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審決分類 審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない Z41
管理番号 1202105 
審判番号 取消2008-301075 
総通号数 117 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2009-09-25 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2008-08-25 
確定日 2009-08-06 
事件の表示 上記当事者間の登録第4309319号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4309319号商標(以下「本件商標」という。)は、「上原真佐喜」の文字を標準文字で書し、平成10年2月17日に登録出願、第41類「技芸の教授・音楽の演奏」を指定役務として、同11年8月27日に設定登録されたものである。
また、本件審判の請求の登録日は、平成20年9月5日である。

第2 請求人の主張
請求人は、本件商標の登録を取り消す、審判費用は被請求人の負担とするとの審決を求め、その理由を次のように述べ、証拠方法として甲第1号証及び同第2号証を提出した。
1 請求の理由
被請求人は、本件商標を、その指定役務について、継続して3年以上日本国内において使用していない。
また、本件商標の商標登録原簿(甲第1号証)に示すとおり、本件商標の指定役務についての専用使用権者は存在せず、また通常使用権者として本件商標を使用している者も存在しない。
したがって、本件商標は、継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれによっても、その指定役務につき使用されていないものである。
よって、本件商標の登録は、商標法第50条第1項の規定に基づき取り消されるべきである。

2 弁駁
(1)被請求人は、本件商標が、本件審判請求の登録前3年以内に、日本国内において、被請求人により「技芸の教授」について使用されていると主張し、乙第1号証ないし同6号証を提出した。しかし、被請求人によって提出された各乙号証によっては、本件取消請求に係る役務「技芸の教授・音楽の演奏」についての本件商標の使用は、何ら証明されていない。

(3)各乙号証の検討
ア 乙第1号証に関して
乙第1号証「真磨琴会規約」は、被請求人「林高子(芸名:上原真佐乃)」が会員として所属している筝曲家の会合の目的、事業内容等を説明しているだけのものであり、被請求人が本件商標「上原真佐喜」を使用している事実はおろか、同人が業として「技芸の教授」を提供している事実すら証明するものではない。
なお、乙第1号証の「第2条(目的)」の中で、「初代および二代目上原真佐喜師の芸風の研鑽と普及に努め」と記述され、本件商標と同一の文字「上原真佐喜」が記されているが、当該「上原真佐喜」の使用は、「真磨琴会」が目指す芸風が上原真佐喜のそれであることを説明するために、著名な故人の芸名を記述的に引用しているにすぎないものであり、商標法上の商標的使用でないことは明らかである。

イ 乙第2号証に関して
乙第2号証は、山田流筝曲協会が「真磨琴会」の代表者である被請求人他2名が免章を発行することを承認した「認証書」であるが、「山田流筝曲協会」は、本件商標「上原真佐喜」の使用についていかなる権限も有していない。すなわち、被請求人は、乙第2号証をして、自らが「上原真佐喜」の正当な承継者の一人であるかのように主張しているが、乙第2号証はこのような事実を証するものではない。被請求人は「上原真佐喜」の正当な承継者ではない。
いずれにしても、乙第2号証には「上原真佐喜」の記載は一切存在せず、乙第2号証が本件商標の使用を示すものでないことは明らかである。

ウ 乙第3号証ないし同6号証に関して
(ア)乙第3号証ないし同6号証はいずれも免章であって、役務の提供を受ける者の利用に供する物であると、被請求人は述べている。免章とは、広辞苑にその載録はないが、おそらく「免状(赦免の意を記載した文書。赦免状。)」に相当すると考えられる。
乙第3号証ないし同6号証の末尾には「上原真佐喜」の氏名が記されているが、当該「上原真佐喜」の使用は、著名な個人の氏名(芸名)を追悼的な意味で、普通に用いられる方法で記述しているにすぎず、商標的な使用態様でないことは明らかである。
「上原真佐喜」は、故人ではあるものの、没してもなお、筝曲の世界では著名な存在であることから、同師を偲ぶという追悼的な意味で、「上原真佐喜」の氏名を免状に記述しているとみるのがもっとも自然である。
したがって、免状に記されている「上原真佐喜」の文字は、あくまで免状に追悼的な意味合いで記述されているだけであるから、当該文字は、自他役務識別機能を有する標章としては認識され得えない。
なお、商標法第26条第1項第1号は、「自己の著名な芸名」を普通に用いられる方法で表示するものに対しては、商標権の効力が及ばない旨規定している。当該規定の趣旨は、普通に用いられる方法で使用される「芸名」は、自他商品役務識別を目的として使用されるものではないから、そのような使用に対する商標権の効力は排除されるべきということと解される。
しかして、乙第3号証ないし同6号証における「上原真佐喜」の文字は、著名な故人の芸名を普通に用いられる方法で表示したものにすぎず、前述の商標法第26条第1項第1号の法趣旨に鑑みても、自他役務識別機能を有する標章でないことは明らかである。

