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審決分類 審判 全部無効 商4条1項8号 他人の肖像、氏名、著名な芸名など 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Y32
管理番号 1195406 
審判番号 無効2008-890021 
総通号数 113 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2009-05-29 
種別 無効の審決 
審判請求日 2008-03-03 
確定日 2009-03-11 
事件の表示 上記当事者間の登録第4865841号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第4865841号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4865841号商標(以下「本件商標」という。)は、「天大神神社御神水」の文字を標準文字により表してなり、平成16年9月9日に登録出願、第32類「鉱泉水,ミネラルウォーター,その他の清涼飲料」を指定商品として、平成17年5月20日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
請求人が引用する登録第4362341号商標(以下「引用商標1」という。)は、別掲1のとおりの構成からなり、平成11年3月24日に登録出願、第32類「ビール,清涼飲料,果実飲料,飲料用野菜ジュース,乳清飲料」を指定商品として、平成12年2月18日に設定登録されたものである。同じく登録第4652360号商標(以下「引用商標2」という。)は、別掲2のとおりの構成からなり平成14年6月14日に登録出願、第32類「ビール,清涼飲料,果実飲料,乳清飲料,飲料用野菜ジュース」を指定商品として、平成15年3月14日に設定登録されたものである。同じく登録第4360656号商標(以下「引用商標3」という。)は、別掲3のとおりの構成からなり、平成10年10月20日に登録出願、第32類「天然水,鉱泉水,その他の清涼飲料,果実飲料,ビール,乳清飲料」を指定商品として、平成12年2月10日に設定登録されたものである。

第3 請求人の主張の要点
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由及び被請求人の答弁に対する弁駁の理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第7号証(枝番号を含む。なお、枝番号の( )カッコは省略する。)を提出している。
1 請求の理由
(1)本件商標は、商標法第4条第1項第8号及び同項第11号に該当し、同法第46条第1項第1号により、その登録を無効とすべきものである。
(2)本件商標の商標法第4条第1項第8号該当性について(無効事由1)
ア 本件商標は、その構成から明らかなように、「天大神神社」と「御神水」の文字とからなるものである。この文字のうち「天大神神社」については、このような神社が現実には存在しない神社であることは、神社本庁発刊の「全国神社名鑑」(昭和37版)に何ら記載されていないのみならず、熊本県にある神社を調査してもこのような神社が検出されないことから明らかである。
したがって、この神社名は、実在のものではなく、全く架空のものであることは明らかである。
イ しかし、この架空の神社名は、全国的に周知著名な神社である「大神神社」の名称を無断で使用しているのである。
この「大神神社」は、三輪山を御神体とし、日本最古の神社として、奈良県桜井市三輪に現在も鎮座し、毎年多くの参拝者や観光客が訪れる所となっているのである。また、「大神神社」の祭神は大国主命として広く知られている大物主大神であり、その創建は古く奈良時代以前とされ、日本で最初に設けられた神社制である延喜式では、二十二神社の中で第九位を占めるという格式の高い神社である。それ故、「大神神社」は、古くから大和国一の宮として、広く人々に知られてきたものである。
これらのことは、古くから多く書籍や雑誌に幾度となく記載されてきたものである。例えば、江戸時代の「名所図会」をはじめとして、今日の書籍・雑誌にも多く記載・掲載されている。それらの中、例を示すと、「日本『神社』総覧」、「日本100の神社」、「ザ・ご利益」、「歴史と旅」、「新集、家紋大全」、「広辞苑」等々があり(甲第2号証の1ないし6)、古くからこの「大神神社」が、如何に人々に広く知れ渡っていたかが分かるものである。
また、「大神神社」が記載・掲載されている書籍・雑誌は、これらのみではなく、他にも数多くあるものである。
ウ さらに、今日において、「大神神社」の「名称」を容易に周知著名にしているものに「インターネット」がある。その「インターネット」により、本件商標を調査したところ、「天大神神社」は、一件も検索されず、全て「大神神社」のみが検索されたのである。「大神神社」に関する検索数は13万件強の数であり、如何に「大神神社」が全国的に知れ渡っているか、このことからも明らかである。
「インターネット」上で、「大神神社」は、自己の「ホームぺージ」を除き、多くの人々や会社によって数多く沢山の記事を書かれ、掲載表示されているものである。その数例を挙げると、観光、特産品マップの「三輪山と大神神社(おおみわじんじゃ)」、Wikipediaの「大神神社」、サイトマップの「大神神社(三輪明神)」、おでかけ/施設情報の「大神神社」、奈良の寺社の「大神神社」、春日野奈良観光の「大神神社」、JRおでかけネットの「大神神社」、MapFanWebの「三輪明神大神神社(おおみわ)」、GEKKEIKANの「大神神社(おおみわじんじや)」、桜井の「大神[オオミワ]神社」、三輪3の「大神神社」、古代史跡を歩くの「大神神社」、「おでかけるぽ」の「大神神社(おおみわじんじや)」等々がある(甲第3号証の1ないし13)。
しかし、「インターネット」上に記載表示されている「大神神社」に関する記事は、他にも沢山あり、人々の関心の高さを如実に示しているものである。そして、それらの記事は、「大神神社」の所在地、祭神、歴史、行事、建造物、観光スポット等々あらゆる範囲に渡って記載されているものである。
上記甲第3号証の1ないし13も、「大神神社」の所在地、歴史、祭神、行事、祭事、建造物等々を細かく紹介しており、「大神神社」の周知著名性の普及に一役も二役も買っているものである。
エ このように、「大神神社」は、古くから多くの書籍・雑誌に数多く記載されてきたのみならず、古来より、数多の老若男女が参拝に来ているものであり、「大神神社」を中心にして「三輪信仰」と言われる信仰が全国に広く普及しているものである。
また、「大神神社」の所在地は、旧くから観光地としても有名な所でもあり、年間数百万人もの人々が訪れる所でもある。これらの人々の中から、年間百万人に近い人々が「大神神社」に参拝に訪れている。このような事実からしても、「大神神社」は、広く人々に知られていることは周知の事実である。
オ 上記アないしエから明らかなように、本件商標は、周知著名な他人の名称「大神神社」をその構成中に含んでいるものであり、その他人から何ら承諾を得てないものであるから、明らかに商標法第4条第1項第8号に該当し、その登録は無効にされるべきものである。
(3)本件商標の商標法第4条第1項第11号該当性について(無効事由2)
ア 本件商標は、その構成中に周知著名な他人の名称「大神神社」を含んでいるものである。
この「大神神社」は、引用商標1及び2として、商標登録されているものである。そして、それらの指定商品は第32類「ビール,清涼飲料,果実飲料,飲料用野菜ジュース,乳清飲料」である。また、本件商標の指定商品は、第32類「鉱泉水,ミネラルウォーター,その他の清涼飲料」であり、引用商標1及び2の指定商品である「清涼飲料」と同一又は類似であることは明らかである。
イ 本件商標は、その構成中に「大神神社」という周知著名な「神社名」を含んでいるものであるから、本件商標を一般取引者・需要者が見ると、それは恰も「大神神社」と何らかの関係があるか又は「大神神社」そのものではないかと誤認・誤解することは明らかである。このことは、次に述べる「御神水」との関連とからも明らかである。
