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審決分類 審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Z04
管理番号 1203808 
審判番号 取消2007-301538 
総通号数 118 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2009-10-30 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2007-11-28 
確定日 2009-09-04 
事件の表示 上記当事者間の登録第4440089号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第4440089号商標の商標登録は取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
本件登録第4440089号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲のとおりの構成からなり、平成11年6月9日に登録出願、第4類「工業用油脂,固体燃料,気体燃料」を指定商品として同12年12月15日に設定登録されたものである。

2 請求人の主張(要旨)
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし同第58号証を提出した。
(1)請求の理由
請求人が調査した結果、本件商標は、商標権者により、少なくとも過去3年以内に日本国内でその指定商品には使用されていないことが判明した。
したがって、本件商標の登録は、取り消されるべきものである。

(2)答弁に対する弁駁
(ア)不使用の事実について
本件商標は、被請求人により過去3年間使用されていないのは事実であり、被請求人とジャス・インターナショナル株式会社(以下「ジャス」という。)との間の「専用使用権の設定」等は、個人的な事情に属することであるから、そのことを理由に3年間の不使用の事実を容認されるべきではない。
(イ)本件審判請求が信義則違反・権利濫用にあたる旨の主張について
請求人とジャスとは全くの別法人であり、請求人がジャスから代理人としての各種手続きに協力を得たとしても法律的に関係のないことである。請求人がジャスのダミーである旨の被請求人の主張は推測に過ぎない。
被請求人の主張は、全て、個人的・私企業的な自己の利益に基づいたものであり、世界的商標ブローカーとして、自己の金銭的要求を満たし、本件商標による自己の利益の保持を要求しているに過ぎない。
被請求人関連の登録商標は、元々、ハーベイ・ボールの著作権の権利範囲にあり、それを剽窃して世界各国で商標登録したものであって、「スマイリー・フェイス」を特定の商標権者が独占することは、このマークの有名なエピソード、固有の人気や著名性に便乗する意図等があり、公平な競争秩序ないし公平の観念に反するので、本来、取消又は無効とされるべき商標である(甲各号証参照)。
そして、被請求人のビジネスは、東京高裁平成11年(ネ)第5027号損害賠償等請求控訴事件の判決(甲第19号証)において判示されたように、詐欺的ビジネスであり、該判決の内容は朝日新聞、読売新聞、産経新聞等においても報道されている(甲第18号証)。この報道の影響は大きく、その当時、メーカー、小売、問屋からこのような詐欺師のマークを使用することは非常識だとの非難を受け続けた。以上の状況で、ジャスは、被請求人の本件商標を強調して事業を行うことは無理であり、従来から主張していたハーベイ・ボールの著作、創作、ストーリー、実績を強調し、著作権によって価値観を出す以外に無いと判断するに至ったものである。

