• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) 106
管理番号 1195455 
審判番号 取消2007-301740 
総通号数 113 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2009-05-29 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2007-12-28 
確定日 2009-03-16 
事件の表示 上記当事者間の登録第2292632号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第2292632号商標の商標登録は取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第2292632号商標(以下「本件商標」という。)は、「ピーターパン」の文字を書してなり、昭和63年9月26日に登録出願、第20類「建具、その他本類に属する商品」を指定商品として、平成2年12月26日に設定登録され、その後、商標権の存続期間の更新登録がなされ、さらに、同14年3月6日に第6類「金庫,金属製建具,金属製靴ぬぐいマット,金属製ブラインド,金属製立て看板,金属製の可搬式家庭用温室,金属製の墓標及び墓碑用銘板」、第11類「火鉢類」、第14類「貴金属製宝石箱,貴金属製の花瓶及び水盤,記念カップ,記念たて」、第16類「紙製テーブルクロス,紙製ブラインド」、第17類「農業用プラスチックフィルム」、第19類「建具(金属製のものを除く。),灯ろう,可搬式家庭用温室(金属製のものを除く。),墓標及び墓碑用銘板(金属製のものを除く。)」、第20類「家具,すだれ,装飾用ビーズカーテン,つい立て,びょうぶ,ベンチ,アドバルーン,木製又はプラスチック製の立て看板,食品見本模型,人工池,葬祭用具」、第21類「花瓶及び水盤(貴金属製のものを除く。),風鈴,ガラス製又は磁器製の立て看板,香炉」、第22類「日よけ,雨覆い,天幕,日覆い,よしず」、第24類「織物製いすカバー,織物製壁掛け,織物製ブラインド,カーテン,テーブル掛け,どん帳,遺体覆い,経かたびら,黒白幕,紅白幕」、第26類「造花の花輪」、第27類「畳類,敷物,壁掛け(織物製のものを除く。),人工芝」及び第31類「生花の花輪」を指定商品とする書換登録がなされ、現に有効に存続しているものである。

第2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求めると申し立て、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証及び甲第2号証を提出した。
1 請求の理由
被請求人は、本件商標をその指定商品について、継続して3年以上日本国内において使用していない。
また、本件商標の指定商品について専用使用権者は存在せず、または通常使用権者として本件商標を使用している者も存在しない。
したがって、本件商標、継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれによっても、その指定商品につき使用されていないものである。
よって、本件商標の登録は、商標法第50条第1項の規定に基づき、取り消されるべきである。
2 答弁書に対する弁駁
(1)商標法第50条第1項の審判にかかる本件取消審判において、被請求人が本件商標の取消を免れるためには、(ア)被請求人若しくはその使用権者が、(イ)平成17年1月26日から平成20年1月25日までの間に、(ウ)その指定商品のいずれかについて、(エ)本件商標を、商標法第2条第3項各号のいずれかに規定する態様で「使用」していたことを証明しなければならない。
しかしながら、被請求人の提出に係る乙第1号証ないし乙第6号証及び答弁書における被請求人の主張によっては、上記各要件について立証がなされたということはできない。
(2)乙各号証について
ア 乙第1号証の1は、被請求人の会社案内写しであり、乙第1号証の2は、被請求人の履歴事項全部証明書である。
乙第1号証の1によれば、「三和シャッター工業株式会社」(以下、「旧三和シャッター」という。)は、2007年10月1日に、その名称を「三和ホールディングス株式会社」に変更している。当該登録名義人の表示変更は、平成20年1月30日に、本件商標の商標登録原簿において登録されている。
