• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない 125
管理番号 1190858 
審判番号 取消2007-301190 
総通号数 110 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2009-02-27 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2007-09-19 
確定日 2009-01-05 
事件の表示 上記当事者間の登録第1877482号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第1877482号商標(以下「本件商標」という。)は、昭和59年4月9日に登録出願、「SHIFONERY」の欧文字を横書きしてなり、第17類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品を指定商品として、同61年7月30日に設定登録、その後、平成8年10月30日及び同18年5月16日の二回にわたり商標権存続期間の更新登録がなされ、同年10月18日に第25類「被服」を指定商品とする書換登録がされたものである。

第2 請求人の主張
1 請求の趣旨
請求人は、本件商標の登録を取り消す、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由及び答弁書に対する弁駁を要旨次のように述べた。
2 請求の理由
本件商標は、その指定商品について、今日に至るまで3年以上使用されていないことは、本件審判請求人の調査により明らかである。したがって、本件商標登録は、その不使用を理由とする取消しを免れないものであり、ここに上記請求の趣旨のとおり審判を請求する。
3 答弁に対する弁駁
被請求人は、平成19年12月10日付答弁書において、本件商標について、「本件審判請求の登録日である平成19年10月5日以前から3年以内に、本件商標を種々の婦人用コートに継続使用している」とした上で、「その事実を、東京都千代田区二番町8番地8に本社を置き関東地方を中心に全国的に店舗を展開している株式会社イトーヨーカ堂(以下「イトーヨーカ堂」という。)に、商標権者であるクロスプラス株式会社の東京都中央区日本橋蛎殻町二丁目15番5号クロスプラス株式会社東京支店(以下「クロスプラス」という。)が納品している冬物衣料である婦人用オーバーコートにより証明する」として、乙第2号証及び乙第3号証を提出している。
しかしながら、乙第2号証及び乙第3号証によっては、これらが作成された平成19年1月26日頃、及び、平成18年11月16日頃にイトーヨーカ堂から被請求人に対して商品「コート」(「シングル変形ステッチトレンチ99」及び「カルゼビット使いダッフルコート69」)の発注がされ、該商品が納品された事実は、確認できるものの、該商品に本件商標が付された事実が一切証明されていない。
以下、その理由を述べる。
(1)乙第2号証について
ア 乙第2号証は、イトーヨーカ堂の御子柴誠氏の作成に係る証明書である。この証明書は、「証明願」と表示された乙第2号証の1枚目に、発注書(2枚目)、副資材指図書(3枚目)、写真(4枚目)、及び、EDIシステム仕入れデータの一部(5枚目)が添付されてなるものである。
すなわち、乙第2号証は、被請求人社員の小勝伊佐男氏が、上記2枚目から5枚目も添付して作成した「証明願」について、イトーヨーカ堂の御子柴誠氏に対して証明を求め、同氏が内容を確認した上で、署名捺印をしたというものであると思われる。
もっとも、乙第2号証1枚目に記載された証明事項は、明快であるとは、言い難く、必ずしも、趣旨が明確ではない部分があるので、念のため、以下に引用する。
「クロスプラスが、添付の発行日2007年1月26日の貴社発注書(No:701260189)に基づいて、この発注書に掲載の『商品名:シングル変形ステッチトレンチ99』(お取引先品番:41083)に副資材指図書に記載の商標の下げ札を付すとともに写真に示すような衿ネ-ムを付して、3000着をEDIシステムの仕入れデ-タ-に記載されているように貴社の店舗毎の納品数量に分けて、2007年2月15日?2007年3月5日の間に納品したものであるとともに、これら貴社の店舗において展示販売したものであること。」
上記を分説すると、以下のとおりである。
A クロスプラスが、添付の発行日2007年1月26日の貴社発注書(No:701260189)に基づいて、
B この発注書に掲載の「商品名:シングル変形ステッチトレンチ99」(お取引先品番:41083)に
B-1 副資材指図書に記載の商標の下げ札を付すとともに
B-2 写真に示すような衿ネ-ムを付して、
