• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部無効 外観類似 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Y03
審判 全部無効 称呼類似 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Y03
審判 全部無効 観念類似 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Y03
管理番号 1197232 
審判番号 無効2007-890014 
総通号数 114 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2009-06-26 
種別 無効の審決 
審判請求日 2007-02-09 
確定日 2009-04-20 
事件の表示 上記当事者間の登録第4966729号商標の商標登録無効審判事件についてされた平成19年10月30日付け審決に対し、知的財産高等裁判所において審決取消の判決(平成19年(行ケ)第10411号平成20年5月28日判決言渡)がなされ、同判決が最高裁判所の決定(平成20年(行ヒ)第293号平成20年11月21日決定言渡)により確定したので、さらに審理のうえ、次のとおり審決する。 
結論 登録第4966729号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4966729号商標(以下「本件商標」という。)は、「トリートメントチャージ」の片仮名文字と「TREATMENT CHARGE」の欧文字とを上下二段に横書きしてなり、平成17年11月18日に登録出願、第3類「化粧品,せっけん類」を指定商品として、同18年6月30日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
請求人が本件商標の無効の理由に引用する登録商標は、以下の(1)及び(2)のとおりである。
(1)登録第2553920号商標(以下「引用商標1」という。)は、「CHARGE」の欧文字と「チャージ」の片仮名文字を上下二段に横書きしてなり、平成3年5月31日に登録出願、第4類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同5年7月30日に設定登録、その後、同15年4月22日に商標権の存続期間の更新登録がなされ、さらに、指定商品については、同16年8月11日に第3類「せっけん類,歯磨き,化粧品,植物性天然香料,動物性天然香料,合成香料,調合香料,精油からなる食品香料,薫料」及び第30類「食品香料(精油のものを除く。)」を指定商品とする書換登録がなされ、現に有効に存続しているものである。
(2)登録第4900509号商標(以下「引用商標2」という。)は、別掲のとおりの構成よりなり、平成16年12月17日に登録出願、第3類「頭髪用化粧品,シャンプーその他の頭髪用せっけん類」を指定商品として、同17年10月14日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。
(以下、これらの商標をまとめていうときは、「引用各商標」という。)

第3 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第117号証(枝番を含む。)を提出した。
1 理由
本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反すると共に同第16号にも違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすべきものである。
(1)無効審判の請求に至った経緯について
請求人は、現在、引用商標を使用した商品を現に販売し、主力商品として育成しており、同業者である本件商標の権利者により本件商標が使用された場合、市場において請求人の商品の関連商品であるとか、OEM商品であるかのような出所の混同又は系列品であるかの如き誤認が生じ、請求人の蒙る営業上の損失は計り知れないものがあるから、本件審判を請求するに至った(甲第4号証ないし甲第7号証)。
登録異議の申立てと無効審判の両制度を併存させている商標法ではあるが、請求人にとって極めて重要な商標であることから、直ちに知財高裁への不服申し立てが認められている商標登録無効審判の制度を選択した。
(2)本件商標について
本件商標は、その構成より「トリートメントチャージ」の称呼のほかに、「トリートメント」が品質を表示する語句であることから、単に「チャージ」とも略称される商標である。