(イ)「役務について使用される商標」は、例えば、役務に関するパンフレット、広告媒体、役務の提供を受ける者と交わした契約書その他の取引書類、役務を提供する店舗の看板、等に付されることによってはじめて、自他役務識別機能を発揮する。また、そのような態様で使用された標章が「役務について使用される商標」であると一般的に認識されている。
このことは例えば、社団法人発明協会発行・特許庁編集「工業所有権法(産業財産権法)逐条解説『第17版』1157頁」において、役務についての商標の「使用」の定義(商標法第2条第3項第3号ないし同8号)について、「役務に係る商標の『使用』については、役務が無形の財であり、直接標章を付することができないため、有形物を介して『使用』されることとなること、また、需要者の目に触れることにより自他役務の識別標識として機能し得るものを『使用』とすべきこととの考え方によりこれを定義したものである」と明記されている。
本件について考察するに、まず、被請求人は、乙第3号証ないし同6号証すなわち免状についてしか「上原真佐喜」の文字を使用していない。
しかして、これらの免状は、門下生すべてに対して授与されるものではなく、ある一定の技芸を習得した者にしか授与されないものである。
つまり、一般の需要者はもとより、たとえ門下生であっても、技芸を習得できなければ、この免状の内容を目にすることはない。
本件では、学校・教室の看板、パンフレット、取引書類、門下生が使用するテキスト等々について、被請求人が本件商標「上原真佐喜」を使用しているという事実が一切認められない。乙第3号証ないし同6号証のように、特定の門下生の目には触れ、それ以外の者の目には触れないという文書にしか記されていないような標章は、そもそも、取引の場において自他役務の識別標識として機能する予定のないものであり、商標として使用されているものではない。
よって、かかる観点からも、乙第3号証ないし同6号証における「上原真佐喜」の使用が、商標法上の商標の使用でないことは明らかである。

(ウ)しかも、乙第3号証ないし同6号証は、次に詳細に述べるとおり、本件商標の使用を証明する資料としては、極めて証拠価値の低いものである。
すなわち、提出された乙第3号証ないし同6号証には、それぞれ免状を授かった者とおぼしき氏名が免章の冒頭に記されているが、被請求人が実際にこれら特定の者に対して「技芸の教授」をおこなったという事実を客観的に証明する資料は一切提出されていない。
さらに付言すれば、乙第3号証ないし同6号証は、明らかに筆による手書きによって作成されたものであり、被請求人によりいつ何時でも、どの作成日付をもってでも作成できたものである。
したがって、乙第3号証ないし同6号証には、商標法第50条に基づく審判において、商標の使用を証明するに足るほどの証拠価値はないというべきである。
また、被請求人は、「真磨琴会代表者(家元)であった二代上原真佐喜」と述べており、乙第3号証ないし同6号証には、「上原真佐喜」の肩書きとして、「家元」という文字が記されている。
しかし、「真磨琴会」の公式ホームページにおいて、「上原真佐喜」のことを「家元」と呼称している事実はない(甲第2号証)。
以上の事柄を勘案すれば、乙第3号証ないし同6号証が本件商標の使用を証明する資料としては、極めて証拠価値の低いものであることは明らかである。

(エ)被請求人は、「真磨琴会」の代表者である「林真佐永」に対して通常使用権を許諾した旨を主張するが、そのような立証は一切なされていない。 したがって、この点からしても、「林真佐永」を作成者とする乙第3号証及び乙第6号証は、通常使用権者による本件商標の使用を証するものではない。

