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審決分類 審判 査定不服 商4条1項16号品質の誤認 登録しない X05
審判 査定不服 商3条1項3号 産地、販売地、品質、原材料など 登録しない X05
管理番号 1195427 
審判番号 不服2008-10923 
総通号数 113 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2009-05-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-04-30 
確定日 2009-03-18 
事件の表示 商願2007- 49607拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 1 本願商標
本願商標は、「NPH」の文字を標準文字で表してなり、第5類に属する願書記載のとおりの商品を指定商品として、平成19年5月18日に登録出願されたものである。そして、願書記載の指定商品については、原審において、同年10月11日付け提出の手続補正書により、第5類「薬剤,医療用油紙,衛生マスク,オブラート,ガーゼ,カプセル,眼帯,耳帯,生理帯,生理用タンポン,生理用ナプキン,生理用パンティ,脱脂綿,ばんそうこう,包帯,包帯液,胸当てパッド,乳児用粉乳,乳糖」と補正されたものである。

2 原査定の拒絶の理由(要点)
原査定は、「本願商標は、中間型インスリン製剤(neutral protamine Hagedorn)を意味する『NPH』の文字を標準文字で表してなるものであるから、これをその指定商品中の『薬剤』に使用しても『中間型インスリン製剤』を認識させるにとどまるものであって、単に商品の品質、内容を表示するにすぎないものである。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、前記商品以外の商品に使用するときは、商品の品質の誤認を生じさせるおそれがあるので、同法第4条第1項第16号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

3 当審における証拠調べ通知
当審において、本願商標が商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当するか否かについて、職権に基づく証拠調べを行ったところ、別掲に示すとおりの事実を発見したので、同法第56条第1項で準用する特許法第150条第5項の規定に基づき、請求人に対し、平成20年11月18日付けで証拠調べの結果を通知した。

4 職権証拠調べに対する請求人の対応
前記「証拠調べ通知」に対して、所定の期間を指定して意見を申し立てる機会を与えたところ、請求人からは何らの意見もない。

5 当審の判断
本願商標は、前記1のとおり、「NPH」の欧文字を標準文字で表してなるものである。
そして、前記3で示したとおり、糖尿病の治療薬として一般に使用されている「インスリン製剤」は、その病の症状により、投与する製剤の種類が異なり、効能の作用時間によって速効型、中間型、持続型等に分類されているものである。
さらに、作用時間が中間型のインスリン製剤は、医薬関係の書籍において、「中性インスリン、NPHインスリン、中間型インスリン」と表示され、それらは「NPH insulin」として掲載されており、また、新聞記事及びインターネット上のウェブサイトにおいては、「中間型(NPH製剤)」、「中間型インスリン(NPH)」、「中間型(NPH)インスリン」、「中間型インスリン(NPHインスリン)」、「ヒトインスリン中間型製剤(NPH)」、「NPH(中間型)インスリン」、「NPHインスリン(中間型インスリン)」等のように表記されている実情にある。
そうすると、「NPH」の文字は、インスリン製剤との関係において、その製剤の作用時間が「中間型」であることを、表す文字として用いられているということができる。
してみれば、本願商標を構成する「NPH」の欧文字を、その指定商品中、薬剤の一である「インスリン製剤」に使用するときは、これに接する取引者、需要者に、その製剤の作用時間が中間型であることを理解させるに止まり、単に商品の品質、効能を表示してなるにすぎないものであるから、自他商品の識別標識としての機能を有する商標とは認識し得ないというべきであって、かつ、前記商品以外の「薬剤」に使用するときは、商品の品質について誤認を生じさせるおそれがあるというべきである。
したがって、本願商標が、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当するとして本願を拒絶した原査定は、妥当であって、取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲
証拠調べ通知の内容