本件商標の観念であるが、構成中の「トリートメント」「TREATMENT」の部分は後述のとおり、せっけん類、化粧品における商品の普通名称又は品質表示として顕著に理解される語であるところ、後半部分の「チャージ」「CHARGE」の語は、我が国では「料金、手数料」の意味で、また「充電」の意味で良く知られた語である(甲第8号証ないし甲第10号証)。
したがって、本件商標から自然に生じる観念は、「トリートメント(商品の普通名称)のチャージ(自他識別標識のある部分)」である。
なお、登録第4610635号「ディープチャージ/DEEPCHARGE」が引用商標に類似しない商標として登録されている(甲第11号証)。この商標の実際の使用態様は、「コーセーコスメポートサロンスタイルディープチャージトリートメント」であり、「ディープチャージ」が「トリートメント」と結合されて、商品の品質を暗示する方法「ディープ(深く)+チャージ(浸透)+トリートメント(普通名称)」で使用されている。このようなことが業界一般に使用されるときは、商標「チャージ」の本来生じる意味が変容を受け、自他商品の識別力希釈化されることにつながるものである(甲第12号証及び甲第13号証)。
(3)引用各商標について
引用各商標は、「チャージ\Charge」より、「チャージ」の称呼と「Charge」より、「料金、手数料」又は「充電」の観念が生じる商標である。
(4)本件商標が引用各商標に類似することについて
本件商標の「トリートメント\TREATMENT」の部分は、指定商品「トリートメント効果のある化粧品」「トリートメント効果のあるせっけん類」との関係では、商品の品質を表示する語句であることが明白である。
「トリートメント」の語は、業界で、「ヘアトリートメント」(種類別名称=普通名称)の略称として使用されるとともに、「髪の保護」ないしは「髪の手入れ」の意味合いで品質用語として使用されている(甲第12号証ないし甲第19号証)。
したがって、本件商標の要部は、「チャージ\CHARGE」にあり、引用各商標の「チャージ」と称呼及び観念を共通にする類似の商標である。
そしてこのことは、前述のとおり、化粧品業界はもちろん、特許庁においても顕著な事実であると確信する。
すなわち、特許庁の電子図書館の「商品・役務名リスト」において、次のように紹介している(甲第20号証)。
「商品・役務名リスト」抜粋として、「03 トリートメント効果のある染毛剤 04C01」、「03 トリートメント効果のある頭皮用化粧品 04C01 2002-047631」、「03 トリートメント効果を有するワックスタイプのせっけん類 04C01 2002-001667」外19例の、計22例(「トリートメント効果?」、「ネイルトリートメント」、「ヘアートリートメント」及び「○○用のトリートメント」の語を用いた商品名)がある。
以上のとおり、「トリートメント効果を有するせっけん類」(類似群コード:04A01)、「トリートメント剤を洗い流す専用シャンプー」(類似群コード:04A01)及び「トリートメント効果のある頭皮用化粧品」(類似群コード:04C01)及び「毛穴用のトリートメント効果を有する化粧品」(類似群コード:04C01)の表示にもあるように、指定商品「トリートメント効果のある化粧品」や「トリートメント効果のあるせっけん類」との関係では、「トリートメント」の表示は、商品の品質を表示する語句であることが明白である。
したがって、本件商標の要部は「チャージ\CHARGE」にあり、引用各商標とは、「チャージ」の称呼及び観念を共通にする類似の商標であり、商標法第4条第1項第11号に違反して登録された商標であり、その登録は無効とされるべきものである。
(5)さらに、本件商標は、「トリートメント効果のある化粧品」や「トリートメント効果のあるせっけん類」以外の商品に使用された場合には、商標と品質の不実関係は明白であり、商標法第4条第1項第16号にも違反して登録されたものである。
2 答弁に対する弁駁
(1)「化粧品,せっけん類」についての「トリートメント/TREATMENT」の意味について
被請求人は、「トリートメント」の業界での使用例を挙げて、「『トリートメント』の文字が『化粧品,せっけん類』について『手入れ』『保護』ほどの意味合いで使用されていることが容易に理解される。」と述べている。これら多数の引例から「トリートメント」が「手入れ」、「保護」の意味で使用されていることは認められるが、後述するように、正確には「化粧品」との関係で、「トリートメント」は「手入れ用」、「保護用」の意味で使用されているのである。
(2)本件商標の一体性について
ア 被請求人は、本件商標について(ア)外観上の一体性、(イ)観念上の一体性、(ウ)称呼上の一体性を強調するが、外観はともかく、本件商標の観念、称呼について被請求人の論には無理がある。
被請求人は、本件商標の観念として、「『手入れの充電』、『保護の充電』ほどの漠然とした意味合いが容易に看取し」と述べるが、「手入れの充電」、「保護の充電」は言語として全く意味を呈せず、漠然とした意味合いであっても容易に看取できるものではない。「トリートメント」を「手入れ用」、「保護用」、また「チャージ」、「CHARGE」を商品名(商標)と理解することにより需要者一般に通じることととなる。