C 3000着をEDIシステムの仕入れデ-タ-に記載されているように貴社の店舗ごとの納品数量に分けて、
D 2007年2月15日?2007年3月5日の間に納品したものであるとともに、
E これら貴社の店舗において展示販売したものであること
イ イトーヨーカ堂の御子柴誠氏は、上記A?Eの事項(以下「証明事項A」のようにいう。)を証明し、乙第2号証に記名捺印しているが、以下、各証明事項ごとに検討する。
証明事項Aに関しては、イトーヨーカ堂が、乙第2号証2枚目の発注書(No.701260189)により、被請求人の東京支店に対して注文をしたことが認められ、この点については、特に問題ない。
ただし、同発注書には、本件商標が一切表示されておらず、これをもって本件商標が使用されているということはできない。
証明事項Bについては、まず、「この発注書に掲載の『商品名:シングル変形ステッチトレンチ99』(お取引先品番:41083)に、乙第2号証3枚目の副資材指図書に記載の商標の下げ札を付した」という事実(証明事項B-1)を、イトーヨーカ堂の御子柴氏が証明できるのか、疑問である。けだし、副資材指図書は、被請求人の社内文書であると考えられ、御子柴氏がこれを実際に目にしていたか不明である。
また、イトーヨーカ堂の作成にかかる発注書に、本件商標は、一切表示されていないのであり、イトーヨーカ堂の御子柴氏又は他の社員が下げ札に記載された商標を認識していたのか明らかではない。
少なくとも、発注書に本件商標が表示されていない以上、イトーヨーカ堂が自ら発注した商品と納品される商品の同一性を確認する際に本件商標を用いた可能性は、低いといわざるを得ない。さらに、乙第2号証2枚目の発注書に「お取引先品番:41083」とある一方で、乙第2号証3枚目の副資材指図書には「841083」の番号が記載されており、これらの間に一応のつながりがあるようにも見えるが(ただ、「8」という数字の有無という相違について、被請求人は、何らの説明もしていない)、乙第2号証3枚目の副資材指図書には、当然のことかもしれないが念のため指摘しておくと、イトーヨーカ堂についての記載は、何もない。なお、請求人は、乙第2号証及び乙第3号証の原本が提出され、合議体及び請求人の閲覧に供される機会が設けられるよう求めるものであるが、乙第2号証3枚目(及び後述するとおり、乙第3号証2枚目)については、特に強く、これを求める。
なお、乙第2号証3枚目については、乙第2号証の証明書に添付されているものは、写しである可能性があるため、その場合、そのオリジナルの原本書類(「×不要」「いりません」「(402)に変更」「ドライ/セキユ系にして下さい」等の手書きの指示書きがボ-ルペン等でなされたもの)を提出することも求める。
次に、「この発注書に掲載の『商品名:シングル変形ステッチトレンチ99』(お取引先品番:41083)に写真に示すような衿ネ-ムを付して」という事実(証明事項B-2)についても、かかる事項を、イトーヨーカ堂の御子柴氏が証明できるのか、疑問である。
そもそも、ここにいう「写真」とは、乙第2号証4枚目の2枚の写真を指すと思われるが、これらの写真について、撮影日時はおろか、撮影者、撮影場所、撮影対象等が全く明らかではない。
さらに、乙第2号証4枚目上側の写真は、乙第2号証2枚目の発注書のイラストの服に形は似ているが、その同一性は、明らかではない。また、この写真の服の向かって右側の袖には、商品札が下がっているようにも見受けられるが、これについては、その写しあるいは拡大写真すら提出されていない。
さらに、乙第2号証4枚目下側の写真には、本件商標が表示されているように見受けられるが、この写真の服の衿のように見える部分は、白ないしベージュであり、この下側の写真の服と、上側の写真の服との同一性は、明らかではない。請求人は、乙第2号証4枚目の写真に関し、被請求人が、これらの写真のa撮影日時、b撮影者、c撮影場所及びd撮影対象を、それぞれ、明らかにすること、乙第2号証4枚目の上側の写真に写っている商品札の写しを書証として提出すること、並びに、口頭審理等の場において、撮影対象の服を検証物として提出し、合議体及び請求人の閲覧に供することを求める。
要するに、乙第2号証2枚目記載の商品「シングルトレンチ99」と乙第2号証3枚目の副資材指図書との間の結びつきないし関連性(立証事項B-1)は、客観的に立証されておらず、また、乙第2号証2枚目記載の商品「シングルトレンチ99」と乙第2号証4枚目の写真との間の結びつきないし関連性(立証事項B-2)も客観的に立証されているとはいえない。証明事項Cについては、イトーヨーカ堂が、乙第2号証2枚目の発注書により被請求人の東京支店に発注した商品3000着を、乙第2号証5枚目のEDIシステムの仕入れデ-タ-に記載されているように、イトーヨーカ堂の店舗毎の納品数量に分けて、納品を受けた事実が認められ、この点については、特に問題ないと思われる。