第1 本願商標を構成する「NPH」の文字に関して行った職権による証拠調べによれば、以下の事実が認められる。
1 「NPH」の文字が、本願指定商品中「インスリン製剤」との関係において、書籍に掲載されている事実。
(1)「NPD」の項において、「NPH neutral protamine Hagedorn 新インシュリン」との記載(「ランダムハウス英和大辞典第2版」株式会社小学館発行)。
(2)「NPH insulin」の項において、「(neutral protamine Hagedorn insulin) NPHインスリン」との記載(「最新医学大辞典第2版」及び「最新医学大辞典第3版」医歯薬出版株式会社発行)。
(3)「NPH insulin」の項において、「neutral-protamin-Hagedorn insulinの略」との記載(「医学英和大辞典第11版」株式会社南山堂発行)。
(4)「NPH insulin」の項において、「NPHインスリン(neutral-protamine-Hagedorn insulin)」との記載(「医学英和大辞典第12版」株式会社南山堂発行)。
(5)「NPH insulin」の項において、「〔neutral-protamine-Hagedorn insulin〕NPHインスリン」との記載(「最新医学略語辞典〈第4版〉」中央法規出版株式会社)。
(6)「NPHイスジリン」の項において、「膵臓ホルモン製剤」との記載(「早わかり薬品辞典第3版」株式会社メヂカルフレンド社発行)。
(7)「NPH」の項において、「neutral protamic Hagedorn insulin 中性インスリン、中間型インスリン」、及び、「NPH insulin」の項において、「neutral protamic Hagedorn insulin 中性インスリン、中間型インスリン」との記載(「医学略語辞典」株式会社朝倉書店発行)。
2 「NPH」の文字が、本願指定商品中「インスリン製剤」との関係において、新聞記事に掲載されている事実。
(1)「山之内製薬、ノボ社の中間型ヒトインシュリン製剤を発売」の見出しのもと、「インシュリン製剤は作用時間により速効型、中間型、持続型に分けられる。ノボリン30RはNPHという中間型インシュリンに30%の速効型インシュリンを混合した製剤。」との記事(1990.09.05 化学工業日報 9頁)。
(2)「ノボ ノルディスク フレックスペン、イノレットが承認取得」の見出しのもと、「ノボ ノルディスク ファーマは19日、ヒトインスリン製剤『フレックスペン』(7品目)、『イノレット』(4品目)が17日付で承認を取得したと発表した。(略)フレックスペンとイノレットは、あらかじめインスリン製剤がセットされ、カートリッジ交換の必要がないヒトインスリン製剤。(略)『フレックスペン』は、2002年4月に1品目発売していたが、ヒトインスリン中間型製剤(NPH)やその他のインスリン製剤についてもフレックスペンを使用したいという声が高かったため、今回7品目を追加。」との記事(2003.03.20 日刊薬業 4頁)。
(3)「慈恵医大・田嶼教授 レベミルは『低血糖のリスク軽減』」の見出しのもと、「田嶼氏は、超速効型インスリンと、基礎インスリンの分泌を補う超持続型インスリンを組み合わせて、血糖コントロールを行う重要性を強調。ただ、これまで持続型として使用してきた中間型インスリン(NPHインスリン)では、低血糖が問題になったり、作用にばらつきが出るなどして、『使いづらい面があった』と述べた。」との記事(2007.11.08 日刊薬業 11頁)。
(4)「仏サノフィ・A インスリン グラルギンで心筋梗塞率低下」の見出しのもと、「フランスのサノフィ・アベンティスはこのほど、米国の公的マネジドケアの統合データベース(DB)を解析した結果、インスリン グラルギンによるインスリン療法は、NPH(中間型)インスリンによる治療よりも心筋梗塞の発症率が低い傾向があったと発表した。」との記事(2007.11.21 日刊薬業 9頁)。
(5)「サノフィ・アベンティス、費用対効果で優位性、持効型インスリン」の見出しのもと、「サノフィ・アベンティスは、イタリアで今月開催された欧州糖尿病学会(EASD)年次学術集会で、同社の持効型溶解インスリンアナログ製剤『ランタス』がデテミル(ノボ ノルディスクの持続型インスリン)やNPH(中間型)インスリンと比べ費用対効果の高いことなどを発表した。」との記事(2008.09.24 化学工業日報 8頁)。
(6)「サノフィ ランタスにHbA1c改善効果と費用対効果」の見出しのもと、「フランスのサノフィ・アベンティスはこのほど、3つの非介入試験により、持続型インスリンアナログ製剤『ランタス』による治療が、インスリンデテミルやNPHインスリン(中間型インスリン)より、HbA1cの改善効果と費用対効果が高いことが判明したと発表した。」との記事(2008.09.29 日刊薬業 7頁)。
3 「NPH」の文字が、本願指定商品中「インスリン製剤」との関係において、インターネット上のウェブサイトに記載されている事実。
(1)「財団法人日本感染症学会」のウェブサイトにおいて、「ICTとしての感染対策」の項のもと、質問「当病院はインスリン製剤を補正用として各部署の冷所においております.バイアルに何回となく針を刺すわけですが,針を刺す回数,期限などは1本バイアルにつきどの程度安全とみなせるでしょうか.また,今まで1ヵ月くらい使ったバイアルを培養して,結果を出したことがありましたら,それも含めて教えてください.」に対する回答として「インスリン製剤は超速効型,速効型,中間型(NPH製剤,二相性製剤,混合製剤),持効型と種類が多い.」との記載(http://www.kansensho.or.jp/sisetunai/kosyu/pdf/q040.pdf)。