かような無理な観念の作出に基づく被請求人の称呼の一体性の主張は、その基礎を欠き妥当ではない。
イ 被請求人は小括において、「化粧品,せっけん類」について「CHARGE」及び「チャージ」の文字が商標の一部として多く採択され、引用商標と併存登録されていることをあげ、また引用商標に係る異議決定の一部を捉えて、「『CHARGE』及び『チャージ』の文字が『化粧品,せっけん類』について商標の一部として採択されることが多いため、『CHARGE』又は『チャージ』の文字のみによって商品の出所を識別することができず、他の文字と『CHARGE』又は『チャージ』の文字との結合商標については構成文字全体をもって一体不可分に看取する必要がある、との判断が根底にあるものと容易に推認される。」と述べる。
しかし、被請求人が取り上げる登録異議事件の決定の理由は、請求人において承服できないものではあるが、被請求人が推認するような認識が根底にあるものではない。すなわち、被請求人が参考資料第1号の4及び5において掲げる登録異議事件の要点が説示されている(甲第21号証)。
(3)化粧品公正競争規約と商標
ア 請求人は、審判請求書において「トリートメント」の表示は、商品の品質を表示する語句であると主張し、証拠方法として、甲第12号証ないし甲第20号証を提出した。
請求人はこの事実をさらに明確に主張し立証する。すなわち、請求人は「トリートメント」が用途を表わす名称であることを立証するため、甲第15号証「化粧品の表示に関する公正競争規約逐条Q&A,関係法令集」抜粋を提出しているが、さらに全体の理解に資するため「化粧品の表示に関する公正競争規約集」(化粧品公正取引協議会編)の抜粋を提出する(甲第22号証)。
「化粧品の表示に関する公正競争規約」(以下規約という)は、不当景品類及び不当表示防止法(昭和37年法律第134号)に基づいて「化粧品の表示に関する事項を定めることにより、一般消費者の適正な商品選択に資するとともに、化粧品業における不当な顧客の誘引を防止し、もって公正な競争を確保することを目的」に制定されたものであり(規約第1条)、事業者に対して「商品選択のための適正な情報提供」と「化粧品の品質、効能効果、安全性等について、虚偽又は誇大な表示による誤認されるおそれのある表示をしないこと」を求めている(規約第2条)。
そして、規約は化粧品の必要表示事項の一つとして、消費者の商品選択に資するため「種類別名称」を商品に明瞭に表示しなければならないと定め(規約第4条(1))、「化粧品の表示に関する公正競争規約施行規則」(以下施行規則という)で「種類別名称」の内容を規定している(施行規則別表1、種類別名称)。
また施行規則は、化粧品の使用部位、用途、剤型が商品の選択と使用に際して重要な事項となるため、「種類別名称」に付記するときの用語例を示しているが、その中で「トリートメント」が用途を表わす名称であることを明記している(施行規則別表1[備考]4)。
イ 被請求人も「トリートメント」の文字が「化粧品,せっけん類」について「手入れ」、「保護」ほどの意味合いで使用されていることを認めている(後記第4の1)。また、被請求人が引用する甲第12号証ないし甲第14号証及び乙第1号証によって証される「デイトリートメントファンデーション」(昼用の保護用ファンデーション)等の使用例の数々は正しく「トリートメント」が用途表示として商品の普通名称(種類別名称)に付記され使用されている実例である。
ウ 化粧品業界は、消費者の商品の適性な選択に資するため、前記のとおり表示に関する規約を定め、事業者及び消費者への周知理解に努めている。商品の適性な選択が行われるためには、商品の普通名称(種類名称)はもちろんのこと、使用部位、用途及び剤型等の表示が一義的に適性になされることが必須の要件である。これは、規約に定める用語が、規約に定める用法にしたがって使用されることにより達成されるものである。
商標の類否判断は、社会規範及び法規範に基づいてなされる法律的事実の認定であり、1個の商標の意味内容はそれらの規範に適合するようになされなければ、商標法第1条の目的、すなわち、「産業の発達」と「需要者の利益の保護」を全うし得ないものとなる。
エ 以上のように、本件商標の「トリートメント\TREATMENT」の部分は、指定商品「トリートメント効果のある化粧品」「トリートメント効果のあるせっけん類」との関係では商品の品質を表示する語句又は部分であり、本件商標の要部は「チャージ\CHARGE」にある。
3 したがって、本件商標は、引用各商標と「チャージ」の称呼及び観念を共通にする類似の商標であり、商標法第4条第1項第11号に違反して登録された商標であるから、その登録は無効とされるべきものである。
