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審決分類 審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) X07
管理番号 1205167 
審判番号 無効2009-890011 
総通号数 119 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2009-11-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 2009-01-20 
確定日 2009-09-11 
事件の表示 上記当事者間の登録第5162161号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第5162161号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5162161号商標(以下「本件商標」という。)は、「プチプチスリム」の文字を標準文字で表してなり、平成19年12月25日に登録出願、第7類「廃棄物圧縮装置,廃棄物破壊装置,パルプ製造用・製紙用又は紙工用の機械器具,プラスチック加工機械器具」を指定商品として、平成20年8月29日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
請求人が甲第2号証(枝番号を含む。)で引用する登録商標及び商標登録出願は、以下の(1)ないし(13)のとおりである。
(1)登録第2622392号商標は、「プチプチ」の片仮名文字を横書きしてなり、平成3年8月22日に登録出願、第34類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、平成6年2月28日に設定登録されたものである。
そして、平成15年11月4日に商標権の存続期間の更新登録がなされ、指定商品については、平成17年3月23日に第17類「プラスチック基礎製品」を指定商品とする書換登録がなされたものである。
(2)登録第5138050号商標は、「プチプチ」の文字を標準文字で表してなり、平成19年11月7日に登録出願、第9類「ダウンロード可能な家庭用テレビゲームおもちゃ用プログラム,コンピューターネットワークを通じてダウンロード可能なコンピューターゲーム用プログラム,コンピューターネットワークを通じてダウンロード可能な業務用テレビゲーム機用のプログラム,ダウンロード可能な携帯電話機用のゲームプログラム」を指定商品として、平成20年6月6日に設定登録されたものである。
(3)登録第4732929号商標は、「PutiPuti」の文字を標準文字で表してなり、平成15年5月21日に登録出願、第17類「プラスチック基礎製品,プラスチック製包装用緩衝材」を指定商品として、同年12月12日に設定登録されたものである。
(4)登録第4842524号商標は、「ぷちぷち」の文字を標準文字で表してなり、平成15年11月12日に登録出願、第17類「プラスチック基礎製品,包装用プラスチック製緩衝材」及び第19類「プラスチック製建築用養生材,プラスチック製建築用断熱シート,建築用又は構築用のプラスチック製緩衝材」を指定商品として、平成17年3月4日に設定登録されたものである。
(5)登録第5065447号商標は、「プチプチ」の文字を標準文字で表してなり、平成19年2月5日に登録出願、第28類「おもちゃ」を指定商品として、同年7月27日に設定登録されたものである。
(6)登録第4916563号商標は、「プチプチ同盟」の文字を標準文字で表してなり、平成17年3月28日に登録出願、第17類「プラスチック基礎製品,プラスチック製用緩衝材(建築用又は構築用のものを除く。),プラスチック製断熱材(建築用又は構築用のものを除く。),プラスチック製養生材(建築用又は構築用のものを除く。),プラスチック製充填材(建築用又は構築用のものを除く。)」を指定商品として、同年12月16日に設定登録されたものである。
(7)登録第5079996号商標は、「∞ プチプチ」の記号と文字を書してなり、平成19年2月23日に登録出願、第9類「携帯電話用のストラップ」、第14類「キーチェーン」及び第28類「おもちゃ」を指定商品として、同年9月28日に設定登録されたものである。
(8)商願2007-113455号商標は「∞ プチプチ」の記号と文字を書してなり、第9類「ダウンロード可能な家庭用テレビゲームおもちゃ用プログラム,コンピューターネットワークを通じてダウンロード可能なコンピューターゲーム用プログラム,コンピューターネットワークを通じてダウンロード可能な業務用テレビゲーム機用のプログラム,ダウンロード可能な携帯電話機用のゲームプログラム」を指定商品として、平成19年11月7日に登録出願されているものである。
(9)商願2008-029241号商標は、「プチプチカレンダー」の文字を標準文字で表してなり、平成20年4月15日に登録出願、第16類「カレンダー,紙類,文房具類,新聞,雑誌」を指定商品として、平成21年1月9日に登録第5193879号商標として設定登録されたものである。
(10)商願2008-44565号商標は、「プチプチSHOP」の文字を標準文字で表してなり、平成20年6月9日に登録出願、第35類「身の回り品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,紙類及び文房具類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,楽器及びレコードの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,建築材料の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」を指定役務として、平成21年5月15日に登録第5230625号商標として設定登録されたものである。
(11)商願2008-44670号商標は、「プチプチテープ」の文字を標準文字で表してなり、平成20年6月9日に登録出願、第16類「プラスチック製包装用フィルム又はシート」及び第17類「プラスチック製基礎製品,プラスチック製用緩衝材(建築用又は構築用のものを除く。),プラスチック製断熱材(建築用又は構築用のものを除く。),プラスチック製養生材(建築用又は構築用のものを除く。),プラスチック製充填材(建築用又は構築用のものを除く。),プラスチック製結露防止用フィルム又はシート(建築用又は構築用のものを除く。),粘着剤を塗布したプラスチック製フィルム又はシート,粘着テープ付プラスチック製フィルム又はシート,農業用プラスチック製フィルム又はシート,農業用保温シート」を指定商品として、平成21年5月1日に登録第5227239号商標として設定登録されたものである。
