• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部無効 商3条1項3号 産地、販売地、品質、原材料など 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Y42
審判 全部無効 商4条1項16号品質の誤認 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Y42
管理番号 1195452 
審判番号 無効2008-890011 
総通号数 113 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2009-05-29 
種別 無効の審決 
審判請求日 2008-02-01 
確定日 2009-03-18 
事件の表示 上記当事者間の登録第4986555号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第4986555号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4986555号商標(以下「本件商標」という。)は、「家歴書」の文字を標準文字で表してなり、平成18年3月3日に登録出願、第42類「建築物の設計,測量,地質の調査,建築又は都市計画に関する研究」を指定役務として、同年7月27日に登録査定され、同年9月8日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張の要点
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由及び被請求人の答弁に対する弁駁を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第9号証(枝番号を含む。)を提出している。
1 請求人適格について
請求人は、不動産、住宅関連情報(設計図書、改修歴)、耐久消費財情報(住宅設備機器、家具、家電)、エネルギー利用情報(電気、ガス、水道)、支払い・金融情報(ローン、不動産時価、金融資産)等住宅・土地に関する不動産の情報を「家歴書」として管理するSMILE PROJECT(スマイルプロジェクト)の推進体制メンバーの一人である。このプロジェクトは、産学官連携体制で、東京大学生産技術研究所(野城智也教授の研究室=提唱者)、東京ガス株式会社、そして、株式会社クオリア・コンサルティング、日本財務コンサルティング株式会社及び請求人並びに一級建築士、研究者等からなる有限責任事業組合(LLP)により推進されている。請求人はその一メンバーである(甲第2号証)。請求人等は、このプロジェクトにより、ともすれば散逸しがちな不動産の記録を管理できるように「家歴書」システムとして広げる活動を、本件商標登録出願前から行っており、今後も引き続き行うものである。
そうすると、本件商標の存在により、請求人等のかかる使用は権利侵害とされるおそれがあるので、本件無効審判請求をするにあたり、利害関係を有し、請求人適格を有するものである。
2 請求の理由
本件商標は、商標法第3条第1項第3号、同法第4条第1項第16号及び同第7号に該当し、登録を受けることができないものであるから、同法第46条第1項第1号により無効とされるべきものである。
(1)「家歴書」について
「家歴書」は、本件商標登録出願日(平成18年(2006年)3月3日)及び本件商標の査定日(平成18年7月27日)より以前である平成13年(2001年)3月以前から使用が開始され、東京都住宅局、福岡県住宅局、国土交通省住宅局等官庁や不動産、建設業界等住宅不動産に関わるものが普通に使用を開始し、その査定日には広く認識され、普通名称ないしは所謂周知・著名名称となっており、現在では不動産に携わる会社や需要者が使用した結果、既に普通名称であると認識されている語である。以下、証拠を挙げて詳述する。
ア 「家歴書」の一般的な定義
Yahoo!辞書の記載(甲第3号証)によれば、「家歴書」とは「住宅の歴史を記した文書。設計図や施工記録、その後のリフォーム歴、設備・機器の保証書などを入れる。東京大学生産技術研究所の野城研究室が東京ガスやソフトウェア開発会社と共同で開発を進めている。これをインタネット上で管理しようというものである。2006年(平成18年)10月にはインターネット上で家歴書を管理する『SMILE(スマイル)システム』を開発。これは、中古住宅の販売の際に役立てることができるほか、所有者がリフォームを行う際にも、リフォーム会社やインテリアコーディネーターが設計図や施工記録に目を通すことで速やかに対応できるようになる。行政側も家歴書の普及に力を入れており、東京都は2001年(平成13年)に住宅取得者らを対象にしたガイドブックの中で家歴書を作成することを提案。翌年発表した『東京都住宅マスタープラン(2001-2015)概要』でも『家歴書』を計画の中心に据えている」と定義されている。
このような意味合いを有する「家歴書」は、実際の不動産や住宅建築の業界においては、不動産の測量、調査、設計、施工、管理等の各役務の提供段階で、業者が需要者に文書、フロッピーディスクやCDの形で渡し、不動産の履歴書として今後の管理や売買等のために保管するものである。
イ Google及びYahooでの検索結果
「家歴書」なる語を、Google及びYahooの検索エンジンで検索した結果は、前者が3,810件でそのうち250件を打ち出し(甲第4号証の1)、後者の検索結果の総数は不明であるがそのうち200件を打ち出し(甲第4号証の2)、その内容を確認した結果、2、3の例外を除き、全て「家歴書」は上述の意味合いの普通名称として用いられ、かつ、使用者は異なることが判明した。
ウ 東京都住宅局開発調整部住宅計画課発行「安心して住める家のためのガイドブック<戸建住宅編>」(平成13年(2001年)3月発行:甲第5号証の1)
