• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部無効 商4条1項7号 公序、良俗 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Y14
管理番号 1200419 
審判番号 無効2007-890085 
総通号数 116 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2009-08-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 2007-06-19 
確定日 2009-06-22 
事件の表示 上記当事者間の登録第4905832号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第4905832号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4905832号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲(1)のとおりの構成よりなり、平成17年4月27日に登録出願、第14類「貴金属,キーホルダー,貴金属製食器類,貴金属製のくるみ割り器・こしょう入れ・砂糖入れ・塩振出し容器・卵立て・ナプキンホルダー・ナプキンリング・盆及びようじ入れ,貴金属製針箱,貴金属製のろうそく消し及びろうそく立て,貴金属製宝石箱,貴金属製の花瓶及び水盤,記念カップ,記念たて,身飾品,貴金属製のがま口及び財布,宝玉及びその原石並びに宝玉の模造品,貴金属製コンパクト,貴金属製靴飾り,時計,貴金属製喫煙用具」を指定商品として、平成17年11月4日に設定登録されたものである。
第2 請求人の主張の要点
請求人は、結論同旨の審決を求めると申し立て、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第13号証(枝番を含む。なお、甲第9号証は、審判請求書に添付のものと弁駁書に添付のものとが提出されているが、審判請求書に添付のものを「甲第9号証の1」とし、弁駁書に添付のものを「甲第9号証の2」とする。また、枝番のあるものについて、枝番の全てを引用する場合は、その枝番の記載を省略する。)を提出した。
1 請求の理由
(1)商標法第4条第1項第7号違反について
本件商標は、請求人の会社創設者であるガボール・ナギーがデザインし、請求人が製造販売してきたシルバーアクセサリーの要部を構成する「スカルプテッドオバール」と呼ばれている立体形状(以下「スカルプテッドオバール」という。)を平面図として商標出願したものである。スカルプテッドオバールは、請求人が平成6年(1994年)作成し、平成7年(1995年)6月1日に米国において発行されたガボール・ナギーのデザインによるシルバーアクセサリーのカタログに掲載されている(甲第2号証の1)。同カタログは、平成13年(2001年)に米国において、著作権番号VA-1-091-208として国会図書館に登録されている(甲第2号証の2)。スカルプテッドオバールは、ガボール・ナギーの様々なシルバーアクセサリーに主要構成部分として使われているもので、彼の最も代表的デザインの一つであり、アクセサリーの著名雑誌には「スカルプテッドオバール」を組み込んだガボール製品が数多く紹介されており(甲第3号証)、需要者はこのデザインを見れば、すぐにガボール・ナギーの製品と認識する。本件商標とスカルプテッドオバールを比較すれば、両者が同一又はきわめて類似していることは明らかである。
被請求人は、スカルプテッドオバールがガボール・ナギーのデザインに係るものとして有名であることを知りながら、その著名性を利用する目的で、請求人、あるいはガボール・ナギーが平成11年(1999年)1月16日死亡後、スカルプテッドオバールに係るデザインに関する権利(以下「本件デザインに関する権利」という。)を承継したマリア・ナギー(請求人の代表者)の許諾をとらずに、本件商標を出願し登録したものと思われる。
なお、被請求人は、数年前よりインターネットサイト及び日本の提携ショップでスカルプテッドオバールを含む請求人のシルバー製品(ガボール・ナギーデザイン)のコピー商品を販売しており(甲第4号証)、請求人は多大な被害を被っている。また、被請求人は、本件商標のほか、立体形状を平面図化した12件の登録商標を得ているが、いずれもガボール・ナギーのシルバーアクセサリーのモチーフを盗用している(甲第5号証)。さらに、被請求人は、ガボール・ナギーのデザインを立体商標として商標登録を試み、特許庁に拒絶されている(甲第6号証)。
被請求人は、ガボール・ナギーのデザインを盗用したのみならず、その登録商標13件を根拠として、請求人のシルバーアクセサリー(以下「請求人製品」という。)の代理店及び販売店14社に対し、請求人製品のデザインが同商標登録の権利を侵害しているという旨の警告書(甲第7号証)を送付した。
さらに、被請求人が運営する「GABOR INC USA」のホームページ(www.GABOR‐silver.com:甲第4号証)の付属ページにおいて、「下記業者は、GABOR INC USA(GIUSA)の商標権利を侵害している非公認業者です。GIUSA正規商品をお求めの場合には、GIUSA公認ショップよりお買い求め下さい。」と表記し、請求人製品の販売店14社の名称・住所をリスト・アップし、その各名称部分に各販売店宛の上記警告書のPDFファイルをリンクするということまでやっている(甲第8号証)。このように、ガボール・ナギーのデザインを盗用して商標出願するというだけでも卑劣な行為であるにもかかわらず、その上、その不当に獲得した登録権利をもとに正当な権利者を脅すという公正な取引秩序に反する行為は許されるはずはない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。
(2)商標法第4条第1項第15号違反について
本件商標は、ガボール・ナギーのデザインであることから、被請求人が指定商品に使用すると、その需要者は、該商品が請求人製品であるかのように誤認する可能性は極めて大きい。前述のように、被請求人は、その自身の運営する会社のウェブサイト、提携ショップにおいて、ガボール・ナギー製品のコピー品をあたかも真正品であるかのように宣伝し販売しており、現に市場において、製品の出所について大きな混乱を起こしている。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号にも該当する。

2 平成20年3月19日付け提出の弁駁書
被請求人は、本件デザインに関する権利が被請求人に帰属しているから、本件商標の真の権利者であると主張し、乙第2号証及び乙第9号証を提出する。
しかし、被請求人の上記主張は、以下の理由により根拠がない。
(1)甲第9号証(東京地方裁判所平成20年2月27日判決言渡)は、請求人がガボール・インコーポレーテッド・ユーエスエー(以下「ガボールインクUSA社」という。)及びその代表者であると自称する被請求人を被告として提訴したうち、ガボールインクUSA社に対する判決である(ガボールインクUSA社は、適正な呼び出しを受けたにもかかわらず、応訴しなかったので、自白したものとみなされた。)。原告(請求人)は、上記訴訟において、本件商標を含む被請求人名義の13件の登録商標が、商標法第4条第1項第10号(15号の誤記)及び第4条第1項第7号に該当し、同法第46条1項第1号及び同第5号に基づき無効とされるべき商標であるから、このような無効理由のある商標権に基づきその権利を行使することは、本件の権利行使の態様からみて、虚偽の事実の告知あるいは流布として、不正競争防止法第2条第1項第14号の営業誹謗行為に該当し、当該権利行使行為(競争相手への商標権侵害の警告状送付行為)の差止めと、損害賠償を認めたものである。(なお、他方の被告福永洋幸(被請求人)については、領事送達を二度試みたが、二度とも正式の受領署名がとれず、現在東京地方裁判所が三度目の領事送達を試みているところである。)
ガボールインクUSA社の代表者である被請求人が、乙第2号証及び乙第9号証をもとに、自己が本件商標を含む13件の商標登録の正当な所有者であると主張して、裁判所で正々堂々と争わず、特許庁でのみ今回のような主張を行っているのは全く理解に苦しむといわざるを得ない。
(2)ガボラトリー・インターナショナル・インク(以下「ガボラトリーインターナショナル社」という。)は、本件デザインに関する権利をガボール・ナギー又はガボラトリー・インクから取得していない。すなわち、被請求人は、ガボラトリーインターナショナル社が1998年12月10日付け契約書(乙第2号証)により、ガボール・ナギーから本件デザインに係る権利を取得したと主張するが、ガボラトリーインターナショナル社は、ガボールブランド事業の権利者でないことを認めている(甲第10号証)。請求人は、ガボラトリーインターナショナル社が米国特許商標庁に出願した、「GABOR」(登録第2695716号(出願番号78/068868号)(乙第3号証)、以下「米国登録商標1」という。)、「GABORATORY(紋章の図形を含む。)」(登録第3039819号(出願番号78/066129号)(乙第4号証)、別掲(2)参照。以下「米国登録商標2」という。)及び「GABORATORY/INTERTNATIONAL(紋章の図形を含む。)」(登録第3039823号(出願番号78/076328号)(乙第5号証)、別掲(3)参照。以下「米国登録商標3」という。)の3件の商標(これらをまとめていうときは、以下、単に「米国登録商標」という。)について、不正出願・登録及び同商標並びに故ガボール・ナギーのデザインの無権限使用の取消し、差止め等を求めて、平成15年(2003年)7月29日にガボラトリーインターナショナル社をカリフオルニア州連邦地方裁判所に提訴し、同地方裁判所を通じて、平成16年(2004年)8月に、原告、被告間で和解が成立した(甲第10号証)。
この和解でガボラトリーインターナショナル社は、米国登録商標を含む「GABOR」及び「GABORATORY」関連商標及び故ガボール・ナギーのデザインに対する権利を有していないことを認めている。和解契約書の要点は以下のとおりである。
(a)ガボラトリーインターナショナル社は、米国登録商標1を請求人に譲渡すること。
(b)ガボラトリーインターナショナル社は、米国登録商標2及び3の出願を放棄すること、ガボラトリーインターナショナル社らは、「GABOR」若しくは「GABORATORY」の語句を含む標章、又は混乱を来たすほどこれらの標章に酷似した標章の登録等は一切試みないこと。
(c)請求人は、米国特許商標庁商標審判部にガボラトリーインターナショナル社出願の放棄を通知し、商標無効審判手続きを終了させるための手続をとること。
(d)ガボラトリーインターナショナル社らは、請求人の商標登録及び商標使用に対し異議申立てをしないこと。
(e)ガボラトリーインターナショナル社らは、ガボラトリーインターナショナル社自身、その承継人、ライセンシー、代理店のいずれも「GABOR」若しくは「GABORATORY」の標章又は混乱を来たすほどこれらの標章に酷似した標章を含んだ宝飾品、アクセサリーを一切提供、製造、ライセンス許諾、市販、販売あるいはそれらについての広告の掲載、頒布をしないこと。
(f)ガボラトリーインターナショナル社らは、ガボラトリーインターナショナル社自身、その承継人、ライセンシー、代理店のいずれも、請求人のカタログ若しくはガボラトリー・インターナショナル・インクのカタログに描写されている商品と殆ど同一のものか、又は酷似しているために請求人の製品を知悉しているバイヤーが、当該製品が請求人の製造したものと信じ込まれてしまう可能性のある宝飾品若しくはアクセサリーを一切、製造、ライセンス許諾、市販、販売若しくはそれらについての広告の掲載、頒布をしないこと。
(g)本契約の署名と同時に、ガボラトリーインターナショナル社らは、ガボラトリーインターナショナル社又はその関係会社、それらの従業員、役員が占有あるいは管理しているガボラトリーインターナショナル社のカタログに掲載されている宝飾品、アクセサリーも含め、ガボール・ナギーのデザインに基づいている宝飾品、アクセサリーの製造に使用されていた、又は使用可能なオリジナルの金型及び生産用の金型をすべて請求人代理人に引き渡すこと。
なお、上記訴訟において、乙第2号証に基づく主張は一切なされていない。
(3)請求人は、ガボラトリーインターナショナル社が上記和解契約の約定を履行しないので、2007年7月19日、ガボラトリーインターナショナル社らに対し、同和解契約の履行等を求めて、米国カリフォルニア州中部地区連邦地方裁判所に提訴した(甲第11号証)。
この訴訟において、請求人は、ガボラトリーインターナショナル社が上記和解契約に違反して登録し、シーディーエム・エクスチェンジ・カンパニー(以下「CDM社」という。)に名義変更した米国登録商標の抹消を求めた。
また、請求人は、ガボラトリーインターナショナル社が上記和解契約で約定したスカルプテッドオバールを含むガボール・ナギーのデザインに係わるシルバーアクセサリーの製造、販売の禁止も求めている。この訴訟において、ガボラトリーインターナショナル社は応訴していない(甲第11号証)し、また、乙第2号証に基づく主張もしていないから、このまま欠席判決が下されれば、米国の裁判所により、米国商標登録は全て無効と認定され、特許商標庁がこれらの商標登録を取り消すことになり、その結果、被請求人が本件審判において自己の権利の根拠として主張する米国登録商標は全て裁判所により無効と宣告されることが明らかである。
(4)ガボラトリーインターナショナル社は、本件デザインに係る権利については、ガボール・ナギーより取得をしておらず、無権利者から権利を取得することは有り得ない。したがって、乙第9号証は、後述の訴訟(甲第12号証)において当事者適格を認める決定的な証拠となり得たにもかかわらず証拠として提出されておらず、同判決後back dateで作成されたこと明らかであるが、たとえそれが真正なものであったとしても、無効な権利の譲渡であり、それによりCDM社が本件デザインに係る権利を取得することは有り得ない。
(5)CDM社が本件デザインに係る権利をガボラトリーインターナショナル社から取得していないことは、米国カリフオルニア州中部地区連邦地方裁判所の判決により確定している(甲第12号証)。
被請求人は、マリア・ナギーらを被告として、平成19年(2007年)6月15日に米国カリフォルニア州中部地区連邦地方裁判所に、商標権侵害、不正競争防止法等に基づき、「GABOR」、「GABORATORY」関連の商標を使用したガボール・ナギーデザインに関わるシルバーアクセサリーの製造、販売、広告等の禁止を求める訴訟を提起した。
これに対し、被告(請求人)らは、平成19年(2007年)8月30日に、CDM社が商標及びデザインに関わる著作権(日本の意匠権に該当)に対する所有者でないことの確認を求め、請求棄却の申立てを提出した。
そして、上記連邦地方裁判所は、Trialを含む本案審理に入ることなく、平成19年(2007年)11月6日付け判決書をもって、CDM社は、「GABOR」及び「GABORATORY」関連の米国登録商標の所有権者でないこと、及びガボール・ナギーがデザインしたシルバーアクセサリーに関わる著作権の所有者でないことを宣告し、被請求人の訴えを棄却した。
この訴訟で、乙第9号証は証拠として提出されておらず、また、同号証は権利譲渡の対価の記載がなく、事業譲渡契約としては不完全といわざるを得ないものであり、判決後back dateで急遽作成されたこと明らかであり、その証拠能力を含む証拠価値は皆無といわざるを得ない。
(6)以上により、CDM社が本件デザインに係る権利を有する者であるという被請求人の主張は理由なく、本件デザインに係る権利は、マリア・ナギー及び請求人に帰属すること明らかである。
(7)むすび
上述のように、本件商標は、商標法第4条第1項第7号及び同第15号に該当するにもかかわらず登録されたものであるので、同法第46条第1項第1号及び同5号により無効にすべきである。

