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審判番号(事件番号) データベース 権利
取消2007300236 審決 商標

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審決分類 審判 全部無効 商4条1項7号 公序、良俗 無効としない 117
管理番号 1197333 
審判番号 無効2008-890064 
総通号数 114 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2009-06-26 
種別 無効の審決 
審判請求日 2008-08-20 
確定日 2009-05-07 
事件の表示 上記当事者間の登録第1953147号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第1953147号商標(以下「本件商標」という。)は、「テディベアー」及び「TEDDYBEAR」の文字を上下二段に横書きしてなり、昭和60年2月7日に登録出願、第17類「被服、布製身回品、寝具類」を指定商品として昭和62年5月29日に設定登録され、その後、平成9年5月27日及び平成18年12月26日の2回にわたり商標権の存続期間の更新登録がされているものである。

第2 請求人の主張の要点
請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由及び被請求人の答弁に対する弁駁の理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1ないし第7号証(審決注:請求人記載の「甲第19号証」は「甲第6号証」の誤記と、また「甲第20号証」は「甲第7号証」の誤記と認められる。)を提出している。
1 請求の理由
本件商標は、「公正な競争秩序ないし公平の観念に反するものとして、商標登録の無効事由を構成する余地がある」から、その登録を無効とすべきである。
本件商標は、米国の有名な「セオドア・ルーズベルト」に関する「小熊のエピソード」、「テディベアの著名性」を利用して利益を得る目的で商標登録されたもので、反社会的である。被請求人は独自に本件商標を考案したものではなく、上記の目的があることは明らかである。そのことは、請求人関連が求めた審決取消訴訟(平成20年(行ケ)第10014号事件)の判決において知的財産高等裁判所の裁判官から指摘されている(甲第1号証)。
上記事情を示すために、上記審決取消訴訟に係る審判(取消2007-300236)の関係資料を提出する(甲第2号証)。
2 弁駁の理由
(1)請求人は、被請求人等が所有する本件商標について不使用による商標登録の取消審判を請求したところ、「理由なし」と退けられた。そのため、知的財産高等裁判所に対して訴えを提起し審決の取消を求めたところ(平成20年(行ケ)第10014号審決取消請求事件)、請求人の主張が認められず棄却された。
しかし、そのときの「判決文」において、「『テディベアー』(又は『テディベア』)という語を商標として登録し、それを特定の商標権者が独占することは、セオドア・ルーズベルトの有名なエピソード、又はテディベアの愛称をもつ小熊のぬいぐるみ固有の人気や著名性に便乗する意図、又は誰もが自己の商品にその『テディベアー』等の名称を自由に使用できるという共通の認識を覆す意図があり、公正な競争秩序ないし公平の観念に反するものとして、商標登録の無効事由を構成する余地があるというべきである。・・・本件商標に係る商標権の取得又は被告によるその譲り受け若しくは使用が、公正な競争秩序ないし公平の観念に反した不正の目的をもってしたものと認められる」と判示された。
そのため、請求人はその判決主旨に従って、本件無効審判を請求したものである。
したがって、上記審決取消訴訟の判決主旨を改めて以下に主張する。
(2)被請求人による本件商標の不正使用について
(ア)被請求人等は、株式会社ドウシシャ(以下「ドウシシャ」という。)に本件商標を使用させ、多額の使用料を受け取っている。それ等は上記審決取消訴訟事件における証拠として、被請求人が提出したものに裏付けられている(甲第4号証)。
(イ)被請求人株式会社友企画(以下、「友企画」ということがある。)は、米国第26代大統領セオドア・ルーズベルトを記念して誕生した世界的に有名な「TEDDY BEAR」を不正に使用させ多額な収益を上げている会社である。そもそも、同社は、同社の元代表小川友久氏(現代表はその配偶者である。)が勤務していた帝人株式会社を退職する時にタダ同然で本件商標の譲渡を受け、それを盾にドウシシャと組み、「TEDDY BEAR」と関係がある様に日本の消費者へ信じ込ませ、大金を得ている不正な会社である。
帝人株式会社は、本件商標を自ら使用することは反社会的と判断し、被請求人に譲渡したと噂されている。
友企画の本社は、吉祥寺の住宅街にあり全く実態がなく単に本件商標をドウシシャに不正使用させ利益を上げているにすぎない。その実情を説明するため、興信所の調査資料を提出する(甲第6号証)。
(ウ)ドウシシャは、上記「TEDDY BEAR」を販売するにあたり友企画と契約して本件商標の使用を独占的に得ている会社であり、両社は共同で「TEDDY BEAR商品」を販売し利益を上げている。
ドウシシャは、本件商標をあたかも米国第26代大統領セオドア・ルーズベルトに係る公益法人「セオドア・ルーズベルト協会」(以下「ルーズベルト協会」という。)の「テディベア」に関連があるように商品を販売している。それに対して何の支払いも行わず、所謂「只乗り」の状況である。
特に、それらの商品には、上記エピソードの「1902年」の年号が強調して表示されていることを見れば、その便乗ぶりが窺える。
日本の消費者は決して「テディベア」の商標に魅力があるのではなく、ルーズベルト協会に関連する有名な「小熊」を評価して「本件商標」の関連商品を購入しているのである。
してみれば、消費者を欺くものであり、また、不正な取引を行っているといわざるを得ない(甲第5号証)。
(エ)株式会社雄鶏社は、女性用手芸商品販売で日本を代表する会社であるが、不正に「TEDDY BEAR」商標を登録し所有し、やはりドウシシャにそれを使用させ多額な収益を得ている会社である。