ウ 請求人は、引用商標1及び引用商標2の他に「御神水」の引用商標3を商標登録している。その指定商品は、第32類「天然水,鉱泉水,その他の清涼飲料,果実飲料,ビール,乳清飲料」である。
本件商標は、その構成中に「御神水」の文字を含んでいるものである。これは、明らかに引用商標3と同一又は類似のものである。
「御神水」は、「天然水、鉱泉水」などの一般名称ではなく、識別力を有する文字であって、商標として十分に機能しているものである。それ故に、商標登録されているのである。本件商標は、他人の先登録商標を恣にその構成に使用し、商標を形成しているものである。
エ 本件商標は、その構成から明らかな如く、請求人の有する二つの商標を連結させ「大神神社御神水」とし、その頭に単に「天」の文字を配し、「天大神神社御神水」と構成したにすぎないものであることは明らかである。全く他人の周知・著名な商標にただ乗りするためにのみ構成された商標であるといわなければならないものである。このような商標の登録は許されないところである。
オ 上記アないしエから明らかなように、本件商標は、引用商標1ないし引用商標3と明らかに類似するのみならず、その指定商品においても同一又は類似するものである。したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当するものである。
2 答弁に対する弁駁
(1)無効事由1について
ア 名称が含まれることについて
(ア)被請求人は、「大神神社」は、「神を敬って言う尊称を表す名詞であり、普通名詞であって」、「他の言葉と結合されて使用されることが多い」という「大神」の文字と、「一般的で、日常的に使用される普通名詞である」という「神社」の文字との結合よりなっている「神社名」であるから、これを以て「一般人が奈良県にある周知の神社名であると認識しない」と主張している。また、インターネット上の検索だけでは「大神神社」の周知の証明が現実と乖離しているとし、さらに、「大神神社」の名称は日本各地にあるではないかと主張している。
(イ)まず、「大神神社」の名称は単に「大神」の文字と「神社」の文字とが結合したものではないことは、甲第2号証及び乙第1号証の1から明らかである。即ち、「大神」は「おおかみ、おおがみ、おおみかみ」等々と読むのに対して、「大神神社」は「おおみわじんじゃ」と読み、広辞苑に記載されている場所が全く異なるのである。これは、明らかに、単なる「大神」の文字と「大神神社」とは、その意味内容を全く異にするものであることを如実に示しているものである。単に、「大神神社」が「大神」の文字と「神社」の文字の結合したものに過ぎないなら、「大神」の項の次程に、広辞苑は記載してもいいはずである。にも拘わらず、項を改めて記載しているのは、「大神神社」は、単に「大神」と「神社」の各文字を結合させた神社ではなく、それ自体が、一つの固有名詞であって、著名な神社名であり、単なる「大神」とは全く異なる意味を有するものであることを示しているのである。
(ウ)また、この「大神神社」が日本最古の神社であることを広辞苑は明確に記載しているし(甲第2号証の6)、被請求人が「大神」の文字と結合しているとして挙げている「神」の名前は、全て「神」の固有名詞であって、単に「大神」の前に勝手に付けているものではないのである。それらの「神」の名前は、古く、古事記、日本書紀、続日本紀、日本後紀、日本三代実録、延喜式、風土記等々に記載されており、それらを今日使用しているものである。それ故、「神」の名称は、被請求人の言う如く、勝手に「大神」の文字に他の言葉を結合させて構成しているものではないのである。因みに、「大神」の名称を付されている「神」は、今日、十柱余の「神」を数えるのみであり、それ以外には見当たらないのである。その十柱余の「神」とは、天照大神、厳島大神、出雲大神(大物主大神)、伊和大神、宇佐八幡大神(八幡大神)、大己貴大神(大物主大神)、春日大神、熊野大神、狭井大神、塞坐黄泉大神、猿田彦大神、豊受大神、祓戸大神、一言主大神等々である。これらの「神」はまた別名を以て呼称されることもある。これらのことからも明らかな如く、「大神神社」の名称は、単なる文字二つの結合によって創られているものではなく、永い歴史と祭神に深い関係を有して付され、呼称されて来たもので、特定の意味を有して、今日使用されているものである。それ故、当然、多くの人々に「大神神社」として認識されているものである。
(エ)さらに、インターネット上に、「大神神社」に関する数多くの記事が掲載されているということは、如何に多くの人々が、「大神神社」に関心を有し、また、良く知っているかを如実に示すものである。インターネット上には、「大神神社」以外の人々、会社、団体等々が、「大神神社」の紹介、案内、観光スポット、行事、祭等々を極めて良く表示し、宣伝してくれているものである。これ程に多くの人々が、「大神神社」を知っているということであり、全国的にその名前が知られている事を証明しているものである。今日の社会において、インターネットを使用せず、またその恩恵を被らない人々は殆ど居ないという程、インターネットは普及し、その情報は広く伝播していることは事実である。被請求人が情報の手掛かりなしに情報に到達することが出来ないというのは、単なる詭弁に過ぎない。このことは、今日のインターネット情報社会における経験則から明らかなことである。
(オ)また、「大神神社」と同一の名称が日本各地にあり、地方の人々は地元の神社と混同すると被請求人は主張しているが、これは、神社の歴史・形態を無視した主張といわなければならない。全国には、同一の名称の神社は沢山ある。例えば、氷川神社、香取神社、鹿島神社、厳島神社、金比羅神社、水天宮等々の名称の神社は、本来、各々の神社の本神社と同一のものである。何故なら、各地方にある神社は、各々本神社から「神」を分祠してもらい、本神社と同一の「神」を祭り、同一の名称を称するものだからである。それ故、全国に同一の名称の神社があるのは当然のことであり、何ら不思議はないのである。いうなれば、同一の名称の神社は、全て同一の「神」を祭る同神神社であって、本家と分家の関係の如きもので、各地方の神社は、自らの本家を十分に認識しているものである。
このことは、「大神神社」の場合も同様である。被請求人が主張する同一の神社は、甲第3号証の2に記載の神社を言っているものと思われるが、そこに記載されている神社は、全て「大神神社」から「神」を分祠して行き、各地に同一の「神」を祭ったものである。例えば、「大神神社」(愛知県一宮市)は、上代、美和族(三輪族)がこの地に移り大和の本社を分祠すと伝ふとされており、「大神神社」(栃木県栃木市)の場合は、崇神天皇の勅命を奉じ東国治定の折、分霊を勧請したとされており、また、「大神神社」(岐阜県大垣市)の場合は、持統天皇伊勢国へ行幸の際、三輪朝臣高市麿に大物主神が託宣して創建したとされているものである。このように、「大神神社」から分祠されて創建された「神社」は、この他にも全国に沢山あり(甲第5号証)、全て「大神神社」を本神社としているものである。
今日においても、「神社」の結束は強く、被請求人のいうが如き混同は考えられないことである。また、「大神神社」からの「分祠」は、今日においてもまだ続いているものである。このように、「大神神社」は全国的に広く知れ渡っている「神社」の固有名詞なのである。
これらのことから明らかなように、被請求人の主張は、単なる思い付きの論であって、明確な根拠も証拠もないものである。
(カ)被請求人は、本件商標を一般の人々が見ても、「天大神神社」の部分を「天」と「大神神社」とに分けて認識しない、と主張している。
しかし、この主張は当たらない。何故なら、請求人は、上記のとおり、「大神神社」の名称は古来より周知著名であることを証明しかつ証拠を提出しているものである。これらの事実から、多くの人々は「大神神社」の名称を古くから知っているのであって、「大神神社」といえば請求人の名称を思い出し認識するのが自然のことである。それ故、本件商標の「天大神神社」を見れば、自然に「大神神社」の箇所に目が行き、「大神神社」の名称を含んでいると認識するものであることは経験則上自然のことである。