3 平成20年8月22日付け提出の弁駁書
スカルプテッドオーバルのデザインを日本で販売していたガボールインクUSA社の日本における総輸入販売代理店を相手とする商標権侵害事件において、東京地方裁判所は、平成20年6月18日付けで、不正競争防止法第2条第1項第1号に基づき、当該輸入販売代理店に対して、パンサーのデザインをはじめとする10種類のシルバージュエリーの販売差止め及び損害賠償の支払いを命じた(甲第13号証)。

第3 被請求人の答弁の要点
被請求人は、「本件審判の請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。」との審決を求めると答弁し、その理由を次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第28号証(枝番を含む。但し、枝番の全てを引用する場合は、その枝番の記載を省略する。)を提出した。
1 平成20年1月21日付け提出の答弁書
(1)事件の経緯
請求人の創設者であるガボール・ナギーから一切の権利の譲渡を受けたガボラトリーインターナショナル社は、さらに、福永洋幸(被請求人)が代表者を務めるCDM社にガボール・ブランドのシルバーアクセサリーの商標権を含む一切の事業を譲渡した。
請求人は、マリア・ナギーが日本において平成19年(2007年)に「GABOR」商標の登録を得たことを奇貨として、本件商標が商標法第4条第1項第7号及び同第l5号に該当するから、その登録を無効にすべきものであるとして、本件審判を請求したものである。
しかしながら、請求人の主張は、以下に述べるとおり、明らかに誤りであって妥当性を欠くものであるから、本件商標の登録は、何ら無効にされるべき理由はない。
(2)商標法第4条第1項第7号について
ア 被請求人は、前記のとおり、ガボラトリーインターナショナル社と商品の販売契約を締結し、後に商標権を含む一切のガボール事業の譲渡を受けたCDM社の代表者である。
イ ガボール・ナギーは、日頃多量のアルコール摂取によりその死亡証明書(乙第1号証)記載のとおり、慢性の肝臓病を患い、病気により死期が迫っていることを知り、永年シルバー・ジュエリー製作の片腕であったスティーブ・ガーラックに後継者になることを望んだ。
スティーブ・ガーラックは、シルバーアクセサリーの職人であり、事業を経営する経験もなく、事業を始める資金もなかったので、ガボール・ナギーとスティーブ・ガーラックの永年の友人であったマリオン・イエハンスが相談を受け、マリオン・イエハンスが新しい事業の財政と経営を引き受け、ガボラトリーインターナショナル社をネバダ法人として設立し、スティーブ・ガーラックは、シルバーアクセサリーの職人としてデザイン及び製作を担当して、ガボール・ナギーとガボラトリーインターナショナル社との間に、1998年12月10日付けで事業の譲渡契約が締結された(乙第2号証)。
ウ 平成11年(1999年)、ガボール・ナギーの死後、ガボラトリーインターナショナル社は契約に従い、残されたマスター・ピース(原型)とその鋳型と職人達を引継ぎ、妻マリア・ナギーはガボラトリー・インクを閉鎖した。ガボラトリーインターナショナル社は、米国特許商標庁に米国登録商標を出願し、登録を受けた(乙第3号証ないし乙第5号証)。
エ CDM社は、米国及び日本における輸出・販売業者として、ガボラトリーインターナショナル社と商品の販売に関し、2003年7月31日、2003年8月24日に契約書を締結した(乙第6号証、乙第7号証)。さらに、2003年9月3日の商標権譲渡契約に基き、2003年9月5日、ガボラトリーインターナショナル社の全ての商標権、著作権、製造権、販売権、顧客、事業の暖簾の譲渡を受け(乙第8号証、乙第9号証)、名実共にガボール・ナギーのシルバーアクセサリー事業の承継人となった。
オ CDM社は、ガボラトリーインターナショナル社よりガボール・ブランドのシルバーアクセサリーの提供を受け、日本各地の販売業者にガボールブランドの商品の供給を継続し、契約に基づいて福永洋幸が日本にガボールブランドの各商品形状を商標登録したところ、ガボール・ナギーの妻は、突然閉鎖していたガボラトリー・インクを再開し、ガボール・ナギーとの結婚証明書及び死亡証明書を日本国特許庁に提出し、法律上の相続人であると主張して、平成19年(2007年)に、日本において「GABOR」商標の登録を得た。
カ 日本及びアジア全域にわたる商標の使用、製造販売の独占権を取得したCDM社は、ガボラトリーインターナショナル社から譲り受けた米国登録商標(乙第10号証ないし乙第12号証)を付したガボール・インクUSA社製造のシルバーアクセサリーを日本国内で積極的に展開して広く周知させた。
キ 一方、再開したガボラトリー・インクのマリア・ナギーは、単にガボール・ナギーの妻としての相続人であり、米国においても、日本においても、「GABOR」関連商標のシルバーアクセサリー事業の相続人ではない。
ク 以上のとおり、米国における正当な商標権者であり、米国において正当なGABORブランド事業の継承者である被請求人が、商品を日本に輸出するに際し、デザインを商標登録出願し、登録された商標権に基づき商標権侵害者に警告を発するのは正当な行為であり、「他人のデザインを盗用したものでなく、自社のデザインを商標登録」したもので、本件商標は商標法第4条第1項第7号に該当しない。
(3)商標法第4条第1項第15号について
ア 本号において「他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある場合」とは、その他人の業務に係る商品又は役務であると誤認し、その商品又は役務の需要者が商品又は役務の出所について混同するおそれがある場合のみならず、その他人と経済的又は組織的に何らかの関係がある者の業務に係る商品又は役務であると誤認し、その商品又は役務の需要者が商品又は役務の出所について混同するおそれがある場合をもいう。
米国におけるGABORブランドの正当な商標権者であり、米国における正当なGABORブランド事業の継承者である被請求人及びCDM社は、ガボール・ナギーの真正商品を販売し、日本において商標「GABOR」関連商標を周知せしめたもので、米国における商標「GABOR」関連の商標権者であり、商標「GABOR」関連事業の真の承継人である。
したがって、本条に定める「他人の業務に係る商品と混同を生じるおそれがある場合」とは請求人のことである。
イ 被請求人は、ガボール・ナギーのデザインを侵害から守るため、立体商標を出願したが、立体商標として「テトラポット」等の僅かな登録例しか認められない現在の立体商標登録の登録要件を充足しないとの理由により、商標法第3条第1項第3号により登録されなかったもので、ガボール・ナギーのデザインを盗用したとの理由で拒絶されたものではない(乙第13号証、乙第14号証)。
ウ 以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
(4)むすび
以上のように、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第7号及び同第15号の規定に違反してされたものではない。

