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この審決には、下記の判例・審決が関連していると思われます。
審判番号(事件番号) データベース 権利
取消200530221 審決 商標
無効2008890041 審決 商標
無効2011890049 審決 商標
取消200231449 審決 商標
無効2008890015 審決 商標

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審決分類 審判 全部取消 商53条使用権者の不正使用による取消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Z25
管理番号 1198846 
審判番号 取消2008-300287 
総通号数 115 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2009-07-31 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2008-03-06 
確定日 2009-05-11 
事件の表示 上記当事者間の登録第4224336号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第4224336号商標の商標登録は取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4224336号商標(以下「本件商標」という。)は、「MIKI SPORTS CLUB」の欧文字を標準文字で書してなり、平成9年10月30日に登録出願、第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,仮装用衣服,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」を指定商品として、同10年12月25日に設定登録され、その後、同20年12月9日に商標権の存続期間の更新登録がされ、現に有効に存続しているものである。

第2 請求人の主張の要点
請求人は、結論同旨の審決を求めると申し立て、その理由及び答弁に対する弁駁を次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第52号証(枝番を含む。)を提出した。
1 請求の理由
(1)引用商標
請求人は、別掲(1)のとおりの構成よりなる商標(以下「引用商標」という。)を昭和53年8月より、被服その他の付属商品に使用開始して以来、現在まで一貫して使用している。
(2)引用商標を付した請求人の業務に係る商品及び引用商標の周知性
請求人は、昭和53年9月21日に設立され、当初子供服の製造販売を開始したところ、その斬新なデザイン及びスタイルが好評を博し、年々売上金額が急増した。そこで、昭和56年頃から子供服に限らず、青少年や成年を対象にした被服、被服に付随するバッグその他の付属商品に営業を拡大したところ、同様に爆発的な好評を博し、平成17年度(8月決算)の総売上高は約300億円に達している。
請求人は、売上高増加に伴い、平成20年1月の時点で、多数の直営店(約200店舗)及びフランチャイズチェーン(80店舗)を全国に有し、それ以外に本件請求人の商品を取り扱っている衣服等の専門店は約300店舗あり、商品の全国的な販売を展開している(甲第7号証)。また、請求人は、自身が開設するインターネット上の店舗(甲第8号証の1)や「楽天市場」におけるインターネット上の店舗(甲第8号証の2)でも商品販売を展開している。
請求人は、昭和55年から現在まで、テレビコマーシャルを初めとして多額の宣伝広告費を予算に計上し、引用商標のイメージアップに多大の努力を払ってきた(例えば、平成20年2月期のテレビコマーシャルは、甲第9号証に示すとおりである)。この結果、引用商標は、請求人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されている。
引用商標の周知性については、平成元年ワ第9579号(商標権侵害及び不正競争行為禁止等請求事件)の判決(甲第3号証、以下「甲3判決」という。)並びに平成5年審判第3428号(「ミキスポーツ」に対する不正使用による取消審判事件、甲第4号証)、平成5年審判第3429号(「MIKISPORTS」に対する不正使用による取消審判事件、甲第5号証)及び平成5年審判第3430号(「miKiSPORTS」に対する不正使用による取消審判事件、甲第6号証)の各審決(これらの審決をまとめて、以下「甲4ないし6審決」という。)でも認定されている。
なお、引用商標の使用態様1ないし15は、甲第19号証ないし甲第33号証に示すとおりである。
(3)被請求人の通常使用権者の存在
本件商標に係る商標権には、専用使用権又は通常使用権の設定登録はされていないが、福井県越前市平出一丁目1番23号に所在のシビルスポーツ株式会社(以下「シビルスポーツ」という。)の代表取締役は、商標権者(被請求人)である(甲第10号証)。また、シビルスポーツが販売する商品に取り付けられたタグ(甲第11号証)及び製造者表示票(甲第12号証)には、「この製品はmiKiSPORTS CLUBとのライセンス契約により製作されました。」及び「この製品はmiKisports CLUBとのライセンス契約により製作されました。」とあり、このことからも、シビルスポーツが本件商標の通常使用権者であることは明白である。
(4)シビルスポーツによる本件商標の使用態様
(以下「使用商標1」のように、「使用商標」の語に番号を付す。使用商標1ないし5をまとめていうときは、「本件使用商標」という。)
ア 使用商標1
シビルスポーツが販売するズボン(以下「使用商品A」という。甲第34号証)には、タグが取り付けられているところ、該タグの表面には、青色で表した「miKiSPORTS」の文字と、その下部に、該「miKiSPORTS」に比して小さく、青色で表した「CLUB」の文字が表示されている。なお、シビルスポーツが販売するフード付き綿センター(以下「使用商品B」という。甲第35号証)に取り付けられているタグの表面にも使用商標1が表示されている。
イ 使用商標2
上記アのタグの裏面上部には、黒色で表した「miKiSPORTS」の文字と、その下部に、該「miKiSPORTS」に比して小さく、黒色で表した「CLUB」の文字が表示されている。なお、使用商品Bに取り付けられているタグの裏面にも使用商標2が表示されている。
ウ 使用商標3
上記アのタグの裏面下部には、黒色で表した「miKiSPORTS」の文字と、その右部に、該「miKiSPORTS」と比して小さく、黒色で表した「CLUB」の文字が表示されている。なお、使用商品Bに取り付けられているタグの裏面にも使用商標3が表示されている。
エ 使用商標4
使用商品Aは、透明なプラスチック製包装用袋に包装されているところ、該包装用袋の下部には、白地帯状の長方形内に、赤色で表した「miKiSPORTS」の文字と、その下部に、該「miKiSPORTS」と比して小さく、赤色で表した「CLUB」の文字が表示されている。なお、使用商品B及びシビルスポーツが販売するスポーツジップシャツ(以下「使用商品C」という。甲第36号証)が包装されているプラスチック製包装用袋にも使用商標4が表示されている。
オ 使用商標5
シビルスポーツが販売するオーバーパンツ中ワタ入り(以下「使用商品D」という。甲第38号証)についての広告が掲載された、2008年2月に生活協同組合連合会コープきんき事業連合が配布した組合員向けのチラシには、赤色で表した「miKiSPORTS」の文字と、その下部に、該「miKiSPORTS」と比してに小さく、赤色で表した「CLUB」の文字が表示されている。また、使用商標5は、シビルスポーツが運営するインターネット上の店舗でも使用された(甲第14号証)。
(5)シビルスポーツの登録商標に類似する商標の使用による他人の業務に係る商品との混同
ア シビルスポーツが本件使用商標を使用する商品「被服」は、請求人の業務に係る商品と同一又は類似の商品に該当する。
イ 本件使用商標は、「miKiSPORTS」を大きく表し「CLUB」の文字を「miKiSPORTS」と比して意図的に小さく表したものであり、該「CLUB」の語は、被服等を取り扱う業界において「○○○ブランド同好会、○○○ブランドが好きな者達」を表示する語として「○○○CLUB」のように使用されることが多く、自他商品の識別機能の弱いものとして認識されていることも相俟って、これに接した取引者、需要者は、「miKiSPORTS」部分に着目するものである。
被服等を取り扱う業界においては、識別力を有する商標の下部に、これを修飾する文字や、さらに細分化されたブランドとしての文字を表記することが当然に行われているものである。このため、被服等の取引にあたっては、識別力を有する商標に加えて、小さくこれを修飾等する文字が記載してあった場合に、これに接した取引者、需要者は、識別力を有する商標部分に着目するものである。
ウ シビルスポーツが運営するインターネット上の店舗の画像(甲第14号証)には、「mikisportsは当社(メーカー)のオリジナル商品です」及び商品紹介の商品名には「mikisportsスポーツジップシャツ」の記載等があり、このように、シビルスポーツは、あえて「CLUB」の文字を排していることからも、「miKiSPORTS」の部分に識別力があることを自ら認識していることが推認される。
エ 引用商標は、前半部の「miKi」のうち「m」と「i」を小文字にする一方「K」を大文字にし、また、後半部の「HOUSE」を全て大文字として、全体の文字を一連同大に表し、これらをあたかも色鉛筆を曲げたようなイメージを主体とする丸みのある書体で統一された外観が得られるように表示したものである。
本件使用商標も、「miKi」を引用商標と同じ方法で大文字小文字の混合により表し、また「SPORTS」を引用商標の後半部と同じ方法全て大文字として、全体の文字を一連同大に表し、これらをあたかも色鉛筆を曲げたようなイメージを主体とする丸みのある書体で統一された外観が得られるように表示したものであって、両者は外観的に一見紛らわしい上、その構成で軌を一にするものである。
また、引用商標と本件使用商標の「miKiSPORTS」の文字部分は、その構成中最も看者の注意を惹く「miKi」の文字部分を同じくし、それぞれ「HOUSE」と「SPORTS」の文字部分において相違するものであるが、「HOUSE」の語は、商品の販売場所を表す語として把握、認識される場合が多い語であり、また、「SPORTS」の語も、被服等を取り扱う業界において「運動に適したもの」を表示する語として「○○○SPORTS」のように使用されることが多く、自他商品の識別機能の弱いものとして認識されているから、両商標が同一又は類似の商品に使用した場合、その書体の特徴的表現方法も相俟って、これに接する取引者、需要者は、同じ態様で表示されている「miKi」の文字部分に着目し、周知商標である引用商標に係るもの、又は同種の商品であるかのように認識し、請求人又は請求人と何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように、商品の出所について混同を生ずるというべきである。
オ 本件使用商標に類似する「miKiSPORTS」と引用商標との出所の混同については、甲3判決及び甲4ないし6審決で認定されている。
カ さらに、請求人は、「miKiHOUSE SPORTS CLUB(ミキハウススポーツクラブ)」を設立し、スポーツ支援を行っている(甲第15号証)。
シビルスポーツの販売に係る使用商品Aのタグには、「この製品はmiKiSPORTS CLUBとのライセンス契約により製作されました。」との表示があり(甲第11号証)、請求人の上記スポーツクラブの存在から、使用商標3を使用した商品に接する取引者、需要者は、上記タグの表示及び大文字小文字の混合により一連同大に表し、これらをあたかも色鉛筆を曲げたようなイメージを主体とする丸みのある書体で統一された外観が得られるように表示した引用商標と混同を生ずるおそれのある使用商標3から、請求人の上記スポーツクラブとライセンス契約をした商品であるかのように認識し、請求人又は請求人と何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように、商品の出所について混同を生ずるというべきである。
