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審決分類 審判 全部申立て  登録を取消(一部取消、一部維持) Y39
管理番号 1199127 
異議申立番号 異議2005-90088 
総通号数 115 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2009-07-31 
種別 異議の決定 
異議申立日 2005-02-18 
確定日 2009-05-20 
異議申立件数
事件の表示 登録第4820057号商標(以下「本件商標」という。)の商標登録に対する登録異議の申立てについて、平成18年12月4日付け異議の決定に対し、知的財産高等裁判所において決定取消の判決(平成19年(行ケ)第10013号、2007年(平成19年)7月12日判決言渡)があったので、さらに審理のうえ、次のとおり決定する。  
結論 登録第4820057号商標の指定役務中「海底遺跡を見学するための海底散策・海上散策の案内,海底遺跡を見学するためのスノーケリング・ダイビングを行う主催旅行の実施,海底遺跡を見学するためのスノーケリング・ダイビング旅行者の案内,海底遺跡を見学するためのスノーケリング・ダイビング旅行に関する契約(宿泊に関するものを除く。)の代理・媒介又は取次ぎ、海底遺跡を見学するための遊覧船・クルーズ客船・その他の船舶による旅行者の案内,海底遺跡を見学するための遊覧船・クルーズ客船・その他の船舶による主催旅行の実施,海底遺跡を見学するための主催旅行の実施,海底遺跡を見学するための旅行者の案内,海底遺跡を見学するための旅行に関する契約(宿泊に関するものを除く。)の代理・媒介又は取次ぎ」について、商標法第43条の3第2項の規定により登録を取り消すべきものものとする。 その余の指定役務については、商標法第43条の3第4項の規定により、その登録を維持するものとする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4820057号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲のとおりの構成よりなり、平成16年3月22日に登録出願、第39類「鉄道による輸送,車両による輸送,道路情報の提供,自動車の運転の代行,遊覧船・クルーズ客船による輸送,船舶による輸送,航空機による運輸,貨物のこん包,貨物の輸送の媒介,貨物の積卸し,引越の代行,遊覧船・クルーズ客船の貸与・売買又は運航の委託の媒介,船舶の貸与・売買又は運航の委託の媒介,船舶の引揚げ,水先案内,海底遺跡を見学するための海底散策・海上散策の案内,海底遺跡を見学するためのスノーケリング・ダイビングを行う主催旅行の実施,海底遺跡を見学するためのスノーケリング・ダイビング旅行者の案内,海底遺跡を見学するためのスノーケリング・ダイビング旅行に関する契約(宿泊に関するものを除く。)の代理・媒介又は取次ぎ,海底遺跡を見学するための遊覧船・クルーズ客船・その他の船舶による旅行者の案内,海底遺跡を見学するための遊覧船・クルーズ客船・その他の船舶による主催旅行の実施,海底遺跡を見学するための主催旅行の実施,海底遺跡を見学するための旅行者の案内,海底遺跡を見学するための旅行に関する契約(宿泊に関するものを除く。)の代理・媒介又は取次ぎ,寄託を受けた物品の倉庫における保管,他人の携帯品の一時預かり,ガスの供給,電気の供給,水の供給,熱の供給,倉庫の提供,駐車場の提供,有料道路の提供,係留施設の提供,飛行場の提供,駐車場の管理,荷役機械器具の貸与,自動車の貸与,遊覧船・クルーズ客船の貸与,船舶の貸与,車いすの貸与,自転車の貸与,航空機の貸与,機械式駐車装置の貸与,包装用機械器具の貸与,金庫の貸与,家庭用冷凍冷蔵庫の貸与,家庭用冷凍庫の貸与,冷凍機械器具の貸与,ガソリンステーション用装置(自動車の修理又は整備用のものを除く。)の貸与」を指定役務として、平成16年11月19日に設定登録されたものである。

第2 登録異議の申立ての理由
