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審決分類 審判 判定 その他 属さない(申立て成立) Y4144
管理番号 1197386 
判定請求番号 判定2008-600033 
総通号数 114 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標判定公報 
発行日 2009-06-26 
種別 判定 
2008-07-10 
確定日 2009-04-23 
事件の表示 上記当事者間の登録第5066745号商標の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 役務「看護・医療・医業・調剤・医療情報・医療事務に関する知識の教授,病院における患者への接待・案内に関する知識の教授,医療・医療看護に関する教育・訓練,病院における患者への接待・案内に関する教育・訓練,看護・医療・医業・調剤・医療情報・医療事務に関する資格試験の実施及び資格の認定・資格の付与,看護・医療・医業・調剤・医療情報・医療事務に関する資格試験の実施に関する情報の提供,看護・医療・医業・調剤・医療情報・医療事務に関する資格の認定・付与に関する情報の提供,病院における患者への接待・案内に関する資格試験の実施及び資格の認定・資格の付与,病院における患者への接待・案内に関する資格試験の実施に関する情報の提供,病院における患者への接待・案内に関する資格の認定・付与に関する情報の提供,資格試験受験のための学習講習会の企画・運営又は開催,看護・医療・医業・調剤・医療情報・医療事務に関するセミナーの企画・運営又は開催及びこれらに関する情報の提供,病院における患者への接待・案内に関するセミナーの企画・運営又は開催及びこれらに関する情報の提供,医療相談,医師・クリニック・病院・薬局等の医療機関に関する情報の提供,医療情報の提供,健康診断に関する情報の提供,患者及びその家族に対する心理検査結果・臨床検査結果・健康診断結果に関する解説・説明,調剤に関する情報の提供,医療看護に関する情報の提供,医療看護に関する指導・助言,病院の紹介又は取次ぎ,病院の予約の媒介又は取次ぎ」に使用するイ号標章は、登録第5066745号商標の商標権の効力の範囲に属しない。
理由 第1 本件商標
本件登録第5066745号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲のとおりの構成からなるものであり、平成18年12月5日に登録出願、第41類「看護・医療・医業・調剤・医療情報・医療事務に関する知識の教授,病院における患者への接待・案内に関する知識の教授,医療・医療看護に関する教育・訓練,病院における患者への接待・案内に関する教育・訓練,看護・医療・医業・調剤・医療情報・医療事務に関する資格試験の実施及び資格の認定・資格の付与,看護・医療・医業・調剤・医療情報・医療事務に関する資格試験の実施に関する情報の提供,看護・医療・医業・調剤・医療情報・医療事務に関する資格の認定・付与に関する情報の提供,病院における患者への接待・案内に関する資格試験の実施及び資格の認定・資格の付与,病院における患者への接待・案内に関する資格試験の実施に関する情報の提供,病院における患者への接待・案内に関する資格の認定・付与に関する情報の提供,資格試験受験のための学習講習会の企画・運営又は開催,看護・医療・医業・調剤・医療情報・医療事務に関するセミナーの企画・運営又は開催及びこれらに関する情報の提供,病院における患者への接待・案内に関するセミナーの企画・運営又は開催及びこれらに関する情報の提供」及び第44類「医療相談,医師・クリニック・病院・薬局等の医療機関に関する情報の提供,医療情報の提供,健康診断に関する情報の提供,患者及びその家族に対する心理検査結果・臨床検査結果・健康診断結果に関する解説・説明,調剤に関する情報の提供,医療看護に関する情報の提供,医療看護に関する指導・助言,病院の紹介又は取次ぎ,病院の予約の媒介又は取次ぎ」(以下、これらをまとめて「判定請求に係る指定役務」という。)ほか、第41類及び第44類に属する商標登録原簿に記載された役務を指定役務として、同19年7月2日登録査定、同27日に設定登録されたものである。

第2 イ号標章
請求人が判定請求に係る指定役務に使用する標章として示したイ号標章は、「医療コンシェルジュ」の文字からなるものである。