被請求人は、答弁書において、「三和シャッター工業が持株会社たる三和ホールディングスの中核事業会社であり、その通常使用権者と推認されることが明らかである」と述べている(ここで述べられている「三和シャッター工業」は、旧三和シャッターとは異なる会社であるので、以下、「新三和シャッター」という。)。
しかしながら、乙第1号証には、新三和シャッターが、三和ホールディングス株式会社の通常使用権者であることは、一切示されていない。
また、乙第2号証の1は、2007年12月時点における、新三和シャッターが頒布している「トイレブース」の構成部品の商品カタログである。しかしながら、上記したとおり、新三和シャッターが、三和ホールディングス株式会社の通常使用権者であることは、一切証明されていない。したがって、乙第2号証の1は、本件商標が、通常使用権者により使用されていたことを証明するものではない。
さらに、乙第3号証の1は、2004年9月現在の本件商品の旧版カタログの表紙・裏表紙である。本号証は、当時の商標権者であった旧三和シャッターのカタログであるが、証拠として提出されているのは、表紙・裏表紙のみであるから、本件商標がその指定商品に使用されていたことを証明するものではない。また、乙第3号証の2は、カタログ掲載商品の社内用価格表である。本号証には、「トイレブース TC14 ピーターパン」との記載があるが、被請求人が答弁書において述べているとおり、本号証は、被請求人の営業秘密に属するもの(社外秘)であるから、上記社内用価格表は、社外に頒布される性質のものではない。したがって、本号証は、商標法第2条第3項第8号に規定する態様での「使用」を証明するものでもない。
よって、乙第3号証は、本件商標が、商標権者により使用されていたことを証明するものではない。
以上述べたとおり、乙第1号証ないし乙第3号証は、本件商標が、商標権者若しくは通常使用権者により使用されていたことを証明するものではない。
イ 被請求人は、答弁書において、理由を示すことなく、「乙第2号証の1の商品カタログの12頁及び13頁記載内容から、本件「トイレブース」を構成するメラミン化粧板等のパネル・ドアは第19類の「建具(金属製のものを除く。)」に属し、またパネルは間仕切り壁あるいは壁面ユニットとして、第20類「家具」にも属することが明らかである」と述べている。広辞苑によれば、「建具」とは、「戸・障子・襖など、室を区切るために取り付けて開閉するもの」をいう。また、「家具」とは、「日常の衣食住のための道具類。たんす・机・いすなど」のことである。
しかしながら、本件「トイレブース」を構成するメラミン化粧板等のパネル・ドアは、乙第2号証の1の商品カタログに記載されているとおり、幼稚園・保育園で使用されるものであって、「室(ざしき。へや。居間)を区切るために」使用されるものではないので、第19類「建具(金属製のものを除く。)」に属するものではない。また、当該パネル・ドアは、「たんす・机・いすなど」とは使用目的を全く異にするものであるから、第20類「家具」に属するものでもない。当該パネル・ドアは、乙第2号証の1の商品カタログに記載されている素材によれば、プラスチック製のパネル・ドアであるから、これらは、「プラスチック製建築専用材料」に属するものである。特許庁ホームページの商品・役務名リストによれば、「プラスチック製ドアパネル」及び「プラスチック製ドア」は、類似群コード(07A03)の商品に分類されており(甲第2号証)、本件商標の指定商品には、類似群コード(07A03)の商品は、含まれていない。
したがって、乙第2号証の1及び答弁書における被請求人の主張は、本件商標が、その指定商品について使用されていたことを証明するものではない。
3 以上述べたとおり、被請求人の提出に係る乙第1号証ないし乙第6号証及び答弁書における被請求人の主張によっては、本件商標が、本件審判の請求の登録前3年以内に、その指定商品に使用されてきたという事実は何ら証明されていない。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、「本件審判の請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。」との審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第11号証(枝番を含む。)を提出した。