住宅性能表示制度は、平成12年(2000年)10月に開始され、その中で「工事記録書」と「家歴書」(家のリフォームの経緯、施工者名の記録)をつくることをこのガイドブックでは提案している。第8頁に「5.家歴書をつくりましょう」という項目があり、そこでは「家歴書」のサンプルフォームが掲載されている。
エ 福岡県建築都市部住宅課発行「市場活用住宅施策に関する調査・研究一市場を活用した新たな住宅施策-報告書」(平成15年(2003年)3月発行:甲第5号証の2)
第81頁で、当面考えられる取り組みとして、住宅についてその現状、管理手法、リフォームの実施等の項目につき履歴フォーム、いわゆる「家歴書」を開発し、普及を図ると述べている。「家歴書」のフォームは福岡県住宅課のHP(http://www.jutaku.pref.fukuoka.jp)から入手することができる。打ち出したものをサンプルとして甲第5号証の2に添付する。
オ 国土交通省住宅局発行「第5回基本制度部会資料?住宅政策の基本理念及び施策の現状と方向性等について?」(平成17年(2005年)3月9日発行:甲第5号証の3)
地方公共団体における施策の例として、第37頁に(4)中古住宅市場の活性化として、「中古住宅流通促進フォーラム」の設立・運営、リフォーム等の履歴情報を記載した「家歴書」の整備が挙げられている。
カ 財団法人 住宅総合研究財団発行「すまいろん 季刊2005夏号」(平成17年(2005年)7月1日発行:甲第5号証の4)
特集として、「すまいの経歴書=家歴書」について、提唱者でもある東京大学生産技術研究所教授であり、SMILE PROJECT(スマイルプロジェクト)のメンバーである野城智也氏の論述が第4頁ないし第27頁にわたり紹介されている。この書籍は、インタネット上の蔵書検索システムにも掲載されているので、その写しを甲第5号証の4に添付する。
キ 朝日新聞「(私の視点ウィークエンド)耐震強度偽装「家歴書」付け住宅流通を野城智也」(平成17年(2005年)12月17日発行:甲第5号証の5)
この新聞記事の中で、「より良い品質・性能」が市場での需要者の選択基準になっていかねばならないとして、そのためには「家歴書」を付けて住宅を市場で流通させることを提唱している。
ク 東京都電子都市構築に関する懇談会発行「3300万電子都市構築に向けた情報通信戦略?電子都市構築に関する懇談会報告?」(平成14年(2002年)4月発行:甲第5号証の6)
その第8頁に、「このため、『家歴書』の創設に当たりブロードバンドネットワーク導入対応を項目に盛り込むこととすると述べられている。そして、欄外に『家歴書』の説明として『住宅の新築からリフォームまで、その家に関する工事時期、工事箇所、工事内容等の履歴を記録として蓄積したもの』」と説明している。
ケ 東京都総務局発行「電子都市構築に関する懇談会 最終報告」の報道発表資料ウェブサイト(http://www.metro.tokyo.jp/INET/KONDAN/2002/04/40C48100.HTM:平成14年(2002年)4月8日発行:甲第5号証の7)
ブロードバンドネットワーク導入に対応した「家歴書」の創設につき述べられている。
コ 三菱UFJ不動産販売発行「Goo住宅・不動産 きっと見つかる、あなたの住まい」ウェブサイト(http://house.goo.ne.jp/useful/column/C00237.html:平成14年(2002年)9月5日発行:甲第5号証の8)
?「創世記!不動産構造改革」その19?「動き出した中古住宅市場〈その3〉」のタイトルの記事で「東京都もキャリア住宅奨励制度と家歴書(やれきしょ)制度の創設を検討している…」と述べられている。
サ 未来計画新聞社発行「未来計画新聞」ウェブサイト(http://www.miraikeikaku-shimbun.com/article/13213966.html:平成18年(2006年)7月発行:甲第5号証の9)
「【住宅】福田首相の『200年住宅』が消費税アップの鍵を握る?!-急がれる中古住宅市場の整備」というタイトルで、福田首相は自民党政務調査会住宅土地調査会長であり、「200年住宅ビジョン」では新築時の設計図書や施工内容、リフォームや点検時の履歴を蓄積した「家歴書」を整備することを提言している、と述べられている。
シ 東京都都市整備局発行「安心して住める家のためのガイドブック」ウェブサイト(http://www.toshiseibi.metro.tokyo.jp/juutaku_seisaku/401ansingaido.htm:甲第5号証の10)
このガイドブックには上記ウのとおり、「家歴書」について説明され、かつ、サンプルフォームも添付されているが、このガイドブックは都庁第一本庁舎3階北側都民情報ルームで平成13年(2001年)4月2日より販売されていることが述べられている。
ス 有限責任事業組合 住生活情報マネージメントシステム主催「すまい価値は情報から?家歴書プロジェクト」ウェブサイト(http://www.ozone.co.jp/event_seminar/event/detail/273.html:甲第5号証の11)
共催が、前述した「家歴書」プロジェクトの提唱と展開活動をしている請求人もメンバーであるSMILE PROJECT(スマイルプロジェクト)である。このイベントは平成18年(2006年)11月30日?12月5日まで行われていた。
セ 読売新聞YOMIURI ONLINE ウェブサイト(甲第5号証の12)
「家歴書 ネット管理」のタイトルで、住宅一軒ごとに施工記録やリフォーム歴などの情報をまとめた「家歴書」をインターネット上で管理するシステム作りが進んでいる。この試みは、東京大学生産技術研究所の野城研究室が、東京ガスやソフトウェア開発会社などと共同ですすめている。平成19年10月には、インターネット上で家歴書を管理するソフトウェア「SMILE(スマイル)システム」を開発したと説明されており、利用したい場合は請求人のホームページ(http://www/kke.co.jp/smile/)から申し込めば入手が可能である旨説明されており、また、その記事では、「行政側もここ数年、家歴書の普及に努めている。東京都は6年前に、住宅取得者らを対象に発行したガイドブックの中で家歴書を提案。福岡県では、商工会議所連合会などで組織する「住宅市場活性化協議会」が家歴書のモデルを示し、住宅取得者に作成を呼びかけていると述べられている。