第3 請求人の主張の要点
請求人は、「本件商標の指定役務中、判定請求に係る指定役務について使用するイ号標章は、本件商標に係る商標権の効力の範囲に属しない。」との判定を求める旨申し立て、その理由及び被請求人(商標権者)の答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第37号証(枝番を含む。)を提出した。
1 請求の理由
(1)イ号標章の説明
イ号標章を構成する「医療コンシェルジュ」の文字は、「患者と病院などの医療機関との間に立ち、適切で迅速な医療を手助けする専門家のこと」を指称する用語である。
具体的には、患者の要望に応じて病院での診察や検査の予約、交通機関の手配、家族への連絡等を代行する役務を提供する、特定の知識を修得した「専門家」ないしは前記業務を提供する「職業又は職種」を表わす語である。
すなわち、「医療コンシェルジュ」は、「臨床看護 2007年2月号」(甲第3号証)で明らかなように、1990年代半ば頃、アメリカのワシントン市シアトルで誕生したもので、我が国においては、「2004年9月 Agora(日本航空ファーストクラス機内誌)」(甲第21号証)によって、アメリカでの「医療コンシェルジュ」の様子が紹介されている。
また、甲第22号証ないし甲第34号証の文献記載内容及び現況を総合的に勘案すれば、イ号標章「医療コンシェルジュ」は、「病院内で、患者の要望に応じて診察や検査の予約などを行う職種名」を表わす語として、遅くとも2007(平成19)年6月までには、医療関係者の間では広く理解し、認識されていたものである。
(2)本件商標の説明
ア 本件商標は、別掲のとおりの構成からなるところ、これを構成する「医療コンシェルジュ」の文字は、本件商標の登録査定時以前には、すでに請求人のNPO活動、インターネット情報、医療関係者が読む雑誌、さらには「医療コンシェルジュ資格認定講習会」(甲第22号証ないし甲第34号証)を通じて、「病院内で患者の要望に応じて診察や検査の予約などを行う職業又は職種」として全国的に使用され医療分野における新しい職業又は職種として、少なくとも医療関係者の間では理解し認識されていたものである。
イ このことは、商標権者も自己の頒布する印刷物やホームページのサイト(甲第2号証)において、「白衣を着ない医療現場の専門家・医療コンシェルジュ養成講座」、「医療コンシェルジュは、ホスピタリティ・リーダーとしての医療機関における全く新しい専門職。」及び「・・・様々な業界から医療コンシェルジュヘと転身した女性たちがいます。」などのように「医療コンシェルジュ」について、「職業又は職種の一種」として普通に用いていることからも、容易に首肯できるものである。
(3)イ号標章が商標権の効力の範囲に属しないことの説明
本件商標は、その構成態様から明らかなように「医療コンシェルジュ」の文字と「花の図形」との組み合わせからなるものの、このうち「医療コンシェルジュ」の文字部分については、本件商標の指定役務中、判定請求に係る指定役務との関係においては、単に「役務を提供する人の職業又は職種」を表すにすぎないものである。
してみれば、「医療コンシェルジュ」の文字のみからなるイ号標章は、上記指定役務との関係においては、単に役務の質(職業又は職種)を表わす語として使用されていること明らかであるから、商標法第26条第1項第3号に該当し、本件商標の効力は及ばないものである。
2 弁駁の理由
(1)イ号標章の識別力について
被請求人が提出した乙各号証の記載では、「医療コンシェルジュとは、・・・サービススタッフのこと。接客のプロとして入院患者の様々な要望に対応している」(乙第9号証)、「水口病院に医療コンシェルジュとして勤務している。」(乙第18号証)及び「医療コンシェルジュは、医療者指導から患者様主導の時代変化に求められて現れた新しい職種です。」(乙第22号証)などのように、被請求人自ら「職種」と理解し認識し使用しており、他の証拠についても被請求人による「医療コンシェルジュ」の表示態様に関する分析(甲第35号証)に記載したように、いずれも「職種」としてのみ用いている。
これらの表示態様によれば、請求人及び被請求人の表示する「医療コンシェルジュ」は、単に「職種」を表すものとして使用するにすぎず、かかる表示は、判定請求に係る指定役務との関係において使用したとしても、単に役務の質を表すにすぎないから、被請求人の主張ならびに提出書類は、本件商標中「医療コンシェルジュ」の文字が、本件商標の登録出願時に、図形とは独立して自他役務を識別するための標識(商標)として使用されていたことを示すものとは認められない。