キ シビルスポーツが運営するインターネット上の店舗の画像(甲第14号証)は、平成20年2月13日以前の画像であるが、シビルスポーツは、平成20年2月14日正午頃にインターネット上の店舗の画像を変更し(甲第17号証の1)、当該店舗にて、使用商標5の使用を中止している(甲第17号証の2)。また、それまで使用していた使用商標2及び3を付したタグ(甲第11号証)並びに使用商標4を付したプラスチック製包装用袋(甲第13号証)の使用を中止している(甲第39号証)。
これは、請求人が、被請求人の有する登録第4722991号商標につき、商標法第50条に基づく審判を請求(取消2008-300146、甲第18号証)したことをシビルスポーツが知り、本件商標について、請求人が本件審判の請求をすることをおそれ、自らの不正使用の事実を隠蔽しようとしたためであると推認される。
また、シビルスポーツが販売するズボン(甲第39号証)は、当該変更後に販売されたものである。当該ズボンの前部左ポケット付近には、当初「miKiSPORTS」を大きく表し、「CLUB」の文字を「miKiSPORTS」と比して意図的に小さく表示したネームタグが縫いつけられていたことは明らかであるが(甲第14号証)、当該インターネット上の店舗の画像変更後では、このネームタグが除去されたものとなっている(甲第17号証の2、甲第39号証)。この事実は、当該ズボンの前部左ポケット付近にある痕跡(縫い跡)からも明らかである。また、当該ズボンには表面が白紙となっているタグ(甲第16号証)が取り付けられているが、これについても当該変更前には、使用商標1を付したタグ(甲第11号証)と基本構成を同じにするタグが取り付けられていたと推認され、本件商標について、請求人が本件審判の請求をすることをおそれ、自らの不正使用の事実を隠蔽しようとしたためであると推認される。
これらのことからも、シビルスポーツは、自らの登録商標に類似する商標の使用が、請求人の業務に係る商品と混同を生ずる行為であることを自覚していたと考えられる。
ク 以上から、シビルスポーツの登録商標に類似する商標の使用により、他人の業務に係る商品と混同を生じているものである。
(6)商標権者の善意及び監督義務
商標権者は、シビルスポーツの代表者であり、使用各商標が登録商標に類似する商標の使用である事実を認識していたことは、当然に推認でき、また、シビルスポーツの本件使用商標の使用につき、むしろ積極的に荷担していたことも当然に推認されるものである。
(7)商標法第53条第3項で準用する同法第52条(除斥期間)
前記(4)で示した使用商品は、全て2004年5月以降に、シビルスポーツにより販売等されていたものである。
よって、シビルスポーツの本件使用商標の使用の事実がなくなった日から5年は経過していない。
(8)むすび
以上の事実から、本件商標に係る商標権の通常使用権者であるシビルスポーツは、指定商品について、本件商標に類似する商標を使用し、他人(請求人)の業務に係る商品と混同を生ずる行為をしたことは明白である。
したがって、本件商標の登録は、商標法第53条第1項の規定により取り消されるべきものである。
2 答弁に対する弁駁
(1)引用商標の周知性について
ア 被請求人は、引用商標の周知性について、請求人が主張する「あたかも色鉛筆を曲げたようなイメージを主体とする丸みのある書体で・・・表した特異な態様」として引用商標が周知性を獲得していることを否定しているが、これらは全て失当である。
引用商標のその特殊な態様において周知性を獲得していることは、既に述べたとおり、甲3判決及び甲4ないし6審決においても、「昭和61年には周知であった」と認定された。
さらに、請求人の登録第1729750号商標(甲第2号証)について防護標章登録が認められている(甲第40号証)。このことからも、引用商標がその態様において周知性を獲得していたことは明確である。
イ 被請求人は、引用商標の使用態様として、乙第13号証及び乙第14号証を示す。
乙第13号証の被服は、商品の識別標識としての商標の使用である「えり部分のラベル」には、赤色で引用商標が表示されている。
そもそも、一般に、被服の表面、胸部中央のほとんど全面にわたり、大きく、複数の色で彩色を施した図柄は、その表現された商品の購買意欲を喚起させることを目的として表示されているものであり、その性質からいって商品の識別標識としての商標は、えり吊りネーム、吊り札、包装袋等に表示されるのが通常である(昭和49年(ワ)第393号大阪地方裁判所昭和51年2月24日判決)。
したがって、乙第13号証からも明らかなように請求人は、一貫して引用商標を商標として使用しているものである。
また、乙第14号証は、請求人のホームページの表示の一部のみを印刷しているものである。実際の乙第14号証のホームページの該当ページ全体は、いずれも上部に引用商標が表示されているものである(甲第41号証)。
ウ 請求人は、商品コンセプトに応じて数種類のブランドを展開していることは事実である(甲第41号証及び甲第42号証)。しかし、これらは、いわゆるペットマークであり、引用商標がそのハウスマークである。これは、請求人の会社案内やその中に掲載されている請求人の本社に掲げる表示(甲第42号証及び甲第43号証)をみても明らかである。
(2)本件使用商標と引用商標の類似性について
ア 本件使用商標の中でも特に請求人が混同を生ずるものと考えている使用は、白色の下地に赤文字を使用した使用商標4及び5である。
被請求人は、これら使用の事実を認めているにもかかわらず、これに対する明確な反論を行わないで、請求人が主張していない別の商品に付したゴシック体での商標の使用についての正当性を述べることに終始している。
商標の「使用」とは、単に商品自体に標章を付して販売する行為のみではない。商品の包装や広告、インターネット販売の際の商品掲載頁に標章を付する行為も商標の「使用」である。特に包装、広告については、使用商標4及び5が使用されており、これは赤と白とのコントラストのある表示態様であり、このコントラストのある使用は、甲3判決においても出所の混同が認められたものであるため、被請求人が反論することができないものである。
被請求人がシビルスポーツの基本的な使用態様と主張する乙第3号証の添付資料[6](審決注:[6]は丸付き数字の「6」。以下、丸付き数字を[]で表す。)のズボン及び[7]の水着と思われる商品を販売しているインターネット画像(甲第44号証)においても、使用商標5が使用されている。使用商標5は、甲第14号証(4頁)に記載されている商品一覧中、「mikisports○○○○」と記載された商品のうち、実際に販売されていた商品の全ての販売画像で使用されていたものであり、これが、シビルスポーツの広告等についての基本的使用態様であったことは明らかである(甲第45号証)。
また、被請求人は、使用商標4及び5が基本的な使用態様ではなく、すでにこれらの使用を中止しているかのように主張するが、シビルスポーツは、使用商標4及び5と全く同一の赤文字の標章について、本件審判の請求後に出願しており(商願2008-22770、甲第47号証)、今後も使用の意図が窺え、この点でも被請求人の主張に矛盾がある。
イ 本件商標は、「MIKI SPORTS CLUB」の標準文字からなり、「MIKI」、「SPORTS」及び「CLUB」の各文字の間に1文字分の空白部分が設けられているところ、本件使用商標は、「miKiSPORTS」と一連で表示され、さらに「CLUB」の文字を「miKiSPORTS」の文字部分に比して極めて小さく表示されている。デザイン上の観点から「miKi」と「SPORTS」の間の間隔を省いたという被請求人の主張は、需要者に誤認、混同させようとの意図の下に「miKi」と「SPORTS」の間の間隔を省いたということを被請求人自身が自白しているものということができる。
ウ 被請求人は、「この製品はMIKISPORTS CLUBとのライセンス契約により作製されました」とするタグの表示を正しいライセンス表示だと主張するが、「MIKI」と「SPORTS」を一連に表し、「CLUB」のみを分離して小さく表示した使用商標3で表示することに正当な理由は見いだせず、後述するようにこの点でも引用商標との混同を生ずるものである。
エ 被請求人は、乙第7号証ないし乙第12号証を提出し、本件使用商標の使用は、引用商標を付した商品と誤認あるいは混同を生ずることはない旨主張するが、その登録例等はいずれも本件と事案を異にするものであって、本件の判断を左右するものではないから、この点に関する被請求人の主張は採用の限りでない。
オ 被請求人は、引用商標における書体を一般的な書体である旨主張し、さらに、小文字と大文字の混合で表した引用商標の表現もよくある表示法であると主張する。
しかし、先に述べた書体における創作性と文字の配列の選択性を組み合わせた「miKi」は、引用商標の特別な表現であり、本件使用商標の「miKi」部分は、引用商標の「miKi」部分をそっくりそのまま模倣したものとしか考えられない。
乙第9号証ないし乙第11号証においても、単に丸文字で表されたものや小文字と大文字の組合せで表現したものはあっても、引用商標と同一の表現で表されたものは存在しない。
また、乙第12号証は、本件とは根本的に事案を異にするものであり、その出願の態様のほか指定商品との関係も不明であり、これも本件で採用することはできない。
なお、被請求人は、本件使用商標の使用が、刺繍で丸文字を表す場合に適していると主張するが、シビルスポーツが実際に刺繍に使用しているのはゴシック体の文字のみであり、本件使用商標は、刺繍とは何ら関係のない使用態様である。
甲3判決においては、被告の使用態様「miKiSPORTS」が「商標法1条所定の目的に反するものである」と「商標法」の法目的に反することを明確に判示している。これは、当該特別の書体で表された商標「miKiSPORTS」は、その商標を被服等に使用することにより引用商標との関係で出所の混同を生じ、引用商標を使用する請求人の業務上の信用及び需要者の利益を害するものであることを判断しているものである。したがって、当該商標「miKiSPORTS」と同様の本件使用商標は、商標法の法目的に反するものであり、引用商標の出所表示機能を害するものであるから、結果、引用商標と類似するものである。
また、請求人は、引用商標を特に「赤色」で使用すること、もしくは「赤色の下地に白色」で使用することが多く、これがメインの使用である(甲第42号証及び甲第43号証)。使用商標4及び5は、赤白のコントラストの使用であり、甲3判決においても認められたコントラストのある使用態様である。
これらを鑑みれば、商標の本来の機能である出所表示機能が害されるものである以上、本件使用商標と引用商標が類似することは当然である。
カ 被請求人は、本件使用商標と引用商標は、その外観、称呼及び観念において非類似であるため、両商標は非類似である旨を主張する。
しかし、これら外観、称呼及び観念に基づいての類否判断は、商標の類否においての一つの判断基準であって、商標の本来の機能である自他商品等識別機能を害するか否かの判断をするに際しての基準の全てではない。
被請求人は、商標の類否判断法則を示す判決例として乙第4号証及び乙第5号証を提出する。当該判決は「被服」等の取引における判断がされたものではなく、その商標に係る「商品の取引の実情」を考慮したものであるから、この判決における商標自体の類否をそのまま本件と直接結びつけて考えることはできない。
また、被請求人は、商標の類否判断法則を示す審決例として乙第6号証を提出する。しかし、この審決は、商標の類否判断において、当該事案で相違する「GRAND」の文字がその指定商品「菓子及びパン」の取引において、商品の品質を表すものとして認められないことから、結果として非類似である旨の審決がされたものであり、外観上一体的に構成されてなる商標の全てについて判断したものではない。
(3)出所の混同について
ア 被請求人は出所の混同についての主張において、乙第15号証ないし乙第19号証を提出する。