3 被請求人の答弁(要旨)
被請求人は、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とするとの審決を求めると答弁し、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし同第11号証を提出した。
本件商標を含む計21の商標につき、請求人から被請求人に対して同時に不使用取消審判請求がなされているが、それは、以下述べるように、請求人と実質的に同一であるジャスが被請求人を害する目的で請求したものに他ならない。
(1)ジャスとの関係
本件商標は、イギリス在住のフランス人である被請求人が日本において正当に所有している登録商標であり、日本をはじめ世界各国で有している「スマイリー」「スマイリーマーク」等と呼ばれる多くの商標のうちの一つである。
被請求人は、被請求人の商標を管理するスマイリー・ライセンシング・コーポレーション(現スマイリーワールド・リミテッド)を代理人として、平成12年10月30日にジャスとの間で、専用使用権設定契約(以下「本件契約」という。)を締結し、日本における専用使用権者として、ジャスに対し、14の商標に関し、再許諾の権利を含む専用使用権を設定した(乙第1号証)。かかる契約書においては、ジャスは、専用使用権の設定後自らの費用負担及び責任において許諾商標の保守に尽力するとする一方、被請求人の側は、本件契約書締結の時点から、日本国内における直接の営業活動を行ってはならないとされ、契約の有効期限は平成16年10月31日までとされた。本件契約に基づき、最終的には被請求人の有する21の商標に対しジャスの専用使用権の設定登録がなされた。
本件契約終了後に、被請求人が再三にわたりジャスに対し、上記商標の専用使用権の抹消を求めたが、ジャスはこれに応じなかった。ジャスが専用使用権の抹消にようやく応じ、すべての抹消の登録がなされたのは、平成19年5月9日のことに過ぎない。この間のやりとりで、ジャスは、被請求人との間に専用使用権設定契約を締結した理由につき、平成18年10月31日の書面において、「JASSは、ルフラーニ氏と2000年10月30日付けで『商標使用契約』を締結しましたが、実際は彼の商標を使用することが目的ではなく、ルフラーニ氏からの苦情を防ぐために契約したに過ぎません。」等と述べ、被請求人の商標権の行使を妨害する意図であることを自認している(乙第3号証)。
また、ジャスは、被請求人の本件商標を含む商標の登録に関し、あえて被請求人の商標と類似した商標を登録しようとすらしていたものであり、被請求人の権利と両立しない活動すら行っていたのである。
しかし、外国にある被請求人に、ジャスのかような意図を知る由もなく、被請求人は、上述の専用使用権の抹消の問題が生じるまで、ジャスを信頼し被請求人の商標の日本での使用をジャスに託してきたのである。
(2)権利濫用の内容
上述のとおり、ジャスは、被請求人の活動を妨害する意図を有しているが、以下で述べるように、そもそもジャスと請求人は一体のもの、あるいは、請求人は、ジャスの道具として使われている法人と捉えられるべきである。 したがって、被請求人の活動を妨害する目的を有する者と実質的に同一である請求人に係る本件審判の請求行為は、実質的には、ジャスが請求人を使って被請求人たる商標権者を害することを目的としているといわざるを得ず、被請求人との関係において、信義則に反し、権利の濫用であることは明らかである。
(ア)請求人とジャスの意思決定の過程は同一である。
ジャスの代表取締役は、請求人の取締役である。さらに、ジャスの取締役2名は、請求人を本審判で代表する取締役の両親である(乙第4号証ないし乙第6号証)。現段階では、請求人とジャスとの資本関係は被請求人には明らかではないが、いずれにせよ、かかる役員構成からも、ジャスと被請求人の意思決定の過程は実質的に同一である。