1 本件商標は、以下のとおり、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において商標権者(被請求人)及びその通常使用権者が本件審判請求に係る指定商品について使用しているものである。
(1)乙第1号証は、三和シヤッター工業株式会社(以下、「三和シヤッター工業」という。)が商標権者(以下、「三和ホールディングス」という。)の通常使用権者であることを示す三和ホールディングスの会社案内及び履歴事項全部証明書である。よって、三和シヤッター工業が持株会社たる三和ホールディングスの中核事業会社であり、その通常使用権者と推認されることが明らかである。本件商標は、旧三和シヤッター工業から三和ホールディングスヘ表示変更されたものである。
(2)乙第2号証の1は、三和シヤッター工業が頒布している「トイレブース」の構成部品の商品カタログであり、3頁、12頁及び13頁に記載の保育園・幼稚園向け商品(以下、「本件商品」という。)に本件商標が表示されている。本件商品は、トイレブースを構成するドア(戸)を閉めたときに子供が指を挟まぬよう、全開時に壁と戸に隙間を設けられることを特徴としている。該商品カタログの作成日は2007年12月であり、本件審判の請求の登録日である平成20年1月25日前3年以内である。なお、乙第2号証の2は、三和シヤッター工業が、各営業所、支店へのカタログ配送をアウトソーシングしているところ、当該カタログが平成19年12月25日に印刷会社(凸版印刷株式会社)から配送業者(株式会社ニッソー)へ5,000部納品されたことを、株式会社ニッソーから三和シヤッター工業へ連絡した納品書である。
(3)乙第3号証の1は、2004年9月現在の本件商品の旧版カタログの表紙・裏表紙である(在庫がないので表紙・裏表紙のみ)。乙第3号証の2は同カタログ掲載商品の社内用価格表(社外秘)である。当該価格表の作成日は2005年3月10日であり、本件審判の請求の登録日である平成20年1月25日前3年以内である。この時点での本件商標の登録の名義人は旧三和シヤッター工業であり、当時の商標権者自身の使用を示すものである。
(4)乙第2号証の1の商品カタログの12頁及び13頁記載内容から、本件「トイレブース」を構成するメラミン化粧板等のパネル・ドアは第19類の「建具(金属製のものを除く。)」に属し、また、パネルは間仕切り壁あるいは壁面ユニットとして、第20類「家具」にも属することが明らかである。
(5)ここで本件商品は、第11類「便所ユニット」とは異なるものである。特許庁商標課編「商品及び役務の区分解説」によれば、「便所ユニット」とは、用便のための機能をもつ室型ユニットをいう(乙第4号証)。「ユニット」製品というのは、一般的に構成部品を一体化して生産したものをいい、例えば、「ユニットバス」は、「浴槽・洗面台・便器などを個々に作るのではなく、一体化して工場生産したもの」をいう(広辞苑)。乙第2号証の1のカタログに、本件商品が「ユニット」として記載されているのではなく、「パネル・ドア」等の各部品として記載されていることから明らかなように、本件商品は、一体型のユニットを設置するものではなく、需要者が各部品を任意に選択して購買するものである。このことは、乙第3号証の価格表にユニットあるいはセットとしての記載ではなく、各部品・部材の価格が個々に記載されていることからも明らかである。
(6)全体のセット販売については、第19類「建造物組立てセット(金属製のものを除く。)」に該当するので、三和シヤッター工業が別に、同商品について本件商標を登録している(登録第4847081号、乙第5号証)。建材業者は必ずしも全体のセットを販売するだけではなく、客先の事情や建築現場の状況に応じ、一部部品のみを、例えば前面のドア(戸)、ドア両側のパネル、及び付属金具のみを販売することも普通に行われている。特に、改修工事(リフォーム)に対応する場合である。よって、価格表は部品毎の価格になっており、各建築現場ごとに建築図面を見て必要部品を拾い出し、価格を算定することになる。
