• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部無効 商4条1項7号 公序、良俗 無効としない Y01
管理番号 1200401 
審判番号 無効2008-890129 
総通号数 116 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2009-08-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 2008-12-03 
確定日 2009-06-22 
事件の表示 上記当事者間の登録第4938885号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4938885号商標(以下「本件商標」という。)は、「ジェルトラック」の文字からなり、平成17年4月28日に登録出願、第1類「アンカーボルト用固定剤,その他の化学品,植物成長調整剤類,肥料,陶磁器用釉薬,高級脂肪酸,非鉄金属,非金属鉱物,写真材料,人工甘味料,工業用粉類,原料プラスチック,パルプ」を指定商品として、平成18年3月24日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張
請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求めると申し立て、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第15号証(枝番号を含む。但し、枝番号の全てを引用する場合は、その枝番号の記載を省略する。)を提出した。
1 請求の理由
(1)理由の要旨
「ジェルトラック」は、請求人が販売している軌道安定剤(本件商標の指定商品のうち「アンカーボルト用固定剤」に該当する。)の名称である。被請求人は、「ジェルトラック」が請求人商品の名称であることを熟知しながら、請求人に何らの断りもなく剽窃的に本件商標の登録出願を行ったものである。被請求人の行為は、請求人の製品の自由な商品流通を阻害する目的でなされたものであり、自由かつ公正な競争秩序を害するものである。
よって、本件商標は、公の秩序又は善良の風俗を害する恐れがある商標であるから、商標法第46条第1項第1号、同法第4条第1項第7号の規定により無効とされるべきものである。
(2)本件商標登録出願に至る経緯等
ア 請求人について
請求人(旧商号「株式会社ジェルテック」)は、シリコーンなどの材料を用いた衝撃吸収、振動防止用素材等を製造、販売している会社であり、この分野で著名な会社である(甲第11号証ないし甲第15号証)。
請求人の製品には、その社名にちなみ、また、大ヒット商品である「αGEL」との関係性を持たせるため、「ジェル」あるいは「ゲル」という言葉を含んで命名した製品名を付けるのが通常である。そして、請求人は、「ジェル」あるいは「ゲル」を含む商標を多数登録出願し、商標登録を得ている(甲第1号証の別紙)。
イ 軌道安定剤「ジェルトラック」の商品企画、開発経緯について
(a)被請求人は、JR各社が従来品よりも性能のよい軌道安定剤(線路の枕木周辺の道床(バラスト)に塗布、散布するなどした薬剤が固化することにより、道床を安定させて、枕木の沈降による線路の継ぎ目の段差発生を防止するための素材をいう。)を求めていることから、平成14年12月頃、請求人に対し、同社の衝撃吸収材、振動防止用素材の技術を生かして軌道安定剤を開発し、JR各社にこれを売り込むことを持ちかけた。
(b)そこで、請求人と被請求人は、平成15年1月以降、請求人が製造した軌道安定剤の試作品を、被請求人がJR東海の保線工事現場に持ち込み、JR東海の保線作業の担当者に使ってもらい、試作品を使用した際の列車通過時の線路の振動の加速度などのデータのフィードバックを受けるという形で、請求人製の軌道安定剤をJR東海側に売り込むとともに、得られたデータに基づいて改良品を作って、さらにJR東海に売り込んでいく、というJR東海に対する営業活動を行っていった。
