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審判番号(事件番号) データベース 権利
不服20051651 審決 商標
不服200626471 審決 商標
平成22行ケ10253審決取消請求事件 判例 商標

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審決分類 審判 査定不服 商3条1項3号 産地、販売地、品質、原材料など 登録しない X33
審判 査定不服 商3条2項 使用による自他商品の識別力 登録しない X33
管理番号 1197204 
審判番号 不服2008-17210 
総通号数 114 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2009-06-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-07-04 
確定日 2009-04-07 
事件の表示 商願2007- 44639拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 1 本願商標
本願商標は、別掲のとおりの構成よりなり、第33類に属する願書記載のとおりの商品を指定商品として、平成19年5月7日に立体商標として登録出願されたものである。そして、願書記載の指定商品については、原審において、同20年3月12日付け提出の手続補正書により、第33類「アルコール飲料(ビールを除く。),リキュール,メキシコ国ハリスコ州産の蒸留酒,カクテル」と補正されたものである。

2 原査定の理由
原査定は、「本願商標は、一部円の模様を有しているが、全体として瓶(ボトル)の形を線描したにすぎない形状よりなる立体商標と認められる。そうすると、本願指定商品との関係において、単に商品の容器を表したものとして認識させるにとどまり、それ自体では自他商品の識別標識としての機能を果たし得ないものである。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。」として、本願を拒絶したものである。

3 当審の判断
(1)立体商標は、商品若しくは商品の包装又は役務の提供の用に供する物(以下「商品等」という。)の形状も含むものであるが、商品等の形状は、本来それ自体の持つ機能を効果的に発揮させたり、あるいはその商品等の形状の持つ美感を追求する等の目的で選択されるものであり、本来的(第一義的)には商品、役務の出所を表示し、自他商品、自他役務を識別する標識として採択されるものではない。
そして、商品等の形状に特徴的な変更、装飾等が施されていても、それは前記したように、商品等の機能又は美感をより発揮させるために施されたものであって、本来的には、自他商品を識別するための標識として採択されるのではなく、全体としてみた場合、商品等の機能、美感を発揮させるために必要な形状を有している場合には、これに接する取引者、需要者は当該商品等の形状を表示したものであると認識するに止まり、このような商品等の機能又は美感と関わる形状は、多少特異なものであっても、未だ商品等の形状を普通に用いられる方法で表示するものの域を出ないと解するのが相当である。
また、商品等の形状は、同種の商品等にあっては、その機能を果たすためには原則的に同様の形状にならざるを得ないものであるから、取引上何人もこれを使用する必要があり、かつ、何人もその使用を欲するものであって、一私人に独占を認めるのは妥当でないというべきである。
そうとすれば、商品等の機能又は美感とは関係のない特異な形状である場合はともかくとして、商品等の形状と認識されるものからなる立体的形状をもって構成される商標については、使用をされた結果、当該形状に係る商標が単に出所を表示するのみならず、取引者・需要者間において、当該形状をもって同種の商品等と明らかに識別されていると認識することができるに至っている場合を除き、商品等の形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標として商標法第3条第1項第3号に該当し、商標登録を受けることができないものと解すべきである。
(2)これを本願についてみると、本願商標は、別掲のとおり、上部にスクリューキャップを付したと思しき状態の細い口部を設け、底部は口部よりも非常に広い円形状からなり、全体として縦長の形状よりなるものであって、これよりは、飲料を収納する容器の形状と認められるものである。
そして、容器の口部寄りに円形状の模様を有し、また、中央部及び底部寄りにはラベルを貼付すると思しき部分があり、さらに、口部の下方から底部に向けて縦縞模様を施し、加えて、円形状の模様の中心及び外5か所に点在する、左斜め上から右斜め下にかけての複数の斜線からなる陰影と思しき図形を有してなるものであるが、これらは、商品の機能又は美感を効果的に高めるための範囲内のものにすぎないというべきである。
