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審決分類 審判 一部無効 商4条1項15号出所の混同 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Y30
管理番号 1190804 
審判番号 無効2008-890005 
総通号数 110 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2009-02-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 2008-01-15 
確定日 2008-12-22 
事件の表示 上記当事者間の登録第5049909号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第5049909号の指定商品中、第30類「ぎょうざ、サンドイッチ、しゅうまい、たこやき、肉まんじゅう、ハンバーガー、ピザ、べんとう、ホットドッグ、ミートパイ、ラビオリ」についての登録を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5049909号商標(以下「本件商標」という。)は、「あぐー」の文字を横書きしてなり、平成18年6月8日に登録出願、第30類「菓子及びパン,アイスクリーム用凝固剤,家庭用食肉軟化剤,ホイップクリーム用安定剤,食品香料(精油のものを除く。),茶,コーヒー及びココア,氷,調味料,香辛料,コーヒー豆,穀物の加工品,ぎょうざ,サンドイッチ,しゅうまい,すし,たこ焼き,肉まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,べんとう,ホットドッグ,ミートパイ,ラビオリ,イーストパウダー,こうじ,酵母,ベーキングパウダー,即席菓子のもと,酒かす」を指定商品として平成19年5月25日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
請求人が引用する登録第3231695号商標(以下「引用商標」という。)は、毛筆風の「あぐー」の文字を横書きしてなり、平成5年10月4日に登録出願、第29類「食肉,食用魚介類(生きているものを除く。),肉製品,かつお節,寒天,けずり節,とろろ昆布,干しのり,干しひじき,干しわかめ,焼きのり,その他の加工水産物,豆,加工野菜及び加工果実,卵,加工卵,乳製品,食用油脂,カレー・シチュー又はスープのもと,なめ物,お茶漬けのり,ふりかけ,油揚げ,凍り豆腐,こんにゃく,豆乳,豆腐,納豆,食用たんぱく」を指定商品として平成8年12月25日に設定登録され、その後、平成18年8月1日に商標権の存続期間の更新登録がされているものである。

第3 請求人の主張の要点
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由及び被請求人の答弁に対する弁駁の理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第50号証を提出している。
1 請求の理由
(1)審判請求の経緯
請求人は、平成19年4月26日、指定商品を「豚肉入りぎょうざほか」とする商標登録出願(商願2007-041999)を行ったが、本件商標を理由に拒絶理由通知を発せられたものである。請求人所有に係る引用商標は、本件商標の先出願にかかるものであって周知・著名な商標であり、両商標は類似しているため、その登録を取り消されるべき商標である。以下に、その理由を述べる。
(2)商標法第4条第1項第10号及び同項第15号に関する主張
(ア)商標の類似
引用商標は、上記第2のとおり、若干特徴のある書体で横書きされた平仮名で「あぐー」と表記されており、「アグー」の称呼を生ずるものである。
一方、本件商標は、上記第1のとおり、ゴシック体で横書きにされた平仮名で「あぐー」と表記されており、「アグー」の称呼を生ずる商標であり、文字の構成は引用商標と同一である。したがって、本件商標と引用商標とは特定の観念は生じないが、文字の構成を同じくし、称呼を同一とする類似商標である。
(イ)指定商品の類似
ここで、本件商標の指定商品のうち、「ぎょうざ、サンドイッチ、しゅうまい、たこ焼き、肉まんじゅう、ハンバーガー、ピザ、べんとう、ホットドッグ、ミートパイ、ラビオリ」(以下、「本件商品」という。)と引用商標の指定商品とを比較検討してみると、両商品は、原材料と加工品の関係にあり、デパートやスーパーなどの小売店においては本件商品を冷凍した商品やレトルトパウチした商品が食肉売場と隣接した売場で販売されている場合が多く、両者は同じ食料品売場で販売されている。