(2)商標法第26条第1項柱書について
本件商標は、図形と「医療コンシェルジュ」の文字とにより構成されたものであるのに対し、イ号標章は「医療コンシェルジュ」の文字のみから構成されているものであって、商標法第26条第1項柱書の括弧書きに規定する「他の商標の一部となっているものを含む。」に該当するため、本件商標の効力は、イ号標章には及ばないものである。

第4 被請求人の主張の要点
被請求人は、「イ号標章は、本件商標に係る商標権の効力の範囲に属する。」との判定を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第29号証を提出した。
1 イ号標章が本商標権の効力の範囲に属する理由
(1)本件商標とイ号標章との類否について
ア 本件商標の構成
本件商標は、別掲のとおりの構成からなるところ、その構成は3本のピンク色の花の茎の部分にピンク色のリボンを配し、前記リボンの内側に白抜き文字で「医療コンシェルジュ」の文字を横書きした商標である。
イ イ号標章の構成
一方、イ号標章は、「医療コンシェルジュ」の文字を横書きしてなる標章である。
ウ 本件商標とイ号標章の類否
本件商標の構成における「医療コンシェルジュ」の文字は、商標の中央に配置されておてり、特に看者の注意を惹くものである。
そこで、本件商標の文字部分とイ号標章を構成する文字とを比較すると、いずれも「医療コンシェルジュ」なる漢字2文字と片仮名7文字から構成されている。
両者を構成する文字は同一であることから、本件商標から生じる観念とイ号標章から生じる観念が共通するのは必然である。
また、本件商標からは、「医療コンシェルジュ」の文字に相応する「イリョウコンシェルジュ」の称呼が生じるのに対し、イ号標章からも「医療コンシェルジュ」の文字に相応する「イリョウコンシェルジュ」の称呼が生じる。このため、本件商標とイ号標章は称呼において類似である。
エ 小括
簡易迅速を旨とする取引の場においては、本件商標中に顕著に表された「医療コンシェルジュ」の文字より生ずる「イリョウコンシェルジュ」の称呼をもって取引にあたるものとみるのが相当と思料する。また、イ号標章と本件商標は観念上類似する。
称呼、観念及び外観を総合的に判断すれば、本件商標とイ号標章は、相互に類似の関係にある。したがって、イ号標章は本件商標の商標権の効力の範囲に属する。
2 イ号標章の識別力について
(1)海外の事情に関する証拠方法について
請求人は、甲第3号証の241頁右欄11?14行目を引用し、1990年代半ばごろに「Medical Concierge」が使用されていたかのような主張をしている。
しかし、乙第1号証は、甲第3号証の最終ページに示されている「2)」の参考文献であるが、そこには「Medical Concierge」なる語はどこにも記載されていない。
したがって、請求人が提出した証拠では、2005(平成17)年以前に「Medical Concierge」なる語が使用されていたということにはならない。
甲第21号証は、日本語による米国の医療事情に関する記事であり、「Medical Concierge Service」のことを、たまたま「医療コンシェルジュ」と翻訳して記載しているようであるが、これは、請求人がいう「医療コンシェルジュ」とは根本的に異なるものである。
したがって、この記事が存在することとイ号標章が「役務の質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標」であるということには関連性がない。
また、日本語で記載された甲各号証のうち、請求人と関連がない者により客観的に記載された記事は、甲第21号証のみである。
この証拠のみをもって、イ号標章が一般の需要者・取引者において「役務の質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標」と認識されていたとは到底認められない。
(2)国内の事情に関する証拠方法について
請求人の「日本でもその職種名が一般的に使用されているため、イ号標章には識別力がない。」旨の主張は、イ号標章が「病院内で、患者の要望に応じて診察や検査の予約などを行う職種名」を表す語として、遅くとも2007(平成19)年6月までには、医療関係者の間で広く理解し、認識されていたというものである。