してみれば、本願商標は、飲料を収納する容器の一形態を表した立体的形状よりなるものと認められるから、これを、その指定商品「アルコール飲料(ビールを除く。)、リキュール、メキシコ国ハリスコ州産の蒸留酒、カクテル」に使用しても、これに接する取引者、需要者は、単に本願指定商品の包装(収納容器)の形状を表示してなるにすぎないものと理解するに止まり、自他商品を識別するための標識とは認識し得ないものと判断するのが相当である。
なお、請求人は、「本願商標は、指定商品の収納容器であるボトルの立体的形状に関するものであり、ボトルの口部から底部に渡って垂直方向に一定の間隔をおいて筋状に盛り上げた立体的な模様が施されており、肩部には円形状のくぼみが設けられている。ここにおいて、アルコール飲料のボトルの形態的趨勢に照らすと、商品が液体であり形のないものであることから、特徴を持たせたボトルが多種存在することは事実であるが、本願商標と同様の立体的形状をしたものは存在しない。したがって、本願商標は、指定商品の収納容器の美観を高めるために加えられた単なる装飾的なものとは言いがたく、特異な形態であり、独創的な立体的形状というべきものであるから、それ自体が独立して自他商品の識別標識としての機能を十分に果たし得る。」旨主張している。
確かに、請求人も自認するとおり、本願の指定商品を取り扱う業界においては、その取り扱いに係る商品が液体であるが故に、ある程度特徴をもたせた形状の収納容器を採択、使用し、その容器に商品を収納して販売していることは一般におこなわれているところである。
しかしながら、それらの収納容器の大半は、本願商標の構成と同様に、口部が細く、底部は安定感を増すために口部に比べて底面積が広い円形よりなる全体が縦長の形状のものが一般的であり、また、容器の口部寄りに円形状の模様を付すこと及び表面に模様を施すことも一般に行われているところである。
そして、これらのことは、以下の書籍における記載、インターネットの情報等による事実からも窺い知れるところである。
(1)「ラドゥセット社」の生産にかかるワイン「プイイ・フュメ・バロン・ド・L」の容器の口部寄りに円形状の模様が付されている事実(「2004年版世界の名酒事典」P322 株式会社講談社発行)
(2)「サントリー株式会社」のウェブサイトにおいて、ブランデー「VO」の容器の口部寄りに円形状の模様が付されている事実(http://www.suntory.co.jp/brandy/lineup/sbrandy/vo.html)。
(3)「サントリー株式会社」のウェブサイトにおいて、ブランデー「シャボーエクストラスペシャル」及び「シャボーXO」の容器の口部寄りに円形状の模様が付されている事実(http://www.suntory.co.jp/brandy/lineup/armagnac/index.html)。
(4)「ニッカウヰスキー株式会社」のウェブサイトにおいて、ブランデー「ニッカブランデーV.S.O.P“白”」の容器の口部寄りに円形状の模様が付されている事実(http://www.nikka.com/products/whisky_brandy/brandy/nikkabrandy/index.html#ndp_vsop_white)。
(5)「アサヒビール株式会社」のウェブサイトにおいて、リキュール「コアントロー」の容器の口部寄りに円形状の模様が付されている事実(http://www.asahibeer.co.jp/enjoy/liquorworld/brand/cointreau/product/index.html)。
(6)「アサヒビール株式会社」のウェブサイトにおいて、バーボン「オールドグランダッド」の容器の口部寄りに円形状の模様が付されている事実(http://www.asahibeer.co.jp/products/whisky_brandy/bourbon/granddad/)。
(7)「サッポロビール株式会社」のウェブサイトにおいて、ブランデー「ドルチェ」の容器の口部寄りに円形状の模様が付されている事実(http://www.sapporobeer.jp/product/liquor/dolce/index.html)。
(8)「アメリカン・ユナイテッド・ディスティルドプロダクツ社」の生産にかかる、ウイスキー「ホワイト・イーグル」の容器に縦縞模様が施されている事実(「2004年版世界の名酒事典」P81 株式会社講談社発行)。
(9)「ポッター・ディスティリング社」の生産にかかる、ウイスキー「マックアダムス」の容器に縦縞模様が施されている事実(「2004年版世界の名酒事典」P82 株式会社講談社発行)。
(10)「ジンマーマン・グレーフ&ミューラー社」の生産にかかる、ワイン「ニーアシュタイナー・グーテス・ドームタール」の容器に縦縞模様が施されている事実(「2004年版世界の名酒事典」P352 株式会社講談社発行)。
(11)「C.M.F」の生産にかかる、ワイン「ミュスカ・ド・フロンティニャン」の容器に縦縞模様が施されている事実(「2004年版世界の名酒事典」P530 株式会社講談社発行)。