(イ)請求人は、「スマイルマーク」の創作者を自称するアメリカ人のハーベイ・ボールの死後、アメリカで発足したハーベイ・ボール・ワールド・スマイル財団の日本支部となっている(乙第7号証)。そして、請求人の会社の目的には、スマイル・マークの登録商標の所有と保護が掲げられているが(乙第4号証)、ハーベイ・ボール・ワールド・スマイル財団日本支部の住所は、現地調査の結果、マンションであり、926号室は「山下会計事務所」と表示されており、広告等もない(乙第10号証)。日本支部として行ってしかるべき活動を行っているのはジャスであり、請求人に独自の実質的な活動はない。
ハーベイ・ボール・ワールド・スマイル財団のホームページ中の「スマイル商品事業展開」のページの中に、ハーベイ・ボール・ワールド・スマイル財団が日本で専用使用権を有する商標として、本件商標の商標番号が明記されており、その商品化の代理人はジャスであることが明記されている(乙第8号証)。ジャスは、メーカー等に対し、「『スマイル商品化』契約受付中」、「ハーベイ・ボール・ワールド・スマイル財団 代理人 ジャス・インターナショナル株式会社」という封書を送っている(乙第9号証)。また、ハーベイ・ボール・ワールド・スマイル財団日本支部の機関紙も、ジャスの封筒で関係各所に送付されているものがあり、被請求人は知る由もなかったが、平成14年8月発行の同機関紙には、上記ホームページ同様被請求人の商標番号があたかもハーベイ・ボール所有の商標であるかのように掲載されている(乙第7号証)。
ジャスは、請求人の設立前からハーベイ・ボールの代理人として活動しており、平成12年7月4日には、ハーベイ・ボールを代理して本件商標につき異議申立てをしている(乙第2号証)。
(ウ)ジャスは、平成13年2月に、被請求人より14の商標(その後契約は修正され、最終的には21の商標)につき、専用使用権の設定登録を受けた。それにもかかわらず、ジャスは、平成14年2月に、被請求人商標に類似する商標登録出願(商願2002-18498、2002-18500、2002-18501、2002-18502、2002-19418)をした。ジャスは、上記商標登録出願に対し、被請求人商標との類似性を根拠にそれぞれ拒絶査定を受け、拒絶査定の理由となった商標につき自ら専用使用権の設定を受けているにもかかわらず、平成15年3月から6月にかけてそれぞれ不服審判請求をした(上記不服審判請求はいずれも成り立たない旨の審決がなされている。)。なお、この間、ジャスは、専用使用権者であったにもかかわらず、被請求人の複数の商標についてサブライセンシーに許諾するなどの契約上の義務を履行しなかった。
(エ)請求人のそれまでの商号は「有限会社オリンピア」であり、会社の目的は、「海外ファッション・デザイナー及びファッションメーカーのブランド・デザインによる日本国内向ライセンスの斡旋、ファッション・デザインの製作と提供、ファッション・ショーその他ファッションに関するイベントの企画及び立案」等であった(乙第11号証)。しかるに、権利承継の同日に、登記事項の変更がなされ、平成15年7月15日付けで、商号は「有限会社ハーベイ・ボール・スマイル・リミテッド」に、会社の目的を「スマイル・マークを利用した衣料品、アクセサリー並びに帽子等の作成及び販売、スマイル・マークの登録商標の所有と保護」等への変更がなされた。
つまり、ジャスは、被請求人商標と類似の商標出願を行う一方、ジャス自身が認めるように、被請求人の商標の使用を目的としない専用使用権の設定契約を締結するなどした。そしてその一方で、会社の目的も全く異なる有限会社オリンピアの商号及び目的の変更を行わせ、同社に対しジャスの権利を承継させ、ジャスがそれまで行ってきた手続きを引き継がせたのである。
(オ)以上要するに、請求人は、何らの活動実績もなく、本件審判請求がそうであるように、自ら表立ってできないが、ジャスが被請求人の営業活動を妨害しようとする際に、ジャスにより都合よく使われるダミー会社に過ぎないことが明らかである。
したがって、かかる請求人が被請求人に対し、本件審判の申立をすることは、実質的にはジャスがその申立をしていることと同一である。そして、かかる申し立ては、本件審判と同時に申し立てられた他の20件の審判請求と同様、被請求人との関係において、信義則に反し、権利の濫用であることは明らかである。
よって、本件審判の請求は認められるものではない。