また、両商品を購入するのはそのほとんどが主婦や独身の成年男女等であることが推定され、両者の需要者層も一致する。以上から、本件商品と引用商標の指定商品とは類似する商品であるといえる。
(ウ)引用商標の使用による著名性の獲得
請求人は、引用商標を登録以前から現在に至るまで、10年以上にわたり指定商品「食肉」など(以下「請求人商品」という。)に使用してきた。また、請求人商品はその品質を維持するにあたり大量生産できるものではなく、希少価値の高い商品であり、その品質・価格・流通経路などは一般的な食肉製品とは異なっている(甲第5号証及び甲第6号証)。
請求人は、品質を維持・管理するため、飼料の種類、出荷体重量の指定などの品質定義や、生産、屠畜、販売に関する規定などを細かく定め、請求人の認定した商品にラベルを付して販売するなどのブランド構築・維持のために様々な活動を継続的に行ってきた。
このような、品質を重視した販売活動の結果、引用商標を使用した請求人商品は、いわゆる高級ブランド食肉といわれるまでに成長を遂げた。このブランド力は、請求人の宣伝・周知活動、品質維持のための努力など様々な活動を長期間にわたり費用、労力をかけて行い培われてきたものである。また、一般的に高級ブランド食肉と呼ばれる銘柄においては、その品質や価格帯の違い、流通量がさほど多くはないなどの事情から希少価値が高く、需要者におけるブランドへの関心は高いものとなっている。さらに、請求人商品は流通量が少ないことなどからその大半が沖縄県内で流通消費されているが、現在では沖縄県の観光特産品としても注目されるようになっている(甲第7号証ないし甲第15号証)。
実際に、沖縄県のホテルにおいて、請求人商品を食することができる旨アピールする広告宣伝などからも、観光特産品としての請求人商品の注目の高さを知ることができる(甲第16号証)。
上述のとおり、引用商標は、10年以上にわたり継続して使用されてきた商標であり、本件商標が出願された平成18年6月8日よりも前には著名な商標となっていたものである。
(エ)需要者による誤認混同のおそれ
一般的に、請求人商品のような高級ブランド食肉といわれる商品は、廉価販売を目的とされる輸入食肉などの一般商品とは異なり、商品の差別化を図ることができ、商標における顧客吸引力が高いものである。それゆえに、本件商品に高級ブランド食肉を使用していることをアピールし購買意欲を高めようとすることは一般的に行われていることであり、例えば、高級ブランド食肉を使用した弁当、ぎょうざ、しゅうまいなど、どのような材料を使用しているかを需要者にアピールする販売活動からもこれらのことがいえる(甲第17号証ないし甲第20号証)。
また、昨今の食品偽装問題、輸入食品の農薬残留問題などの食に関するマスコミ報道などの影響により、需要者にとって食品の生産地や原材料などについては関心の高いところである。このような需要者の動向のもと、著名である引用商標と類似する本件商標が本件商品に使用された場合、需要者に対し請求人商品を使用している旨の誤解を与えたり、請求人又は請求人と経済的・組織的に何らかの関係のある者の業務に係るものであるかの如く誤認混同を生じさせたりするなどして、需要者の利益を保護するという商標法の目的を逸脱することとなる。
(オ)小括
上述のとおり、本件商標は、その登録出願時以前より継続的に使用され著名性を有する商標である引用商標と類似し、本件商品と引用商標の指定商品は類似していることから、商標法第4条第1項第10号に該当する商標である。また、本件商標は、仮に同号に該当しないと判断された場合であっても、需要者に対し商品の出所に関して誤認混同を生じさせ、市場に混乱をきたすものであることから、商標法第4条第1項第15号に該当するものである。
(3)商標法第4条第1項第19号に関する主張
被請求人は、沖縄県糸満市に所在し、観光土産品菓子卸売、民芸品製造販売、酒類卸売などを業としており、観光関連産業に従事している(甲第21号証)。
したがって、被請求人は、沖縄県の観光特産品として注目されるまでに至った引用商標「あぐー」の著名性、顧客吸引力の高さについても十分に認識しているものと推認されるが、被請求人の商品に引用商標と類似する本件商標が使用された場合、商品の出所識別機能の希釈化を招いたり、仮に、品質の劣る商品に使用された場合には、請求人は、引用商標に化体した信用やイメージを著しく損ねたりするなどの不利益を被ることになり、一方では被請求人は、引用商標の著名性に便乗することにより不正の利益を得ることとなる。
このような、著名性を有する引用商標と類似する本件商標を自社商標として登録し、その指定商品に本件商標を使用する行為は、不正の目的を持って使用するものというべきものであるから、本件商標は商標法第4条第1項第19号に該当するものである。