一方で、「トリートメント効果のある化粧品」「トリートメント効果のあるせっけん類」以外の商品に本件商標が使用された場合、商標と品質の不実関係は明白であり、商標法第4条第1項第16号にも違反して登録されたものである(甲第23号証ないし甲第25号証)。
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同第16号にも違反して登録されたものであって、商標法第46条1項により、その登録は無効とされるべきものである。

第4 被請求人の答弁
被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第13号証並びに参考資料第1号の1の1ないし参考資料第3号の23の2を提出した。
1 「化粧品,せっけん類」についての「トリートメント」「TREATMENT」の意味について
「トリートメント」及び「TREATMENT」の文字が、髪用化粧品やシャンプー等の分野において、「ヘアトリートメント」、「髪の保護」、「髪の手入れ」の意味合いで使用されていることは否定しないが、当該文字は、「扱い」、「待遇」、「治療(法)」、「手当て」等の語義をも有する外来語として市販の辞典に掲載され(甲第8号証及び甲第9号証)、一般に馴染まれている。また、本件商標の指定商品との関係においてみた場合、「トリートメント」の文字は、例えば、「ネイルトリートメント用クリーム、ネイルトリートメント用化粧品」、「アクネトリートメントモイスチャーライザー」、「デイトリートメントファンデーション」、「リップトリートメント」、「トリートメントリップスティック」、「トリートメントアイライナー」、「トリートメントリップグロス」、「トリートメントリップ」、「スキントリートメントエマルジョンパクト」、「トリートメントファンデーション」、「トリートメントマスカラベース」、「トリートメントツーウェイファンデーション」、「トリートメントソープ、アクネトリートメントソープ、薬用トリートメントソープ、グリーンティトリートメントソープ、アンチブレミッシュトリートメントソープ、トリートメントクレンジングソープ、フルーツ酸配合のトリートメント石鹸、フェイシャルトリートメントクレンザー」(甲第12号証ないし甲第14号証、甲第20号証及び乙第1号証)のように使用されており、これらの使用例から「トリートメント」の文字が「化粧品,せっけん類」について「手入れ」、「保護」ほどの意味合いで使用されていることが容易に理解される。
2 本件商標の一体性について
以下のとおり、本件商標は一体不可分にのみ看取されるべきであって、これより「チャージ」及び「CHARGE」の文字部分が独立して看取されるべき理由はない。
(1)外観上の一体性について
本件商標は、甲第1号証の1のとおり、「トリートメントチャージ」の片仮名を同書同大で等間隔にまとまりよく書し、その下に「TREATMENT CHARGE」の欧文字を同大で書したものである。この欧文字部分については、「TREATMENT」の文字と「CHARGE」の文字との間に一文字程度のスペースが設けられているとしても、かかるスペースの存在ゆえに「CHARGE」の文字部分が独立して看取されることにならないことは明らかである。
よって、本件商標の片仮名部分と欧文字部分とはそれぞれ一体不可分にのみ看取される。
(2)観念上の一体性について
上記(1)で述べたとおり、「トリートメント」及び「TREATMENT」の文字は、本件商標の指定商品「化粧品,せっけん類」について「手入れ」、「保護」ほどの意味合いで使用され、当該文字がかかる意味合いを有する外来語であることが理解されている。
一方、「チャージ」及び「CHARGE」の文字からは、請求人主張のとおり、「料金」、「手数料」、「充電」ほどの意味合いが容易に看取される。
してみれば、本件商標に接する需要者、取引者は、「トリートメントチャージ」及び「TREATMENT CHARGE」の文字より「手入れの充電」、「保護の充電」ほどの漠然とした意味合いを容易に看取し、本件商標を全体としてかかる意味合いを有する一種の造語と理解、認識するといえる。
したがって、本件商標は観念上まとまりを有する商標である。
(3)称呼上の一体性について
本件商標から生ずる「トリートメントチャージ」なる称呼は、これを略称せねばならないほど冗長なものではない。また、上記(1)及び(2)のとおり、本件商標は外観、観念上の一体性を有するものであり、かかる一体性と相俟って、本件商標は「トリートメントチャージ」とのみ称呼される。
(4)小括
以上のとおり、本件商標は、外観、観念、称呼のいずれにおいても一体性を有し、本件商標からは「トリートメントチャージ」の称呼のみが生ずる。
なお、「化粧品」又は「せっけん類」を指定商品とする、「CHARGE」又は「チャージ」の文字を含む商標は、引用商標を含めて155件(登録134件、出願21件)存在しており(乙第2号証)、かかる事実より「化粧品,せっけん類」について「CHARGE」、「チャージ」の文字が商標の一部として多く採択、使用されていることが容易に認められる。