(3)結語
以上述べてきたとおり、被請求人は、本件商標のもとで実際に役務を提供したという具体的な事実を示す資料、例えば、本件商標の看板への使用、本件商標のパンフレット・申込書・案内書等への使用、本件商標の請求書その他の取引書への使用を示す資料、を全く提出していないところ、乙第1号証及び同第2号証は、本件商標「上原真佐喜」の使用を示すものでないことは明白であり、また、乙第3号証ないし同6号証における「上原真佐喜」の記載は、自他役務識別機能を有する標章としては認識されうるものではなく、かつ、事実の証明について証拠価値を欠く証拠であるから、本件請求に係る指定役務「技芸の教授・音楽の演奏」についての本件商標の使用事実は証明されていない。

第3 被請求人の主張
被請求人は、結論と同旨の審決を求めると答弁し、その理由を次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし同第8号証を提出した。
1 請求人の主張は、要するに本件商標は、被請求人及び専用使用権者並びに通常使用権者により継続して3年以上使用されていない、というものであるが、失当である。

2 本件商標は、「上原真佐喜」の(標準)文字からなるところ、上原真佐喜なる名称は、もと、山田流筝曲協会の会員にして、真磨琴会の会主として2代にわたり山田流筝曲の演奏及び山田流筝曲に係る技芸の教授なる役務を需要者に提供するにあたり用いた著名な芸名である。
初代上原真佐喜(本名幸太郎)は、山田流筝曲における会派として、真磨琴会を創立して会主となり、技芸に精進した結果その芸風を確立するとともに多数の作曲(春の晨、里の四季、磐城の誇り、落花の誉等)をしている。
二代上原真佐喜(本名林兎喜子)は、真磨琴会の会主を承継してその芸風を完成した。
すなわち、二代上原真佐喜は、わが国を代表する筝曲の名手として、筝曲の演奏・作曲活動(宵夏、独楽と毬、八岐大蛇、道成寺黒髪供養、富士山、竹取物語、雪月花(册子の雪、月づくし、桜の宿)三部作等)に従事する傍ら、後進の指導・育成に意を注いだため、単に筝曲界に止まらず広く芸能界、識者から高く評価され、社団法人日本三曲協会会長、山田流筝曲協会会長などを歴任し、所謂人間国宝、芸術院会員に推され、平成8年5月11日逝去後、従四位を贈られ、天皇から香典を下賜されるなどの栄誉に輝き、現在においても篤く追慕されている。
この初代・二代にわたる上原真佐喜なる名称は、各その生涯を通じての真摯な作曲・演奏・後進指導活動により筝曲界の一大指標となるとともに、個人の芸名であることを超えて、その会主であった真磨琴会の芸風を表象するものとなっている。
乙第1号証「真磨琴会規約」は、第2条「本会は、斯道の向上発展を計り、初代および二代目上原真佐喜師の芸風の研鑽と普及に努め、その芸風を継承する後継者の育成をすることを目的とする。」と定めている。

3 被請求人は、二代上原真佐喜の愛弟子として師事し、昭和48年8月3日同人と養子縁組するとともに、芸名を林真佐乃(その後上原真佐乃と改称)と称した。
被請求人及び真磨琴会の会員らは、山田流筝曲協会に対し、真磨琴会代表者(家元)であった二代上原真佐喜没後における正当な承継者として、真磨琴会代表者3名の承認を求め、乙第2号証「認証書」のとおり被請求人及び林真佐永(被請求人の養子で本名林治子)並びに山内佐恵次の3名を代表者とすることの承認を得た。
そこで、真磨琴会は法人でないので、被請求人が筆頭代表者の立場から、前記真磨琴会の目的に従い、同会が初代及び二代上原真佐喜の芸風の研鑽と普及等を目的とし、提供される役務がその芸風に沿うものであることを需要者に明らかにするため、本件商標の登録出願をなし、その登録を得たものである。

4 被請求人は、他の真磨琴会代表者である林真佐永及び山内佐恵次に対し通常使用権を許諾している外、上記芸風の研鑽と普及等に必要が生じた場合、通常使用権を許諾することとしている。
被請求人及び通常使用権者林真佐永が技芸の教授なる役務を提供するに当たり、その提供を受ける者(門人)の利用に供する物即ち免章に本件商標を付し、また、役務の提供に当たりその提供を受ける者(門人)の利用に供する免章に本件商標を付したものを用いて役務を提供する行為をし、本件商標を使用している事実は、乙第3号証ないし同第6号証のとおりである。
もちろん、本件商標の使用事例は、他に数多くあるが省略する。

