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審決分類 |
審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Z16 |
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管理番号 | 1203834 |
審判番号 | 取消2008-300389 |
総通号数 | 118 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2009-10-30 |
種別 | 商標取消の審決 |
審判請求日 | 2008-03-27 |
確定日 | 2009-08-24 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第4389300号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 登録第4389300号商標の商標登録は取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。 |
理由 |
第1 本件商標 本件登録第4389300号商標(以下「本件商標」という。)は、「コンプライアンス」の片仮名文字を標準文字により表してなり、平成12年1月6日に登録出願され、第16類「新聞,雑誌,その他の印刷物」を指定商品として、同年6月2日に設定登録されたものである。 そして、本件審判の請求の登録は、平成20年4月15日にされたものである。 第2 請求人の主張 請求人は、結論同旨の審決を求めると申し立て、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証及び甲第2号証を提出した。 1 請求の理由 請求人が調査した限りにおいては、本件商標が商標権者によって継続して3年以上日本国内において使用されている事実を発見することができなかった。また、商標登録原簿をみても専用使用権及び通常使用権は設定登録されておらず、許諾を受けた通常使用権者等による使用の事実もない。 さらには、本件商標を使用していないことについての正当な理由も認めることができない。 よって、本件商標は、商標法第50条第1項の規定に基づき、その商標登録の取消しを請求するものである。 2 弁駁の理由 答弁の理由及び乙第1号証のいずれからも、被請求人が、本件商標を審判請求の登録前3年以内に本件商標に係る指定商品について使用し、かつ、現在に至るまで継続使用していることの確証は得られない。 (1)乙第1号証について ア 使用標章 乙第1号証は、商標権者(被請求人)の編集及び発行に係る雑誌「ファイナンシャルコンプライアンス」誌の表紙、奥付、裏表紙である。 この表紙部分に、二段併記により「ファイナンシャル」の片仮名文字が上段に、「コンプライアンス」の片仮名文字が下段に同じ書体によりほぼ同じ大きさで書されている(以下「使用標章1」という。)。 また、同じく奥付部分に二段併記により「ファイナンシャル」の片仮名文字が上段に、「コンプライアンス」の片仮名文字が下段に全く同じ書体で、かつ、同じ大きさで書されている(以下「使用標章2」という。)。 さらに、同じく裏表紙部分には「ファイナンシャルコンプライアンス」の片仮名文字が同書・同大・等間隔に書されている(以下「使用標章3」という。)。 イ 本件商標と使用標章1ないし3の対比 (ア)使用標章1は、「ファイナンシャルコンプライアンス」誌の題号を示すものであり、「ファイナンシャル」と「コンプライアンス」の各片仮名文字が、ほぼ同じ文字の大きさで、かつ、同じ書体であるため、外観上まとまりよく一体に書されているといえる。また、「ファイナンシャル」の片仮名文字は「財政上の」や「会計上の」の意味合いを有し、他方、「コンプライアンス」の片仮名文字は「法令順守」の意味合いを有するものとして広く知られているから、「ファイナンシャルコンプライアンス」の文字からは「財政上の法令順守」や「会計上の法令順守」といった意味合いを有するため観念上も一体であるといえる。 (イ)使用標章2は、「ファイナンシャルコンプライアンス」誌の奥付部分に書されているが、これは乙第1号証が「ファイナンシャルコンプライアンス」という名称の雑誌であることを示すものである。 (ウ)使用標章3は、背表紙部分に「ファイナンシャルコンプライアンス」と書されているものであって、一般に、雑誌の販売形態は、書店において平積みのみならず書棚に置かれることも多いから、本件指定商品の分野における需要者は、背表紙に表示された名称をたよりに雑誌を購入するという取引の実情があり、また、使用標章3は、「ファイナンシャルコンプライアンス」の片仮名文字を同書・同大・等間隔に書してなるため、構成上一体不可分である。 (エ)以上のとおり、使用標章1ないし3は、本件商標と全く異なる「ファイナンシャルコンプライアンス」の標章を使用しているものと認定、判断されるのが自然である。 (2)登録商標の社会通念上同一性について 被請求人は、乙第1号証の雑誌題号が、本件商標「コンプライアンス」の文字の上段に「ファイナンシャル」の文字を付記しているとはいえ、二段構成のうえ、書体の大きさを変え、「コンプライアンス」の部分が特別目に付く態様で表示されているのであるから、商標法第50条第1項括弧書きに規定された「社会通念上同一と認められる商標」に含まれる旨を主張している。 しかし、商標法第50条第1項括弧書きの規定は、過剰な防衛出願や防衛登録等の本来使用することを予定するものではない商標に係る登録出願の抑制を図る点にあるため、「書体のみに変更を加えた同一の文字からなる商標」等の社会通念上同一と認められる商標の範囲を例示しているものであるから、被請求人が主張するように、登録商標の範囲を単純に拡大することを目的としたものではない。よって、被請求人の主張は、失当である。 (3)パリ条約5条C(2)について 被請求人は、パリ条約5条C(2)は、「商標の所有者が一つの同盟国において登録された際の形態における商標の識別性に影響を与えることなく、構成部分に変更を加えてその商標を使用する場合には、その商標の登録の効力は失われず、また、商標に対して与えられえる保護は縮減されない。」旨が規定されており、また、条約優位の観点から商標法第50条に規定する登録商標は、上記パリ条約5条C(2)により修正して適用せられるべきものである旨を主張する。 しかし、パリ条約5条C(2)は、商標の識別性に影響を与えないことを条件として、その登録商標の変更使用を他の同盟国において認めるものであって、商標の識別性に影響がある場合はその登録商標の変更使用は認められない。 翻って、本件商標は、「コンプライアンス」の片仮名文字よりなり、「法令順守」の意味合いを有するものであり、他方、使用標章1は「ファイナンシャルコンプライアンス」の片仮名文字よりなり、「財政上の法令順守」や「会計上の法令順守」の意味合いを有するものである。そのため、我が国に登録された際の形態における商標の識別性に影響を与えることは一見して明らかである。このような場合には、パリ条約5条C(2)の保護の対象とならず、まさに「その商標の効力が失われ」るべきであり、また、「商標に対して与えられる保護も縮減され」るべきである。よって、被請求人の主張は、失当である。 第3 被請求人の答弁 被請求人は、「本件審判の請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。との審決を求める。」と答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証を提出した。 1 答弁の理由 本件商標は、商標権者が発行している月刊誌の商標として、審判請求の登録前である平成19年10月1日から現在に至るまで、日本国内において使用されてきたものである。 (1)乙第1号証は、商標権者が平成19年10月1日に発行した月刊誌である「コンプライアンス」誌の平成19年11月号表紙、奥付け、裏表紙の各写しである。 この雑誌の表紙上部の、通常、題号を表示する部分には、表紙の横幅全体にわたって、比較的に大きな書体からなる「コンプライアンス」の片仮名文字が一連に大きく表示されているから、本件商標が使用されていることが明白である。 (2)乙第1号証の雑誌は、表紙の横幅全体を占める「コンプライアンス」の上段に、これよりも小さい書体からなる「ファイナンシャル」片仮名文字が付記されているが、これは「コンプライアンス」の横幅よりも短く、しかも、上下に分離されており、さらには、「コンプライアンス」の書体及び表紙に占める領域は「ファイナンシャル」の片仮名文字に比較してかなり大きく表示されているところから、この雑誌を見た購買者の目には、「コンプライアンス」の文字が独立して強く印象付けられるというべきである。 