ただし、乙第2号証5枚目自体からは、この商品に、本件商標が使用されていた事実は、全く立証されていない。
また、乙第2号証5枚目の商品「シングルトレンチ99」は、乙第2号証2枚目の発注書に記載された商品名と同じであるが、上記のとおり、乙第2号証2枚目の発注書と、同3枚目の副資材指図書又は同4枚目の写真との間の結びつきないし関連性は、客観的に立証されていない。証明事項Dについては、乙第2号証2枚目の発注書から、同発注書記載の商品が2007年2月15日?2007年3月5日の間にイトーヨーカ堂に納品された事実が認められ、この点については、特に問題ないと思われる。
ただし、乙第2号証2枚目自体からは、この商品に、本件商標が使用されていた事実は、全く立証されていないし、繰り返しになるが、乙第2号証2枚目の発注書と、同3枚目の副資材指図書又は同4枚目の写真との間の結びつきないし関連性は、客観的に立証されていない。
最後に、証明事項Eについては、乙第2号証2枚目の発注書から、同発注書記載の商品がイトーヨーカ堂の店舗において展示販売された事実が認められ、この点については、特に問題ないと思われる。
もっとも、御子柴氏が、実際の商品が店舗において展示販売された現場を現認したのか、更には、本件商標が使用されている状況を現認したのかは、疑問である。
また、乙第2号証2枚目の発注書と、同3枚目の副資材指図書又は同4枚目の写真との間の結びつきないし関連性は、客観的に立証されていない。
ウ 以上からすれば、結局、乙第2号証は、本件商標が使用されたという事実を直接立証するものではなく、また、かかる事実を客観的に立証するものでもない。
(2)乙第3号証について
乙第3号証は、発注書及び副資材指図書からなるものである。これについては、イトーヨーカ堂の社員による確認、証明は、一切なされていない。
ア このうち、発注書(No.611160038)には、乙第2号証として提出された発注書と同様に、本件商標が表示されておらず、これからは、イトーヨーカ堂から被請求人に対して、2006年11月16日以降に商品名「カルゼビット使いダッフルコート69」なる商品に関する発注があった事実をうかがい知ることができたとしても、本件商標が使用された事実は、何ら示されていない。
イ また、発注書では、ダッフルコートの品質表示として「ウ-ル85% アンゴラ15%」と記載されているのに対し、副資材指図書では、「毛57% ポリエステル38% アクリル2% ナイロン1% ポリウレタン1%」と記載されている。下げ札において、実際の商品の品質と異なる品質表示がされることは、非常に考えにくく、発注書及び副資材指図書で特定されている商品は、全く別の商品である可能性が極めて高いといわざるを得ない。
ウ 更に言えば、発注書によれば、同ダッフルコートには、「LT灰(色コード005)」、「白(色コード006)」及び「LT茶(色コード095)」の三種類の色が用意されている。他方、副資材指図書でも、「白(COL.01)」、「オフベージュ(COL.32)」及び「Lグレ-(COL.03)」の3色が同様に用意されている。
しかしながら、これを乙第2号証として提出された発注書及び副資材指図書と比較すると、乙第2号証及び乙第3号証に係る発注書で特定されている「LT茶(色コード095)」に対しては、乙第2号証の副資材指図書では「ベージュ(COL.31)」と表示されているのに対し、乙第3号証の副資材指図書では「オフベージュ(COL.32)」と異なる色が表示されている。
また、乙第2号証及び乙第3号証に係る副資材指図書に記載されている「Lグレ-(COL.03)」は、第2号証の発注書では「V灰(色コード003)」と表示されているのに対し、第3号証の発注書では、「LT灰(色コード005)」と異なる色が表示されている。被服の分野においては、色彩も、需要者の商品選択の契機となる重要な要素の一つであり、取引者は、数多くの色の商品を取り扱うことから、各色彩には、固有のコードが付与されると考えるのが適当であって、異なる色彩に対して重複するコードが付与されているとは、到底考えられないし、これらの齟齬について、被請求人からは、特段の説明はなされてない。
それにもかかわらず、乙第2号証及び乙第3号証において特定される色彩が、このように相互に異なっているということは、そもそも発注書で特定されている商品と副資材指図書で特定されている商品が異なる商品である可能性があるといわざるを得ず、本件商標が使用されていることが証明されていないことは、明らかである。
エ 以上からすれば、乙第3号証からは、ダッフルコートが被請求人からイトーヨーカ堂に納品されたことをうかがい知ることができたとしても、本件商標が使用されていたことは、一切証明されていない。
なお、請求人は、乙第2号証及び乙第3号証の原本が提出され、合議体及び請求人の閲覧に供される機会が設けられるよう求めるものであるが、前述した乙第2号証3枚目及び乙第3号証2枚目については、特に強く、これを求める。