しかし、日本語で記載された甲第3号証及び甲第22号証ないし甲第34号証は、請求人に関する記事及び論文である。請求人以外の一般の需要者・取引者によってイ号標章が使用されていることを立証するものではない。
また、これら甲各号証においては、これらが掲載された雑誌・新聞の発行部数やホームページに対するアクセス数が立証されていない。このためどの程度の需要者にイ号標章が知られているのかさえ把握することができない。
したがって、上記証拠物件をもってイ号標章が商標法第26条第1項第3号により本件商標の効力が及ばないとする請求人の主張は理由がない。
(3)本件商標の採択の経緯について
ア 「医療コンシェルジュ」はもともと「医療法人財団緑生会 水口病院」(以下「水口病院」という。)が、2005(平成17)年の2月頃に病院内の患者への接客やホスピタリティ向上のために独自に考え出したサービスであって、水口病院における「医療コンシェルジュ」を紹介した書籍において、「医療コンシェルジュ」は同年の春に水口病院に設けられたことが紹介されている(乙第9号証)。
イ 「医療コンシェルジュ」を設けてから間もなく、その存在に関する医療業界の注目が集まった。水口病院の「医療コンシェルジュ」は、将来的に医療業界全般において需要が見込まれることが予想されたため、これを資格として人材を教育することになったのである。
資格に関する教育活動や講座の運営は、本来病院内で提供する医療業務とは異なるため、2006(平成18)年2月に教育プログラムや資格試験に関する業務を専門的に扱う機関として被請求人である「株式会社水口Medical solutions」にその業務を移管した。資格名称を商標登録出願することは当初より予定していた。
なお、「株式会社水口Medical solutions」は、水口病院のメディカルサービスを担当する法人であり、2008(平成20)年3月に「株式会社メディリューション」に名称を変更している。
ウ 水ロ病院は産婦人科病院であり、女性向け医療サービスの理想を追求することを理念としており、「医療コンシェルジュ」は、病院の理念実現化の過程において同病院に独自に誕生したサービスである。そして、その医療サービスにおけるノウハウや質の高さは水口病院独特のものであり、「医療コンシェルジュ」の設置後間もなく医療市場における注目を集めることになった。
エ 「医療コンシェルジュ」は2005(平成17)年から数々の雑誌や書籍に紹介されている(乙第10号証ないし乙第22号証)。また、その活動については、複数のテレビ放送の取材を受け、放映されている(乙第23号証ないし乙第25号証)。とくに2006(平成18)年前半から9月にかけて水口病院に対する「医療コンシェルジュ」の取材申込みや雑誌・テレビ取材が集中していることを考慮すれば、遅くとも同9月には、「医療コンシェルジュ」は水口病院の商標として周知となっていたと理解できる。
(4)イ号標章の使用と識別力について
請求人は、インターネットなどを通じて生徒を募集し、自ら教育を施した人材を「医療コンシェルジュ」と称して、この教育を受けた人材を導入すれば、患者の待ち時間短縮の効果を得られると広告(乙第27号証)し、他の医療機関に紹介する活動をしている。これは、イ号標章により自他の役務を区別していることに他ならない。また、イ号標章を資格の名称として採択し、他の資格と区別していることも、イ号標章に他の役務と自己の役務を区別することが可能であることを示している。
被請求人は、2008(平成20)年春(2月ごろ)より「医療コンシェルジュ」養成講座を開始し、試験に合格した者にのみ「医療コンシェルジュ」の使用を許諾している。そして、「医療コンシェルジュ」は、従来の病院内の職種や職業と区別せしめている。
これらの使用状況を見ても、「医療コンシェルジュ」なる言葉に識別力があることは明らかである。

第5 当審の判断
本件判定の争点は、イ号標章が商標法第26条第1項第3号により被請求人の所有に係る本件商標の商標権の効力の範囲に属しないものか否かであるところ、商標権の効力は、指定商品若しくは指定役務又はこれらに類似する商品若しくは役務についての登録商標と同一又は類似の商標の使用に及ぶ(同法第25条、同法第37条)ものであるが、他方、同法第26条第1項各号のいずれかに該当する商標(他の商標の一部となっているものを含む。)には、及ばないとされている。