(4)まとめ
以上のとおり、本件商標は、その指定商品中「ぎょうざ、サンドイッチ、しゅうまい、たこやき、肉まんじゅう、ハンバーガー、ピザ、べんとう、ホットドッグ、ミートパイ、ラビオリ」については、商標法第4条第1項第10号、同項第15号及び同項第19号に該当する商標であり、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とされるべきものである。
2 弁駁の理由
(1)引用商標の周知性について
被請求人は、本件商標の登録出願時及び登録時において引用商標が周知ではなかった旨主張しているが、当該主張は誤りであるので以下にその理由を述べる。
(ア)引用商標の広告宣伝活動、管理活動について
請求人組合は、平成5年10月4日に引用商標を出願し、同8年12月25日に設定登録を受けている。
そして、請求人組合及びその組合員(以下「組合員」という。)は、引用商標の広告宣伝活動に「ラベル」(甲第22号証及び甲第23号証)、「チラシ」(甲第24号証ないし甲第26号証)、「認定証」(甲第27号証)等を使用・発行し様々な周知活動を行ってきた(甲第28号証及び甲第29号証)。
また、請求人組合及び組合員は「JAおきなわ銘柄豚推進協議会」を設立し、「生産出荷者認定証」(甲第30号証ないし甲第33号証)の発行、商標を許諾した生産者から「あぐー豚屠畜実績報告書」(甲第34号証)を徴求する等して引用商標の管理活動強化を図っている(甲第35号証ないし甲第40号証)。
(イ)引用商標(豚肉商品「あぐー」)が周知である客観的証拠
上記請求人組合の引用商標の周知活動の結果、請求人組合及び組合員が生産販売する「あぐー」は周知となっており、当該事実はインターネットや雑誌等の媒体から以下のとおり明らかである。
(a)(財)沖縄観光コンベンションビューロー(2003年「夏休み!沖縄わくわく体験キャンペーン」制作)のホームページによると豚肉商品「あぐー」が沖縄の名産品として紹介されている(甲第41号証)。
(b)観光客向けのグルメ情報ホームページ「しまグルメ」(2005年4月1日掲載)によると豚肉商品「あぐー」につき「県内外を問わずリピーターも多い」との記載がなされている(甲第42号証)。
(c)「月刊養豚情報」2005年3月号においては、請求人組合の組合員である(株)我那覇畜産(引用商標使用許諾権者、上記協議会委員)が「あぐー」種とバークシャー種を交配させた豚肉商品を生産している旨の記事が掲載されている(甲第43号証)。
(d)「うるま」(2005年8月号:甲第44号証)、「かりゆしライフ」(2007年冬号:甲第45号証)等においても、請求人組合員の豚肉「あぐー」に関する記事が掲載されている。
(e)ムサシノミート(株)ホームページによると「約7年前にあぐーに注目し、沖縄県下最大の規模を誇る(株)沖縄県食肉センター(請求人組合員・協議会委員)と提携、(沖縄)県外出荷の全てを販売することとなりました。」との記載がある(甲第46号証)。
(f)(株)カネマサミートのホームページでは請求人組合の組合員より豚肉「あぐー」を仕入れ販売活動をおこなっており、その証明として「あぐー証明書(平成18年1月10日発行)」を掲載している(甲第47号証)。
また、同ホームページが紹介する居酒屋では請求人発行の「あぐー証明書」を店頭に表示している(甲第48号証)。
さらに、(株)カネマサミートの取引先である株式会社琉球フロント沖縄のインターネットショップ「琉球健康倶楽部」でも請求人発行の「あぐー証明書」を提示して広告活動を行っている(甲第49号証)。
(g)引用商標の周知性については、公的機関である沖縄県(農林水産部)並びに那覇商工会議所が請求人組合に対し「周知証明書」を近日中に発行する予定となっている。請求人組合は、同証明書を取得し次第、追って提出する。
(ウ)まとめ
上記のとおり、引用商標は本件商標の登録出願及び登録以前より周知性を有していたことが明らかである。
(2)本件商標が公序良俗に違反すること、誤認混同のおそれがあること等について
(ア)被請求人は引用商標の周知活動を承知していたこと
被請求人は沖縄県の沖縄本島内に本店を有する株式会社であり、請求人が引用商標に関する広告宣伝活動を展開してきたことを当然承知している。その上、引用商標の存在も本件商標出願手続時に拒絶理由通知を受けており(甲第50号証)、請求人組合及び組合員が引用商標を使用して豚肉「あぐー」の販売促進活動を行っていたことを十分承知していた。
(イ)本件商標は引用商標の周知性へ便乗するものであること