また、かかる登録商標についてみると、登録第3370205号「SHISEIDO/NIGHT CHARGE」((株)資生堂)外24件(参考資料1の1の1及び2ないし参考資料1の25の1及び2)のとおり、「化粧品,せっけん類」について識別力を欠くか極めて識別力が弱い文字と「CHARGE」又は「チャージ」の文字との結合商標が、引用商標とは非類似の商標として登録されている。
なお、「ディープクリアチャージ/DEEP CLEAR CHARGE」及び「クリアチャージ/CLEAR CHARGE」(参考資料第1号の4及び5)については、請求人が、引用商標1を引用してこれらの商標は、商標法第4条第1項第11号に該当すると主張して登録異議の申立てをしたが、これらの商標は、いずれも「構成文字全体をもって一体不可分の造語を表したものと認識し把握されるとみるのが自然である」として、登録が維持されている(参考資料第2号の1及び2)。
上記参考資料1の1の1及び2ないし参考資料1の25の1及び2の並存登録の事実及び上記異議決定における説示は、「CHARGE」及び「チャージ」の文字が「化粧品,せっけん類」についての商標の一部として採択されることが多いため、「CHARGE」又は「チャージ」の文字のみによって商品の出所を識別することができず、他の文字と「CHARGE」又は「チャージ」の文字との結合商標については構成文字全体をもって一体不可分に看取する必要がある、との判断があるものと推認される。
してみれば、本件商標も上記参考資料1の1の1及び2ないし参考資料1の25の1及び2と同様に構成全体をもって一体不可分の造語を表したものと認識し把握されるとみるのが自然であり、過去の登録例についての特許庁の判断とも合致するものである。
3 本件商標が引用各商標に類似しない理由
(1)外観上の相違について
本件商標及び引用各商標の構成は、それぞれ甲第1号証の1、甲第2号証の1及び甲第3号証の1に示されたとおりであり、本件商標と引用各商標とが外観上相紛れるおそれのない非類似の商標であることは明らかである。
(2)観念上の相違について
上記2(2)のとおり、本件商標からは「手入れの充電」、「保護の充電」ほどの漠然とした意味合いが容易に看取される。一方、引用各商標からは、「Charge」より「料金、手数料」または「充電」の観念が生じる。
したがって、本件商標と引用各商標とは明らかに観念上類似しない商標である。
(3)称呼上の相違について
上記2(3)のとおり、本件商標は「トリートメントチャージ」とのみ称呼される。一方、引用各商標からはその構成文字に相応して「チャージ」の称呼が生じる。
したがって、本件商標が引用各商標のいずれにも称呼上彼此相紛れるおそれのない非類似の商標であることは明白である。
(4)小括
以上のとおり、本件商標は、外観、観念、称呼のいずれにおいても引用各商標に類似するものではない。
4 本件商標が商標法第4条第1項第16号に該当しない理由
上記1のとおり、「トリートメント」及び「TREATMENT」の文字は、本件商標の指定商品「化粧品,せっけん類」について「手入れ」、「保護」ほどの意味合いの外来語として使用され、理解されている。一方、「化粧品,せっけん類」は、肌や身体の手入れや保護のために使用されるものである。したがって、前記商品を指定商品とする本件商標が「トリートメント」及び「TREATMENT」の文字を含むとして、これが商標法第4条第1項第16号に該当するとの主張が失当であることは明らかである。
このことは、参考資料第3号の1の1及び2ないし参考資料第3号の23の1及び2に例示する「トリートメント」又は「TREATMENT」の文字を含む登録商標の指定商品からも明らかである。
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第16号に違反して登録されたものでない。
5 まとめ
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同第16号に違反して登録されたものでない。

第5 当審の判断
1 請求の利益について
当事者間に利害関係について争いがないので本案に入って判断する。
2 商標法第4条第1項第11号について