ソ 日経マンション管理サテライト「連載特集:第92回“キャリア住宅”普及のカギは家歴書の作成・保管から」ウェブサイト(http://sumai.nikkei.co.jp/mansion/kanri/serial_2007530p40000p4.html:甲第5号証の13)
自民党は今年5月、長寿命住宅社会の形成を支援する「200年住宅ビジョン」の中で、「家歴書」作成の制度化へ向けた基盤作りをスタートさせた。東京都ではすでに7年前から、「東京構想2000」の中で中古住宅の「家歴書」を整備する方針を打ち出していたと述べられている。
(2)「家歴書」の普通名称ないしは周知・著名性について
上述のように「家歴書」は、本件商標登録出願日である平成18年(2006年)3月3日及びその査定日である同年7月27日前である平成13年(2001年)3月以前から提唱者等により使用が開始されたものである。
その後、東京都住宅局、福岡県住宅局、国土交通省住宅局等官庁や建設業界等が普通に使用を開始し、本件商標の査定日には需要者・取引者に広く認識されるに至った結果、普通名称ないしは所謂周知・著名名称となっていると理解できる。
本件商標登録出願日及びその査定日以降あるいは時期が特定できない資料においては、不動産、住宅建築に携わる官庁、会社や需要者が上述の意味合いで「家歴書」なる語を広く一般に使用をしている結果、既に普通名称であると認識されている。証拠として、各種ウェブサイト写しを提出する(甲第6号証の1)。
なお、平成19年(2007年)5月15日の時点では、旭化成ホーム株式会社、大和ハウス工業株式会社、住友林業株式会社、パナホーム株式会社、ミサワホーム株式会社、積水ハウス株式会社、積水ハイム株式会社等の大手住宅メーカーによる「住宅情報専門グループ 第一回検討会」の状況まとめ報告書で見られるように、参考資料2(甲第6号証の2)として「家歴書(たたき台)」が当該報告書に添付をされており、「家歴書」は不動産業界では普通に使用されている語であると認識することができる。
(3)商標法第3条第1項第3号の該当性
「家歴書」とは、不動産(住宅・土地)の測量・調査記録、設計図、建築業者との打ち合わせ記録、施工記録、その後のリフォーム歴、設備機器の設置や保証書、権利書の履歴を記録した文書であって、記録媒体は書類の他フロッピーディスク、CDの場合等がある。
将来はインターネットで管理するようになる。その意味合いは上述したとおりであり、甲第5号証で証明されている。したがって、不動産、住宅建築等の業界において普通に使用されている語である。このような意味合いを有する「家歴書」は、不動産の測量、住宅建築の設計、施工、設備機器の設置やその後の管理等の各役務の需要者への提供段階で、各役務に携わる業者が需要者に文書、フロッピーディスクやCDの形で渡し、不動産の履歴書として今後の管理や売買等のために保管するものである。とすれば、「家歴書」は本件商標の指定役務である「建築物の設計、測量、地質の調査」の役務の提供の用に供する物を普通に用いられる方法で表示するものにすぎないものであるから、商標法第3条第1項第3号に該当し、これに違反して登録されたものである。
(4)商標法第4条第1項第16号の該当性
上述したように「家歴書」は本件商標の指定役務である「建築物の設計,測量,地質の調査」の役務の提供の用に供する物を普通に用いられる方法で表示するものであるから、それ以外の役務に使用するときには、役務の質の誤認を生ずるおそれがある。したがって、商標法第4条第1項第16号に該当し、これに違反して登録されたものである。
(5)商標法第4条第1項第7号の該当性
本件商標は、上記で述べたように、東京都、福岡県、国土交通省並びに不動産、住宅建築業界で一般的に使用されている語であるのみならず不動産、住宅建築に携わる一般の需要者にも周知であるから、それと同一の本件商標を「建築物の設計,測量,地質の調査」等に使用することは、建築業界並びを住宅を携わる需要者における秩序を乱し害するものである。したがって、商標法第4条第1項第7号に該当し、これを違反して登録されたものである。
(6)結び
以上述べたように、本件商標は、これを指定役務中「建築物の設計、測量、地質の調査」に使用するときは、役務の提供の用に供する物を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標に該当するので商標法第3条第1項第3号に該当し、それ以外の役務に使用するときは、役務の質の誤認を生ずるおそれがある商標に該当するので商標法第4条第1項第16号に該当する。さらに、本件商標を「建築物の設計、測量、地質の調査」等に使用することは、建築業界並びに住宅に携わる需要者における秩序を乱し害するものであるから商標法第4条第1項第7号に該当する。
したがって、本件商標は商標法第46条第1項の規定によりその登録を取り消されるべきものである。
2 答弁に対する弁駁
(1)本件商標の登録要件における判断時期について
被請求人がいう「起案日」というのは商標法上の語ではないので「査定日」として述べるが、本件商標の無効事由の判断基準時が査定日である「平成18年(2006)7月27日」であることを二度も明記しており、それを前提に、当該日前の証拠資料(甲第5号証の1ないし13)を収集している。
(2)甲第3号証及び甲第4号証について
甲第3号証は「Yahoo!辞書による『家歴書』の定義の記載」であって、それに日付がないのはウェブサイト上の情報である性質上当然である。しかし、該辞書の記載中には、上述したように「家歴書」の業界における使用の日付が確定されている。
また、甲第4号証は、GoogleとYahooの最初の200件のウェブサイトタイトルの打ち出し結果である。この書証にも日付がないことは上述と同じである。但し、この200件の中には、その後無効審判理由として主張・立証している本件商標の査定時以前の書証である甲第5号証以下で示された記事が掲載されている。