(3)乙第4号証ないし乙第8号証について
これらの証拠は、本審判請求の登録日である平成19年10月5日以降に作成されたものであって、関連性がなく、本件審判の趨勢を左右するものではない。
(4)まとめ
以上のように、少なくとも、被請求人が提出した乙第1号証ないし乙第8号証によっては、本件商標の使用の事実についての立証責任が果たされているとは、到底いえず、本件商標登録は、取消しを免れないものである。
仮に、合議体が、乙第1号証ないし乙第8号証により、本件商標の使用の事実についての立証がなされている余地があると判断するのであれば、請求人は、前述したとおり、
(ア)乙第2号証及び乙第3号証の原本が提出され、合議体及び請求人の閲覧に供される機会が設けられるよう求め、乙第2号証3枚目及び乙第3号証2枚目については、特に強く、これを求めるものであり、
(イ)乙第2号証3枚目については、乙第2号証の証明書に添付されているものは、写しである可能性があるため、その場合、そのオリジナルの原本書類(「×不要」「いりません」「(402)に変更」「ドライ/セキユ系にして下さい」等の手書きの指示書きがボ-ルペン等でなされたもの)を提出すること、
(ウ)乙第2号証4枚目の写真に関し、被請求人が、これらの写真のa撮影日時、b撮影者、c撮影場所及びd撮影対象を明らかにすること、
(エ)乙第2号証4枚目の上側の写真に写っている商品札の写しを書証として提出すること、
(オ)口頭審理等の場において、乙第2号証4枚目の撮影対象の服を検証物として提出し合議体及び請求人の閲覧に供することを求める。
さらに、請求人は、答弁書において、乙第2号証の作成に関与した請求人の社員小勝伊佐男氏を証人とする用意がある旨を述べるが、乙第2号証の作成者は、あくまでも、イトーヨーカ堂の御子柴氏であり、証人尋問が行われるのだとすれば、証人として証言すべきであるのは、御子柴氏であると請求人は考える。
仮に請求人が、御子柴氏を証人として申請することを拒むのだとすれば、請求人に、証拠の作成者に対する反対尋問の機会が与えられず、本書で上述したような疑問点を解消する機会が与えられない以上、乙第2号証は、取引先によって作成されたものではなく、被請求人自身によって作成されたのと同様のものとして証拠価値が評価されるべきものである。

第3 被請求人の答弁
1 答弁の趣旨
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第8号証(枝番号を含む。)を提出した。
2 答弁の理由
(1)被請求人は、本件審判の請求の登録以前から3年以内に、本件商標を種々の婦人用コートに継続使用しているものである。
その事実を、東京都千代田区二番町8番地8に本社を置き関東地方を中心に全国的に店舗を展開しているイトーヨーカ堂に、商標権者であるクロスプラス株式会社の東京都中央区日本橋蛎殻町二丁目15番5号クロスプラス株式会社東京支店が納品している冬物衣料である婦人用オーバーコートにより証明する。
(ア)乙第2号証として提出したイトーヨーカ堂の証明書のとおり、イトーヨーカ堂に2007年2月15日?2007年3月5日の間に本件商標を付した婦人用コートである「商品名:シングル変形ステッチトレンチ99」を被請求人が3000着を納品し、この納品した前記商品をイトーヨーカ堂の店舗において展示販売したものであることが証明されている。
(イ)また、乙第3号証として提出した、発行日2006年11月16日付けイトーヨーカ堂の発注書(発注書 No:600060038)は、記載のとおり婦人用オーバーコートである「商品名:カルゼビット使いダッフルコ-ト69」を2703着に副資材指図書に記載のとおりの表面に商標「SHIFONERY」を表示した下げ札を付した上被請求人が納品して、イトーヨーカ堂の店舗において展示発売されたものである。
このように、商標権者である被請求人が、本件審判請求の登録日である平成19年10月5日前3年以内に本件商標を請求に係る指定商品に含まれる「婦人用オーバーコート」に使用した事実は、前記乙第2号証及び乙第3号証から明らかなところであって、本件商標が取り消されるべきでないことは、十分立証できたものと確信する。
(2)しかも、本件審判請求の登録日である平成19年10月5日以降においても、乙第4号証ないし乙第8号証に示すように発行日2007年10月26日付けイトーヨーカ堂の各発注書(発注書No:710260047、710260048、710260049、710260059、710260060)及びそれに添付の副資材指図書のとおり、本件商標を婦人用オーバーコートに現在においても継続使用しているものであり、より一層保護されるべきものである。なお、乙第2号証ないし乙第8号証には、原価、売価及び値入率が記載されていたが、これらは、商標の使用の証明に直接関係する事項ではなく、また、営業秘密に属するものであるから、墨消にて削除してある。