(c)試作品の使用試験は、平成15年11月のJR身延線の引き込み線、平成16年3月のJR静岡駅構内の在来線本線、同年4月のJR菊川駅在来線本線、同月のJR身延駅在来線本線の4回にわたって行われた。
ウ 商品名「ジェルトラック」の決定経緯について
(a)これらの試験を実施するに際しては、軌道安定剤に、仮称でもよいので何らかの製品名をつける必要があった。
(b)この点、一般に、軌道安定剤は、請求人などの軌道安定剤のメーカーからJRなどの鉄道会社に直接収められるわけではなく、被請求人などの商社(ほかに、太白物産株式会社(以下「太白物産」という。)や吉原鉄道工業株式会社(以下「吉原鉄道工業」という。)などがある。)を通じて、鉄道会社に納入される。鉄道会社は、商社に対して軌道安定剤を発注し、商社はメーカーから軌道安定剤を調達して鉄道会社に納入する。したがって、あるメーカーの製品である「A」という軌道安定剤を購入しようとする鉄道会社は、被請求人、太白物産、吉原鉄道工業などの商社のいずれからも、「A」という軌道安定剤を購入することが可能である。多少の取引上の結びつきの強弱はあれ、各商社が一定の鉄道会社に対して、独占的な販売権を持つといったようなことはない。このように、複数の商社が、同じ軌道安定剤メーカーの製品を取り扱うが、その際に、商社ごとに製品名が異なるということはなく、すべての商社において、メーカーが命名した製品名によって取引が行わる。そうでないと、同じ軌道安定剤について商社ごとに製品名が異なってしまい、鉄道会社の側で著しく不便だからである。
(c)このように、軌道安定剤の製品名はメーカーのものであり、本件でも新規軌道安定剤の商品名は、請求人において決定すべきものであった。しかるに、被請求人の小西部長は、請求人に事前に何の相談もすることなく、JR東海への提出資料に「ジェルトラック」の名称を記載して提出してしまった。
(d)なお、軌道安定剤の製品名はメーカーのものであることは前記のとおり常識に属する事柄であり、小西部長もこのことを前提としたうえでJR東海への提出資料に「ジェルトラック」の名称を記載したものであって、「ジェルトラック」の名称を被請求人固有の製品名として用いる意図があったわけではないと考えられる。もし、そうでなければ、「ジェル」という請求人製品に共通して用いられている言葉を含む製品名をJR東海への提出資料に記載するはずがないからである。
(e)請求人は、「ジェルトラック」との名称であれば、「ジェル」という言葉を含むので、同社の製品名として不適切ではないだろうと考え、以後、請求人の新規開発の軌道安定剤の製品名として「ジェルトラック」を用いていくこととした。
エ 「ジェルトラック」が請求人固有の商品名であることの証拠について
「ジェルトラック」の名称が請求人の製品名であって、被請求人のものではないこと、また、そのことを請求人や被請求人以外の商社や鉄道会社、及び被請求人自身も認識していたことは以下の本件商標の登録出願前の証拠からも明らかである。
(a)平成16年3月26日に、鉄道会社向けの製品の特徴説明のために請求人が作成し、被請求人に交付した資料には、「シリコーン軌道安定剤 ジェルトラック(仮称)」、「湿気硬化型シリコーン軌道安定剤 品名;ジェルトラック-1(1液硬化)」及び「湿気硬化型シリコーン軌道安定剤 品名;ジェルトラック-2(1液硬化)」との記載がある(甲第2号証)。
(b)平成16年4月14日付の「シリコーン軌道安定剤『ジェルトラック1』施工試験」と題する資料は、請求人が作成し、被請求人経由でJR東海に提出したJR菊川駅における試験結果の報告書であり、被請求人も確認している資料である。そこでは「請求人製シリコーン軌道安定剤『ジェルトラック1』」との記載がなされている(甲第3号証)。
(c)「ジェルトラック」の手配についての被請求人からの問い合わせに対して、請求人から平成16年4月15日付で発送したFAXでは、「1.ジェルトラック手配の件 高硬度品(ジェルトラック2)は原料手配が間に合いませんので、お電話にて確認いたしましたように、従来品(ジェルトラック1)を詰め替え代替使用いたします。」との記載がなされている(甲第4号証)。