2 平成20年9月12付け提出の答弁書
(1)本件商標のデザインについて
請求人は、本件商標のデザインに「係る権利」を観念し、これがガボール・ナギー及びガボラトリー・インク(請求人)に帰属していたと主張する。
しかし、本件商標のデザインは意匠登録されていないところ、当該主張がデザインの周知性の帰属主体を論じているのであれば、このような帰属主体は請求人ではなくガボール・ナギーである。
これは、本件商標のデザインが付された商品を含むシルバーアクセサリー等をデザインし、これを製造・販売していたのはすべてガボール・ナギーであること、請求人の商品であるシルバーアクセサリーのブランド名が彼の名称をとって「ガボール」と称されていたこと、雑誌記事等でも、これら商品のブランド名は「ガボール」、「ガボールブランド」と称され(甲第3号証の1、甲第3号証の2、甲第3号証の5、甲第3号証の6)、請求人の名称「ガボラトリー・インク」が言及されることはなかったことから明らかである。
(2)ガボールブランドの事業の承継について
請求人は、(a)ガボール・ナギーとガボラトリーインターナショナル社との間の事業譲渡契約書(乙第2号証)が偽造文書であり、また、(b)ガボラトリーインターナショナル社とCDM社との間の事業譲渡契約(乙第9号証)が無効な権利譲渡であると主張し、関連事情を縷々述べる。
しかし、両事業譲渡契約はいずれも有効に成立しており、これは両契約に当事者による署名がなされていることからも明らかである。これにより、ガボラトリーインターナショナル社はガボール・ナギーよりガボールブランドに関する事業を有効に承継し、CDM社は、これをガボラトリーインターナショナル社より有効に承継したものである。以下、(a)ガボール・ナギーとガボラトリーインターナショナル社との間の事業譲渡契約(乙第2号証)が十分な動機により、ガボール・ナギーの意思に基づき署名がなされた真正な文書であることを詳述し、請求人の主張に対する反論は、(b)ガボラトリーインターナショナル社とCDM社との間の事業譲渡契約(乙第9号証)の権利譲渡が有効であるとの主張と併せて後記(5)において行うものとする。
ア ガボール・ガボラトリーインターナショナル社間の事業譲渡契約(乙第2号証)について
(ア)事業譲渡の動機について
(a)ガボール・ナギーは、事業譲渡契約書の作成された平成10年12月以前より、慢性のアルコール中毒症状にあり、また、これに起因する、極めて治療困難な肝臓疾患である肝硬変を数年に渡って患っている状況にあり、医師からは、このまま飲酒を続ければ、近い将来に死に至るという警告を受けていた。
しかしながら、ガボール・ナギーは、かかる状態となるに至っても飲酒を止めることはなく、むしろその度合いを深めていたため、病状はさらに悪化の一途を辿っていた。そして、これに伴って、ガボールブランドの経営や、シルバ一アクセサリーの創作・デザインに対する意欲ないし気力を次第に喪失している状況にあった。
(b)このような状況において、ガボール・ナギーは、同人が最も信頼していたアクセサリー職人であり、また友人でもあるスティーブ・ガーラックに対して、自分が死亡した場合には、同人がスティーブ・ガーラックとともに発展させてきたガボールブランドを引き継ぎ、その事業を継続して欲しいという希望をもつようになっていた。
その一方、ガボール・ナギーの妻であったマリア・ナギーは、当時、ガボール・ナギーと同様にアルコール中毒の状態にあり、また、ガボールブランドの事業ないし請求人の業務には、元来、全く関与しておらず、会社経営またはアクセサリー製造に関しても、何らの知識・経験を有していなかった。
したがって、少なくとも当時の状況において、マリア・ナギーにガボールブランドを継承し、その事業を継続する能力はなかったのであり、ガボール・ナギーの死後、シルバーアクセサリーの事業を継承していける人物は、事実上、スティーブ・ガーラックのみであるという状況にあった。
(c)そこで、ガボール・ナギーは、近い将来に仮に自分が死去した場合には、ガボールブランドの事業をスティーブ・ガーラックに引き継がせたいと考え、平成10年(1998年)の12月初旬、そのような意思を具体的に外部に表明・表示するため、遺言書(乙第15号証)を作成し、これをガボール製品のオリジナルの金型(乙第17号証)とともに、スティーブ・ガーラックに託したのである。
(d)なお、ガボール・ナギーが、長年のアルコール中毒に起因する肝硬変を患い、これが原因となって死亡したという事実は、ガボール・ナギーの死亡時に作成された、米国カリフォルニア州ロサンゼルス・パサデナ市厚生課作成にかかる死亡確認書(乙第1号証)において、同人の死亡原因として、「アルコール中毒(CHRONIC ALCOHOLISM)による肝硬変(LIVER CIRRHOSIS)」と記載され、その病歴について、「数年来(YEARS)」と記載されていることからも明らかである。
この点、肝硬変(LIVER CIRRHOSIS)とは、不可逆性の肝臓疾患の末期状態をいうのであり、その5年生存率は約50%とされる、極めて治療が困難であり、かつ死亡可能性の高い疾患である。この点、肝硬変の治癒のためには断酒が必須であり、かかる症状のまま飲酒を継続することは、ほとんど自殺行為であるとさえいえる(乙第18号証)。
(e)以上のとおり、ガボール・ナギーが、アルコール中毒症状に起因する肝硬変を数年に渡って患っている状況にあり、医師からは、近い将来に死に至るという事実を告げられていたことに鑑みれば、自らの死期を予感したガボール・ナギーが、最も信頼する職人であり友人であるスティーブ・ガーラックに対し、ガボールブランドを引き継ぎ、その事業を継続して欲しいと願うのは極めて自然な心情であり、ガボール・ナギーには、スティーブ・ガーラックに対する遺言書の作成、及びその後の事業譲渡契約(乙第2号証)を締結する十分な動機があったといえる。
(イ)事業譲渡契約書の作成について
(a)スティーブ・ガーラックと同様、ガボール・ナギーと数年来の友人であったマリオン・イエハンスは、上記遺言の内容を具体化し、ガボール・ナギー死去の際に、ガボールブランドの権利承継を円滑に行い、将来的に第三者に対する対抗力を確保しておくため、ガボール・ナギーと合意の上、遺言書(乙第15号証)の交付から間もない時期である平成10年(1998年)12月10日に、事業譲渡契約(乙第2号証)を締結した。
(b)当時、マリオン・イエハンスは、本業である建設業の傍ら、モータサイクルの製造を通じて知り合ったガボール・ナギー及びスティーブ・ガーラックと親交を深めており、時折、請求人におけるガボール製品の日本への輸出にかかる相手方との交渉や、その事務処理を行うなどしていた。一方、職人であるスティーブ・ガーラックは、会社経営それ自体については、積極的な興味関心を有していなかった。
このような経緯から、遺言書により表明されたガボールブランドの事業の具体的な権利関係の処理については、マリオン・イエハンスに託され、事業譲渡契約(乙第2号証)が、ガボール・ナギーとマリオン・イエハンスとの間で締結されることとなったのである。なお、同契約書の当事者は、マリオン・イエハンスではなくガボラトリーインターナショナル社となっているが、これは、当時、マリオン・イエハンスが使用していたいわば屋号である。
そして、事業譲渡契約書(乙第2号証)は、マリオン・イエハンス自身が2通を作成し、スティーブ・ガーラック宅において、ガボール・ナギーとの間で相互に署名の上、各自がその1通を保有した。
(c)この点、請求人は、事業譲渡契約書(乙第2号証)に対価や従業員、金型の引渡し等についての記載がなく、事業譲渡契約としては不完全であるなどと主張するが、これは、同契約書が、ガボラトリーインターナショナル社がガボールブランドに関する事業を承継したことを第三者に対抗するために作成されたものであり、マリオン・イエハンスがそのために必要な最低限の内容を記載したからに過ぎない。
(d)また、対価である20万ドルについては、マリオン・イエハンスがその全てを支出し、ガボール・ナギーに対して現金で交付し、これに対し、ガボール・ナギーが領収書(乙第16号証)に署名したうえでマリオン・イエハンスに交付した。現金授受による取引は、米国のシルバーアクセサリー業界においては、商慣習といえるものであり、本件における事業譲渡契約の対価の現金授受も、その慣習に従ったものである。そして、20万ドルという対価は、基本的には当時のガボール製品のオリジナル金型の個数(100個以上)を根拠として算出したものである。同時に、ガボール・ナギーは、仲間を大切にする人間で、親しい友人に対して感謝の念を表すために、贈り物をする習慣があったことから、マリオン・イエハンスは、事業譲渡自体が、遺言書(乙第15号証)に基づくガボール・ナギーからの贈与であるという認識も有していた。
したがって、その対価は、当時のガボール製品のオリジナル金型の個数のみならず、かかる点も併せ考慮した上で決定された対価であった。
さらに、請求人が、ガボール・ナギー及びパスカル・ザザ(以下「ザザ」という。)により平成6年(1994年)に設立された際に出資された金額が15万ドルであったこと(乙第19号証))からすれば、上記20万ドルの対価は、極めて妥当だったということができる。
(e)加えて、スティーブ・ガーラックないしガボラトリーインターナショナル社が、ガボール・ナギーよりガボール製品の製造のための生命線といえるオリジナル金型を承継し、所有していた事実は、当該事業譲渡契約に基づくガボールブランドの事業承継の事実を裏付けるものである。
すなわち、平成16年(2004年)8月の請求人とガボラトリーインターナショナル社との米国における極秘和解契約(甲第10号証)において、請求人自身がガボラトリーインターナショナル社に対して、オリジナルの金型の引き渡しを求めていること等から、ガボラトリーインターナショナル社が製品の製造に使用し、現在は、CDM社の所有下にある金型(乙第17号証)が、オリジナルの金型であることが明らかである。
しかも、仮に事業譲渡契約書(乙第2号証)が偽造文書であり、事業譲渡が実際にはなされていないというのであれば、請求人は、オリジナルの金型をスティーブ・ガーラックないしガボラトリーインターナショナル社が持ち去った時点で、当該金型を取り返すのが通常の対応というべきところ、事業譲渡後5年半以上が経過した上記極秘和解契約の締結時にその引渡しを求めるまで、請求人は、何らの措置も採ってこなかった。かえって、ガボラトリーインターナショナル社は、後記に述べるザザの脅迫があるまでは、オリジナルの金型を利用して、平穏無事にガボール製品の製造・日本への輸出を継続してきたのである。
(ウ)以上に照らせば、ガボール・ナギーは、平成10年12月において、十分な動機と理由をもって、遺言書(乙第15号証)及び事業譲渡契約書(乙第2号証)を作成し、ガボールブランドの将来を信頼する友人であるスティーブ・ガーラック及びマリオン・イエハンスに託して、自分の死後に関する憂いを払拭したということができる。
イ 署名の同一性について
(ア)請求人は、事業譲渡契約書(乙第2号証)の署名がガボール・ナギー本人によりなされたものではなく、同契約書が偽造文書であると主張する。
そこで、ガボール・ナギーの署名の真正を立証するため、被請求人は、平成6年(1994年)4月8日付の請求人定款(乙第20号証)、平成9年(1996年)8月9日付でガボール・ナギー及びワキサカ有限会社(以下、「ワキサカ」という。)との間で締結された、「日本国における版権と商標に関する契約」(乙第21号証)を追加証拠として提出する。
(イ)上記各証拠の署名を検討すると、まず、請求人の定款(乙第20号証)の署名と、事業譲渡契約書(乙第2号証)及び領収書(乙第16号証)の署名は、いずれも特徴ある1番目の文字「g」、2番目の文字「n」、また3番目の「r」に似た文字の部分において、筆順及び筆圧がほとんど同一といえ、また、文字相互の間隔も同一である。また、上記定款(乙第20号証)の各署名と、遺言書(乙第15号証)の、不鮮明ではあるが、「n」と「r」の文字の部分の筆順及び筆圧は、ほとんど同一といえる。
また、「日本国における版権と商標に関する契約」(乙第21号証)の署名は、遺言書(乙第15号証)、事業譲渡契約書(乙第2号証)及び領収書(乙第16号証)の署名と筆圧においてやや異なるが、特長ある「g」及び「n」の部分における筆順や文字全体の形は同一であり、また、文字相互の間隔も同一といえる。
(ウ)かかる点からすれば、乙第2号証、乙第15号証、乙第16号証、乙第20号証、乙第21号証の署名は全て、同一人物により作成されたものであり、乙第20号証、乙第21号証がガボール・ナギー自身の真正な署名であることはもとより明らかであることからすれば、遺言書(乙第15号証)並びに事業譲渡契約書(乙第2号証)及び領収書(乙第16号証)の署名もまた、真にガボール・ナギー自身により作成されたものというべきである。
(エ)なお、乙第20号証、乙第21号証については、いずれも、一連の紛争が開始されるはるか以前の、ガボール・ナギー存命中に作成されたものである。請求人定款(乙第20号証)は、米国州務長官の検印のあるものであり、これが真正に作成されたものであることに疑いの余地はない。
一方、「日本国における版権と商標に関する契約」(乙第21号証)についても、平成9年(1997年)に、ガボール・ナギー自身と、当時の日本の輸入代理店であったワキサカとの間で締結されたものである。当時、ワキサカが請求人の製品を日本に輸入していた事実には争いはなく、また、契約書それ自体の内容においても、何ら請求人ないしCDM社と利害関係を有するものではないから、当該契約書(乙第21号証)は真にガボール・ナギーにより作成されたものであり、その署名もガボール・ナギー自身のものといえる。
したがって、乙第20号証、乙第21号証は、いずれもガボール・ナギー自身の真正な署名が記載された書面として、十分な信用性を有する。
(オ)この点、請求人は、弁駁書同所において、署名と本文とをつぎはぎし、それをコピーすれば事業譲渡契約書(乙第2号証)の作成は可能であると主張するが、乙第2号証、乙第15号証、乙第16号証、乙第20号証、乙第21号証の署名を比較すれば明らかなとおり、各署名は、それぞれ特徴的な部分において極めて類似してはいるが、これらを重ねても同一とはならない。
仮に、請求人の主張するように、事業譲渡契約書等が署名をつぎはぎして偽造されたものというのであれば、同一の署名があってしかるべきであるところ、それがないのは、各署名が全て真にガボール・ナギーによりなされたからに他ならない。また、そもそも、遺言書(乙第15号証)の署名は、マーク上に重なってなされており、請求人のいうつぎはぎの方法による偽造は不可能である。
以上より、請求人の主張には理由がない。
ウ 原本不提出の点について
(ア)請求人は、事業譲渡契約書(乙第2号証)の原本の取調べがなされなければ、その証拠能力も証拠価値も全くなく、また、原本の提出がないことが、同契約書が偽造文書であることの根拠の一つであると主張するようである。
(イ)しかし、仮にこれが偽造された文書であるとすれば、当初から、原本とされる文書の提出がなされてしかるべきである。すなわち、ある文書の成立の真正を主張する場合に、その原本を提出できないことは、一般的に、当該文書の提出者にとって、不利な事実認定がなされる可能性を高めるものである。
とすれば、偽造文書を作成した者が、その真正を偽ろうとする場合には、写しではなく、偽造文書の「原本」を提出しようと考えるのが自然であって、むしろ、偽造文書の「写し」を提出することは、偽造行為の目的自体を失わせしめるものである。かかる傾向は、その文書の真正が事実認定において極めて重要な要素と認められる場合には、さらに顕著になるというべきである。
(ウ)また、本件のように、遺言書(乙第15号証)、事業譲渡契約書(乙第2号証)及び領収書(乙第16号証)の作成が、平成10年(1998年)12月とおよそ10年も前に遡り、相当以上の時間が経過している上、その作成場所が海外であるような場合には、当事者が、常に原本を提出できるとは限らないのであり、このような場合に、原本が提示されていない事実を、過度に重視すべきでない。
さらに、ある紛争が生じた場合、決定的な書証となる文書の原本が、これを提示されれば不利益を蒙る一方当事者により奪われる事態は、十分に発生し得ることであって、この場合、原本を奪われた当事者が、原本を提示できないために常に敗訴するとすれば、強奪等の不法行為を誘発することとなるのであり、不合理というほかない。
(エ)むしろ、重要なのは原本を提示できない理由である。本件において、原本が提示できない理由は、以下のとおり、請求人の株主であったザザが、遺言書(乙第15号証)等の原本を保持していたマリオン・イエハンスに対し、マフィアないしギャング組織との関わりを背景にして、執拗に脅迫や嫌がらせを続けた上、すべての原本を同人から奪い取ったことにより、請求人は、これらの証拠の原本を入手できなかったというものである。
(オ)すなわち、マリオン・イエハンスは、遺言書(乙第15号証)や事業譲渡契約書(乙第2号証)等の作成後、これらガボールブランドの事業にかかるガボラトリーインターナショナル社の権利を証する書面の原本を一括して保管していた。
ガボール・ナギーの死後、ガボラトリーインターナショナル社は平成13年(2001年)5月29日に法人化し、さらに同年5月ないし7月の間に、米国における各商標(乙第3号証ないし乙第5号証)の出願を行うとともに、ガボール製品の製造及び日本に対する輸出等を行っていた。
これに対し、平成14年(2002年)頃まで、マリア・ナギーは、ガボラトリーインターナショナル社によるガボール製品の製造・輸出等につき、何ら異議を述べることもなかった。
(カ)ところが、平成14年(2002年)になって、スティーブ・ガーラックやマリオン・イエハンスに対し、ザザから、直接相対で、または電話やe-mailを通じて、ザザに対して権利関係書類及びオリジナルの金型を引き渡すとともに、ガボラトリーインターナショナル社の事業を中止しなければ、背後にあるマフィアないしギャング組織が、スティーブ・ガーラックやマリオン・イエハンスの生命を奪うことになる旨の執拗な脅迫が開始されるようになった。かかる脅迫は、時に銃を用いて行われるほどの悪質なものであった。
さらに、平成15年(2003年)7月29日には、請求人からガボラトリーインターナショナル社に対する訴訟が提起され(乙第22号証)、また、ザザによるマリオン・イエハンスらに対する脅迫や嫌がらせも、継続して行われていた。
なお、このころ、ザザは、オリジナルの金型を強奪するため、ガボラトリーインターナショナル社工場に押し入ろうとしたため、ロサンゼルス郡特別機動隊(SWAT)により包囲されるという事件を発生させている(乙第23号証)。
(キ)このような状況において、マリオン・イエハンスは、当初こそ脅しに屈することなく事業を継続していたが、ザザによる度重なる脅迫に、生命の危険を感じるとともに、さらに訴訟追行に伴う費用の負担も大きかったため、平成16年(2004年)に至って、ついに、ザザに対して権利関係書類の原本を引き渡した上、上記訴訟において、全く真意に基づかない極秘和解契約(甲第10号証)を締結することとしたのである。
なお、オリジナルの金型については、平成15年(2003年)7月31日ないし9月5日に至る一連の契約(乙第6号証ないし乙第9号証)でガボールブランドの事業がガボラトリーインターナショナル社からCDM社に譲渡された段階で、ガボラトリーインターナショナル社からCDM社に引き渡されており、マリオン・イエハンスの手許には残っていなかった(乙第17号証)。
(ク)本件における遺言書(乙第15号証)、事業契約書(乙第2号証)及び領収書(乙第16号証)の原本の提出が不可能となったのは、以上の理由に基づくものであるから、これをもって遺言書(乙第15号証)並びに事業譲渡契約書(乙第2号証)及び領収書(乙第16号証)の成立の真正を否定する根拠とはなし得ず、また、乙第2号証の証拠価値を減殺するということはできない。
エ 請求人の主張に対する反論
(ア)東京地方裁判所平成20年2月27日判決(甲第9号証)について
同訴訟において、ガボールインクUSA社が応訴していないのは請求人の指摘するとおりである。
これは、被請求人が、ガボールインクUSA社が米国法人であり、日本の裁判所に管轄権が認められないことから、法的手続に則った適正な送達がなされていないと考えたからに過ぎない。すなわち、被請求人としては、本案で争うまでもなく、同訴訟がそもそも訴訟要件を欠き却下されるべきものと考えていたのである。 したがって、同訴訟において請求人からの請求を争わなかったのは、本件審判事件における被請求人の態度と何ら矛盾しない。 なお、被請求人は、同訴訟を提起された際は、具体的に日本の弁護士に相談していなかったが、被請求人個人を被告とする訴訟については、日本の弁護士を依頼し、本件と同様請求人の主張を争う方針である。
(イ)極秘和解契約(甲第10号証)について
請求人は、平成15年7月29日に米国カリフォルニア州連邦地方裁判所にガボラトリーインターナショナル社に対して提起した訴訟において、ガボラトリーインターナショナル社が、事業譲渡契約(乙第2号証)等を証拠として提出することなく、請求人との間で平成16年8月に極秘和解契約(甲第10号証)を締結したことを指摘する。
しかし、そもそも当該極秘和解契約が締結されたのは、ガボラトリーインターナショナル社がCDM社に対して平成15年(2003年)7月31日ないし9月5日に至る一連の契約(乙第6号証ないし乙第9号証)で、ガボールブランドの事業がガボラトリーインターナショナル社からCDM社に譲渡された後である。すなわち、極秘和解契約当時、ガボラトリーインターナショナル社は無権利者であったのだから、請求人がガボラトリーインターナショナル社より権利を取得することはない。
なお、ガボラトリーインターナショナル社がこのような行為を行ったのは、第5.1(4)記載のとおり、ザザからの度重なる脅迫行為によりマリオン・イエハンスが生命の危険を感じるとともに、訴訟追行に伴う費用の負担が大きくなってきたためであり、真意に基づくものではない。また、CDM社に対しガボールブランドに関する事業を譲渡した後は、自ら事業を行っておらず、実質的な不利益もなかった。このため、ガボラトリーインターナショナル社はやむなく真実と反する内容の和解を締結したのである。
また、ガボールブランドに関する事業を譲渡した後のガボラトリーインターナショナル社が、自己を当事者とする訴訟でそれほど熱心な態度をとらないことは十分ありうることであり、これが脅迫下にあればなおさらである。従って、同訴訟におけるガボラトリーインターナショナル社の対応が被請求人の提出する証拠の証拠価値を直接左右するものではない。
(ウ)米国カリフォルニア州中部地区連邦地方裁判所平成19年11月6日判決(甲第12号証)について
請求人は、同訴訟において乙第9号証が提出されていなかったことをもって証拠価値がないと主張するようである。しかし、乙第9号証は、ガボラトリーインターナショナル社、CDM社が署名した有効な契約であって、同訴訟で被請求人が乙第9号証を提出しなかったのは、乙第6号証、乙第7号証の提出により立証が十分であると考えたにすぎない。その後、連邦裁判所からの棄却判決が出された際、被請求人は、依頼していた弁護士より、請求人らが米国国内では侵害商品を販売しておらず、損害が発生したこととはならないため、いずれにせよ損害賠償請求をすることはできないなどの説明を受けた。
このため、被請求人は、不服申し立てをしたとしても、損害賠償を勝ち取れないのであれば意味がないと考え、そのまま何らの措置も採らなかった。
(3)商標法第4条第1項第7号について
(ア)請求人は、本件商標は、「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」に該当するとし、その根拠として、被請求人が、(1)本件商標の著名性を利用する目的で、そのデザインを盗用して商標出願したこと、(2)請求人の代理店及び販売店に対して警告書(甲第7号証)を発送したこと及びGIUSAのウェブサイトにおいて請求人の販売店を「非公認業者」と紹介し、同様の警告書を掲載したこと(ただし、上記警告書及びウェブサイトの作成名義はいずれも被請求人でなくGIUSAである。)が公正な取引秩序に反する行為であることを挙げる。
(イ)しかし、上記(2)において主張したとおり、ガボール・ナギーによる遺言書(乙第15号証)及び事業譲渡契約(乙第2号証)に基づき、ガボール・ナギーの死亡した平成11年(1999年)1月以降、その事業及びこれにかかる権利のすべては、ガボール・ナギー及び請求人からガボラトリーインターナショナル社に譲渡され、さらに平成15年(2003年)7月31日ないし9月5日に至るガボラトリーインターナショナル社とCDM社との間の一連の契約(乙第6号証ないし乙第9号証)を通じて、ガボラトリーインターナショナル社からCDM社に譲渡されたものであり、CDM社は、ガボールブランドに関する事業を行う正当な権利を有する。
他方、請求人は、ガボラトリーインターナショナル社に対しガボールブランドに関する事業を譲渡した結果、これにかかる権限を失った。しかるに、請求人は、ガボールブランドに関する事業の利権を得るため、オリジナルの金型を保有しないにもかかわらず、ガボールブランドの製品を突如製造・販売するに至ったのであって、むしろ公正な取引秩序に反する行為を行っているのは請求人である。
したがって、CDM社は本件商標を使用する排他的な権限を有し、CDM社による本件商標の登録は何ら公序良俗を害するものではない。この点、被請求人は、CDM社の代表者であるところ、会社の営業にかかる商標を代表者名義で商標登録することは一般的に行われることであり、特段の問題はない。
(ウ)したがって、本件商標は、「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」には該当しない。
(4)商標法第4条第1項第15号について
(ア)請求人は、本件商標が、「他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標」に該当すると主張する。
(イ)しかし、上記(2)のとおり、CDM社は、ガボール・ナギーからガボールブランドに関する事業を承継したガボラトリーインターナショナル社より、平成15年7月31日から9月5日にかけて、同事業及びこれにかかる権利のすべてを承継したのであるから、CDM社が本件商標を指定商品に使用しても、商品の出所につき混同を生ずるおそれはない。
この点、過去の審決においても、出願人が商標の使用者から承諾を得ていたことを理由として、商品の出所について誤認混同を生ずるおそれがなく、本号に該当しないとした例がある(審判平1-11972)。
そして、CDM社の代表者である被請求人が本件商標を出願した場合も、同様に、商品の出所について混同を生ずるおそれはないというべきである。
(ウ)したがって、本件商標は、「他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標」には該当しない。