乙第1号証の月刊誌は、平成19年10月以前は「銀行実務」の題号で発行されていたものを、平成19年10月より現行の題号に改題し、以後、毎号同じ題号で発行されているものであり、購買者には「コンプライアンス」誌として認知されている。このことは、乙第1号証の雑誌の商標としての識別性が「コンプライアンス」の部分にあることを示す証左である。 (3)二段構成からなる乙第1号証の題号から「コンプライアンス」の称呼が独立して生ずるというべきであり、仮に、「ファイナンシャルコンプライアンス」の一連称呼の生ずる場合が考えられ得るとしても、本来が二段構成であることを勘案すれば、そのような称呼には必然性がなく、少なくとも、「コンプライアンス」の称呼の生ずる余地がない、という根拠にはなり得ない。そうすると、乙第1号証には本件商標が使用されていたと解するのが自然である。 (4)商標法第50条の不使用取消審判は、一定の要件のもとに、使用されていない登録商標の登録を取り消すことができる制度であるが、ここでいう商標の定義は、同条第1項括弧書きにより、登録商標そのものよりも広い範囲まで拡張されており、登録商標と社会通念上同一と認められる商標を含む、と規定されている。 そうすると、乙第1号証の雑誌題号が、本件商標「コンプライアンス」の上段に「ファイナンシャル」の文字を付記しているとはいえ、二段構成のうえ、書体の大きさを変え、「コンプライアンス」の部分が特別目に付く態様で表示されているのであるから、商標法第50条第1項括弧書きに規定された「社会通念上、登録商標と同一と認められる範囲」に含まれることは明らかである。 (5)パリ条約5条C(2)の規定は、外国登録商標のみならず、普通の国内登録商標にも適用されると解されており、また、条約優位の観点から、商標法第50条に規定する登録商標は、上記パリ条約5条C(2)により修正して適用せられるべきものである。 したがって、「コンプライアンス」の文字を要部とする乙第1号証の雑誌題号は、これよりも小さい書体の「ファイナンシャル」の文字の上段付記によって、商標としての識別性に影響を与えるものでないことは明らかであるから、本件商標の使用の範囲に含まれるものである。 (6)乙第1号証の雑誌題号の使用が本件商標の使用にあたらないという認定がなされたとするならば、当該認定は、「ファイナンシャル」と「コンプライアンス」の文字の上・下二段構成になる乙第1号証の題号の使用が、「compliance」の文字を含む商願2008-24885の商標権を侵害しないことを同時に認定したと解さざるを得ない。審決はこのことも加味してなされることを望むものである。 第4 当審の判断 被請求人が商標法第50条第2項の規定に基づき取消請求に係る指定商品中「雑誌」について、本件審判の請求の登録前3年以内(平成17(2005)年4月15日ないし平成20(2008)年4月14日)に日本国内において商標権者が本件商標の使用をしていることを証明するものとして提出した乙第1号証は、雑誌の表紙、奥付及び裏表紙の3葉からなる写し(以下、それぞれを「本件表紙」、「本件奥付」及び「本件裏表紙」という。)である。 本件表紙には、「第37巻第11号 平成19年10月1日発行」及び「銀行研修社」の各記載があり、本件奥付には、「第37巻第11号 平成19年10月1日発行」、「発行所 株式会社銀行研修社」及び「本社 東京都豊島区北大塚3-10-5」の各記載があり、また、本件裏表紙には、「第37巻第11号 平成19年11月1日発行」及び「銀行研修社」の各記載が認められる。 本件裏表紙における発行月のみが「11月」と記載されているほかは「10月」と記載されており、いずれにも記載された「第37巻第11号」が一致していることから、該「11月」は誤記と解されるものである。 してみると、乙第1号証は、商標権者が本件審判の請求の登録前3年以内である平成19(2007)年10月1日に発行した取消請求に係る指定商品中の「雑誌」と認められるものであり、これらの点については、当事者間に争いがない。 本件商標は、前記第1のとおり、「コンプライアンス」の片仮名文字を標準文字により表してなるものであるところ、本件審判における争点は、被請求人が本件商標を使用したと主張する標章が、商標法第50条第1項括弧書きに定める「当該登録商標と社会通念上同一の商標」に該当するか否かである。 そこで、以下検討、判断する。 (1)雑誌に表示された標章の構成等について 被請求人の提出に係る乙第1号証によれば、以下の事実が認められる。 