したがって、甲第3号証及び甲第4号証は、ウェブサイト上であるとの性質から、日付が明確ではないとしても、そこに記載されている各ウェブサイトの内容には本件商標の査定日以前における「家歴書」の使用事実が記載されているから、全く意味をなさないというものではない。
(3)査定日前の「家歴書」の使用について
被請求人は、「家歴書」の使用が政府、国及び地方公共団体(以下「政府等」という)の政策提言に係わるものであるから、「家歴書」が一般名称化につながるわけではないと主張する。しかし、政府等が不動産に関わる業務を行っている場合は多々あるし、不動産行政を主導的に引率・監督・管理する役目もおっているわけであるから、商標主体としては全く問題がない。
次に、「家歴書」を政策提言に使用しているという事実であるが、これは政府等が政策提言に普通に使用するほどに、本件商標の査定時の5年以上も前から業界では一般的に使用されている語であることを自ら証明しているようなものである。
(4)政府等への申し入れについて
被請求人が政府に本件商標に係る商標権(以下「本商標権」という)の存在を申し入れたところ、その後、乙各号証にあるように、「家歴書」に代えて「住宅履歴情報」若しくは「住宅履歴書」という用語を用いているところから、本件商標を一私人に独占させても問題はないと推測する材料となりうると答弁している。
ア しかし、被請求人が提出した乙各号証で明らかなように、政府等は「家歴書」を普通名称として使用してきた事実を再確認することができる。なお、乙第1号証の1及び2は、日付が確定していないので申し入れの日付の前後が争点である主張としての証拠としては採用できない。
イ そして、政府等が代替用語を使用したことを「一私人に独占させても問題はない」とするのは、被請求人の勝手な推測の城を出ない主張である。証拠が提出されていないので被請求人がどのような形で政府等に本商標権の存在を申し入れたのか不明である。この点、請求人が知る限り、政府等は「家歴書」が誰かに登録されている事実を事前に把握し、特定の企業に有利に働くことを避けるため、自発的に代わる他の語を使用し始めたのである。この情報は請求人の知るところとなり、これが端緒となって本件無効審判の請求に至ったものである。
ウ なお、被請求人が確かに本商標権の存在を政府等に申し入れたのであれば、答弁書提出後の今現在、依然として東京都都市整備局が住宅政策推進として、そのウェブサイト(http://www.toshiseibi.metro.tokyo.jp/juutaku_seisaku/401ansingaido.htm:甲第7号証の1)で「安心して住める家のためのガイドブック〈戸建住宅編〉」で「5.家歴書をつくりましょう」と推進しているのか(甲第7号証の1)納得できない。
同様に、福岡県建築都市部住宅課計画係りの以下のホームページ(http://www.pref.fukuoka.lg.jp/a12/karekisho.html):甲第7号証の2)で、依然今現在「家歴書を作成・保管しましょう!」と推進しているのか納得できない。
(5)「すまいろん季刊2005夏号」(甲第5号証の4)について
被請求人は、甲第5号証の4は不知の事実であるとともに、商標は創作性など問題にならないので、本件商標の出願前に「家歴書」を用いた文書があっても、それは本件商標の無効事由に該当しないと答弁している。
しかし、被請求人が住宅関連の業務に携わっていれば、財団法人住宅総合研究財団が発行する機関紙「すまいろん」を読んでいて当然の雑誌である(甲第9号証)。各号に建築・不動産業界におけるトピック的なテーマを取り上げ論説している。「家歴書」もその一テーマである。編集委員は東京大学、千葉大学、東京芸術大学、早稲田大学等の教授等からなる。「住総研」の略称として有名であり、「すまいろん」は「文書」ではない。これは明らかに不特定多数に頒布される「刊行物」である。
そうすると、建築・不動産業界で広く読まれている「すまいろん」において、「家歴書」が普通名称として使用されている事実は、正に本件商標が建築・不動産業界においては識別性がない語、普通名称であることを立証しているからに他ならないから、被請求人のかかる主張は事実誤認である。
(6)請求人の「家歴書」にかかる登録出願について
被請求人は、請求人を出願人とする登録出願(商願2007-98816)について、これは実質的に「家歴書」に識別力があることを自白しているものであると答弁している。
確かに、請求人は、「家歴書」を登録出願(商願2007-98816)している。しかし、請求人がこの登録出願をしたのは、当然ながら、商標法第3条柱書の精神から、「家歴書」の作成・運用をプロジェクトとして推進している請求人自身も使用するが、同じプロジェクトの企業や同業者が自由に使用するのを妨げる意図は全くないものである。
本件無効審判請求書で主張する趣旨に従えば、請求人としては、当該登録出願が識別性を欠如するとの理由で特許庁審査官により公に拒絶されることを望んでいる。それにより本件商標が公衆に開放され、本件商標の査定時から既に5年以上も前に政府等及び民間企業が平和的に自由に使用していた状況が、公に認定されることを願っているためである。
なお、本件商標査定時以降の書証ではあるが、平成19年(2007年)5月15日)の時点では、旭化成ホーム株式会社、大和ハウス工業株式会社、住友林業株式会社、パナホーム株式会社、ミサワホーム株式会社、積水ハウス株式会社、積水ハイム株式会社等の大手住宅メーカーによる「住宅情報専門グループ第一回検討会」の状況まとめ報告書で見られるように(甲第6号証の2)、参考資料2として「家歴書(たたき台)」が当該報告書に添付をされており、「家歴書」は建築・不動産業界では現在尚普通に使用されている語、普通名称であると十分認識することができる。このように、「家歴書」なる語が大手建築会社、不動産会社によって普通に使用されている現状において、被請求人が本商標権の権利を濫用するのは、業界の秩序を破壊するものである。

第3 被請求人の主張の要点
被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第3号証(枝番号を含む。)を提出している。