(d)平成16年6月23日付の「シリコーン軌道安定剤『ジェルトラック1』施工及び列車通過振動測定-JR東海身延線身延駅付近-」と題する資料は、請求人が作成し、被請求人経由でJR東海に提出したJR身延駅における試験結果の報告書であり、被請求人も確認している資料である。そこでは、「請求人製シリコーン軌道安定剤『ジェルトラック1』」との記載がなされている(甲第5号証)。
(e)平成16年12月21日付の吉原鉄道工業から請求人に対する「ご注文書」には、注文品として「軌道安定剤ジェルトラック」と記載されている。
なお、この注文書に吉原鉄道工業の担当者として記載されている「小西」とは、被請求人に在籍し、軌道安定剤の案件を担当していた小西その人であり、このころ被請求人から吉原鉄道工業に転職したものである(甲第6号証)。
(f)平成17年2月16日付、及び同月21日付の被請求人から請求人に対する注文書には「道床安定剤 ジェルトラック」との記載がなされている(甲第7号証の1、2)。
(g)平成17年3月7日付の株式会社ジェイアール東日本商事から太白物産に対する注文書には「ジェルトラック-H」との記載がなされている(甲第8号証)。
(h)平成17年3月23日付のFAXは、被請求人が請求人に対して「ジェルトラック」の材料証明書の作成、送付を求めるものであって、そこには「…先ほどご連絡いたしました御社ジェルトラックの『材料証明書』の件で…」と記載されている。なお、これに対して送付した材料証明書にも、請求人の製品名として「ジェルトラック-2」と記載されている(甲第9号証の1、2)。
オ 被請求人による本件商標の登録出願
以上のように、「ジェルトラック」は、請求人の軌道安定剤の製品名であり、その商標権は請求人に帰属するべきものであることは、請求人のみならず、被請求人自身を含む商社、さらにはユーザーである鉄道会社に至るまでの共通認識であった。しかるに、被請求人は、請求人に何らの断りもなく、本件商標の登録出願を行い本件商標の登録を得たものである。
カ なお、請求人は、被請求人に対して、二度にわたり、書面で抗議し、商標の登録名義の移転を求めたが(甲第10号証の1、2)、被請求人からは、一切の回答がない。
(3)本件商標登録出願の商標法第4条第1項第7号該当性
ア 以上述べたとおり、「ジェルトラック」は、請求人が販売している軌道安定剤の名称であり、その商標権は請求人に帰属すべきものである。しかるに被請求人は、「ジェルトラック」が請求人商品の名称であり、その商標権が請求人に帰属すべきものであることを熟知しながら、請求人に何らの断りもなく剽窃的に本件商標の登録出願を行ったものである。
イ また、被請求人は、他の商社に営業上先んじるために、株式会社ジェイアール東日本商事など林総事以外の商社が営業上強い会社に、「ジェルトラック」の商標権を被請求人が有していることを告げ、他の商社から「ジェルトラック」を購入すると、あたかも法的に問題があるかのような印象を抱かせようとしたものと考えられる。具体的には、平成17年8月28日ころ、太白物産は、株式会社ジェイアール東日本商事の資材本部の担当者から、「『商品ジェルトラックのパテントは林総事が持っている』と林総事から最近営業を受けた」旨を伝えられたとのことである。さらに、被請求人の行為により、商社の側から請求人に対して、請求人の「ジェルトラック」を購入して鉄道会社に販売することには法律上問題があるのではないか、とのクレームが寄せられており、請求人は大変な迷惑を被っている。
2 結語
よって、本件商標は、公の秩序又は善良の風俗を害する恐れがあるものとして、商標法第4条第1項第7号に該当するものである。

第3 被請求人の主張
被請求人は、結論同旨の審決を求める、と答弁し、その理由を要旨次のように述べた。
(1)本件商標の取得経緯
被請求人は、鉄道保安装置の製造・販売を主に行っており、機械信号においては国内シェア50%を誇る会社であるところ、平成14年11月頃、鉄道保安技術の一端として、道床の安定化を図るためにシリコーンを応用した道床安定化剤(鉄道の軌道整備用安定剤)を施工に用いる開発に着手した。