その登録商標について、被請求人に専用使用権を設定させ共同でドウシシャに協力している。
(オ)これら3社の商標活動は、不正なもので「公正な競争秩序ないし公平の観念に反するものである」から、本件商標はその登録を無効にするべきものである。

第3 被請求人の答弁の要点
被請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として乙第1ないし第11号証を提出している。
1 請求人適格の欠如
請求人は、審判請求書において、審決取消訴訟(平成20年(行ケ)第10014号事件)を請求人関連が求めた旨述べている。上記事件の原告は、ジャス・インターナショナル株式会社(以下「ジャスインターナショナル」という。)であるから、本件審判は、請求人がジャスインターナショナルの代表者として請求したものと推認できる。
しかしながら、ジャスインターナショナルは、すでに本件商標について、無効審判を請求している(無効2008-890040)。そして、自然人としての請求人は、法人としての該会社とは別人格であるから、本件審判を請求することについて、別個の利害関係が必要であるところ、請求人は、これを何ら明らかにしていない。
したがって、本件審判の請求は、不適法であって、その補正をすることができないから、審決をもって却下すべきものである。
なお、請求人適格が認められたとしても、下記のとおり、請求人の主張には理由がない。
2 請求人の主張の要点について
請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由は、以下の項目よりなる。
(1)本件商標は、「公正な競争秩序ないし公平の観念に反するものとして、商標登録の無効事由を構成する余地がある」から、無効とすべきである。
(2)本件商標は、米国の有名な「セオドア・ルーズベルト」に関する「小熊のエピソード」、「テディベアの著名性」を利用して利益を得る目的で商標登録されたもので、反社会的である。被請求人は独自に本件商標を考案したものではなく、上記の目的があることは明らかである。
(3)上記のことは、審決取消訴訟(平成20年(行ケ)第10014号事件)の判決でも、知的財産高等裁判所の裁判官から指摘されている。
3 請求人の主張に対する反論
請求人は、本件商標は、「公正な競争秩序ないし公平の観念に反するものとして、商標登録の無効事由を構成する余地がある」から、無効とすべきである(請求の理由1)旨主張する。
請求人は、本件商標の登録無効事由の適用条文について、明示していないが、審決取消訴訟(平成20年(行ケ)第10014号事件)の判決でも、知的財産高等裁判所の裁判官から指摘されている(請求の理由3)旨主張しているので、判決理由にそって、本件商標が商標法第4条第1項第7号に該当しない旨答弁する。
なお、請求の理由2は、判決において認定されたものではない。
4 審決取消訴訟の判決について
(1)上記判決は、「商標登録の無効事由を構成する余地がある」と述べるにとどまり、無効事由の有無について、詳細な検討がされているものではない。
確定判決は、主文に包含するものに限り、既判力を有するのが原則であり(民事訴訟法第114条第1項)、上記指摘は、判決理由中にあるので、本件審判において何ら拘束力はない。
それでも、被請求人は、以下の理由で、判決は不当なものと考える。
(2)平成20年(行ケ)第10014号事件は、不使用を理由とする取消2007-300236号事件の審決の取消を求めて、ジャスインターナショナルが出訴したものである。原告は、本件商標の使用がセオドア・ルーズベルト大統領の有名なエピソードである「小熊のテディベア」の「著名性」に便乗し商売をする目的であったこと、本件商標の登録行為は「知的財産権」を否定するものであること、最近の裁判所等の判断も国際的観点からなされており、それを考えると「TEDDY BEAR」の商標の誕生過程についてこそ最重要視されるべきであること、本件商標の出願時に「TEDDY BEAR」は米国のルーズベルト協会の権利であると指摘されることを恐れ、故意にカタカナと合成させて出願し、登録後に故意にカタカナを外して出願したと推測出来ること等を取消事由に含めて主張した。これに対し、被告(本件審判の被請求人)は、商標法第50条に基づく取消請求に係る審決の取消事由の有無が争点であるから、前記主張自体が失当であると反論した。審決も、前記主張は、不使用取消審判の趣旨に該当しないものであるから、「採用することができない。」と判断した(審決書第9頁21ないし37行)。
これに対し、裁判所は、前記事由が「登録商標の不使用を理由とする商標登録の取消事由に該当すると評価することはできない」と判断したにもかかわらず、実質的には原告の主張と同一視される「弁論の全趣旨」を総合して、下記のとおり認定・判断を行った。
(ア)「Teddy bear」(又は「teddy bear」)の語は、米国において、独特の形をした小熊のぬいぐるみを意味し、我が国においても、独特の形をした小熊のぬいぐるみを意味する普通名詞として用いられ、またカタカナ表記の「テディベアー」(又は「テディベア」)の語も、我が国において、独特の形をした小熊のぬいぐるみを意味する普通名詞として用いられており、その名称は、誰もが自己の商品に自由に使用できるという共通の認識を有する状態になっていたといえる(判決書第14頁14ないし21行)。
(イ)「テディベアー」の語の由来を考慮すると、ぬいぐるみと同一又は類似の商品のみならず、ぬいぐるみと強い関連性のある商品についてであっても「テディベアー」という語を商標として登録し、それを特定の商標権者が独占することは、セオドア・ルーズベルトの有名なエピソード、又はテディベアの愛称をもつ小熊のぬいぐるみ固有の人気や著名性に便乗する意図がある(判決書第15頁2ないし12行)。
(ウ)本件商標は、公正な競争秩序ないし公平の観念に反するものとして、商標登録の無効事由を構成する余地がある(判決書第15頁13及び14行)。
裁判所は、判決理由中で、そもそも採用し得ない原告の主張について、認定・判断を行ったものであり、被告は、到底承服できるものではないが、請求は棄却されたので、上告して争うことができなかった。