乙第15号証における広義の混同については、シビルスポーツが本件使用商標を被服に使用した場合の出所の混同について参酌されるべきものである。また、乙第16号証及び乙第17号証については、20年以上前の事件であり、本件とは当事者、事案も相違する。さらに、「洋酒」の取引の実情に基づいたものであり、これをそのまま「被服」等の取引に参酌することはできない。乙第18号証における流通経路の相違については、後述するように、本件は流通経路が重複しているものであり、本件において参酌の余地はない。乙第19号証は、「うどん(カップうどん)」の取引の実情を具体的に考慮してなされているものであって、本件に直接結びつけることはできない。
本件使用商標と引用商標が混同を生じる可能性は、本件使用商標の「miKi」部分が引用商標のそれと区別がつかないほど酷似していることに加え、本件使用商標においての「SPORTS」の語についても請求人と結びつく根拠があり、さらに、その「SPORTS」の文字も前半部と同様の表現がとられていることにより、これらの組合せ及び表現方法によって、引用商標との混同の可能性が生じるのである。また、前述のように「CLUB」の文字が非常に小さく表示されていることがあっても、その判断に変わりはない。
したがって、本件使用商標を使用した商品の取引において、その取引にあたる需要者は請求人又は請求人と何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのようにその商品の出所について混同を生ずるものである。
イ 販売する商品について
被請求人は、販売する商品について「全量が婦人用スポーツウェアで、子供服ではない」旨を主張する。
しかし、本件審判と当事者を同じくする不使用取消審判事件(取消2008-300146)において、被請求人が本件通常使用権者の登録商標の使用の証拠として提出した被服は、襟元及び吊り札に「110」と子供服のサイズを表す表示があり、子供服である(甲第48号証)。また、吊り札には、シビルスポーツの名称及び「ミキスポーツクラブ」の標章が記載されている。
したがって、シビルスポーツは、子供服の販売も行っており、販売商品の全量が婦人用スポーツウェアと主張する被請求人の主張は失当である。
さらに、請求人は、大人向けの被服の販売も行っている(甲第49号証)。このことからも、請求人の商品とシビルスポーツの商品とが需要者を異にするものではないことは明らかである。
ウ 販売経路の同一性
被請求人は、シビルスポーツの販売する販売経路について「もっぱら日本生活協同組合連合会(以下「日生協」という。)参加の組合員向けの商品である。」、「日生協への販売である。」旨を主張する。
しかし、被請求人は、楽天市場での販売(甲第14号証)を自ら認めており、日生協のみに販売を行っているものではない。
また、請求人の商品は、日生協(甲第50号証)及び楽天市場(甲第8号証の2)でも実際に販売されているものである。
したがって、「両者の販売経路が相違する」との被請求人の主張は失当である。
被請求人は、引用商標との出所の混同によるトラブルや購入者からの苦情は一切なかった旨主張するが、取引者、需要者において、これらを請求人又はその関連会社の業務に係る商品と思いこんでいたものとも考えられ、出所の混同のおそれを否定する根拠とすることはできない。また、請求人は、実際にシビルスポーツの販売する商品について、請求人の販売する商品であるか否かを確認する内容の電話を需要者より受けている。
エ 需要者の同一性
被請求人は、シビルスポーツの商品の需要者が中年以上の女性に限られ、請求人の需要者が子供、乳児及び若い母親に限られる旨を主張するが、上記のように、シビルスポーツが子供服の販売を行っていることからもその需要者は同一性を有する。
また、被請求人は、シビルスポーツの婦人用スポーツウェアの需要者が、40歳以上の女性に限定されるように主張するが、シビルスポーツの楽天市場での販売(甲第14号証)における商品に対する感想のページでは、20?30歳代の需要者のコメントも多く確認できる(甲第51号証)。
したがって、請求人とシビルスポーツの販売する商品の需要者が異なるとする被請求人の主張は失当である。
オ まとめ
以上のとおり、シビルスポーツの商品が、請求人又は請求人と何らかの関係ある者によって販売されている商品であるかのように、商品の品質についての誤認、出所の混同を生じさせるおそれのあることは明らかであり、よって、両者は類似するものである。
(4)その他
ア ホームページ、ネームタグの修正
被請求人は、タグ、包装の変更、インターネット上の店舗の表示などは、商品の移行やシーズンの変化に伴い、日常的に変更されているのであって、販売対象、販売時期、デザインの変更など、時折変更されることが当然であり、請求人からの審判請求の予測などありえない旨主張する。
しかし、すでに商品に縫いつけられている織りネームを販売されていた商品から、わざわざを取り外すなどという行為は、極めて不自然である。また、「miKiSPORTS」の表示をやめることにシーズン等の切り替えなど関係はなく、この表示のネームを縫い糸をほどいてまで取り外すことに不正行為の隠蔽以外の意味は見いだせない(甲第39号証)。
なお、被請求人は、本件使用商標の一部につき現在使用していない旨主張するが、仮に現在使用していないからといって、本件の判断に影響を及ぼすものとは認められない。
イ 本件審判の請求の目的、背景について
被請求人は、本件審判の請求の目的が、請求人が単に小売等役務商標の取得を目的とするものであり不当性が伺える旨主張する。
しかし、甲3判決及び甲4ないし6審決における訴えの提起及び審判請求の原因は、引用商標に類似する商標「miKiSPORTS」が使用された被服等を購入した需要者から、引用商標と混同して購入したとの苦情が多数寄せられたためであり、また、近年同様の商品(甲第34号証ないし甲第36号証等)が市場に流通している情報が寄せられた。これら商品と請求人の商品とが販売されている店舗等が共通するため(甲第8号証の2及び甲第50号証)、このままでは、以前のように請求人及び需要者に不利益が生じると判断し、本件審判の請求を行ったものである。
(5)むすび
以上のとおり、被請求人の主張はいずれも失当である。

第3 被請求人の答弁の要点
被請求人は、「本件審判は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。」との審決を求めると答弁し、その理由を次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第27号証を提出した。
1 第1答弁
(1)請求の理由における請求人の主張及び証拠に対する認否
ア 「(1)引用商標」に関する主張は認める。ただし、請求人の使用する商標は、引用商標に限られるものではない。
イ 「(2)引用商標を付した請求人の業務に係る商品及び引用商標の周知性」において、「ミキハウス」と特定される引用商標が子供服、ベビー服に関して使用されていること及び周知であることは認める。その余については不知。
ウ 「(3)被請求人の通常使用権者の存在」は認める。
エ 「(4)シビルスポーツによる本件商標の使用態様」において、甲第34号証ないし甲第38号証に示す使用態様がシビルスポーツの使用であることは認める。ただし、提示された使用態様が、基本的な使用態様というものではなく、被請求人が使用する多数のラベル中の一部ラベルのみに関するもの、現在は使用されていないものも含まれている。
オ 「(5)シビルスポーツの登録商標に類似する商標の使用による他人の業務に係る商品との混同」は否認する。ただし、引用商標の使用に関する主張は、これが全てであること、基本的態様であることの主張を除きこれを認める。
カ 「(6)商標権者の善意及び監督義務」において、商標権者に監督義務があることは認める(「積極的に加担」なる表現は不適切であり認めるものではない。)。
キ 「(7)商標法第53条第3項で準用する同法第52条(除斥期間)」は認める。
ク 請求人の各証拠について
甲第1号証ないし甲第6号証の成立は認める。ただし、甲第3号証ないし甲第6号証は、本件とは事例を異にするものであり、本件において参酌される事案ではない。
甲第7号証ないし甲第39号証の成立は認める。ただし、これを基礎とする請求人の主張を認めるものではない。
(2)請求人の主張に対する反論
ア 引用商標の使用態様1ないし10(甲第19号証ないし甲第28号証)について
これらは商品タグ、包装用袋のみであって、これらが使用された商品、全体的な商品等表示を示す資料は全く提出されていないし、また、引用商標の使用された商品の具体的な内容、表示態様、商品流通の実態は示されていない。
請求人の「ミキハウス」、「MIKIHOUSE」が、子供服、ベビー服の商標として広く認識されていることは認められるが、これら商標が子供服、ベビー服の商標であることに言及していない。提出された資料は、未使用であるか使用されたものであるかも不明な単なる商品タグ、包装用袋にすぎない。
甲第29号証ないし甲第33号証、乙第13号証及び乙第14号証に示される商品全体、商品に付された引用商標の具体的な使用態様をみると、これがシビルスポーツの使用により出所混同するものではないことが明瞭に印象づけられる。
イ 引用商標の使用態様11ないし15(甲第29号証ないし甲第33号証)について
(ア)引用商標の具体的な使用態様、実際の商品を具体的に示している証拠資料は、甲第29号証ないし甲第33号証のみである。これらについても、商品の詳細が完全に明示されているものでないが、これらの商品に施された図柄などからみて、いずれも子供用の商品と想定される。これらの商品は、タグのみではなく、商品の目立つ部分に引用商標が表示され、一見して請求人の商品であることが判る。請求人は、タグなどを示すのみであるが、具体的な商品の全体(不正競争防止法の適用において、不正競争行為か否かを判断すための商品等表示の全体)をみれば、両者の間で、出所混同が生じないことが明白であるためか、請求人は、引用商標の使用の実態を具体的に提示していない。
(イ)引用商標の使用態様は、請求人主張に係る丸文字風のもののみではなく、変化し、その態様も多種多様である(乙第13号証及び乙第14号証)。シビルスポーツの使用が多種多様にわたると同様、引用商標も多様な態様で使用されていて、固定的、統一的なものではない。また、引用商標が周知となっているものではなく、「ミキハウス」「MIKIHOUSE」という言い方で周知されているのである。
ウ 本件使用商標(甲第11号証ないし甲第17号証の2)について
(ア)シビルスポーツは、本件使用商標を基本的に「MIKI SPORTS CLUB」、「MIKISPORTS CLUB」と表示している。商品自体に刺繍する場合は、基本的に「MIKI SPORTS CLUB」、「MIKISPORTS CLUB」と表示しており、これが基本的な使用の態様である(乙第3号証の添付資料[4]ないし[11])。
甲第11号証ないし甲第17号証の2の態様は、スペースに制約のあるラベル、タグなどについてのみ、二段に表し、あるいは既に使用をやめた態様のものである。しかしながら、これら各態様とも、引用商標と類似するものではなく、混同を生じるものではない。
(イ)使用商標3は、横一列に表された「MIKI SPORTS CLUB」からなるものであって、一体的に表され、本件商標と同一商標の使用である。「CLUB」の文字のみ小さく表されている態様であるが、実質的に同一の商標の使用にほかならない。
(ウ)使用商標1、2及び5は、「MIKI SPORTS CLUB」について、「CLUB」の文字を下段に、小さく表した態様であるが、全体が長いので、読みやすくするため、本件商標を二段に表した表示であるにすぎず、これに接する取引者、需要者は、上記と同様に「MIKI SPORTS CLUB」として理解するものであり、上記表示は、引用商標と類似させるための変化ではないし、かかる変化により引用商標と混同するおそれがあるものでもない。
エ 「MIKI SPORTS CLUB」、「MIKISPORTS」と「MIKIHOUSE」との相違、非類似について
(ア)請求人は、本件使用商標について、「CLUB」の語は自他商品識別機能が弱いものであるから、取引者、需要者は「MIKI SPORTS」(「mik(K)iSPORTS」)の部分に着目する、シビルスポーツは、「MIKI SPORTS」(「mik(K)iSPORTS」)の部分に識別力があることを自ら認識していることが推認されるとして、これと引用商標を比較し、「MIKI」(「mik(K)i」)が共通するので、外観的に紛らわしく、その構成で軌を一にすると主張する。