シリコーンを応用した道床安定化剤は、素材メーカーである請求人(当時の社名「株式会社ジェルテック」)が製造販売している製品(商品名「ジェル」)が利用できると考え、道床安定化剤に最も適した製品の提供を受けるべく、請求人と共に試験研究を繰り返してきた。
試験施工は鉄道事業所にデータや品質の優秀性を示し、試験施工の実施を懇請していくものであって、被請求人は、この時、当該シリコーン道床安定化剤に「ジェルトラック」と命名して、試験施工の依頼をしてきた。
試験施工は、JR東海身延線を皮切りに、JR東海岐阜、北日本では、仙台、盛岡、秋田、大曲、横手、八戸での沿線等において行い、それらに要した材料費並びに人件費等費用一切は、被請求人が全て負担して行われた。
そして、平成17年春に試験施工が完了し、京急南大田駅構内、京急上大岡駅構内、京急川崎駅構内、京急新町駅構内と、相次いで本工事が行われてきた。
そして、被請求人の施工に用いるシリコーン道床安定化剤「ジェルトラック」は業界で脚光を浴びることになり、被請求人は当該「ジェルトラック」商標を登録出願し、登録を得たものである。
被請求人のシリコーン道床安定化剤「ジェルトラック」を用いた道床安定化技術は、被請求人の営業努力、品質管理努力、永年の実績、そして積み重ねられた信用のもとに、当業界では今や周知著名となっているのが実情である。
(2)請求人主張についての反論
ア 本件商標の登録出願について
請求人は、剽窃的に本件商標の登録出願を行ったものである旨主張をしているが、「ジェルトラック」の商標名は前記したように、JR東海に試験施工の依頼をする際に、被請求人がネーミングした商標であるという事実は請求人も熟知しているところであり、請求書で述べる「…しかるに、被請求人の小西部長は、請求人に事前に何の相談もすることなく、JR東海への提出資料に「ジェルトラック」の名称を記載して提出してしまった。…」の記載、並びに陳述書(甲第1号証)で述べる「…この試験を実施するに際して、何らかの製品名を仮称でもよいのでつける必要がありましたが、林総事の小西部長からは、弊社に事前に何の相談もすることなく、JR東海への提出資料に「ジェルトラック」の名称を記載して提出してしまったと聞かされました。…」との記載からも明確である。
イ 軌道安定剤の製品名について
また、請求人は、「…このように、軌道安定剤の製品名はメーカーのものであり、したがって、本件でも、新規軌道安定剤の商品名は、請求人において決定すべきものであった。…」と述べているが、請求人は「軌道安定剤」を被請求人の求めに応じて納入したに過ぎず、被請求人が命名した当該製品に対する商標が請求人に帰属すべきものであるとの主張は全く当たらない。
ウ 商標法第4条第1項第7号について
請求人は、本件商標は、公の秩序又は善良の風俗を害する恐れがある商標である旨述べて、その登録無効の根拠を示そうとしているが、前記した如く、被請求人は自己の営業にかかる商品に関して商標保護の為に権利取得したのであって、本件商標は、何ら公の秩序又は善良の風俗を害する恐れがある商標ではない。
エ 請求人固有の商品名であることを示す証拠について
請求人は、「ジェルトラック」が請求人固有の商品名であることを示す証拠として「ジェルトラック」商標が取引関係書類で日常的に使用されている事実や製品の説明紹介資料に商標が掲載されている旨を述べているが、取引関係書類や製品の説明紹介資料にその商品名として商標が記載されることは取引社会にあっては当然なことであり、請求人の主張の意図が全く不明である。
特に、被請求人が、材料の供給会社である請求人に商標を記載して注文を出すことは当たり前のことであり、供給を受ける商品伝票に商標名が記載されているからといって、当該商標が供給者の商標であるという論理が成り立つ筈もない。
権利の濫用について
請求人は、恰も被請求人が権利の濫用をしているかの如く陳述しているが、そのような事実は皆無である。
(3)結語
以上のように、請求人の主張は法的根拠が無く、適用条文に該当しない事由をもって無効を論じたものに過ぎないものであり、本件商標は、商標法第4条第1項第7号の規定により無効とされるべき商標ではない。

第4 当審の判断