(3)被請求人は、判決が請求人の主張の一部をなすものと考え、以下、項目ごとに反論する。
ア 普通名詞としての「テディベアー」
(ア)判決は、「teddy bear」(又は「teddy bear」)の語は、米国において、独特の形をした小熊のぬいぐるみを意味し、我が国においても、独特の形をした小熊のぬいぐるみを意味する普通名詞として用いられ、またカタカナ表記の「テディベアー」の語も、我が国において、独特の形をした小熊のぬいぐるみを意味する普通名詞として用いられており、その名称は、誰もが自己の商品に自由に使用できるという共通の認識を有する状態になっていたといえる、と判示する(判決書第14頁14ないし21行)。
(イ)しかしながら、本件商標に係る商標権が不正の意図の下に取得されたかどうか判断するにあたっては、出願時の社会認識を勘案すべきところ、本件商標の出願日である昭和60年2月7日の前後に発行された各種の国語辞典及びカタカナ語辞典のいずれにも、「テディベアー」及びこれと実質的に同一の語は収録されていない(乙第1ないし第6号証)。収録語数の多さと詳しい解説によって、わが国で代表的な辞書となっている広辞苑をみると、平成20年に入って初めて「テディベアー」の語が収録されている(乙第7及び第8号証)。したがって、本件商標の登録出願の際、我が国において、「テディベアー」の名称が、「熊のぬいぐるみ」を意味する普通名詞として意識されていたとは考えられない。
(ウ)仮に、「Teddy bear」(又は「teddy bear」)及び「テディベアー」(又は「テディベア」)の語(以下「テディベアー」と総称する。)が「独特の形をした小熊のぬいぐるみ」を意味する普通名詞として意識されていたとしても、取引者・需要者がその名称を商標として自由に使用できるという共通の認識を有するのは、せいぜい「ぬいぐるみ」についてのみである。これ以外の商品については、自己の商標として自由に「選択」できる状態であったというべきである。このような商標選択の自由を前提として、複数の商標が競合した場合の権利関係を明確にするために、わが国商標法は、最先の出願人に登録を認める先願主義の原則を採用しており、その趣旨に沿って、本件商標の出願人は、自己の使用を確保するために、本件商標を出願したものである。
したがって、「テディベアー」の名称は、誰もが自己の商品に自由に使用できるという共通の認識を有する状態になっていたといえる、という裁判所の判断は、誤りである。
イ エピソード又は小熊のぬいぐるみ固有の人気・著名性
(ア)判決は、「テディベアー」の語の由来を考慮すると、ぬいぐるみと同一又は類似の商品のみならず、ぬいぐるみと強い関連性のある商品についてであっても「テディベアー」という語を商標として登録し、それを特定の商標権者が独占することは、セオドア・ルーズベルトの有名なエピソード、又はテディベアの愛称をもつ小熊のぬいぐるみ固有の人気や著名性に便乗する意図がある、と判示する(判決書第15頁2ないし12行)。
しかしながら、前記のとおり、本件商標の登録出願の際、我が国において、「テディベアー」の名称が「熊のぬいぐるみ」を意味する普通名詞として意識されていたとは考えられないので、便乗すべき人気や著名性はないし、ましてや、セオドア・ルーズベルトのエピソードに由来することなど知られていようはずがない。
(イ)また、「セオドア・ルーズベルトの有名なエピソード」に「便乗する意図がある」と判示するが、本件審判の甲第2号証中、取消2007-300236の甲第1号証には、「現在この熊のぬいぐるみは『テディベア』として知られていますが、これがルーズベルト大統領の愛称、『テディ・ルーズベルト』にちなんで付けられた名前であることはあまり知られていません。」と記載されている。米国においてさえ、あまり知られていないエピソードに、ましてや、わが国で、しかも23年前に、便乗するメリットがあろうはずがない。
(ウ)なお、イタリア国のプロサッカーチームである「JUVENTUSFOOTBALLCLUBs.p.a」のチーム名の略称である「Juventus」の文字よりなる商標の更新登録無効審決取消訴訟の判決において、著名な外国の団体の名称又はその略称からなる商標又はこれらに類似した商標について、「その登録出願の際には、当該団体もその略称も我が国において著名ではなく、それ故、登録出願が前示のような不正の意図を伴うものではなかった場合には、その登録出願後に、当該団体及びその略称が我が国において著名となったとしても、そのこと故をもって直ちに該商標に係る商標権を保有することが公序良俗を害するものになるとは解し難い」とし、「商標法4条1項19号、同条三項、46条1項5号の各規定の趣旨及び相互関係からもそのように解すべきことが窺われる」と判示されている(東京高裁判決平成11年3月24日、平成10年(行ケ)第11号及び第12号)。この判決によると、商標登録出願時に当該名称が我が国において著名であったかどうかが不正の意図を認定する基準となっている。本件商標についていえば、「テディベアー」の名称が、登録出願の際、我が国において著名でないこと前記のとおりであるから、本件商標の出願人(譲渡人)に不正の意図はなく、たとえ、現在、該名称が普通名詞になったとしても、本件商標が公序良俗を害するものではないとするのが妥当である。
(エ)さらに、特定の事物でも著作物でもないエピソード自体は、商標法はもちろん、他の法律によっても保護されるものではないし、これに基づく商標が、公正な競業秩序ないし公平の観念に反するものであるということもできない。例えば、「忠大ハチ公」の有名なエピソードを想起させる「ハチ公」の語よりなる商標及びこれを構成中に含む商標は、多数登録されている(乙第9号証)が、商標権者と、エピソードの舞台である渋谷区及び渋谷駅周辺の商店街、ハチ公の飼い主の遺族を含め、第三者との間で紛争が生じた事実はない。
(オ)以上のとおり、セオドア・ルーズベルトのエピソードや小熊のぬいぐるみ固有の人気や著名性が、国家・社会の利益として保護されるべき特段の事情はない。したがって、「テディベアー」という語を商標として登録し、それを特定の商標権者が独占することは、セオドア・ルーズベルトの有名なエピソード、又はテディベアの愛称をもつ小熊のぬいぐるみ固有の人気や著名性に便乗する意図が出願時にあったとして、公正な競争秩序ないし公平の観念に反するものであるとする、裁判所の判断は誤りである。