(12)商願2008-50155号商標は、「プチプチ」の片仮名文字を横書きしてなり、第16類「紙製包装用容器,紙類」を指定商品として、平成20年6月24日に登録出願されているものである。
(13)商願2008-54180号商標は、別掲のとおりの構成よりなり、第17類「農業用プラスチックフィルム,プラスチック基礎製品,プラスチック製包装用緩衝材(建築用又は構築用のものを除く。),プラスチック製養生材(建築用又は構築用のものを除く。),プラスチック製断熱材(建築用又は構築用のものを除く。),プラスチック製板材」、第20類「おもちゃ箱,陳列棚,マガジンラック,その他の家具,輸送用コンテナ(金属製のものを除く。),木製・竹製又はプラスチック製の包装用容器,プラスチック製栓,プラスチック製ふた,ついたて,ベンチ,工具箱(金属製のものを除く。)」及び第42類「包装材・包装容器の設計並びに設計に関する指導及び助言,包装材・包装容器のデザインの考案並びにデザインの考案に関する指導及び助言」を指定商品及び指定役務として、平成20年7月4日に登録出願されているものである。

第3 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求めると申し立て、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第17号証(枝番号を含む。なお、すべてを引用するときは、枝番号を省略する。)を提出している。
1 請求の理由
請求人「川上産業株式会社」(以下「川上産業」という場合がある。)の使用する商標「プチプチ」(以下、単に「引用商標」という。)は、請求人の商標として需要者の間に広く認識されているものであるから、これを結合した本件商標がその指定商品に使用された場合、商品の出所について混同を生ずるおそれがある。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当していたものとして無効とされるべきものである。
2 具体的理由
(1)本件商標の構成
本件商標は、標準文字の「プチプチスリム」からなる。「プチプチ」の語は粒状のもの、あるいは粒状のものが潰れる様を表す擬態語とも理解できるが、普通の辞書に掲載されている語ではなく、次項に示すとおり、一般需要者には請求人の著名な商品表示として認識されている。
「プチプチスリム」の「スリム」は「細いさま。ほっそりしたさま。」(広辞苑第六版)の意味が看取されるので、本件商標全体からは、一般的には「プチプチ(した形状のもの)が細い」という観念、引用商標の著名性に鑑みれば、「(請求人商品)『プチプチ』がかさばらない(コンパクト)」といった観念が生ずる。よって本件商標は、指定商品中「廃棄物圧縮装置、廃棄物破壊装置」との関係では、「『プチプチ』をかさばらない形で廃棄する」といった意味合い、「パルプ製造用・製紙用又は紙工用の機械器具、プラスチック加工機械器具」との関係では、「スリムな(かさばらない)『プチプチ』の製造・加工機械器具」といった意味合いが看取される。
いずれにしても「スリム」の語は、以下の特許庁審決例にも示されているように、商品の形状等を示す語として識別力がない語であって、本件商標の要部たり得ない。
「『スリム』の語は、『ほっそりとした、きゃしゃな』等の意味合いを表す平易な外来語であって、本願商標をその指定商品に使用した場合、これに接する取引者・需要者は、該「スリム」の文字部分については、例えば、『少ないスペースにも設置できる幅の狭い浴槽』等、『細いサイズの商品、幅の狭い商品』であること、すなわち、指定商品の品質等を表したものと理解、認識するとみるのが相当」(不服2002-2887号審決、甲第3号証)
したがって、本件商標については、識別力の弱い「スリム」の部分を除いて「プチプチ」と特定され、「プチプチ」の称呼及び観念も生じるものと考えられ、これは請求人の所有する広く知られた商標の構成文字と同一である。
本件商標を構成する「プチプチ」の部分は、次項で述べるとおり、請求人の使用する著名商標である。商標「プチプチ」に係る請求人の主力商品は、主として梱包に使用する気泡緩衝材であり、気泡をプチプチと潰せることで知られている。
したがって、本件商標は、請求人の著名商標であって請求人商品の代名詞である「プチプチ」の標章と「スリム」の語を結合した商標である。特許庁審査基準によれば、商標法第4条第1項第15号の審査において、他人の著名商標と結合した商標は、その外観構成がまとまりよく一体に表されているもの又は観念上の繋がりがあるものを含め、商品の出所混同を生ずるおそれがあるものと推認して取り扱うとされている。
なぜなら、請求人商品たる気泡緩衝材については、その気泡を暇つぶしやストレス解消のために潰すことが「プチプチつぶし」として広く一般需要者に知られているからである。検索エンジンで「プチプチつぶし」と検索すれば、フリー百科事典「ウィキペディア(Wikipedia)」に、「プチプチつぶし」という項目が第一位にヒットし、以下、上位にヒットするのは全て請求人商品についてか、請求人がライセンスしているバンダイのおもちゃ「∞ プチプチ」のサイトである(甲第4号証)。
すなわち、本件商標全体の構成自体が、請求人商品と関連した意味を持つ文字列となっているものである。
(2)引用商標について
請求人は、上記「第2 引用商標」の所有者であり、甲第2号証に示すように、「プチプチ」を商標として保護するために多面的な商標登録を行っている。「プチプチ」商標のみならず、「○○プチ」、「○○ぷち」等の態様の関連商品についても多数商標登録している(甲第5号証)。「プチプチ」についての最初の商標登録は平成6年(1994年)であるが(甲第2号証の1)、請求人が商品「プチプチ」製造の会社を設立したのは1977年である(甲第6号証)。
商品「プチプチ」は気泡緩衝材(気泡シート)の代名詞のように言われるが、それは気泡緩衝材について「プチプチ」の国内シェアが45%に及ぶためである(甲第7号証)。しかし、需要者が「プチプチ」を気泡緩衝材の代名詞、すなわち一般名称と誤認しないように、請求人は「プチプチ」の商標登録表示について注意を払ってきており、常に登録商標であることを簡易に示すために慣習的に用いられている(R)や○内に「R」を付しており、大手販売業者もそれにしたがっている(甲第8号証)。
請求人商品が広く知られた結果、「あの直径、あの配置を見れば『プチプチだ』ってわかることがスゴい」(甲第9号証の1)といわれるほどに需要者取引者に定着している。
