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審決分類 審判 一部申立て  登録を取消(申立全部取消) Y29
管理番号 1205352 
異議申立番号 異議2005-90405 
総通号数 119 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2009-11-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2005-08-08 
確定日 2009-09-16 
異議申立件数
事件の表示 登録第4861521号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第4861521号商標の指定商品中「食用魚介類(生きているものを除く。),加工水産物」についての商標登録を取り消す。
理由 1 本件商標
本件登録第4861521号商標(以下「本件商標」という。)は、「魚屋さんの」の文字を標準文字により書してなり、平成16年10月18日に登録出願され、「食用魚介類(生きているものを除く。),加工水産物」を含む第29類及び第30類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、平成17年4月28日に設定登録されたものである。

2 登録異議の申立ての理由(要旨)
登録異議申立人は、本件商標は商標法第3条第1項第3号又は同第6号、並びに同法第4条第1項第16号に違反して登録されたものであるから取り消されるべきである旨主張し、証拠方法として甲第1号ないし第3号証を提出した。
(1)商標法第3条第1項第3号又は同第6号について
本件商標は、その指定商品中「食用魚介類(生きているものを除く。),加工水産物」との関係において、「魚屋さんの(卸した新鮮な魚介類を使用したもの)」等のように、専門の小売業者である「魚屋(さん)」と何らかの関係を有するものであると直感するものであるから、本件商標はそれ自体、自他商品識別性を有するものではない。
また、古くから「(お)魚屋さんの」と言う語句と商品の普通名称を結合して、例えば「魚屋さんの惣菜」であるとか「魚屋さんのお寿司」等と使用しており、それらに接した需要者は、「魚屋さんの」商標のみでは何人かの業務に係るものであるのか認識することができない。
(2)商標法第4条第1項第16号について
本件商標が、「魚屋さんの(製造したもの、販売したもの)」等、本件商標の語義に照応しない商品に使用された場合には、取引者及び需要者に対して、商品の品質について誤認を生じさせるおそれがある。

3 本件商標に対する取消理由
当審において、登録異議申立に基づき、平成18年4月4日付けで商標権者に対して通知した取消理由は、要旨以下のとおりである。
(1)本件商標は、「魚屋さんの」の文字よりなるところ、その構成中「魚屋さん」の文字が「魚類その他の海産物を売る店。」(広辞苑第五版)の意味を有する「魚屋」の文字に敬称を付したものとして、同じく「の」の文字が所有格の助詞を表すものとして、いずれもよく知られているものであり、両語を結合してなるものと容易に看取し得るものである。
(2)しかして、これをその指定商品中、第29類「食用魚介類(生きているものを除く。),加工水産物」について使用するときは、「(専門の小売業者である)魚屋さんの加工・製造したもの・販売したもの」という、当該商品の品質を表示するものと認識されるに止まり、自他商品の識別標識としての機能を果たし得ないものというべきである。
(3)したがって、本件商標の登録は、その指定商品中、第29類「食用魚介類(生きているものを除く。),加工水産物」について、商標法第3条第1項第3号に違反してされたものである。

4 商標権者の意見
上記3の取消理由に対し、商標権者は、要旨以下のように意見を述べている。
(1)商標法第3条第1項第3号の規定は、いわゆる自他商品の識別標識として機能し得ない表示のみからなる商標の登録を排除する規定であって、当該規定に該当する商標は、具体的には、その商品の産地・品質・効能・用途等を表すために一般的に用いられている表示のみからなる商標である。
当該規定が設けられている趣旨は、このような表示は、その商品の製造・販売等に関わる業者にとって、業務遂行上必要不可欠なものであって独占適用性がないこと、また、一般需要者は、このような表示を商標(商品の目印)として見るようなことがなく、自他商品の識別標識として機能し得ないからである。
(2)本件商標は、「魚屋さんの」の文字よりなるものであるところ、これを指定商品中「食用魚介類(生きているものを除く。),加工水産物」に使用した場合には、その商品が「魚屋が関係する商品」であるかの如く認識される場合もあるかもしれない。
しかしながら、魚屋が加工・製造した商品であることを表すために「魚屋」の文字を用いた表示が使用されている例を見たことが無い。
特に、本件商標は、「魚屋」に「さん」の敬称を付けているものであるところ、その商品の小売業者が、自らのことを「さん」を付けて表記するようなことは到底考えられない。
小売業者である魚屋が、自己が製造・加工した商品であることを表示するのであれば、自己の固有の名称を用いるのが自然である。
また、本件商標は、語尾に助詞の「の」を付して終わっており、魚屋との関係で何を言いたいのか全く特定できない表現であるところ、業者が、品質表示として、このような中途半端な表現を用いるようなことは考えられないものである。
(3)上記したように、「魚屋さんの」の表示が、指定商品中「食用魚介類(生きているものを除く。),加工水産物」において、その商品の品質を表示するために一般的に用いられるようなことは無いものであり、この種商品を取り扱う事業者のために、このような表示の登録を排除しなければならない公益的な理由も見当たらない。
そして、一般需要者が、「魚屋さんの」の表示を品質表示と認識するようなことも考えられない。むしろ、上記したように、わざわざ敬称を用いた丁寧な表現であることから、需要者をして、意外性、面白みを感じさせるものであって、十分に自他商品の識別標識(目印)として機能するものと見るのが自然である。
(4)また、仮に本件商標から「魚屋さんの加工・製造したもの・販売したもの」の如き意味合いを看取する場合があるとしても、「魚屋」であれば、どの魚屋であっても均一な、あるいは特定の品質を有する商品を提供するわけではないから、その商品の具体的な品質までは到底理解できないものである。
(5)本件商標の商標権者である東洋水産株式会社は、本件商標とは同一ではないものの、実質的に同じ意味合いを看取させる「お魚屋さんの」の文字からなる商標を加工水産物について使用しており(乙第1号証ないし乙第6号証)、現実に自他商品の識別標識として機能している。
(6)以上述べたように、本件商標「魚屋さんの」は、これを指定商品中「食用魚介類(生きているものを除く。),加工水産物」に使用した場合に、品質表示として認識されるようなことはなく、十分に自他商品の識別標識としての機能を果たし得るものである。
百歩譲って、本件商標から「魚屋さんの加工・製造したもの・販売したもの」の如き意味合いを認識する場合もあるかもしかないが、その場合も、商品の品質を暗示させる程度であって、具体的な品質を表示するようなことはないものである。
よって、本件商標は、指定商品との関係で、その商品の品質を表示するようなことはなく、商標法第3条第1項第3号の規定に違反して登録されたものではない。