(1)商標の類否は、対比される両商標が同一又は類似の商品に使用された場合に、商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるか否かによって決すべきであるが、それには、そのような商品に使用された商標がその外観、観念、称呼等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すべく、しかもその商品の取引の実情を明らかにし得る限り、その具体的な取引状況に基づいて判断すべきものである(最高裁昭和43年2月27日第三小法廷判決・民集22巻2号399頁参照)。そして、商標は、その構成部分全体によって他人の商標と識別すべく考案されているものであるから、みだりに、商標構成部分の一部を抽出し、この部分だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判定することは許されないが、他方、簡易、迅速をたっとぶ取引の実際においては、各構成部分がそれを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものと認められない商標は、常に必ずしもその構成部分全体の名称によって称呼、観念されず、その一部だけによって簡略に称呼、観念され、1個の商標から2個以上の称呼、観念が生ずることがあるのは、経験則の教えるところである。そしてこの場合、一つの称呼、観念が他人の商標の称呼、観念と同一又は類似であるとはいえないとしても、他の称呼、観念が他人のそれと類似するときは、両商標はなお類似するものと解するのが相当である(最高裁昭和38年12月5日第一小法廷判決・民集17巻12号1621頁参照)。また、外観についてもその一部が他人のそれと類似することによって、両商標が類似すると解することができる場合がある。
そこで、以上の見地から本案について検討する。
(2)本件商標の内容
ア 本件商標は、前記第1のとおり、上段に、「トリートメントチャージ」と間隔を空けずに同一書体かつ同一の大きさで表記し、下段に、「TREATMENT CHARGE」と間隔を空けて同一書体かつ同一の大きさで表記したものである。
イ そこで、まず、本件商標に用いられている「トリートメント」、「TREATMENT」、「チャージ」、「CHARGE」の語義について検討する。
(ア)「トリートメント」、「TREATMENT」の語義
a 「トリートメント」は、「扱い」、「待遇」、「治療(法)」、「手当て」の語義を有する言葉として辞典に掲載されている(甲第8号証[津田武編「ビジネスマンのためのカタカナ語新辞典〔改訂版〕」213頁株式会社旺文社1987年発行]、甲第9号証[斎籐栄三郎編「外国からきた新語辞典第5版」250頁株式会社集英社昭和60年4月15日発行])。そして、証拠(甲第9号証、甲第12号証ないし甲第20号証、甲第22号証、甲第26号証、甲第29号証ないし甲第93号証、甲第113号証及び甲第114号証)によれば、「トリートメント」は、本件商標の指定商品である「化粧品、せっけん類」との関係では、「手入れ」、「保護」の意味で使用されているほか、以下のとおり、髪の毛及び頭皮を補修ないしは保護する商品を示す名称としても使用されており、髪の毛及び頭皮を補修ないしは保護する商品を示す普通名称となっていると認めることができる。
(a)「2003 cosmetics in japan 日本の化粧品総覧」平成14年10月18日株式会社週刊粧業発行(甲第12号証)
「ヘアケア市場は、前年に引き続いて、シャンプー、リンス、トリートメントなどのケアカテゴリーは依然として単価の下落に歯止めがかからず、・・・」(24頁下1行ないし25頁1行)
(b)厚生省薬務局監視指導課・東京都衛生局薬務部監修「医薬品・化粧品等広告の実際'94」平成6年9月15日株式会社薬業時報社発行(甲第16号証)
「・・・枝毛や切毛を防ぐ、痛んだ髪用のトリートメントです。」(227頁ないし228頁)
(c)「クロワッサン」2005年(平成17年)1月25日号(甲第17号証の2枚目)
「ヘアカラー&トリートメント」、「天然100%のトリートメント&染毛剤です。」、「髪にハリ、コシ、ツヤが出ます。」
(d)「ESSE」2005年(平成17年)2月号(甲第17号証の3枚目)
「大切なキューティクルを守りながら汚れだけを落とすので、毛先までツルツルの洗い上がりでリンスやトリートメントも不要です。」
(e)「婦人画報」2005年(平成17年)10月号(甲第18号証の2枚目)
「極上の髪へ導くヘアケアシリーズ」、「ジェントルケア」、「〈トリートメント〉」
(f)「ミセス」2005年(平成17年)10月号(甲第18号証の3枚目)
「髪と同じ成分が浸透・補修。洗い流さないトリートメント」、「新リキッド・ヘア誕生」
(g)「with」2005年(平成17年)10月号(甲第18号証の4枚目)
「・・・そんなハイダメージヘアを髪の芯からケアするために生まれた高保湿トリートメントが『サラパーフェクトヘアマスク』」
(h)「J・J with」2005年(平成17年)10月号(甲第18号証の5枚目)
「世界に先がけ、シャンプー、コンディショナー、トリートメントの3ステップ・ヘアケアを発表」、「・・・サロンでは顧客にトリートメントを必ずすすめていた。・・・」