(7)たとえ、本件「トイレブース」が全体として取引される場合があるとしても、個々の部品においても取引される場合には、個々の部品の登録商標の使用として認められるべきことは、特許庁の審決例からも明らかであり、例えば、「システム全体としての取引下にある商品が、個々の部品のみにおいても取り引きされる場合、不使用を理由とする商標登録の取消しの審判の場において、個々の部品の登録商標の使用として立証することは、被請求人が述べるまでもなく、認め得るところであって、本件の場合、乙第1号証が『石油暖房集中制御システム』についてのカタログであるとしても、乙第2号証は、同乙第1号証カタログに掲載された『パネルコンピュータ』それ自体の取引の存在を立証しているものであるから、本件商標の使用が商品『パネルコンピュータ』になされたものと容易に推認でき、これに反する事実はない。」(取消2002-30207審決、乙第5号証)と判断している。本件の場合も、乙第2号証の1の「トイレブース」のカタログによって、本件商品についての本件商標の使用が立証されているといえる。
2 以上のとおり、本件商標は本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において商標権者(被請求人)の通常使用権者により、指定商品中、第19類「建具(金属製のものを除く。)」及び第20類「家具」に属する商品に使用されている。
3 弁駁に対する答弁
(1)本件商品は、学校施設の専門誌である「月刊スクールアメニティ」に広告されているので、同誌の2004年12月号(平成16年11月20日発行)の掲載広告(乙第7号証の1)及び2005年6月号(平成17年5月20日発行)の掲載広告(乙第7号証の2)を追加提出する。乙第7号証の1は、本件審判の請求の登録前3年以内ではないが、バックナンバーとして入手可能である(乙第7号証の3)。
これらにより、当該広告において、商品「トイレブース」について本件商標が表示されていることは明らかである。乙第3号証の2の価格表記載の「トイレブース TC14」の型番が、乙第7号証記載の型番と一致している。乙第3号証の2の価格表示対は社外秘であっても商標「ピーターパン」が同号証記載の日付、2005年(平成17年)3月10日の時点で本件商品について使用されていたことは明らかである。
(2)前回答弁書で述べたとおり、本件「トイレブース」は、室型ユニットたる「便所ユニット」とは異なるものであり、メラミン化粧板のドア及びパネルは、第19類の「建具(金属製のものを除く。)」に属し、パネルは間仕切り壁あるいは壁面ユニットとして第20類「家具」にも属する商品である。
(3)ここで、本件商品が属する「建具」のなんたるかについては、すなわち当該商品の定義については、当該業界における取引者・需要者の認識及び取引実情を無視しては判断できない。特許庁の類似商品・役務審査基準の第19類「建具」には、「障子、戸、ふすま」のみが列挙されており、簡易な構造の仕切り、すなわち戸や障子のみが例示されているが、建設業界が言う建具は、間仕切、サッシ、シャッター等も含まれると認識されている。すなわち、被請求人あるいは三和シヤッター工業の業務範囲であるシャッター工事も建具工事の一つである。(乙第8号証)。
乙第9号証の「建築大辞典」の「建具」の項には以下のとおり記載されている。
「可動の戸と建具枠で構成され、建築の開口部を開閉するものの総称。従来建具とは、建具職の製作するものを指し、木製の戸、襖、障子、衝立、欄間の透かし彫りなど、主として可動の工作物をいい、建具枠は柱・敷居・鴨居等が兼用されていた。現在、工業生産された建具は、スチールサッシュなどのように、戸と建具枠が一組になって生産されるのが普通である。」
以上から明らかなように、「建具」を伝統家屋において建具職が制作する「障子、戸、ふすま」に限定するのは旧来の考え方であり、現在の建具はより広い概念と捉えるべきものである。ましてや、本件商品は、サッシやシャッターのように頑丈で複雑な構造のものではなく、類似商品・役務審査基準の例示に従ったとしても「建具」に属すると考えられる簡易な構造のものである。
シャッター、ドアを主力商品とする被請求人が商標登録出願する場合は、類似商品・役務審査基準に従って、原則として「建築専用材料」を指定するが合わせて「建具」も指定するようにしている。
現実の商品は複数の類似群に属すると見るべきものが多々あり、例えば、「間仕切り壁」についてみると、「間仕切り壁(金属製のものを除く。)」について、「建築専用材料」と家具の二つの類似群コードが付されている(乙第10号証)。