また、乙第3号証の被請求人の商品のパッケージには豚の図柄が示されており、引用商標の豚肉商品「あぐー」の周知性に便乗し、引用商標の顧客吸引力を不正に利用しようとしていることが明白である。
そして、請求人は沖縄県内の農業従事者の組合組織であるところ、組合員である地元畜産業者のため振興を図るという請求人の公益的な施策によって得られたブランド価値に被請求人は便乗し、その遂行を阻害し、公共的利益を損なうことを知りながら、「あぐー」名称による利益の独占を図る意図で本件商標の登録をしたものといわざるを得ず、本件商標は、公正な競業秩序を害するものであって、公序良俗に反するものというべきである(東京高等裁判所平成11年11月29日判決:「母衣旗事件」同旨)。
(ウ)本件商標の使用が引用商標の価値を毀損するおそれがあること
また、請求人組合及び組合員の努力によって醸成された高級豚肉商品「あぐー」ブランドの周知性や信用に鑑みるならば、被請求人が本件商標を本件商品の一部のもの(例えば、せんべいなど)について使用する場合には、請求人組合及び組合員の取り扱う高級豚肉商品の価値、名声、イメージ等を損なうおそれを生じることを否定できず、本件商標登録はかかる観点からも公序良俗に反するものというべきである(知財高裁平成18年9月20日判決:「赤毛のアン事件」判決同旨)。
(エ)本件商標の使用は引用商標と出所の誤認混同が生じさせること
被請求人は沖縄県内において菓子類を販売しており、沖縄県の名産品として広告宣伝されている引用商標「あぐー」が被請求人商品に使用された場合、需要者の間に請求人組合や組合員らと何らかの関連のある者の商品である旨の誤認混同を生ずるおそれがあることは明白である。
(オ)まとめ
以上のとおり、本件商標は、その登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものである(商標法第4条1項7号)。
また、請求人商品と出所の誤認混同を生じるおそれがあり、さらに、被請求人は、引用商標の周知性に便乗して商標登録を行ったものであるから、不正な目的をもって使用するものというべきである。
(3)結語
以上に述べてきたとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同項第10号、同項第15号及び同項第19号に該当する商標であり、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とされるべきである。

第4 被請求人の答弁の要点
被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第10号証(枝番号を含む。)を提出している。
1 本件商標の商標法第4条第1項第10号該当性について
(1)商標法第4条第1項第10号の規定は、本件の内容に合わせて分説すると、(ア)引用商標が他人の業務に係る商品等を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標であること、(イ)本件商標と引用商標とが同一又は類似すること、(ウ)本件商標の本件商品と引用商標の使用に係る商品とが同一又は類似すること、が該当するための要件となる。
さらに、商標法第4条第3項の規定によれば、本件商標の登録査定時のみならず出願時においても、上記要件を満たすことが必要である。
(2)そこで、本件について考察するに、本件商標が平仮名で「あぐー」と書してなると共に、引用商標が若干装飾化等したものであるが平仮名で「あぐー」と書してなるものであるから、本件商標と引用商標とが共に「アグー」の称呼を生ずるので、称呼、観念、外観のうち、称呼との関係において、非類似の商標と認定することは困難であるものと認める。このため、本件商標は、商標法第4条第1項第10号の規定の該当要件のうち、上記(イ)の要件を満たしうることは認める。
(3)しかしながら、本件商標に係る本件商品「ぎょうざ,サンドイッチ,しゅうまい,すし,たこ焼き,肉まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,べんとう,ホットドッグ,ミートパイ,ラビオリ」と引用商標に係る指定商品とは非類似の関係にあるので、本件商標は、商標法第4条第1項第10号の規定の該当要件のうち、上記(ウ)の要件を満たさないものである。