(キ)被請求人は、「天大神神社」の称呼に「大神神社」の称呼は含まれないから、本件商標に「大神神社」が含まれていると認識しない、と主張している。
しかし、この主張も根拠の無いものである。被請求人は、商標の称呼は最初から称呼のみが単独で存在しているものだと認識しているのだろうか。商標は、具体的文字・図形等があって初めて認識されるものである。そこから、商標の称呼が生じることは明らかである。それ故、本件商標は漢字8文字で「天大神神社御神水」と構成され、それを見た需要者が呼称するものである。常に、被請求人が主張する如く呼称されるものではなく、「大神神社」の文字を含むと認識した需要者は、「テンノオオミワジンジャ」と呼称するのも自然のことである。前記の如く、「大神神社」は広く知られた名称であるからである。
したがって、本件商標の称呼に、「オオミワジンジャ」の称呼が含まれないということはできないものである。
イ 「著名性」について
(ア)被請求人が、「大神神社」が「宗教法人大神神社」の略称であることを認めている範囲においては、それを認める。
神社は一般に法人格を有しているが、多くの神社は、法人格を表す「宗教法人」の部分を省略して、呼称されたり表示されたりするのが常である。これは経験則上明らかなことである。したがって、「宗教法人大神神社」においても、法人格を表す部分を省略し、単に「大神神社」と古くから表示しているもので、年間数百万人という参拝者・崇敬者・観光者にはこれで十分に認識されているものである。
(イ)被請求人は、「著名性」は略称が世間一般に広く知られていることが必要とされる、と主張している。
この場合の「著名性」は、他人の人格を保護することが目的あり、略称であっても一般に広く知られていなければならないことは当然のことである。
「大神神社」の略称が古来から広く人々に知れ渡っていることは、インターネット上のみならず、審判請求書添付の証拠からも明らかである。
(ウ)被請求人は、a)請求人が提出した甲第2号証の1ないし6及び甲第3号証の1ないし13は、分野を問わず略称と商品との関係において、略称「大神神社」が世間一般に広く知られていることの根拠付けにならないこと、b)普通名詞が結合された名前であるため印象が薄く、同じ名前の神社が各地にあり、宗教が異なった者の関心をまず引くことはなく、奈良地方を離れた土地の人間は奈良県の神社のことであると認識しないこと、c)同じ名前の神社が他の地方にも多数存在するため、この地方の一般人はこの名前を看たとき奈良県の神社の略称とは思わず自分の地方の別の神社と誤認するおそれがあること、を理由に「大神神社」に著名性がないと主張している。
(エ)しかし、被請求人のこの主張は、的を射ておらず、全くの事実誤認の上での論である。
まず、a)についてであるが、被請求人は、自ら「大神神社」の略称が著名であることを「神道上の由来やそこでの知名度ではなく」と表示して認めているのである。このように、「著名性」を自ら認めておきながら、それを否定するのは自己矛盾と思われる。
また、「著名性」は、人格権保護のため法によって認められているのであって、商品や役務との関係を問わずに認められるものである。このことは、「実例でみる、商標審査基準の解説、第三版、134頁」にも記載されているものであり、現に「SONY」や「雅叙園」の例が挙げられている。それ故、被請求人の主張する「分野を問わず略称と商品との関係において」という前提は崩れるものである。商品や役務を問わず、「著名性」は成立するのであるから、甲第2号証の1ないし6及び甲第3号証の1ないし13を以てしても、「大神神社」の「著名性」を十分に証明出来るものである。これら各号証の証拠以外にも「大神神社」の「著名性」を証明するものがある。それは、例えば、「大神神社」は、古くから「そうめん」の守り神、酒の神として周知著名な神社である。このことを示す文献や行事に関する記事が、インターネット上に数多く表示されている(甲第6号証の1ないし4及び甲第7号証の1ないし4)。
これらの各甲号証からも明らかなように、「大神神社」の名称は古くから多くの人々に知れ渡っていたもので、「大神神社」が古くから三輪の大神神社を指すものであることは明白なことである。因みに、大神神社は、毎年「そうめん」のその年の相場を占う神事を行うので、多くの「そうめん」関係者の方々が参詣するものである。また、「大神神社」は、酒の神様でもあり、全国の酒造関係者が毎年数多く参拝し醸造の安全を祈願するものである。新酒の出来あがりを示し、酒屋の軒下に提げられる「酒林」の供給に関し、全国の75パーセント以上を占めるものである。このことからも、如何に広く多くの人々に「大神神社」の名称が知れ渡っているか押し計ることができるものである。
(オ)次に、b)についてであるが、これは、既に述べたことであるが、重ねていうと、「大神神社」の名称は普通名詞を単に結合したものではない。これ自体で古くから固有名詞として使用されて来たことは、提出の各号証からも明らかなことである。「大神神社」の名称が宗教の如何を問わず多くの人々が知っていることは、各種書籍や雑誌、インターネット等々を通して広く知れ渡っている事実から明らかである。
(カ)さらに、c)についてであるが、これも、既に述べたことであるが、各地に同名の神社があるということは、全て本神社からの分祠であることを意味するものである。
現代的にいうなら、各所に支社を設けていると同じようなものである。即ち、支社の神社へ参拝しても本社の神社の祭神に参拝したと同様の効果があると古来から人々に認識されてきたものである。
したがって、古来から人々は自分の土地にある神社のルーツを十分知っているものであり、それが共同体としての日本の文化であり、慣習でもあって、地方にあっても十分に「大神神社」を認識しているものである。その証拠に全国各所から毎年多くの参拝・参詣者が「大神神社」へ来ることからも明らかである。
これらのことからしても「大神神社」の略称は、十分に世間に知られており、「著名性」を有するものである。
(キ)被請求人は、日本国周知・著名商標を特許庁で調査したとのことであるが、人格権保護の「著名性」にとっては意味の無いこととだという以外にはない。けだし、登録商標の「著名性」を請求人は主張しているのではないからである。
被請求人の「著名性」の否定には、合理的理由も根拠もないものである。「大神神社」の略称は十分に「著名性」を有するものである。
ウ 標章の「実在性」について
(ア)被請求人が「他人」は現存する者でなければならないと主張しているのは、当然のことである。「大神神社」は現存し、かつ、宗教法人として登記されているものである。したがって、「他人」の要件を充たしているものである。
(イ)被請求人は、「天大神神社」を創建したが未登記であるとのこと。そうであれば、当然法人格を有しないものであり、法律上の人格者として扱うことはできない。信仰心を持つことは個人の自由であるが、「天大神神社」を法人として扱うことはできないことである。
(ウ)被請求人は、「天大神神社」は実在するといっているが、法人として実在するのではなく、単に建物があるというに過ぎないものであり、法人としての保護の対象にはならないものである。
(2)無効事由2について
ア 本件商標と引用商標1との類否判断について
(ア)本件商標の称呼に関する被請求人の主張は認められない。何故なら、本件商標の要部は「天大神神社」と「御神水」とに区分されるのが自然であって、「天大神」と「御神水」とに区分されると本件商標を構成するものではなくなるからである。本件商標が、「天大神神社御神水」と構成されていることから当然のことである。したがって、本件商標の要部は「天大神神社」と「御神水」であり、そこから各々の自然的称呼が生じるとされるのが自然である。
また、「要部」とは、それ自体において自他商品の識別機能を有する商標構成の部分であって、当然、それ自体が類否の対象になる部分をいうものである。