本件商品については、たとえ「建築専用材料」にも属すると判断され得るとしても、審査基準上も、取引実情においても、ドアは「戸」として「建具」に、パネルは「間仕切り壁」として「家具」に属することは明らかである。
(3)請求人は、「新三和シヤッターが、三和ホールディングス株式会社の通常使用権者であることは、一切示されていない。」と述べているが、判例(東京高判平成15年10月30日、平成15年(行ケ)124号 乙第11号証の1)によれば、本件商標の指定商品の販売等を業とする子会社(出資比率60%)による使用について、親会社との使用許諾契約書が存在しないとしても、親会社は子会社に対し通常使用権の許諾をしていたものと認められている。また、他の判例 (東京高判平成8年1月25日、平成7年(行ケ)60号 乙第11号証の2)では、商標権者が100%出資し主として商標権者の製造する商品の開発及び販売活動を行う子会社について、本件商標を許諾したものとみるべき旨、判断されている。
商標法50条通常使用権者については、登録を受けていない通常使用権者も含むところ、認定事実より使用権が許諾されていたと認められれば、上記のとおり、子会社の使用が通常使用権者の使用とみなされる。自ら商品を製造販売していない持株会社が、商標等の知的財産の管理会社としてグループ会社に商標を使用させる場合には、通常使用権者の使用というよりは、グループ会社の使用は持株会社の使用と同視すべきものといえる。
新三和シヤッター工業は持株会社たる三和ホールディングスの中核事業会社であり、その通常使用権者と推認されることは明らかであるが、あるいは、自らは商品を製造販売していない三和ホールディングスの手足機関として同社と同視すべき関係にあるともいえる。又、旧三和シヤッター工業と新三和シヤッター工業とは、法人としては同一ではないが、事業内容などその実態が継続している組織変更であって、登録商標を主体としてみた場合の商標の使用者として連続性がある。

第4 当審の判断
1 前提となる事実
(1)本件審判は、平成19年12月28日に請求され、その予告登録は、平成20(2008)年1月25日になされている。
(2)本件商標は、東京都新宿区西新宿2丁目1番1号所在の三和シヤッター工業株式会社を商標権者として、平成2年12月26日に設定登録されたものであるが、その後、平成20年1月30日に商標権者の名称を「三和ホールディングス株式会社」とする登録名義人の表示変更の登録がなされている。
(3)乙第1号証の2の履歴事項全部証明書によれば、東京都新宿区西新宿2丁目1番1号所在の三和シヤッター工業株式会社(以下「旧三和シヤッター」という。)は、平成19年10月1日にその名称を「三和ホールディングス株式会社」(以下「三和ホールディングス」という。)と変更し、同月5日に登記がなされている。
また、平成19年10月1日に東京都板橋区新河岸二丁目3番5号三和シヤッター工業株式会社(以下「新三和シヤッター」という。)に会社分割し、その登記が同月5日になされている。
2 被請求人の提出の提出に係る証拠によれば、以下の事実が認められる。
(1)乙第2号証の1は、「トイレブース」と題する新三和シヤッターの平成19(2007)年12月現在の商品カタログと認められるところ、該カタログの12頁及び13頁には、保育園・幼稚園向けの園児用トイレブースの紹介があり、「TC14」の記載及び赤色楕円形内に白抜きで「ピーターパン」の記載がある。
(2)乙第2号証の2は、株式会社ニッソーから新三和シヤッター宛てのFaxの写しであり、「本日入庫しました。」と記載され、その下に凸版印刷株式会社の納品書の写しが表示されており、納品書には、「平成19年12月25日」と記載があり、得意先に「三和シヤッター工業(株)」、納入場所に「株式会社ニッソー」の記載がある。
(3)乙第3号証の1は、「トイレブース」と題する旧三和シヤッターの平成16(2004)年9月現在の商品カタログの表紙及び裏表紙の写しである。
(4)乙第3号証の2は、「トイレーブース TC14 ピーターパン」に係る平成17(2005)年3月10日付けの社内用価格表(写し)であり、前面パネルセット、奥行きパネルセットについて、その高さ・巾及び構成するドア、パネルの材質ごとに当該セットの金額が記載されている(なお、金額は黒塗りされている。以下同じ。)。また、部材価格及び部品価格の項には、「大手」「壁レール」「パネルジョイント」「巾木」「床レール」などについて、当該商品の記号、規格、価格が記載されている。