第4 当審における無効理由の通知
1 本件商標について
本件商標は、別掲(1)の図形からなるところ、甲第3号証の1ないし5によれば、該図形は、請求人会社「ガボラトリー・インク」の創設者であるガボール・ナギーのデザインに係るシルバーアクセサリー(ペンダント、ペンダントトップ、キーキーパー、ブレスレット)を構成する立体形状(請求人のいう「スカルプテッドオバールのデザイン、別掲(4)」を含め、以下、一括して「引用標章」ということがある。)の一部を平面図として表したものと認められる。
そして、上記シルバーアクセサリーについては、我が国において本件商標の登録出願前に発行された雑誌にガボール・ナギーのデザインに係るものとして写真と共に紹介されている(甲第3号証の1ないし5)。
2 本件商標の商標法第4条第1項第7号該当性について
(1)請求人及び被請求人の主張によれば、ガボール・ナギーが1999年1月16日に死亡したこと(乙第1号証)から、上記1にいうガボール・ナギーのデザインによるシルバーアクセサリーの立体形状(引用標章)に係るデザインに関する権利をはじめ、ガボール・ナギーが生前にデザインし請求人が販売していたシルバーアクセサリー製品(以下「ガボール製品」という。)やその販売権、商標権等の帰属を巡って両当事者間に争いが生じたことが認められる。
(2)被請求人は、引用標章に係るデザインに関する権利をはじめ、ガボール製品関連の商標権、著作権、製造権、販売権等については、1998年12月10日付け契約書(乙第2号証)によりガボラトリーインターナショナル社がガボール・ナギーから譲渡を受け、さらに、2003年9月5日付け契約書(乙第9号証)によりCDM社がガボラトリーインターナショナル社から譲渡を受けた旨主張している。
また、被請求人は、ガボラトリーインターナショナル社と商品の販売に関し、2003年7月31日付契約書(乙第6号証)及び同年8月24日付契約書(乙第7号証)を交わし、日本及びアジア全域に亘る商標の使用、製造販売の独占権を取得した旨主張している。
そして、乙第3号証ないし乙第5号証及び乙第10号証ないし乙第12号証によれば、ガボール製品についての基本的な商標ともいえる「GABOR」(米国登録商標1)、別掲(2)の構成よりなる米国登録商標2及び別掲(3)の構成よりなる米国登録商標3については、米国において「ガボラトリーインターナショナル社」によって2001年6月13日、同年5月29日、同年7月30日にそれぞれ登録出願され、2003年3月11日、2006年1月10日にそれぞれ登録され、その後、CDM社に譲渡され2007年4月6日及び同月10日に譲渡の登録がされたことが認められる。
なお、乙第3号証ないし乙第5号証の訳文として提出された乙第3号証の1、乙第4号証の1及び乙第5号証の1は、原文には存在しない「最新の登記上の所有者」及び「譲渡記録」が記載されており、正確なものではない。
(3)しかしながら、1998年12月10日付け契約書(乙第2号証)及び2003年9月5日付け契約書(乙第9号証)に基づく被請求人の上記主張は、米国における一連の訴訟の経緯に照らすと直ちには首肯し難いものである。
すなわち、請求人は、ガボラトリーインターナショナル社を被告として、米国商標1ないし3の不正出願/登録及び同商標並びにガボール・ナギーのデザインの無権限使用の取消、差止等を求める訴訟を2003年7月29日に米国カリフォルニア州連邦地方裁判所に提起したが、同裁判所を通じて2004年8月に当該訴訟につき当事者間に和解が成立した(甲第10号証)。
当該和解契約書は、
(a)原告(審決注:本件審判の請求人。以下同じ。)は、被告ら(審決注:ガボラトリーインターナショナル社ら。以下同じ。)に対し、7500ドルを支払う。
(b)原告は本訴を取り下げ、被告は反訴を取り下げる。
(c)被告らは、原告に米国登録商標1を譲渡する。
(d)被告らは、米国登録商標2及び3の出願を放棄する。
(e)原告は、(d)の放棄に基づき、米国特許商標庁における審判手続き終了の措置をとる。
(f)被告らは、原告が出願している「GABORATORY」及び「GABORATORY(紋章の図形を含む。)」の各商標並びに「GABOR」及び「GABORATORY」の各商標の使用に対し、異議を申し立てない。
(g)被告らは、「Gabor」若しくは「Gaboratory」の標章について使用しないことに同意する。
(h)被告らは、ガボール・ナギーのデザインに係るシルバー製アクセサリーと同一又は酷似する宝飾品の製造又はカタログ販売をしないことに同意する。
(i)ガボール・ナギーのデザインに係るシルバー製アクセサリーに使用されていた金型等を引き渡す。
などを骨子とするものといえる。
請求人は、ガボラトリーインターナショナル社が上記和解契約の約定を履行しないので、和解契約の履行等を求める訴訟を米国カリフォルニア州連邦地方裁判所に提起した。
他方、CDM社こと被請求人は、2007年6月15日に請求人、「マリア・ナギー」等を被告として、米国商標1ないし3を根拠に商標権侵害等に基づきガボール製品の製造、販売、広告等の禁止を求める訴訟を米国カリフォルニア州中部地区連邦地方裁判所に提起したが、逆に被告から「CDM社」はガボール製品に関する商標及びデザインに係る著作権に対する所有者でないことの確認を求める請求棄却の申立てがされた結果、CDM社こと被請求人の訴えが棄却された(甲第12号証)。
これら米国における一連の訴訟の経緯からすると、「ガボラトリーインターナショナル社」がガボール・ナギーの生前に同人から引用標章に係るデザインをはじめ、ガボール製品関連の商標権、著作権、製造権、販売権等を譲り受けたとする被請求人の主張は俄には信じ難く、むしろ、上記和解契約の内容からすれば、「ガボラトリーインターナショナル社」はガボール・ナギーから上記諸権利を譲り受けていないものと推認される。
そうすると、CDM社が米国商標1ないし3について登録簿上の名義人となっているとしても、元々権利を有していない「ガボラトリーインターナショナル社」からCDM社又は被請求人が上記諸権利を取得することはないといわざるを得ない。
そして、上記CDM社こと被請求人が提起した米国訴訟の判決(甲第12号証)においても、被請求人が当審において提出した乙第6号証及び乙第7号証の契約書によっては、CDM社こと被請求人はガボラトリーインターナショナル社から標章に係る権利の譲渡を受けたものとは認められないと認定されているのである。
また、CDM社又は被請求人が引用標章に係るデザインをはじめ、ガボール製品関連の商標権、著作権、製造権、販売権等を譲り受けたとする根拠として重要といえる1998年12月10日付け契約書(乙第2号証)及び2003年9月5日付け契約書(乙第9号証)は、上記米国訴訟において証拠として提出されていない。
(4)他方、ガボール・ナギーのデザインに係るシルバーアクセサリーは、上記1のとおり、ガボール・ナギー及び請求人の業務に係るものとして本件商標の登録出願前に既に我が国においても紹介されており、その特異なデザインとも相俟って、この種商品のマニアの間には相当程度知られていたものと推認されることから、当該マニアが本件商標から上記シルバーアクセサリーを連想、想起する場合も少なからずあるものというべきである。
(5)以上を総合勘案すると、被請求人は、ガボール製品及び引用標章に係るデザイン等がガボール・ナギー及び請求人に帰属するものであることを熟知した上で、引用標章が我が国において商標登録されていないことを奇貨として、上記1のとおり引用標章の一部を平面図とした本件商標を、請求人に無断で剽窃的に登録出願し登録を受けたものというべきである。
そして、被請求人は、本件商標のほか、いずれも引用標章の一部を平面図としたものと認められる12件の商標(甲第5号証の1及び2)を登録出願し登録を受けるや、これらの登録商標を根拠に、請求人のシルバージュエリー代理店及び販売店に対して商標権侵害の警告書を発し(甲第7号証)、さらには、被請求人の商標権を侵害している非公認業者として請求人の製品の販売店14社をリストアップしている(甲第8号証の1)。
かかる被請求人の行為は、他人(請求人)の製品のデザインを当該他人に無断で商標として剽窃的に登録出願し、市場に無用の混乱を生じさせ、公正な商取引の秩序を乱し、ひいては国際信義に反するものといわなければならない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号の規定に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項第1号の規定に基づきその登録を無効にすべきものである。