ア 本件表紙は、副題を「ガバナンス・リスク・コンプライアンスの総合誌」とするものであって、その下に、「ファイナンシャル」の片仮名文字を上段に表し、該「ファイナンシャル」の文字の略1.5倍の大きさの「コンプライアンス」の片仮名文字を下段に表してなるものであり、該「ファイナンシャル」と「コンプライアンス」の各文字は、いずれも黒色の同じ書体で表されているものである(使用標章1)。また、本件表紙の下部には、「特別研究 融資渉外とコンプライアンス」の記載がある。 イ 本件奥付には、薄茶色の同じ書体、同じ大きさで上下横二段に「ファイナンシャル」と「コンプライアンス」の各片仮名文字が表示されている(使用標章2)。また、同頁に掲載の「次号予告」とする欄中には、「銀行代理業者職員に必要なコンプライアンス」の記載がある。 ウ 本件裏表紙には、書体及び大きさを同じくする黒色の「ファイナンシャルコンプライアンス」の片仮名文字が縦書きで表示されている(使用標章3)。 (2)雑誌の題号表示について 上記(1)の認定事実によれば、使用標章2は、「ファイナンシャル」と「コンプライアンス」の各片仮名文字をいずれも同じ色、同じ書体、同じ大きさで上下各段の文字の幅を同じくした構成からなるものであり、また、使用標章3は、縦書きされた「ファイナンシャルコンプライアンス」の片仮名文字を同じ色、同じ書体、同じ大きさで表示されているものであるから、これらの「ファイナンシャルコンプライアンス」の文字は、いずれも外観上一連一体のものとして認識、把握されるとみるのが自然である。 また、使用標章1の「ファイナンシャル」と「コンプライアンス」の各片仮名文字は、文字の大きさを異にするものであるとしても、同じ色、同じ書体で上下二段に近接して表されているものであること、「ファイナンシャル」と「コンプライアンス」の各文字(語)が被請求人が使用する商品「雑誌」との関係において、自他商品の識別標識としての機能に格別軽重の差があるものとは認めらないこと、商品「雑誌」を取り扱う業界においては、書体や大きさ、色彩を異にした文字からなる題号が普通に使用されており、このような書体、大きさ等を異にする文字からなる題号に接する取引者、需要者も文字全体を一体的なものとして認識、把握する実情にあるといい得ること、雑誌の題号は、表紙にのみ表示されるばかりでなく、裏表紙、背表紙、奥付等にも表示がされることを総合して勘案すれば、使用標章1は、外観上一体的なものとして把握されるとみるのが自然である。 さらに、使用標章1ないし3の構成文字全体から生ずる「ファイナンシャルコンプライアンス」の称呼は、やや冗長であるとしても、無理なく一連に称呼し得るものである。 加えて、「ファイナンス」の語は、「財政、金融」等の意味を有し、また、「コンプライアンス」の語は、「法令遵守」等の意味を有しており、いずれも一般に知られているものであることからすれば、使用標章1ないし3の構成文字全体として「財政、金融に関する法令遵守」の観念を生ずるというべきである。 ほかに、使用標章1ないし3は、その構成中の「コンプライアンス」の文字部分のみが殊更に着目され、当該文字部分に相応する称呼や観念をもって取引に資されるとみるべき特段の理由も見いだせない。 これに対して、被請求人は、乙第1号証の月刊誌は、その購買者に「コンプライアンス」誌として認知されており、乙第1号証に係る雑誌の商標としての識別性が「コンプライアンス」の文字部分にあることを示す証左である旨主張する。 しかし、乙第1号証に係る月刊誌の表題上部に表示された「ファイナンス」の文字部分を取捨して、「コンプライアンス」の文字部分のみをもって、その取引者、需要者に認識されていることを裏付ける証拠の提出がないばかりか、商品「雑誌」について、「ファイナンス」の文字部分が「コンプライアンス」の文字と比較して、自他商品の識別標識としての機能が弱いとみるべき特段の事情を見いだし得ないものであり、むしろ、本件表紙には、「ガバナンス・リスク・コンプライアンスの総合誌」の副題及び「特別研究 融資渉外とコンプライアンス」の表示並びに本件奥付の「次号予告」とする欄中に、「銀行代理業者職員に必要なコンプライアンス」の記載があることからすれば、「コンプライアンス」の文字(語)は、必ずしもその自他商品の識別標識としての機能を否定するものではないが、雑誌の記事内容を表すものの一つとして認識される場合も少なくないとみるのが相当であるから、その出所識別標識としての機能は、「ファイナンス」の文字(語)と比較しても、さほど強くはないというべきである。 