(5)乙第7号証の1は、平成16(2004)年11月20日発行の月刊スクールアメニティ2004年12月号の旧三和シヤッターの広告頁であり、トイレブースの設置写真及び「三和のトイレブース エスクールシリーズ TC14 ピーターパン」の表示が掲載されている。
(6)乙第7号証の2は、平成17(2005)年5月20日発行の月刊スクールアメニティ2005年6月号の旧三和シヤッターの広告頁であり、トイレブースの設置写真及び「三和のトイレブース」「TC14 ピーターパン」の表示が掲載されている。
3 上記1及び2によれば、旧三和シヤッターは、平成16年9月ないし平成17年6月にかけて、本件商標と社会通念上同一と認められる「ピーターパン」の商標をトイレブースに使用して広告をしたこと、及び、新三和シヤッターは、平成19年12月に同じく本件商標と社会通念上同一と認められる「ピーターパン」の商標をトイレブースに使用して広告をしたことが認められる。
4 本件商標の使用者について
前記1のとおり、旧三和シヤッターは、平成19年10月1日にその名称を三和ホールディングス株式会社とし、新三和シヤッターを会社分割したものであるから、平成19年10月1日以前の旧三和シヤッターによる使用は、商標権者による使用というべきであり、また、新三和シヤッターは、持株会社である三和ホールディングス株式会社の傘下の会社として設立されたものであるから、新三和シヤッターは、本件商標権の通常使用権者というのが相当である。
請求人は、新三和シヤッターが本件商標権の通常使用権者であることは証明されていない旨主張しているが、被請求人は、新三和シヤッターの持株会社であり、持株会社が、自己の傘下の企業に商標権の使用を許諾することは、商取引の実際においてごく普通に行われていることにかんがみれば、新三和シヤッターが被請求人より本件商標の商標権の通常使用権を許諾されていたとみることは、何ら不自然ということはできない。
5 使用商品について
本件商標を使用する「トイレブース」とは、被請求人の提出した証拠によれば、保育園、幼稚園等における複数の便器を有するトイレにおいて、そのトイレ内に側面や前面のパネル、ドア、設置部材・接続部品等を組み合わせて設置する商品である。
被請求人は、「トイレブース」を構成するパネル・ドアは、本件商標の指定商品中の「建具(金属製のものを除く。)」に属し、また、パネルは、間仕切り壁あるいは壁面ユニットとして、第20類「家具」に属すると主張しているので、以下、検討する。
ア 「建具」とは、「戸・障子・襖など、室を区切るために取り付けて開閉するもの」をいう。また、「家具」とは、「日常の衣食住のための道具類。たんす・机・いすなど」(広辞苑 第5版)とのことである。
また、「『商品及び役務区分』に基づく類似商品・役務審査基準」(〔国際分類第8版対応〕特許庁商標課編。以下同じ。)の第19類「建具(金属製のものを除く。)」には、例示商品として、「障子 戸 ふすま」が挙げられており、「商品及び役務区分解説」(〔国際分類第8版対応〕特許庁商標課編。以下同じ。)の第19類「建具(金属製のものを除く。)」には、[関連商品]「金属製建具(第6類)」とあるのみである。
イ 「『商品及び役務区分』に基づく類似商品・役務審査基準」の第20類「家具」には、「1 たんす類」、「2 机類」、「3 いす類」、「4 鏡」、「5 いこう おもちゃ箱 …」として、いわゆる中概念が「1」ないし「4」として設けられ、それらの各中概念の下に「食器戸棚」等の具体的商品が挙げられ、「5」には直接各具体的商品が挙げられており、また、「商品及び役務区分解説」の第20類【解釈】「家具」には、「家庭に置くものに限らず、事務所、商店等に置くものでも、家具的なものであれば、この概念に含まれる。したがって、『ロッカー』『商店の陳列ケース』等もこの概念に含まれる。ただし、…また、病院で使用される『器械テーブル』…等特殊ものは、…この概念には属しない。」と解説されている。