(12)「日和商事株式会社」のウェブサイトにおいて、中国酒「広東米酒」容器に模様が施されている事実(http://www.nichi-wa.co.jp/zasshu.htm)
(13)「麒麟麦酒株式会社」のウェブサイトにおいて、テキーラ「オルメカ ブランコ」、「オルメカ レポサド」及び「オルメカアネホエクストラエイジド」の容器に模様が施されている事実(http://www.kirin.co.jp/brands/sw/olmeca/index.html)。
(14)「ニッカウヰスキー株式会社」のウェブサイトにおいて、ウイスキー「鶴17年」の容器に模様が施されている事実(http://www.nikka.com/products/tsuru17/index.html)。
(15)「タンカレー」のウェブサイトにおいて、リキュール「タンカレーNoTEN」の容器に縦縞模様が施されている事実(http://www.tanqueray.jp/ten/index_flash.html)
(16)「サントリー株式会社」のウェブサイトにおいて、ウイスキー「響」の容器に縦縞模様が施されている事実(http://www.suntory.co.jp/whisky/hibiki/lineup/index.html)。
(17)「三和酒類株式会社」のウェブサイトにおいて、焼酎「いいちこスペシャル」の容器に縦縞模様が施されている事実(http://www.iichiko.co.jp/comp/products/shochu/special.html)。
(18)「ニッカウヰスキー株式会社」のウェブサイトにおいて、ブランデー「ニッカブランデーX・O」の容器に縦縞模様が施されている事実(http://www.nikka.com/products/whisky_brandy/brandy/nikkabrandy/index.html#nb_xo)。
しかして、請求人が主張する本願商標を構成する容器の特徴は、商品の機能をより効果的に発揮させたり、美感をよりすぐれたものにする等の目的で同種の商品等が一般に採用し得る範囲内のものであって、商品「アルコール飲料(ビールを除く。)、リキュール、メキシコ国ハリスコ州産の蒸留酒、カクテル」の収納容器の形状として予測し難いような特異な形状や特異な印象を与える装飾的形状であるということはできない。
そうとすれば、本願商標は、その容器の表面に円形状の模様及び縦縞模様を有するという特徴をもたせたことをもって自他商品の識別機能を有するものと認めることはできず、商品の包装(収納容器)の形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標というべきであること、前記認定のとおりである。
また、請求人は、本願商標と同一の形状が使用されている事実はない旨主張しているが、商標法第3条第1項第3号の商品の品質、形状を表示する標章とは、商品の品質、形状等を表示する標章として認識されものであれば足り、その標章が現実に使用されていることは、必ずしも要求されないものと解すべきである(東京高裁平成12年(行ケ)第76号判決参照)から、たとえ、本願商標と同一の形状の商品が存在しないとしても、本願商標をその指定商品に使用するときは、商品の包装(収納容器)の形状を表したものと理解させるにすぎないこと前記認定のとおりである。
さらに、請求人は、「本願商標と同様の立体的形状が欧州共同体及びアメリカ合衆国においても登録されていることからも、本願商標に係る立体的形状それ自体が自他商品の識別標識として十分に機能し得る。」旨主張している。
しかしながら、請求人の提出にかかる甲第1号証及び甲第2号証に表されている図形は、本願商標と同一の形状よりなるものとはいい難く、また、諸外国がどのような証拠に基づいて、それらを登録するに至ったかは不明であることに加えて、各国ごとに取引の実情が異なることからすれば、諸外国における立体商標の登録制度と我が国のそれが同一のものと解釈しなければならない事情が存するものとは認められない。
よって、請求人のいずれの主張も採用することができない。
したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。
(2)請求人は、「本願商標が、商標法第3条第1項第3号に該当するとしても、本願商標に係る立体的形状は、1920年代より80年以上もの長期間にわたって需要者、取引者間において親しまれており、需要者、取引者間においては、当該形状を単に商品の収納容器の表示と理解するに止まらず、当該形状をもって同種の商品と出願人の商品を識別しており、使用により自他商品の識別力を獲得しているから、商標法第3条第2項の要件を具備している。」旨主張し、証拠方法として、当審において甲第3号証を提出しているので、本願商標が商標法第3条第2項の要件を具備するか否かについて検討する。