1 請求に対する第1答弁
(1)商標法第3条第1項第3号の該当性
ア 本件商標の登録要件における判断時期について
本件商標の登録要件は、登録査定の起案日である平成18年7月27日を判断基準にすべきである。
イ 甲第3号証及び甲第4号証について
請求人は、「家歴書」なる用語が使用されている事実を甲第3号証及び甲第4号証をもって証明しているが、「家歴書」なる用語が使用された日付は不明確であり、それが明確なものは査定日以降の事実であり、本件商標の登録要件を判断する上において、全く意味を成さないものといえる。
ウ 査定時前の「家歴書」の使用について
査定日前に「家歴書」なる用語が使用されているのは、そのほとんどが政府等の政策提言に係わるもので、その解説であったり、政府等の今後の方針であったりするものである。政府等の政策提言やその解説等に利用されていたからといって、その事実が、本件商標の指定役務である「建築物の設計,測量,地質の調査,建築又は都市計画に関する研究」に関して、「家歴書」イコール「一般名称化」につながるわけではない。
エ 政府等への申し入れについて
因みに、被請求人が、本商標権の存在を申し入れたところ、その後は、乙各号証にあるように、政府、国及び東京都は、本件商標の使用を控え、「家歴書」に代えて「住宅履歴情報」若しくは「住宅履歴書」という用語を用いている。
この事実は、「住宅履歴情報」及び「住宅履歴書」こそが一般名称であって、「家歴書」は少なくとも上記査定日には顕著性を有するものといえる証左である。
また、「家歴書」が一般名称化していたならば、たとえ、被請求人の申し入れがあったとしても、政府等は、「家歴書」を「住宅履歴情報」あるいは「住宅履歴書」に簡単に変更はできなかったはずである。なぜなら、一般名称化したものを他の名称に変更することは、社会の取引秩序を混乱させるからである。
しかし、上記したように政府等が、「家歴書」を「住宅履歴情報」或いは「住宅履歴書」に変更したのは、その変更によって、社会の取引秩序を混乱させるものではないという考えが根底にあったものと容易に推測することができる。
オ 「すまいろん季刊2005夏号」(甲第5号証の4)について
請求人は、本件商標が登録出願される前の事実である甲第5号証の4を提出している。しかし、被請求人にとって、甲第5号証の4は不知の事実であるとともに、商標は創作性など問題にならないので、本件商標が登録出願される前に「家歴書」なる用語を用いた文書があったとしても、その事実は本件商標を無効にすべき根拠にはなりえない。しかも、甲第5号証の4をもって、本件商標がその指定役務に対して一般名称化しているとはいい得ないこと明らかである。
(2)乙号証の解説
ア 乙第1号証の1及び2について
(ア)乙第1号証の1は、自民党の政策提言の内容が記載されたもので、被請求人が、本商標権の存在を申し入れる前のものである。この乙第1号証の1の中には「家歴書」なる用語がいたるところで使用されている。
被請求人は、平成19年6月に「自由民主党本部 政務調査会・団体総局 第4部国土交通部会担当」に、本商標権の存在を申し入れた。このときには、「国土交通省住宅局住宅政策課企画専門官」及び「住宅局住宅生産課企画専門官」が同席していた。
(イ)その後、自民党の政策提言である乙第1号証の2には、「家歴書」なる用語が一切使用されていない。そして、この乙第1号証の2の2枚目のページにおける「提言要約」が、乙第1号証の1の2枚目のページにおける「提言要約」とその内容が対応し、特に、両者の「住宅のトレーサビリティの向上」の欄であって、前者には「家歴書」なる用語が使用されているが、後者では、「家歴書」に相当するところが「住宅履歴情報」に変更されている。このことからも明らかなように、自民党では「家歴書」なる用語を、「住宅履歴情報」に意図的に変換していることが容易に推測される。
(ウ)また、乙第1号証の1にはところどころで「家歴書」なる用語が使用されているが、乙第1号証の2では「家歴書」なる用語は一切使用されてなく、これに相当する箇所は「住宅履歴情報」に置き換えられている。
イ 乙第1号証の3及び4について
乙第1号証の3は、自民党の政策提言記事で、被請求人が自民党に本商標権の存在を申し入れる前のものであって、乙第1号証の4は、その申し入れ後のものであり、その提言が国土交通省の施策として取り上げられた中での新法の概要説明記事である。乙第1号証の3では、「家歴書」なる用語が頻繁に使用されているが、乙第1号証の4には「家歴書」なる用語は一切使用されていない。特に、注目すべきところは、両者には、全く同じイメージ図が掲載されている。その中で、前者のイメージ図に「家歴書」と記載されていた部分が後者では「住宅履歴情報」に代えられている。ここでも、政府は「家歴書」なる用語を意図的に「住宅履歴情報」に変更していることが窺える。
ウ 乙第1号証の5について
平成19年8月26日付の日本経済新聞における国の政策説明の記事(乙第1号証の5)では、「住宅履歴書」なる用語を用い、「家歴書」なる用語は一切使用されていず、それに代わる用語として「履歴書」あるいは「住宅履歴書」なる用語が用いられている。
エ 乙第2号証の1ないし3について
乙第2号証の1は、2002年に東京都のウェブサイトに掲載された東京都住宅マスタープラン(2001-2015)である。これにおいても「家歴書」なる用語が随所に使用されている。しかし、乙第2号証の2及び3として示したWEB広報東京都(平成19年4月号)の東京都住宅マスタープランには、「家歴書」なる用語は一切使用されていず、全て「住宅履歴情報」に変換されている。なお、東京都住宅マスタープランは、本件商標が設定登録された後に全面改正されたもので、上記乙第2号証の2及び3は、改正後のプランである。
オ 乙第3号証について
乙第3号証は、2008年1月31日付の日経新聞に掲載された政府の「200年住宅」に関する解説記事である。ここでも、「住宅履歴書」或いは「住宅履歴情報」なる用語が使用され、「家歴書」なる用語は一切使用されていない。
カ 請求人の「家歴書」にかかる登録出願について