4 当審の判断
商標法第50条第1項に規定する商標登録の取消審判の請求があったときは、同条第2項の規定により、審判請求の登録前3年以内に日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかがその請求に係る指定商品のいずれかについて登録商標の使用をしていることを被請求人が証明するか、又は、使用していないことについて正当な理由があることを被請求人が明らかにしない限り、その指定商品に係る商標登録の取り消しを免れないこととなっている。
(1)本件商標の使用の事実の有無について
被請求人は、本件商標をその請求に係る指定商品のいずれかについて使用をしていた事実を裏付ける証拠を何ら提出していない。
したがって、本件商標は、本件審判請求の登録前3年以内に日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれによっても、取消請求に係る指定商品について使用されていなかったものといわなければならない。
また、被請求人は、本件商標をその指定商品について日本国内において使用をしていないことについて正当な理由があった旨の主張もしていない。

(2)本件審判請求が信義則違反・権利濫用に当たるか否かについて
この点について、被請求人は、請求人とジャスとは、その役員構成(乙第4号証ないし乙第6号証)からみても、両者の意思決定の過程は実質的に同一であり、請求人とジャスとは一体のもの、あるいは、請求人は、ジャスのダミー会社に過ぎないものであるから、被請求人の活動を妨害する目的を有する者と実質的に同一である請求人に係る本件審判の請求行為は、実質的には、ジャスが請求人を使って被請求人たる商標権者を害することを目的としているといわざるを得ず、信義則に反し、権利の濫用である旨主張している。
(ア)ところで、登録商標の不使用による取消審判について、商標法第50条第1項には、「・・・何人も、その指定商品又は指定役務に係る商標登録を取り消すことについて審判を請求することができる。」と規定されていることからみれば、請求人による本件審判の請求が専ら被請求人を害することを目的としていると認められる特段の事情がない限り、当該請求が違法なものとなることはないものと解される。
そこで、本件審判請求が専ら被請求人を害することを目的としてなされたものであるか否かについて検討する。
(イ)被請求人の提出に係る乙各号証によれば、請求人の商号や会社の目的は、平成15年7月15日に変更の登記がなされており、商号は「有限会社ハーベイ・ボール・スマイル・リミテッド」となり、会社の目的は「スマイル・マークを利用した衣料品、アクセサリー並びに帽子等の作成及び販売、スマイル・マークの登録商標の所有と保護」等となっており、平成15年8月7日には、請求人会社の取締役としてチャールズ・ボールの就任の登記がなされている(乙第4号証)。そのチャールズ・ボールは、「スマイル・マーク」の創作者を自称するアメリカ人のハーベイ・ボールの息子であり、ハーベイ・ボールの死後、アメリカにおいて「ハーベイ・ボール・ワールド・スマイル財団」を設立しており、請求人は、その日本支部となっていることが認められる(乙第7号証)。
そして、そのハーベイ・ボール・ワールド・スマイル財団については、乙第7号証によれば、「ハーベイ・ボール・ワールド・スマイル財団は公的団体です」の見出しのもとに、「『黄色い顔に小さい目』の『スマイリー・フェイス』は別名『モナリザ以来の笑顔』といわれ、1963年末に米国人『ハーベイ・ボール』氏によって、創作・著造されました。彼の故郷マサチューセッツ州やウスター市では彼の創作・著作が公認され、地元には博物館が建てられています。1999年にはアメリカの70年代を代表するイメージとしてアメリカの郵政公社の記念切手となり、公式ビデオでは70年代を代表する風俗として収録されています。残念なことに『ハーベイ・ボール』氏は2001年4月12日に死去され現在は長男の『チャールズ・ボール』氏を中心として『ハーベイ・ボール・ワールド・スマイル財団』が設立され、彼の偉業を後世に残す『ワールド・スマイリ一』の活動を行っている。日本でのスマイリー・フェイス商品化の事業の収益の一部はこの『ハーベイ・ボール・ワールド・スマイル財団』の活動資金となっている。」と記載されている。また、乙第8号証には、「スマイル商品事業展開」の見出しのもとに、「ハーベイ・ボール・ワールド・スマイル財団の『ワールド・スマイル・デイ』活動を支える大きな基金は『スマイル商品化事業』である。現在は主に日本で行っており、スマイル・フェイス商品を多くの日本人の方々に提供し多くの支持を受けている。この事業は一般の商品販売とは異なり、アメリカのハーベイ・ボール・ワールド・スマイル財団の『ワールド・スマイル・デイ』の活動を支えるものであり、間接的に世界中に大きく貢献している。」と記載されており、その下に「スマイリー・フェイス商品化代理人は『JASS INTERNATIONAL INC.』です。商品化は当社の許可を得てください。」と記載されている。
(ウ)これらの記載からみれば、「スマイル・マーク」がハーベイ・ボールの著作に係るものであるか否かはさて措くとしても、請求人は、アメリカで発足したハーベイ・ボール・ワールド・スマイル財団の日本支部として、「スマイル・マークを利用した衣料品、アクセサリー並びに帽子等の作成及び販売、スマイル・マークの登録商標の所有と保護」等の事業を行っていたものと認められる(実際の活動は、代理人であるジャスが行っていたとしても)。
そうとすれば、請求人による本件審判請求は、請求人による「スマイル・マーク」に係る事業の障害となる本件商標を排除するために行われたものと推認されるところであり、このような請求理由は、不使用取消審判の請求理由として想定される主要な請求理由の一つといえるから、この観点からみた場合、本件審判の請求自体が専ら、被請求人を害することを目的としてなされた違法なものとは認められない。