また、日経トレンディネットのサイトでは、請求人商品のユニークな展開について特集記事を掲載しており、「誰でも知っている梱包材の定番プチプチ」と紹介されている(甲第9号証の2)。また、請求人商品のファンのためにオフィシャルブックも発売されており(甲第9号証の3)、その人気の高さが表れているといえる。少なくとも、梱包材について、このような応用製品、オフィシャルブックが販売されているような商品は他に存在しないと思われる。
現在はさらに、玩具メーカー、株式会社バンダイとの協力により、携帯型玩具「∞プチプチ」(請求人の商願2007-113455)が大ヒットし、3ヶ月で150万個を売り上げたことにより、日本全国の広範な需要者取引者に広く知られるに至っている(甲第10号証)。
各種刊行物に記載された、引用商標又は商標権者の周知性を示す記載を時系列で示せば以下のとおりである(甲第11号証)。
・「プチプチ」の一般需要者向け商品「プッチンスカット」の紹介。?「clife」中日新聞社、2003年10月
・同上「プッチンスカット」の紹介。「“プチプチ”は同社の登録商標で、一般名は“気泡シート”。」との記載。?「ログイン」、2004年1月
・「登録商標は『プチプチ』。気泡緩衝材の国内シェアの半分近くを握る最大手が川上産業(名古屋市中村区、川上肇社長)だ。」の記載。同社の愛知万博での展示に関する記載。?「万博で魅せるオンリーワン技術\川上産業気泡緩衝材『プチプチ』」日本経済新聞(中部経済)2004年3月16日
・「プチプチ」で作られたレジャーシート「青空プチ」の紹介。-「clife」中日新聞社、2004年4月
・「実は『プチプチ』の国内ナンバーワン企業が名古屋にあるのだ。\川上産業。現在、業界のシェアの半分近くを占め、上位5社のトップを走っている。ちなみに『プチプチ』は登録商標で、この名を使えるのは同社の製品だけだ。」の記載。多彩な『プチプチ』関連商品の紹介。?「じつは国内シェアナンバーワン\たんなる梱包資材では終わらせない!\『プチプチ』を進化させ続ける業界リーダー」「DODA」(デューダ)、2004年
・「『プチプチ』は、ポリエチレンの気泡シートで、最大手の川上産業(名古屋市中村区)の製品。」の記載。新商品のハート形プチプチの紹介。愛知万博での展示の紹介。?「真心包むハート形プチプチ\川上産業・プチプチ文化研究所所長杉山彩香さん」「フジサンケイビジネスアイ」2004年12月19日
・請求人会社の「プチ社内ベンチャー」の紹介。「プチプチSHOP」、愛知万博での展示の企画等について記載。?「プチプチ進化\新世界広がる」「AERA」2005年1月24日
・「プチプチ」の歴史の紹介記事。「そもそも一般的にプチプチとみんなが呼んでいるものは、実は川上産業の登録商標で、一般名称は『気泡シート』。この気泡シートをつくっている会社は日本に5社あり、川上産業では50%のシェアを持つという。」との記載。?「『プチプチ』の意外な歴史を探った」「エキサイト」(インターネット上のニュースサイト)2005年3月4日
・「[プチプチ]川上産業、一般名称 気泡シート\俗称かと思いきや、実は登録商標。丸い膨らみをハート形にしたものが大ヒット」の記載。?「一般名称が思い浮かばない?\ロングセラーには登録商標がいっぱい!」「anan」2005年3月30日
・「正式名は『気泡緩衝材』。でも世間的には『プチプチ』という方が断然わかりやすいだろう。」「業界最大手の川上産業では、この『プチプチ』を商標登録し、自社ブランドの商品名としている。昨年秋には新製品「はぁとぷち」を発売し、今、密かなブームとなっている。」の記載?「消費者の心をはじかせたハートのプチプチ。」「V SHOT」2005年4月
・「電子機器のこん包や引っ越し用に使う気泡緩衝材。『プチプチ』の登録商標を持つ川上産業(名古屋市)は、売上高が約百億円で国内シェア五割を誇る。しかも営業利益率は約七・五%。」の記載?「『プチプチ』一筋高収益」「日経産業新聞」2005年3月28日
・「川上産業(株)様では、通常のプチプチ(R)だけでなく、オリジナル商品や環境に配慮した商品の開発にも力を入れておられます。」との商品紹介。?「川上産業(株)様の商品のご紹介」「NGV TODAY」2005年4月
・「八月八日はプチプチの日-。気泡シートの最大手・川上産業では、この日を主力商品『プチプチ』(商標登録)の日と定め、一九九九年十ニ月に日本記念日協会に申請・認定されている。」?「シェアナンバーワン\川上産業株式会社\独自の二次加工と豊富な品揃えで\『プチプチ』をトップブランドに仕立てる」「THE STRATEGIC MANAGER」2005年10月
・請求人がインターネット上で運営する「プチプチSHOP」の紹介記事。「プチプチの素材を研究開発することで環境問題に積極的に取り組んでいる。」との記載。?「インターネットでお店やろうよ!」編集長 木下修「ベストeショッピング」「日本経済新聞」2005年11月12日
・請求人ホームページの紹介記事。?「ビジネスサイトが可能にする機能と戦略\内容の濃いサイトだったからこそユーザーや消費者をも呼び込めた!\梱包材・緩衝材などの製造・販売 川上産業株式会社http://www.putiputi.Co.jp/」「インターネット販売活!」2006年1月
・「プチプチ」のオフィシャルブックの紹介記事。「今更説明するまでもなく、『プチプチ』とは見ると思わずつぶさずにはいられない、あの壊れやすい物を包む時の包装の緩衝材のことである。一般名称は『気泡シート』というが、日本でトップシェアを誇る川上産業株式会社が1994年に『プチプチ』として商標登録。ひたすらつぶしまくるだけのひまつぶし・ストレス解消グッズ『プッチンスカット』の登場の影響もあってか今や気泡シートといえば『プチプチ』と言うほど認知度も高くなっている。」との記載。?「『プチプチ』のオフィシャル・ブックが登場!」「エキサイト」(インターネット上のニュースサイト)2006年6月29日
・「プチプチ」のオフィシャルブックの紹介記事。?「本で広げる緩衝材の世界\川上産業『プチプチOFFICIAL BOOK』」「PRIR」2006年9月
・川上産業プチプチSHOP店長、杉山彩香氏の紹介記事。?「おじさんは知らない イケてるBusiness person」「日経Associe」2006年10月17日
・請求人が環境に配慮した気泡シート製品を展開していることの紹介記事。?「中小企業のエコチャレンジ\川上産業\緩衝力に加え省資源を実現」「中部経済新聞」2006年11月7日
・「プチプチ」関連グッズの紹介記事。?「プチプチつぶせばプチ幸せ\気泡シート、面白グッズに進化」「日経流通新聞」2007年8月6日
・「プチプチグッズ」の紹介記事。気泡シートの業界最大手のメーカーが、音や形にこだわった「遊び用」の商品を販売、との記載。?「プチプチスリム\遊び専用」「朝日新聞(夕刊)」2007年8月7日