登録異議申立人(以下「申立人という。)は、本件商標は、その出願以前より、沖縄県与那国島の観光名所として著名な「海底遺跡」の文字と、申立人の撮影した「海底遺跡」の代表的な写真である階段状構造物と女性ダイバーよりなる写真を模写したものであるから、以下の理由に該当し、その登録は商標法第43条の2第1項により取り消されるべきであると申し立てた。(1)その役務について慣用されている商標であるから、商標法第3条第1項第2号に該当する。
(2)その役務の提供の場所、提供の用に供する物、提供の方法を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標であるから、商標法第3条第1項第3号に該当する。
(3)以前より、与那国の「海底遺跡」を示すものとして、階段状地形と女性ダイバーの写真は広く知られており、需要者が何人かの業務に係る商標であることを認識することができない商標であるから、商標法第3条第1項第6号に該当する。
(4)他人が使用して著名となった言葉やその写真を模写した図形を商標として独占使用しようとすることは、公の秩序を害するおそれがあるから、商標法第4条第1項第7号に該当する。
(5)他人の業務に係る役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標又はこれに類似する商標であって、その役務又はこれらに類似する役務について使用するものであるから、商標法第4条第1項第10号に該当する。
(6)他人の業務に係る役務と混同を生じるおそれがある商標であるから、商標法第4条第1項第15号に該当する。
(7)他人の業務に係る役務を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標と同一又は類似の商標であって、不正の目的をもって使用をするものであるから、商標法第4条第1項第19号に該当する。

第3 当審における取消理由(平成20年9月4日)の要点
1 本件商標について
本件商標は、別掲のとおり、台形状矩形の右上部分を2段に階段状に切り取って成る図形(階段状図形)と、その階段状図形に向かって、両腕を広げた女性ダイバー図を黒塗りにシルエット風に表し、女性ダイバー図の下部に「海底遺跡」の漢字を配した構成よりなるものである。
2 「海底遺跡」の文字の識別性について
(1)商標権者(原告)が前記裁判事件において提出した証拠によれば、以下の事実が認められる。
(ア)平成15年(2003年)8月29日発行の熱海新聞には、「サンビーチ沖『海底遺跡』つぼや碇石、祠など次々」との見出しで、「熱海サンビーチ沖約五百メートルの水深三十五-五十五メートルの地点。ダイバーでもある国次さんが三十年程前、海底の形に疑問も持ち、一人で調べ始めたのが発見のきっかけだった。」との記事が掲載されている。(甲第8号証の4)(イ)2004年(平成16年)2月1日発行の朝日新聞には、「水底の町 熱海沖、鎌倉時代の遺構?」との見出しで、「静岡県熱海市沖の海底で、階段状の石積みなど人工的に造られたとみられる構造物が次々と見つかっている。」との記事が掲載されている。(甲第8号証の3)
(ウ)平成16年(2004年)6月13日発行の産経新聞には、「熱海“海底遺跡”に光 東海大研究チーム本格調査」との見出しで、「熱海市沖の海底に石垣や石段など人工の構築物とみられる不自然な地形があり、東海大学海洋学部(静岡市)の研究チームが本格的な調査に乗り出している。・・・『海底遺跡』であれば、市の新たな観光資源になる期待は大きく、・・・。」及び別枠に「海底遺跡」の小見出しを設け「陸の地中にある文化財と同様に、『埋蔵文化財包蔵地』として、文化財保護法が適用され、保護対象になる海底の遺跡。文化庁によると、河川や湖沼に沈んでいる遺跡も含め全国で216カ所が水中遺跡として登録済み。・・・。」の記事が掲載されている。(甲第8号証の7)
(2)また、商標法第43条の8で準用する特許法第150条第1項に基づく職権による証拠調べによるインターネット情報によっても、以下の事実が認められる。