(2)「株式会社ほくやく」のウェブサイトにおいて、インスリン製剤の一覧表中分類の項に、「中間型 NPH製剤」との記載(http://www.hokuyaku.co.jp/pdf/medicine/yakkou/y06_02.pdf)。
(3)「FC2」のウェブサイトにおいて、「インスリン製剤一覧表(2008年6月現在)」の項のもと、「中間型(NPH製剤)」との記載(http://diabetes.web.fc2.com/sub_html/ichiranhyou.htm)。
(4)「井蛙内科開業医/診療録」のウェブサイトにおいて、「従来の中間型(NPH)インスリン製剤は,投与 4 時間前後にピークがあり,ピークによる低血糖を気にすると,十分な増量を躊躇してしまうことがありました。」との記載(http://wellfrog.exblog.jp/8562520/)。
(5)「日経メディカルオンライン」のウェブサイトにおいて、「【国際糖尿病学会速報】 超持続型インスリンの投与、朝でも就寝前でも効果は同等」の項のもと、「グラルギンは、わが国では承認申請中の新しいインスリン製剤。1日1回の投与で24時間一定の血中インスリン濃度が保て、健常人の基礎インスリン分泌パターンに近い作用が期待できるのが特徴だ。従来の中間型(NPH)インスリンに比べて、低血糖発作の発現や体重増加の低減効果が既に立証されている。」との記載(http://medical.nikkeibp.co.jp/inc/all/hotnews/archives/263780.html)。
(6)「ノボルディスクファーマ株式会社」のウェブサイトにおいて、「インスリン デテミル(海外販売名:LevemirR) 独自の体重増加抑制のベネフィットは、治療開始2年後も持続 -同時に、血糖コントロールの有意な改善と低血糖の発現率低下-」の項のもと、「1型糖尿病を対象とした2年間の試験において、インスリン デテミルで治療を受けた患者さんは、NPH(中間型)インスリンで治療を受けた患者さんよりも体重増加が有意に少なく、同時に血糖コントロールも有意に改善されました」との記載(http://novonordisk.co.jp/documents/article_page/document/PR_07_25.asp)。
(7)「ノボルディスクファーマ株式会社」のウェブサイトにおいて、「ノボ ノルディスク社、75年にわたり糖尿病研究に貢献 ステノ糖尿病センター75周年、ハーゲドン研究所50周年」の項のもと、「最も注目すべき成果は、1936年にハーゲドン博士らによりプロタミンという蛋白質を加えることによってインスリン作用の持続化に成功したこと、1946年に世界初の結晶性プロタミンインスリン(NPH)の開発に成功したことです。どちらも、当時のノルディスク インスリン研究所(ハーゲドン研究所の前身)で開発され、ステノで臨床試験が行われました。NPHのHはハーゲドンの名前に由来しています。NPHは当時と製法は異なりますが現在でも、中間型NPHインスリン製剤として使われています。」との記載(http://novonordisk.co.jp/documents/article_page/document/PR_07_30.asp)。
(8)「Uc植村内科クリニック」のウェブサイトにおいて、「◆ インスリン調節法ABC ◆-製剤の種類と投与法・調節の仕方について-」の項のもと、「基礎分泌補充 中間型インスリン(NPH)や持続型インスリン(Ultralente)の場合はその効果に山ができてしまい、特に深夜低血糖を起こすおそれがあり朝食前血糖が不安定になる傾向がありました。」との記載(http://www.uemura-clinic.com/dmlecture/insulintx.htm)。
(9)「株式会社スズケン」の提供による、「24時間持続型インスリンアナログ製剤 インスリングラルギン 順天堂大学内科教授 河盛隆造」の項のもと、「1936年にはプロタミンインスリンが作られ、さらに1946年にはプロタミンインスリンに亜鉛を加えると安定した結晶が得られることが発見され、持続的な作用を示す製剤が開発されました。現在、中間型インスリンの代表的な製剤としてNPHインスリンがあります。」との記載(http://medical.radionikkei.jp/suzuken/final/040108html/index.html)。
(10)「日本糖尿病学会」のウェブサイトにおいて、「膵全摘後の基礎インスリン分泌補充に持効型溶解インスリンが有効であった膵性糖尿病の1例」の項のもと、「要約:(略)就寝前に中間型インスリン (NPHヒトインスリン) を6単位追加し, Bolus-Basalの4回法に変更した後, 深夜から早朝にかけて低血糖を頻回に起こした.」との記載(http://www.jstage.jst.go.jp/article/tonyobyo/48/3/48_183/_article/-char/ja)。
(11)「健康倶楽部」のウェブサイトにおいて、「糖尿病の薬物治療法」の項のもと、「●インスリンの作用時間による分類 C中間型インスリン: NPHインスリン、レンテインスリン」との記載(http://www.nagara.com/prevent/diabetes/therapy/medication.html)。
(12) 「IDDM-NETWORK」のウェブサイトにおいて、「●中間型インスリン(N型製剤、NPHインスリン)【ちゅうかん・がた・いんすりん(えぬ・がた・せいざい、えぬぴーえっち・いんすりん)】(薬剤名)」の項のもと、「注射後約1.5時間で効果が現れ始め、4?6時間後で効果が最大になり、12?16時間後に効果が消滅するインスリン製剤。」との記載(http://www.joho-kyoto.or.jp/~iddm-net/HTML/DIC/Main/TI/ti003.html)。

