパワー株式会社 |
商標の称呼 | イイエルピイ、エルプ |
代理人 | 村中 克年 |
代理人 | 櫻木 信義 |
代理人 | 栗原 浩之 |