(ア)インターネット上で公開されている「アレクサンドリア海底遺跡」とタイトルされたサイトには、「以前より、アレクサンドリアの港の海底から、遺跡の断片などが発見されていました。・・1992年より、フランス人のフランク・ゴッディオが発掘プロジェクトを発足し、調査が始まりました。調査が進むと、次々に新しい発見がもたらされました。スフィンクス像や女神像、プトレマイオス王朝時代の王の像や、オクタウィアヌスを始めとするローマ皇帝の像、沢山のアンフォラの壷(*)、紀元前4世紀頃の沈没船など、貴重な発見が相次ぎました。これらの調査から、次第に古代アレクサンドリアの港内の様子が明らかになってきました。また、カイト・ベイ付近の海底からは、ファロス灯台の一部と見られる石柱なども発見されました。これらの調査で海底から見つかった物のうち、重要なものは引き上げられ、グレコ・ローマン博物館に展示してあるそうですが、その他の遺跡については、現在もアレクサンドリアの沖の海底に残されています。」(http://www.m-matsu.com/egypt/alexandria/alexandria.htm)と掲載されている。
(イ)インターネット上の「Alexandora/Dive」とタイトルされたダイビングツアーのサイトには、「世界初の水中博物館として我々アレキサンドラ・ダイブをご紹介できる事をとても喜ばしく思います。クレオパトラの都、古代都市アレキサンドリア、神殿、沈船、そして7000点を超えるおびただしい数の石柱や石像など古代エジプト及びグレコ・ローマン時代の遺跡の数々が紀元前300年の昔の姿のまま、このアレキサンドリアの8m?15mの海底に今でも眠っています。」(http://www.salongo.jp/eg/alexandra-dive/profile.htm)と掲載されている。
(ウ)インターネット上の「日本財団」のサイトには、「海底遺跡ミュージアム実現へ 長崎で水中遺跡見学会」とのタイトルで、「長崎で水中遺跡見学会 長崎県・五島列島の小値賀島(おぢかじま)で、8月25、26日の2日間にわたって実施された前方湾(まえがたわん)水中遺跡見学会(9月7日「日本財団ブログ・マガジン」参照)は、わが国における初の『海底遺跡ミュージアム構想』実現に向けた第一歩でもあった。・・・考古学の研究対象である埋蔵文化財は、土中だけでなく水中に埋没しているケースがあり、2001年のユネスコ総会では海底遺跡の野外ミュージアム化による水中文化遺産の保護と活用を目指す『水中文化遺産保護条約」が採択されている。海外ではローマ時代の海底遺跡であるイタリア『バイヤ海底遺跡』や、紀元前の沈没船などを中心にしたエジプトの『アレクサンドリア海底遺跡』などの海底遺跡ミュージアムがある。・・・海に囲まれているわが国では、地殻変動や戦乱、海上投棄などによって海中に残されることになった『生活の痕跡』は数多く、同研究所が全国の教育委員会に問い合わせた集計だけでも379カ所の水中遺跡が確認されている。なかでも北海道江差沖の沈没船『開陽丸』や、長崎県松浦市の元寇ゆかりの島・鷹島など、貴重な海底遺跡も多い。」と掲載されている。(http://www.nippon-foundation.or.jp/ships/topics_dtl/070906.htm)
(3)以上のとおり、「海底遺跡」の文字は、海底に沈んだ遺跡等を表示する語として、普通に使用されていると認められる。
3「図形部分」の識別性について
次に、本件商標の該図形部分については、前記判決において、「階段状の構造物は、世界的に著名なピラミッドを想起すれば明らかなように、遺跡の形状としてきわめて一般的なものであるから、上記図柄が『女性ダイバーが海底にある遺跡(階段状の構造物)を見学している状態』を想起させるものであると理解することは容易である・・。」と判断されている。加えて、海底に限らず、一般に遺跡は、観光地化され見学ツアーなども行われるものであり、上記「アレクサンドリア海底遺跡」においても、ダイビングや水中ミュージアム等の観光地となっている事情もみられる。そして、他に構成上も特異な特徴を有する等もみられない該図形部分よりは、本件商標の「海底遺跡」の文字と相俟って、「女性ダイバーが海底にある遺跡(階段状の構造物)を見学している状態」を容易に理解、想起させるにすぎないものと認められる。
4 結語