5 また、本件商標を指定役務のうち「音楽の演奏」に使用した事実があり、その琴曲音楽会の案内書(乙第7号証及び同第8号証)を提出する。

第4 当審の判断
1 被請求人提出の証拠によれば、以下の事実を認めることができる。
(1)被請求人に係る団体「真磨琴会」には、昭和30年7月10日に制定され、その後、平成10年12月12日及び同12年7月9日に改定された会の規約(乙第1号証)があり、その第2条(目的)において、「本会は、斯道の向上発展を計り、初代および二代目上原真佐喜師の芸風の研鑽と普及に努め、その芸風を継承する後継者の育成をすることを目的とする。」と定めている。また、その第3条(事業)において、「本会は、前条の目的を達成するために、以下の事業を行う。」とし、事業として、「演奏会の開催」「研修会および講習会の開催」「教授者の養成」ほかを定めている。

(2)山田流箏曲協会から、平成9年2月吉日付で、代表者を「林真佐乃」「林真佐永」「山内佐恵次」として、真磨琴会は独立免章発行について承認された(乙第2号証)。

(3)上杉某に宛てた平成18年9月吉日の「右当門下として箏曲師範たる事を免許す」とする免章(写し)(乙第3号証)には、「家元 上原真佐喜」「真磨琴会」「林真佐永」が記載されており、左端に上下2つの印影のあるのが認められる。

(4)斉藤某に宛てた平成18年5月吉日の「右流祖之作曲並奥許諸曲免許候事」とする免章(写し)(乙第4号証)には、「家元 上原真佐喜」「真磨琴会 代表 林真佐乃」が記載されており、左端に上下2つの印影のあるのが認められる。

(5)斉藤某に宛てた平成18年5月吉日の「右流祖の作曲並中許諸曲免許○(注:○の部分の文字は、判読不明)事」とする免章(写し)(乙第5号証)には、「家元 上原真佐喜」「真磨琴会 代表 林真佐乃」が記載されており、左端に上下2つの印影のあるのが認められる。

(6)高橋某に宛てた平成18年11月吉日の「今般箏曲上達仕候に付 初許並歌曲免許候事」とする免章(写し)(乙第6号証)には、「家元 上原真佐喜」「真磨琴会」「林真佐永」が記載されており、左端に上下2つの印影のあるのが認められる。

(7)上記(3)ないし(6)の上下の印影は同じものであり、上の印影の文字等は分明でないが、下の印影は「真佐喜」の文字を刻印したものと認められる。また、上記(3)ないし(6)の年月日ないし年月は、本件審判請求の登録前3年以内(以下「本件期間内」という。)に該当するものである。

2 本件商標は、「上原真佐喜」の文字を標準文字で書してなるものであるのに対して、前記1(3)ないし(6)の免章に表示された「上原真佐喜」の文字は、本件商標とその構成文字を同じにするものであるから、当該「上原真佐喜」は、本件商標と社会通念上同一の商標ということができる。
そして、真磨琴会における代表者としての被請求人と林真佐永の関係に、権利能力なき社団と認められる真磨琴会において被請求人が商標権者となった旨及び使用許諾をした旨の被請求人の主張を併せれば、黙示的か口頭によったかは定かでないけれども、林真佐永は、商標権者から本件商標について使用を許諾された者(通常使用権者)と認められるというのが相当である。

3 一般に、技芸の教授において、習得者(門下の弟子)の技芸の習得状況がある段階に達したときに、審査・検定等を行い、当該審査・検定等に合格した者に一定の資格(習得者が門下生をとることを認める、習得者が技芸を公開することを認める、等)を与えるとともに、当該資格の認定書を付与している実情が認められる。
そして、当該審査・検定等に合格した者に与えられる資格の認定書は、役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物であるから、当該認定書に標章を付して発行する行為は、役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物に標章を付する行為に該当するというべきである。
あるいは、当該審査・検定等に合格した者に与えられる資格の認定書は、役務に関する取引書類であるともいえるから、当該認定書に標章を付して発行する行為は、役務に関する取引書類に標章を付して頒布する行為に該当するというべきである。
そして、被請求人及び通常使用権者は、箏曲の演奏団体(真磨琴会)を代表して、当該技芸の習得者(門下の弟子)に、資格の認定書である免章を発行しており、当該免章に本件商標と社会通念上同一と認められる標章を表示しているから、役務「箏曲の技芸の教授」を提供するに当たり、当該技芸を学ぶ者の利用に供する物(免章)に、本件商標を付し(商標法第2条第3項第3号)、あるいは、箏曲演奏の技芸の教授に関する取引書類(免章)に本件商標を付したものを頒布している(同第8号)と認め得るものである。
また、前記「箏曲の技芸の教授」が、取消請求に係る指定役務の一に当たることは明らかである。
そして、当該使用に係る行為は、本件期間内になされたものであるとみるのが相当である。