・緩衝材の代表格「プチプチ」を商標登録する川上産業が、環境に対応した「プチプチ」商品、一般消費者向けのオリジナル商品、バンダイとのコラボレーションによるゲーム「∞(むげん)プチプチ」などの種類豊富な商品を展開しているとの紹介記事。?「挑む\種類豊富『プチプチ文化』\川上産業」「読売新聞」2007年8月20日
・ゲーム「∞(むげん)プチプチ」の紹介記事。バンダイの開発者、高橋晋平氏の開発秘話の紹介。?「『∞プチプチ』快感\つぶすと癒やされるんです」「東京新聞」2007年7月2日
・ゲーム「∞(むげん)プチプチ」の紹介記事。「9月の発売後わずか9日で30万個が売れた。年内に100万個を出荷する予定だ。」との記載?「技あり\∞(むげん)プチプチ\つぶし続け指先の感触再現」「朝日新聞」2007年12月8日
・「プチプチ」商品の紹介記事。つぶす観点からの商品開発について紹介。?「ぷちっと心も包む」「中日新聞」2008年1月12日
以上のとおり、請求人商品「プチプチ」が、社内ベンチャーによる一般需要者向け商品の開発、異業種とのコラボ商品等を通じて各種メディアに注目され、紹介されている事実、「プチプチ」が請求人の登録商標であり一般名称は「気泡シート」等であることが周知徹底され、需要者に認知されている事実が明らかである。
また、以下は、1998年及び1999年時点で公証を受けた請求人作成の書類であり、請求人が全国の同社の営業所(現在の営業所所在地は甲第12号証参照)へ向けてカタログ等を送付して販促を図っていたこと、少なくとも10年前の1998年以降、商標「プチプチ」を登録商標として表示して使用してきた事実を示すものである(甲第13号証)。
・請求人のカタログ?1998年12月19日、各営業所へ配布。「環境対応プチプチ(R)シリーズ」と記載され、環境に配慮した各種「プチプチ」派生商品が掲載されている。
・請求人の営業案内?1999年3月12日、各営業所へ配布。「川上産業株式会社は気泡シート『プチプチ(R)』の専門メーカーです。」と記載され、「プチプチ」商品の各種用途、派生商品、全国の請求人営業所が掲載されている。
・請求人のカタログ?1999年3月26日、各営業所へ配布。「プチプチ(R)」の用途例が記載されている。
・請求人のカタログ?1999年6月23日、各営業所へ配布。「プチプチ(R)」の用途例が記載されている。
・請求人のサンプル帳?1999年7月27日、各営業所へ配布。「空気を含んだポリエチレン製気泡シート\プチプチ(R)」と記載されている。
以上のように、請求人の商標「プチプチ」は、気泡緩衝材についての請求人の永年に亘る使用により当該業界において知られているほか、一般向け商品、そして「プチプチスリム」によって、一般需要者の間でも広く知られるに至っているものである。
よって、「プチプチ」の語を含む本件商標が指定商品について使用された場合には、本件商標出願時及び登録時において、請求人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されていた引用商標と誤認混同されるおそれがあるので、商標法第4条第1項第15号に該当するものである。
前記のとおり、特許庁の商標審査基準によれば、他人の著名商標と他の文字を結合した商標は、その外観構成がまとまりよく一体に表されているもの又は観念上の繋がりがあるものなどを含め、原則として、商品の出所の混同を生ずるおそれがあるものと推認して取り扱うものとしている。
本件商標も、請求人の著名商標である「プチプチ」を取り込んだ商標として、引用商標と混同を生ずるおそれある商標と判断されるべきである。
(3)本件商標と引用商標の出所混同のおそれ
請求人の商標「プチプチ」に係る商品は、請求人が独自に開発した機械によって製造されるものであるところ、本件商標が指定商品中「プラスチック加工機械器具」に使用された場合には、請求人商品(甲第14号証)の製造に関係する商品であるがごとく誤認されるおそれがある。他の本件指定商品、「パルプ製造用・製紙用又は紙工用の機械器具」についても、請求人商品が一般向けのラッピング素材としても使用されていることから、請求人商品「プチプチ」の製造に関係する商品であるがごとく誤認されるおそれがある。例えば、請求人の「はあとぷち」(商標登録第4847253号、甲第14号証の2参照)は気泡がハート型になっている女性向けのラッピング素材であり、この製品については意匠登録もされている。「手提袋」(意匠登録第1261871号)、「プラスチック気泡シート製包装袋」(意匠登録第1239142号)、気泡が星型の「合成樹脂地」(意匠登録第1239132号、意匠登録第1239135号)等である。
また、本件指定商品「廃棄物圧縮装置,廃棄物破壊装置」についても、請求人商品「プチプチ」の使用後の廃棄に関係する装置であるがごとく誤認されるおそれがある。請求人ホームページに記載されているように、請求人は「むだをとことん省く『むだとりプチシリーズ』」、「環境を改善する『かんきょうプチシリーズ』」等、エコやリサイクルの視点での製品づくりをしており(甲第14号証)、その事業上、廃棄物処理との関連もあると認識され得るからである。
現実に、本件商標権者は気泡緩衝シートの処分時に減量化するための機械を販売している(甲第15号証)。
請求人商品「プチプチ」の一般名称は気泡緩衝シート、気泡シート、あるいは気泡緩衝材であり、本件商標権者は当該商品の名称としては、「気泡緩衝シート圧縮機」などと付けるか、あるいは独自の商標を使用すべきところ、他人の商標を取り込んで自己の商標として使用していることになる。請求人商品「プチプチ」の業界シェアが高く、しばしば気泡緩衝材商品の代名詞のように称されるからといって、普通名称ではない他人の商標を取り込んで商標化することは許されない。前項で述べた引用商標の周知性により、引用商標を取り込んだ商標を他人が使用すると、引用商標権者が、前記のとおり、エコやリサイクルの視点での製品づくりをしていることと相俟って、引用商標権者と何らかの関係がある者の商品であるがごとく誤認されるおそれが高い。
さらに取引者、需要者の誤認のおそれが高いのは、請求人が商標「プチプチ」について他社と共同で製品開発をしていることが当業界において、また一般需要者にもコラボ製品を通じて周知となっているからである。すなわち、商品「プチプチ」の製造機械、廃棄装置等についても、他社と提携関係があるがごとく誤認される可能性が高いものである。
(4)商標「プチプチ」の一般名称化の防止の必要性
「プチプチ」の語が、気泡緩衝材の代名詞のように認識されるに至ったことについては、請求人が「プチプチ」という商品の特性をわかりやすく示す表示を商標として採択して使用し、しかも請求人の商品が同種商品に占めるシェアが高いことによる。「プチプチ」という語は、請求人が発案して使用を開始した語であって、請求人が使用するまでは一般には使用されていなかった語であり、現在でも請求人商品あるいはその形状が直ちに想起されるほかは、他の意味で一般的に使用される語ではない。(広辞苑第六版にも、例えば「ぱちぱち」、「ぴちぴち」、「ぽちぽち」という擬態語は掲載されているが、「ぷちぷち」は掲載されていない。)