本件商標はその構成中に「大神神社」の文字を含むこと明らかであり、かつ、「大神神社」は、既に述べた如く、他人の「著名」な略称であるから、本件商標の構成部分「大神神社」から「オオミワジンジャ」の自然的称呼が生じることは自然なことである。それ故、本件商標の要部である「天大神神社」から生じる「テンノオオミワジンジャ」の呼称と引用商標1の自然的呼称とは、相紛らわしく混同されるおそれがあると同時に、何らかの関係があるのではないかと需要者に誤認されるおそれがあるものである。
(イ)「神」の名称は勝手に作り出すものではないのである。既に古来からある神の固有名称を今日においても使用しているのであって、「大神」の文字に普通名詞を勝手に付して新たな神を作っているものではないのである。
例え、新たな神社を創る場合であっても、新たな神の創作はなく、従前の神の分祠を受けて神社を創建するのが通例である。このことは、多くの有名企業が社内に神社を創っているが、全て既存の神社から神の分祠を受けてその神を祭っているっことからも明らかである。
本件商標は、その構成中に「大神神社」の文字を含むことは明らかである。この「大神神社」は他人の周知著名な略称であるから、それを含む本件商標は、その部分において看者の注意を引き引用商標1と何らかの関係があるものと誤認・誤解されるおそれがあるものである。したがって、この点においても類似するものといわなければならない。
イ 本件商標と引用商標2との類否判断について
本件商標と引用商標2との類否判断についての被請求人の主張に対しては、上記(2)アと全く同一である。
ウ 本件商標と引用商標3との類否判断について
(ア)被請求人は、本件商標の要部は上記(2)アのとおり「天大神」と「御神水」であると主張している。しかるに、ここでは「天大神」のみが要部であり、「御神水」を要部から外している。何時から本件商標の構成が変わったのだろうか。本件商標の構成は、あくまでも「天大神神社御神水」であって、単なる「天大神」ではない。したがって、本件商標は、その要部に「御神水」の文字を有するものである。
一方、引用商標3もその構成に「御神水」の文字を有し、要部とされるものである。それ故、両商標から「御神水」の自然的称呼「ゴシンスイ」が生じ、称呼において同一又は類似することは明らかである。
(イ)外観の点については、両商標とも「御神水」の要部を有しているのであるから、それによって自他商品の識別が可能なのである。そうすれば、両商標において商品の出所に誤認混同の生じることは明らかであり、外観においても類似することは歴然としているものである。
(ウ)観念の点については、「三輪明神」も宗教法人大神神社の広く知られた著名な略称であるということを主張するに止めておく。いずれにしても、両商標は、称呼、外観において類似するものであることは明らかである。
エ 小括
本件商標と引用商標とは、その生じる自然的称呼において明らかに類似するものであるのみならず、その外観において強い印象を与える「大神神社」の文字を含むものであり、かつ商品の出所に混同を生じさせるおそれがあるから、類似するものといわなければならないものである。
(3)むすび
以上、述べてきたように、本件商標は、明らかにその構成中に他人の「著名」な略称「大神神社」を含むものであり、かつ、引用商標と明らかに類似するものである。したがって、本件商標は、明確に商標法第4条第1項第8号及び同項第11号の規定に違反して登録されたものである。

第4 被請求人の主張の要点
被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第6号証(枝番号を含む。)を提出している。
1 請求に対する第1答弁
(1)無効事由1について
ア 名称が含まれていることについて
(ア)「大神神社」の「大神」は、例えば、岩波書店「広辞苑」にも、「大神」「天照大神」「豊受大神」などの項目があり(乙第1号証の1ないし4)、また、請求人提出の甲第3号証においても、この「天照大神」「豊受大神」に関する記述のほかに、さらに「大物主大神」「祓戸大神」「春日大神」「狭井大神」などに関する記述がある(甲第3号証の2及び12)。
このように「大神」は、神を敬って言う尊称を表す名詞であり、普通名詞であって、これ単独というよりも他の言葉と結合されて使用されることが多い。そして、上述したことからも分かるように、特に前置された言葉と結びつく傾向が強く、「天照大神」のように「○○大神」形式で「○○オオミカミ」「○○オオカミ」などと言い習わされ、これが定着している名詞である。また、「神社」は、「大神」よりも更に一般的で、日常的に使用される普通名詞である。
したがって、「大神神社」は、このような神の尊称の普通名詞「大神」を普通名詞「神社」に冠しただけの名称である。
それゆえ、神社(神道)と強い接点をもたない普通の一般人にとっては、「大神神社」は識別力のない括り部分「大神」だけの名前をもつ神社名であり、これをもって一般人が奈良県にある周知の神社名として(商標法第4条第1項第8号にいう「他人」の名称として)認識するのは困難である。
ところで、一般人が周知であるというには、この名称が何を指すのかを一般人が識別することが必要である。甲第2号証及び甲第3号証は、提供者側が発信した情報を示すが、実際に一般人が自らの意思で手掛かり無し(名称を知らない)の状態で現に情報に到達しているのか(例えば、インターネット)、また、その認識程度について示していない。そして、最も証明すべきは、宗教と関係しない商取引の中において、括りの尊号「大神」だけの名前をもつ神社が、奈良の特定の神社として神道関係者以外の国内各地の一般人に現に認識され識別されているか、ということの証明である。甲第2号証及び甲第3号証はこれを証明するものではない。
なお、周知性を示すものとしてのインターネット上での検索数は、上述したとおり本来証明を要する事実とは異なる上に、文字列をただ全部又は一部で拾い出しただけの数であって、しかも一文献に多数箇所に書かれた語句も機械的にすべて抽出するような、実態と乖離した、みかけの数である。
さらに、仮に偶然この名称を知っている一般人にとっても神社を誤認するおそれがある。同一名称の神社「大神神社」は日本各地に多数存在する(一例を挙げれば、甲第3号証の2中のその他の大神神社)。遠方の地において近くに同じ名前の神社が存在する場合、この名前を知っているこの地方の人間はこの地方の別の神社と混同してしまう。
(イ)本件商標の「天大神神社御神水」が「大神神社」を含むとの請求人の主張は、神社と密接な関係がないような一般の人間がこれを看たときにも、8文字の漢字の中で、「天大神神社」の部分の「天」と「大神神社」とが分かれて「大神神社」の部分が認識されるということに相当する。
しかしながら、上記した「○○大神」に関する事実(後ろの語句より前の語句「○○」と「大神」と結びつき易いこと)、「神社」の部分があまり注意を引かない普通名詞であることからみて、看る者の注意は「天大神神社」の「神社」の部分を除いた「天大神」に注がれ、3文字の「天大神」が一体となって認識され、一般の人間が「天大神神社」を敢えて「天」と「大神神社」に無理に分けて認識するようなことはない。
(ウ)「天大神神社」の称呼は、「テンノオオカミジンジャ」であり、「大神神社」の称呼である「オオミワジンジャ」とは大きく異なっており、前者は後者を含んでいない。一般取引者、需要者は、称呼上本件商標「天大神神社御神水」の「テンノオオカミジンジャゴシンスイ」の中に「オオミワジンジャ」が含まれているとは認識しない。
(エ)以上のことから、その名称が普通名詞「神社」に尊号を冠しただけで、同じ名前が日本各地に多数存在するような名称の場合は、この名称は外観からみて一般人に「神様の神社」というような意味合いのありふれた名称であると認識され、一般人がこれだけで特定の神社のことだと識別できるものではない。しかも、この名称の称呼は普通の読み方ではなく、「オオミワ」なる特殊な読み方をされる。この称呼は外観よりもさらに一般人(宗教関係以外)には認識されない。
「宗教法人大神神社」と同一性を有する「大神神社」が広く一般人に周知されていることはない。したがって、本件商標にこの周知の名称が含まれているとは認知しえないものである。
イ 「著名性」について