(カ)また、商標法が商品同士の関連性について規定するのは、類似概念のみであるところ、本件商標の指定商品は、いずれも、「ぬいぐるみ」とは非類似であるし、商品及び役務の区分も異なるから、「ぬいぐるみと強い関連性のある商品」ではない。判決は、ぬいぐるみと同一又は類似の商品及びぬいぐるみと強い関連性のある商品について公序良俗の問題が生じると主張しているので、ぬいぐるみと強い関連性のない商品については公序良俗の問題はないことになる。そして、「ぬいぐるみと強い関連性のある商品」とは何か、なぜ本件商標の指定商品がこれに該当するのか、なぜ「ぬいぐるみと強い関連性のある商品」とそれ以外の商品を区別するのかについて、何ら判断されていない。
(キ)さらに、本件商標は、商標権が存在することを前提として、後述のとおり使用許諾契約が締結され、これに基づいて使用されてきたのであるから、「セオドア・ルーズベルトのエピソード」や「小熊のぬいぐるみ固有の人気や著名性」等、法的保護の対象にもなっていない、あいまいな概念をもって、商標登録を排除し、既存の法律関係に影響を及ぼすことは、法的安定性を著しく損ない、ひいては、商標制度への信頼を失わせることになる。
ウ 公正な競争秩序ないし公平の観念に反した不正の目的
(ア)商標法第4条第1項第7号(以下、単に「7号」ということがある。)を解釈するにあたっては、関連する他の法規との均衡を考慮して行うべきであり、むやみに解釈の幅を広げるべきではない(工業所有権法逐条解説第17版1181頁)。本件商標の登録出願の際、「公正な競争秩序ないし公平の観念に反した不正の目的」を認定するにあたっても、東京高裁判決(平成10年(行ケ)第11号及び第12号)に判示されたとおり、商標法第4条第1項第19号(以下、単に「19号」ということがある。)の規定を考慮して行うのが妥当である。
商標法第4条第1項第19号の適用には、他人の商標の周知性が要求されるのに対し、7号では、要求されない。また、19号には「不正の目的」が適用の要件として明示されているのに対し、7号には明示されていない。したがって、両規定の均衡を考慮すると、7号の「不正の目的」の解釈に際しては、19号の「不正の目的」よりも強い悪性が要求されるものと考える。
しかして、19号の「不正の目的」とは、「不正の利益を得る目的、他人に損害を与える目的その他の不正の目的」と規定されている。具体的には、外国において周知な他人の商標と同一又は類似の商標について、我が国において登録されていないことを奇貨として、高額で買い取らせたり、外国の権利者の国内参入を阻止したり、国内代理店契約を強制したりする等の目的で先取り的に出願した場合等がある(工業所有権法逐条解説第17版1187頁)。
(イ)本件商標は、被請求人が昭和63年から株式会社エトワール海渡、ドウシシャ等と使用許諾契約を締結し、現在に至るまで本件商標を使用してきた。株式会社エトワール海渡が、平成2年4月の時点で、ジャケット、ズボン、スカート、パーカー、トレーナーに「TeddyBear」の欧文字からなる商標を使用していることは、本件商標の登録の取消審判である平成2年審判第15077号の審決によって明らかである(乙第10号証)。また、ドウシシャがタオルについて前記商標を使用していることも、取消2007-300236の審決によって明らかである。
(ウ)このように、本件商標は、長年にわたり平穏に安定して使用されており、出願人及び被請求人が不正に利益を得たこともないし、請求人及びジャスインターナショナル以外の者から損害を被ったというクレームがきたこともない。したがって、本件商標の登録出願の際、7号の「不正の目的」はもとより、これより悪性が弱い、19号の「不正の目的」すらなかったのであるから、この点からも、公正な競争秩序ないし公平の観念に反した不正の目的を有するとした、裁判所の判断は誤りである。
5 取消2007-300236における主張について
請求人は、甲第2号証として、取消2007-300236号審判事件関係資料を提出しているので、同審判事件における請求人であるジャスインターナショナル(以下、この項で、「請求人」とは、ジャスインターナショナルをいう。)の主張・立証に対しても、本件商標の無効理由に関するものに限り答弁する。
(1)「テディベア」は知的財産権である旨の主張(平成19年7月6日付け審判事件弁駁書第3頁4ないし11行)
請求人は、「TEDDY BEAR」が大統領のニックネームであると主張するが、セオドア・ルーズベルト大統領自身が「TEDDY BEAR」と呼ばれていたわけではないので、この主張は誤りである。
また、「TEDDY BEAR」が「ルーズベルトの小熊」と知られていること、ルーズベルト大統領のエピソードによって誕生したことが多くの人に知られていると主張するが、これが誤りであることは、以下の記載から明らかである。
(ア)「現在この熊のぬいぐるみは『テディベア』として知られていますが、これがルーズベルト大統領の愛称、『テディルーズベルト』にちなんで付けられた名前であることはあまり知られていません。」(取消2007-300236の甲第1号証)
(イ)「TEDDY BEARがセオドア・ルーズベルトによって誕生したことをほとんどの日本人は知らないのが実状です。」(取消2007-300236の甲第6号証中の「TEDDY BEAR(テディ・ベア)と呼べるのはセオドア・ルーズベルト協会の公認された商品だけです」のパンフレット)
請求人は、米国は元より全世界で「TEDDY BEAR」は、セオドアルーズベルト大統領の知的財産権として認められていると主張するが、何の立証もない。また、先進国では「テディベア」は「小熊の人形」として「一般名称」とされ「商標登録」が出来ない商標となっている(上記弁駁書第3頁2及び3行)旨の主張と矛盾する。
(2)請求人は正規の「テディベア」商標の使用権者である旨の主張(平成19年7月6日付け審判事件弁駁書第3頁12ないし26行)
契約書(取消2007-300236の甲第2号証)第1条及び書状(取消2007-300236の甲第3号証)において、ルーズベルト協会は、請求人に対し、「the teddy bear image, ilustrations and name」の使用を許諾している。しかしながら、これが具体的にどのような商標をいうのか、何ら立証されていない。