請求人は、本件商標の無効請求において、被請求人は剽窃的に本件商標の登録出願を行ったものであって、その行為は、請求人の製品の自由な商品流通を阻害する目的でなされたものであり、自由かつ公正な競争秩序を害するものであるから、本件商標は、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標であるとして、商標法第4条第1項第7号により無効とされるべき旨主張しているのでこの点について検討する。
1 商標法第4条第1項第7号の適用範囲
ところで、知的財産高等裁判所の審決取消訴訟(平成19年(行ケ)第10392号)において、「『公の秩序又は善良の風俗を害するおそれ』を私的領域にまで拡大解釈することによって商標登録出願を排除することは、商標登録の適格性に関する予測可能性及び法的安定性を著しく損なうことになるので、特段の事情のある例外的な場合を除くほか、許されないというべきである。そして、特段の事情があるか否かの判断に当たっても、出願人と,本来商標登録を受けるべきと主張する者(…例えば、本来商標登録を受けるべきと主張する者が、自らすみやかに出願することが可能であったにもかかわらず、出願を怠っていたような場合や,契約等によって他者からの登録出願について適切な措置を採ることができたにもかかわらず,適切な措置を怠っていたような場合(…)は、出願人と本来商標登録を受けるべきと主張する者との間の商標権の帰属等をめぐる問題は、あくまでも、当事者同士の私的な問題として解決すべきであるから、そのような場合にまで、『公の秩序又は善良の風俗を害する』特段の事情がある例外的な場合と解するのは妥当でない。」と判示している。
2 本件商標登録出願に至る経緯等
(1)「ジェルトラック」のネーミングについて
ア 本件商標は、「ジェルトラック」の文字よりなるところ、請求人の述べるところによれば、大旨、かかる表示は、被請求人が平成14年12月頃に衝撃吸収、振動防止素材メーカーである請求人に対し、その技術を応用し軌道安定剤を開発し、JR各社にこれを売り込むことを持ちかけ、その後、平成15年11月のJR東海身延線の引き込み線ないし平成16年4月のJR身延駅在来線本線の4回にわたる軌道安定剤の試作品の使用試験を実施するに際して、被請求人がJR東海への提出資料に「シリコーン道床安定剤 ジェルトラック」の名称を記載して提出したとするものである。
イ なお、被請求人は、試験施工はJR東海身延線を皮切りに、JR東海岐阜、北日本では、仙台、盛岡、秋田、大曲、横手、八戸での沿線等において行い、それらに要した材料費並びに人件費等費用一切は、被請求人が全て負担して行われ、そして、平成17年春に試験施工が完了し、京急南大田駅構内、京急上大岡駅構内、京急川崎駅構内、京急新町駅構内と、相次いで本工事が行われてきたと述べている。
(2)「ジェルトラック」の使用について
請求人は、「ジェルトラック」が請求人固有の商品名である証拠として、甲第2号証ないし甲第9号証を提出している。
ア 甲第2号証には、右上に「2004/3/26」、「株式会社ジェルテック」及び、表題として「シリコーン道床安定材 ジェルトラック(仮称)」の表示の下「2.製品」の項に「a.湿気硬化型シリコーン道床安定材 品名;ジェルトラック-1(1液硬化)」、「b.湿気硬化型シリコーン道床安定材 品名;ジェルトラック-1(1液硬化)」及び「*品名は仮名称です。」の記載ほか製品説明がされていることや、甲第3号証には、右上に「2004/4/14」、「株式会社ジェルテック」及び表題として「シリコーン道床安定材『ジェルトラック1』施工試験」の表示の下「3.道床安定材」の項に「株式会社ジェルテック製シリコーン道床安定材『ジェルトラック1』」の記載ほか、当該施工試験に関する記載がされていること、その他、「ジェルトラック」の手配についての被請求人からの問い合わせに対する2004年4月15日付けの「FAX送信のご案内」(甲第4号証)、「3.道床安定材」の項に「株式会社ジェルテック製シリコーン道床安定材『ジェルトラック1』」の記載ほか、当該施工試験に関する記載がされている右上に「2004/6/23」、「株式会社ジェルテック」及び表題を「シリコーン軌道安定材『ジェルトラック1』施工及び列車通過振動測定/-JR東海 身延線身延駅付近-」とする報告書(甲第5号証)。