(ア)「大神神社」は、「宗教法人」を省いただけで「宗教法人大神神社」と同一性を有している。すなわち、これに関しては上記(1)アで説明したとおりである。しかし、少なくとも「大神神社」は「宗教法人大神神社」の略称である。
(イ)商標法第4条第1項第8号に規定する「著名性」は、略称が世間一般に広く知られていることを要求する。
仮に、「A役務」を使って言い換えると、「A役務」の提供上のみで知られている略称について、「A役務」と関係しない商取引上の商品との関係においてこの略称を商標登録の障害事由とするのは、「A役務」の提供上のみで知られていることの理由で、A役務以外の分野を問わない商標登録を受けようとする者、またここでは受けた者の商標登録を妨げることになり、結局、略称を有する者の保護に偏ったものとなってしまう。そこで、「著名性」はA役務に限られず、世間一般に広く知られていることが必要とされる。
(ウ)甲第2号証の1ないし6及び甲第3号証の1ないし13は、「大神神社」が宗教的に時間軸(過去)の歴史が古く、奈良を中心に信仰の対象として崇められてきたことを示唆するが、このような神道上の由来やそこでの知名度ではなく、分野を問わず略称と商品との関係において、略称「大神神社」が世間一般に広く知られていることを根拠付けているものではない。そして、宗教上の知名度についても、普通名詞が結合された名前であるため印象が薄く、同じ名前の神社が各地にあり、宗教が異なった者の関心をまず引くことはない。そして、例えば奈良地方を離れた土地の人間は奈良県の神社のことであるとは認識しない。さらに、認識しないばかりか、同じ名前の神社が他の地方にも多数存在するため、この地方の一般人はこの名前を看たとき奈良県の神社の略称とは思わずに自分の地方の別の神社と誤認するおそれがある(甲第3号証の2)。
略称「大神神社」は、特定の神社として世間一般に著名であるということはできない。甲第2号証及び甲第3号証に照らしてみても、「大神神社」が世間一般に広く知られているとはいえず、「著名性」があるとはいえない。
(エ)因みに、この「大神神社」、また「オオミワジンジャ」は、日本国特許庁のデータベースにおいて日本国周知・著名商標として登録されていない(乙第2号証の1及び2)。
(オ)したがって、略称である「大神神社」は、商標法第4条第1項第8号が規定する保護要件としての「著名性」を有していない。
ウ 標章の「実在性」について
(ア)商標法第4条第1項第8号において、その規定の趣旨からすると、同号の「他人」は現存する者でなければならないが、標章の内容の実在性はこの規定と関係がない。
(イ)そして、「天大神神社」は、被請求人個人が発願し、熊本県阿蘇郡高森町大字草部四八四番地一に平成7年に建立したものであり、宗教法人としては未登録(法人格を持たない)ではあるが、建立後、自らの信仰心に基づいて被請求人が宮司として従事している神社である(乙第3号証)。
(ウ)さらに、熊本県阿蘇郡高森町大字草部四八四番地一の「天大神神社」の写真(乙第4号証の1ないし5)をみれば、この神社が実在していることは明らかである。撮影日は平成20年4月24日。
エ 小括
よって、請求人が主張する無効事由1の無効原因には理由がなく、本件商標は、商標法第4条第1項第8号に該当せず、登録されるべきものである。
(2)無効事由2について
ア 本件商標と引用商標1との類否判断について
(ア)本件商標の「天大神神社御神水」は標準文字の8文字から構成されているが、引用商標1はトンネル状の画像の下方に二行に所定書体の「大和一の宮」の5文字、「大神神社」の4文字が配置されて構成されている。このトンネル状のものの大きさはこれらの文字のサイズより格段に大きい。さらに「大神神社」には上側に「おおみわじんじゃ」と振り仮名が振られている。
前者の指定商品は第32類「鉱泉水,ミネラルウォーター,その他の清涼飲料」であり、後者の指定商品は第32類「ビール,清涼飲料,果実飲料,飲料用野菜ジュース,乳清飲料」である。
(イ)まず、「天大神神社御神水」の称呼は「テンノオオカミジンジャゴシンスイ」であり、「大和一の宮大神神社」の称呼である「ヤマトイチノミヤオオミワジンジャ」とは大きく異なっている。前者の要部は「テンノオオカミ」と「ゴシンスイ」であり、後者の「オオミワ」とは異なる。
(ウ)そして、「○○大神」の形式の言葉は「天照大神」に代表されるように「○○オオミカミ」あるいは「○○オオカミ」などと言い習わされて定着している言葉である。また、「神社」は広く使用されるごく普通の名詞である。
本件商標の「天大神神社御神水」が「大神神社」と類似するという請求人の主張は、一般取引者、需要者が看たとき、8文字の漢字の中で、「天大神神社」の部分の「天」と「大神神社」とが分かれて「大神神社」の部分が要部として認識されるということに相当する。しかしながら、上記した「○○大神」に関する事実(後ろの語句より前の語句「○○」と「大神」と結びつき易いこと)、「神社」の部分があまり注意を引かない普通名詞であることからみて、看る者の注意は「天大神神社」の「神社」の部分を除いた「天大神」に注がれ、一般取引者、需要者が「天大神神社」を敢えて「天」と「大神神社」に無理に分けて認識するようなことはない。これをみたとき、3文字一体の「天大神」(テンノオオカミ)で捉えられ、これに神社の称呼、外観、観念が加わって「天大神神社」が認識される。さらにこれに「御神水」の称呼、水の観念が加わったものが本件商標であるから、「天大神神社御神水」は、「大和一の宮大神神社」と同一の商標でなく類似もしない。
さらに言えば、引用商標1の外観は、「大神神社」なる文字より格段にサイズが大きいトンネル状の画像を備えており、外観が大きく相違し、これと本件商標を一般取引者、需要者が誤認することはない。また、観念的にも引用商標1は水の観念をもたないものである。
(エ)このように、「天大神神社御神水」はその指定商品に使用したとき、称呼、外観、観念で十分な識別力をもち、一般取引者、需要者が引用商標1と誤認することはない。
よって、本件商標をその指定商品に使用しても、引用商標1と同一又は類似しない。
イ 本件商標と引用商標2との類否判断について
(ア)本件商標は標準文字の8文字から構成されているが、引用商標2は縦二列に所定書体の「大和国一の宮」の6文字、「三輪明神」の4文字が並んで配置され、その双方の下側に「大神神社」の4文字が配置されて構成されている。そして、縦二列の部分は幅狭サイズ、縦一列の部分は幅広のサイズである。
前者の指定商品は第32類「鉱泉水,ミネラルウォーター,その他の清涼飲料」であり、後者の指定商品は第32類「ビール,清涼飲料,果実飲料,乳清飲料,飲料用野菜ジュース」である。
(イ)まず、「天大神神社御神水」の称呼は「テンノオオカミジンジャゴシンスイ」であり、「大和一の宮三輪明神大神神社」の称呼である「ヤマトノクニイチノミヤミワミョウジンオオミワジンジャ」とは大きく異なっている。前者の要部は「テンノオオカミ」と「ゴシンスイ」であり、後者の要部「オオミワジンジャ」とは異なる。
(ウ)そして、「○○大神」の形式の言葉は「天照大神」に代表されるように「○○オオミカミ」あるいは「○○オオカミ」などと言い習わされて定着している言葉である。また、「神社」は広く使用されるごく普通の名詞である。
本件商標の「天大神神社御神水」が「大神神社」と類似するという請求人の主張は、一般取引者、需要者が看たとき、8文字の漢字の中で、「天大神神社」の部分の「天」と「大神神社」とが分かれて「大神神社」の部分が要部として認識されるということに相当する。しかしながら、上記した「○○大神」に関する事実(後ろの語句より前の語句「○○」と「大神」と結びつき易いこと)、「神社」の部分があまり注意を引かない普通名詞であることからみて、看る者の注意は「天大神神社」の「神社」の部分を除いた「天大神」に注がれ、一般取引者、需要者が「天大神神社」を敢えて「天」と「大神神社」に無理に分けて認識するようなことはない。これをみたとき、3文字一体の「天大神」(テンノオオカミ)で捉えられ、これに神社の称呼、外観、観念が加わって「天大神神社」が認識される。さらにこれに「御神水」の称呼、水の観念が加わったものが本件商標であるから、「天大神神社御神水」は「大和一の宮三輪明神大神神社」と同一の商標でなく、類似もしない。