そして、商標法第26条第1項第3号は、「当該指定役務若しくはこれに類似する役務の普通名称、提供の場所、質、・・・を普通に用いられる方法で表示する商標」と規定しているところ、右にいう「質」は、必ずしも当該指定役務又はこれに類似する役務において表示する商標が現実に「質」を表示していることを要せず、需要者によって、当該指定役務又はこれに類似する役務において表示する商標が当該指定役務又はこれに類似する役務の質を表示するであろうと一般に認識されることをもって足りると解すべきである。
そこで、以下検討する。
1 本件商標とイ号標章の構成について
本件商標は、別掲のとおり、濃いピンク系色で彩られたリボン状帯に左横書きで「医療コンシェルジュ」の文字を白抜きで表し、これの背後に差し込むようにリボン状帯と同色ないしピンク系色でグラデーション的に彩られた5枚の花びらからなる3本の花の図形を配した構成からなるものである。
そして、その構成中の「医療」の語は、「医術で病気をなおすこと。療治。治療。」(広辞苑第六版:株式会社岩波書店発行)の意を表し、「コンシェルジュ」の語は、「ホテルの接客係。・・・転じて、特定の分野や地域情報などを紹介・案内する人をもいう。」(コンサイスカタカナ語辞典(第3版):2005(平成17)年10月20日株式会社三省堂発行)の意味を有するものである。
一方、イ号標章は、「医療コンシェルジュ」の文字を普通に用いられる方法で表示してなるものである。
したがって、本件商標構成中の白抜きで表された「医療コンシェルジュ」の文字とイ号標章は、同一の綴り字からなるものである。
2 「医療コンシェルジュ」の識別力について
(1)請求人の提出した証拠によれば、以下の事実が認められる。
ア 2007(平成19)年2月15日発行の「臨床看護2月号」の写しには、「患者満足の視点に立った『医療コンシェルジュ』の役割と今後の展開について」と題する記事において、「コンシェルジュとは」の見出しのもとに、「『コンシェルジュ』とは辞書を引くと門番、(建物の)守衛、(ホテルの)接客係[案内係]、(アパートの)管理人などと記されており、・・・一般に認知されている意味はConcierge=コンシェルジュとは、ホテルなどで活躍する幅広い、かなり高度な知識を有する頼れるお客様係のことを示すことが多い。」の記載とともに、「図3 医療コンシェルジュの役割」として、「・患者様・主治医の先生からの連絡を受け、ご要望をお聞きする ・当方の担当医と相談し、必要な資料要請や当日のスケジュールについて分析検討する ・初診受付代行や当日の診察・検査予約の確保を行う ・患者様に当日の準備(絶食や前処置)、来院時間、来院場所等のご案内を行う ・当日患者様に院内を付き添ってご案内する ・場合により検査の説明や診察内容の説明を行う ・以後の検査等の予定について管理、連絡をする」と記載されている(甲第3号証)。
イ 「Yoshiohotta.com」と題するウェブサイトの写しには、「Agora,2004年9月 医療コンシェルジュ」の見出しのもとに、「『病院での待ち時間は何とかならないものか』『診察をたった5分ですまされた』医療機関への不満は洋の東西を問わない。・・・そこで新たな医療サービス、『医療コンシェルジュ』が昨年から全米のいくつかの病院で始まり、両者の苦情を解消する動きが注目されている。コンシェルジュはホテルの宿泊客にさまざまな便宜をはかるサービスだが、そのコンセプトを病院にもとり入れようというのだ。」との記載がされている(甲第21号証)。
ウ 「医療と画像の総合情報誌INNERVISION」と題するウェブサイトの写しには、2005(平成17)年11月25日発行に係る「インナービジョン【医療と画像の総合雑誌】」についてのバックナンバー紹介情報において、「【特別報告】医療サービスを変革する医療コンシェルジュ」(インナービジョン12月号(20巻13号)より抜粋)の見出しのもとに、「医療コンシェルジュは、患者の要望や病状に応じて病院での検査や診察の予約、交通機関の手配、家族への連絡などを代行するサービスとして、欧米では20年ほど前から広く利用されており、・・・」、「『医療コンシェルジュを体験して望むこと』と題したパネルディスカッションでは、患者の立場から山口誉起氏が、開業医の立場から名古屋大学名誉教授の佐久間貞行氏が、医療コンシェルジュの立場から(株)ハイメディックの本田奈穂美氏が、病院経営の立場から名古屋大学医学部附属病院医療経営管理部の杉浦伸一氏が、それぞれの経験を基に、同サービスへの期待を述べた。」などの記載がされている(甲第22号証)。