第5 無効理由の通知に対する請求人の意見
請求人は、無効理由の通知に対して意見書を提出していない。

第6 無効理由の通知に対する被請求人の意見
1 無効理由通知書「理由」における事実認定の誤り
(1)平成20年11月12日付け無効理由の通知において、米国における一連の訴訟の経緯からすれば、CDM社又は被請求人が、ガボラトリーインターナショナル社から、ガボール製品にかかる商標権、販売権等を取得しているとは認められないとし、その論拠として、以下の点を挙げる。
ア 請求人がガボラトリーインターナショナル社に対し平成15(2003)年7月29日に提起した米国訴訟(以下「米国訴訟1」という。)において、両者間で成立した和解契約(甲第10号証の1、以下「本件和解契約」という。)の内容からすれば、ガボラトリーインターナショナル社がガボール・ナギーから、ガボール製品関連の商標権、販売権等を譲り受けていないものと推認される。
イ 被請求人が請求人、マリア・ナギ一等に対し平成19(2007)年6月15日に提起した訴訟(以下「米国訴訟2」という。)の判決(甲第12号証)において、被請求人がガボラトリーインターナショナル社から標章にかかる権利の譲渡を受けたとは認められないと認定されており、また、同訴訟において、ガボール・ナギーとガボラトリーインターナショナル社との間の事業譲渡契約(乙第2号証、以下「第1契約」という。)及びガボラトリーインターナショナル社とCDM社との間の事業譲渡契約(乙第9号証、以下「第2契約」という。)が米国訴訟において証拠提出されていないことが不自然である。
(2)しかし、かかる判断は、米国訴訟1及び2の理解が不十分であるため、結果として、事実認定を誤ったものであり、CDM社又は被請求人は、ガボール・ナギーから事業を承継したガボラトリーインターナショナル社より、有効にガボールブランドにかかる事業を譲り受けたものである。
CDM社が同事業を譲り受けた経緯については平成20年9月12日付答弁書(以下「答弁書」という。)に記載したとおりであるのでこれを繰り返すことはせず、以下、上記米国訴訟に関する無効理由の通知の判断に対する反論を行う。

2 本件和解契約について
(1)はじめに
ガボール・ナギーからガボラトリーインターナショナル社に対するガボール事業に係る譲渡契約の存在は、乙第2号証において直接に立証されている。当該譲渡契約は、本件において極めて重要な書証である以上、これを否定するには、十分な根拠が必要であることは当然である。
この点、無効理由の通知は、本件和解契約書の内容からすれば、「ガボラトリーインターナショナル社はガボール・ナギーから上記諸権利を譲り受けていないものと推認される」と判断する(無効理由通知書2(3))。
しかし、請求人がガボラトリーインターナショナル社を提訴したのは2003年7月29日、本件和解契約が締結されたのは2004年8月であって、ガボール・ナギーがガボラトリーインターナショナル社に対し、ガボール事業を譲渡した1998年12月(乙第2号証)よりはるかに後である。しかも、その内容は、後記(3)にて詳述するとおり、請求人がガボラトリーインターナショナル社に対し、7500ドルを支払うというものである。
したがって、このように、本件和解契約締結より5年以上前にガボール事業を譲り受けたガボラトリーインターナショナル社が請求人との間で締結した本件和解契約の内容が、譲渡後の事情を無視して、既に行われたガボール・ナギーのガボラトリーインターナショナル社に対するガボール事業の譲渡そのものを否定することとなるという結論は、論理の飛躍というほかなく、根拠が不明である。
(2)本件和解契約締結の理由
ア ガボラトリーインターナショナル社が本件和解契約を締結したのは、以下の理由によるものであり、むしろガボール・ナギーからガボラトリーインターナショナル社に対するガボール事業の譲渡を裏付けるものである。
イ 米国訴訟1が提起された平成15年7月の1年ほど前より、ガボラトリーインターナショナル社代表者であるマリオン・イエハンスが、ザザから生命の危険を感じるほどの悪質な脅迫を受けていたことは、答弁書に記載のとおりである。
しかも、既に答弁書において主張しているとおり、ガボラトリーインターナショナル社は、米国訴訟1が提起される直前に、CDM社との間で、乙第6号証を締結したのを皮切りに、平成15年9月には、ガボールブランドに関する事業を全てCDM社に譲渡したため(乙第7号証ないし乙第9号証)、本件和解契約締結当時、ガボールブランドに関して一切の権利を有しておらず、自らはガボール事業を行っていなかった。そのため、ガボラトリーインターナショナル社は、本件和解契約締結当時、もはや、請求人からの提訴に対し全力で争い保全すべき権利そのものを有しておらず、米国訴訟1に対応する実質的理由を失っていたのである。
ウ 請求人からの提訴後、マリオン・イエハンスは、ザザによる脅迫の執拗さにいよいよ生命の危険を身近に感じ、加えて訴訟追行に伴う費用の負担が増加したため、訴訟追行に対する熱意を減少させていった。しかも、すでにCDM社に対して事業を譲渡していたガボラトリーインターナショナル社にとって、本件和解契約を締結することに実質的な不利益はなく、むしろ、本件和解契約は、請求人がガボラトリーインターナショナル社に対して7500ドルを支払うというガボラトリーインターナショナル社に有利とも言える内容であった(甲第17号証第2ページ、同訳文第3ページ)。
だからこそ、ガボラトリーインターナショナル社は本件和解契約を締結したのであり、本件和解契約を締結した事実をもって、ガボラトリーインターナショナル社がガボール・ナギーからガボールブランドにかかる事業及びそれに伴う諸権利を譲り受けていなかったことの根拠とすることはできない。
(3)本件和解契約の内容
ア また、本件和解契約の内容を見れば、むしろ、請求人自身、ガボラトリーインターナショナル社がガボールブランドに関する権利を有していたと認めていたことが見て取れる。
イ すなわち、本件和解契約において、請求人は、ガボラトリーインターナショナル社らに対し、7500ドルを支払うこととしている(甲第17号証第2ページ、同訳文第3ページ)。
この点、米国訴訟1は、無効理由通知書が認めるところの無権利者たるガボラトリーインターナショナル社による商標権侵害等を理由として提起された訴訟であるが、事実ガボラトリーインターナショナル社がガボールブランドに関して何らの権利も有していたことがないのであれば、和解に当たって、ガボラトリーインターナショナル社が請求人に何らかの解決金を支払うことこそあれ、ガボラトリーインターナショナル社が請求人から金員の支払を受けることなどありえない。本件和解契約が、完全な無権利者であるガボラトリーインターナショナル社が剽窃的に米国における各商標権を登録したのを、真の権利者である請求人が取り返すという前提事実の下でなされたものであるというならば、あえて請求人がガボラトリーインターナショナル社に対して対価を支払う理由など一切無い。
にもかかわらず、本件和解契約において、ガボラトリーインターナショナル社が対価を得ていたことは、本件和解契約締結当時、ガボラトリーインターナショナル社がガボールブランドに関する権利を有していたことを、請求人自身が認めていたことの重大な裏づけといえる。
(4)以上からすれば、本件和解契約締結の事実が、ガボラトリーインターナショナル社がガボール・ナギーからガボールブランドにかかる事業を譲り受けていなかったことの根拠とならないことは明らかであり、むしろ、本件和解契約は、その内容からすると、現にガボラトリーインターナショナル社が当該事業を譲り受けていたことの根拠とすらなるものである。
(5)なお、請求人が提起した本件和解契約の履行等を求める訴訟(甲第11号証)については、平成20(2008)年6月10日、ガボラトリーインターナショナル社及びマリオン・イエハンスに対して欠席判決が出されたものの(乙第24号証)、これに対し、マリオン・イエハンス及びガボラトリーインターナショナル社は、アメリカ合衆国カリフォルニア州中央地区裁判所に対し、当該欠席判決の取消しを求める申立てを行った(乙第25号証)。というのも、当該欠席判決により、マリオン・イエハンスらは、本件和解契約の履行だけでなく、損害を賠償する必要が生じた(乙第24号証第4及び28ページ、同訳文第4及び36ページ)ことから、取消をしなければ、マリオン・イエハンス自身大きな損害を負うこととなったためである。
当該申立ての結果、ガボラトリーインターナショナル社の申立ては認められなかったが、マリオン・イエハンスの申立てについては、同人に対して適切な送達がなされていなかったとして、これが認められ、マリオン・イエハンスに対する欠席判決は取り消された(乙第26号証)。
そして、欠席判決が取り消されたことにより、請求人の請求の当否を判断すべく改めて実体審理が開始される予定であったが、請求人は、欠席判決取消後、実体審理に入り事案が解明されることを恐れたのか、平成20(2008)年11月13日、マリオン・イエハンスに対する全ての請求を取り下げた(乙第27号証)。
また、ガボラトリーインターナショナル社は後記3で述べるとおり、2005年6月に解散しているのである(乙第28号証)から、上記本件和解契約の履行等を求める訴訟(甲第11号証)に対応することはできなかったものであり、また、欠席判決を執行することも事実上不可能である。
したがって、無効理由の通知の指摘する当該米国訴訟も、ガボール・ナギーからガボラトリーインターナショナル社に対するガボール事業の譲渡の事実を何ら左右するものではない。

