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審判番号(事件番号) データベース 権利
不服2008848 審決 商標

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審決分類 審判 査定不服 商3条1項3号 産地、販売地、品質、原材料など 登録しない Y10
審判 査定不服 商3条2項 使用による自他商品の識別力 登録しない Y10
管理番号 1201962 
審判番号 不服2008-847 
総通号数 117 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2009-09-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-01-10 
確定日 2009-07-13 
事件の表示 商願2006- 73213拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 1 本願商標
本願商標は、別掲のとおりの構成からなり、第10類に属する願書記載のとおりの商品を指定商品として、2006年2月6日ドイツ連邦共和国においてした商標登録出願に基づきパリ条約第4条による優先権を主張して、平成18年8月4日に立体商標として登録出願されたものであるが、その後、原審における同19年6月4日付けの手続補正書により、第10類「レゼクトスコープ(切除用内視鏡)」と補正されたものである。

2 原査定の拒絶の理由の要点
原査定は、「本願商標は、指定商品との関係において、経尿道的内視鏡手術の中で最も使用頻度が高い内視鏡の一種である『レゼクトスコープ(切除用内視鏡)』そのものの立体的形状からなるにすぎないものですから、これをその指定商品『レゼクトスコープ(切除用内視鏡)』に使用しても、単に商品の形状のみからなる立体商標を表したにすぎないものと認められる。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

3 当審における審尋(要旨)
当審において、本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当するとして、請求人に対して通知した、平成20年11月6日付け審尋は以下のとおりである。
本願商標は、「レゼクトスコープ(切除用内視鏡)」そのものを表した立体的形状よりなるものと認められるものであるから、これをその指定商品である「レゼクトスコープ(切除用内視鏡)」に使用しても、取引者・需要者は、単に商品の形状を表示するにすぎないものとして理解するに止まり、自他商品を識別するための標識とは認識し得ないものであり、商標法第3条第1項第3号に該当するものである。
請求人(出願人)は、平成20年1月10日付けの審判請求書により、「商標法第3条第2項の規定により本願商標の登録は認められるべきである。出願人は、現在、本願商標を付した商品の販売実績等を鋭意収集中であり、収集が完了し次第、提出する。」旨述べているが、その後、相当な期間が経過したが現在に至るも何ら証拠資料を提出していない。
したがって、請求人(出願人)が主張するように、本願商標が商標法第3条第2項の要件を具備するものであるか否かを判断するのに必要であるから、早急に当該証拠資料を提出されたい。

4 審尋に対する請求人の回答(要旨)
請求人は、前記3の審尋に対して、平成20年12月8日付けの回答書において、本願商標は、商標法第3条第2項の要件を具備しているものである旨回答し、さらに、同年12月22日付けの手続補正書でその理由を述べるとともに、資料1ないし資料21を提出した。