(i)「朝日新聞」2006年(平成18年)1月17日、「毎日新聞」2006年(平成18年)1月21日及び「読売新聞」2006年(平成18年)1月24日(甲第19号証の2枚目)
「・・・リンス、トリートメントいらずの贅沢な感触・・・」
(j)「北海道新聞」2006年(平成18年)1月26日(甲第19号証の2枚目)
「リンス、トリートメント要らずの贅沢な感触・・・」
(k)化粧品の表示に関する公正競争規約施行規則(平成17年3月14日公正取引委員会変更承認)「別表1[備考]」(甲第22号証)
「4.種類別名称等に用途を表す名称をつけることができる。用途名称は、・・・トリートメント・・・」
b 「トリートメント」は、「TREATMENT」に由来する外来語であるから、「TREATMENT」の語義も、上記「トリートメント」と同様のものであると認められる。
c そうすると、「トリートメント」、「TREATMENT」は、本件商標の指定商品である「化粧品、せっけん類」に使用された場合には、識別力の乏しい言葉であるということができる。
(イ)「チャージ」、「CHARGE」の語義
a 「チャージ」は、「料金」、「手数料」、「責任」、「義務」、「詰め込み」、「積み込み」、「燃料補給」、「充電」等の語義を有する言葉として辞典に掲載されている(前記甲第8号証の184頁、前記甲第9号証の222頁、甲第10号証[松村明ほか編「旺文社国語辞典改訂新版」773頁株式会社旺文社1988年発行])。
b そして、「チャージ」には、次のような用例があることが認められる。
(a)「旬の夏野菜で『キレイ』をチャージするスローステイ」(乙第3号証[インターネットサイトhttp://www.fujisan.co.jpにおいて雑誌「Oggi」2004年[平成16年]7月28号発売号の記事を紹介したもの])
(b)「身体(からだ)の内側と外側からうるおいをチャージして、今年の冬は乾燥に負けない肌をつくってください。」(乙第4号証[インターネットサイトhttp://www.shiseido.co.jpにおける「『おしゃれなひととき』2004年冬・第69号」と題する記事])
(c)「細胞の源となる話題の成分『コエンザイムQ10 』を配合して、エネルギーをチャージする無添加美容液登場〈2005年2月18日(金)数量限定販売〉」(乙第5号証[株式会社ファンケルの平成17年2月ころの広告])
(d)「夏バテ肌を急速冷却チャージする新感覚のジェリーウォーター」(乙第6号証[インターネットサイトhttp://allabout.co.jpの平成17年4月28日当時の記事])
c 証拠(甲第4号証、甲第5号証、甲第6号証の1ないし27、甲第7号証及び乙第7号証)によれば、(a)請求人は、平成17年春に、引用各商標と同一性のある商標を使用した商品である「薬用育毛トニック」と「薬用コンディショニングシャンプー」を発売したこと、(b)請求人は、平成17年4月には、全国の新聞各紙で、これらの商品の広告をしたが、その中で、「頭皮と髪にチャージ!」、「毛根と頭皮にチャージ!」、「チャージ(CHARGE)は[補給・蓄える・充電]するという意味。薬用チャージは、毛根と頭皮に十分な栄養を与え、髪の生育環境を整え自分本来の髪を維持するための育毛ケア商品です。」との記載をしたこと、(c)請求人は、インターネットサイトにおいて、上記各商品について「抜け毛・薄毛で悩む男性の頭皮と毛根に血流をチャージ!」と記載し、上記「薬用育毛トニック」について「有効成分と瞬間冷却効果を毛根と頭皮にチャージする・・・」と記載したこと、以上の事実が認められる。
d 以上によると、「チャージ」は、日本語としても広く用いられている言葉で、本件商標の指定商品である「化粧品、せっけん類」に関しては、「補給する」、「蓄える」などといった意味の言葉として用いられることがあるものと認められる。
「チャージ」は、「CHARGE」に由来する外来語であるから、「CHARGE」の語義も、上記「チャージ」と同様のものであると認められる。
そうすると、「チャージ」及び「CHARGE」は、本件商標の指定商品である「化粧品、せっけん類」に使用された場合には、特に識別力が高い言葉であるとまでいうことはできないものの、上記(ア)で述べた「トリートメント」及び「TREATMENT」よりは識別力が高いことは明らかである。
ウ 次に、本件商標が、「トリートメント」と「チャージ」、「TREATMENT」と「CHARGE」に分離して印象されるかどうかについて検討する。
(ア)本件商標のうち上段の「トリートメントチャージ」の部分は、「トリートメントチャージ」と、間隔を空けずに同一書体、同一の大きさで表記されている。
しかし、上記イのとおり、「トリートメント」と「チャージ」は、別個の意義を有する言葉であって、「トリートメントチャージ」という一つの言葉が存するわけではないから、本件商標のうち「トリートメントチャージ」の部分は、「トリートメント」と「チャージ」に分離して認識されるというべきである。また、本件商標のうち「トリートメントチャージ」の部分が11文字から成っていることからすると、常に一連のものとして称呼されるということもできない。
