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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 X32
審判 全部申立て  登録を維持 X32
審判 全部申立て  登録を維持 X32
審判 全部申立て  登録を維持 X32
管理番号 1205361 
異議申立番号 異議2008-900440 
総通号数 119 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2009-11-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2008-10-29 
確定日 2009-09-12 
異議申立件数
事件の表示 登録第5156298号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第5156298号商標の商標登録を維持する。
理由 1 本件商標
本件登録第5156298号商標(以下、「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成よりなり、平成20年1月28日に登録出願、第32類「清涼飲料、果実飲料、乳清飲料、飲料用野菜ジュース」を指定商品として、同年6月19日に登録査定され、同年8月1日に設定登録されたものである。

2 登録異議の申立の理由の要旨
(1)商標法第4条第1項第15号の該当性について
(ア)登録異議申立人について
登録異議申立人(以下、「申立人」という。)は、1985年にドバイ政府をオーナーとして、アラブ首長国連合(UAE)に設立された会社である(甲第3号証)。申立人会社は、設立後急成長し、日本においても2002年に就航し、現在に至っている。現在では、旅客機を113機所有し、世界62か国、100以上の目的地に飛行しており、ネットワークは拡大の一途をたどっている。6つの大陸の目的地へ毎週ドバイから出発するエミレーツのフライトは700近くもある。事実、エミレーツが現在、ドバイ国際空港の入航・出航を実施する全飛行の50パーセント超を占めている。2006/2007の会計年度では、エミレーツは1750万人の乗客および120万トンの貨物を運搬した。さらに、申立人会社は、2003年から2007年に限っても甲第4号証に示すように、種々の賞を受賞している。
上述のように、申立人会社は日本において、また、国際的にも名声を有する周知著名な企業である。
(イ)引用商標の周知著名性
申立人は、別掲2のとおりの構成よりなる登録第4116368号商標(以下、「引用商標1」という。甲第2号証)、「Emirates」の欧文字よりなる商標(以下、「引用商標2」という。)及び「エミレーツ」の片仮名文字よりなる商標(以下、「引用商標3」という。)を有している。(以下、これらをまとめていう場合は「引用商標」という。)
商標「Emirates」は、日本及び国際的に周知著名な優良企業である申立人の社名のマークであり、創業以来使用されているものであり、また、ドメイン名も「emirates.com」として登録しており(甲第5号証)、申立人のかけがえのない財産である。
引用商標「Emirates」は、世界約60か国以上で提供されている申立人の役務に使用されている。申立人は、引用商標について、世界各国で商標登録を有し、日本においても商標登録を有している(甲第6号証)。
申立人の世界における収益(売上:UAEディルハム)は、2002年?2003年が8,526,585,000・・・2006年?2007年が28,643,000,000及び2007年?2008年が36,441,000,000である。
さらに、申立人の日本における収益(売上)は、2002年度(2003年3月)が1,900,985,000円・・・2006年度(2007年3月)が12,757,078,000円及び2007年度(2008年3月)が16,907,885,000円である。
申立人は、世界中で引用商標を使用した広告宣伝活動をおこなっており、その媒体は新聞、雑誌、ラジオ、テレビ等多肢にわたる。日本における申立人の宣伝広告費は、2000-2001年度が7,061,220円・・・2007-2008年度が417,015,739円及び2008-2009年度が403,346,280円である。直近3年では、年間4億円以上の多大な宣伝広告費用を申立人は日本で引用商標に費やしている。
また、ウェブサイトにおいても引用商標を使用した日本語での宣伝広告を行っている。
さらには、2002年から2008年までの日本での引用商標を使用しての宣伝広告例を甲第7号証として提出する。申立人は種々のスポーツイベント等でスポンサーをしており、かかる活動を通じても引用商標は日本において周知著名となっている(甲第8号証)。
そして、下記事件のドメイン名仲裁においても、引用商標は周知著名商標である旨、認定されている(甲第9号証の1及び2)。
以上より、引用商標が日本国内及び国際的に周知著名商標であることは明らかである。
(ウ)本件商標と引用商標との類似性ないしは近似性