5 当審の判断
(1)立体商標は、商品若しくは商品の包装又は役務の提供の用に供する物(以下「商品等」という。)の形状も含むものであるが、商品等の形状は、本来それ自体の持つ機能を効果的に発揮させたり、あるいはその商品等の形状の持つ美感を追求させたりする等の目的で選択されるものであり、本来的(第一義的)には商品・役務の出所を表示し、自他商品・役務を識別する標識として採択されるものではない。
そして、商品等の形状に特徴的な変更、装飾等が施されていても、それは前記したように、商品等の機能又は美感をより発揮させるために施されたものであって、本来的には、自他商品を識別するための標識として採択されるのではなく、全体としてみた場合、商品等の機能、美感を発揮させるために必要な形状を有している場合には、これに接する取引者・需要者は当該商品等の形状を表示したものであると認識するに止まり、このような商品等の機能又は美感と関わる形状は、多少特異なものであっても、未だ商品等の形状を普通に用いられる方法で表示するものの域を出ないと解するのが相当である。
また、商品等の形状は、同種の商品等にあっては、その機能を果たすためには原則的に同様の形状にならざるを得ないものであるから、取引上何人もこれを使用する必要があり、かつ、何人もその使用を欲するものであって、一私人に独占を認めるのは妥当でないというべきである
そうとすれば、商品等の機能又は美感とは関係のない特異な形状である場合はともかくとして、商品等の形状と認識されるものからなる立体的形状をもって構成される商標については、使用をされた結果、当該形状に係る商標が単に出所を表示するのみならず、取引者・需要者間において、当該形状をもって同種の商品等と明らかに識別されていると認識することができるに至っている場合を除き、商品等の形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標として商標法第3条第1項第3号に該当し、商標登録を受けることができないものと解すべきである。
(2)また、商標法第3条第2項は、「前項第3号から第5号までに該当する商標であっても、使用をされた結果需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができるものについては、同項の規定にかかわらず、商標登録を受けことができる」旨を、同法第4条第1項第18号は、「商品又は商品の包装の形状であって、その商品又は商品の包装の機能を確保するために不可欠な立体的形状のみからなる商標は、同法第3条の規定にかかわらず商標登録を受けることができない」旨を、それぞれ規定している。[東京高裁平成19年(行ケ)第10215号]
(3)本願商標は、別掲のとおりの形状からなるところ、請求人提出の資料2ないし資料5並びに資料15及び資料16に表示された本人及び他社の取扱に係る「レゼクトスコープ(切除用内視鏡)」の形状を参酌すれば、これは、当該レゼクトスコープの形状を表したものと容易に認識し得るものである。
したがって、これをその補正後の指定商品「レゼクトスコープ(切除用内視鏡)」について使用しても、取引者・需要者は、単に商品の形状の一形態を表したものと認識するにすぎないものと判断するのが相当である。
この点について請求人は、本願商標を構成する摺動台、押しボタン、電気ケーブルを接続するためのコネクタ、持ち手及びチューブの形状、材質及び色彩等に関し、このような形状、色彩、材質上のコントラストは、需要者に強く印象付けられる本願商標独特の外形的特徴であって、その商品の機能を確保するためのものではない旨主張する。
しかしながら、本願の指定商品は、請求人の主張のとおり、経尿道的内視鏡手術に用いる切除用内視鏡(レゼクトスコープ)であって、医療行為を目的とする医療機器であるところ、医療機器における商品の形状は、より正確に組織の切除を行うこと等、その医療行為における目的・成果、すなわち、医療行為に用いる機器の機能をより効果的に発揮するために採択されるものと容易に理解し得るところである。
しかして、請求人の主張する摺動台、押しボタン、電気ケーブルを接続するためのコネクタ、持ち手及びチューブの形状、材質における特徴は、いずれも切除用内視鏡(レゼクトスコープ)の機能・目的である組織の切除をより正確に行うことや、その機器の美感をより優れたものにさせたりする等の目的で同種商品が一般に採用し得る範囲内のものというべきである。
また、請求人が、「顕著なコントラスト」であると主張する色彩上の特徴についても同様に、その機器の美感をより優れたものにさせたりする等の目的で同種商品が一般に採用し得る範囲内の色彩というべきであって、需要者に強く印象付けられる独特の外形的特徴であるとはいうことができない。
したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3項に該当する。
(4)請求人は、「本願商標は、約13年間の使用の結果、自他商品を識別する機能を具有するに至っているものであるから、商標法第3条第2項の規定が適用されるべきである。」旨主張し、資料1ないし資料21を提出した。
ところで、商品等の形状に係る立体商標が、商標法第3条第2項に該当するものとして登録を認められるのは、原則として使用に係る商標が出願に係る商標と同一の場合であって、かつ、使用に係る商品と出願に係る指定商品も同一のものに限られると解される。
そこで、請求人提出の各資料について検討する。
(ア)使用に係る商標が出願に係る商標と同一であることについてみると、請求人が本願商標は使用によって自他商品を識別する機能を具有する資料として提出した資料2ないし資料5、資料7ないし資料17、資料20及び資料21については、本願商標と同一とは認められない「レゼクトスコープ(切除用内視鏡)」が表示されている。
これに対し請求人は、これらの商品カタログに掲載されている商品の形態が本願商標と異なるかのように見えるのは、本願商標は、レゼクトスコープの一部品の形態からなることによるためである旨主張するが、立証すべきは、本願商標の形状そのものが使用による著名性を発揮したか否かであるから、本願商標と形状の異なる使用商標を表したこれらの資料は証拠として採用することはできない。
(イ)請求人は、請求人が取扱うレゼクトスコープの過去5年半の売上高(資料18)及び、厚生労働省のホームページに掲載された平成17年時点での全国の泌尿器科を有する病院・診療所の数を提示(資料19)し、その数との対比において請求人の売上高が高い旨を主張しているが、そのデータは如何なる形状のレゼクトスコープの売上高を示すものであるのかを特定することができないから、これらのデータをもって本願商標の著名性を立証することはできない。
なお、請求人は、本願商標と類似と認められる立体商標の外国における登録例(資料6)を提出しているが、諸外国における立体商標の登録制度と我が国のそれが同一のものと解釈しなければならない事情が存するものとは認められないから、これに基づく主張は採用の限りでない。
その他、請求人提出の各資料を総合してみても、本願商標が商標法第3条第2項の要件を具備するに至ったと認めるに足る証拠はない。
そうとすれば、本願商標をその指定商品「レゼクトスコープ(切除用内視鏡)」に永年使用した結果、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識できるに至っているものということができない。
(5)以上のとおり、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、同法第3条第2項の要件を具備していないものであるから、これを登録することはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲(本願商標)


審理終結日 2009-02-13 
結審通知日 2009-02-20 
審決日 2009-03-03 
出願番号 商願2006-73213(T2006-73213) 
審決分類 T 1 8・ 13- Z (Y10)
T 1 8・ 17- Z (Y10)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 安達 輝幸 
特許庁審判長 小林 由美子
特許庁審判官 榎本 政実
田村 正明
代理人 川崎 実夫 
代理人 竹原 懋 
代理人 稲岡 耕作 
代理人 松井 宏記 

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