ウ 次に、「『商品及び役務区分』に基づく類似商品・役務審査基準」の第19類「リノリューム製建築専用材料 プラスチック製建築専用材料 合成製建築専用材料 …繊維性の落石防止網」には、「1 リノリューム製建築専用材料」、「2 プラスチック製建築専用材料」、「3 合成製建築専用材料」、「4 …」として、いわゆる中概念が「1」ないし「4」として設けられ、それらの各中概念の下に「リノリューム製板…リノリューム製床板」等の具体的商品が挙げられ、「5」には直接具体的商品が挙げられており、また、「商品及び役務区分解説」の第19類「リノリューム製建築専用材料 プラスチック製建築専用材料 合成製建築専用材料 …繊維性の落石防止網」には、「これらには、専ら建築又は構築に使用される材料のうち、金属製、陶器製、セメント製、木製、石製並びにガラス製のものを除いたものが含まれる。“専用材料”という意味は、専ら建築又は構築に用途を限定されたものとして取引される材料のことである。したがって、物それ自体として建築又は構築以外の用途に使われないようなものが属する。…」と解説されている。
さらに、「商品及び役務区分解説」の第19類「建造物組立てセット(金属製のものを除く。)」には、「この概念には、特定の使用目的を有する簡易な組立て式建造物の専用部材であって、一式のセットとして取引に供されるもの(例えば、物置組立てセット)のうち金属製でないものが含まれる。したがって、建造物として完成されたもの又は需要者の注文により任意に建造物の設計を変更することができるものは、この概念には含まれない。」と解説されている。
エ 以上を前提としてみてみると、本件トイレブースは、トイレ内にブースを設置するための商品であり、パネル、ドア等を組み合わせた一式のセットとして取引に供されるものであるから、第19類「建造物組立てセット(金属製のものを除く。)」の範疇に属する商品というのが相当である。
被請求人は、本件トイレブースは、乙第3号証の価格表にユニットあるいはセットとしての記載ではなく、各部品・部材の価格が個々に記載されていることから明らかなように、建材業者は、必ずしも全体のセットを販売するだけでなく、客先の事情や建築現場の状況に応じ、一部部品のみを販売することも普通に行われていることから、個々の部品(ドア、パネルなど)の登録商標の使用と認められるべきである旨主張している。
しかしながら、本件トイレブースは、専用のパネル、ドア等を組み合わせてなる商品であり、トイレ全体の広さ、設置されるブース数、設置の位置等により、必要とする部品及びその個数等が異なるとしても、パネル及びドア等が本件トイレブースを離れた個別の商品であるとはいえないし、また、修繕に際し、仮にパネル、ドア等の個別部品が取引される場合があるとしても、これらの部品は、本件トイレブースの専用材料・部品というのが相当であり、若しくは、甲第2号証の1の商品カタログ等に記載されている素材によれば、プラスチック製建築専用材料に属するものというべきであり、第19類「建具(金属製のものを除く。)」又は第20類「家具」の範疇には属さない商品というべきである。
そうすると、被請求人の「本件商標は請求の登録前3年以内に日本国内において、商標権者(被請求人)の通常使用権者により、指定商品中第19類『建具(金属製のものを除く。)』及び第20類『家具』に属する商品に使用されている。」という主張は、採用することができない。
その他、本件商標をその指定商品に使用していると認めるにたる証拠の提出はない。
6 以上のとおりであるから、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれもが請求に係る指定商品のいずれかについて、本件商標を使用していたこと証明し得なかったのみならず、使用していないことについて正当な理由があることも明らかにしていない。
したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定に基づき取り消すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2009-01-14 
結審通知日 2009-01-20 
審決日 2009-02-02 
出願番号 商願昭63-109382 
審決分類 T 1 31・ 1- Z (106)
最終処分 成立  
特許庁審判長 芦葉 松美
特許庁審判官 内山 進
岩崎 良子
登録日 1990-12-26 
登録番号 商標登録第2292632号(T2292632) 
商標の称呼 ピーターパン 
代理人 宮永 栄 
代理人 松尾 和子 
代理人 中村 稔 
代理人 井滝 裕敬 
代理人 西村 雅子 
代理人 田畑 浩美 
代理人 熊倉 禎男 

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