また、前記乙第2号証及び乙第3号証により商標権者による本件審判請求の登録日前における使用の事実は明らかであると確信するが、前記した事実その他確認を必要とすることがあれば、その事実を熟知している東京都中央区日本橋蛎殻町二丁目15番5号 クロスプラス株式会社 東京支店 総務部部長兼マ-ケティング室室長 小勝伊佐夫を証人として、前記事実を立証する用意がある。
3 答弁(第2回)
(1)乙第2号証について
(ア)乙第2号証は平成19年12月10日付け提出の答弁書に述べたことと重複するが、この乙第2号証に綴じられた書面全体により「株式会社イトーヨーカ堂に2007年2月15日?2007年3月5日の間に本件登録商標を付した婦人用コートである「商品名:シングル変形ステッチトレンチ99」を被請求人が3000着を納品し、この納品した前記商品を株式会社イトーヨーカ堂の店舗において展示販売したものであることが証明されている。」ものである。
(イ)被請求人が弁駁書第4頁第15、16行目において「ただ、同発注書には本件登録商標が一切表示されておらず、これをもって本件登録商標が使用されていることはできない。」と主張しているが、このことは被請求人においても認識しており、写真及び副資材指図書を添付して証明を受けたものである。
また、被請求人が弁駁書第4頁第17行目以下において、御子柴氏が証明できるかとの疑問を挙げている。
しかし、御子柴誠氏は証明書に記載の肩書き及び発注書の記載から明らかなように、発注書に係る商品仕入れの担当バイヤーであり、店舗に常駐するものではないが、仕入れ商品の展示販売方法について少なくとも近隣の店舗出向きその確認を行うものである。
また、イトーヨーカ堂は商品が他社の知的財産権を侵害したものでないことの保証を求めている。このことは、納品された商品が発注したものに相違ないかの検査を行い本件登録商標が使用されていることも当然に確認するものである。
したがって、前記疑問は当たらないものである。
(ウ)なお、副資材指図書は、被請求人が中国の縫製工場へどのような下札を製造して商品に付すべきかを指示するものであり、これを御子柴氏に提示するものでないことは勿論のことである。
しかし、これを添付して証明を受けたのは、衿ネームを写した写真により当該商品に本件商標が付されていることは認められるものであるが、副資材指図書に示す下札も付してあることを証明してもらうためである。
なお、当該商品はイトーヨーカ堂に2007年2月15日?2007年3月5日の間に納品したものであり、販売を終了して商品及び下札も存在しないため副資材指図書を添付したものである。
(エ)また、乙第2号証2枚目の発注書の「お取引先品番:41083」と、乙第2号証3枚目の「841083」の8の有無については、当該商品に被請求人は管理番号として6桁の「841083」を付して管理しているものである。他方、イトーヨーカ堂はコンピュータにおいて5桁の数字で管理しているため、被請求人の管理番号の上1桁目を省略している事情によるものである。
(オ)なお、請求人は、乙第2号証、乙第3号証の原本を提出されるべきであるとされているが、原本には営業秘密に属する原価、売価及び値入率が記載されており、また、特に原本を提出すべきとされております副資材指図書はコピーしたものであるが、その内容は明確であるので、商標の使用の事実を明確に証明できるものであるから敢えて提出の必要性はないものである。
(カ)写真に関しては、前記(ウ)に記載したとおり、衿ネームの使用を例示したものであり、このことは明らかであり、何ら問題のないものである。 なお、下側の写真の服と上側の写真の服とが同一性が明らかでないとされている点は、下側の写真では商標「SHIFONERY」が地色に溶け込むのを防止するため露光量を多くして撮影したため色調が異なるものとなったことによるものである。
因みに、この写真は乙第2号証の発注書の発注日前に、発注に係る商品をクロスプラス内において当社社員が撮影したものである。
なお、(ウ)に述べたとおり、当該商品はイトーヨーカ堂に2007年2月15日?2007年3月5日の間に納品したものであり、販売を終えて商品及び下札も存在しないため提出することはできない。
(キ)以上のとおり、乙第2号証の各書面を総合的に判断すれば、証明者の証明のとおり、商標権者による本件登録商標が本件審判請求の登録日前3年以内における使用した事実は明確に証明さているところである。
(2)乙第3号証について
(ア)請求人がご指摘のとおり、乙第3号証2枚目の副資材指図書は発注書に係る商品と全く別の商品である。