強いて言えば食品の食感を表す語としての使用はある。「プチプチ」、「ぷちぷち」の語で商標登録を検索すると、例えば、食品に含まれるアロエ、たらこ、海ぶどう、米の成分についての記述的用例がある(甲第16号証)。しかし、これらについても新食感あるいは新鮮な食感として強調されているのであり、食品についても一般的に使用されているとはいえない。ましてや食品以外の商品については更に一般的な用語ではない。
当該商品について、わかりやすく親しみやすいネーミングとして先駆的であるがゆえに、その商品の代名詞であるかのごとく、商標が希釈化する例は多々ある。希釈化して一般名称化するかどうかは、ひとえに権利者の商標管理にかかっていると言ってよい。「プチプチ」の商品表示については、請求人はネーミング当初からの商標登録を始めとして、ブランド管理を怠ったことがなく、権利化の努力、自社製品を「プチプチ」あるいは「プチ」、「ぷち」の語を含むブランドとして、そのグッドウィルを維持する努力をしてきたものである。請求人の企業努力により「プチプチ」の商品表示に化体した多大な信用を保護することこそ、商標法の趣旨、目的に適うと考える。
「∞プチプチ」の例のように、請求人は「プチプチ」の形状と関連性を持ちながら当初商品の気泡緩衝材とは全く異分野の商品についても権利化し使用を許諾するという知財戦略を採っている。よって、第三者によって「プチプチ」の語を含む商標が異業種の商品に拡散して使用されることによって、商標「プチプチ」の出所表示機能が希釈化することも防止する必要がある。
最高裁判例(甲第17号証、平成12年7月11日、最高裁判所第三小法廷判決、平成10年(行ヒ)第85号)にも示されているように、商標法第4条第1項第15号の規定は、いわゆる広義の混同も防止することを目的とするところ、そこには商標の機能の希釈化防止も含まれている。
該判例に照らせば、請求人の商品について周知な「プチプチ」の語を取り込んだ本件商標は、請求人と何らかの営業上の関係があると需要者に誤信させるおそれがある。そして、他人が「プチプチ」の語を含む商標を登録して使用することにより、引用商標の出所表示機能が拡散し希釈化するおそれがある。引用商標は、ネーミング当初において独創的なものであり、請求人商品について高い識別力を発揮するものである。請求人商品の市場シェアが高いことにより当該商品の代名詞のごとく一般需要者に誤認されることを防止し、引用商標に化体した多大な信用を保護する必要がある。広義の混同をも防止するという商標法第4条第1項第15号の目的に照らし、本件商標は無効とされるべきである。
3 むすび
本件商標が本件指定商品に使用された場合、その商品の需要者が請求人の業務に係る商品と出所について混同するおそれがある。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものであるから、その登録を無効とされるべきである。

第4 被請求人の答弁
被請求人は、「本件審判の請求は成り立たない。審判費用は、請求人の負担とする。」との審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第24号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 答弁の理由の要約
本件商標は、請求人の商標として取引者・需要者の間に広く認識されているものではなく、また、請求人の商標を結合したものでもない。よって、本件商標がその指定商品に使用された場合に、商品の出所について混同を生ずるおそれはない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しているものではないから、その登録を無効にされるべきものではない。
2 具体的理由
(1)本件商標の構成について
ア 「プチプチ」ないし「ぷちぷち」の語は、「物が勢いよく燃えてはぜる音・・・」等の擬態語・擬音語として用いられている。擬態語・擬音語としての用例は古くは17世紀の「仮名草子・片仮名本因果物語」や、20世紀初頭の「思出の記」にも見られるものとして辞書類に記載されており、本件商標の登録出願時または査定時においても、このような擬音語・擬態語として知られている。
請求人はこのような擬態語としての「プチプチ」ないし「ぷちぷち」は「普通の辞書には記載されている語ではない」としているが、その請求人の主張は事実とは異なる。
具体的には辞書類には以下のような記載が存在する。
(ア)「日本国語大辞典第二版第11巻」には、「ぷちぷち」の語が「物が勢よく燃えてはぜる音。また、そのさまを表わす語。」と記載されている。また、その用例として、「火強くでる間、若竹を指入て置に、ぷちぷちと焼て、燃来なり」(仮名草子・片仮名本因果物語)や「榾のぷちぷち燃ふる音や」(思出の記・徳富蘆花)が示されている(乙第1号証)。
(イ)「擬声語 擬態語 慣用句辞典」には、「ぷちぷち」の語が「フライパンで水分がはじけたりして出す音」の意味であると記載されている。また、その用例として、「バターに含まれている水分がはじけてプチプチと音がしはじめる」(8月の食卓目玉焼き・森須滋郎)が示されている(乙第2号証)。
(ウ)「類語大辞典」には、「ぷちぷち」の語が「外からの力によってはじけるときに出る音の様子」の意味であると記載されている。また、その用例として、「イクラが口の中で?とはじけた」が示されている(乙第3号証)。
(エ)その他、「プチプチ」ないし「ぷちぷち」が擬態語・擬音語として用いられていることを示す用例としては、絵本「ぷちぷち(ことばであそぼ)」に記載されている例(乙第4号証)、児童書「絵本から擬音語擬態語ぷちぷちぽーん」に記載されている例(乙第5号証)、口の中で感じる第3の「味」として、発芽白米の食感を「プチプチ」と表現している例(乙第6号証)等が見られる。
イ また、「プチプチ」は「小さい」との意味でも用いられることが知られている。
(ア)「プチ」等の程度等を表す語を二つ連続併記して「プチプチ」とするなど、リズム感の良い称呼の商標とするとともに、その程度等の意味合いを一層強調するこのような用例は多く存在している。
(a)例えば、「トクトク」(得々、特得)は「トク(得)」という語を重ねることにより、「よりー層お得な」という意味で商品・サービスの値段の安さを強調する語として良く用いられている。
例えば、西日本高速道路株式会社HPでは「トクトクETC」の紹介サイトが掲載され(乙第7号証)、NECHPでは「トクトクポケット」の紹介サイトが掲載され(乙第8号証)、JR四国株式会社HPでは「トクトクきっぷ」の紹介サイトが掲載され(乙第9号証)、株式会社イメージングの通販HPでは「激安通販トクトク市場」の紹介サイトが掲載されている(乙第10号証)。