5 当審の判断
(1)本件商標は、前記1のとおり、「魚屋さんの」の文字よりなるところ、その構成中「魚屋」の文字は、広辞苑(第六版)によれば、「魚類その他の海産物を売る店。」を意味する語として普通に知られているものであり、また、その構成中「魚屋」に続く「さん」の文字も同様に、「人名などの下に添える敬称。」を意味する語として、「魚屋さん」だけでなく、例えば、「八百屋さん、果物屋さん、酒屋さん」等と、店屋に「さん」を付けて呼ぶ呼び方も一般的に行われているものである。
また、その構成中語尾の「の」の文字は、所有格の助詞の働きをする語であって、この字単独では意味を持たないとしても、後に続く語(商品等)と連結して、その商品等を特定する役割を有するものである。(例えば、「Aさんの商品」、「Bさんの製造に係る商品」等。)
そうすると、前記の意味合いを有する語からなる本件商標に接した取引者、需要者は、その指定商品中「食用魚介類(生きているものを除く。),加工水産物」との関係においては、その構成文字全体より、例えば「魚屋さんの(が調理した)イカの刺身、魚屋さんの(が加工した)アジの干物、魚屋さんの(が製造した)蒲鉾」等の如き意味合いを容易に想記し、理解するというべきである。
そして、「魚屋さんの」の文字と商品名称等が結合した、例えば、「魚屋さんのお弁当、魚屋さんの一品料理、お魚屋さんのお寿司」等の商品が一般に販売されている事実、もしくは販売されていることが推認できることは、請求人提出に係る証拠からも明らかである。
以上のことを総合的に勘案すれば、「魚屋さんの」の文字からなる本件商標は、「魚屋さんが加工した商品」、「魚屋さんが調理した商品」等であることを表したものと理解、認識されるに止まり、自他商品識別標識としての機能を果たし得ないものというのが相当である。
(2)なお、請求人は、前記3の取消理由に対し、前記4のとおり意見を述べているが、ある商標が、商標法3条1項3号に該当するかどうかは、取引者、需要者が、商品の品質等を表したものであると認識するかどうかに重点を置いて判断されるべきであって、その商標が、商品の品質を表すものとして必ず使用されるものであるとか、現実に使用されている等の事実は、同号の適用において必ずしも要求されないものと解すべきである(平成12年(行ケ)第76号、東京高裁平成12年9月4日判決言渡参照)と判示されている。
したがって、意見書中で商標権者が、「魚屋が加工・製造した商品であることを表すために、『魚屋』の文字を用いた表示が使用されている例を見たことが無い」、「本件商標は、『魚屋』に『さん』の敬称を付けたものであるが、その商品の小売り業者が、自らのことを『さん』付けで表記するようなことは到底考えられない」、「小売り業者である魚屋が、自己が製造・加工した商品であることを表示するのであれば、自己の固有の名称を用いるのが自然である」旨主張しているが、申立人が提出した証拠によれば、「魚屋さんの」の文字が、商品の品質を表示するものとして現実に使用されている以上、本件商標が商品の品質(加工者、製造者、販売者)を表示するものであるとすることの妨げにはならないものである。
(3)したがって、本件商標の登録は、その指定商品中、第29類「食用魚介類(生きているものを除く。),加工水産物」について、商標法第3条第1項第3号に違反してされたものといわざるを得ないから、商標第43条の3第2項の規定により、その登録を取り消すべきものとする。
よって、結論のとおり決定する。
異議決定日 2009-07-29 
出願番号 商願2004-94901(T2004-94901) 
審決分類 T 1 652・ 13- Z (Y29)
最終処分 取消  
前審関与審査官 土井 敬子 
特許庁審判長 井岡 賢一
特許庁審判官 久我 敬史
佐藤 達夫
登録日 2005-04-28 
登録番号 商標登録第4861521号(T4861521) 
権利者 東洋水産株式会社
商標の称呼 サカナヤサンノ 
代理人 小出 俊實 
代理人 鈴江 武彦 
代理人 白濱 秀ニ 
代理人 白浜 吉治 
代理人 石川 義雄 

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