出願に係る商標が、指定商品に係る商品等の形状を表示するものとして商標法第3条第1項第3号に該当する場合に、それが同条第2項に該当し、登録が認められるかどうかは、使用に係る商標及び商品等、使用開始時期及び使用期間、使用地域、当該商品等の販売数量等並びに広告宣伝の方法及び回数等を総合考慮して、出願商標が使用をされた結果、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるものと認められるか否かによって決定すべきものであり、その場合に、使用に係る商標及び商品は、出願に係る商標及びその指定商品と同一の場合に限られるものである。
そうすると、出願に係る商標が、商品等の立体的形状のみからなるものであるのに対し、使用に係る商標が立体的形状と文字、図形等の平面標章との組み合わせより構成されている場合には、両商標の全体的構成は同一でないことから、出願に係る商標については、使用により識別力を有するに至った商標と認めることができない。
また、使用に係る商品が出願に係る指定商品の一部である場合は、使用に係る商品に指定商品が限定されない限り、出願に係る商標については、使用により識別力を有するに至った商標と認めることはできないものである。
そこで、検討するに、請求人が提出した甲第3号証は、Tequila Sourceホームページの写し及びその訳文とあるが、当該ホームページには、英文及びラベルを付されたアルコール飲料と思しき6種類の商品の形状が表示され、その訳文は、「グラン・センテナリオ・テキーラ」の見出しのもと、テキーラの製造過程と、そのテキーラボトルのデザインの考案についての記述である。
しかして、甲第3号証においては、請求人と当該ホームページの関係が明らかにされていないうえに、請求人の使用に係る商標及び商品について何ら具体的な説明がなされていないことから、請求人の使用に係る商標及び商品を特定することができず、また、その他に、本願商標が、その指定商品に使用されて、取引者、需要者に広く知られるに至ったと認めるに足りる証拠の提出もない。
ところで、当該ホームページ中に表示されている、本願商標の形状と同様の外形を有するアルコール飲料と思しき2種類の商品の形状について、詳細にみたところ、それらは、いずれも、立体的形状からなる収納容器(瓶)の口部寄りの円形状の内側に植物と思しき図形を有し、また、瓶の中程及び底部寄りにラベルを付して、その中に、「GRAN」、「CENTENARIO」、「ANEJO」及び「TEQUILA」等の文字及び背中に羽のある女性と思しき図形を有してなるものである。
そして、前記2種類の商品は、ラベル内の「TEQUILA」の文字から、メキシコ特産の蒸留酒である「テキーラ」の収納容器(瓶)の形状を表したものと認識され、また、ラベル中の「GRAN」、「CENTENARIO」、「ANEJO」の各文字及び図形によって、商品の出所が識別されているものとみるのが、商取引の実際に照らして自然というべきである。
そうすると、仮に、甲第3号証に表された前記2種類のいずれかの立体的形状が使用に係る商標だとしても、立体的形状のみからなる本願商標と、立体的形状と文字及び図形より構成されている使用に係る商標とは、構成において同一のものとはいえず、また、それらの文字及び図形よりも立体的形状部分のみが独立して、需要者に強い印象、記憶等を与えているとも認められず、さらに、使用に係ると仮定する商品は、本願指定商品中の一部であるテキーラ、いわゆる「メキシコ国ハリスコ州産の蒸留酒」のみであるから、出願に係る商標及びその指定商品と、使用に係る商標及びその商品が同一とは認められず、商標法第3条第2項の要件を満たしているとはいえない。
してみれば、いずれにしても、本願商標が、使用された結果、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識する、自他商品識別力を有するに至った商標と認定することはできない。
(3)したがって、本願商標が、商標法第3条第1項第3号に該当するとして、本願を拒絶した原査定は妥当であって、取り消すことはできない。
また、本願商標が、同法第3条第2項の要件を具備していないことは、前記認定のとおりであるから、登録することはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲
本願商標




審理終結日 2008-11-13 
結審通知日 2008-11-14 
審決日 2008-11-26 
出願番号 商願2007-44639(T2007-44639) 
審決分類 T 1 8・ 13- Z (X33)
T 1 8・ 17- Z (X33)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 福島 昇 
特許庁審判長 鈴木 修
特許庁審判官 岩崎 安子
小畑 恵一
代理人 村橋 史雄 

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