してみれば、本件商標は、これをその指定役務中「海底遺跡を見学するための海底散策・海上散策の案内,海底遺跡を見学するためのスノーケリング・ダイビングを行う主催旅行の実施,海底遺跡を見学するためのスノーケリング・ダイビング旅行者の案内,海底遺跡を見学するためのスノーケリング・ダイビング旅行に関する契約(宿泊に関するものを除く。)の代理・媒介又は取次ぎ,海底遺跡を見学するための遊覧船・クルーズ客船・その他の船舶による旅行者の案内,海底遺跡を見学するための遊覧船・クルーズ客船・その他の船舶による主催旅行の実施,海底遺跡を見学するための主催旅行の実施,海底遺跡を見学するための旅行者の案内,海底遺跡を見学するための旅行に関する契約(宿泊に関するものを除く。)の代理・媒介又は取次ぎ」について使用しても、これに接する取引者、需要者をして、海底遺跡なる観光名所(観光地)であることを理解するに止まり、単にその役務の質、役務の提供の場所を表示するというべきであり、自他役務の識別機能を果たし得ないものといわざるを得ない。
したがって、本件商標は、指定役務中前記役務について、商標法第3条第1項第3号に違反して登録されたものである。

第4 商標権者の意見の概要
1 海底遺跡の多くが階段状の構造物を有するものではない。
確かに、与那国島新川鼻沖海底遺跡以外に、「熱海の海底遺跡」、「アレクサンドリア海底遺跡」にも階段状の構造物が見られるが、「前方湾(まえがたわん)水中遺跡」、イタリアの「バイヤ遺跡」、北海道江差沖の沈没船「開陽丸」、長崎県松浦市の元寇ゆかりの島・鷹島などには、調査した限り、 階段状の構造物は発見できなかった。
また、これらの海底遺跡のどこかに階段状の構造物があったとしても、特徴的な部分とはいえない。
なお、「エジプトのピラミッド」には、近くで見ると確かに「階段状の構造物」がみられるが、これは「地上の遺跡」であって、「海底遺跡」ではない。また、判決で「世界的に著名なピラミッド」と引用しているが、本件商標の図形部分の観念「女性ダイバーが海底にある遺跡(階段状の構造物)を見学している状態」を導き出すために引用したものであって、本件海底遺跡の「識別性」の判断においてまで引用されているとはいえない。
そうとすると、本件商標中の階段状の図形部分は、「海底遺跡」の文字部分とあいまって、必ずしも多くの海底遺跡を想起させるものとは言い難い。 したがって、本件商標を、取消理由に係る役務に使用しても、これに接する取引者、需要者をして、自他役務の識別標識としての機能を果たし得ないものとはいえない。
2 本件商標は、階段状の図形と女性ダイバーの図形と「海底遺跡」の文字からなるものであり、その構成中に「遊覧船・クルーズ客船・その他の船舶」を認識させる文字等が存在しない。
すると、本件商標の指定役務中の「海底遺跡を見学するための遊覧船・クルーズ客船・その他の船舶による旅行者の案内,海底遺跡を見学するための遊覧船・クルーズ客船・その他の船舶による主催旅行の実施」について、本件商標を使用しても、当該役務の提供の場所等を理解、認識するとはいえない。
3 本件商標中には、役務の質・役務の提供の場所等を表示しない部分がある。
本件商標は、「女性ダイバーの図形」部分と当該役務の質を表示する「海底遺跡の文字」、「階段状の図形」との組み合わせであって、本件商標をこの二つの部分に分離して観察するという見方も仮にできる。
この「女性ダイバーの図形」部分単独では、「海底遺跡を見学するための遊覧船・クルーズ客船・その他の船舶による旅行者の案内,海底遺跡を見学するための遊覧船・クルーズ客船・その他の船舶による主催旅行の実施」に関して、必ずしも、役務の質を直接的に表示するとはいえない。なぜなら、「女性ダイバーの図形」部分には、「遊覧船・クルーズ客船・その他の船舶」を認識させる文字、図形、記号等が存在しないからである。ところで、商標法第43条の3第2項に基づき、商標法第3条第1項第3号に該当するとして取り消される商標は、「役務の質または役務の提供の場所等を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標」であるから、役務の質または役務の提供の場所を表示しない部分を一部に含む本件商標の登録を取り消すことはできない。
まして、「女性ダイバーの図形」部分 が本件商標全体に占める割合は大きく、本件指定役務の取引者、需要者に十分認識され無視できないほどのものである。