また、同意書(取消2007-300236の甲第4号証)によると、ルーズベルト協会は、請求人に対し、「Teddy Bear Roosevelt」、「Roosevelt Teddy Bear」及びそれに関連した商標を日本国特許庁に出願することに同意している。しかしながら、これらの商標についても、「Teddy bear」及び「テディベア」についても、同協会が商標権を含めて何らかの権利を有していることは、立証されていない。
したがって、請求人は正規の「テディベア」商標の使用権者である旨の主張は誤りである。
(3)ルーズベルト協会と本件商標との関係(平成19年7月6日付け審判事件弁駁書第3頁27行ないし第4頁15行)
(ア)請求人は、ルーズベルト協会が「他人の著名名称を日本の会社が無断で商標登録し、且つ、同事業の妨害を行った」と非難している旨述べているが、上記のとおり、同協会が本件商標について何らかの権利を有することが立証されていないのであるから、本件商標の登録・使用が同協会の権利を侵害するものではない。
(イ)また、本件商標の構成自体が、何人の権威、尊厳、名声を傷つけるものではないことに加え、「TEDDY BEAR」が「セオドア・ルーズベルトによって誕生したことをほとんどの日本人は知らないのが実状で」、「ドイツのものと思っている日本人も多くいる程で」(取消2007-300236の甲第6号証中「TEDDY BEAR(テディ・ベア)と呼べるのはセオドア・ルーズベルト協会の公認された商品だけです」のパンフレット)、本件商標からセオドア・ルーズベルト又はルーズベルト協会を想起する日本人は、ほとんどいないのであるから、本件商標はセオドア・ルーズベルト又はルーズベルト協会の権威、尊厳、名声を傷つけるものではない。
(ウ)仮に、本件商標の登録によってルーズベルト協会の権威、尊厳、名声が傷つけられたとしても、もっぱら同協会に係る事情にとどまるものである。前記のとおり、「TEDDY BEAR」が、どこの国に由来するのか明確に認識し得ないのが実状であるから、本件商標が米国の権威、尊厳、名声を傷つけ、ひいては国際信義に反するものとは考えられないし、他にも国際信義に反すると解すべき具体的な事由は見出せない。過去の審決においても、フランス国で最も歴史があり、世界的に有名な大学の代名詞となっている「SORBONNE」及び「ソルボンヌ」の各文字よりなる商標について、フランス国の権威、尊厳、名声を傷つけるものでも、国際信義に反するものでもないと認定されている(乙第10号証)。
(4)被請求人の商標登録行為は「知的財産権」を否定するものである旨の主張(平成19年7月6日付け審判事件弁駁書第4頁12ないし26行)
(ア)請求人は、「先願主義」が否定された「類似事件」として、新聞記事(取消2007-300236の甲第8号証)、請求人と住所を同じくする「第三者」が発行する「ニュース」(取消2007-300236の甲第9及び第10号証)を提出したが、これらの事件は本件とは事案を異にするものである。
(イ)また、被請求人は米国のセオドア・ルーズベルト大統領の著名性と信用性を悪用して金儲けを行う行為であり、米国国内でも大変な非難を受けている旨主張するが、何の立証もない。逆に、本件商標が登録されてから21年経過し、長年使用されてきたにもかかわらず、本件商標の登録が米国の国民感情を害したとか、わが国と米国との関係が悪化したという事実はない。
6 むすび
以上のとおり、本件商標の出願の経緯が著しく社会的な相当性を欠くといえるような事実ないし商標登録出願を排除する特段の事情を構成するとは考えられない。また、本件商標は、その構成自体がきょう激、卑わい、差別的若しくは他人に不快な印象を与えるものではなく、さらに、指定商品について使用することが社会公共の利益に反し、又は社会の一般的道徳観念に反するものでもない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に規定する、公序良俗を害するおそれがある商標でないことは明らかである。
よって、本件審判の請求は成り立たない。

第4 当審の判断
1 請求人適格について
請求人が本件審判を請求する利害関係を有するか否かについて、当事者間に争いがあるので、まず、この点について検討する。
請求人は、被請求人に対して本件商標について商標法第50条第1項の規定に基づく商標登録の取消審判を請求し、さらに当該審判の審決の取消訴訟を提起したジャスインターナショナルの代表者であることは、当庁の記録上明らかであるから、上記取消審判及び取消訴訟の内容を熟知しており、当該訴訟の判決において本件商標の登録に無効事由を構成する余地がある旨示唆されたことも十分知っているものといえる。
確かに、法人としての会社と自然人である請求人とは別人格ではあるが、会社の利益になることを当該会社の代表者たる個人の立場で遂行しようとすることは、社会通念上不自然ではないから、本件審判の請求について、両者を厳密に区別して本案に入らず却下することは、形式にとらわれ妥当ではない。
したがって、請求人は、本件商標についてその登録の無効を求めることには理由があり、本件審判の請求をする利害関係を有するものというべきである。
そこで、以下、本案に入って審理する。
2 本件請求について
請求人は、本件商標登録の無効の事由について根拠条文を明示していないが、本件商標は「公正な競争秩序ないし公平の観念に反するものとして、商標登録の無効事由を構成する余地がある」から、その登録を無効とすべきであると主張し、審決取消訴訟(平成20年(行ケ)第10014号事件)の判決(以下、「取消審判判決」という。)でその旨指摘されていると述べ、取消審判判決の写しを提出しているところからすると、本件商標が商標法第4条第1項第7号に該当することを理由にして、同法第46条第1項第1号に基づき商標登録の無効を主張するものと解される。
そして、請求人は上記審決取消訴訟の基となった商標登録取消審判の関係資料(取消2007-300236号審判事件の「平成19年7月6日付け弁駁書」:以下、単に「取消審判弁駁書」という。)を提出しているので、以下、取消審判判決及び取消審判弁駁書を参酌して、本件商標が上記条項号に該当するか否かについて検討する。