そうすると、使用標章1は、「ファイナンス」と「コンプライアンス」の各文字がその大きさを異にして表されているとしても、これに接する取引者、需要者をして、これら各文字は不可分一体のものとして認識、把握されるというべきである。 以上によれば、使用標章1ないし3は、いずれも「ファイナンシャル」と「コンプライアンス」の各語を結合させた一連一体の固有の商標として被請求人の取扱いに係る雑誌の題号を表示したものというべきである。 (3)本件商標と使用標章1ないし3について 「コンプライアンス」の文字のみから構成される本件商標と使用標章1ないし3とは、「ファイナンシャル」の文字の有無の顕著な相違からして、自ずと両者は全体の外観、称呼及び観念が異なるといわなければならない。 したがって、使用標章1ないし3は、本件商標と別異の商標というべきであり、社会通念上同一の商標ということはできない。 (4)被請求人の主張について 被請求人は、商標法第50条における商標の定義は、同条第1項括弧書きにより、登録商標そのものより広い範囲まで拡張されているから、使用標章1ないし3が本件商標と社会通念上同一の範囲に含まれると主張する。 しかし、使用標章1ないし3は、雑誌の題号表示として使用されるものである以上、その商品についての一般取引の実情に照らして判断されるべきであって、本件商標と社会通念上同一のものと認めることができないことは上記認定のとおりである。 また、被請求人は、パリ条約第5条C(2)の規定を引用して「コンプライアンス」の文字を要部とする本件表示の題号は、「ファイナンシャル」の文字の付記によって、商標としての識別性に影響を与えるものではない旨主張する。 しかし、商標法第50条第1項に括弧書きを設けたことにより、パリ条約第5条C(2)の趣旨の我が国への適用も明確となったものであり、本件商標に「ファイナンシャル」の文字を冠した雑誌への使用は、商標の識別性に影響を与える変更に相当するものというべきである。 さらに、被請求人は、乙第1号証の雑誌題号の使用が本件商標の使用にあたらないとの認定がなされたとするならば、当該認定は、乙第1号証の題号の使用が、「compliance」の文字を含む商標権を侵害しないことを同時に認定したと解さざるを得ない旨主張している。 しかし、商標法第56条第1項で準用する特許法第153条第3項は、「審判においては、請求人が申し立てない請求の趣旨については、審理することができない。」と規定しており、本件審判の請求の趣旨は、「商標法第50条第1項の規定により、本件商標の登録を取り消す。」旨とするものである以上、被請求人の上記解釈は、商標法第50条による取消しの審判にあっては埒外の求めであり、これを審理し判断することはできない。 したがって、被請求人の上記主張は、いずれも採用することができない。 (5)結語 以上のとおり、被請求人の提出に係る乙第1号証をもってしては、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、商標権者が請求に係る指定商品について、本件商標の使用をしていたものということはできない。 その他、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが、本件審判請求に係る指定商品のいずれかについて本件商標の使用をしていたことを確証させるものは見いだせない。 また、被請求人は、本件審判請求に係る指定商品について本件商標の使用をしていないことについて正当な理由があることを明らかにしていない。 したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により、取り消すべきである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2009-06-25 |
結審通知日 | 2009-06-30 |
審決日 | 2009-07-13 |
出願番号 | 商願2000-177(T2000-177) |
審決分類 |
T
1
31・
1-
Z
(Z16)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 馬場 秀敏 |
特許庁審判長 |
井岡 賢一 |
特許庁審判官 |
田村 正明 末武 久佳 |
登録日 | 2000-06-02 |
登録番号 | 商標登録第4389300号(T4389300) |
商標の称呼 | コンプライアンス |
代理人 | 佐藤 直義 |
代理人 | 橘 哲男 |