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審決分類 審判 査定不服 商4条1項16号品質の誤認 登録しない X32
審判 査定不服 称呼類似 登録しない X32
管理番号 1192273 
審判番号 不服2008-4257 
総通号数 111 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2009-03-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-02-21 
確定日 2009-01-15 
事件の表示 商願2007- 36439拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 1 本願商標
本願商標は、「由布院の森号麦酒」の文字を標準文字により表してなり、第32類「ビール,ビール風味を有する麦芽発泡酒,ビール製造用ホップエキス」を指定商品として、平成19年4月12日に登録出願されたものである。

2 原査定の拒絶の理由の要点
原査定において、本願商標が商標法第4条第1項第11号に該当するとして、本願の拒絶の理由に引用した登録商標は、以下のとおりである。
登録第2324306号商標(以下、「引用商標1」という。)は、「ゆふいんの森」の文字を書してなり、昭和63年12月15日に登録出願、第28類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、平成3年7月31日に設定登録、その後、同13年8月14日に商標権の存続期間の更新登録がされた後、さらに同14年2月6日に指定商品を第33類「日本酒,洋酒,果実酒,中国酒,薬味酒」とする書換登録がされ、現に有効に存続しているものである。
登録第4511786号商標(以下、「引用商標2」という。)は、「ゆふいんの森」の文字を書してなり、平成12年7月6日に登録出願、第14類、第16類、第21類、第25類、第28類、第29類、第30類及び第32類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同13年10月5日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。

3 当審の拒絶の理由の要点
当審において、「本願商標は、その構成中に『ビール』を表示するものと認められる『麦酒』の文字を有してなるから、これを本願の指定商品中、『ビール,ビール製造用ホップエキス』以外の商品に使用するときは、その商品の品質について誤認を生じさせるおそれがあるものである。したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第16号に該当する。」旨の通知を、平成20年7月17日付けで行ったものである。

4 当審の判断
(1)本願商標は、前記1のとおり「由布院の森号麦酒」の文字よりなるところ、その構成する各文字は、同書、同大、等間隔で外観上まとまりよく一体的に表されているものであり、その構成文字より生ずる「ユフインノモリゴウビール」の称呼を一連に称呼し得るものである。また、その構成中の「麦酒」の語は、その指定商品との関係においては品質を表すものと認められるため「ユフインノモリゴウ」の称呼をも生ずるものと認められる。
一方、引用商標1及び2は、前記2のとおり「ゆふいんの森」の文字を書してなるところ、これよりはそれぞれ「ユフインノモリ」の称呼を生じるため、本願商標と引用商標1及び2とは、「ゴウビール」及び「ゴウ」の音の有無の差により、称呼上においては明確に区別し得るものである。
そうとすれば、本願商標から「ユフインノモリ」の称呼をも生ずるとし、そのうえで、本願商標と引用商標1及び2とが称呼上類似するとした原査定の認定は妥当でないものと認められる。
(2)しかしながら、本願商標は、前記1のとおり「由布院の森号麦酒」の文字よりなるところ、その構成中に「麦酒」の語を有するものであり、その「麦酒」の語は「麦をかもした酒、すなわちビール。」(広辞苑第五版)を意味する語であると認められる。