3 本件商標の商標法第4条第1項第7号該当性について
(1)商標法第4条第1項第7号(以下、単に「7号」ということがある。)にいう「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」には、その構成自体が非道徳的、卑わい、差別的、矯激若しくは他人に不快な印象を与えるような文字又は図形である場合、当該商標の構成自体がそのようなものでなくとも、指定商品又は指定役務について使用することが社会公共の利益に反し、社会の一般的道徳観念に反するような場合、他の法律によって、当該商標の使用等が禁止されている場合、特定の国若しくはその国民を侮辱し、又は一般に国際信義に反する場合、当該商標の登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合、などが含まれるものというべきである。そして、当該商標登録が特定の国との国際信義に反するかどうかは、当該商標の文字・図形等の構成、指定商品又は指定役務の内容、当該商標の対象とされたものがその国において有する意義や重要性、我が国とその国の関係、当該商標の登録を認めた場合にその国に及ぶ影響、当該商標登録を認めることについての我が国の公益、国際的に認められた一般原則や商慣習等を考慮して判断すべきである(知的財産高裁、平成17年(行ケ)第10349号、平成18年9月20日判決参照)。
また、上記判断は、行政処分(商標登録の許否が一の行政処分であることはいうまでもない。)の本来的性格にかんがみ、一般の行政処分の場合におけると同じく、特別の規定の存しない限り、行政処分時、すなわち査定時又は審決時(査定不服の審判)を基準とすべきものと解される(東京高裁、昭和45年(行ケ)第5号、昭和46年9月9日判決参照)。このことは、商標法第4条第3項において同条第1項第8、第10、第15、第17及び第19号については出願時をも基準とすべき例外規定をおいていることからも首肯し得るものである。
なお、商標法第46条第1項第5号は、商標登録がされた後においてその登録商標が7号に該当するものとなっている場合(事後的事由)も無効事由に該当する旨規定しているところ、請求人がこの規定を根拠にしているか否かは明らかでないので、まず、査定時について検討することとし、事後的事由に該当するか否かについては後述する。
(2)「テディベアー」及び「teddy bear」の語について
(ア)請求人及び被請求人の提出に係る証拠によれば、以下の事実が認められる。
(a)岩波書店(1986年10月8日第4版第1刷)発行「岩波国語辞典第4版」、新潮社(昭和60年11月10日第1版第1刷)発行「新潮現代国語辞典」、旺文社(1986年10月20日)発行「旺文社国語辞典」、学習研究社(1987年7月20日)発行「マスコミに強くなるカタカナ新語辞典」、有紀書房(1989年5月2日)発行「国際社会に役立つ最新カタカナ語辞典」、教育図書(昭和63年2月10日4版)発行「ど忘れカタカナ語辞典」、岩波書店(1998年11月11日第5版第1刷)発行「広辞苑第5版」のいずれにも「テディベアー」又は「テディベア」の項目はない(乙第1ないし第7号証)。
(b)岩波書店(2008年1月11日第6版第1刷)発行「広辞苑第6版」の「テディー・ベア[teddy bear]」の項には、「熊のぬいぐるみの一種。テディーは、狩猟好きのアメリカ大統領Tルーズヴェルト(愛称テディー)が木につながれた小熊の命を助けたという[ワシントンポスト]紙の漫画に因む名。」と記載されている。
(c)「1902年11月にニューヨーク・タイムズ紙で紹介/それが『TEDDY BEAR』のはじまりです」との表題が付された書面(取消審判弁駁書中の甲第1号証)には、「テディベアの歴史」(翻訳文)として、「1902年11月、セオドア・ルーズベルト元大統領は友人達とミシシッピーに狩猟に出かけました。数時間も歩き回りましたが、野生動物にはなかなか遭遇しません。ついに、一行は一匹の子熊を追い詰め、取り囲みました。ガイドの一人が、ルーズベルト大統領にその熊を撃つように促しましたが、彼はそれを拒否しました。このエピソードがルーズベルト大統領の優しい行為として国中に広まりました。それからまもなくして、有名な風刺漫画家であるクリフォード・K・ベリーマンが、ルーズベルト大統領の熊を救ったエピソードを元に漫画にし、それを見たある店の主人が自分の店で熊のぬいぐるみを作って販売する事を思いつきました。彼は自分の店で販売するぬいぐるみに『テディベア』という名前を使わせてくれるようルーズベルト大統領に許可を求めました。現在この熊のぬいぐるみは『テディベア』として知られていますが、これがルーズベルト大統領の愛称、『テディ・ルーズベルト』にちなんで付けられた名前であることはあまり知られていません。」と記載されている。
(イ)以上の認定事実によれば、「teddy bear」の語は、米国第26代大統領セオドア・ルーズベルトが1902年に狩猟中に一匹の子熊を追い詰めたが撃たずに助けたというエピソードに由来する語であり、英米では「独特の形をした小熊のぬいぐるみ」を意味する語として知られているものといえる。そして、「teddy bear」のカタカナ表記である「テディベアー」の語は、現在においては、我が国においても「独特の形をした小熊のぬいぐるみ」を意味する語として知られているといえるものの、上記ルーズベルト元大統領のエピソードについてはそれ程知られていないというべきである。
しかも、本件商標の登録出願時及び登録査定時の前後に我が国において出版された国語辞典等には「テディベアー」についての項目がなく、2008年(平成20年)に発行された辞典において初めて「テディー・ベア」の項目が収録されたことからすると、本件商標の査定時においては「テディベアー」の語自体についてさえ我が国ではそれ程知られていなかったものと推認される。まして、上記ルーズベルト元大統領のエピソードが一般に広く知られていたものとはいい難い。
仮に、「テディベアー」の語が「独特の形をした小熊のぬいぐるみ」を意味する語として認識されていたとしても、これを自己の商品について自由に使用できるのはせいぜい商品としての「ぬいぐるみ」についてであって、それ以外の商品については自他商品を識別する商標として誰でも選択・使用することができる状態にあったというべきである。