エ 「医療コンシェルジュ導入による外来診療の改善効果と問題点 -外来待ち時間の劇的短縮と患者満足度向上を目指して-」(病院管理 第43巻 第2号 抜刷 2006.4)を見出しとする研修資料の写しにおいて、要約に「・・・患者の代理人として初診受付や診察/検査の予約代行、当日の院内案内や付添いを行う、医療コンシェルジュ(以下コンシェルジュ)なる職種を創設した。名古屋大学医学部附属病院で2005年6月から約5ヶ月間試験的に運用し・・・」と記載されている(甲第23号証)。
オ 「名大病院に医療コンシェルジュ 患者と医師の橋渡し役に 診察までの時間を短縮」を見出しとする信濃毎日2006(平成18)年9月の新聞報道切抜き写しにおいて、「医療コンシェルジュの仕事はこんな感じだ。患者からかかりつけ医の紹介状や、健康保険証のコピー、エックス線写真などの検査データを送ってもらい、内容を吟味する。受診科を決め、担当医に紹介状やデータを渡し、検査を手配する。・・・希望に応じコンシェルジュは医師の説明に同席するので、患者はよく分からなかった説明を後でコンシェルジュに聞き直すことができる。」の記載ほか、「医療コンシェルジュの役割」と題するフロー図などが掲載されている(甲第24号証)。
カ 2006(平成18)年9月25日発行の「月刊看護きろく」(vol.16 no.6)の写しにおいて、「医療コンシェルジュの視点から」の項目のもと、「1)医療コンシェルジュと外来看護」を見出しとする箇所に「本シリーズの第4回(本誌Vol.16,No.4,P.61,62)で、外来看護の患者サービスに関する業務を一つの新しい分野としてまとめ、専門的に機能する『医療コンシェルジュ』という仕事について紹介した。業務内容は決して新しいものではなく・・・」、「役割と業務内容:外来通院患者の診療の予約・手続き、検査・処置の準備、交通手段の手配、家族への連絡、諸々の代行サービス、紹介先への連絡、情報の収集と発信、各種手続き、セカンドオピニオンへの連絡、検査結果の説明受け時間の調整など」の記載ほか、医療コンシェルジュの業務フロー図などが掲載されている(甲第25号証)。
キ 「医療法人社団恵愛会大分中村病院」と題するウェブサイトの写しには、「第18回大分中村病院職員講習会 医療の質の向上を目指し?『医療コンシェルジュ』がもたらす役割?」を表題とする掲載において、「*用語説明:医療コンシェルジュ 医療コンシェルジュは、患者さまの代理人として最適医療機関の選定やセカンドオピニオン的なアドバイスを行い、また病院内をガイドする等して、待ち時間の短縮や効率的な受診を現実するものです。・・・」の記載ほか、上記オの信濃毎日2006(平成18)年9月とする新聞切抜きが掲載され、その下に「2006年10月17日(火)No.366(勉強会・セミナー等::職員勉強会)」の記載がされている(甲第26号証)。
ク 表題下の「2006.11.20 009」の記載から2006(平成18)年11月20日を発行日と推認させる「MEDICAL LEPIOS」と題する刊行物の写しにおいて、「『医療コンシェルジュ』とは?」の見出しのもとに、「医療コンシェルジュの仕事」の小見出しのもとに上記アの「図3 医療コンシェルジュの役割」(甲第3号証)と同様の記載ほか、「また、同法人による研修・教育によるコンシェルジュ資格認定として、医療資格の有無を問わない『スタンダードコンシェルジュ』と看護師・保健師等の医療資格を有する『エクスパートコンシェルジュ』とに区分している。」の記載、「医療コンシェルジュと患者サービスの今後」の小見出しもとに「現在、名大病院には4人の医療コンシェルジュが業務委託で派遣されている。・・・」などの記載がされている(甲第29号証)。
ケ 2006(平成18)年11月20日発行の「医療タイムス」(No.1795)の写しにおいて、「-『医療コンシェルジュ』とは、一体どのようなものでしょうか。また、研究所の業務内容は」の見出しのもとに、「医療コンシェルジュとは、患者の代理人として、初診受付や診察・検査の予約の代行、当日の院内案内や付き添いを行い、待ち時間の短縮や効率的な受診を実現するものです。」の記載、「-今後の運営方針についてお聞かせ下さい」との見出しもとに、「名大に続き大分県の大分中村病院、岐阜県の高井病院、近石病院などで医療コンシェルジュサービスが開始してます。」などの記載がされている(甲第30号証)。