(イ)一方、本件商標のうち「TREATMENT CHARGE」の部分は、同一書体、同一の大きさで表記されているものの、「TREATMENT」と「CHARGE」の間に間隔が空いており、上記イのとおり「TREATMENT」と「CHARGE」は別個の意義を有する言葉であって、「TREATMENTCHARGE」という一つの言葉が存するわけではないことからすると、本件商標のうち「TREATMENT CHARGE」の部分は、「TREATMENT」と「CHARGE」に分離して認識されるというべきである。また、本件商標のうち「TREATMENT CHARGE」の部分が15文字から成っていることからすると、常に一連のものとして称呼されるということもできない。
(ウ)したがって、本件商標は、「トリートメント」と「チャージ」、「TREATMENT」と「CHARGE」に分離して印象されるものであって、全体を一連、一体の商標として把握することができるというものではない。
そして、本件商標の「チャージ」及び「CHARGE」の部分からは、「チャージ」の称呼及び上記イ(イ)認定の観念が生ずるものと認められる。
(3)引用各商標の内容
ア 引用商標1は、前記第2のとおり、上段に「CHARGE」と表記し、下段に「チャージ」と表記したものである。引用商標1からは、「チャージ」の称呼が生ずるほか、前記(2)イ(イ)認定の観念が生ずるものと認められる。
イ 引用商標2は、別掲のとおり、上部に「Charge」と大きく表記し、その左上に小さく「チャージ」と表記し、下部に図形を配したものである。引用商標2からは、「チャージ」の称呼が生ずるほか、前記(2)イ(イ)認定の観念が生ずるものと認められる。
(4)本件商標と引用各商標の類否
ア 以上の(2)及び(3)で述べたところに照らして、本件商標と引用各商標とを対比すると、本件商標と引用各商標とは、外観において「チャージ」及び「CHARGE」又は「Charge」の文字を含む点が共通しており、称呼においても「チャージ」の称呼を生ずる点が共通している。また観念においても前記(2)イ(イ)認定の観念が生ずる点が共通しているということができる。
このように、本件商標は、外観、呼称及び観念において引用各商標と共通しているのであるから、本件商標は引用各商標と類似するものと認められ、かつ、指定商品については、本件商標の指定商品と同一又は類似の指定商品を引用各商標は含むものである。
イ 被請求人は、(ア)「化粧品,せっけん類」について、識別力を欠くか極めて識別力が弱い文字と「CHARGE」又は「チャージ」の文字との結合商標が、引用各商標とは非類似の商標として登録されている(甲第27号証)、(イ)「ディープクリアチャージ/DEEP CLEAR CHARGE」及び「クリアチャージ/CLEAR CHARGE」については、請求人が、引用商標1を引用し、これらの商標は商標法4条1項11号に該当すると主張して登録異議の申立てをしたが、これらの商標はいずれも「構成全体をもって一体不可分の造語を表したものと認識し把握されるとみるのが自然である」として、登録が維持されている(平成10年異議第90933号、平成10年8月18日決定[甲第21号証]。平成10年異議第90971号、平成10年8月18日決定[乙第8号証])、と主張するが、いずれも本件商標とは異なる「CHARGE」又は「チャージ」を含む商標と引用各商標との類否についての判断を主張するものにすぎず、上記アの認定を左右するものではない。
3 結論
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものであるから、他の無効理由について論及するまでもなく、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲
引用商標2


審理終結日 2007-10-11 
結審通知日 2007-10-17 
審決日 2009-03-09 
出願番号 商願2005-108862(T2005-108862) 
審決分類 T 1 11・ 262- Z (Y03)
T 1 11・ 263- Z (Y03)
T 1 11・ 261- Z (Y03)
最終処分 成立  
前審関与審査官 小川 敏 
特許庁審判長 石田 清
特許庁審判官 末武 久佳
木村 一弘
登録日 2006-06-30 
登録番号 商標登録第4966729号(T4966729) 
商標の称呼 トリートメントチャージ 
代理人 安原 正義 
代理人 大西 育子 
代理人 村越 祐輔 
代理人 萼 経夫 
代理人 舘石 光雄 
代理人 鷹見 雅和 
代理人 安原 正之 

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