(b)また「ラクラク」(楽々)は、「ラク(楽)」という語を重ねることにより、「より一層楽な」という意味で手軽さ等を強調する語として良く用いられている。
例えば、パナソニックHPでは「おそうじラクラク宣言」の商品紹介サイトが掲載され(乙第11号証)、村上雅章訳「Spideringhacks-ウェブ情報ラクラク取得テクニック101選」オライリー・ジャパン社の書籍が発行されており(乙第12号証)、バンダイナムコからはニンテンドーDSゲーム用に「どこでもラクラク!DS家計簿」という名称のゲームソフトが発売されている(乙第13号証)。
(c)また「コミコミ」は、「コミ(込み)」という語を重ねることにより、「すべて込みで」という意味で必要な料金・費用等を全て含んでいる点等を強調する語として良く用いられている。
例えば、OCNのHPでは「コミコミ(D)」というインターネット接続サービスの紹介サイトが掲載され(乙第14号証)、ローン比較HPでは「コミコミEローン比較」というカードローンの比較紹介サイトが掲載され(乙第15号証)、ショッピング総合サイトHPでは「コミコミEショッピング」という通販比較紹介サイトが掲載されている(乙第16号証)。
(イ)そして、フランス語由来の外来語「プチ(petit)」は、「小さい。細かい。わずかな。かわいい。愛らしい。」(「現代人のカタカナ語欧文略語辞典」)との意味の語として認識・使用されている(乙第17号証)。
この「プチ」を二つ連続して併記した「プチプチ」ないし「ぷちぷち」について、「より小さい」等の印象を与える形容詞・副詞として用いられている。例えば、以下のとおりである。
(a)NHKの比較的短い時間のアニメテレビ番組群の総称として「プチプチ・アニメ」が使用されている(乙第18号証)。
(b)「ひらかたプチプチ情報局」という情報提供インターネットサイトの名称が使用されている(乙第19号証)。
(c)バンダイナムコのたまごっち紹介インターネットサイトに「たまごっちのプチプチおみせっち」の名称が使用されている(乙第20号証)。
ドッグサロンの名称に「プチプチ(pettit・petit)」の語が使用されている(乙第21号証)。
(d)ニンテンドーDSゲーム用に「ぷちぷちウイルス」という名称のゲームソフトが知られている(乙第22号証)。
ウ 請求人は、「『スリム』は『細いさま。ほっそりしたさま。』の意味が看取される」との前提の下に、「本件商標全体からは、一般的には『プチプチ(した形状のもの)が細い』」という観念、・・・が生ずる」旨を主張する。しかしながら、「プチプチ」の語から、請求人が主張するように、ただちに「プチプチ(した形状のもの)との観念が生ずるとの一般的な認識は存在していない。
「プチプチ」は主として、前述のように、主として「物が勢いよく燃えてはぜる音・・・」などの擬音語・擬態語として、又は、「小さい」との意味のフランス語由来の外来語「プチ」を元にした「小さい」を意味する語として請求人商標の以前から現在に至るまで存在・認識されてきたものであり、これを越えて「特定の形状のもの」を想起させるような一般的な認識は存在していない。また、そのような形状を特定する語であるとの主張を根拠付ける証拠、そのような形状を特定する語としての多数の用例を示す証拠は、請求人においてなんら示されていない。
本件商標の指定商品の取引者・需要者において、「プチプチしたもの」「プチプチした形状のもの」などの観念が生ずると認識される具体的実状も一切存在していない。
また、「プチプチ」の語から、このような「プチプチ(した形状のもの)との観念がただちに生ずるのであれば、「プチプチ」の語が、そもそも請求人の商標として著名性を有しないことを根拠づけるものである。
引用商標の「プチプチ」の語は、単に、このような従来から我が国において知られていた擬態語・擬音語、又はフランス語を由来とする外来語「プチ」が二つ連続した語を請求人商標として選択したものにすぎない。
よって、引用商標は、請求人が主張するような「請求人の独創性に基づく商標」とはいえず、独創性を根拠にした請求人商標の著名性は否定されるべきものである。
そして、上記の通り、擬態語・擬音語、又は「小さい」という大きさの程度を表す語として「プチプチ」が用いられている実状に鑑みると、引用商標はいずれも著名な商標とまでは言えない。これは後述する(4)の乙第24号証に列記の「プチプチ」の文字列、又は「プチプチ」を称呼に含む請求人及び被請求人以外に係る多数の登録商標が存在することからも明白である。
したがって、本件商標をその指定商品に使用した場合に、請求人商標と混同を生ずるおそれはない。
エ また、仮に「スリム」の語が「細いさま。ほっそりしたさま。」との意味を看取される語であるものとしても、本件商標は「プチプチ」及び「スリム」が外観上一連によどみなく記されていることのほか、前述したように、「プチプチ」には「プチプチした形状のもの」との意味が生じることは無く、全体として「スリムであるプチプチした形状のもの」との観念は生じない。「プチプチ」が「小さい」との意味を持つことを前提にすると、「プチプチスリム」の構成全体において「小さい」の意味を強調する印象を与える造語として印象付けられるものである。よって、「スリム」を除いて「プチプチ」のみで認識されることはなく、本件商標は、「プチプチスリム」全体として識別力が生ずるものと考えるべきである。
したがって、請求人の主張するように、本件商標の構成のうち「プチプチ」のみが識別力を有するとの前提の下に本件商標が請求人商品と関連した意味を持つ文字列である、と解するべきではない。
(2)本件商標と引用商標の出所混同のおそれについて
上記(1)のとおり、引用商標は、請求人の独創に係る語ではなく、擬態語・擬音語、又は「小さい」との意味をなす語として用いられているものである。そして、本件商標は「プチプチスリム」全体として識別力を生ずるものである。また、請求人には特に関連性のあるグループ企業の存在はないか、又は全く知られておらず、グループ企業との関連性等を有するとの出所混同を推認させるような企業活動は存在していない。請求人において携帯用ストラップやおもちゃの企画等においてコラボレーションを行っていたとしても、そのような活動は単に「提携」の域を超えないものであって、「親子会社や系列会社等の緊密な営業上の関係」等までに至るものではない。このような範囲の企業活動を論拠に、防止すべき「出所の混同」が請求人においてただちに生ずると主張することは認められないものと解するべきである。
よって、本件商標をその指定商品「第7類 廃棄物圧縮装置,廃棄物破壊装置,パルプ製造用・製紙用又は紙工用の機械器具,プラスチック加工機械器具」のいずれに使用したとしても、請求人主張の商品のいずれともいわゆる「広義」の意味においても出所の混同を生ずるものではない。