コ 「医療現場にも『コンシェルジュ』 患者の代理人としてサポート 受診科決め検査も予約 待ち時間大幅に短縮」を見出しとする中日新聞2007(平成19)年6月8日付けの写しにおいて、「『コンシェルジュ』という言葉をよく聞くようになった。・・・顧客のさまざまな要望にこたえる高度な知識や技能を持った専門職のことを指すが、医療の現場でも登場し始めていて、待ち時間の短縮や、患者の不安を和らげるなどの効果も表れている。」の冒頭記事ほか、「患者の代理人として初診受け付けや診察・検査の予約代行、診察当日の院内案内や付き添いなどを期待されるのが医療コンシェルジュだ。」、「医療コンシェルジュのいる病院 名古屋大付属病院、大分中村病院(大分県)、高井病院(岐阜県)、東京大付属病院、東京ミッドタウンメディカルセンター、東大和病院、武蔵村山病院(東京都)、ハイメディッククリニックWest(大阪市)、済生会栗橋病院(埼玉県)」などの記載がされている(甲第31号証)。
サ 「患者と医師をつなぐ役割 医療コンシェルジュに期待 待ち時間短縮、説明時間は増加」を見出しとする聖教新聞2007(平成19)年7月13日付けの写しにおいて、「【医療コンシェルジュの役割と位置づけ】」と題する図表に、「病院や主治医の情報提供」、「当日の案内」、「初診手続きの代行」及び「診察、検査の予約」などの記載、及び「現在では全国12の医療機関にコンシェルジュが誕生。・・・医療コンシェルジュの資格は大きく二つに分かれます。」と記載されている(甲第32号証)。
シ 「Business Risk Management 2007●August」の「医療現場のコミュニケーションを円滑にする『医療コンシェルジュ』」の見出しの抜粋頁写しにおいて、「医療コンシェルジュの7つの役割」の小見出しのもとに上記アの「図3 医療コンシェルジュの役割」と同旨の記載のほか、「現在は、名大病院が独自に設定している登録医(平成19年7月現在約790医療機関)に対して、事前紹介予約を促すために、コンシェルジュサービスを提供する形となっている。」との記載がされている(甲第32号証)。
ス 「最新医療経営 フェイズ・スリー」(2007.NOV.No.279)の写しにおいて、「医療コンシェルジュ資格の創設で患者のサポートのみならず病院経営にも大きく貢献」と題する対談記事が掲載されている(甲第34号証)。
(2)上記(1)の認定事実によれば、医療関係の雑誌、ウェブページ及び日刊各紙において、「医療コンシェルジュ」についての記述が認められ、該「医療コンシェルジュ」の文字は、患者の代理人として最適医療機関の選定、検査・診察内容の説明、病院内のガイド、外来通院患者の診察の予約・手続き、検査・処置の準備などをする者を表す語として記載されているというべきものである。
そして、医療に携わる医師、看護師や事務職員などの病院関係者に限らず、患者やその付添者においては、治癒又は延命に係る治療に対する切望さとも相まって医療機関の選定、医療における諸手続などの関心度は決して低いものでなく、役務の提供を受けるにあたり、常に細心の注意力を払うというべきであり、これら医療に関するウェブサイト、新聞などの情報にも相当の関心を抱くとみるのが自然であるばかりでなく、医療コンシェルジュが配置されている病院が本件商標の登録査定時前には全国に9箇所(甲第31号証)、登録査定時後には12箇所(甲第32号証)あった旨の報道がされたことをも考慮すると、「医療コンシェルジュ」の文字からは、これに接する需要者をして、医療機関の選定、外来通院患者の診察の予約・手続き、検査・処置の準備、検査結果の説明などのサービスを行う接客係を想起し印象付けられ、その職種を認識させるものとみるのが相当である。
(3)被請求人は、日本語で記載された甲各号証は請求人に関する記事及び論文であり、請求人以外の一般の需要者・取引者によってイ号標章が使用されていることを立証するものではなく、イ号標章は、自他役務の識別力を有する旨主張している。
しかし、たとえ、上記(1)で認定したほとんどの事実が請求人に係る証左であったとしても、上記(2)認定のとおり、既に医療コンシェルジュが配置されている病院が12箇所あったことが報道されたことを考慮すると、「医療コンシェルジュ」の文字は、医療従事者及び患者などにおいて、請求人又は同人と関係を有する者が提供する役務を表すものとしてではなく、各地の医療機関において配置された医療に関連する役務を提供する者又はその職種を表すものとして認知されていたとみるのが相当である。