(ウ)また、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、上記ルーズベルト元大統領のエピソードに由来する「独特の形をした小熊のぬいぐるみ」が「teddy bear」として、例えば、米国を象徴する存在となっているとか、米国民の重要な文化的資産として認識されているとか、米国民共通の財産として公的機関によって指定ないしは保護されているとか、特定の個人がその名称を使用することが米国政府によって制限されているとか、その名称使用に対し米国政府から抗議を受けたり、米国の国民感情を害したとか、我が国と米英との関係が悪化したというような事実を示す証左はない。
(エ)取消審判弁駁書では、「テディベアー」は米国第26代大統領セオドア・ルーズベルトの知的財産権であり、ルーズベルト協会から「テディベア」商標の日本での使用権を得ている旨主張し、証拠を提出しているが、上記ルーズベルト元大統領の知的財産権であるとの主張は、取消審判判決にいう「カタカナ表記の『テディベアー』(又は『テディベア』)の語も、我が国において、独特の形をした小熊のぬいぐるみを意味する普通名詞として用いられており、その名称は、誰でもが自己の商品に自由に使用できるという共通の認識を有する状態になっていた」(同判決書14頁18行ないし21行)ことと矛盾するものであり、直ちにその主張を採用することはできない。
しかも、取消審判弁駁書中の甲第2ないし第7号証は、本件商標の登録出願後20年以上も経過した時点でのものであり、本件商標の登録出願時及び登録査定時における事情を立証するものとはいえない。
なお、上記ルーズベルト協会から我が国が非難、抗議を受けたような事実を示す証左はない。
(オ)取消審判判決では、「ぬいぐるみと同一又は類似の商品のみならず、ぬいぐるみと強い関連性のある商品についてであっても、『Teddy bear』又は『teddy bear』(『テディベアー』又は『テディベア』)という語を商標として登録し、それを特定の商標権者が独占することは、セオドア・ルーズベルトの有名なエピソード、又はテディベアの愛称をもつ小熊のぬいぐるみ固有の人気や著名性に便乗する意図、又は誰でもが自己の商品にその『テデイベアー』等の名称を自由に使用できるという共通の認識を覆す意図があり、・・・」(同判決書15頁3行ないし10行)と判示しており、請求人も同趣旨の主張をするものと解されるが、前示のとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、上記エピソードは知られていたとは認められないし、「テディベアー」の語自体それ程知られていたとはいえない以上、その人気や著名性に便乗する意図等があったものとはいえない。また、ぬいぐるみと強い関連性のある商品とは具体的にどのような商品をいうのか何らの説明もなく、本件商標の指定商品とどのような関係を有するのか明らかでない。
(3)請求人は、当審における平成20年11月18日及び同月19日提出の弁駁書において、被請求人等は本件商標を使用許諾し使用権者に不正使用させている旨主張し、証拠(甲第3ないし第6号証)を提出しているが、提出に係る証拠を精査しても、使用権者による本件商標の使用が直ちに不正なものと認めることはできないし、もともと、これらの証拠は本件商標の登録出願及び登録査定当時の事情を立証するものではない。
また、取消審判弁駁書において、近年は日本における商標の先願主義の行き過ぎが否定されており、従来の早い者勝ちの考え方は時代に即さず否定されている旨主張し、証拠(取消審判弁駁書中の甲第8ないし第10号証及び取消審判における平成19年11月28日付けの上申書中の甲第11号証)を提出しているが、該証拠において示された事件は、本件とは商標が異なるばかりでなく、商標の周知著名性、商標の採択・使用の事情等が本件とは異なるものであり、同列に論ずることはできないものである。
(4)他方、本件商標は、前記第1のとおり、「テディベアー」及び「TEDDYBEAR」の文字からなるところ、「テディベアー」及び「TEDDYBEAR」の文字自体が非道徳的、卑わい、差別的、矯激若しくは他人に不快な印象を与えるようなものでないことは明らかであるし、他の法律等によってその使用が禁止されているものでもない。
そして、上記(2)の事情からすれば、本件商標が米国若しくは米国民を侮辱し、又は一般に国際信義に反するものとは認められないばかりでなく、本件商標の登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないということもできない。
したがって、本件商標は、公正な競争秩序又は公平の観念に反するものではなく、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標とは認められない。
(5)なお、請求人は、取消審判判決を根拠にして本件商標が7号違背で登録されたものであるとの主張を行うものと解されるが、同判決は、その理由中において本件商標には商標登録の無効事由を構成する余地があると指摘するに止まるものであるし、もとより、同判決は、商標登録の無効審判である本件とは異なり、商標法第50条第1項の規定に基づく商標登録の取消審判の審決取消訴訟に係るものであって、商標登録の無効事由について詳細に検討したものではなく、その既判力ないしは拘束力が本件に及ぶものではない。すなわち、審決取消訴訟は行政事件訴訟法の適用を受けるから、再度の審理又は審決には、同法第33条第1項の規定により、同取消判決の拘束力が及び、この拘束力は、判決主文が導き出されるのに必要な事実認定及び法律判断にわたるものである(東京高裁、平成12年(行ケ)第413号、平14.6.19判決参照)。しかるに、本件審判は、無効審判の審決取消訴訟に係る取消判決の再度の審判でもなく、上記商標登録の取消審判とは別個のものであり、上記平成20年(行ケ)第10014号判決が本件の審理判断に影響を及ぼすものではない。
(6)次に、本件商標が商標法第46条第1項第5号にいう事後的事由に該当するか否かについて検討する。