4 この点について、請求人は、免章における「上原真佐喜」の使用は、著名な故人の氏名(芸名)を追悼的な意味で、普通に用いられる方法で記述しているにすぎず、商標的な使用態様でなく、商標法第26条第1項第1号の法趣旨に鑑みても、自他役務識別機能を有する標章でない旨主張し、また、明らかに筆による手書きによって作成されたものであり、被請求人によりいつ何時でも、どの作成日付をもってでも作成できたものであり、さらに、被請求人に係る会の公式ホームページにおいて「上原真佐喜」のことを「家元」と呼称している事実はないと主張する。
しかしながら、免章における「上原真佐喜」が追悼的な意味で記述されているものと断じ得る明確な理由は見いだせない。
むしろ、「家元」が「芸道で、その流祖の正当を伝える地位に当たる家・人」の意味を表す語として一般に広く親しまれたものである(広辞苑参照)こと、そして、真磨琴会の規約(第2条)において、「その芸風の研鑽と普及に努め、その芸風を承継する後継者の育成をする・・」とする真磨琴会における初代及び二代目「上原真佐喜」の位置づけ(乙第2号証)を勘案すれば、「家元」を冠した「上原真佐喜」の表示は、技芸(箏曲)の教授に係る需要者にとって、自他役務の識別のうえで、主要な表示として把握し認識される性格のものというべきである。
また、商標法第26条第1項第1号は、過誤登録等を考慮し、「自己の著名な芸名」を普通に用いられる方法で表示する正当な行為について、商標権の効力が及ばない旨規定したと解される(特許庁編「工業所有権法逐条解説」参照)ものであって、これが自他役務の識別機能を有さない標章であることを、その理由とするものであると解することはできないというべきである。
さらに、前記1(3)ないし(6)の免章において、それが手書きであるとしても、当該免章における日付等の記載が不自然なものであるとみるべき端的な理由及び的確な証左はない。
加えて、被請求人が正当な承継者であるか否かはさておくとして、真磨琴会の規約(第2条)に示された初代及び2代目上原真佐喜の位置づけ及び「家元」が表す意味合いを勘案すれば、真磨琴会のホームページにおいて家元に関する記事等の掲載が仮にないとしても、免章に「上原真佐喜」が表示されたと先に認定した事実が左右されることにはなり得ない。
したがって、請求人の主張は、いずれも採用し得ない。
なお、請求人は、審理終結後、平成21年6月3日付けで上申書を提出しているところ、当合議体は、当該上申書を徴するも上記判断を左右するに足らないと認め、審理再開する必要がないと判断した。

5 むすび
以上のとおり、本件商標は、商標権者及び通常使用権者によって、本件期間内に、取消請求に係る指定役務について使用をされたと認められるから、商標法第50条により、その登録を取り消すことはできないものである。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2009-05-21 
結審通知日 2009-05-25 
審決日 2009-06-25 
出願番号 商願平10-12400 
審決分類 T 1 31・ 1- Y (Z41)
最終処分 不成立 
前審関与審査官 澤里 和孝 
特許庁審判長 井岡 賢一
特許庁審判官 田村 正明
末武 久佳
登録日 1999-08-27 
登録番号 商標登録第4309319号(T4309319) 
商標の称呼 ウエハラマサキ、ウエハラマサヨシ、カミハラマサキ、カミハラマサヨシ 
代理人 辻居 幸一 
代理人 山田 克巳 
代理人 松尾 和子 
代理人 井滝 裕敬 
代理人 山田 博重 
代理人 熊倉 禎男 
代理人 山田 勝重 
代理人 中村 稔 
代理人 藤倉 大作 
代理人 山田 智重 
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