さらに言えば、引用商標2の外観は、一見して、目に飛び込む文字数の多さと、3つの神社名を並べた構成、文字の配列の仕方が注意を引き、これと本件商標を一般取引者、需要者が誤認することはない。また、観念的にも引用商標2は水の観念をもたないものである。
(エ)このように、「天大神神社御神水」はその指定商品に使用したとき、称呼、外観、観念で十分な識別力をもち、一般取引者、需要者が引用商標2と誤認することはない。
よって、本件商標は、その指定商品に使用しても、引用商標2と同一又は類似しない。
ウ 本件商標と引用商標3との類否判断について
(ア)本件商標の「天大神神社御神水」は標準文字8文字から構成されているが、引用商標3は縦二列に所定の書体で「三輪明神」の4文字、「御神水」の3文字が並んで配置されて構成され、右の「三輪明神」の高さの方を「御神水」の高さよりやや高い位置に配置するとともに、左側の「御神水」を「三輪明神」よりやや大きく書いたものである。
前者の指定商品は第32類「鉱泉水,ミネラルウォーター,その他の清涼飲料」であり、後者の指定商品は第32類「天然水,鉱泉水,その他の清涼飲料,果実飲料,ビール,乳清飲料」である。
(イ)本件商標の要部は「天大神神社」の中の「天大神」の部分であり、引用商標3の要部は「三輪明神」の部分である。両商標の要部の称呼「テンノオオガミ」と「ミワミョウジン」は大きく異なり、両商標が称呼の点で類似するということはない。
(ウ)「天大神神社御神水」の外観は、「天大神神社」の「天大神」の部分が看る者の注意を引き、引用商標3の「三輪明神 御神水」の外観は「三輪明神」の部分が看る者の注意を引く。したがって、これらの要部の外観が明らかに異なる以上、本件商標の「天大神神社御神水」が引用商標3の「三輪明神 御神水」と外観において類似することはない。
(エ)日本においては古くから多数の神々、土着信仰、仏教等が互いに共存して信仰され、各地の神社仏閣はその土地に根ざし、長年にわたって崇められてきている。土地土地における神社仏閣との距離感、身近さが一般人の神社仏閣を観念するときの認識に大きく影響する。すなわち、例えば奈良地方を離れた土地の人間は、奈良県の神社のことまで考えないし、よく知らない。
したがって、少なくとも「三輪明神」が「天大神神社」を観念させることはない。まして、指定商品「鉱泉水,ミネラルウォーター,その他の清涼飲料」の一般取引者、需要者が、その取引において異なった要部をもつ「天大神神社御神水」と「三輪明神 御神水」とを誤認し、同一若しくは類似していると判断することはない。
(オ)このように、「天大神神社御神水」はその指定商品に使用したとき、称呼、外観、観念で十分な識別力をもち、一般取引者、需要者が「三輪明神 御神水」と誤認するようなことはない。
なお、引用商標3は本件商標の審査段階で引用商標として引用されており、本件商標はこれを踏まえた上で登録されたものである。
(カ)よって、本件商標は、その指定商品に使用しても、引用商標3と同一又は類似しない。
エ 小括
よって、請求人が主張する無効事由2の無効原因には理由がなく、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当せず、登録されるべきものである。
(3)むすび
以上のとおり、請求人が主張する無効事由1及び2の無効原因には何れも理由がなく、本件商標は、商標法第4条第1項第8号及び同項第11号のいずれの規定にも該当せず、登録されるべきものである。
2 弁駁に対する第2答弁
(1)無効事由1について
ア 名称が含まれていることについて
(ア)弁駁書におけるこの点に関する請求人の主張は、要するに、
a)「大神神社」という名称は「おおみわじんじゃ」と読まれるもので、「大神」と「神社」を結合させた神社でなく、固有名詞である、
b)神々の話から「大神神社」として認識される、
c)「大神神社」は分祀により全国的に知れ渡っている「神社」の固有名詞である、ということである。
しかし、a)について、まず、商標法第4条第1項第8号における他人の「氏名」は、法人の場合には、自然人の「氏名」に相当する「名称」でなければならない。そして、その「名称」はフルネームでなければならない(乙第5号証)。請求人の名称(フルネーム)は「宗教法人大神神社」であり、「大神神社」は「名称」には当たらず、単に「略称」である。請求人の言う固有名詞が「名称」というなら同号に該当しない。
そして、請求人は「大神神社」を「おおみわじんじゃ」と読むべきと主張するが、例えば他の宗教の宗教者、無宗教者にすぎない取引者、需要者には、少なくとも、「大神神社」に対してこのような称呼は生まれない。とくに離れた別の地方の神社の名前は馴染みがなく、印象がきわめて薄く、特別な事情がある者以外には、「大」は「おお」、「神」は「かみ」、「神社」は「じんじゃ」と称呼され、やはり普通名詞「大神」が神社に結合された神社となる。一般の取引者、需要者の間では、「オオミワジンジャ」の称呼は生まれない。
本件商標の「天大神神社御神水」が「大神神社」を含むとの請求人の主張は、「天大神神社」の部分の「天」と「大神神社」とが分かれて「大神神社」の部分が認識されるということに相当するが、「天」と「大神神社」をことさら分離分断して認識しなければならない事情はない。縁故があるなど特別な事情に基づいて「おおみわじんじゃ」を知っている者であれば別であるが、それ以外の一般の取引者、需要者にとっては、国語力に従って「テンノオオカミジンジャ」と称呼されるものである。しかも、これは澱みなく滑らかに称呼できる。
次に、b)について、「神々」の話を根拠にして固有名詞として認識可能な旨を主張するが、信教の自由の下、他の宗教、無宗教の環境、あるいはそのような家庭(宗教環境)で育まれてきた別の宗教環境の人間にまで、この「神々」の話を基に当該神社が認識可能であると言うのは少し強引な主張と考えられる。多くを占める無宗教者、他の宗教者にとっては無縁な話である。
そして、c)について、「分祀」は宗教上、歴史上の「本家」と「分家」の如き関係との主張であるが、宗教法人法上の法人格とは関係がない。宗教法人法第5条第1項によれば、宗教法人の所轄庁は、原則としてその主たる事務所の所在地を所轄する都道府県知事である(乙第6号証の1及び2)。そして、県を単位とする別の設立地で登記された複数の法人は、それぞれ別人格である。
イ 「著名性」について
弁駁書におけるこの点に関する請求人の主張は、要するに、「大神神社」が略称であることは認め、
a)「著名性」は人格権保護のために認められるものであって、商品や役務の関係を問わずに認められるものである、
b)「大神神社」の「著名性」を証明するものに「そうめん」「酒」があり、守り神、酒の神として知られている、
c)参拝・参詣者が多いから「宗教法人大神神社」の略称は十分著名性を有する、ということである。
これに対し、被請求人も略称であることを認める。しかし、a)の「著名性」は、当該指定商品及び指定役務の関係において広く知られているか否かを問題にせずに、その具体的関係を問わずに抽象的に認められるべきものではない。特定の分野に属する取引者、需要者のみに知られている略称が、すべての指定商品及び指定役務について商標登録の阻害事由となるのは、商標登録を受けようとする者に酷な結果をもたらす。「略称」は商標の指定商品と指定役務との関係において著名であることを要するものである。
「著名性」は、略称を使用する者が恣意的に選択する余地がない「氏名」と同様に保護するための要件であるから、これが認められるためには、この略称が、我が国において、特定の限られた分野に属する取引者、需要者にとどまらず、その略称が特定人を表示するものとして世間一般に広く知られていることが必要である。
商標法第4条第1項第8号の趣旨は、当該他人の人格権保護にあるところ、特定の限られた分野においてのみ知られている略称について、その分野に属さない商品又は役務に商標として使用されても、当該他人の人格権が侵害されたということはできないし、また、同号所定の「著名性」が認められる他人の略称は、分野を問わず、すべての指定商品及び指定役務について商標登録を受けることができなくなるのであるから、特定の限られた分野に属する取引者、需要者のみに知られている略称について、すべての指定商品及び指定役務について商標登録の阻害事由となると解することは、商標登録を受けようとする者に酷な結果をもたらすと言わざるをえないからである(乙第5号証[第5 当裁判所の判断 3 取消事由3(1)]参照)。