しかし、本件使用商標、引用商標は、いずれもその全体で一個の商標を構成してなるところ、後半部の5文字が、相違し、その過半が全く相違するのである。
小文字、大文字の混在についても、商標のデザインではよくある表現であり、その丸文字風の書体も一般的で、請求人の商標として印象づけられているものではない。引用商標は、「ミキハウス」として知られているのであって、その部分の外形まで明確に認識されているものでもない。そもそも、刺繍で表現するときは丸文字風に表示するのが自然で9文字中、連続する後半の5文字を相違してなる両商標が外観上、類似するものでないことは明白である。
請求人は、「MIKI」(miki)の文字部分について、「あたかも色鉛筆を曲げたようなイメージ」なる言い方を強調するが、丸みをもった文字体は通常の表示にすぎない(乙第3号証添付資料[2])。ブランドを商品に刺繍で表示するときは丸文字風に表現される。
また、「MIKI」(miki)を小文字と大文字の混合で表す表現についても引用商標独特というものではない。刺繍で表すには丸文字が適し、丸文字で表すときは「mik」と丸みを帯びた小文字が適し、それを大きく表すものである。上下の空間をなくすために「K」は小文字ではではなく大文字にしたにすぎない。この種レタリングにおいてよくある表示法にすぎない。
乙第3号証の添付資料[4]ないし[11]の実際の使用態様の刺繍したロゴをみれば、かかる表示が自然、容易であることが判る。また、「MIKI」(miki)の表示のみが強く印象づけられたり、混同の原因となるというものではないことも判る。
さらに、そもそも乙第13号証及び乙第14号証で示すとおり、引用商標の表示態様も一定ではなく、数通りの表現がある。商品に表されている書体はむしろ角ばったカラフルな文字で知られているところで、丸文字「miKi・・・」の構成態様、外観が有名というものではない。
(イ)請求人は、「HOUSE」の語は商品の販売場所、「SPORTS」は運動に適したものを表示するにすぎないから、「MIKI」の文字部分に着目し、周知商標である引用商標に係るもの又は同種の商品であるかのように認識する旨主張する。
しかし、引用商標は、「MIKIHOUSE」「ミキハウス」として周知なのであって、「mik(K)i」の文字外形の部分のみ、あるいは「ミキ」の発音のみで周知なのではない。また、引用商標が「ミキ」と略称され、請求人のいう「mik(K)i」の外形のみで、使用されたり周知されているものではない。そもそも、「ミキ」「MIKI」は、姓、名前、地名の表音であって、自他商品・役務識別力がなく、かかる識別力のない部分のみで略称されたり、特定され得るものではない。
(ウ)請求人は、何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように、商品の出所について混同を生ずるものである旨主張するが、商標が明らかに相違する本件にあって、何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように混同されるおそれは全くない。
請求人は、引用商標に関する商品等表示の全体について、主張、立証していないが、後述のとおり、両者の商品の種類、需要者層、商標の表示態様、商品、ロゴのコンセプト、商品の流通経路など、著しく相違するものであり、両者の商品の出所について混同が生じるおそれはない。
オ 甲3判決及び甲4ないし6審決について
甲3判決は、被請求人を当事者とするものではないし、また、現在の市場を反映したものでもない、10数年以上前に判断された民事訴訟における事案である。民事訴訟では、弁論主義の原則により、両当事者より提出された攻撃、防御方法を基礎に当該事件限りの相対的解決を図るものであり、その判断も職権探知主義による審決取消訴訟などの行政訴訟におけるように一般化されうるものではない。対象とされた使用商標の構成、全体的な表示態様など、本件とは、事情を相違する事案である。甲4ないし6審決についても甲3判決に導かれての当然の帰結であって本件に当てはまるものではない。
カ 「MIKIHOUSE SPORTS CLUB(ミキハウススポーツクラブ)」について
「MIKIHOUSE」「ミキハウス」が有名なことは認められるが、上記スポーツクラブ名称は有名ではない。そもそも、一企業の運動クラブの名前であり、自他商品の識別標識として機能する表示ではない。上記スポーツクラブについては、その設立時期や活動の内容も不明であり、本件使用商標の使用より後に係るものとも想定されるが、その所属クラブ名は知られていない。この名前と本件使用商標との混同など全く問題とならない。例えば、請求人所属の選手を紹介するにも「ミキハウス」として紹介され、「ミキハウススポーツクラブ」とは紹介されていない(乙第21号証及び乙第22号証)。マスコミでも、報道されない。
キ 使用権の表示について
(ア)請求人は、「この製品はMIKISPORTS CLUBとのライセンス契約により製作されました」(甲第11号証)という表示を不正使用と主張する。これが上記「ミキハウススポーツクラブ」とライセンス契約をした商品であるかのように認識し、商品の出所について、混同を生じるというが、そもそも、MIKIHOUSE SPORTS CLUBからの許諾と記載しているものではないし、そのように誤解されるおそれなど全くない文章である。
企業のスポーツクラブの名前は、当該企業名、ブランドを含むので他社にライセンスすることなど想定できないしライセンスした例もない。この表示が、請求人の運動クラブからのライセンスを得ていることの表示のように誤解されるという請求人の主張は根本的に誤っている。
商品の取引者、需要者が請求人の企業内運動クラブからライセンスを受けて使用している商品のように誤解して商品を購入することなどありえない。
(イ)シビルスポーツが「この製品はMIKISPORTS CLUBとのライセンス契約により製作されました」という表示を行っているのは、当初、同社が、商標権者である有限会社キタムラよりライセンスを受けていたので、これを表示し、その後も、商標権が、現在の権利者に移り、それからのライセンスとして継続しているので、引き続き、そこからのライセンスによる使用であることを示す表示である。
商標「MIKISPORTS CLUB」の所有者からのライセンスを受けていることを示すための正しい表示であり、何ら問題はない。この表示が、請求人の運動クラブ、あるいは同社からのライセンスと誤解されるおそれなど全くない。
ク ネームタグ、ホームページの修正
請求人は、タグ、プラスチック製包装用袋、インターネット上の店舗の画像の変更などについて、自らの不正使用の事実を隠蔽しようとしたためであると推認されると主張する。
商品タグ、包装の変更、インターネット上の店舗の表示などは、商品の移行やシーズンの変化に伴い、日常的に変更されているのであって、販売対象、販売時期、デザインの変更など、時折変更されることが当然である。請求人からの審判請求の予測などありえない。表示の変更、再度の使用は当然のことで、おそらく請求人側においても同様であって、永久に同じデザインを使用するものではない。シビルスポーツの商標の表示について、指摘された変更前、変更後の使用、表示態様とも適正で、請求人の商品と混同を生じるものではない。
(3)本件商標の採択について
本件商標は、被請求人の長女「美紀」の名前にちなんだスポーツウエア、という自然、単純な発想に由来するものである(乙第3号証添付資料[1])。この「ミキ」とスポーツウエアの「スポーツ」からなる商標を採用したのである。
このため、本件商標について以前から、有限会社キタムラより使用の許諾を受けて、シビルスポーツが使用し、その後、被請求人がこれを譲り受けたものである。
また、シビルスポーツは、登録第2659218号商標を300万円で購入して、「MIKI SPORTS CLUB」及び「MIKI SPORTS」の商標権を獲得したものである。これらは、娘の名前「美紀」の「ミキ」、スポーツの「スポーツ」に由来するもので、三起商行の「ミキハウス」とは全く関係ない。
(4)本件使用商標と引用商標の非類似について
ア 外観、称呼、観念の相違
(ア)外観について
本件使用商標と引用商標の外観について比較すると、前述のとおり、本件使用商標と引用商標とは構成各文字、構成文字数の基本において相違し、また、後半部の各文字が相違し、文字の表現法も相違するものであって、これらがその外観構成において顕著に区別しうる非類似の商標であることは明白である。
請求人のいう「miKi」の書体、文字の共通にしても、刺繍による丸文字の表現は自然でシビルスポーツの実際の使用態様(乙第3号証添付資料[4]ないし[11])と、引用商標の使用態様(乙第13号証及び乙第14号証)についてみれば、両者の表示態様は相違し、現実の市場において、混同するものではないことが明らかである。
混同を生じたか否かは、実際の使用態様を基礎に判断すべきものであり、この場合、当該部分の外観のみが抽出、強調されるものではない。文字の表示の相違があり、両者は容易に区別される。これらが、共通する印象を与える側面はない。
そもそも引用商標の書体も統一されているものではない。変化があり、その外観に固定的観念を有するというものでもない。さらに、両者は、全体としての相違もあり、その外観上の相違は明らかである。
(イ)称呼について
(a)本件使用商標からは、「ミキスポーツクラブ」の称呼を生じるところ、引用商標からは「ミキハウス」の称呼が生ずる。
よって、両商標は、後半部の構成各音において顕著に相違する称呼上非類似の商標であることが明らかである。
(b)請求人は、本件使用商標、引用商標について、「HOUSE」は商品の販売場所、「SPORTS」はスポーツに適するものとして、自他商品識別力がない要素として、両者は、「MIKI」(miki)のみでも特定され「ミキ」の称呼が共通すると主張するが、本件使用商標は、いずれもまとまった態様で一体的に表示されてなるものであって、これが全体で一個の商標を構成することはその構成外観上明らかである。
他方、引用商標についても、「MIKIHOUSE」(「mikihouse」)を一連に、同一書体、同一の大きさ、同一文字で一体的に表示したものである。これに接する取引者、需要者は、常にその全体で一個の商標と認識、記憶し、その全体を不可分に理解するものである。したがって、引用商標は、「ミキハウス」と称呼され、単なる「ミキ」の称呼をも生じたり、「ミキ」のみで略称されうるものではなく、両者の称呼上の相違は明瞭である。
いかに、現実の取引市場における取引が簡易、迅速を旨とするといっても、音数が短く全体としての発音も自然な本件使用商標、引用商標を「ミキ」のみで略称することはありえず、本件使用商標と引用商標とは、その後半部分の構成音が相違する称呼上非類似の商標であることは明白である。
(c)「MIKI」(miki)は、強い自他商品識別力を有する要素ではない点
請求人は、本件使用商標と引用商標は、「MIKI」(miki)を共通にすると主張する。
しかしながら、「MIKI」(miki)の発音は、日本語の「三木」の発音を表示したものであって、一般的な姓の発音を表したものであるにすぎない。「三木」の姓は、かつての三木武夫首相や、俳優の三木のり平、三木鶏朗の姓、歌手の中曽根美樹、美樹克彦、女優の3条美紀、最近でも、歌手の今井美樹、スケートの安藤美姫など、「MIKI」は、単なる姓、名前の表音にすぎない。社名、ブランドとしても、例えば、アパレルで有名な株式会社美貴、メガネのパリミキ、無段変速機のミキプーリー、食品のミキプルーンなどの有名企業名の一部である。兵庫県には三木市という地名もあり、「ミキ」、「MIKI」が請求人の独占ではなく、これらの発音を表した「MIKI」(miki)は一般的な用語の共通であるにすぎず、自他商品・役務識別力を発揮する要素ではない(乙第12号証)。
よって、本件使用商標と引用商標は、その全体で始めて自他商品・役務識別力を発揮しうる標章であり、自他商品識別力がない「ミキ」、「MIKI」の部分のみで略称されるものではなく、明白に区別しうる非類似商標である。
(ウ)観念について
本件使用商標と引用商標は、いずれも一体的な商標と理解され、その意味が共通するものではなく、観念上相違することも明白である。
イ 商標の類否判断法則を示す判決
商標の類否判断について、小僧寿し事件における最高裁判所の判決(乙第4号証)、氷山事件における最高裁判所の判決(乙第5号証)が示すように、引用商標は、有名であるがゆえに、明確に「ミキハウス」と正確に発音、特定されるのであって「ミキ」のみでは特定されない。