また、被請求人は、同人関連の産婦人科病院・水口病院における「医療コンシェルジュ」の使用及びこれに関しての雑誌、書籍への掲載やテレビ放送での放映などにより、「医療コンシェルジュ」の文字が水口病院の使用に係る商標として周知となっていた旨主張している。
しかし、被請求人の提出した乙各号証によれば、被請求人及び水口病院の各ウェブページの写し(乙第10号証及び乙第11号証)において、雑誌、新聞、テレビによって「医療コンシェルジュ」が紹介された旨記載されているとともに、各種雑誌及びパンフレット(乙第9号証、乙第17号証ないし乙第22号証及び乙第26号証)に「医療コンシェルジュ」の文字が使用されていたことを認め得るとしても、他方、上記(1)認定のとおり、被請求人及び水口病院とは別法人と認められる医療法人等においても医療コンシェルジュがいた旨報道されていたものであるばかりでなく、2007(平成19)年12月1日発行の「月刊新医療」(乙第17号証)には、水口病院の関係者による記事が掲載されているところ、そこには、「我々が『水口型』と呼ぶ医療コンシェルジュの役割が確立されてきている。」、「医療コンシェルジュを採用するケースは他の病院でも見られるが、院内のサービスに特化した職種として捉えられているのが実情である。しかし、水口型の医療コンシェルジュでは、・・・」などと記載されていることから、「水口病院」と「他の病院」における医療コンシェルジュに係る役務の内容に一部相違するところがあるとしても、水口病院も他人が「医療コンシェルジュ」を採用していることを認識していたということができる。
そうすると、「医療コンシェルジュ」の文字が水口病院に係る固有の商標として需要者の間に広く認識されていたとは認めることができないから、これら被請求人の主張及び乙各号証をもって前記認定を左右することはできない。
したがって、被請求人の主張は、いずれも理由がない。
3 まとめ
以上によれば、「医療コンシェルジュ」の文字を普通に用いられる方法で表示するイ号標章は、これを判定請求に係る指定役務中、第44類「患者及びその家族に対する心理検査結果・臨床検査結果・健康診断結果に関する解説・説明,病院の紹介及び取次ぎ,病院の予約の媒介又は取次ぎ」に使用するときには、これに接する取引者、需要者をして、「医療コンシェルジュ」が提供する役務を認識させるにとどまり、役務の質を表示するものというべきであり、また、該「患者及びその家族に対する心理検査結果・臨床検査結果・健康診断結果に関する解説・説明,病院の紹介及び取次ぎ,病院の予約の媒介又は取次ぎ」と類似すると認められる判定請求に係る指定役務中の第44類に属するその余の指定役務に使用するときには、これに接する取引者、需要者をして、「医療コンシェルジュ」によって提供される役務であるかのように役務の質を表示するであろうと認識させるものというべきであり、さらに、これを判定請求に係る指定役務中、第41類に属する指定役務に使用するときには、これに接する取引者、需要者をして、その役務の内容が医療コンシェルジュに係るものと認識させるに止まり、役務の質を表示するものというべきである。
そうすると、イ号標章は、これを判定請求に係る指定役務のいずれに使用しても、当該指定役務の質を普通に用いられる方法で表示する商標といえるから、商標法第26条第1項第3号に該当するものである。
したがって、判定請求に係る指定役務に使用するイ号標章は、本件商標に係る商標権の効力の範囲に属しないとすべきである。
よって、結論のとおり判定する。
別掲 別掲
本件商標


判定日 2009-04-13 
出願番号 商願2006-112484(T2006-112484) 
審決分類 T 1 2・ 9- ZA (Y4144)
最終処分 成立  
前審関与審査官 松浦 裕紀子 
特許庁審判長 井岡 賢一
特許庁審判官 末武 久佳
田村 正明
登録日 2007-07-27 
登録番号 商標登録第5066745号(T5066745) 
商標の称呼 イリョーコンシェルジュ、コンシェルジュ 
代理人 齋藤 理絵 
代理人 幸田 全弘 
代理人 田中 秀晴 
代理人 柳町 亜友美 

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