本件商標と引用商標の類似性について考えると、前者からは「ピュアーエミレーツ」若しくは「エミレーツ」、後者からは「エミレーツ」の称呼が生じる。前者から「エミレーツ」の称呼が「Emirates」及び「エミレーツ」部分から相応して生じることは、上述の引用商標の周知著名性に鑑みて自明の理である。周知著名商標を包含する商標は原則として該周知著名商標と類似すると判断することは、審査例と軌を一にするものである。これは、周知著名商標はその長年の使用によって識別力が強化されており、また、グッドウィルも化体していることから、かかる周知著名商標と一部に含む商標においては、かかる周知著名商標と一致する部分は要部を形成し、該要部からは全体から生じる称呼とは別に、該要部に相応する称呼が生じる。
たしかに、複数の構成部分を組み合わせた結合商標と解されるものについては、商標の構成部分の一部を抽出し、この部分だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することは、その部分が取引者、需要者に対し商品の出所識別標識としての称呼、観念が生じないと認められる場合などを除き、許されないというべきである(最高裁平成3年(行ツ)第103号同5年9月10日第二小法廷判決・民集47巻7号5009頁参照)。
しかしながら、逆に当該商標の一部だけが独立して見る者の注意をひくように構成されている場合、又、該一部が商品の出所である旨を示す識別標識として強く支配的な印象を与えるものである場合には、かかる一部を取り出して商標の類否につき観察することは正当化される(最高裁平成19年(行ヒ)第223号同20年9月8日判決)。
本件商標について見ると、「Pure」と「Emirates」とでは、書体もその大きさも異なり、しかも、「Emirates」と木の図形部分のみ肌色で着色し、他の部分が紺色で着色されていることから、「Emirates」の部分のみ顕著に際立って分離観察できる構成となっている。したがって、「Pure」と「Emirates」とでは明確に両者を分離して観察することが外観上可能であり、「Emirates」の部分が独立して見る者の注意をひくように構成されている。
また、観念的にも、「Pure」と「Emirates」とは何ら結合して特定の観念を表示するものでもない。
さらには、上述したように、申立人所有の引用商標「Emirates」は周知著名商標である。周知著名商標を包含する商標は原則として該周知著名商標と類似すると判断することは、従前の審査例と軌を一にするものである。これは、周知著名商標はその長年の使用によって識別力が強化されており、また、グッドウィルも化体していることから、かかる周知著名商標と一部に含む商標においては、かかる周知著名商標と一致する部分は要部を形成し、該要部からは全体から生じる称呼とは別に、該要部に相応する称呼が生じるものであり、上記最高裁判例でいう「該一部が商品の出所である旨を示す識別標識として強く支配的な印象を与えるものである場合」に該当するからに他ならない。
したがって、本件商標と引用商標とは類似又は少なくとも近似するものである。
(エ)混同のおそれ
引用商標を構成する「Emirates」は、「首長国」を意味する英語である(甲第10号証参照)が、平均的な日本人には馴染みの薄い英語であり、識別力の強い商標と言える。
また、引用商標は、上述のように、航空会社の名称ないしは略称として使用され周知著名となっているが、日本航空、全日空等の航空会社も機内販売、その他機外でも様々な商品を販売している(甲第11号証)。かかる商品の中には、本件商標の指定商品である「果実飲料」「飲料用野菜ジュース」も含まれている(甲第12号証)。
してみれば、本件商標の指定商品と引用商標が使用されて周知著名となっている商品との関連性は極めて高く、当該商品の取引者、需要者が共通している度合いも高いと言わざるを得ない。
さらに、本件商標には、欧文字「Emirates」の上部にアラビア語が表記されており、「Emirates」及び「エミレーツ」の表記と相侯ってアラブないしは中東地域との関連性を強く印象付ける構成となっている。
してみれば、周知著名な引用商標を分離し得る態様で包含し、該引用商標と近似する本件商標に接した需要者、消費者は、上述のアラビア語での表記も考慮すれば、引用商標を連想、想起し、本件商標の指定商品が申立人若しくは引用商標と何らかの関係があると誤認することは必定であり、上記広義の混同が生じるおそれがある、といわざるを得ない。
したがって、本件商標は商標法第4条第1項第15号に該当する。
(2)商標法第4条第1項第19号の該当性について
本件商標は、わざわざ申立人所有の周知著名商標「Emirates」が目立つように表記しているものであり、本件商標に接した需要者は、引用商標の著名性故に、引用商標を想起するものであり、この点からも、本件商標権者は明らかに申立人所有の著名引用商標の顧客吸引力にただ乗り(フリーライド)するという不正の目的で使用するものであるといえる。
したがって、本件商標は商標法第4条第1項第19号に該当する。
(3)商標法第4条第1項第8号の該当性について
引用商標は、申立人の名称であり、ホームページのドメイン名であり、同社のホームページのURLとして使用されている。
したがって、引用商標は申立人の名称であり、本件商標は、その要部にかかる申立人の名称を、承諾なく含むものであるから、商標法第4条第1項第8号に該当する。