したがって、このような状態の乙第3号証では本件登録商標が本審判事件登録日前3年以内に日本国内おいて使用されていた事実を証明されているものとは思わないが、乙第2号証により使用の事実が証明されているので、乙第3号証の不備を是正したものを再提出はしない。
なお、発注書のお取引先番号と副資材指図書の品番は同一の商品を示すもので、本来は前記のような齟齬が生じるものではない。
ところが、この副資材指図書の品質表示は同時期に製造したツイード製の商品のものにも関わらず、副資材指図書の管理番号としては該ツイード製の商品の管理番号を付すべきところを、同時期に取り扱っていたことにより誤って乙第3号証の発注書に係る商品の管理番号を付したことによるものである。そして、その間違いの管理番号の副資材指図書を訂正しないものを破棄せず保管されていたのを、管理番号のみを符合させて組み合わせた不手際によるものである。
(イ)発注書と副資材指図書の色彩表示について
コンピュータ入力のため付する色彩コードは各社独自のものであり、イトーヨーカ堂の発注書と被請求人クロスプラス株式会社の副資材指図書の色彩コードは相違するものである。
乙第2号証の発注書と副資材指図書を例に説明すれば、発注書の色コードは「001の黒」、「003のV灰」、「0095のLT茶」と表示している。これに対応する副資材指図書の色コードは「001の黒」対して「05、黒」、「003のV灰」対して「03、Lグレー」、「095はLT茶」対して「31、ベージュ」となっている。
このように色コード及び表示が相違するため、色コード対照表により同一色を確認して商品の納品を行うものである。
なお、前記したとおり、乙第3号証の発注書と副資材指図書とは齟齬したものであるから、この両書面に記載の色彩で共通するものは「006の白」に対する「01、白」のみであり、他は色彩が相違するものである。
(3)乙第4号証ないし乙第8号証について、
請求人は、この乙第4号証ないし乙第8号証を本審判請求の登録日である平成19年10月5日以降に作成されたものであって、関連性がなく、本審判の趨勢を左右するものではない、とされている。
ところが、乙第4号証ないし乙第8号証は、本件登録商標が本審判事件登録日前3年以内に日本国内おいて使用されていた事実を実質的に証明したものと同様の証明力があるものである。
すなわち、乙第4号証ないし乙第8号証の各発注書(発注書No:710260047、710260048、710260049、710260059、710260060)は平成19年10月5日以降の2007年10月26日付けである。
しかしながら、これら乙第4号証ないし乙第8号証に添付の副資材指図書は、乙第4号証に添付ものは右上部枠内に発行日が2007/8/21と記載されているとおり2007年8月21日であり、乙第5号証に添付ものは右上部枠内に発行日が2007/8/29と記載されているとおり2007年8月29日であり、乙第6号証に添付ものは右上部枠内に発行日が2007/9/26と記載されているとおり2007年9月26日であり、乙第7号証に添付ものは右上部枠内に発行日が2007/9/28と記載されているとおり2007年9月28日であり、また、乙第8号証に添付ものは右上部枠内に発行日が2007/8/23と記載されているとおり2007年8月23日である。
このことは、本件審判請求されることを知る前から本件登録商標について、副資材指図書に記載の下札につき具体的な準備を行っており、これに基づいて乙第4号証ないし乙第8号証の各発注書(発注書No:710260047、710260048、710260049、710260059、710260060)のとおりの使用がされたものである。
したがって、乙第4号証ないし乙第8号証に示す本件登録商標の使用は、商標法第50条第2項の但し書きの適用を受けることのできる使用に当たるものである。
なお、もしもこの提出した各発注書及び副資材指図書では証明が不充分であるとされるのであれば、他の資料を補足する用意があることを申し添えます。
(4)以上のとおりであるから、乙第2号証及び乙第4号証ないし乙第8号証により商標権者による本件登録商標が本件審判請求の登録日前3年以内における使用した事実は明確に証明さているところである。
なお、請求人が求めている原本の提出等については、前記したとおり必要性のないものである。
また、請求人は証人としては被請求人の社員小勝伊佐男でなく御子柴誠氏とすべきである旨述べているが、乙第2号証は前記したとおり何ら疑問、矛盾のない証明書であるから敢えて証明者を証人とする必要性はないものである。
また、被請求人が社員小勝伊佐男を証人としての用意があるとしたのは、乙2号証のみならず乙第4号証ないし乙第8号証において本件登録商標が使用されていること及びその他においても本件登録商標の使用実態を熟知している者であることによる。
(5)最後に、本件商標は、乙第1号証の1に示すように、昭和61年7月30日設定登録されたもので、その後現在に至るまで継続して使用しているもので強く保護されるべき商標である。