そして、我が国において「酒類」は、酒税法第2条(酒類の定義及び種類)第1項において「この法律において『酒類』とは、アルコール分一度以上の飲料(薄めてアルコール分一度以上の飲料とすることができるもの(アルコール分が九十度以上のアルコールのうち、第7条第1項の規定による酒類の製造免許を受けた者が酒類の原料として当該製造免許を受けた製造場において製造するもの以外のものを除く。)又は溶解してアルコール分一度以上の飲料とすることができる粉末状のものを含む。)をいう。」と規定され、同条第2項において「酒類は、発泡性酒類、醸造酒類、蒸留酒類及び混成酒類の四種類に分類する。」と規定されている。
さらには、酒税法第3条(その他の用語の定義)第3項において「発泡性酒類 次に掲げる酒類をいう。イ ビール ロ 発泡酒 ハ イ及びロに掲げる酒類以外の酒類で発泡性を有するもの(アルコール分が十度未満のものに限る。以下『その他の発泡性酒類』という。)」として、「発泡性酒類」の中において「ビール」と「発泡酒」を区別して分類されている。
また、酒税法第3条第12項において「ビール」は、「次に掲げる酒類でアルコール分が二十度未満のものをいう。イ 麦芽、ホップ及び水を原料として発酵させたもの ロ 麦芽、ホップ、水及び麦その他の政令で定める物品を原料として発酵させたもの(その原料中当該政令で定める物品の重量の合計が麦芽の重量の百分の五十を越えないものに限る。)」と規定され、さらに、同法第3条第18項において「発泡酒」は、「麦芽又は麦を原料の一部とした酒類(第七号から前号までに掲げる酒類及び麦芽又は麦を原料の一部としたアルコール含有物を蒸留したものを原料の一部としたものを除く。)で発泡性を有するもの(アルコール分が二十度未満のものに限る。)をいう。」と規定され、「ビール(麦酒)」と「麦芽発泡酒(ビール風味を有する麦芽発泡酒)」は、その定義においても異なるものとされている。
以上のように、「ビール(麦酒)」と「ビール風味を有する麦芽発泡酒」は、酒税法上、区別されているために、同法第23条に規定のとおり酒税の税率も異なり、それぞれの商品の末端価格においても価格差が生じていることが認められるため、消費者・需要者をしてその違いを認識する意味は大きいものと判断される。そして、このことは新聞・インターネット等に次のように掲載されていることからも窺い知ることができる。(以下、文字の下線は当合議体が線引きしたものである。)
(ア)「毎日新聞 東京夕刊」(2008年10月20日付け1頁)
「ビール類:第3のビール、シェア第2位に 不況後押し 通年、発泡酒を逆転へ」の見出しのもと、「第3のビール 酒税法改正で誕生 ビール、発泡酒(麦芽比率67%未満)に次ぐ、ビール風アルコール飲料の総称。原料に麦芽を使わない『その他の醸造酒』と、発泡酒に別のアルコールを混ぜた『リキュール』の2種類がある。350ミリリットル缶にかかる酒税は、ビールの77円、発泡酒47?77円より安い28円。03年の酒税法改正で、発泡酒の税率が引き上げられたため、ビール各社が低価格飲料として開発した。」の記載がある。
(イ)「朝日新聞 東京朝刊」(2008年2月17日付け5頁)
「(今さら聞けない)ビール系飲料 企業努力しても逃がさぬ酒税」の見出しのもと、「ビールは麦芽を原料の3分の2以上使い、副原料を使う場合も、政令で定められたコメやでんぷんなどに限っている。これに対し、発泡酒は麦芽比率が3分の2未満。政令で定められたもの以外の副原料も使える。ちなみに、独特の苦みを生み出すホップは、第3のビールも含め3種類とも共通して使われている。発泡酒が脚光を浴びたのは、94年のこと。酒税法の規定を逆手にとり、サントリーが麦芽使用をビールにならない範囲ぎりぎりの65%に抑えた『ホップス生』を発売したのだ。当時、『節税ビール』と呼ばれたように、350ミリリットル1缶当たりの税金はビールより約24円、3割程度も安かった。安い上にビールと味がそれほど違わなかったためヒット商品になり、他社も追随した。」の記載がある。
(ウ)「共同通信」(2007年12月5日付け)
「発泡酒市場」の見出しのもと、「発泡酒はビールよりも麦芽の使用割合が少なく、酒税の税率が低いため価格を安くできる。」の記載がある。
(エ)「発泡酒-Wikipedia」の見出しのもと、「税率 2006年5月1日以降のもの。金額は1リットルあたり。発泡酒 麦芽比率50%以上-222円 50%未満25%以上-178.125円 25%未満-134.25円 (参考:ビール-222円)」の記載がある。