請求人は、商標「家歴書」に関して商願2007-98816に係る商標登録出願をしている。この出願は、「建物又は土地の情報提供」を指定役務としている。もし、請求人の請求の理由をそのまま受け容れれば、当該商標登録出願は、本来拒絶になるべきものである。しかし、自ら上記の商標登録出願をしているということは、実質的に「家歴書」なる商標に識別力があることを自白しているものといえる。
(3)商標法第4条第1項第16号の該当性
本件商標「家歴書」と、指定役務である「建築物の設計,測量,地質の調査」との間に、品質誤認の恐れは一切ない。したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第16号に該当しない。
(4)商標法第4条第1項第7号の該当性
政府及び東京都が、「家歴書」なる用語の使用を中止して、「住宅履歴情報」あるいは「住宅履歴書」なる用語に変更したとことは、事後的ではあるが、「家歴書」なる商標を一私人に独占させても問題がないもと推測する材料になり得るものである。したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当しない。なお、この点においても、請求人が当該商標登録出願をしていることは、矛盾するから、「家歴書」なる商標が、商標法第4条第1項第7号に該当しないことを実質的に自白しているものといえる。
(5)結論
以上のように、本件商標は、商標法第3条第1項第3号、同第4条第1項第16号及び同第7号に違反して登録されたものではなく、審判請求は成り立たないものである。
2 弁駁に対する第2答弁
(1)請求人の主張について
請求人の主張は、全体的に感情論と推論に終始しているように思われる。また、請求人は、本来なら商標法第26条に該当するかどうかを議論すべきことを、登録要件の議論に置き換えているようにも思われる。
ア 商標法第3条1項第3号の該当性
本件の指定役務は、「建築物の設計,測量,地質の調査」であり、「建築又は都市計画に関する研究」である。
これらの指定役務に対して、請求人は、「不動産、住宅建築等の業界において、測量、設計?管理等の役務の提供に普通に供する物であり、また、そのような目的で普通に使用されているものである」と主張している。しかしながら、上記役務にかかわる業界における慣行は、なんら証明されていない。確かに、東京都住宅局の「安心して住める家」ガイドブックには、「家歴書」の見本が表示されている。しかし、それはあくまでも住宅の履歴書であって、「建築物の設計,測量,地質の調査」を役務とする業界、あるいは「建築又は都市計画に関する研究」を役務とする業界において普通に供されるものという証拠にはならない。
請求人は、「建築物の設計,測量,地質の調査」の業界あるいは「建築又は都市計画に関する研究」の業界において、「家歴書」が商標法第3条第1項第3号に該当するという証拠を一切示していない。
また、「家歴書」なる用語は、それを構成する漢字から一般的な国語的な意味を読み取ったとき、指定役務「建築物の設計,測量,地質の調査」および「建築又は都市計画に関する研究」との関連性を認識させるものではない。
ただし、請求人が主張するように、当該業界において家歴書が普通に供される物であるという根拠があれば、話は別であるが、そのような事実は一切証明されていない。
よって、本件商標は、指定役務「建築物の設計,測量,地質の調査」および「建築又は都市計画に関する研究」について、商標法第3条第1項第3号に該当するものではない。
イ 商標法第4条1項第16号の該当性
請求人は、本件商標「家歴書」を「建築物の設計,測量,地質の調査」以外の役務に使用したときには、品質誤認のおそれがあると主張している。しかし、本件商標の指定役務は、まさに「建築物の設計,測量,地質の調査」に使用するものであって、請求人の論を借りれば、品質誤認の恐れが全くないといえる。
ウ 商標法第4条第1項第7号の該当性
商標法第4条第1項第7号はいわゆる公序良俗に関する規定である。この規定の適用に関して、判例では、むやみ解釈の幅を広げるべきでないとしているが、それは周知のことである。また、特許庁編「工業所有権法(産業財産権法)逐条解説第17版」においても、「むやみに解釈の幅を広げるべきではなく、1号から6号までを考慮して行うべきであろう」として判例と同一の立場を取っている。
商標法第4条第1項第1号ないし第6号は、公益的な事業を営む事業主体を表象する商標又はそれら事業主体が証明用などに使用している商標に関する登録を阻止するための規定である。
してみれば、家歴書は公益的な事業主体を表象するものでもなければ、それら事業主体が証明用などに使用するものでもない。
したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第7号に該当するものではない。
(2)まとめ
請求人は、いろいろ主張しているが、要するに、本件商標は、商標法第3条第1項第3号、商標法第4条第1項第16号、商標法第4条第1項第7号に該当するというものである。しかしながら、本件商標は、その指定役務から商標法第4条第1項第16号に該当しないこと明らかである。また、本件商標が、商標法第4条第1項第7号に該当するというのは、法律解釈から無理があるものといえる。そして、本件商標が商標法第3条第1項第3号に該当するか否かであるが、本件商標の指定役務から考えると、家の履歴書が「役務の提供の用に供する物」というのは疑問である。なぜなら、「建築物の設計,測量,地質の調査」に家の履歴書を関連付けて解釈するということが一般的ではないからである。
したがって、本件商標は、請求人が主張する商標法第3条第1項第3号、商標法第4条第1項第16号、商標法第4条第1項第7号のいずれの規定にも該当しないものである。

第4 当審の判断
本件商標は、「家歴書」の文字を書してなり、第42類「建築物の設計,測量,地質の調査,建築又は都市計画に関する研究」を指定役務とするものであるところ、請求人は、本件商標の無効理由の一つに商標法第3条第1項第3号に違反して登録されたとする無効事由が存在すると述べているので、その当否について判断する。