4 以上のように、本件商標を取消理由に記載の取消しに係る指定役務について使用しても、これに接する取引者、需要者をして、海底遺跡なる観光名所(観光地)で有ることを理解するに止まるものではなく、単にその役務の質、役務の提供の場所を表示するものであって自他役務の識別機能を果たし得ないとは言い切れないから、本件商標は、上記取消しに係る指定役務について、商標法第3条第1項第3号に違反して登録されたとはいえないものである。

第5 当審の判断
1 本件商標について
本件商標は、別掲のとおりの構成よりなるところ、前記第3の取消理由のとおり本件商標の指定役務との関係よりすれば、その構成中の「海底遺跡」の文字部分は、単に「海底にある遺跡」を表すにすぎず、また、図形部分も「女性ダイバーが海底にある遺跡(階段状の構造物)を見学している状態」を容易に認識するから、このような商標をその指定役務中「海底遺跡を見学するための海底散策・海上散策の案内,海底遺跡を見学するためのスノーケリング・ダイビングを行う主催旅行の実施,海底遺跡を見学するためのスノーケリング・ダイビング旅行者の案内,海底遺跡を見学するためのスノーケリング・ダイビング旅行に関する契約(宿泊に関するものを除く。)の代理・媒介又は取次ぎ,海底遺跡を見学するための遊覧船・クルーズ客船・その他の船舶による旅行者の案内,海底遺跡を見学するための遊覧船・クルーズ客船・その他の船舶による主催旅行の実施,海底遺跡を見学するための主催旅行の実施,海底遺跡を見学するための旅行者の案内,海底遺跡を見学するための旅行に関する契約(宿泊に関するものを除く。)の代理・媒介又は取次ぎ」(以下「取消理由で示した本件取消に係る役務」という。)について使用しても、これに接する取引者、需要者をして、海底遺跡なる観光名所(観光場所)を表したものであることを理解するに止まり、単にその役務の質、役務の提供の場所(内容)を表示するものと認識、理解するにすぎないというべきであり、自他役務の識別機能を果たし得ないものといわざるを得ない。
したがって、本件商標は、指定役務中前記役務について、商標法第3条第1項第3号に違反して登録されたものである。
2 商標権者の意見について
(1)商標権者は「海底遺跡の多くが階段状の構造物を有するものではない。与那国島新川鼻沖海底遺跡以外に、『熱海の海底遺跡』、『アレクサンドリア海底遺跡』にも階段状の構造物が見られるが、『前方湾(まえがたわん)水中遺跡』、イタリアの『バイヤ遺跡』、北海道江差沖の沈没船『開陽丸』、長崎県松浦市の元寇ゆかりの島・鷹島などには、階段状の構造物は発見できなかった。また、これらの海底遺跡のどこかに階段状の構造物があったとしても、特徴的な部分とはいえない。そうとすると、本件商標中の階段状の図形部分は、「海底遺跡」の文字部分とあいまって、多くの海底遺跡を表しているとまでは言い切れない。また、本件商標の階段状の図形部分は、必ずしも多くの海底遺跡を想起させるものとは言い難い。したがって、本件商標を、取消理由に係る役務に使用しても、これに接する取引者、需要者をして、自他役務の識別標識としての機能を果たし得ないものとはいえない。さらに、『エジプトのピラミッド』には、近くで見ると確かに『階段状の構造物』がみられるが、これは『地上の遺跡』であって、『海底遺跡』ではない。また、判決で『世界的に著名なピラミッド』を引用しているが、本件海底遺跡の『識別性』の判断においてまで引用されているとはいえない。」旨主張している。
しかしながら、エジプトのピラミッドに限らず、世界的に知られた遺跡には、例えばカンボジアの「アンコールワット」、ペルーの「空中都市マチュピチュ」、ギリシアの「アクロポリス、パルテノン宮殿」等、階段状の構造物を多く目にすることができる。
そうすると、本件商標に接する取引者、需要者は、構成中の「海底遺跡」の文字と「階段状の図形」部分を関連づけて観察するから、該「階段状の図形」部分を、「海底にある階段状の遺跡」を表したものと容易に理解、認識するとみるのが相当である。