(3)請求人商標「プチプチ」の一般名称化について
商標法における商標の保護は、商標に化体された「信用」を保護することが目的であり、商標に生じた「ブランド」や「顧客吸引力」の保護は、この「信用」を保護する結果として間接的に実現されるにすぎない。著名商標の「希釈化」の防止は、商標法においては、あくまでこの「信用」を保護する結果として行われるにすぎないものである。
したがって、「希釈化」の防止は、「出所の混同」が生ずる場合にのみ認められるものであって、「出所の混同」が生じない場合にまで「希釈化」の防止を目的として商標法第4条第1項第15号の適用が認められるものと解するべきではない。
これを引用商標について当てはめると、「プチプチ」の語は引用商標以前に、「物が勢いよく燃えてはぜる音・・・」等を意味する擬態語・擬音語、又は「小さい」との意味の形容詞・副詞として用いられており、請求人の独創語ではない。現に、上記したように、これらの用例が多数見られるところである。また、請求人には特に関連性のあるグループ企業の存在はないか、又は全く知られておらず、グループ企業との関連性等を有するとの出所混同を推認させるような企業活動は前提として存在していない。
よって、引用商標は高い識別力を生ずるものではなく、引用商標に保護すべき著名性はない。
また、仮に引用商標が著名性を有していたとしても、引用商標の指定商品と被請求人商標の指定商品との混同のおそれがないと解するべき本件において、希釈化防止を目的に商標法第4条第1項第15号を適用するべきではない。
(4)「プチプチ」を称呼に含む商標についての請求人及び被請求人以外に係る商標登録について
以上のとおり、引用商標には本件商標を無効にすべき著名性を備えていないが、これを推認させる事実として、「プチプチ」の文字列、又は「プチプチ」を称呼に含む請求人及び被請求人以外の所有に係る本件商標の登録以前に登録が認められた多数の登録商標の存在がある(乙第23号証)。これらの登録商標は請求人が擬態語としての「プチプチ」の存在を認める「食品」関係のみならず、「食品」以外の多様な商品に関しても登録が認められていることを示している。
これらの登録第999760号商標ほか、計31件を乙第24号証として示す。
3 以上のとおり、本件商標は、請求人の商標として需要者の間に広く認識されているものではなく、また、請求人の商標を結合したものでもなく、本件商標がその指定商品に使用された場合に、商品の出所について混同を生ずるおそれはない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しているものではなく、無効にされるべきではない。

第5 当審の判断
1 請求の利益について
本件審判請求に関し、当事者間に利害関係について争いがないので、本案に入って判断する。
2 引用商標「プチプチ」の周知性について
(1)請求人提出の証拠によれば、以下の事実が認められる。
ア 甲第4号証、甲第9号証及び甲第10号証は、川上産業の気泡緩衝材(気泡シート)「プチプチ」又はこれを応用したおもちゃ等を題材に取り上げた第三者のインターネット上のホームページ情報である。
イ 甲第6号証は、川上産業のホームページであり、「会社概要」の「沿革」によれば、1968年創業、1977年には「プチプチ メーカー」として関連会社を設立している。その後、「リサイクルプチ」(1997年2月)、「オレンジプチ」(1997年3月)、「グリーンプチ」(1999年8月)、「ダイダイプチ」(2000年9月)、「∞プチプチ」(2007年9月)などの商品を発売し、「プチプチ」又は「プチ」を含む商標を使用している。そして、これらの商品は、「プラスチック基礎製品」、「プラスチック製包装用緩衝材」といったものから、「テレビゲーム用おもちゃ」、「おもちゃ」などの娯楽用商品としても開発され発売されたことが認められる。
ウ 甲第7号証は、平成20年8月1日付け「『元気なモノ作り中小企業300社2008年版』の取りまとめについて」(中小企業庁創業・技術課)とされる資料であり、この中で「国内市場を中心に高いシェアを持つ製品を製造している企業の事例」として、「プチプチ(R)で知られる気泡シートメーカー(愛知県名古屋市、川上産業(株))/『プチプチ(R)』の名で知られる緩衝材と使われる気泡シートで国内シェアの45%。最近では、玩具メーカーとの共同開発による『∞(むげん)プチプチ(R)』がヒット。原材料を削減した軽量の『ダイエットプチ(R)』、生分解により土に還る『グリーンプチ(R)』などの環境対応型製品の開発にも力を入れる。」と記載がある。
エ 甲第8号証は、インターネットショップ「アスクル」のホームページによる川上産業の商品「プチプチ(R)」の取引画面である。
オ 甲第11号証は、川上産業の気泡緩衝材(気泡シート)「プチプチ」又はこれを応用したおもちゃ等を題材に取り上げた雑誌及び新聞の記事に関するものである。
カ 甲第12号証は、川上産業の会社案内「Corporation Guidebook」及び川上産業のホームページにおける事業所一覧である。
キ 甲第13号証は、川上産業の本社から営業所へ送付された気泡シート「プチプチ」のカタログ及び営業案内のパンフレット等の送付に関する社内資料である。
ク 甲第14号証は、川上産業のホームページにおける「商品案内」等についてである。
(2)以上の事実からすると、引用商標「プチプチ」は、我が国の包装用気泡緩衝材の気泡シートで国内シェア45%の高いシェアを持っており、その取引者又は需要者の間では、本件商標の登録出願前より、請求人の取り扱いに係る商品「包装用気泡緩衝材(気泡シート)」を表す代表的商標として周知著名であり、現在においてもその著名性は継続しているものと認められる。
また、請求人の商品に係る素材の性質からアイデア商品の一つとして、我が国有数の玩具メーカーである「バンダイ」と共同開発された「∞(むげん)プチプチ」の名称(商標)のように「プチプチ」をその構成中に含む商標が「おもちゃ」に使用され、これがヒット商品となったことから、引用商標「プチプチ」は、包装用気泡緩衝材の取引者又は需要者以外の一般の需要者にも相当程度知られるに至っているといい得るものである。
3 商標法第4条第1項第15号の該当性について
(1)商標の類似性について
本件商標は、前記第1のとおり、「プチプチスリム」の片仮名文字を標準文字で表してなるから、全体として「プチプチスリム」の称呼及び「プチプチ(した形状のもの)が細い」という意味合いを生じるものである。