すなわち、乙第1号証として示す「『商品及び役務の区分』に基づく類似商品・役務審査基準」によれば、本件商品は、いわゆる類似群コード「32F06」に属し(乙第1号証の1)、引用商標に係る指定商品「食肉,食用魚介類(生きているものを除く。),肉製品,かつお節,寒天,けずり節,とろろ昆布,干しのり,干しひじき,干しわかめ,焼きのり,その他の加工水産物,豆,加工野菜及び加工果実,卵,加工卵,乳製品,食用油脂,カレー・シチュー又はスープのもと,なめ物,お茶漬けのり,ふりかけ,油揚げ,凍り豆腐,こんにゃく,豆乳,豆腐,納豆,食用たんぱく」は、類似群コード「31C01、31D01、32A01、32B01、32C01、32F01、32F02、32F04、32F05、32F07、32F10、32F11、32F12、33A01、33A02」に属するもので(乙第1号証の2)、両商品は非類似商品であるとして永年にわたって扱われてきたものである。
確かに、この類似商品・類似役務審査基準は、「本基準において□(四角カッコ)で囲った見出しの商品又は役務に含まれるものは、原則として、互いに類似商品又は類似役務と『推定』するもの」であり、「本基準で『類似』と推定したものでも『非類似』と認められる場合又はその逆の場合もあり得ます。」の運用もされている(乙第1号証の3)。
しかしながら、請求人が、本件商品と引用商標に係る指定商品とが類似する根拠として示す基準は、乙第2号証に示されるように、商標法第4条第1項第11号の審査基準における商品の類否判断の基準(乙第2号証の1)を踏襲しているにすぎず、このような基準を考慮することなく、この類似商品・類似役務審査基準が定められているとは到底判断することができないので、請求人の主張は独自の見解を述べたもので失当である。
もし、本件商標に係る本件商品と引用商標に係る指定商品とが、上記商品の類否判断の基準に照らして類似するのであれば、引用商標が本件商標よりも先出願で先登録であるから、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当するとして拒絶されていたはずである。
(4)また、請求人は、引用商標との関係において、甲第5号証ないし甲第16号証を提出しているが、甲第5号証は、「JAおきなわ銘柄豚推進協議会設立総会」の会合の内容を示し、甲第6号証は、「JAおきなわ銘柄豚推進協議会」の事務局専門委員会の内容を示すもので、これから銘柄豚「あぐー」商標について請求人による管理化を図ろうとする内容を示すにすぎず、これらの証拠をもって商標「あぐー」が沖縄県農業協同組合の所有する商標として周知になっていることを立証することはできないものである。
しかも、本件商標の出願日が平成18年(2006年)6月8日、登録査定日が平成19年(2007年)4月12日であるところ、甲第5号証の総会は平成19年10月19日に開かれ、甲第6号証の事務局専門委員会はその書類に平成19年12月17日現在とあるので、その日付を基準とすべきあり、いずれの日付も本件商標の出願日どころかその登録査定時よりも後日であるから、本件商標の出願時と登録査定時との双方における引用商標の周知の事実を立証するものとはなっていない。
さらに、甲第8号証ないし甲第11号証も、甲第5号証の「JAおきなわ銘柄豚推進協議会」の発足を話題としているため、平成19年10月19日以後にインターネットのホームページに掲載されたものと理解されるので、いずれも本件商標の登録査定時の平成19年4月12日よりも後日のものである。よって、これらの証拠も、本件商標の出願時と登録査定時との双方における引用商標の周知の事実を立証するものとはなっていない。
また、甲第14号証として示すホームページは、その下から3行目において、「2007年11月」との記載があり、第16号証として示すホームページは、左側に「2007年12-1月号」とあるので、これらの日付を基準とすべきあり、いずれの日付も本件商標の出願日どころか登録査定時よりも後日の事実しか示していない。よって、これらの証拠も、本件商標の出願時と登録査定時との双方における引用商標の周知の事実を立証するものとはなっていない。
これに対し、甲第12号証、甲第13号証及び甲第15号証として示すホームページは、いずれも日付の記載がないので、このホームページを印刷した日付である「2008/1/11」を基準として判断すべきであり、いずれの日付も本件商標の出願日どころか登録査定時よりも後日の事実しか示していない。よって、これらの証拠も、本件商標の出願時と登録査定時との双方における引用商標の周知の事実を立証するものとはなっていない。
なお、甲第18号証ないし甲第21号証は、引用商標に関する記載がなされていないので、引用商標の周知の事実を立証しないことは明白である。
してみると、本件商標の出願時前の日付が記載されているのは、甲第7号証として示すホームページであるが、この甲第7号証は、2006年1月13日から「あぐーの豚まん」を銀座わしたショップ限定で販売することのみについて示しているにすぎない。