商標の類似は、外観、称呼、観念を基礎に取引社会の実情に照らし、出所混同を生じるか否かにより判断されるものであって、「○○スポーツ」の称呼と「○○ハウス」の称呼を非類似とする判断傾向、判断基準が確立している(乙第7号証)。
これら判決、審決、審査における判断基準に沿えば、さらに、「CLUB」の加わった本件使用商標と引用商標が非類似と判断されるべきことは当然である。
ウ 商標の類否判断法則を示す審決例
結合商標類否判断において、外観構成上一体的に構成されてなる商標は一体不可分であって分離称呼されるものではないこと、内容に関係するとしても直接的な内容表示の用語ではない場合は、自他商品識別力を有し略称されないとする判断法則が審決においても確立しており、特に、一体に表示されてなる引用商標について、これを非類似とすべき判断法則、考え方が示されている(乙第6号証)。
エ 審査例
第25類(旧第17類)の商品分野において、「○○SPORTS(スポーツ)」と「○○HOUSE(ハウス)」からなる商標は、類似するものではないとして、別人に、並行して登録が認められている(乙第7号証)。
また、「MIKI」を含む商標は、被服の分野において、請求人とは別人に並行して登録が認められている(乙第8号証)。
(5)本件使用商標を使用した商品と請求人の商品との間で出所混同がない点
ア 商標の相違
前述のとおり、本件使用商標と引用商標とは、外観、称呼、観念のいずれにおいても相違する非類似の商標である。
イ 商品等表示、商品の内容、需要者の相違、商品流通経路の相違
(ア)シビルスポーツの商品の特徴、コンセプトについて(乙第3号証)
(a)商品、販売対象
全量が婦人用スポーツウエアで、子供服ではない。もっぱら日生協参加の組合員向けの商品である。
(b)販売経路
日生協への販売である。この取引においては、商標、ブランドの正当性、商品の品質、工場は当該販売にふさわしい生産工場であることが要求され、かかる基準、検査に合格している。他人の登録商標、有名な商標と紛らわしい表示ではないこともチェックされての取引となっている。
(c)商品の企画
40?50歳の女性のスポーツウエアが販売目標
(d)ロゴの使用方法
シャツ:胸にペガサス刺繍が主、パンツ:脇にペガサス刺繍が主でたまに同色のmikisportsclubの縦の脇刺繍であり、例えば、胸にmikisportsの大きなロゴを入れた商品はない。胸にデザインを表す場合も、小さな「ペザサス図形」を刺繍したものに止まり、文字、ブランドは入れない。
(イ)請求人の商品の特徴、コンセプトについて(乙第14号証等)。
(a)商品、販売対象
子供服、ベビー服として知られている。「ミキハウス」「MIKIHOUSE」といえば、子供服、ベビー服のブランドであり、被請求人の40?50歳対象の婦人のスポーツウエアとは全く相違する。
(b)販売経路
請求人の商品の販売経路は、[1]直営店、[2]フランチャイズチェーン、[3]その他の一流百貨店などである(甲第7号証)。上記被請求人の商品の販売経路とは全く相違する。
(c)企画のポイント
請求人の商品は、派手なコントラストの強い商品で、一見して「ミキハウス」とわかる色彩、ベネトンのようなコントラストの強いイメージである。
(d)ロゴの使用方法
請求人の商品では、「miKi HOUSE」のデザインが胸に大きく表されているイメージがある。
(ウ)上記(ア)及び(イ)のように、ブランド(商標)・需要者・使用目的の相違、商品の特色・色彩の相違、販売経路の相違など、両者の商品は、全く別であり、実際の市場で混同が生じたことはなく、そのおそれもない(狭義の混同)。経営の多角化、商品の多様化があるとしても、両者の商品の出所について、何らかの関係がある、関連会社であるかのごとく誤解されるおそれもない(広義の混同)。
(6)出所混同に関する判決、審決の判断法則
出所混同に関する最高裁平成10年(行ヒ)第85号判決(乙第15号証)により、出所混同とは、「当該商標をその指定商品に使用したときに、当該商品が他人の商品に係るものであると誤信されるおそれがある商標(狭義の混同)のみならず、当該他人が右他人との間にいわゆる親子会社や系列会社等の緊密な営業上の関係又は同一の表示により商品化事業を営むグループに属する関係にある営業主の業務に係る商品を含む(広義の混同)」ものと広く解されるべきことは、被請求人も認める。
しかし、本件については、本件使用商標を付した商品が請求人の商品と誤解される懸念は全くないし、その主体の関係について誤解させるおそれもない。上記の狭義の混同のみならず広義の混同もない。
また、「WHITE HORSE」「ホワイト・ホース」との混同が問題とされた「GOLDEN HORSE」「ゴールデン・ホース」の使用についての東京地裁、東京高裁の判決は、出所混同は生じないと判断している(乙第16号証及び乙第17号証)。
さらに、医療用医薬品と一般用医薬品の相違による流通経路などの相違を理由に、出所混同を生じないと判断した審決(乙第18号証)、一部要素、用語を共通にし、他の要素は識別力のない部分であるとしても、具体的に検討して、出所混同は生じないとして商標法第53条第1項の使用権者の不正使用に該当しないと判断した審決(乙第19号証)が存在する。
これらの判決例、審決例によって確立された判断基準、判断法則に沿って、本件についても、出所混同が生じないと判断されるべきである。
(7)本件審判の請求の目的、背景
請求人が商願2007-31589号(MIKISPORTS、第35類)の出願をしたところ、この出願について先登録商標3件が引用され、今回の審判請求に至っている(乙第20号証)。請求人は、ここで引用された各商標について、登録4722991号商標に対しては不使用取消審判を請求し、登録2659218号商標に対しては無効審判を請求した。すなわち、本件審判の請求の目的は、引用商標の保護、引用商標と本件使用商標との混同防止にあるのではなく、引用商標とは別の新たな小売等役務商標の登録取得が目的であって、この点からも本件使用商標と引用商標との出所混同をいう請求人の主張の不当性が伺える。
(8)むすび
以上のとおり、本件使用商標は、商標法第53条第1項に該当するものとして、その登録を取り消されるべきものではない。
2 第2答弁
はじめに、請求人提出の各証拠について、甲第40号証ないし甲第52号証の成立はこれを認める。ただし、これを基礎とする請求人の主張は、全て否認する。
(1)請求人主張の基本的不当性について
ア 本件商標と引用商標の乖離
請求人は、本件商標は、被請求人の本件使用商標と類似するとし、次に、本件使用商標が引用商標と混同すると主張する。しかし、本件商標が、「MIKI SPORTS CLUB」のみならず「MIKI SPORTS /CLUB」とも類似するのは、「ミキスポーツクラブ」の称呼が共通するからである。
そして、この「ミキスポーツクラブ」の称呼が生じる本件使用商標と、「ミキハウス」と称呼される引用商標とが混同するというのは、著しい構成音数、称呼の相違よりして、根本的に無理である。
イ 出所混同
本件使用商標と引用商標との間で、その商品、営業が実際に混同された事実、混同のおそれはなく、狭義の混同がないことは明白である。本件使用商標を付した商品が請求人の商品、その営業にかかる商品であるかのごとくに誤解された事実はないし、その可能性も想定されない。
次に、広義の混同は、特に、同一、類似する商標を商品の同一、類似性を超えて使用する場合に、系列会社等の緊密な営業上の関係又は同一の表示により商品化事業を営むグループに属する関係のごとく誤解されるような使用をも排除するものであるが、両者の商品等表示の全般的相違よりして、かかる広義の混同のおそれもありえない。
「混同」は、商品の出所を誤らせる行為である。不正競争防止法により排除される違法行為で、刑事罰も伴う。「混同」の概念は、不正競争防止法、商標法により多くの事案を通じ形成されてきた要件であって、単にその使用が望ましくない、不快である、面白くないといった一方の商標権者の観点での感覚的な概念というものではない。
(2)「miKi」部分の外観上の近似性から混同するとの主張に対する反論
ア 「miKi」の部分のみで要部となるものではない点
(ア)「miKi」の文字構成が近似するのは、丸文字という共通する表現法で同一文字を表わしたことによるもので、「ミキ...」 の発音が共通するのと同様に、「miKi」の文字の外観が近いというにすぎない。
丸文字風の表現についても、乙第9号証に示すように、同様の手法による丸文字風の商標が被服分野で多数登録され、乙第10号証、乙第11号証の用例のように、丸文字風の書体からなる商標が一般的に使用されているのであって、引用商標特有の特徴というものでもない。赤色についても、赤色は、最も目立つ色彩であって広告においては好んで用いられる色彩であるにすぎない。
被請求人は、これら主張に加え、インターネット検索エンジンGoogleで、「miKi」及び「服」の両用語を含む用例、上位30位までの抽出資料を提示する(乙第23号証)。この抽出例中、請求人以外の者による17件の「MIKI」「MIKI○○」が、「服」分野で使用されている用例が示されている。被服分野で「MIKI」「MIKI○○」が請求人の独占にかかるという事情はない。
同様に、各分野で「MIKI」を含む「MIKI」「MIKI○○」の用例、標章が多数主体により使用されている(乙第24号証)。
丸文字風書体、小文字「m」を大きく表わす標章の表現例も一般的であり、市場に多くみられる(乙第25号証)。
(イ)請求人主張のごとく、「miKi」の文字構成が近似する点のみを理由に、両商標を類似、混同可能性があるというためには、本件使用商標、引用商標が「miKi」の部分のみで特定される、すなわち、それ以外の要素は、自他商品・役務識別力を有するものではなく、「miKi」のみで要部とされる場合でなければならない。
仮に、引用商標、本件使用商標が、「miKi」の部分のみで特定、認識される可能性もあるといった場合には、「miKi」の文字の外観上の近似を理由に類似、混同ということになるとしても、引用商標は、市場において常に「ミキハウス」の称呼を生じ、しかも、その全体としての称呼「ミキハウス」、「MIKIHOUSE」の文字で有名になっているのであって、これが「ミキ」 のみで略称されるものではないし、「miKi」の文字のみで分離観察され、当該部分のみで、認識、記憶されるものではない。
同様に、本件使用商標についても、その全体構成よりして、これが「ミキ」のみで略称されたり、「miKi」印として分離して認識される事態は想定できない。
したがって、引用商標、本件使用商標について、その一部の外観、称呼が共通するといっても、両商標は、常にその全体で印象づけられ、一体不可分に認識されるのであって、引用商標と本件使用商標が類似し、混同するものではない。
(ウ)同一の外観構成を含めば直ちに類似し、混同するというのは、請求人独自の理論であって、多数の紛争や係争を通じ形成されてきた、市場における需要者、取引業者の率直な観念、印象を元に判断する混同の概念とは相容れない議論といわざるをえない。
重要な点は、共通する要素をもって、分離されて認識されうる可能性の有無であって、一体不可分の商標中に、発音上、外観上、一部共通する部分を含むとしても直ちに類似、混同するというものではないのである。
イ 引用商標の周知性の実質
(ア)引用商標の周知性の実体は、「MIKIHOUSE」の文字、「ミキハウス」の称呼であって、抽象的なものである。特定の外観構成が周知されているものではないし、当該構成の周知性について、請求人提出の証拠によって充分に立証されているというものでもない。引用商標として提示された形態を含む多種、多様、カラフルなイメージが有名であるというのが率直な実感である。
(イ)引用商標は、外国企業におけるような強固なブランド管理により統一的ロゴの使用継続というより、多種、多様、多彩に表現されている点に特色がある。
甲第42号証においても、「MIKIHOUSE/FIRST」など多彩な表現が示されている。
引用商標は、甲3判決にあるように商標自体コントラストがあり、多彩多色を用いた点に特色があるのであって、かかる「MIKIHOUSE」の文字、「ミキハウス」の称呼で有名なのである。請求人は多種、多様、多彩な表現で商標を大きく商品中に表す点に特色がある。