(ア)前示のとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時においては、米国第26代大統領セオドア・ルーズベルトの小熊を巡るエピソードはもとより、「テディベアー」の語自体それ程知られていたとはいえないが、近年では、「テディベアー」の語は、独特の形をした小熊のぬいぐるみを意味する普通名詞として知られているものと認められる。
しかしながら、取消審判弁駁書中の甲第1号証には、「現在この熊のぬいいぐるみは『テディベア』として知られていますが、これがルーズベルト大統領の愛称、『テディ・ルーズベルト』にちなんで付けられた名前であることはあまり知られていません。」と記載され、同じく甲第9号証にも同旨の記載があることからしても、上記セオドア・ルーズベルトのエピソードは、現在においてもそれ程知られてはいないものといえる。
(イ)請求人は、取消審判判決について、「本件商標に係る商標権の取得又は被告によるその譲り受け若しくは使用が、公正な競争秩序ないし公平の観念に反した不正の目的もってしたものと認められる」と判示したと述べているが、同判決の当該箇所は、「仮に、・・・認められるとしても」と仮定的に述べた部分であり、しかもその帰結は「商標登録の取消事由に該当すると評価することはできない」としているのである。
請求人の主張するとおり、本件商標の使用が不正の目的をもってしたものであるならば、商標法第50条の適用上、その使用を認めないとするのが取消審判における本旨に適うものと考えられる。このことは、例えば、知的財産高裁平成18年(行ケ)第10185号事件判決(平成18.10.26言渡)において、「・・・その取消しを免れるために被請求人が証明しなければならない審判請求登録前3年以内の日本国内における当該商標の使用は、その使用自体が法的保護に値する正当な行為といえるものでなければならないというべきであって、・・・違法な状態のもとに信用の蓄積を認めることは許されず、かかる違法な使用は、商標法50条にいう登録商標の使用に当たるということはできないと解するのが相当である。」と判示されていることからも首肯し得るものである。
(ウ)そして、請求人は、被請求人が本件商標を不正に使用している旨主張し、取消審判弁駁書中の証拠を援用し、さらに甲第4ないし第6号証を提出しているが、これらの証拠を精査してみても、被請求人及び本件商標の使用権者が本件商標を不正に使用し、消費者を欺いたり、不正な取引を行っている事実を見出すことはできない。確かに、ドウシシャのホームページに掲載された商品には「TeddyBear」の表示の下に「SINCE 1902」の文字が小さく表示されているものがあり、セオドア・ルーズベルトのエピソードの1902年と一致することからすると、需要者に誤解を与えるおそれがないとはいい切れないとしても、そのことのみをもって不正な使用ということはできない。むしろ、被請求人及び使用権者は、本件商標の商標権に基づき、本件商標を正当に使用しているものというべきである。
(エ)取消審判弁駁書においては、「TEDDY BEAR」がセオドア・ルーズベルト大統領及びルーズベルト協会の知的財産権として認められている旨主張され、証拠が提出されているが、該証拠を精査してみても、セオドア・ルーズベルト大統領及びルーズベルト協会が商標権等の具体的な権利を有しているのか明らかでない。そして、ジャスインターナショナルがルーズベルト協会から「テディベア」商標の使用許諾を受けているとして契約書、同意書等が提出されているが、同協会が具体的に如何なる権利に基づいて契約し同意しているのか不明である。
もとより、「TEDDY BEAR」がセオドア・ルーズベルト大統領及びルーズベルト協会の知的財産権であるとの主張は、前示のとおり、取消審判判決にいう「その名称は、誰でもが自己の商品に自由に使用できるという共通の認識を有する状態になっていた」ことと矛盾するものである。
(オ)また、取消審判弁駁書においては、「セオドア・ルーズベルト協会より『他人の著名名称を日本の会社が無断で商標登録し、且つ同事業の妨害を行った』と、大変な非難を浴びた。」及び「本件商標は、・・・アメリカ国内でも大変な非難を受けている。」と主張されているが、その主張事実を具体的かつ客観的に立証する証左は一切提出されていない。
(カ)その他、本件商標が登録された後、現在に至るまで、「独特の形をした小熊のぬいぐるみ」が「teddy bear」として、例えば、米国を象徴する存在となっているとか、米国民の重要な文化的資産として認識されているとか、米国民共通の財産として公的機関によって指定ないしは保護されているとか、特定の個人がその名称を使用することが米国政府によって制限されているとか、その名称使用に対し米国政府から抗議を受けたり、米国の国民感情を害したとか、我が国と米英との関係が悪化したというような事実を示す証左はない。また、本件商標が、公正な競争秩序又は公平の観念に反し、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標となっていると認めるに足る証左もない。
(キ)以上を総合すると、本件商標は、商標登録後において商標法第4条第1項第7号に該当するものとなっているということはできない。
4 まとめ
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に違反して登録されたものではないから、同法第46条第1項の規定によりその登録を無効にすべき限りでない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2009-02-26 
結審通知日 2009-03-02 
審決日 2009-03-23 
出願番号 商願昭60-9965 
審決分類 T 1 11・ 22- Y (117)
最終処分 不成立 
特許庁審判長 石田 清
特許庁審判官 久我 敬史
小林 由美子
登録日 1987-05-29 
登録番号 商標登録第1953147号(T1953147) 
商標の称呼 テディベアー、テッディーベアー 
代理人 曾我 道治 
代理人 岡田 稔 
代理人 坂上 正明 
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