ましてや、請求人は審判請求書において「請求人商標を登録以前から現在に至るまで10年以上にわたり指定商品『食肉』などに使用してきた」と述べているが、この10年以上の使用に関しては何ら証拠を提出しないものでその立証が図られているとはいえない。
しかるに、乙第2号証に示す商標審査基準によれば、商標法第4条第1項第10号の「周知性の立証方法及び判断」は、同法第3条第2項のいわゆる特別顕著性の立証方法と判断を準用する旨が記載されていること(乙第2号証の2)を考えるに、「乙第7号証」のみでは、本件商標の出願時と登録査定時との双方における、引用商標の「周知性の立証」がなされたとは到底認められるものではない。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号の規定の該当要件のうち、上記(ア)の要件も満たさないものである。
(5)以上より、本件商標が本件指定商品において商標法第4条第1項第10号に該当しないことは明確である。
2 本件商標の商標法第4条第1項第15号該当性について
(1)商標法第4条第1項第15号の規定は、本件の内容に合わせて説明すると、「他人たる沖縄県農業協同組合の業務に係る商品と混同を生ずるおそれがある商標(第10号から第14号までに掲げるものを除く。)であること」が該当するための要件となる。
さらに、同法第4条第3項の規定によれば、本件商標の登録査定時のみならず出願時においても、上記要件を満たすことが必要である。
(2)ここで、商標法第4条第1項第15号に該当するためには、非類似商品、非類似役務間での具体的な出所の混同防止規定であることから、引用商標は、周知の程度では足りず著名まで至っていなければならないところ、上述したように、引用商標は、本件商標の出願時又は登録査定において、周知とは認められないので、まして著名まで至っているとは到底いうことができない。
しかも、引用商標が、乙第2号証に示す商標審査基準の「他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標」の判断基準(乙第2号証の3)によれば、上記のように「標章の周知度」が不十分であるばかりか、「創造商標」ではなく、請求人の「ハウスマーク」にも該当しないものであり、請求人における多角経営の可能性も否定され、さらには、商品間の関連性も非類似商品同士であるため低いものである。
以上より、本件商標が商標法第4条第1項第15号に該当しないことは明確である。
3 本件商標の商標法第4条第1項第19号該当性について
(1)商標法第4条第1項第19号の規定は、本件の内容に合わせて分説すると、(ア)引用商標が請求人の業務に係る商品等を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標であること、(イ)不正の目的(不正の利益を得る目的、請求人に損害を与える目的、その他の不正の目的をいう。)をもって使用をするもの(第1号から第18号までに掲げるものを除く。)であること、が該当するための要件となる。
さらに、同法第4条第3項の規定によれば、本件商標の登録査定時のみならず出願時においても、上記要件を満たすことが必要である。
(2)この点、「JAおきなわ銘柄豚推進協議会」の発足が平成19年10月19日であって、請求人が商標「あぐー」の管理を開始したのは5ヶ月ほど前にすぎないのであるから、請求人の提出した全ての証拠を考慮しても、商標「あぐー」は、本件商標の出願時と登録査定時とのいずれにおいても、需要者の間において、請求人たる「沖縄県農業協同組合」の業務に係る商標として、全国的に知られていたとは認められない。
しかも、本件商標の出願日は、「JAおきなわ銘柄豚推進協議会」の発足よりも約1年半も前であって、被請求人自身も「菓子(せんべい)」について乙第3号証のホームページに示すように商標「アグー」を適正に使用しているので、引用商標「あぐー」の出所表示機能を希釈化させたり、請求人の名声等を毀損させたりする目的をもって出願したものではないことは明白であるから、被請求人に「不正の目的」があったとの請求人の主張は失当である。
以上より、本件商標が商標法第4条第1項第19号に該当しないことは明確である。
4 弁駁に対する答弁
(1)商標法第4条第1項第10号の該当性について
(ア)本件商標の指定商品と請求人商標の使用する商品との類非
商標法第4第1項第10号の規定の該当要件の1つとして、前回の審判事件答弁書に示されるように、本件商標の本件商品と請求人商標の使用する商品とが同一又は類似であることが挙げられる。