3 米国訴訟2について
(1)無効理由の通知は、米国訴訟2の判決において、「CDM社こと被請求人はガボラトリー・インターナショナル・インクから標章にかかる権利の譲渡を受けたものと認められないと認定されている」ことも、CDM社ないし被請求人がガボールブランドに関する権利を有しないことの根拠の一つとしている。
しかし、上記認定は、証拠として第1契約及び第2契約が提出されていないことに基づくもので、そもそも本件とは事実認定の基礎となるべき資料が異なるため、本件における事実認定が米国訴訟2における判断に拘束される理由はない。そして、本審判手続において提出された証拠を検討すれば、答弁書第6.2(1)ないし(3)において詳細に主張したとおり、ガボールブランドにかかる事業が、ガボール・ナギーからガボラトリーインターナショナル社、さらに同社からCDM社に移転したことは明らかである。
(2)また、無効理由の通知は、第1契約及び第2契約が米国訴訟2において証拠提出されていないことの不自然性を指摘するが、これも、答弁書第6.2(5)エに記載した事情により証拠提出しなかったまでであり、何ら不自然な点は見当たらない。
同米国訴訟2において証拠として提出されたガボラトリーインターナショナル社・CDM社間の2003年8月24日付契約書(乙第7号証)によれば、ガボラトリーインターナショナル社に解散、通常業務の停止等の事象が生じた場合、ガボラトリーインターナショナル社はCDM社に対して米国及び日本の商標権を与えることとされている(乙第7号証「権利の譲渡(TRANSFER OF RIGHTS」の項)ところ、ガボラトリーインターナショナル社は、米国訴訟2の提起された平成19年6月より以前の平成17(2005)年6月1日に、「廃止(REVOKE)」となった(乙第28号証)。この「廃止」が法律上どのような状態であるか明らかではないが、少なくとも、この時点において、ガボラトリーインターナショナル社が、乙第7号証における商標権移転の条件である、通常業務の停止状態にあったことは明らかである。
そして、乙第7号証の上記条項の規定に従えば、米国における商標権の所有権はCDM社に移転したこととなるため、被請求人の米国の弁護士は、立証上何ら問題ないものと判断し、乙第8号証及び乙第9号証については証拠として提出しなかったと思われる。
(3)したがって、米国訴訟2の結果及び証拠の提出経過も、CDM社のガボールブランドにかかる事業の譲受を否定する根拠とはならない。

4 結論
(1)以上より、上記1(1)ア及びイが、CDM社によるガボールブランドにかかる事業及びそれに伴う権利の承継を否定する根拠とならず、CDM社が同事業及びそれに伴う権利を有効に譲り受けたことは明らかである。
(2)したがって、被請求人が、「ガボール製品及び引用標章に係るデザイン等がガボール・ナギー及び請求人ガボラトリー・インクに帰属するものであることを熟知した上で、引用標章がわが国において商標登録されていないことを寄貨として、」 「本件商標を、請求人に無断で剽窃的に登録出願し登録を受けた」(無効理由通知書2(5))ということはできない。
そして、有効に上記事業及び権利を承継したCDM社の代表者である被請求人が、自ら登録を受けた本件商標を根拠とし、請求人の代理店らに警告書を発するなどの措置をとることは、商標の権利者として当然の行為であり、何ら不当な点はない。
以上より、上記の被請求人の行為が、「市場に無用の混乱を生じさせる」ものでもなければ、「公正な商取引の秩序を乱す」行為であるともいえず、国際信義に反するものでないことは明らかであって、本件商標が、商標法第第4条第1項第7号に反して登録されたものであるとはいえない。

第7 当審の判断
(1)本件商標について
本件商標は、別掲(1)のとおりの構成よりなるものであるところ、該図形は、後記(2)認定のとおり、ガボラトリー・インクの創設者であったガボール・ナギーのデザインに係るシルバー製アクセサリーの一つである「スカルプテッドオバール」と称される形状を平面的に表したものと認められる(この点について、被請求人は争っていない。)。

(2)ガボール・ナギーのデザインに係るシルバー製アクセサリーについて
ア 甲第2号証及び甲第3号証(これらの刊行物の発行日が証拠方法に記載されているとおりであることについては、被請求人は争っていない。)並びに乙第1号証及び乙第2号証によれば、以下の事実が認められる。
(ア)ガボラトリー・インクは、1995年(平成7年)6月1日に、その取扱いに係るシルバー製アクセサリーを掲載したカタログを米国において発行した。そして、該カタログには、「スカルプテッドオバール」と称される形状を特徴とするアクセサリーが掲載されていた(甲第2号証)。
(イ)ガボール・ナギーは、同人が創設し、かつ、社長を務めるガボラトリー・インクにおいて、アクセサリーのデザインに携わっていたものであり、1999年(平成11年)1月16日に死亡した(乙第1号証、乙第2号証)。
(ウ)ガボール・ナギーのデザインに係るシルバー製アクセサリーについての日本における広告等
(a)1999年1月1日発行「シルバーアクセサリーバイブル」には、「GABOR/ガボール」、「高貴な無骨シルバー」の見出しのもと、「ガボールのシルバーは、ファクトリーである“ガボラトリーU.S.A”で信頼のおける3人のアソシエイトとガボールの4人で作られている。ガボールのシルバーを付けていると、それだけでアメリカでは一目も二目も置かれる。・・」等の記載と共に、「スカルプテッドオバール」のウオレットチェーンやブレスレットの写真が掲載された。その他、髑髏、ブルドック、蛇などをモチーフとしたウオレットチェーンやブレスレットのシルバー製アクセサリーが掲載された(甲第3号証の1)。
(b)2001年12月10日発行「シルバーアクセ」には、「GABOR/ガボール」の見出しのもと、「スカルプテッドオバール」のリング、ウオレットチェーン等の写真が掲載された。また、その他、髑髏(されこうべ)、馬の頭部等をモチーフとしたシルバー製アクセサリーが掲載された(甲第3号証の2)。
(c)2002年1月20日発行「GETON!SILVER」には、「スカルプテッドオバール」のリング、キーチェーン、ブレスレットや、その他、髑髏、蛇、短剣等をモチーフにした多数のシルバー製アクセサリーが「ガボール」の表示と共に掲載された(甲第3号証の3)。
(d)2002年5月28日発行「シルバーアクセ」には、「History of Gabor」の見出しのもと、「1988年、ベルギー・ブタペスト出身のガボール・ナギー氏が、亡命先のアメリカ、ロサンゼルスに小さな工房『ガボラトリー(ガボールのアトリエ)』を開きブランドを設立。・・クオリティ、デザイン性を兼ね添えた彼の重厚かつアーティスティックな作品は、エアロスミスのスティーブン・タイラーにはじまりビリー・アイドル、ビリー・ギボンズなど多くのハリウッドスターやセレブに高く評価され、徐々にスターダムブランドへのし上がっていく。・・ガボール氏没後、主を失ってしまったブランド『ガボール』は、一時生産をストップすることになる。だが、ガボール氏の趣味趣向、持ち味、作品に対するプライドや情熱の一番の理解者であり、妻であるマリア・ナギー氏が、ガボラトリーのオーナーとして、ブランドを再稼働させた。」との記載があり、「スカルプテッドオバール」のウオレットチェーン、リング、ブレスレット等のシルバー製アクセサリーが掲載され、下段には、「『ガボール』のアイテム取扱いSHOPリスト」として、6店舗紹介された(甲第3号証の4)。
(e)2003年1月1日発行「GETON!SILVER3」には、「Gabor/ガボール」の表示及び「巨人が残した偉大な魂は今も不滅の輝きを放つ」の見出しのもと、「1999年に世を去った伝説的なシルバースミス、ガボール・ナギー。・・彼の死後は妻のマリアがその志を継承、不滅の輝きは色あせることがない。」等の文字と共に、「Sculpted oval」のリング、ブレスレット、ペンダントや、その他、髑髏、蛇、短剣等をモチーフにした多数のシルバー製アクセサリーが掲載された(甲第3号証の5)。

(3)被請求人らによるガボール・ナギーのデザインに係るシルバー製アクセサリーの事業について
ア 1998年12月10日に、ガボラトリー・インクのガボール・ナギーとガボラトリーインターナショナル社のマリオン・イエハンスは、ガボール・ナギーのシルバー製アクセサリーの事業に関する全ての権利をガボラトリーインターナショナル社に譲渡する契約を締結した(乙第2号証)。
イ 2003年7月31日に、被請求人が代表者を務めるCDM社とガボラトリーインターナショナル社のマリオン・イエハンスは、CDM社がガボラトリーインターナショナル社の製造、販売する「GABOR」製品についての日本、アジア向け商品の製造、販売の独占ライセンス(ガボラトリーインターナショナル社が現在所有する登録商標及び申請中の商標の日本国土独占使用権を含む。)を契約日から5年間受けることについて、契約を締結した(乙第6号証、以下「7月契約」という。)。
その後、両者は、2003年8月24日に、上記契約を10年間延長する契約を締結した(乙第7号証、以下「8月契約」という。)。そして、8月契約の「期間及び条件」の項目には、「CDMとGIUSA(審決注:ガボラトリーインターナショナル社)にて2003年7月31日付けにて交わした契約書に記載されるGIUSAの米国、日本での商標権をCDMへ独占的に其の使用権を与える契約条項を基に、今回の契約にてGIUSAの米国、日本での登録商標、申請中商標、他GIUSAが権利を有する商標権を更に10年間CDMへ専用使用権を延長する。」との和訳の記載があり、また、「権利の譲渡」の項目には、「GIUSAが倒産、管轄機関から営業停止命令、特定、登記上解散又は会社の通常の業務を停止した場合において、GIUSAは、GUISA(「GIUSA」の誤記と認められる。)が所有する全ての米国及び日本商標権(登録商標、申請中商標、その他権利を有する商標)の所有権をCDMに与えるものとする。」との和訳の記載がある。
ウ 2003年9月3日及び同5日に、CDM社とガボラトリーインターナショナル社は、ガボラトリーインターナショナル社がCDM社に対し、米国登録商標ほか、ガボラトリーインターナショナル社の有する著作権、製造権、販売権、顧客、事業の暖簾を譲渡する契約を締結した(乙第8号証、乙第9号証)。
エ 被請求人が代表者を務めるガボール・インクUSA社は、そのホームページ「Gabor Inc USA Offical Site」に、「Sculpted oval」ほか、ガボール・ナギーのデザインに係るシルバー製アクセサリーと酷似するアクセサリーを掲載した(掲載の日付は不明である。甲第4号証)。また、同ガボール・インクUSA社は、平成18年(2006年)10月11日に、日本国における本件商標を含む13件の登録商標の商標権に基づき、日本における請求人製品を取り扱う店舗に対し、上記登録商標の商標権を侵害するものであるとした警告書を送付するなどした(甲第7号証、甲第8号証)。