イ 「内訳 軌道安定剤 ジェルトラック 30kg 硬度硬い物」等の記載がある吉原鉄道工業から「(株)ジェルテック御中/大場課長殿」宛ての「2004年12月21日 11時49分」にFAX送信された「ご注文書」(甲第6号証)、「品名 道床安定剤 ジェルトラック」、単価に「5,000」等の記載がある被請求人から「株式会社ジェルテック 様/大場課長代理 様」宛ての「2005年2月16日 16時45分」及び「2005年2月21日 10時33分」にFAX送信された「御注文書」(甲第7号証の1、2)、また、各欄に「注文年月日/2005/03/07」、「単価/71,500」、「始期/2005/03/04 ? 納入期日/2005/03/11」、「品形 ジェルトラック-H」及び「仕入先名称 (株)太白物産」等の記載、欄外上段に「東日本旅客鉄道(株)盛岡支社総務部経理課長/代理(株)ジェイアール東日本商事盛岡支店長」の表示がされた注文書(甲第8号証)。
ウ 「…先程ご連絡いたしました御社ジェルトラックの「材料証明書」の件で…」との記載がある被請求人から「株式会社ジェルテック/大場課長 様」宛の「2005年3月23日 19時22分」にFAX送信された「送信のご案内」(甲第9号証の1)、これに対して2005年3月29日付けの「FAX送信のご案内」(甲第9号証の2)に添付された材料証明書に「1.製品名称 ジェルトラック-2」等(なお、これに記載の「ジェルトラック-2」の「6.製品特性」と甲第2号証の「3.一般特性」とは性状などに差がある。)」との記載(甲第9号証の1、2)。
(3)小括
ア してみると、請求人と被請求人の述べるところによれば、少なくとも平成15年11月ないし平成16年4月の4回にわたる軌道安定剤の試作品の使用試験を実施するに際し、たとい仮称としてもJR東海に提出する資料について当該シリコーン軌道安定剤に「ジェルトラック」のネーミングをしたのは被請求人であること、
イ また、甲第2号証ないし甲第9号証には、「シリコーン道床安定材」、「シリコーン軌道安定材」、「軌道安定剤」、「道床安定剤」や「湿気硬化型シリコーン」等の品名(以下まとめて「シリコーン軌道安定剤」という。)と共に「ジェルトラック(仮称)」、「ジェルトラック」、「ジェルトラック-1」、「ジェルトラック-2」、「ジェルトラック-H」などの記載がそれぞれ認められ、本件商標の登録出願日(平成17(2005)年4月28日)前である平成16(2004)年3月26日(甲第2号証)ないし平成17(2005)年3月23日(甲第9号証の2)の間において、シリコーン軌道安定剤に「ジェルトラック」を名称とする記載が、請求人(ジェルテック社)及び被請求人ほか、吉原鉄道工業、太白物産、及び株式会社ジェイアール東日本商事盛岡支店の各社により報告書や注文書等において商品名等として使用されていることが認められるものである。
ウ しかしながら、シリコーン軌道安定剤に「ジェルトラック」とネーミングしたのは被請求人であること、
また、甲第2号証ないし甲第9号証の2における使用は主として請求人(ジェルテック社)と被請求人にかかる当該軌道安定剤の施工試験にあっての報告書や製品説明書並びに注文書等における使用であって、これを越えて請求人(ジェルテック社)の当該商品についての宣伝・広告の具体的状況、すなわち、広告の時期、手段、方法及び費用等の状況を客観的に明らかにし得るものでなく、かつ、請求人(ジェルテック社)の当該商品の流通市場における評価、占有率などの事情も不明といわざるを得ない。
エ そうしてみると、甲各号証によっては、シリコーン軌道安定剤に使用された名称「ジェルトラック」が、請求人(ジェルテック社)にかかる固有の商標であると認識されるようなことを理由づけるに足りるものとは俄に認め難いところであり、むしろ、その使用は、当事者間(商社、鉄道会社)における当該軌道安定剤の遣り取りを特定するための暫定的に使用された表示というのが相当であって、まして、本件商標を被請求人が剽窃的に登録出願したものとの存在を認める根拠となり得るものではない。
3 請求人の主張について