そして、請求人の審判請求書の「無効原因」で言うところの請求人商標とは、登録第3231695号に係る登録商標であるところ、本件商標の出願段階において、当該請求人商標を引例として商標法第4条第1項第11号に該当するとの拒絶理由通知を受けたものの(甲第50号証を参照。)、乙第4号証に示されるように、被請求人が指定商品を補正すると共に本願商標の指定商品と請求人商標の指定商品とが非類似になったとの意見書での主張が認められたので、商標登録されたとの経緯がある。
(イ)そうだとすると、本件商標の登録時の指定商品と請求人商標の使用する商品(請求人商標の指定商品と同じ。)についても同様に非類似の関係にあると理解するのが妥当であるから、請求人商標の周知性について争うまでもなく、本件商標は、請求人商標との関係において、商標法第4条第1項第10号に該当しないとするのが相当である。
(2)商標法第4条第1項第15号の該当性について
(ア)「あぐー」の商品「食肉,肉製品」における著名性の疑義
商標法第4条第1項第15号の規定は、商品・役務の類似範囲を越えての出所の混同の有無を問題とするものであるから、請求人商標は商標法第4条第1項第10号で求められる周知性以上の高度の周知性(便宜上、以下、著名性と称する。)を求められるとするのが相当である。
そして、先に提出した乙第2号証の3では、商標法第4条第1項第15号の「(イ)その他人の標章の周知度」に関する立証方法については、第3条第2項の規定の一部を準用するとあるところ、平成17年(行ケ)第10673号審決取消請求事件「ひよ子の立体商標事件」の判決文(乙第5号証)の「当裁判所の判断」に示されるように、商標法第3条第2項の適用においてすら「全国的な周知性の獲得」が条件になっている。
また、商標法第4条第1項第19号の「不正の目的」の判断基準の中で、特許庁の審査基準では、乙第6号証に示されるように、「日本国内で商品・役務の分野を問わず全国的に知られているいわゆる著名商標」と、「著名商標」の定義づけがされている。
このことから考えて、商標法第4条第1項第15号の適用でも、著名性の地域的判断については、沖縄県等の一部地域の需要者に広く知られているのみならず全国的な著名性の獲得が条件になるものと考えるのが相当である。
そうだとすると、この度の弁駁書で追加的に提出されてきた証拠について考察するに、甲第22号証から甲第40号証、甲第46号証及び甲第47号証においては、いずれも沖縄県内における請求人及びその組合員、並びに関係団体の活動が示されているにすぎず、且つ甲第41号証から甲第45号証、及び甲第49号証は沖縄県内の団体のホームページや沖縄県限定の書籍であるから、これらの証拠により「あぐー」が全国的な著名性の獲得を得ていると認定することはできないとするのが妥当である。
ましてや、甲第41号証から甲第44号証、甲第46号証、甲第47号証、甲第49号証以外の証拠においては、日付がないか、甲第28号証での平成20年2月29日の日付等、本件商標の出願日(平成18年(西暦2006年)6月8日)以後の日付のものであり、これらの甲第41号証から甲第44号証、甲第46号証、甲第47号証、甲第49号証では、先に提出した甲第2号証の3に示す判断基準からして、本件商標の出願時における「あぐー」の沖縄県内での周知性の立証すらできないものであると言わざるを得ない。
しかも、乙第7号証として示す琉球新聞(2008年9月4日号)によれば、「JAおきなわ(伊波栄雄理事長)などで構成するブランド豚推進協会(会長・赤嶺幸信県畜産課長)は琉球在来豚(アグー)を生産する養豚農家の認証制度を本年中に確立する方向で作業を進めている。」とあることから、2008年9月4日現在においても「認証制度」は確立されていないとするのが相当である。
したがって、審判事件弁駁書の「答弁書の理由に対する反論」の「(1)請求人商標の周知性について」の「請求人商標の広告宣伝活動、管理活動について」における「『ラベル』や『認定証』の使用・発行し様々な周知活動を行ってきた」との記載についても、活動の程度や実効性について疑問が生ぜざるを得ない。
(イ)「あぐー」の商品「ぎょうざ,サンドイッチ,しゅうまい,たこやき,肉まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,べんとう,ホットドッグ,ミートパイ,ラビオリ」の使用による出所の混同のおそれの疑義
農業協同組合の事業は、農業協同組合法第10条に示す事業の規定により、対外的には、組合員の生産する物資の販売等に限定されており、正規組合員も「農業者」等に限られることから(農業協同組合法第12条)、この組合員の生産する物資についても、ほとんど「農産物」に限られるもので、このような農協の事業範囲は本件商品における需要者、取引者も十分に認識している。