つまり、略称が、特定の限られたA指定商品及び指定役務と関係したところだけで知られているだけの状態のときは、A以外の、例えばB指定商品及び指定役務の分野においてはこの略称をみて取引者、需要者が或る特定の人格を連想したりするようなことは起こらない。そして、この状態でこのような略称をB指定商品及び指定役務においても「著名性」ありとして商標登録の阻害事由とするのは、B指定商品及び指定役務において商標登録を受けようとする者に酷な結果をもたらす。
したがって、本件についていえば、少なくとも本件商標の指定商品及び指定役務に係る関係の取引者、需要者の間において、その取引上略称「大神神社」が広く知られていることが必要である(乙第5号証[第5 当裁判所の判断 3 取消事由3(2)の括弧書き]参照)。
次に、b)について、「著名性」を証明するものに「そうめん」「酒」がある旨の主張は(甲第6号証及び甲第7号証)、第一に、本件商標の指定商品「鉱泉水,ミネラルウォーター,その他の清涼飲料」とは異なる商品である。第二に、「そうめん」「酒」の守り神であることを理由に、略称「大神神社」が「鉱泉水,ミネラルウォーター,その他の清涼飲料」の取引者、需要者の間において略称として広く知られているとはいえない。第三に、「三輪そうめん」は三輪の里、三輪山等の三輪という名に由来する地方の物産のことである。また、そうめんや酒の「守り神」という点は、そう信仰する当該地方の人間が居てはじめて成り立つ文化であり、それ以上のものではない。
甲第6号証及び甲第7号証を参照する限り、この略称の世間一般への浸透性の程度は十分でない。そしてこれをひとまずおいたとしても、少なくとも「宗教」「そうめん」「酒」以外の他の分野では知られていない。また、それぞれに固有の文化を育んでいる他の地方の取引者、需要者にとって、これらの事実は三輪地方の文化に関することで、他の地方においては「そうめん」「酒」を含め、各々が固有の伝統を持ち、場合によってはそれぞれの守り神が存在する場合があるのであって、三輪地方の神社のことは無縁であり、三輪地方の文化が商取引上関係するようなことはない。これで本件商標登録を受ける権利が本件商標の指定商品において制限される理由はない。
そして、c)について、参拝・参詣者が多いから「宗教法人大神神社」の略称「大神神社」は十分著名性を有するとの点は、本件商標の指定商品の取引者、需要者の間で広く知られていることとは異なる。無宗教を含めて宗教の一分野を構成するにすぎず、空間的にも実質的にみて日本の一部で知られているだけの神社の略称が、宗教の場面から現実の指定商品の商取引の場面に舞台を変えたとたんに、広く知られるようになることはない。
したがって、略称「大神神社」が「著名性」を有するということはない。
ウ 標章の「実在性」について
請求人は、a)「大神神社」は宗教法人として登記されている、b)「夫大神神社」は法人として扱うことはできない、c)法人ではない「夫大神神社」は保護の対象にならない、と主張する。
a)については、甲第5号証は分祀に関するいわば宗教上のものであって、「宗教法人大神神社」の登記に関する、例えば所轄庁、能力などを示すものではない。b)及びc)に関しては、商標法第3条に照らし、被請求人が本件商標の設定登録を受けていることと関係がない。
(2)無効事由2について
ア 本件商標と引用商標1との類否判断について
弁駁書におけるこの点に関する請求人の主張は、要するに、
a)本件商標は、その構成中に、「大神神社」の文字を含んでおり、これから「オオミワジンジャ」の自然的称呼が生じ、要部である「天大神神社」から「テンノオオミワジンジャ」の称呼が生じ、需要者に混同される虞がある、
b)「神」の名称を勝手に作り出すべきものではない、
c)「大神神社」は著名な略称であるから、その部分において看者の注意を引き、両商標は類似する、というものである。
しかし、a)について、既に(1)アで述べたように、他の宗教、無宗教者などの一般の取引者、需要者に「オオミワジンジャ」の称呼は生じない。混同の虞はない。b)について、宗教上のことで根拠がなく理由がない。c)について、「大神神社」が商標法第4条第1項第8号上著名でないことは、上記した(1)イで明らかであり、しかも「天」と「大神神社」をことさら分離分断して認識しなければならない事情はなく、「天大神神社」が「大神神社」の文字を含んでいるというようなことはない。
そして、引用商標1の「大和一の宮 大神神社」は、観念的に「水」の観念をもたないものである。
本件商標の「天大神神社御神水」は、「天大神」に神社が加わって「天大神神社」として認識され、本件商標はこれに「御神水」、すなわち「ゴシンスイ」の称呼、「水」の観念が加わったものであり、「天大神神社御神水」は、「大和一の宮大神神社」と同一の商標でなく、類似もしない。
イ 本件商標と引用商標2との類否判断について
弁駁書におけるこの点に関する請求人の主張は、上記(2)アの主張と同趣旨の主張である。
したがって、被請求人は(2)アにおいて主張したとおりの理由で反論する。引用商標2の「大和一の宮 三輪明神 大神神社」は、本件商標「天大神神社御神水」と称呼、外観が異なり、一般取引者、需要者が誤認することはない。また、引用商標2は観念的にも「水」の観念をもたないものである。「天大神神社御神水」は「大和一の宮三輪明神大神神社」と同一の商標でなく、類似もしない。
ウ 本件登録商標と引用商標3との類否判断について
弁駁書におけるこの点に関する審判請求人の主張は、a)引用商標3の外観、指定商品を認め、b)別の「三輪明神」が著名であるから、本件商標と引用商標3と類似する、というものである。
これに対し、被請求人はa)を認める。しかし、b)に関しては、上記(1)イの「大神神社」の著名性で説明した理由で、「三輪明神」が著名な略称ということはない。文字の形式的な一致も「神」しかない。そもそも、両商標の要部の称呼「テンノオオガミ」と「ミワミョウジン」は大きく異なり、両商標を称呼の点で一般取引者、需要者が誤認することはなく、類似するということはない。両商標は外観において類似しない。
したがって、本件商標の「天大神神社御神水」は引用商標3の「三輪明神 御神水」と同一の商標でなく、類似もしない。
(3)むすび
よって、請求人が主張する無効事由1及び2の無効原因には何れも理由がなく、本件商標は商標法第4条第1項第8号及び同項第11号に該当せず、登録されるべきものである。

第5 当審の判断
1 本件商標の商標法第4条第1項第8号該当性(無効事由1)について
(1)請求人は、本件商標は周知著名な他人の名称である「大神神社」をその構成中に含み、かつ、その他人の承諾を得たものでないから、商標法第4条第1項第8号に該当する旨主張し、証拠を提出している。
ところで、他人の名称を含む商標について登録を受けることができないと規定する同号の趣旨は、当該他人の人格権を保護するという点にあるところ、同号が、他人の名称について著名性を要件としていないのに対し、他人の略称についてはこれを要件としているのは、略称については、これを使用する者がある程度恣意的に選択する余地があること、そして、著名な略称であって初めて名称と同様に特定人を指し示すことが明らかとなり、氏名と同様に略称が保護されるべきことによるものと解される。したがって、同号所定の他人の名称とは、使用する者が恣意的に選択する余地のない名称、すなわち、会社の商号など法令上の正式名称であるというべきである。(東京高裁平成13(行ケ)387、平成14.6.26判決参照)
これを本件についてみるに、請求人の名称は「宗教法人大神神社」であるから、「大神神社」は、その略称ということになり、著名であることが必要である。この点については当事者間に争いはない。
(2)そこで、「大神神社」が請求人の名称の著名な略称といえるか否かについて検討するに、請求人の提出に係る証拠によれば、以下の事実が認められる。