請求人は「…軌道安定剤の製品名はメーカーのものであることは前記のとおり常識に属する事柄であり、…」と述べている。しかし、軌道安定剤に関係する業界においてそのような事柄が一般的な考え方であるとの事実を窺わせるような状況は一切見出すことができない。
また、「…そうでなければ、『ジェル』という請求人製品に共通して用いられている言葉を含む製品名をJR東海への提出資料に記載するはずがない…」と述べている。しかし、「ジェル(gel)」の文字(語)自体が請求人(ジェルテック社)に特化したものとは認め難く、商標の採択にあたり本件商標の指定商品に関係する分野に限らず、「ジェル(gel)」の語が当該商品の性状や品質等を表すものとして商標の一部に使用される例は少なくない。
そして、「…以上のように、『ジェルトラック』は請求人の軌道安定剤の製品名であり、その商標権は請求人に帰属するべきものであることは、請求人のみならず、被請求人自身を含む商社、さらにはユーザーである鉄道会社に至るまでの共通認識であった。」と述べているが、前記したとおり、この点の主張は具体的な根拠に乏しく主観論といわざるを得ない。
その他、「…請求人の『ジェルトラック』を購入して鉄道会社に販売することには法律上問題があるのではないか、とのクレームが寄せられており、請求人は大変な迷惑を被っている。」旨述べているが、これを理由づけるに足りる具体的な事実関係ないし取引状況等が全く示されていないから、俄に首肯し得るところでなく、いずれも採用の限りでない。このほか述べる請求人の主張は、いずれも根拠を欠くものであって、前記認定を左右するに足りない。
5 結語
以上のとおり、請求人(ジェルテック社)と被請求人は、当該シリコーン軌道安定剤の試作品の使用試験を実施するに際し、仮称といえども被請求人が当該試作品に「ジェルトラック」とのネーミングをし、かつ、請求人の製造にかかる軌道安定剤をJR東海に売り込んでいくという営業活動を行っていった事実関係があるとしても、これ以上にその使用や帰属等をめぐる商習慣や被請求人が剽窃的に登録出願したものとの存在は、これを認めることはできないし、その他、当事者間においてこれらに関する事項について特段の契約もされていたような状況も見当たらない。
そして、請求人は、本件商標の登録出願前に自ら出願することが可能であったといえるものである(出願番号2007-124182:拒絶査定、2008-080456:審査継続中)。
そうすると、被請求人は剽窃的に本件商標の登録出願を行ったものであって、その行為は、請求人の製品の自由な商品流通を阻害する目的でなされたものであるとの主張は、本号における特段の事情がある例外的な場合と解することはできないといわなければならない。すなわち、本件審判請求における争いは、当事者同士の私的な問題として解決すべきものであるといえるから、本件商標が、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標と述べる請求人の主張をもって、本件商標の登録を無効とすることはできない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に違反して登録されたものとは認めらないから、同法第46条第1項第1号によって、その登録を無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲
審理終結日 2009-04-27 
結審通知日 2009-05-01 
審決日 2009-05-12 
出願番号 商願2005-38847(T2005-38847) 
審決分類 T 1 11・ 22- Y (Y01)
最終処分 不成立 
前審関与審査官 鈴木 斎 
特許庁審判長 渡邉 健司
特許庁審判官 鈴木 修
井出 英一郎
登録日 2006-03-24 
登録番号 商標登録第4938885号(T4938885) 
商標の称呼 ジェルトラック、ジェルト、トラック 
代理人 森本 晋 
代理人 佐野 辰巳 
代理人 生田 哲郎 
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社   サービスに関しての問い合わせ