ウ 商品等表示、実際の使用例による明らかな相違
(ア)請求人は、引用商標と本件使用商標とを対比し、「miKi」の文字の物理的な近似を理由に混同のおそれがあると主張する。
しかし、商標は、自他商品・役務識別標識であって、「混同」の有無は、実際の市場における使用態様を基礎に、取引者、需要者が、両者を同一の商品、営業にかかる商品であるかのごとく誤認するおそれがあるかにより判断されるべきものである。
(イ)本件商標の市場における使用の実際、これが表示される商品の実際は、甲第14号証、甲第34号証、甲第35号証、甲第36号証、甲第39号証、乙第3号証添付資料[4]ないし[11]に示され、実際の広告については、甲第37号証、甲第38号証、甲第44号証及び甲第45号証に示されている。
他方、引用商標について実際の使用例は、甲第8号証の1、同2、乙第13号証、広告に関しては、乙第14号証、甲第41号証及び甲第42号証に示されており、これらの実際に使用されている事実を示す資料を基礎に市場で混同を生じるか否かが議論されるべきであって、両者の商標のみを抽象的に対比して、一部の近似を論じても意味はない。
(ウ)混同の有無は、上記各資料に示される実際の商品等表示を基礎に、混同を生じるおそれがあるか否かを判断すべきである。
ここにおいて、本件使用商標の表示態様、広告中をみると、本件使用商標と引用商標とは、被請求人の商品中に小さく、まとまって表されるその表示態様と請求人の商品の中心に大きく鮮やかに示される表示態様の相違、商品の種類、需要者層の顕著な相違、商品コンセプトの相違、特に、カラフルで色彩、コントラストが豊かな請求人の商品等表示と、地味な印象、傾向にある被請求人の商品等表示など、明らかに相違することが判る。
両者の商標について、各々の商品中、広告の全体中に表わされるその大きさ、表現法、全体構成中の商標の表示態様など明らかな相違がみられる。上記各資料について、一瞥するだけで、これが被請求人の商品に関するものであるか、請求人のものかが容易に区別できるほどに、両者の基調、全体的印象は顕著に相違する。
(エ)上記各証拠の実際の使用例をみれば判るように、市場の実際において、本件使用商標、引用商標が「MIKI」の部分のみで、分離して表示されたり、認識されるものではなく、いかに、「miKi」の文字が物理的に近いといっても、その全体構成の著しい相違よりして、両者を「混同」するものではないことが明らかである。
「miKi」の文字の外見上の近似は、同じ文字であるから当然であるし、赤色で表すことも、赤は、多数の色彩の中で最も目立つ色彩として多用されていることによるものであるにすぎない。顕著な特色というものではない。
オ 混同の判断(判例)
(ア)いわゆる「しょうざん事件」最高裁判所第二小法廷判決(昭和43年2月27日判決)は、「商標の類否は(一部略)、商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるか否かによって決すべきであるが、それにはそのような商品に使用された商標がその外観、観念、称呼等によって取引者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すべく、しかもその商品の取引の実情を明らかにしうるかぎり、その具体的な取引状況に基づいて判断するのを相当とする。」と判断し、かかる判断手法が商標の類否、混同の判断法則として確立している。
本件において、請求人は、不可欠に構成される外観、それも恣意的に分離した一部の近似を専ら強調して商標類似と主張するが、本件使用商標と引用商標との称呼上、観念上の顕著な相違に加え、一体不可分に構成される全体としての外観構成上の相違もあり、両者の非類似性、混同を生じないことは明らかである。
そして、取引の実情を示す、本件使用商標と引用商標の実際の使用例をみれば、市場における実際の取引の事情を示す具体的な状況において、被請求人の商品と請求人の商品、営業との間で、混同の事実、そのおそれが無いことは明らかである。
(イ)「マイクロダイエット」と「マイクロシルエット」について、要部観察に基づき類似と判断した平成15年10月5日東京高裁判決(平成15年(ネ)1430号)においては、「原告標章において自他商品識別力の中心となるのは「マイクロ」「MICRO」の部分であるというべきである」として、要部を抽出し、その共通性を理由に両者を類似と判断している。
(3)その他の請求人の主張に対する反論
ア 引用商標と本件使用商標の非類似、混同のおそれのないことについて
(ア)請求人は、引用商標と、特に、使用商標4及び5とが類似すると主張するが、この点の主張は認められない。
(イ)引用商標と「miki/SPORTS」を非類似とする審決
無効2008-890015の審決において、引用商標「miKiHOUSE」と「miKi/SPORTS」について、「本件商標(「miKi/SPORTS」)と引用商標とは、その外観、観念及び称呼から受ける印象・記憶・連想等を総合してみた場合、たとえ、これらを同ー又は類似の商品に使用しても、需要者が両商標を表示した商品をして、その出所を同じくするのであるかの如く誤認するとは認められないから、本件商標と引用商標とが類似する商標であると判断することはできない。」と正しく判断されている。
本件審判では、上記本件商標に、さらに、「CLUB」が付加されているのであって、本件使用商標と引用商標とは、その非類似性は、よりいっそう明確である。
(ウ)混同の事実の存在、証拠はない点
請求人は、需要者からの問い合わせの事実があったかのように主張するが、仮に、混同の事実があったとして、かかる事実の立証は極めて容易であるところ、何らの証拠も提出していない。請求人のかかる主張は認められない。
請求人は、被請求人の商品に子供用のものある、請求人の商品も大人を対象とするものもある、請求人の商品で日本生活協同組合で販売されるものもある、と各反論をするが、上記に示す両者の商品の基本的特徴を覆す程度のものではない。
一部例外的な事情の指摘をもって、上記各点の基本的な相違、基調の相違、特色の相違点が否定されるものではない。
イ 広告への使用について
請求人の広告例と被請求人の広告例をみれば、その全体としてのカラフルな色調の有無、取扱い商品の顕著な相違、コンセプトの相違、対象の相違、商標の表示方法の相違、商標の相違が具体的に示され、両者は、実際の市場において何ら粉らわしいものではないことが明らかである。甲各号証、乙各号証について、詳細にみるまでもなく、一見すれば、それらがいずれの広告であるかが判る程度に、両者の特徴の顕著な相違が示されている。
実際の取引界において、被請求人の広告が請求人の商品、営業と混同を生じるおそれのないことは、明らかである。
ウ 請求人提出の各証拠について
(ア)請求人提出に係る甲第44号証の各広告の全体をみても、「CIVIL SPORTS CO.,LTD.」の社名が大きく表され、商品傾向も明らかに相違し、特に、実際に広告で使用している商標は極めて小さく表示され、請求人の使用態様と相違し、かかる使用が混同を生じるものでないことは明白である。
(イ)甲第45号証についても、同様に、請求人の使用態様と相違し、これらの使用が混同を生じるものでないこと、外観上も明らかに相違する「miKiSPORTS/CLUB」が使用されていることも示されている。そもそも商品の傾向、美尻、脚長、など子供用品ではなく、両者の商品は全く相違する。
(ウ)甲第48号証は、被請求人の商品では珍しい子供用の被服であるが、ここに示されたクマの絵のロゴについて、いかなる意味で引用商標と紛らわしいとされるのか理解することはできない。この商品が、請求人商標と混同を生じるおそれのないことは一見して明白である。
(エ)請求人は、甲各号証によって、大人用の商品もあると主張するが、甲第49号証をみても、子供服と共通する色彩豊かなイメージ、コントラストのある色彩に特徴があり、請求人の商品の特徴、独特のイメージの延長線上にあることが判る。
いかに大人用商品もあるといっても、商品コンセプトの著しい相違、カラフルな商品性の特色を有するものであって、甲第49号証及び甲第50号証に示される請求人商品と被請求人商品との間で混同を生じるおそれなど全くないことは明白である。
オ 被請求人の新規出願について
被請求人の商願2008-10239(甲第46号証)、同2008-22770(甲第47号証)については、拒絶理由通知書が発せられており(乙第26号証、乙第27号証)、登録取得の障害となっている先行商標は、請求人の商願2007-31589「MIKISPORTS」のみである。
商願2008-10239では、請求人は平成20年5月9日付けで情報提供を行い「miKiHOUSE」との類似性を主張したが、「miKiHOUSE」商標は一切引用されず、周知商標としての指摘もない。
(4)甲3判決について
ア 和解の内容
請求人は、甲3判決に先立つ訴訟事件における和解条項を提出していないが、「右和解条項第2項の別紙9には、衣服の肩部にパッチを施し、衣服の胸部に被申請人標章1を大きく横書きし且つボディの地色と右の標章とが色彩のコントラストを有するように表わし、右のパッチに(以下一部略)且つパッチの地色と右の標章とが色彩のコントラストを有するように表示されてなる表示」(甲3判決、第87頁以下)というように、かなりに限定した使用中止のみを和解していたにすぎない。
イ 判決の判断
当該訴訟事件において、原告は上記和解条項の違反を強調し、特に、原告と被告の商品等表示における上記コントラストの特徴の共通性を強調して、出所混同を主張しているのであって、商標の類似性のみを基礎とする主張ではなかった。
そして、甲3判決では、実際に混同の事実が立証されたこともふまえ(第154頁)、「商品の地色と本件標章との色彩のコントラストを強調した原告の基本的商品表示を基本とする原告の商品表示AないしDは」(第155頁)というように、コントラストを強調した商品等表示と混同を生じると判断しているのである。
請求人は、甲3判決により、自動的に請求人商標「miKiHOUSE」が、使用商標と混同すると主張するかの論調であるが、同判決は、本件とは、商標を使用する主体、背景、取引の事情など全く相違する別の事案である。本件では、混同の事実も立証されていないし、被請求人の使用態様は、コントラストある態様というものでもない。
したがって、上記判決が本件についてそのまま妥当するものではなく、請求人の主張は、これらの論証を欠くものである。

第4 当審の判断
1 商標法第53条第1項は、「専用使用権者又は通常使用権者が指定商品若しくは指定役務又はこれらに類似する商品若しくは役務についての登録商標又はこれに類似する商標の使用であって商品の品質若しくは役務の質の誤認又は他人の業務に係る商品若しくは役務と混同を生ずるものをしたときは、何人も、当該商標登録を取り消すことについて審判を請求することができる。ただし、当該商標権者がその事実を知らなかった場合において、相当の注意をしていたときは、この限りでない。」と規定する。
本件において、シビルスポーツが本件商標に係る商標権の通常使用権者であったこと及び使用商品AないしDについての本件使用商標の使用がシビルスポーツによるものであることについては、当事者間に争いがなく、当審も本件審判の請求日以前にはシビルスポーツが通常使用権者であり、同人が使用商品AないしDについての本件使用商標の使用をしていたと認めるものである。
2 本件商標
本件商標は、前記第1のとおり、標準文字で「MIKI SPORTS CLUB」の文字を書してなるものであるところ、「MIKI」、「SPORTS」及び「CLUB」の各文字の間には、1字程度の間隔がある。そして、本件商標は、第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,仮装用衣服,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」を指定商品とするものである。なお、本件商標の商標権者は、登録設定時においては、東京都日野市三沢2丁目40番8号に所在の有限会社キタムラであったが、その後、商標権の移転より、福井県武生市平出一丁目2番26号(後、福井県越前市平出一丁目2番26号に表示の変更:平成20年4月23日登録)所在の内藤義勝となり(同11年12月21日登録)、さらに、その後の商標権の移転により、福井県越前市平出一丁目2番23号に所在のシビルスポーツとなった(同20年11月25日登録)。