(4)米国登録商標について
ア ガボラトリーインターナショナル社が米国特許商標庁に出願し、登録を受けた商標は以下のとおりである。
(ア)「GABOR」の文字よりなり、国際分類第14類に属する商品を指定商品とする登録第2695716号商標(米国登録商標1)であり、2001年6月13日に出願(Serial Number/78/068868)、2003年3月11日に登録された(乙第3号証)。
(イ)別掲(2)のとおりの構成よりなり、国際分類第14類に属する商品を指定商品とする登録第3039819号商標(米国登録商標2)であり、2001年5月29日に出願(Serial Number/78/066129)、2006年1月10日に登録された(乙第4号証)。
(ウ)別掲(3)のとおりの構成よりなり、国際分類第14類に属する商品を指定商品とする登録第3039823号商標(米国登録商標3)であり、2001年7月30日に出願(Serial Number/78/076328)、2006年1月10日に登録された(乙第5号証)。
イ 前記(3)ウのCDM社とガボラトリーインターナショナル社との契約に基づき、米国特許商標庁における米国登録商標の譲渡記録には、「譲渡人:ガボラトリーインターナショナル社」、「譲受人:CDM社」、「書類の日付(DOC DATE):08/24/2003」との記載がある(乙第10号証ないし乙第12号証)。
ウ 米国登録商標に関し、請求人を本訴原告(反訴被告)とし、スティーブ・ガーラック、ガボラトリーインターナショナル社らを本訴被告(反訴原告)とする訴訟(2003年7月29日、米国カリフォルニア州連邦地方裁判所に提訴)における「極秘和解契約書および免責証」(日付については、「2004年8月_付け」とあり、日にちは記載されていない。)によれば、その和解契約の要点は以下のとおりである(甲第10号証の1の訳より)。
(a)原告(審決注:本件審判の請求人。以下同じ。)は、被告ら(審決注:ガボラトリーインターナショナル社ら。以下同じ。)に対し、7,500ドルを支払う。
(b)原告は本訴を取り下げ、被告は反訴を取り下げる。
(c)被告らは、原告に米国登録商標1を譲渡する。
(d)被告らは、米国登録商標2及び3の出願を放棄する。
(e)原告は、(d)の放棄に基づき、米国特許商標庁における審判手続き終了の措置をとる。
(f)被告らは、原告が出願している「GABORATORY」及び「GABORATORY(紋章の図形を含む。)」の各商標並びに「GABOR」及び「GABORATORY」の各商標の使用に対し、異議を申し立てない。
(g)被告らは、「Gabor」若しくは「Gaboratory」の標章について使用しないことに同意する。
(h)被告らは、ガボール・ナギーのデザインに係るシルバー製アクセサリーと同一又は酷似する宝飾品の製造又はカタログ販売をしないことに同意する。
(i)ガボール・ナギーのデザインに係るシルバー製アクセサリーに使用されていた金型等を引き渡す。
エ 2007年6月15日に、被請求人は、マリア・ナギーらを被告として、米国登録商標に基づく著作権及び商標権侵害のよる損害賠償請求等を米国カリフォルニア州中部地区連邦地方裁判所に提起した。この訴えに対し、被告は、2007年8月30日に、訴え却下の申立てをした(甲第12号証)。
上記訴訟における2007年11月6日付け「被告による訴え却下の申し立てを認める命令」の要点を抜粋すると、以下のとおりである(甲第12号証の訳より)。

【1.事実上及び手続き上の背景(甲第12号証の訳の第1頁)
原告はCDM エクスチェンジ・カンパニー(以下「CDM」)の名称で衣料品並びにアクセサリー類の製造販売を行っている。2001年3月に原告は「ガボール」及び「ガボラトリー」の名称で銀製の宝飾品類及びアクセサリー類を製造していた事業の共同経営者、マリオン・ジヘンズとスティーブン・ガーラック両人に遭遇した。原告は、原告の顧客に再販売する目的で宝飾品製造の契約をガーラックと結んだ。
2001年5月に、ガーラックとジヘンズは銀製の商品を製造販売するためにネヴァダ州法人、ガボラトリー・インターナショナル・インク(以下「GIUSA」、審決注:ガボラトリーインターナショナル社)を設立した。同じく2001年にGIUSAは様式化した標章「ガボラトリー・インターナショナル(審決註:Gaboratory International)」、「ガボラトリー(審決註:Gaboratory)」、「ガボール(審決註:Gabor)」の3件について合衆国商標登録出願を行った。これらの商標は合衆国特許商標庁(以下「USPTO」)において2003年と2006年に登録された(審決注:米国登録商標)。GIUSAがガボラトリー及びガボラトリー・インターナショナル標章の登録出願を行った後に申立人/被告ガボラトリー・インクは同一の標章を登録しようとした。原告は、これらの登録出願がGIUSA標章と混乱する可能性が多分にあるという理由で受理されなかったと主張している。ガボラトリー・インクはこの決定を不服として上訴したが、この上訴は最終的に商標審判委員会によって再訴不可の形で却下された。(中略)
(甲第12号証の訳の第3頁)原告のGIUSAとの事業上の取り決めは、原告が同社とガボラトリー銀製品並びに宝飾品の販売を規定する新たな契約上の合意に達した2003年まで継続した。
2003年7月31日にCDMとGIUSAは、GIUSAの知的財産のある特定の部分に係る権利及びGIUSAから入手する商品を製造販売する権利を原告に許諾する契約書を作成、署名した(7月契約)。特に当該契約は、CDMに対し5年間「日本並びにアジアにおいてGIUSA商品を独占的に製造、販売、頒布する全面的な権利とライセンスを許諾している。」
2003年8月24日にCDMとGIUSAは2番目の契約を締結した(8月契約)。この8月契約はアジアにおいて上記標章を使用する原告の権利をさらに10年間延長した。当該契約にはまた「権利の移転」という表題の規定が含まれており、この規定に従って、GIUSAはCDMに対し、GIUSAが廃業した場合、GIUSAの現在並びに将来における商標及び著作権の所有権すべてを譲渡するというものである。
上記契約書は、CDMを代表して原告が、またGIUSAを代表してマリオン・ジヘンズがそれぞれ署名している。
この契約が意図としているGIUSAの商標登録の原告に対する譲渡は、USPTOに登録された。原告は、米合衆国及び海外において米国登録商標を付して銀製品の製造販売を継続している。
(中略)
2.商標の所有権を要件とする請求(甲第12号証の訳の第25頁)
(中略)a.原告とGIUSA間の本件に関連する契約(甲第12号証の訳の第27頁)
b.7月契約は原告に標章を譲渡しているか。(甲第12号証の訳の第30頁)
(甲第12号証の訳の第32頁)7月契約は原告に「日本とアジアにおけるGIUSA商品の独占的な生産、販売、および頒布のための完全な権利とライセンスを許諾している。」権利の許諾には「現在GIUSAが所有している、または今後取得する、あるいは出願中の米国と日本の商標の独占的な使用」が含まれていた。しかしながら、重要なことは、当該契約はGIUSAが「日本と米国におけるGIUSA商標の不正使用、また日本とアジアにおいて当該商標を表示して製造、販売および頒布に従事することに対して、当該商標を保護し、防衛する、あるいは第三者から提起されるいかなる請求に対してもこれを防御する」権利を留保するとも規定している。
当該契約はGIUSAが当該標章を保護し防衛する権利を考慮しているのみならず、GIUSAに対し権利を行使する義務を課していたように思われ、GIUSAが「商標の不正使用を強力に防衛し、訴追しない場合、CDMに修復不能の損害を与え、契約の重大な違反とみなされること」を承認する、とも規定している。(中略)
この規定が証明しているように、ライセンスは独占的ではあるけれども、GIUSAは、他の当事者が当該標章を使用することを防止する権限を与えられている。排除する権利は財産の所有者の権利である。(中略)
(甲第12号証の訳の第34頁)上記のとおりであるから、当該標章に関するライセンスはアジアにおいては独占的なものであるが、当該標章に係る財産権を完全に原告に許諾したものではない。従って、7月契約は原告に対する標章の譲渡と見なすことは出来ない。
c.8月契約は原告に標章を譲渡しているか(甲第12号証の訳の第34頁)
7月契約は標章に係る権利を原告に譲渡していないのであるから、問題は果たして8月契約はこのような譲渡をしているかどうかである。原告は当該契約の「権利の移転」規定によってGIUASのすべての商標権は、「GIUSAの解散も含め、いくつかの状況のうちいずれか1つの状況が発生した時点で」、原告に与えられたと主張する。原告は、GIUASは実際に解散したのであるから「先行条件が発生したことになり、原告は GIUSAの知的財産権の完全な所有権を取得した」と主張する。8月契約によって権利が譲渡されたという原告の確信はUSPTOに譲渡を登録したという事実から生まれている。当該登録には譲渡が8月契約の署名押印の日付、2003年8月24日に発生したとの記載がある。(中略)
(甲第12号証の訳の第35頁)被告らはこのことに、GIUSAは単にある特定の出来事が発生した場合原告に標章の所有権を許諾すると同意したに過ぎないという事実に特に着目し、異議を申し立てている。被告らは、当該規定を実際の譲渡そのものというよりは、単なる「譲渡の約束」という性質のものであると述べている。裁判所は、大体において、このような契約の規定については被告らの解釈に同意する。(中略)
(甲第12号証の訳の第36頁)本件における8月契約は、GIUASの知的財産権を原告に譲渡するという合意以上の何物でもなく、現時点での譲渡ではない。8月契約のいずれの箇所も「権利の移転」の規定には、GIUSAが解散した場合、自動発効あるいは譲渡が自動的に行われると示唆している箇所はない。(中略)
(甲第12号証の訳の第38頁)既に述べた理由により、裁判所は、8月契約が原告に対するGIUSA商標の譲渡には該当しないと結論する。故に被告らは、原告にUSPTOにおいて譲渡の登録を許した有効性の推定を覆すことに成功した。7月と8月の両契約は原告が現在のGIUSA標章の所有者であるという原告の主張を覆すものであり、従って、原告は、標章の所有権を要件としている法律の下では、当該商標について権利行使することは出来ない。
(中略)
3.原告はガボラトリーの著作権を所有しているか(甲第12号証の訳の第39頁)
(甲第12号証の訳の第40頁)(中略)原告は、「国会図書館に登録されているある特定の著作権」の法的所有者であると主張する。原告は、GIUSAと7月および8月に契約を締結したことによって著作権を取得したと主張する。被告らはこれに対し、原告は法的に有効な著作権の所有権の主張はしていないと主張する。裁判所は被告らに同意する。原告は、著作権の所有権の主張に、商標の所有権を主張したときと同一の事実を根拠にしている。7月と8月の契約が原告にGIUSA商標を譲渡していなかったという同一の理由で著作権も原告には一切譲渡されていない。その結果として原告は合衆国法律集第17編、第105条に基づき、著作権侵害の請求を申し立てることは出来ない。】

オ 請求人は、2007年7月19日に、ガボラトリーインターナショナル社に対し、前記ウの和解契約の履行及び米国登録商標の譲渡・放棄等を求める訴えを米国カリフォルニア州中部地区連邦地方裁判所に提起した(甲第11号証)。