(2)次に、商標権者は、「本件商標は、その構成中に『遊覧船・クルーズ客船・その他の船舶』を認識させる文字等が存在しないから、これを指定役務中の『海底遺跡を見学するための遊覧船・クルーズ客船・その他の船舶による旅行者の案内,海底遺跡を見学するための遊覧船・クルーズ客船・その他の船舶による主催旅行の実施』について使用しても、当該役務の提供の場所等を理解、認識するとはいえない。」こと、及び「本件商標は、『女性ダイバーの図形』部分と当該役務の質を表示する『海底遺跡の文字』及び『階段状の図形』との組み合わせであって、『女性ダイバーの図形』部分には、『遊覧船・クルーズ客船・その他の船舶』を認識させる文字、図形、記号等が存在しないから、『海底遺跡を見学するための遊覧船・クルーズ客船・その他の船舶による旅行者の案内,海底遺跡を見学するための遊覧船・クルーズ客船・その他の船舶による主催旅行の実施』に関して、必ずしも、役務の質を直接的に表示するとはいえない。まして、『女性ダイバーの図形』部分が本件商標全体に占める割合は大きく、本件指定役務の取引者に十分認識され、無視できないほどのものである。また、商標法第43条の3第2項に基づき、商標法第3条第1項第3号に該当するとして取り消される商標は、『役務の質または役務の提供の場所等を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標』であるから、役務の質または役務の提供の場所を表示しない部分を一部に含む本件商標の登録を取り消すことはできない。」旨主張している。
しかしながら、商標法第3条1項は、「次に挙げる商標を除き、商標登録を受けることができる」とし、同項第3号は、役務に関して「その役務の提供の場所,質,提供の用に供する物,効能,用途,数量,態様,価格若しくは提供の方法若しくは時期を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標」と規定しているのであって、例えば、「海底遺跡を見学するための遊覧船・クルーズ客船・その他の船舶による旅行者の案内」の役務との関係において,「遊覧船・クルーズ客船・その他の船舶」を認識させる文字等や当該役務を表示する標章を商標の構成中に含んでいる必要はなく、出願された商標が役務の質等を表示する標章のみからなる場合は、同号に該当する。
そこで、本件商標中の「女性ダイバー図」部分をみるに、海のスポーツとして代表されるスキューバダイビングのように、海とダイバーは関連性が深いものであるところ、本件商標の登録を取り消すとした役務は、いずれも海底遺跡を見学するために提供される役務であるから、これらの役務との関係よりすれば、女性ダイバー図部分により、自他役務を識別できるような観念、称呼を生ずるとみることはできず、むしろ階段状構造物を特徴とする海底遺跡の付近を遊泳しているダイバーを理解、認識させる程度にすぎないものといえる。
したがって、本件商標は、全体として単に「海底遺跡なる観光名所(観光場所)」を表したものと理解するに止まるから、これを「海底遺跡を見学するための遊覧船・クルーズ客船・その他の船舶による旅行者の案内,海底遺跡を見学するための遊覧船・クルーズ客船・その他の船舶による主催旅行の実施」に使用しても、役務の質又は役務の提供場所を表すものといわなければならない。
そうすると、商標権者の主張は何れも妥当とはいえないものであり、他に上記判断を覆すに足りる証拠は見いだせないから、商標権者のこれら主張は、採用の限りでない。
3 まとめ
したがって、上記第3の取消理由は妥当なものと認められるので、本件商標の登録は、その指定役務中「結論掲記」の指定役務については、商標法第43条の3第2項の規定により取り消すべきものである。
しかしながら、本件登録異議の申立てに係るその余の指定役務については、同法第43条の2各号のいずれにも該当しないものであって、取り消すべき理由がないものであるから、商標法第43条の3第4項の規定により、その登録を維持するものとする。
よって、結論のとおり決定する
別掲 別掲 本件商標



異議決定日 2009-04-02 
出願番号 商願2004-26781(T2004-26781) 
審決分類 T 1 651・ 13- ZC (Y39)
最終処分 一部取消 
前審関与審査官 綾 郁奈子寺光 幸子 
特許庁審判長 芦葉 松美
特許庁審判官 内山 進
岩崎 良子
登録日 2004-11-19 
登録番号 商標登録第4820057号(T4820057) 
権利者 佐々木 巌
商標の称呼 カイテイイセキ、カイテーイセキ 
代理人 若原 誠一 
代理人 島袋 勝也 
代理人 鈴木 宣幸 
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