そして、その使用実績は、本件登録商標が本審判事件登録日前3年以内から現在まで至るまでにおいて、前記乙第2号証および乙第4号証ないし乙第8号証以外にも主力商品に使用しているものであり、その使用証明も提出する用意がある。
また、本件登録商標が本審判事件登録日前3年以前における継続使用の実績を示して、本件商標がより保護されるに値するものであることを証明する用意もある。

第4 当審の判断
1 不使用取消審判
商標法第50条第1項に規定された「商標登録の取消しの審判」にあっては、その第2項において、その審判の請求の登録(本件の場合、平成19年10月5日)前3年以内に日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかがその請求に係る指定商品又は指定役務のいずれかについての登録商標の使用をしていることを被請求人が証明しない限り、その指定商品又は指定役務についてその登録商標の使用をしていないことについて正当な理由があることを明らかにした場合を除いて、商標権者は、その指定商品又は指定役務に係る商標登録の取消しを免れないとされている。

2 被請求人提出の証拠
乙第2号証は、東京都千代田区二番町8番地8に所在する請求外「イトーヨーカ堂」婦人衣料部、スーツコート担当バイヤーの「御子柴 誠」の商標権者である被請求人の東京都中央区日本橋蛎殻町二丁目15番5号に所在する「クロスプラス」が本件審判の請求の登録前である2007年2月15日から同年3月5日に本件商標を付して婦人用オーバーコートを納品したとする証明書であるが、その書面の作成自体は、クロスプラス総務部兼マーケティング室室長の「小勝 伊佐夫」が作成したものをイトーヨーカ堂の「御子柴 誠」が押印する形で作成されたものである。
乙第2号証1枚目は、2007年1月26日を発行日とするイトーヨーカ堂が作成した「発注書」であり、そこには、商品名「シングル変形ステッチトレンチ99」、「発注期間 2007年2月15日?2007年3月5日」、「お取引先品番:41083」、「売場分類 243婦人スーツ・コート」、「品揃え分類:6010婦人綿・合繊コート」、「品番 7010」、「数量:3,000」、「お取引先名 クロスプラス(株)東京支店 殿」、「お取引先コード 001-574568」、「BY名:御子柴 誠」、「BY」欄に押印による「婦人BY’07.2.1 御子柴」、一覧表中の4件目に「単品コード 45-42862-64050-6」、「コード 色 003」、「名称 V灰 9号」の表示がある。
同2枚目は、被請求人が作成した「副資材指図書」であるが、そこには、「BRAND SHIFONERY」「<HANG TAG> 表面 SHIFONERY」、「<HANG TAG> 裏面 No.841083 表地 ポリエステル 100%」、「商品名 強燃ヴィンテージシングルトレンチ」、「COL. 03 Lグレー」、「SIZE 9AR 11AR 13AR」が記載されている。
したがって、前記2枚目の「副資材指図書」の「<HANG TAG> 表面」の欄に、本件商標が表示され、同じく「副資材指図書」の「品番STYLE No.841083」の先頭の「8」を除く品番「41083」が前記1枚目のイトーヨーカ堂の「発注書」の管理番号である「お取引先品番」と一致すること、同じく「副資材指図書」の「商品名 強燃ヴィンテージシングルトレンチ」と「発注書」の「シングル変形ステッチトレンチ99」が「トレンチコート」に属することで符合すること、同じく「副資材指図書」の「SIZE 9AR」が「発注書」の「9号」と符合すること、同じく「副資材指図書」の「COL.03 Lグレー」が上記「003 V灰」と対応していること等の点において両者は符合する。
同3枚目は、トレンチコートと見られる荷姿写真、及び、その襟ネーム部分の拡大写真と推察され、そこには、本件商標とほぼ同一の商標が付され、前記1枚目、2枚目に記載の商品「トレンチコート」と符合する。
同4枚目は、EDIシステムの仕入れデーターであるが、そこには、一覧表の4件目に「売場分類 243」、「品揃 6010」、「品番 7010」「JANコード 4542862640506」、「商品名 シングルトレンチ99 Vグレー 9ゴ」、「カラー Vグレー」、「サイズ 9ゴ」、「取引先コード 574568」が記載されているが、上記1枚目の「発注書」の「売場分類 243婦人スーツ・コート」、「品揃え分類:6010婦人綿・合繊コート」、「品番 7010」、「単品コード 45-42862-64050-6」、「名称 V灰 9号」、「お取引先コード 001-574568」と符合する。