第2 前記実情よりすれば、糖尿病の治療薬として一般に使用されている「インスリン製剤」は、その病の症状により、投与する製剤の種類が異なり、また、効能の作用時間によって速効型、中間型、持続型等に分類されていることを窺い知ることができる。
そして、作用時間が中間型のインスリン製剤は、医薬関係の書籍において、「「中性インスリン、NPHインスリン、中間型インスリン」と表示され、それらは「NPH insulin」として掲載されていることが確認できる。
また、中間型のインスリン製剤は、新聞記事及びインターネット上のウェブサイトにおいては、「中間型(NPH製剤)」、「中間型インスリン(NPH)」、「中間型(NPH)インスリン」、「中間型インスリン(NPHインスリン)」、「ヒトインスリン中間型製剤(NPH)」、「NPH(中間型)インスリン」、「NPHインスリン(中間型インスリン)」等のように表記されている実情にある。
そうすると、「NPH」の文字は、インスリン製剤との関係において、その製剤の作用時間が「中間型」であることを、表す文字として普通に用いられているというべきである。
してみれば、本願商標を構成する「NPH」の欧文字を、その指定商品中、薬剤の一である「インスリン製剤」に使用するときは、これに接する取引者、需要者に、その製剤の作用時間が中間型であることを理解させるに止まり、単に商品の品質、効能を表示してなるにすぎないものであるから、自他商品の識別標識としての機能を有する商標とは認識し得ないものというべきであって、かつ、前記商品以外の「薬剤」に使用するときは、商品の品質について誤認を生じさせるおそれがあるものというべきである。
したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当するというのが相当である。


審理終結日 2009-01-16 
結審通知日 2009-01-19 
審決日 2009-01-30 
出願番号 商願2007-49607(T2007-49607) 
審決分類 T 1 8・ 13- Z (X05)
T 1 8・ 272- Z (X05)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 箕輪 秀人 
特許庁審判長 鈴木 修
特許庁審判官 岩崎 安子
小畑 恵一
商標の称呼 エヌピイエッチ、エヌピイエイチ 
代理人 山田 清治 
代理人 萼 経夫 

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