なお、登録商標が、商標法第3条第1項第3号に該当するか否かの判断時期は査定時又は審決時であると解されるところ、本件商標については、平成18年7月27日(起案日)に登録査定がされたものである。
1 「家歴書」について
請求人提出の甲第3号証の「Yahoo!辞書」には、「家歴書(かれきしょ)」について、「住宅の歴史を記した文書。設計図や施工記録、その後のリフォーム歴、設備・機器の保証書などを入れる。東京大学生産技術研究所の野城研究室が東京ガスやソフトウェア開発会社と共同で開発を進めている。これをインターネット上で管理しようというものである。2006年10月にはインターネット上で家歴書を管理する『SMILE(スマイル)システム』を開発。これは、中古住宅の販売の際に役立てることができるほか、所有者がリフォームを行う際にも、リフォーム会社やインテリアコーディネーターが設計図や施工記録に目を通すことで速やかに対応できるようになる。行政側も家歴書の普及に力を入れており、東京都は2001年に住宅取得者らを対象にしたガイドブックの中で家歴書を作成することを提案。翌年発表した『東京都住宅マスタープラン(2001-2015)概要』でも『家歴書』を計画の中心に据えている。」と解説されている。
そして、上記解説中にみられる「東京都住宅マスタープラン(2001-2015)」は、被請求人が乙第2号証の1として提出している東京都のウェブサイトにおける新聞報道資料[2002年掲載]の「東京都住宅マスタープラン(2001-2015)」であり、これによると、まさしく、東京都が「家歴書」の整備・普及を計ろうとしていることが認められるものである。
加えて、甲第7号証の1は、平成13年1月発行の東京都住宅局による「安心して住める家のためのガイドブック<戸建住宅編>」であり、これによれば、「家歴書」(家のリフォームの経緯、施工者名などの記録)の参考例を掲載し、「家歴書」を作ることを提案していることが認められる。
また、この「安心して住める家のためのガイドブック<戸建住宅編>」は、現在も、東京都都市整備局のウェブページ(http://www.toshiseibi.metro.tokyo.jp/juutaku_seisaku/401ansingaido.htm)で全文がPDFファイルで掲載されているほか、東京都庁第一本庁舎3階北側都民情報ルームで、平成13年(2001年)4月2日より販売(価格170円)されていることが認められるものである(甲第7号証の1)。
2 「家歴書」の使用状況について
「家歴書」について記載のあるインターネット情報等については、以下の各甲号証が請求人から提出されているところである。
・平成15年(2003年)3月に福岡県建築都市部住宅課により発行された「市場活用住宅施策検討に関する調査・研究/-市場を活用した新たな住宅施策-/報告書」(甲第5号証の2)
・平成17年(2005)3月9日に国土交通省住宅局により発行された「第5回基本制度部会資料/?住宅政策の基本理念及び施策の現状と方向性等について?」(甲第5号証の3)
・2005年(平成17年)7月1日に財団法人住宅総合研究財団により発行された「すまいろん季刊2005夏号」(甲第5号証の4)
・2005年(平成17年)12月17日付け朝日新聞朝刊に掲載された「(私の視点ウィークエンド)耐震強度偽装「家歴書」付け住宅流通を 野城智也」を見出しとする新聞記事(甲第5号証の5)
・平成14年(2002年)4月に東京都/電子都市構築に関する懇談会により発行された「3300万電子都市構築に向けた情報通信戦略/?電子都市構築に関する懇談会報告?」(甲第5号証の6)
・平成14年(2002年)4月8日付けの報道発表資料であって、「『電子都市構築に関する懇談会』最終報告書について」(総務局IT推進室)を表題とする東京都のウェブサイト(甲第5号証の7)
・「住まいのコラム」の項目のもと、「建物/土地 2002年9月5日/?『創世記! 不動産構造改革」その19?「動き出した中古住宅市場<その3>』」を表題とする「Goo住宅・不動産」のウェブサイト(甲第5号証の8)
・「イベント情報」の項目のもと、「『すまい価値は情報から』?家歴書プロジェクト?」の見出しのもと、2006年11月30日(木)?12月5日(火)を会期とし、有限責任事業組合住生活情報マネージメントシステムが主催したイベントについて記載された「Living Design Center OZONE」のウェブサイト(甲第5号証の11)
・「ニュース」の項目のもと、「家歴書 ネット管理」を表題とする「YOMIURI ONLINE/読売新聞」のウェブサイト(甲第5号証の12)
・「マンション管理サテライト」の表題のもと、「連載特集:第92回“キャリア住宅”普及のカギは家歴書の作成・保管から」を見出しとする「NIKKEI NET」のウェブサイト(甲第5号証の13)等。
そして、上記した証拠においては、「家歴書」に関する説明、作成や制度化に関する情報などが幅広く紹介されている事実を認めることができるものである。
3 商標法第3条第1項第3号の該当性
以上からすると、本件商標の「家歴書」については、東京都が「住宅の品質確保の促進等に関する法律」(平成12年4月1日施行)を踏まえ「住宅性能表示制度」の周知・普及に努める一環として、平成13年(2001年)頃から現在に至るまで、「家歴書」の文字(語)を使用し、その作成を推奨してきたところであり、近年においては、国土交通省の住宅政策として、「家歴書」作成の制度化に向けた動きがニュースとされるなど、建築・不動産を取り巻く社会において、「家歴書」が数多く取り上げられてきたことが窺えるところである。
してみれば、「家歴書」の文字(語)は、「住宅に係る建物の設計図や施工記録、その後のリフォーム歴、設備・機器などについて記録された文書」という程の意味合いを有するものとして、建築・不動産業界、建築に関する国及び地方公共団体の機関、住宅の取得あるいはリフォームなどに関心を持つ一般需要者において、広く理解され、普通に使用されているものというのが相当である。