(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%99%BA%E6%B3%A1%E9%85%92)
次に、国産ビールの表示については、酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律(以下「酒類業組合法」という。)第86条の5、酒類業組合法第86条の6、酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律施行令(以下「酒類業組合法施行令」という。)第8条の3、酒類業組合法施行令第8条の4及び食品衛生法第11条等により、必要とされる表示事項が決まっているほか、消費者の適正な商品選択を保護し、公正な競争を確保するため、昭和54年に「ビールの表示に関する公正競争規約」が公正取引委員会の認定を受けて制定されている。
上記の「ビールの表示に関する公正競争規約」(以下「規約」という。)第1条(目的)において、「ビールの取引について行う表示に関する事項を定めることにより、一般消費者の適正な商品選択を保護し、不当な顧客の誘引を防止し、公正な競争を確保することを目的とする。」と規定され、規約第3条(必要な表示事項)において、「事業者は、ビールの容器又は包装に、次に掲げる事項を、それぞれビールの表示に関する公正競争規約施行規則(以下「施行規則」という。)に定めるところにより、見やすい場所に邦文で明りょうに表示しなければならない。」と規定され、規約施行規則第2条(必要な表示事項の表示基準)には、「(1)ビールである旨 『ビール』または『麦酒』と表示する。銘柄名等に○○ビールとあるものは、それにより当該表示を行ったものとする。」の規定がある。
さらには、規約第6条(不当表示の禁止)において、「事業者は、ビールの取引に関し、次の各号に掲げる表示をしてはならない。(1)ビールでないものをビールであるかのように誤認されるおそれがある表示・・・」と規定され、さらに、規約施行規則の第4条(不当表示の禁止)においては、「規約第6条に掲げる不当表示には、次の表示が含まれる。(1)ビールでない飲料に『○○ビール』、『○○ビヤー』、『○○エール』、『○○スタウト』等の名称及びビールと誤認される絵・図柄・写真等を表示すること。ただし、『ルートビヤー』、『ジンジャーエール』など公知の名称については、ことさらに『ビヤー』、『エール』の部分を分離し、又は強調しない限り、これに含まれない。」と規定されている。
これにより、ビールでないものをビールであるかのように誤認させるおそれがある表示は、不当表示として禁止されている。
以上を総合勘案すれば、「ビール(麦酒)」と「麦芽発泡酒(ビール風味を有する麦芽発泡酒)」とは、酒類が異なり、さらには、消費者・需要者の混同を防止し、公正な競争を確保するためにその表示方法及び誤認防止について規制があることが認められる。
そうとすれば、「麦酒」の文字を有する本願商標を、指定商品「ビール風味を有する麦芽発泡酒」に使用した場合、それがあたかも「ビール(麦酒)」であるかのごとく商品の品質について誤認を生じさせるおそれがあるものとみるのが相当である。
そして、本願商標が商標法第4条第1項第16号に該当するとした前記3の拒絶の理由に対し、請求人からは所定の期間を経過するも何らの応答もなかった。
したがって、前記3の拒絶理由は妥当なものと認められるので、本願は、この理由により拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2008-11-12 
結審通知日 2008-11-18 
審決日 2008-12-04 
出願番号 商願2007-36439(T2007-36439) 
審決分類 T 1 8・ 272- Z (X32)
T 1 8・ 262- Z (X32)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 梶原 良子 
特許庁審判長 鈴木 修
特許庁審判官 旦 克昌
小畑 恵一
商標の称呼 ユフインノモリゴービール、ユフインノモリゴーバクシュ、ユフインノモリゴー、モリゴービール、モリゴーバクシュ、モリゴー、ユフインビール、ユフインバクシュ 
代理人 泉 和人 

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