(5)前記(2)ないし(4)に認定した事実によれば、以下のとおりである。
ア ガボール・ナギーのデザインに係るシルバー製アクセサリーは、1995年(平成7年)6月1日にそのカタログが米国において発行された。また、上記シルバー製アクセサリーは、我が国においては、1999年(平成11年)頃から雑誌に紹介され、その広告には、「巨人が残した偉大な魂は今も不滅の輝きを放つ」、「1999年に世を去った伝説的なシルバースミス、ガボール・ナギー。」等の文字が記載されており(甲第3号証の5)、ガボール・ナギーのデザインに係るシルバー製アクセサリーは、「スカルプテッドオバール」ほか、髑髏、蛇、短剣、ライオン、ブルドッグ等をモチーフとしたものであって、「アクセサリー」の言葉から想起される佳麗さというイメージにはほど遠く、無骨さを前面に打ち出した一種独特の雰囲気のあるものであって、これが若者を中心とした需要者の間に強く印象づけられ、ガボール・ナギーの死亡後も、上記需要者層に人気を博している所以といえる。そして、ガボール・ナギーのデザインに係るシルバー製アクセサリーは、その特異なデザインであるが故に、これに接する需要者が直ちにガボール・ナギーのデザインに係る商品であると認識する場合が多いとみるのが相当である。また、ガボール・ナギーの死後は、その妻であったマリア・ナギーがその事業を承継したものと推認され、「スカルプテッドオバール」をはじめとするガボール・ナギーのデザインに係るシルバー製アクセサリーは、「Gabor/ガボール」の表示と共に、請求人の業務に係る商品として、本件商標の登録出願前より、我が国の若者を中心とした需要者層の間に広く認識されていたものと認めることができる。
イ 1998年(平成10年)12月10日に、ガボラトリー・インクのガボール・ナギーとガボラトリーインターナショナル社のマリオン・イエハンスとの間で締結された、ガボール・ナギーのシルバー製アクセサリーの事業に関する全ての権利をガボラトリーインターナショナル社に譲渡する契約(乙第2号証)の真偽は明らかではないが(なお、甲第12号証によれば、ガボラトリーインターナショナル社の設立は2001年5月であるから、1998年12月10日付けの契約書にガボラトリーインターナショナル社の記載があることは疑問が残るところである。)、少なくとも被請求人がガボラトリーインターナショナル社より譲渡されたと主張する米国登録商標は、前記「極秘和解契約書および免責証」(2004年8月)において(和解契約が履行されたか否かは別の問題である。)、そのうちの米国登録商標1を請求人に譲渡すること、ガボラトリーインターナショナル社らは、米国登録商標2及び3の出願を放棄することが和解条項に定められていた(但し、米国登録商標2及び3の出願は放棄されることなく登録に至ったことが認められる。)のみならず、米国登録商標の譲渡記録(乙第10号証ないし乙第12号証)には、「DOC DATE(書類の日付):08/24/2003」との記載があり、この日付は、8月契約の署名の日付と一致することからすると、譲渡原因は、2003年(平成15年)8月24日の8月契約により発生したものとみることができ、8月契約は、前記「被告による訴え却下の申し立てを認める命令」(甲第12号証)のとおり、「原告(審決注:本件審判の請求人)に対するGIUSA商標(審決注:米国登録商標)の譲渡には該当しない」ものであるし、また、「7月と8月の契約が原告にGIUSA商標を譲渡していなかったという同一の理由で著作権も原告には一切譲渡されていない。」との決定がされたところであるから、被請求人は、米国登録商標の正当の権利者であると認めることができないし、ガボラトリーの著作権を所有していたものと認めることもできない。
さらに、前記「極秘和解契約書および免責証」(2004年8月)によれば、ガボラトリーインターナショナル社らは、「Gabor」若しくは「Gaboratory」の標章について使用しないこと及びガボール・ナギーのデザインに係るシルバー製アクセサリーと同一又は酷似する宝飾品の製造又はカタログ販売をしないことに同意し、かつ、ガボール・ナギーのデザインに係るシルバー製アクセサリーに使用されていた金型等を請求人に引き渡すことが和解条項に定められていたのである。
そうすると、仮に被請求人が、7月契約及び8月契約により、ガボラトリーインターナショナル社より、ガボール・ナギーのデザインに係るシルバー製アクセサリーを製造した金型により製造したガボラトリーインターナショナル社製のシルバー製アクセサリーについての、日本及びアジア地域における独占的な生産、販売及び頒布のための完全な権利とライセンスを得たとしても、また、その後、被請求人が、ガボラトリーインターナショナル社からその全ての商標権、著作権、製造権、販売権、顧客、事業の暖簾の譲渡を受けた(乙第8号証、乙第9号証)としても、これらの権利は、上記和解契約及び「被告による訴え却下の申し立てを認める命令」に基づけば、すべて無効なものといわざるを得ない。
したがって、米国における正当な商標権者であり、米国において正当なGABORブランド事業の継承者であるとの被請求人の主張、及び該主張を根拠にして、商品を日本に輸出するに際し、デザインを商標登録出願し、登録された商標権に基づき商標権侵害者に警告を発するのは正当な行為であるとの被請求人の主張は、根底から覆されるものといわざるを得ない。

(6)本件商標の商標法第4条第1項第7号該当性について
前記認定のとおり、ガボール・ナギーのデザインに係るシルバー製アクセサリーは、「Gabor/ガボール」の表示と共に、請求人の業務に係る商品として、本件商標の登録出願前より、我が国の若者を中心とした需要者層の間に広く認識されていたものであり、被請求人は、ガボラトリーインターナショナル社との間で、ガボラトリーインターナショナル社製のシルバー製アクセサリーについての、日本及びアジア地域における独占的な生産、販売及び頒布等のライセンス契約の締結をしたことからすれば、我が国におけるガボール・ナギーのデザインに係るシルバー製アクセサリーの周知性について熟知していたと推認することができ、また、米国登録商標に関する請求人とガボラトリーインターナショナル社らとの訴訟、和解の成立等の経緯についても十分認識していたと推認することができる。そして、被請求人は、上記事情を知ったうえで、ガボール・ナギーのデザインに係るシルバー製アクセサリーの形状の一つである「スカルプテッドオバール」を平面的に表した本件商標を登録出願し、登録を受けたものであり、加えて、本件商標を含めた13件の登録商標を根拠に、請求人製品の日本における代理店及び販売店に対し、商標権侵害の警告を発していたものであるから、被請求人のこのような行為は、他人(請求人)の製品のデザインを当該他人に無断で商標として剽窃的に登録出願し、当該他人の国内参入を阻止し、不正の利益を得ようとするものであり、市場に無用の混乱を生じさせるものである。
したがって、このような本件商標の登録出願の経緯には著しく社会的妥当性を欠くものがあり、その商標登録を認めることは、商取引の秩序を乱し、ひいては国際信義に反するものであって、公の秩序を害するものであることは明らかである。

(7)被請求人の答弁及び無効理由の通知に対する意見について
ア 被請求人は、「被請求人が代表者となっているCDM社が、ガボール・ナギーの事業を承継した。」旨主張し、その証拠として、1998年12月10日付け契約書の写し(乙第2号証)、2003年7月31日付け契約書の写し(乙第6号証)、同年8月24日付け契約書の写し(乙第7号証)、同年9月3日付け契約書の写し(乙第8号証)、同年9月5日付け契約書の写し(乙第9号証)、遺言書(乙第15号証)及び領収書(乙第16号証)の写し(以下、まとめて「契約書等の写し」という。)を提出している。
しかしながら、契約書等の写しについて原本の提示はなく、写しに対応する原本が実際に作成されたのか、さらに、手書きの部分が真実「ガボール・ナギー」のものであるかを認めるに足る証拠の提出もない。
被請求人は、契約書等の原本を提出できない理由として、「ガボラトリーインターナショナル社」を設立したマリオンが、請求人の株主であるザザに権利関係書類の原本を引き渡したためである旨述べている。
しかしながら、それを証する証拠の提出はない。
以上のとおりであるから、契約書等の写しを証拠として採用することはできない。
したがって、「CDM社」が「ガボール・ナギー」の事業を承継したと認めることはできない。

イ 被請求人は、「和解契約(甲第10号証、以下「当該和解契約」という。)が締結されたのは、(a)マリオン・イエハンスが、ザザから、生命の危険を感じるほどの悪質な脅迫を受けていたこと(b)当該和解契約締結当時、ガボラトリーインターナショナル社は、ガーボールブランドに関する事業の全てをCDM社に譲渡していたため、同社は保全すべき権利そのものを有しておらず、訴訟で争う実質的理由を失っていたこと(c)契約内容が、請求人がガボラトリーインターナショナル社に対して7500ドル支払うという、同社にとって有利とも言える内容であったことによるものである。したがって、当該和解契約が締結された事実をもって、ガボラトリーインターナショナル社が、ガボール・ナギーからガボールブランドにかかる事業及びそれに伴う諸権利を譲り受けていなかったことの根拠とすることはできない。」旨主張している。
しかしながら、(a)についていえば、被請求人は、脅迫を受けていたとの主張するのみで、その事実を証する書面等を何ら提出されていない。
また、(b)についていえば、仮に、ガボラトリーインターナショナル社が、当該和解契約締結時において、ガーボールブランドに関する事業についてなんら権利を持っていなかったとしても、それによって、同社が、当該和解契約によって生ずる債務(米国商標1の請求人側への譲渡、米国商標2及び3の出願の放棄等)について、その履行を免れることができないことは当然である。
そして、ガボラトリーインターナショナル社は、当該債務を履行できなければ、請求人から、債務不履行による損害賠償等を請求されることについて十分に予測し得たはずである。
そうとすれば、被請求人の「訴訟で争う実質的理由を失っていた」との主張は、理解し難い。
さらに、(c)についていえば、当該和解契約では、「請求人が、ガボラトリーインターナショナル社に対して7500ドル支払う」という内容のみではなく、米国商標1の商標権の請求人側へ譲渡、米国商標2及び3の出願放棄等、ガボラトリーインターナショナル社が負うべき負担についても定められている。
そうとすれば、当該和解契約の内容が、ガボラトリーインターナショナル社にとって有利であったということは、一概にいうことはできない。
以上のとおり、当該和解契約締結の経緯に関する、(a)ないし(c)の主張は、いずれも説得力があるとはいえないものである。
さらに、当該和解契約締結の際に、ガボラトリーインターナショナル社が、自分にとって有利な証拠となる契約書等の写しの存在を主張していないのは不自然というほかない。
以上の点を、総合的に考慮すれば、「ガボラトリーインターナショナル社」は、「ガボール・ナギー」から、ガボールブランドにかかる事業及びそれに伴う諸権利を譲り受けていなかったために、当該和解契約締結時に「契約書等の写し」の存在を主張し得なかったと考えるのが自然である。
したがって、この点についての被請求人の主張は採用しない。

ウ 被請求人は、「当該和解契約において、請求人は、ガボラトリーインターナショナル社らに対し、7500ドルを支払うこととしている。当該和解契約が、完全な無権利者であるガボラトリーインターナショナル社が剽窃的に米国における各商標権を登録したのを、真の権利者である請求人が取り返すという前提事実の下でなされたものであるというならば、あえて、請求人がガボラトリーインターナショナル社に対して対価を支払う理由など一切無い。にもかかわらず、当該和解契約において、ガボラトリーインターナショナル社が対価を得ていたことは、当該和解契約締結当時、ガボラトリーインターナショナル社がガボールブランドに関する権利を有していたことを、請求人自身が認めていたことの重大な裏づけといえる。」旨主張している。
しかしながら、当該和解契約で請求人が「ガボラトリーインターナショナル社」に7500ドル支払うとされたことと「ガボラトリーインターナショナル社」がガボールブランドに関する権利を有していたこととを結びつける理由は、当該和解契約書の記載において見いだすことはできない。
そうとすれば、当該和解契約において、請求人から、ガボラトリーインターナショナル社に7500ドルを支払うとされたからといって、当該和解契約締結当時、「ガボラトリーインターナショナル社」が、ガボールブランドに関する権利を有していたということはできない。
したがって、この点についての被請求人の主張は採用しない。

エ 被請求人は、「当該和解契約の履行を求める米国での訴訟(甲第11号証)について、マリオン・イエハンスに対する訴訟は、請求人によって取り下げられている(乙第27号証)、また、ガボラトリーインターナショナル社は、解散している(乙第28号証)から、当該訴訟をもって、ガボラトリーインターナショナル社がガボールブランドに関する権利を有していなかったことの根拠とすることはできない。」旨主張している。
しかしながら、最終的にはマリオン・イエハンスに対する訴訟が取り下げられたとはいえ、当該訴訟の審理中に、マリオン・イエハンスが、自分にとって有利な証拠となる契約書等の存在を主張していないのは不自然であるというほかない。
そうとすれば、当該訴訟の経緯は、「ガボラトリーインターナショナル社」が、ガボールブランドに関する権利を有していたいなかったと推論する根拠となり得るものである。
したがって、この点についての被請求人の主張は採用しない。

オ 被請求人は、「被請求人が、米国での商標権侵害訴訟等(甲第12号証)において、乙第8号証及び乙第9号証を提出しなかったのは、被請求人の米国の弁護士が、『乙第7号証の「権利の譲渡」の条項に従えば、米国における商標権の所有権はガボラトリーインターナショナル社からCDM社に権利が移転したこととなるため、立証上何ら問題がない』と判断したためと思われる。」旨主張している。
しかしながら、被請求人が、当該弁護士の判断について述べている内容は、被請求人の憶測にすぎないから、この点についての被請求人の主張は採用しない。

カ その他の被請求人の主張及び証拠をもってしても、無効理由の通知の認定を覆すに足りない。

(8)まとめ
本件商標は、商標法第4条第1項第7号の規定に違反して登録されたものであるから、他の無効理由について論及するまでもなく、同法第46条第1項第1号の規定に基づきその登録を無効にすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲(1)本件商標


別掲(2)米国登録商標2



別掲(3)米国登録商標3

別掲(4)スカルプテッドオバールのデザイン





審理終結日 2009-01-22 
結審通知日 2009-01-28 
審決日 2009-02-10 
出願番号 商願2005-37766(T2005-37766) 
審決分類 T 1 11・ 22- Z (Y14)
最終処分 成立 
前審関与審査官 白倉 理 
特許庁審判長 渡邉 健司
特許庁審判官 井出 英一郎
鈴木 修
登録日 2005-11-04 
登録番号 商標登録第4905832号(T4905832) 
代理人 山嵜 進 
代理人 中川 康生 
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社   サービスに関しての問い合わせ