3 使用商標
甲第34号証ないし甲第36号証、甲第38号証、甲第44号証及び甲第45号証によれば、シビルスポーツが使用する商標及びその使用に係る商品は、以下のとおりと認められる。
(1)使用商標1は、別掲(2)のとおり、青色の丸みを帯びた書体で「miKiSPORTS」の欧文字を大きく表し、該文字の下に、青色の活字体で小さく「CLUB」の欧文字を書してなるものであり、使用商品A及びBのタグ表面に表示されている(甲第34号証1枚目上段写真の右上、同下段写真、同号証2枚目下段写真、甲第35号証1枚目上段写真の右上、同下段写真及び同号証2枚目下段写真)。
そして、該「miKiSPORTS」の文字部分は、その構成中の「mi」及び「i」を小文字で、他の文字を大文字で表し、「i」の上部の丸部分を除いて文字の高さを同一に表し、かつ、これらの文字全体を等間隔をもって一連に横書きしてなるものである。
(2)使用商標2は、別掲(3)のとおり、黒色の丸みを帯びた書体で「miKiSPORTS」の欧文字を大きく表し、該文字の下に、黒色の活字体で小さく「CLUB」の欧文字を書してなるものであり、使用商品A及びBのタグ裏面上段に表示されている(甲第34号証3枚目上段写真及び甲第35号証3枚目上段写真上部)。
そして、該「miKiSPORTS」の文字部分は、その構成中の「mi」及び「i」を小文字で、他の文字を大文字で表し、「i」の上部の丸部分を除いて文字の高さを同一に表し、かつ、これらの文字全体を等間隔をもって一連に横書きしてなるものである。
(3)使用商標3は、別掲(4)のとおり、黒色の丸みを帯びた書体で「miKiSPORTS」の欧文字を大きく表し、該文字の右に、黒色の活字体で小さく「CLUB」の欧文字を書してなるものであり、使用商品A及びBのタグ裏面下段に表示されている(甲第34号証3枚目写真上段及び甲第35号証3枚目写真上段)。
そして、該「miKiSPORTS」の文字部分は、その構成中の「mi」及び「i」を小文字で、他の文字を大文字で表し、「i」の上部の丸部分を除いて文字の高さを同一に表し、かつ、これらの文字全体を等間隔をもって一連に横書きしてなるものである。
(4)使用商標4は、別掲(5)のとおり、赤色の丸みを帯びた書体で「miKiSPORTS」の欧文字を大きく表し、該文字の下に、赤色の活字体で小さく「CLUB」の欧文字を書してなるものであり、使用商品A、B及びCの包装袋中央に表示されている(甲第34号証1枚目上段写真、同号証3枚目下段写真、同号証4枚目上段写真、甲第35号証1枚目上段写真、同号証3枚目下段写真、同号証4枚目、甲第36号証、同号証2枚目写真下段、同号証3枚目上段写真、甲第45号証2枚目ないし8枚目及び16枚目)。
そして、該「miKiSPORTS」の文字部分は、その構成中の「mi」及び「i」を小文字で、他の文字を大文字で表し、「i」の上部の丸部分を除いて文字の高さを同一に表し、かつ、これらの文字全体を等間隔をもって一連に横書きしてなるものである。
(5)使用商標5は、別掲(5)のとおり、使用商標5と同一の構成よりなるものであり、使用商品Dの広告に表示されている(甲第38号証2枚目、甲第44号証2枚目)。
4 本件商標と本件使用商標の類否について
(1)本件商標と本件使用商標の類否
ア 本件商標と使用商標1、2、4及び5の類否について
使用商標1、2、4及び5は、別掲(2)、(3)及び(5)のとおりの構成よりなるものであって、前記3(1)、(2)、(4)及び(5)認定のとおり、文字に施された色彩において青色、黒色又は赤色の差異を有するが、いずれも、丸みを帯びた書体で「miKiSPORTS」の欧文字を大きく表し、該文字の下に、活字体で小さく「CLUB」の欧文字を各横書きしてなるものである。
そうすると、使用商標1、2、4及び5は、その構成中の「miKiSPORTS」の文字部分と「CLUB」の文字部分とが二段に書され、これらの文字の大きさ、態様が異なるものであるが、本件商標とは、大文字と小文字の差異を有するもののこれらの綴り字を同じくするものであるから、外観上類似する商標というべきあり、また、構成全体の文字に相応して、「ミキスポーツクラブ」の称呼及び「ミキという名のスポーツ同好会」程の観念が生ずる場合があるというのが相当である。
したがって、本件商標と使用商標1、2、4及び5は、外観、称呼及び観念において類似する商標というべきである。
イ 本件商標と使用商標3の類否について
使用商標3は、別掲(4)のとおりの構成よりなるものであって、前記3(3)認定のとおり、黒色の丸みを帯びた書体で「miKiSPORTS」の文字を大きく表し、該文字の右に、黒色の活字体で小さく「CLUB」と横書きしてなるものであるところ、本件商標とは、文字の態様において相違するものであるとしても、文字全体の綴りは、本件商標と同一であるから、外観上類似する商標というべきであり、また、構成全体の文字に相応して、「ミキスポーツクラブ」の称呼及び「ミキという名のスポーツ同好会」程の観念が生ずる場合があるというのが相当である。
したがって、本件商標と使用商標3は、外観、称呼及び観念において類似する商標というべきである。
(2)本件使用商標が使用された使用商品AないしDは、「ズボン、フード付きセーター、シャツ及びオーバーパンツ」であるから、いずれも本件商標の指定商品中の「被服」に含まれる商品と認められる。
(3)以上によれば、本件使用商標は、本件商標に類似する商標であり、かつ、その使用に係る商品は、本件商標の指定商品中、「被服」に含まれるものである。
5 出所の混同について
商標法第53条第1項の「他人の業務に係る商品若しくは役務と混同を生ずるものをしたとき」とは、商標法が需要者の利益の保護をもその目的としていることを考慮すれば、客観的に誤認混同が生じるとみられる場合、すなわち、誤認混同のおそれのある場合もその対象としているものである(平成11年(行ケ)第96号平成12年1月19日判決言渡)。
(1)引用商標
引用商標は、別掲(1)のとおり、赤色の丸みを帯びた書体により「miKiHOUSE」の欧文字を横書きしてなるところ、その構成中の前半部の「miKi」の文字部分は、「mi」及び「i」を小文字にし、「K」を大文字にして、「i」の上部の丸部分を除いて文字の高さを同一に表し、また、後半部の「HOUSE」の文字部分もすべて該「miKi」の文字部分と同じ高さによる大文字として、構成文字全体を一連に統一された外観が得られるように表示したものである。
(2)引用商標の周知性について
請求人は、昭和53年9月に、子供服、ベビー服メーカーとして設立され、2006年10月現在、株式会社ミキハウス、株式会社ミキトレードなど関連会社10社とミキハウスグループを形成し、子供服及び子供に関連する商品の販売及び役務の提供を行っている。また、請求人の主力商品といえる子供服、ベビー服の取扱店は、日本国内に約1000店舗(そのうち、約180店舗は直営店)となっており、請求人は、我が国の被服を取り扱う分野において、とりわけ子供服、ベビー服を取り扱うメーカーとして知られている。請求人及びその関連会社で形成されるグループ会社全体の2005年8月決算期の売上高は約295億円であった。そして、請求人の業務に係る商品「子供服、ベビー服」等に使用されると同時に、請求人のハウスマークとしても使用される引用商標は、上記設立前の個人創業時代の昭和53年8月より使用を開始して以来、現在まで継続して使用されているものであり、ミキハウスグループの事業である絵本等の出版事業や幼稚園・保育園・病院等との提携、他の異業種企業との共同事業、スポーツ支援などの事業に引用商標が使用されることも少なくない(甲第41号証ないし甲第43号証、甲第50号証等)。
引用商標は、請求人の子供服、ベビー服メーカーとしての周知性に加え、その表現方法の特異性等により、本件使用商標が使用された平成16年(2004年)5月には既に、「ミキハウス」の称呼をもって、我が国の被服の分野において、その需要者の間に広く認識されていたものと優に推認することができるものである。
なお、請求人は、その取扱いに係る子供服、ベビー服に使用する商標について、月齢別又は年齢別等により商標を使い分け、かつ、被服の地色により色彩も異なる場合があるが、その基幹となる商標は、ハウスマークとしても使用される引用商標であり、基本となる色は赤色である(甲第41号証ないし甲第43号証等)。
これに対して、被請求人は、引用商標の態様は多種多様であり、統一的なものではないし、「ミキハウス」、「MIKIHOUSE」として周知されているものである旨主張する。
しかし、引用商標が「ミキハウス」と称呼され、請求人の業務に係る子供服等の基幹的な商標として、また、請求人のハウスマークとして使用され、本件使用商標の使用が開始された時点において既に周知性を獲得していたことは、上記のとおりであるから、たとえ、引用商標の態様に多様なものがあるとしても、そのことをもって、直ちに引用商標の周知性の認定が左右されるものではない。
したがって、被請求人の上記主張は、理由がない。
(3)本件使用商標と引用商標との類似性について
使用商標1、2、4及び5は、前記3(1)、(2)、(4)及び(5)認定のとおり、文字に施された色彩において青色、黒色又は赤色の差異を有するが、いずれも、丸みを帯びた書体で「miKiSPORTS」の文字を大きく表し、該文字の下に、活字体で小さく「CLUB」の欧文字を横書きしてなるものである。
また、使用商標3は、前記3(3)認定のとおり、黒色の丸みを帯びた書体で「miKiSPORTS」の文字を大きく表し、該文字の右に、黒色の活字体で小さく「CLUB」の欧文字を横書きしてなるものである。
そうすると、本件使用商標は、構成する文字全体をもって一つの商標を表したと認識される場合があることを否定し得ないが、上記のとおり、その構成中の「miKiSPORTS」の文字部分と「CLUB」の文字部分とは、外観上、文字の大きさ及び態様の顕著な差異を有するものであるから、本件使用商標に接する需要者は、上段又は左側に大きく書された「miKiSPORTS」の文字部分に印象づけられ、該文字部分のみを捉えて商品の取引に当たる場合が決して少なくないとみるのが相当であり、ほかに、該「miKiSPORTS」の文字部分と「CLUB」の文字部分とを常に一体ものとしてのみ把握、認識されるとみるべき特段の事情を見いだすことはできない。
そして、本件使用商標の構成中より分離、独立して観察される「miKiSPORTS」の文字部分は、前記3(1)ないし(5)認定のとおり、文字全体が丸みを帯びた書体で表され、かつ、前半部の「miKi」の文字部分は、「mi」及び「i」を小文字にし、「K」を大文字にして、「i」の上部の丸部分を除いて文字の高さを同一に表し、また、後半部の「SPORTS」の文字部分もすべて該「miKi」の文字部分と同じ高さによる大文字として、文字全体を一連に統一された外観が得られるように表示したものであるから、上記(1)で認定した引用商標とは、その構成中の後半の「SPORTS」又は「HOUSE」の各文字部分の綴りを異にするものであるとしても、両者は、構成文字全体が丸みを帯びた書体をもって表されていること、前半の「miKi」の文字部分の書体は、同一又は極めて近似しているといい得ること、前半の「miKi」の文字部分が「mi」及び「i」を小文字にし「K」を大文字にしていること、「i」の文字部分の上部を丸くしていること、該「miKi」に続く後半の「SPORTS」又は「HOUSE」の各文字部分の高さを「i」の上部の丸部分を除き同じ高さとしていること、構成文字全体を等間隔で表していることを同じくするものである。
そうすると、本件使用商標の構成中の「miKiSPORTS」の文字部分と引用商標とは、構成全体において、特徴的な構成態様からなる点において共通するばかりでなく、前半の「miKi」の文字部分が略同一であることから、該「miKi」の文字部分が一層強く印象づけられ、看者に与える外観上の印象が極めて近似するものといわなければならない。
したがって、本件使用商標の構成中の「miKiSPORTS」の文字部分と引用商標は、これらを時と所を異にして離隔的に観察した場合は、互いに紛れるおそれがあるというべきであり、外観上の類似性は相当程度高いものといわなければならない。
(4)商品の関連性等について