(ア)岩波書店発行「広辞苑第5版」には、「おおみわじんじゃ【大神神社】」の項目の下に「奈良県桜井市三輪にある元官幣大社。祭神は大物主大神。大己貴神・少彦名神を配祀。わが国最古の神社で、三輪山が神体。本殿はない。酒の神として尊崇される。二十二社の一。大和国一の宮。すぎのみやしろ。三輪明神。」と記載されている(甲第2号証の6)。
(イ)新人物往来社発行「日本『神社』総覧」(甲第2号証の1)には、「大神神社」(「おおみわじんじゃ」の振り仮名が付されている。)の表題の下、2頁に亘り鎮座地、祭神、社格、由緒等について詳細に説明され、例えば由緒の項には「ご祭神大物主大神は『古事記』『日本書紀』によれば、神代の昔、少彦名命と協力してこの国土を拓き、農業・工業・商業すべての産業開発、方除、治病、禁厭、造酒、製薬、交通、航海、縁結び等世の中の幸福を増進することを計られた人間生活の守護神であり、世に大国主神の御名で広く知られ、・・・今日まで三輪山全体を神体山として奉斎している。それ故、本殿を持たない、神代の信仰の形を今に伝える我国最古の神社である。」と記載されている。
(ウ)JTB日本交通公社出版事業局発行「日本100の神社」(甲第2号証の2)には、「大神神社」(「おおみわじんじゃ」の振り仮名が付されている。)の表題の下、「古代大和の象徴三輪山を神体山に酒と薬の神として信仰篤い大和一宮」の見出が付され、写真と共に説明されている。
(エ)KKワールドフォトプレス発行「ザ・ご利益願いごとがかなう本」(甲第2号証の3)には、「大神神社」(「大神」の文字部分に「おおみわ」の振り仮名が付されている。)「神体は神霊が鎮まる三輪山」の表題の下、写真と共に説明されている。
(オ)秋田書店発行「歴史と旅増刊号93 もっと知りたい神と仏の信仰事典」(甲第2号証の4)には、「三輪山」「神が籠る千古不易の聖なる山に、祭神大物主の正体をさぐり、日本の霊山の祖型をみる」の表題の下、「この三輪山の裾に抱かれるようにして、大神神社(「大神」の文字部分に「おおみわ」の振り仮名が付されている。)がある。・・・日本の霊山信仰の祖型を留めているのが、この大神神社であり、三輪山なのである。」等の記述がされ、写真と共に4頁に亘って説明されている。
(カ)梧桐書院発行「新集家紋大全」(甲第2号証の5)には、「杉(すぎ)」の項目において、「・・・昔から神の宿る木とされ、大和の大神神社(「大神」の文字部分に「おおみわ」の振り仮名が付されている。)の神木は杉である。使用家は大神神社の社家など。」と記載されている。
(キ)東方出版発行「神奈備(かんなび)大神(おおみわ)三輪明神(みわみょうじん)」(甲5号証)には、「大神神社分祠一覧」が掲げられ、「三輪明神こと大神神社の神徳は、古来から全国的に広くゆきわたり各地にその分祀を見るに至っている。」として全国各地の「大神神社」、「三輪神社」等が掲載されている。
なお、上記(ア)ないし(キ)の書籍は、いずれも本件商標の登録出願前に発行されたものである。
(ク)インターネットフリー百科事典「ウィキペディア(Wikipedia)」(甲第3号証の2)には、「大神神社」の表題の下、「大神神社(おおみわじんじゃ)は、奈良県桜井市にある神社である。式内社(名神大)、大和一宮で、中世には二十二社の中七社のひとつとされた。旧社格は官幣大社(現・別表神社)。三輪明神とも呼ばれる。・・・『日本最古の神社』と称されている。」等の記述がされ、写真が掲げられている。
(ケ)その他、インターネット上では多くのサイトにおいて「大神神社(おおみわじんじゃ)」が取り上げられ、写真と共に上記と略同様の説明が詳細になされている(甲第3号証の1、同号証の3ないし13)。
(コ)そして、「大神神社」は、「そうめん」の守り神でもあり三輪そうめんの発祥の地として、また、「酒」の神としても、古くから知られ、そうめん関係者及び酒造関係者の信仰を集めていることがインターネットの多くのサイトにおいて紹介されている(甲6号証の1ないし5及び甲第7号証の1ないし4)。
(3)以上の認定事実によれば、「大神神社」は、その独特な呼び方とも相俟って、日本最古の神社として、また、そうめんの神、酒の神としても古くから知られ、信仰に篤い者のみならず、観光の対象としても多くの者が訪れ、一般に広く知られているものというべきである。そして、上記文献等には「宗教法人大神神社」と表示するものは殆ど見当たらず、単に「大神神社」と記載されている。
したがって、「大神神社」は、本件商標の登録出願時及び登録査定時には既に、神社の名称(請求人の略称)として周知著名になっていたものと判断するのが相当である。
(4)他方、本件商標は上記第1のとおりの構成からなるところ、その構成中の「御神水」の文字は、「神水」の文字が「神域に湧き出た水。神に供える水。霊験ある水。神聖な水。」等(広辞苑第5版:岩波書店)の意味を有しており、例えば、インターネットのサイト「おでかけるぽ:大神神社(おおみわじんじゃ)」(甲第3号証の13)において、「御神水」の石塔を撮影した写真の下に、「奥に進むと大神神社の摂社で狭井神社(さいじんじゃ)があるのですが、病気平癒で全国的に有名で、ここにある薬井戸から湧き出るお水も御神水として崇められています。」と記載されているように、一般に、「神域に湧き出た水。神に供える水。霊験ある水。神聖な水。」等の意味合いを有する語として知られ、使用されているものである。
そうすると、本件商標は、「天大神神社」と「御神水」の2語からなるものとして看取されるとみるのが自然である。
しかして、「天大神神社」が一連一体の神社名として一般に知られている事実は見出し難いし、被請求人もその事実を立証する証拠を提出していない。また、「大神」の文字が「神を敬っていう語」(乙第1号証の1)であるとしても、他の語と結合して「○○大神」の形式で言い習わされているのは、天照大神、厳島大神、伊和大神、宇佐八幡大神(八幡大神)、大己貴大神(大物主大神)、春日大神、熊野大神、猿田彦大神、豊受大神、一言主大神等に限定されているといえるものであり、これら以外に「○○大神」として一般に知られているものが少ないことからすると、「天大神」が一体のものとして一般に親しまれて知られているものではないことから、「天」と「大神」との結合の必然性は乏しいものといわざるを得ない。
(5)以上を総合すると、本件商標に接する取引者、需要者は、その構成中の「大神神社」の文字部分に注目して、著名な請求人の名称を連想、想起する場合が少なからずあるものというのが相当であるから、本件商標は、他人である請求人の名称の著名な略称を含むものというべきであり、かつ、請求人の承諾を得ていないものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第8号に該当するものである。
2 まとめ
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第8号の規定に違反して登録されたものであるから、請求人が主張するその余の無効事由について判断するまでもなく、同法第46条第1項の規定に基づき、その登録を無効にすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲1(引用商標1)


別掲2(引用商標2)


別掲3(引用商標3)



審理終結日 2009-01-13 
結審通知日 2009-01-16 
審決日 2009-01-27 
出願番号 商願2004-83122(T2004-83122) 
審決分類 T 1 11・ 23- Z (Y32)
最終処分 成立 
前審関与審査官 梶原 良子 
特許庁審判長 渡邉 健司
特許庁審判官 井出 英一郎
鈴木 修
登録日 2005-05-20 
登録番号 商標登録第4865841号(T4865841) 
商標の称呼 テンダイジンジンジャゴシンスイ、テンダイジンジンジャゴシン、アメノオージンジャゴシンスイ、アメノオージンジャゴシン、テンダイジンジンジャ、アメノオージンジャ、ゴシンスイ、ゴシン、アメノオーミワジンジャ 
代理人 林 靖 
代理人 丸山 幸雄 
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