(エ)また、被請求人の主張によれば、被請求人は、平成12年10月30日にジャスとの間で、専用使用権設定契約を締結し、ジャスに対し、日本における専用使用権者として14の商標について再許諾の権利を含む専用使用権を設定し(乙第1号証)、該契約に基づき、最終的には被請求人の有する21の商標についてジャスに対して専用使用権の設定登録をしたが、ジャスは、専用使用権者であったにもかかわらず、被請求人の複数の商標についてサブライセンシーに許諾する等の契約上の義務を履行しなかった旨述べている。
確かに、乙第1号証の契約書に添付の許諾商標中には本商標権は記載されていないものの、該契約書の「1.許諾される権利」の項には、「添付の一覧に記載のない現存の商標、およびSLCが本契約の調印後に登録する商標は、いずれも自動的に同一覧に含まれる。」と規定されていることからみれば、本商標権についても、被請求人の商標を管理するSLC(スマイリー・ライセンシング・コーポレーション)とジャスとの間において、スマイリー・フェイス商標に関する独占的権利についての契約の効力が及んでいたものと認められる。そして、乙第2号証の商標登録原簿に照らしてみても、本商標権については専用使用権の設定登録はなされていないが、ジャスと被請求人(SLC)との間には、一応、該契約による契約上の権利・義務の関係があったものということができる。
しかしながら、被請求人及び被請求人と独占的総合代理店契約を締結していた株式会社イングラムの「SMILEY FACE(スマイリー・フェイス)」に係る事業は、東京高裁平成11年(ネ)第5027号損害賠償等請求控訴事件(平成12年1月19日判決)において、「本件放送(FM東京のラジオ番組)の核心的部分である『被控訴人(株式会社イングラム)のビジネスが国際的詐欺ビジネスの様相を見せ始めた』との摘示事実は、被控訴人のビジネスを批判する文言としてはやや穏当を欠く表現ではあるものの、その主要部分が真実であるから、本件放送は、被控訴人の名誉を毀損するものであるが、違法性を阻却されるというべきである。」と判示されており、このことが朝日新聞、読売新聞、産経新聞等においても報道されていた事実が認められる(甲第18号証、甲第19号証 参照)。
このような状況のもとに、被請求人(SLC)とジャスとの間で乙第1号証の契約が締結されたことからみれば、ジャスは、乙第1号証の契約の対象となった本件商標を前面に打ち出して事業を行うことには困難が伴ったものと推測されるところであり、ジャスが乙第3号証の書簡において、「JASSは、ルフラーニ氏と2000年10月30日付けで『商標使用契約』を締結しましたが、実際は彼の商標を使用することが目的ではなく、ルフラーニ氏からの苦情を防ぐために契約したに過ぎません。」と述べていることにもやむを得ない側面があったものということができる。
そうとすれば、ジャスが被請求人(SLC)との間で乙第1号証の契約を締結したことが被請求人の日本での商標の使用を妨げることを目的としてなされたものとはいい難く、また、ジャスが該契約の対象となっている本件商標を積極的に使用しなかったとしても、そのことが被請求人を害するためであったものともいい難い。
(オ)被請求人は、ジャスは平成12年7月4日に、ハーベイ・ボールを代理して本件商標につき異議申立てをしている旨述べているが、乙第2号証の商標登録原簿に照らしてみても、本件商標について異議申立てがなされた事実は存在しない。また、被請求人は、ジャスは専用使用権の設定登録を受けたにもかかわらず、平成14年2月に、被請求人商標に類似する商標登録出願(商願2002-18498、2002-18500、2002-18501、2002-18502、2002-19418)をした旨述べているが、上記出願の中に、本件商標の指定商品である第4類「工業用油脂,固体燃料,気体燃料」と抵触する商品を指定商品とする商標登録出願は存在しない。
(カ)そうとすれば、少なくとも、本件商標との関係についてみる限り、被請求人とジャスとの間に、乙第1号証の契約上の権利・義務関係はあったにしても、ジャスにおいて、被請求人が主張しているような本件商標についての被請求人の活動を妨害する目的を有していたものとは認められない。
してみれば、ジャスが請求人の事業の代理人として活動をしていたとしても、また、被請求人が主張しているように、請求人とジャスとが実質的に同一といえる立場にあったとしても、請求人による本件審判の請求が、専ら、被請求人を害することを目的としてなされたものとは認められず、他に、被請求人の主張を認めるに足る証拠も見当たらない。
したがって、請求人による本件審判請求を信義則違反・権利濫用に当たるものということはできない。

(3)まとめ
以上のとおり、本件商標は、その指定商品について、本件審判請求の登録前3年以内に日本国内において、被請求人によって使用されていたとの事実を認めることはできず、また、被請求人が本件商標をその指定商品について日本国内において使用をしていないことについて正当な理由があったものということもできない。そして、請求人による本件審判の請求が信義則違反・権利濫用に当たるものということもできない。
したがって、商標法第50条の規定により、本件商標の登録を取り消すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲


本件商標





審理終結日 2009-01-07 
結審通知日 2009-01-09 
審決日 2009-04-21 
出願番号 商願平11-50344 
審決分類 T 1 31・ 1- Z (Z04)
最終処分 成立  
前審関与審査官 大塚 順子 
特許庁審判長 井岡 賢一
特許庁審判官 佐藤 達夫
小川 きみえ
登録日 2000-12-15 
登録番号 商標登録第4440089号(T4440089) 
商標の称呼 スマイリー 
代理人 金塚 彩乃 
代理人 唐牛 歩 

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