また、本件商標は、その指定商品「廃棄物圧縮装置,廃棄物破壊装置,パルプ製造用・製紙用又は紙工用の機械器具,プラスチック加工機械器具」との関係において、その構成中の「スリム」の語が、少ないスペースにも設置できる幅の狭い商品のように「細いサイズの商品、幅の狭い商品」であること又は廃棄物をスリム化(減容化、減量化)する商品(甲第15号証)であること、すなわち、指定商品の形状、品質等を表したものと理解、認識される語であるから、本件商標中、自他商品の識別標識としての機能を果たす文字部分は、「プチプチ」の文字部分にあり、この文字部分より「プチプチ」の称呼及び「プチプチ」の観念を看取させるものである。
一方、引用商標は、「プチプチ」の片仮名文字よりなるところ、その語自体は、請求人が独自に採択した特徴のある創造語的な商標といえるものであって、該文字は包装用気泡緩衝材はもとより、上記2のとおり、おもちゃにも「∞(むげん)プチプチ」のように「プチプチ」を構成中に含む商標が使用され、一般にも広く知られている周知商標といえるものである。
そうすると、本件商標「プチプチスリム」と引用商標とは、「プチプチ」の称呼及び「プチプチ」の観念を共通にするものであり、全体として「プチプチスリム」の称呼及び「プチプチ(した形状のもの)が細い」という意味合いを看取する場合があるとしても、引用の周知商標「プチプチ」をその構成中に含むものであるから、本件商標と引用商標とは極めて類似性の程度の高い商標といわざるを得ない。
(2)本件商標の指定商品と引用商標の使用に係る商品との関連性について
本件商標の指定商品は、第7類「廃棄物圧縮装置,廃棄物破壊装置,パルプ製造用・製紙用又は紙工用の機械器具,プラスチック加工機械器具」である。
一方、引用商標の使用に係る商品は、「包装用気泡緩衝材(気泡シート)」である。そして、該商品は、包装用のほかに各種精密機械等の梱包等において気泡緩衝材としても用いられている。
ところで、請求人が提出している甲第15号証の1は、作成日不明の被請求人「株式会社オカベカミコン」の商品カタログとみられるものである。その掲載商品は、「プチプチスリム」と記載され、気泡緩衝シートを裁断、圧縮することで減容化する機械である。
また、同号証の2の被請求人が発刊する「オカベニュース」(第42号 平成20年10月発行)によれば、被請求人が「2008東京国際包装展(TOKYO PACK 2008)」(10月7日(火)?11日(土)東京ビッグサイト)において、気泡シートを減量化する機械「プチプチスリム」を出展する内容が記載されている。
そうすると、上記事実によれば包装用や梱包用に用いられる気泡緩衝材を廃棄処理するための機械が実際に存在していることがわかる。
また、気泡緩衝材を製造するプラスチック加工機械器具といった加工機械があることからすれば、本件商標の指定商品中「包装用気泡緩衝材(気泡シート)に係る廃棄物圧縮装置・廃棄物破壊装置・プラスチック加工機械器具」等の商品は、引用商標の使用に係る商品「包装用気泡緩衝材(気泡シート)」を対象とする関連のある商品というべきである。
してみれば、本件商標の指定商品と引用商標の使用に係る商品との間には、充分に関連性があるといえるものである。
(3)商品の出所の混同のおそれについて
そうすると、本件商標に接する需要者は、その構成中の「プチプチ」の文字部分より、請求人の商品「包装用気泡緩衝材(気泡シート)」の周知商標「プチプチ」を直ちに想起又は連想し、本件商標をその指定商品について使用した場合には、該商品が請求人又は請求人と業務上何らかの関係のある者の取扱いに係る商品であるかのように、商品の出所について混同を生ずるおそれがあるものと認められる。
したがって、本件商標は、これをその指定商品に使用する場合には、これに接する取引者、需要者があたかも請求人又は請求人と組織的、経済的に何らかの関係を有する者の取扱いに係る商品であるかのように商品の出所について混同を生ずるおそれがあるというべきである。
してみれば、本件商標は、その登録出願時及び登録査定時において他人の業務に係る商品と混同を生ずるおそれがある商標というべきものであるから、商標法第4条第1項第15号に該当するものと認められる。
4 被請求人の主張について
(1)被請求人は、「プチプチ」、「ぷちぷち」の語について、擬音語、擬態語として知られているとして乙第1号証ないし乙第16号証を提出し、また、被請求人は、仏語の「petit」(小さい、細かい、わずか、等)の例を挙げ(乙第17号証)、「プチ」を二つ連続して併記して「より小さい」等の印象を与える形容詞・副詞として用いられている例も挙げ(乙第18号証ないし乙第22号証)、「引用商標は、請求人が主張するような『請求人の独創性に基づく商標』とはいえず、独創性を根拠にした引用商標の著名性は否定されるべきである。」旨主張する。
確かに、「プチプチ」、「モグモグ」、「トクトク」、「ラクラク」及び「コミコミ」等の例は、擬音語、擬態語として用いられているが、これらはほとんど前後の紹介記述とともに用いられている例で、例えば、食品の食感を表す場合、料金などが得をする場合、掃除が楽にできる場合、情報がまとめられている場合などであって、本件商標の指定商品である「廃棄物圧縮装置,廃棄物破壊装置,パルプ製造用・製紙用又は紙工用の機械器具,プラスチック加工機械器具」との関連性を考慮した場合、ほとんど関連性がないというのが相当である。
したがって、この点に関する被請求人の主張は採用できない。
(2)また、被請求人は、本件商標は全体として識別力が生ずるとし、いわゆる「広義の混同」も生ずるものではない、旨も主張する。
しかしながら、請求人の引用商標が商品「包装用気泡緩衝材」に使用され周知著名であり、アイデア商品(おもちゃ)などにも用いられ一般の需要者にも相当程度知られるに至っていることは、上記のとおりであり、また、本件商標「プチプチスリム」を常に一体不可分のものとしてのみ認識、把握しなければならないとする格別な事由が見当たらないことも上記のとおりであるから、この点に関する被請求人の主張も採用できない。
5 まとめ
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別 掲(商願2008-54180号商標)




審理終結日 2009-07-14 
結審通知日 2009-07-16 
審決日 2009-07-29 
出願番号 商願2007-126694(T2007-126694) 
審決分類 T 1 11・ 271- Z (X07)
最終処分 成立  
前審関与審査官 鈴木 斎竹之内 正隆 
特許庁審判長 渡邉 健司
特許庁審判官 井出 英一郎
鈴木 修
登録日 2008-08-29 
登録番号 商標登録第5162161号(T5162161) 
商標の称呼 プチプチスリム 
代理人 村山 信義 
代理人 西村 雅子 
代理人 宮永 栄 
代理人 田畑 浩美 

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