(4)商標法第4条第1項第7号の該当性について
全国的に著名な引用商標を含んだ本件商標の使用・登録を容認することは、申立人の著名な商標が有する出所表示機能を稀釈化するばかりでなく、申立人の著名商標に化体した業務上の信用に「ただ乗り」することを認めることとなり、健全な取引秩序の維持という商標法の目的に反することになる。
さらに、申立人の引用商標には、これまで長年にわたり多大な宣伝広告費用を費やして培ってきた「ブランド」としての顧客吸引力が備わっている。
したがって、本件商標が申立人の業務と同一の他社の商品について使用されると、申立人の商標の持つ「ブランド」としての顧客吸引力が損なわれ、これが、申立人の商標の標識としての品質保証機能の弱化につながる。
このように、本件商標が申立人の引用商標の顧客吸引力へ「ただ乗り」し、当該顧客吸引力を不当に利用するものであることは、諸般の事情を勘案すれば明白なことである。
したがって、本件商標は、取引秩序を乱すものというべきであるから、商標法第4条第1項第7号に該当する。
(5)むすび
以上のとおり、本件商標は商標法第4条第1項第15号、同第19号、同第8号及び同第7号の規定に違反してなされたものであるから、取り消されるべきである。

3 当審の判断
(1)商標法第4条第1項第15号の該当性について
本件商標は、別掲1のとおりの構成よりなるものであるところ、図形以外の文字部分については、デザイン化されてはいるものの「Pure」と認識し得る欧文字を大きく表し、これに続けて前記文字より小さく「Emirates」の欧文字を表している。加えて、該「Pure」の文字の上には、これら欧文字の一連の読みに相当する「ピュアー エミレーツ」の片仮名文字が書されているものである。
そして、「Pure/ピュアー」の語は「純粋なさま」などの意味を有する英語であり、「Emirates/エミレーツ」の語は、後述するとおり、既成語ではあるが我が国においては意味を有しない造語と認識されるものであるところ、本件商標に接する取引者・需要者は、本件商標においてはその構成中にあって、青字で大きく表された「Pure」の文字に着目し、これより「ピュアー」の称呼及び「純粋なさま」などの観念が生ずるものである。また、これとは別に読みやすく親しみのある片仮名文字に着目し、「ピュアー」と「エミレーツ」の間に一文字相当分の間隔があるものの、これらより生ずる「ピュアーエミレーツ」の称呼も淀みなく一気一連に称呼し得るものであることから、「ピュアーエミレーツ」の文字部分を一連一体のものとして印象・記憶すると解されるものである。
また、「Pure Emirates」の欧文字部分は、片仮名文字部分と称呼が同一であり、その片仮名文字に相応する欧文字として一連一体のものとして理解され印象・記憶されるというのが相当であって、本件商標からは、「ピュアーエミレーツ」の称呼をも生じるものであるが、観念は生じない。
これに対し、引用商標の構成は、引用商標1が別掲2のとおりの構成よりなるものであり、引用商標2が「Emirates」の欧文字を横書きしてなるものであり、そして引用商標3が「エミレーツ」の片仮名文字を横書きしてなるものである。
そして、引用商標の構成中、「Emirates」の文字は、「首長国」等を意味する英語「emirate」の複数形であり、「エミレーツ」と発音されるものであるが、我が国において馴染みのない語であるから、「エミレーツ」の称呼を生ずるが、特定の観念を生じないと認められるものである。また、引用商標1の構成中の図形部分からは称呼及び観念を生じない。
してみれば、引用商標からは、「エミレーツ」の称呼を生ずるが、その観念は生じない。
そうすると、本件商標と引用商標とは、外観においては構成上の明らかな差異を有し、称呼においては「ピュアー」の構成音において明確な差異を有するものであって、観念においては比較することができず、全く別異の商標と認識し得るものである。
一方、申立人の提出した証拠によれば、引用商標は、我が国において、平成14(2002)年以降、役務「航空機による輸送」について使用されており、申立人の業務に係る「航空機による輸送」を表示する商標として、一定の知名度を有しているといい得るとしても、我が国の需要者の間に広く認識されるに至ったものとまでは認めることができないものである。
そして、申立人の業務に係る「航空機による輸送」は、我が国において、専ら国際線として就航され、国民一般が日常利用するものではないのに対して、本件商標の指定商品は、国民一般が日常購入する商品であるから、両者の関連性は低く、その需要者層もその多くは異なるものと認められる。
そうすると、本件商標が引用商標に類似する商標と認められないことは上記のとおりであり、本件商標と引用商標とをさらに関連付けてみなければならない理由は見いだせず、ほかに両商標がその出所について混同を生ずるおそれがあるとする格別の事情も見いだせない。
してみれば、本件商標は、これを指定商品に使用した場合、本件商標の登録時はもとより登録出願時において、これに接する取引者、需要者をして引用商標を想起、連想して、その商品が申立人又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品と誤認するとはいい難く、商品の出所について混同を生ずるおそれはなかったといわざるを得ない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