前記4(2)及び5(2)認定のとおり、本件使用商標に係る商品は、主として、大人(中高年女性)用のシャツ、ズボン、セーター等であり、一方、引用商標の使用に係る商品は、主として子供服、ベビー服であるところ、いずれの商品も「被服」の範ちゅうに属するものであって、その生産部門、販売部門、原材料、用途及び目的等を同じくするものである。
これに対して、被請求人は、両商品が販売対象、販売経路等を異にすると主張する。
しかし、大人用の被服と子供服、ベビー服とは、一般に販売経路を同じ(甲第37号証)くするというべきものであり、被請求人は子供服(甲第48号証)を、請求人は大人用の被服(甲第49号証)をそれぞれ取り扱っているばかりでなく、子供服、ベビー服の購買者は、大人であって、大人用の被服の購買者層と同じくする場合があり、ほかに、引用商標の使用に係る商品と本件使用商標に係る商品との関連性、需要者の共通性がないとみるべき特段の事情を見いだすこともできないから、請求人の主張は採用することができない。
したがって、本件使用商標に係る商品と引用商標の使用に係る商品とは、極めて強い関連性を有するものと認めることができる。
(5)まとめ
商標の使用によって商品の出所について混同を生じるか否かを判断するに当たっては、当該商品の需要者を基準として判断すべきと解されるところ、本件使用商標と引用商標が使用される商品の主たる需要者は、商標等について格別な知識を有しない者を含む一般の消費者であって、これら一般の消費者が商品の購入に際し、商標や製造者など常に細心の注意力を払うとは限らないというべきであり、被服には、運動用に適した商品が多数含まれること、さらに、引用商標の周知性、本件使用商標と引用商標との類似性、商品の関連性などをも考慮すれば、本件使用商標と引用商標とを、時と所を異にして離隔的に観察した場合には、本件使用商標の構成中の「miKiSPORTS」の文字部分から周知な引用商標を想起して、請求人の取扱いに係る商品を連想するというのが相当である。
したがって、シビルスポーツが本件使用商標を使用商品AないしD(ズボン、フード付きセーター、シャツ、オーバーパンツ)について使用した場合、これに接する需要者をして、該商品が請求人又は同人と何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように、商品の出所について混同を生ずるおそれがあるというべきである。
なお、被請求人は、本件商標の構成中の「miKi」の文字部分は、被請求人の娘の名前「美紀」に由来するものであり、また、ありふれた氏等であって自他商品識別標識としての機能を発揮しないから、本件使用商標は、一体のものとして認識される旨主張する。
しかし、本件商標の構成中の「miKi」の文字部分が「美紀」に由来して採択されたものであるとしても、そのことが、本件商標の指定商品中、「被服」の需要者に広く認識されているとみるべき証左はないから、本件使用商標の構成中の「miKi」の文字部分から、需要者が該名前「美紀」を直ちに想起するということはできない。そして、「miKi」の文字がありふれた氏姓の一つである「三木」等に通じるとしても、上記(2)及び(3)認定のとおり、引用商標は、子供服、ベビー服について使用された結果、需要者の間に広く認識されているものであり、その構成中の「miKi」の文字部分の特徴と本件使用商標の構成中の「miKi」の文字部分が略同一であることからすれば、これより、ありふれた氏姓の「三木」等を想起するというよりも、引用商標を想起するというべきである。
さらに、被請求人は、本件使用商標と引用商標とは、外観、称呼、観念のいずれにおいても相違する非類似の商標であり、本件使用商標が使用される商品と引用商標が使用される商品との間に、出所の混同が生じない旨主張する。
しかし、本件使用商標が常に構成全体をもって把握、認識され得ないこと、また、本件使用商標の構成中、独立して把握、認識される「miKiSPORTS」の文字部分において、引用商標と外観上の印象が極めて近似するものであることは、上記(3)認定のとおりである。
そして、両商標が使用される商品は、いずれも被服の範疇に属する商品であり、需要者層を共通にするから、外観上の印象が極めて近似する商標の存在により見誤るおそれがあるといえ、引用商標が子供服等のブランドとしてその需要者の間に広く認識されていることなどを併せ考慮すると、本件使用商標が使用された商品を請求人又は請求人と何らかの関係を有する者の取扱いに係る商品であるかのように、商品の出所について混同を生ずるとみるべきである。
したがって、被請求人の上記主張は、いずれも理由がない。
6 商標法第53条第1項ただし書きについて
被請求人は、シビルスポーツの代表取締役(乙第3号証)と認められるから、本件通常使用権者が使用商品AないしDについての本件使用商標の使用をしていたことについて、商標法第53条第1項ただし書きにいう「その事実を知らなかった場合」には該当しないというのが相当である。
7 本件使用商標の使用時期について
前記3における甲第34号証ないし甲第36号証、甲第38号証、甲第44号証及び甲第45号証の使用時期についてみると、まず、甲第38号証は、生活協同組合連合会コープきんき事業連合の広告の写しと認められるところ、1枚目右上に「2008」及び「注文書提出日」として「2月11日ないし同月15日」が記載されていることから、少なくとも2008年2月には配布されていたものと優に推認できるものである。
次に、甲第44号証及び甲第45号証は、いずれもシビルスポーツに係るウエブページの写しと認められるところ、右下に「2008/02/01」と記載されていることから、その出力時期は、本件審判の請求日前の平成20年(2008年)2月1日と解されるものである。
また、甲第34号証ないし甲第36号証は、使用時期を明示したものではないが、平成16年(2004年)5月以降に、シビルスポーツによって本件使用商標を付した使用商品AないしDが販売されたことについて、当事者間に争いがない。
以上によれば、本件使用商標は、平成16年(2004年)5月以降に使用されたものというのが相当であるから、本件審判の請求(平成20年3月6日)は、商標法第53条第3項において準用する同法第52条に規定する「商標の使用の事実がなくなった日から5年を経過した後」に該当するものではない。
8 被請求人の主張について
(1)シビルスポーツによる商標の使用について
ア 被請求人は、シビルスポーツが本件使用商標を基本的に「MIKI SPORTS CLUB」、「MIKISPORTS CLUB」と表示している旨主張する。
しかし、乙第3号証[4]ないし[8]及び[11]によれば、シビルスポーツの使用する基本的な商標が「MIKISPORTSCLUB」、「MIKI SPORTS CLUB」及び「mikisports club」の各商標であるとしても、甲第34号証ないし甲第36号証、甲第38号証、甲第44号証及び甲第45号証におけるシビルスポーツの使用する本件使用商標は、前記3(1)ないし(5)認定のとおりであって、上記「MIKISPORTSCLUB」、「MIKI SPORTS CLUB」及び「mikisports club」の各商標とは構成態様が異なるものである。
イ 被請求人は、使用商標3は本件商標と実質的に同一の商標であり、使用商標1、2及び5は表示場所の制約等から見やすくするために取られた表示方法であり、本件商標を表したものである旨主張する。
しかし、前記5(3)認定のとおり、本件使用商標は、「miKiSPORTS」の文字部分と「CLUB」の文字部分とが文字の大きさ及び態様が顕著に相違することなどから、外観上、容易に分離して看取されるものであり、しかも、「miKiSPORTS」の文字部分は、引用商標と文字の態様において極めて近似するものである。
一方、シビルスポーツは、本件使用商標とは構成態様が異なる商標(乙第3号証[4]ないし[8]及び[11])を商品タグ等に使用しているのであるから、表示場所の制約等を理由にした使用態様の変更と認めることはできない。
ウ したがって、被請求人の上記主張は、いずれも理由がない。
(2)引用商標の周知性について
被請求人は、商標において、小文字と大文字とが混在することや丸みをもった文字は通常の表現であり、引用商標がそれらによって印象づけられているものではないし、引用商標の表示態様も数通りの表現があり、その外観が有名というものではない旨主張する。
しかし、丸みを帯びた文字よりなる商標やローマ字の小文字と大文字とを混在させた商標が存在することを否定するものではないが、引用商標は、丸みを帯びた独特の書体で「mi」及び「i」を小文字で、他の文字を大文字で表し、「i」の上部の部分を丸にして他の文字の高さをそろえ、外観上一体的に結合させた手法をもって表したことにより、外観上の特異性をもって周知性を獲得したものである。確かに、請求人は、商品ごとに異なる商標を使用していた事実が存在するものの、前記5(2)認定のとおり、これらは、引用商標のもとに使用される商品ごとの個別的な商標といえ、請求人の基幹的な商標は、引用商標というべきであるから、請求人による各種商標の使用を理由に引用商標の周知性の認定が妨げられるものではない。
また、本件使用商標は、標準文字で表された本件商標を、「MIKI SPORTS」の文字部分と「CLUB」の文字部分とに分離して把握、認識されるような態様で表したうえで、該「MIKI SPORTS」の文字部分を引用商標とその表現方法において極めて近似する態様に変更したものであって、シビルスポーツが本件使用商標を使用商品AないしDについて使用することにより、請求人の業務に係る商品と混同を生ずるおそれがあるから、「商標において、小文字と大文字とが混在することや丸みをもった文字は通常の表現である」との主張をもって、本件使用商標の使用をすることの正当性を見いだすことはできない。
したがって、上記に関する被請求人の主張は、理由がない。
(3)請求の目的について
被請求人は、本件審判の請求の目的は、請求人の出願した商標登録願の拒絶理由解消のためであり、引用商標の保護、引用商標と本件使用商標との混同防止にあるのではないから、引用商標と本件使用商標との出所混同をいう請求人の主張は不当性が窺える旨主張する。
しかし、商標法第53条第1項は、「何人も、当該商標登録を取り消すことについて審判を請求することができる。」と規定しており、この趣旨は、商標の不当な使用によって、商品の出所の混同を生じたり、品質の誤認を生ずるなどの一般公衆の利益が害されるような事態が発生することを防止し、かつ、そのような場合に当該商標権者に制裁を課すことにより、需要者を保護するという公益的性格を有するものであると解される。そして、本件商標の通常使用権者による本件使用商標についての使用は、前記認定のとおり、需要者をして商品の出所について混同を生じさせるものであって、かつ、引用商標を使用した商品に対する需要者の信頼を裏切る行為というべきものであるから、商標法第53条第1項の規定に該当するものといわなければならない。
したがって、被請求人の上記主張は、失当である。
9 むすび
以上のとおり、本件商標の通常使用権者であるシビルスポーツによる本件商標の指定商品に含まれる商品「ズボン、フード付きセーター、シャツ、オーバーパンツ」についての本件商標と類似する本件使用商標の使用は、請求人の業務に係る商品と混同を生ずるものであり、商標法第53条第1項ただし書に規定する「商標権者がその事実を知らなかった場合において、相当の注意をしていたとき」に該当するものとも認められないから、本件商標の登録は、同法第53条第1項の規定により、取り消すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲
(1)引用商標


(2)使用商標1


(3)使用商標2


(4)使用商標3


(5)使用商標4及び5


審理終結日 2009-03-13 
結審通知日 2009-03-18 
審決日 2009-03-31 
出願番号 商願平9-172587 
審決分類 T 1 31・ 5- Z (Z25)
最終処分 成立 
前審関与審査官 大森 健司 
特許庁審判長 中村 謙三
特許庁審判官 末武 久佳
田村 正明
登録日 1998-12-25 
登録番号 商標登録第4224336号(T4224336) 
商標の称呼 ミキスポーツクラブ、ミキスポーツ、ミキ、スポーツクラブ 
代理人 安田 敏雄 
代理人 高橋 康夫 
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