そうとすれば、「家歴書」の文字よりなる本件商標をその指定役務中「家歴書を用いて提供する建築物の設計・測量・地質の調査,家歴書に関する建築又は都市計画に関する研究」に使用するときは、これに接する取引者、需要者は、例えば「建築物の設計・測量・地質の調査の役務が提供される際に用いられる家歴書,家歴書に関する建築又は都市計画に関する研究」などであることを容易に想起し、理解するものであって、単にその役務の提供の用に供する物を表示するものとして把握するにとどまり、自他役務の識別標識としての機能を果たし得ないものというのが相当であり、かつ、前記役務以外の役務に使用するときは、役務の質の誤認を生じさせるおそれがあるものといわなければならない。
したがって、本件商標は、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に違反して登録されたものであるといわざるを得ない。
4 被請求人の主張について
(1)「家歴書」の使用について
被請求人は、査定日前に「家歴書」なる用語が使用されているのは、そのほとんどが政府等の政策提言に係わるもので、本件商標の指定役務に関して、「家歴書」イコール「一般名称化」につながるわけではない旨述べている。
しかし、請求人が提出した「すまいろん季刊2005夏号」(甲第5号証の4)、新聞記事(甲第5号証の5)、「Goo住宅・不動産」に係るウェブサイト情報(甲第5号証の8)、「Living Design Center OZONE」に係るウェブサイト情報(甲第5号証の11)、「YOMIURI ONLINE/読売新聞」に係るウェブサイト情報(甲第5号証の12)及び「NIKKEI NET」に係るウェブサイト情報(甲第5号証の13)等は、民間における刊行物、ウェブサイト及び新聞記事等の情報であって、これらは政府等の政策提言や国土交通省が推進、普及に努める住宅政策の施策に関するものであり、そこで取り上げられた「家歴書」についてのものであるから、政府等の政策提言に係わるもののみにとどまるものでないことは明らかであり、「家歴書」の文字に接する取引者、需要者の理解や認識は、これらを通じて広く周知されたことが窺い知れるところである。
(2)政府等への申し入れについて
被請求人は、政府、国及び東京都に本商標権の存在を申し入れたところ、「家歴書」を「住宅履歴情報」あるいは「住宅履歴書」に変更したことは、「家歴書」が少なくとも査定日には顕著性を有するものといえる証左であって、また、その変更によって、社会の取引秩序を混乱させるものではないという考えが根底にあったものと容易に推測することができる旨述べている。
しかし、政府、国及び東京都の当該関係者が如何なる理由でその使用を変更したかは明らかでなく、被請求人の挙げた乙各号証の例があるからといっても、上記1で記載したとおり、現在も東京都では、「安心して住める家のためのガイドブック<戸建住宅編>」において、「家歴書」の作成を提案し、このガイドブックを東京都都市整備局のウェブページにPDFファイルで掲載しているほか、東京都庁第一本庁舎3階北側都民情報ルームで販売していることが認められる(甲第7号証の1)。
そして、住宅の設計図や施工記録やリフォーム歴を表現するのに「住宅履歴情報」あるいは「住宅履歴書」の代替表現があるとしても、そのことから直ちに、「家歴書」の語に独占適応性があるとはいい得ないものである。
上記2の甲各号証における各事実に照らし、「家歴書」の語は、建築・不動産業界、建築に関する国及び地方公共団体の機関、においては、多数使用されているものと認められるのであって、そうである以上、本件商標「家歴書」もまた、取引に際し必要適切な表示として何人にもその使用を開放しておくことが適当であって、その中の特定の者のみに本件商標の使用を独占させるのは公益上望ましくないというべきである。
(3)その他、被請求人は、商標は創作性など問題にならないので、本件商標が登録出願される前に「家歴書」なる用語を用いた文書があったとしても、その事実は本件商標を無効にすべき根拠にはなりえないし、また、請求人の「家歴書」にかかる登録出願について、自ら商標登録出願をしているということは、実質的に「家歴書」なる商標に識別力があることを自白しているものといえる旨述べている。
確かに、商標の創作性や登録出願前にその用語を用いた文書があったとしても、必ずしもそれが商標登録の阻害要件になるものでない。要は、登録商標が自他役務の識別力を有するものであるか否かは、指定役務等の取引の実情に基づき、取引者や需要者の認識を基準として、個別具体的に判断されるべきものである。また、請求人が「家歴書」の文字について、自ら商標登録出願したとしても、その事をもって「家歴書」の文字に識別力があることを自白したことにはならないから、その主張は当を得ていない。
(4)以上のとおり、上記した請求人の主張は、いずれも採用することができない。
その他、被請求人の主張をもって、前記認定を覆すことはできない。
5 結語
したがって、本件商標は、商標法第3条第1項第3号及び第4条第1項第16号の規定に違反して登録されたものであるから、請求人が主張するその余の無効事由について判断するまでもなく、同法第46条第1項の規定に基づき、その登録を無効にすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲
審理終結日 2009-01-20 
結審通知日 2009-01-23 
審決日 2009-02-03 
出願番号 商願2006-18923(T2006-18923) 
審決分類 T 1 11・ 13- Z (Y42)
T 1 11・ 272- Z (Y42)
最終処分 成立 
前審関与審査官 村上 照美 
特許庁審判長 渡邉 健司
特許庁審判官 井出 英一郎
鈴木 修
登録日 2006-09-08 
登録番号 商標登録第4986555号(T4986555) 
商標の称呼 カレキショ、イエレキショ 
代理人 嶋 宣之 
代理人 鈴木 均 
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社   サービスに関しての問い合わせ