(2)商標法第4条第1項第19号の該当性について
申立人は、引用商標の著名性を前提として、本件商標が引用商標と類似すること及び引用商標の顧客吸引力にただ乗り(フリーライド)するという不正の目的で使用するものであことを主張しているが、上述したとおり、引用商標の周知・著名性及び本件商標と引用商標との類似性は認められないものである。
また、申立人の提出に係る証拠によっては、本件商標が不正の目的をもって使用をするものであることを裏付ける証左も見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当しない。
(3)商標法第4条第1項第8号の該当性について
申立人は、本件商標はその要部に申立人の名称を承諾なく含むものである旨主張している。
しかしながら、我が国の法人名称中には通常法人の種類を表す株式会社等の文字が含まれるが、申立人が自己の名称とする「Emirates」又は「エミレーツ」の表示には、法人であること又はその種類を表す語がなく、しかも、申立人は自己の正式名称について公的書面等により立証するところがなく、「Emirates」又は「エミレーツ」の表示が申立人の正式名称であると確認することができない。また、「Emirates」又は「エミレーツ」の表示が、我が国において、未だ著名性を獲得していないことについては、上述したとおりである。
さらに、本件商標の構成中の「エミレーツ」「Emirates」の各文字部分は、上述したとおり、取引者・需要者において「ピュアーエミレーツ」「Pure Emirates」が一連一体のものとして印象・記憶されるものである。
そうすると、本件商標は、申立人の名称及び申立人の著名な略称を含むものとは認められない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第8号に該当しない。
(4)商標法第4条第1項第7号の該当性について
申立人の主張の要点は、本件商標の登録を容認することは、著名な引用商標が有する出所表示機能を稀釈化するばかりでなく、引用商標に化体した業務上の信用にただ乗りすることを認めることとなり、取引秩序を乱すから商標法第4条第1項第7号に該当するという点にある。
しかしながら、申立人の主張する著名商標の希釈化及びただ乗りへの防止については、商標法は同法第4条第1項第15号及び第19号において商標登録を受けることができない要件を個別的具体的に定めているから、本件商標登録を受けるべきでない者からされたか否かについては、上記各号の該当性の有無によって判断されるべきであり、同法第4条第1項第7号の該当性の問題ではないと解される(平成20年6月26日知財高裁判決、平成19年(行ケ)第10391号審決取消請求事件参照)。
そして、本件商標は、その構成態様から、きょう激、卑わい、差別的又は他人に不快な印象を与えるような文字又は図形からなるものではなく、これを商標権者が採択、使用しても、他の法律によりその使用が制限又は禁止若しくは本件商標の登録出願の経緯に社会的相当性を欠くとみるべき格別の事情も認められない。
さらに、申立人が本号に該当すると主張する本件商標構成中の「Emirates」の文字は、そもそも「首長国」を意味する成語であるから、たとえ、これが我が国において親しまれたものではないとしても、国際信義に反するものともいえない。
そうとすれば、本件商標は、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれのある商標ということができない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当しない。
(5)結論
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第7号、同第8号、同第15号及び同第19号に違反してされたものではないから、同法第43条の3第4項の規定により、維持すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
別掲 別掲1(本件商標)

(色彩については原本参照)

別掲2(引用商標1)


異議決定日 2009-08-26 
出願番号 商願2008-9264(T2008-9264) 
審決分類 T 1 651・ 22- Y (X32)
T 1 651・ 23- Y (X32)
T 1 651・ 271- Y (X32)
T 1 651・ 222- Y (X32)
最終処分 維持  
前審関与審査官 田口 善久武谷 逸平 
特許庁審判長 渡邉 健司
特許庁審判官 鈴木 修
井出 英一郎
登録日 2008-08-01 
登録番号 商標登録第5156298号(T5156298) 
権利者 ホームニーズ株式会社
商標の称呼 ピュアーエミレーツ、ピュアエミレーツ、エミレーツ 
代理人 中山 健一 

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