乙第3号証1枚目は、本件審判の請求の登録前である2006年11月16日を発行日とする「発注書」であり、商品名「カルゼビット使いダッフルコート69」とあり、発注期間が2006年11月9日?2006年12月31日とあり、2,703着、お取引先品番:41061とあり、これがイトーヨーカ堂より、発注されたことが認められる。
乙第4号証1枚目は、本件審判の請求の登録後である2007年10月26日を発行日とする「発注書」であり、商品名「ソーラーセンサーキルトコート88」とあり、イトーヨーカ堂より、発注されたことが認められる。
また、同2枚目は、「副資材指図書」であり、「<HANG TAG> 表面」の欄に本件商標が記載されており、タグの表面として、本件商標が付されている。
乙第5号証1枚目は、本件審判の請求の登録後である2007年10月26日を発行日とする「発注書」であり、商品名「脇ダイヤキルトダウンコート85」とあり、イトーヨーカ堂より、発注されたことが認められる。
また、同2枚目は、「副資材指図書」であるが、そこには、ブランドとして本件商標が記載されており、タグの表面として、本件商標が付されている。
乙第6号証1枚目は、本件審判の請求の登録後である2007年10月26日を発行日とする「発注書」であり、商品名「パイピング使いロングダウン90」とあり、イトーヨーカ堂より、発注されたことが認められる。
また、同2枚目は、「副資材指図書」であり、ブランドとして本件商標が記載されており、タグの表面として、本件商標が付されている。
乙第7号証1枚目は、本件審判の請求の登録後である2007年10月26日を発行日とする「発注書」であるが、そこには、商品名「アンゴラカルゼスタンダードコート88」とあり、これがイトーヨーカ堂より、発注されたことが認められる。
また、同2枚目は、「副資材指図書」であるが、そこには、「<HANG TAG> 表面」の欄に本件商標が記載されており、タグの表面として、本件商標が付されている。
乙第8号証1枚目は、本件審判の請求の登録後である2007年10月26日を発行日とする「発注書」であるが、そこには、商品名「アンゴラ横100ロングコート96」とあり、これがイトーヨーカ堂より、発注されたことが認められる。
また、同2枚目は、「副資材指図書」であるが、そこには、「<HANG TAG> 表面」の欄に本件商標が記載されており、タグの表面として、本件商標が付されている。

3 証拠の検討
上記2のとおり、乙第2号証1枚目ないし4枚目は互いに符合することから、証拠として採用したところ、以下の事実が認められる。
イトーヨーカ堂から、被請求人「クロスプラス」宛へ、2007年2月15日?2007年3月5日を発注期間として、トレンチコートである商品名「シングル変形ステッチトレンチ99」が、「数量:3,000」のうち、「色 003」「V灰」「9号」「数量 270」等の規格のものが発注され、本件審判の請求の登録前である「納品日 20070219」に納品になったことが認められる。
また、2枚目の「副資材指図書」には、品番「841083」に係る「トレンチコード」の下札として、本件商標「SHIFONERY」に係るタグ「SHIFONERY」が2007年1月に製造されたことが認められる。
なお、乙第3号証は、1枚目(発注書)の商品と2枚目(副資材示図書)の商品が別の商品であり、乙第4号証ないし乙第7号証は、本件審判の請求の登録後の事実であるから、証拠として採用し得ないものとした。

4 結び
したがって、本件商標は、その審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、商標権者により、その請求に係る指定商品中の上記商品について使用したものであるから、商標法第50条第1項の規定により、その登録を取り消すべきでない。
なお、請求人は、口頭弁論において、乙第2号証4枚目の撮影対象の服の確認を主張しているが、該写真が格別不自然ということができないところであり、被請求人の答弁の趣旨及び上記認定のとおり乙第2号証として提出された証拠によって、本件商標の使用事実を十分に確認できるところであるから、請求人の主張は採用しないものとする。
よって、結論のとおり審決する。
別掲
(この書面において著作物の複製をしている場合のご注意)
審理終結日 2008-08-04 
結審通知日 2008-08-08 
審決日 2008-08-19 
出願番号 商願昭59-35778 
審決分類 T 1 31・ 1- Y (125)
最終処分 不成立  
特許庁審判長 渡邉 健司
特許庁審判官 酒井 福造
鈴木 修
登録日 1986-07-30 
登録番号 商標登録第1877482号(T1877482) 
商標の称呼 シフォネリー 
代理人 岩瀬 吉和 
代理人 北口 貴大 
代理人 綿貫 達雄 
代理人 山本 文夫 
代理人 森 智香子 
代理人 城山 康文 

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