すなわち、需要者、取引者が、農業協同組合自らが大々的に「ぎょうざ,サンドイッチ,しゅうまい,たこやき,肉まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,べんとう,ホットドッグ,ミートパイ,ラビオリ」までも製造、販売し又は将来的にする可能性や、農業協同組合の組合員に「ぎょうざ,サンドイッチ,しゅうまい,たこやき,肉まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,べんとう,ホットドッグ,ミートパイ,ラビオリ」までも製造、販売する業者があるとは、通常において認識しないとするのが相当である。
また、「あぐー」については、「有限会社今帰仁アグー」も「今帰仁アグー」の名称で「食用の豚肉」や肉製品を販売してきたという事実があり(乙第8号証)、商標「あぐー」が周知、著名であるかはとにかくとしてその商標主として沖縄県農業協同組合のみが直ちに結びつけられて認識されてきたかについても疑問が生ずる。
したがって、商標「あぐー」が商品「ぎょうざ,サンドイッチ,しゅうまい,たこやき,肉まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,べんとう,ホットドッグ,ミートパイ,ラビオリ」について使用されても、需要者、取引者が、沖縄県農業協同組合が製造、販売しているとか、沖縄県農業協同組合と経済的又は組織的に何等かの関係がある者が製造、販売しているとかの混同を生ずるおそれはないとすべきである。
(ウ)よって、被請求人が本件商標を商品「ぎょうざ,サンドイッチ,しゅうまい,たこやき,肉まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,べんとう,ホットドッグ,ミートパイ,ラビオリ」について使用しても、沖縄県農業協同組合の業務に係る商品と混同を生ずるおそれがないので、商標法第4条第1項第15号に該当しないとするのが相当である。
(3)商標法第4条第1項第19号の該当性について
(ア)「不正の目的」の解釈
不正の目的とは、「不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的」と定義されており(商標法第4条第1項第19号括弧書)、更に、本号が適用される具体的な想定例は以下のとおりである(乙第6号証)。
(a)外国において周知な他人の商標と同ー又は類似の商標について、我が国において登録されていないことを奇貨として、高額で買い取らせたり、外国の権利者の国内参入を阻止したり、国内代理店契約を強制したりする等の目的で先取り的に出願した場合。
(b)日本国内で商品・役務の分野を問わず全国的に知られているいわゆる著名商標と同一又は類似の商標について、出所の混同のおそれまではなくても出所表示機能を希釈させたり、その名声を毀損させる目的をもって出願した場合。
(c)その他日本内又は外国で周知な商標について信義則に反する不正の目的で出願した場合。
である。
(イ)そうだとすると、請求人商標が本件商標の出願時及び登録査定時の双方において周知、著名とは認められないばかりではなく、甲第50号証では本件商標権者が本件商標の出願後に拒絶理由通知によって請求人商標の登録の事実を知ったことは示されても、少なくとも出願時に不正の目的があったことを立証することはできないものである。
また、例えば審判請求人等から適正に購入した「あぐー」の豚肉を原材料として用いて「菓子」等を製造し、その菓子に「あぐー」の商標を付する場合には、例えばスナックの店名に「シャネル」を用いる事例(最高裁判所平成10年9月10日「スナックシャネル事件」)等とは異なり、何ら商標主の名声を毀損するおそれはないし、出所表示機能を希釈化することもない。
さらに、JAおきなわ銘柄豚推進協議会が設立されたのは、請求人の甲第9号証等に示されるように、本件商標の出願日(平成18年(西暦2006年)6月8日)よりも1年以上も後の2007年10月19日であり、2008年9月4日現在においても請求人の「あぐー」についての「認証制度」自体が確立されているとは言えないという状況下においては、本件商標の出願時において本件商標の商標権者が請求人の周知活動を承知していたとするのは甚だ不合理である。
このため、本件商標の商標権者の出願、商品の販売行為について何ら信義則違反も認められない。
(ウ)よって、被請求人が本件商標を商品「ぎょうざ,サンドイッチ,しゅうまい,たこやき,肉まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,べんとう,ホットドッグ,ミートパイ,ラビオリ」を指定商品として出願しても、被請求人の商標は出願時と登録時の双方において周知、著名ではなく、本件商標の商標権者に出願時と登録時の双方において不正の目的があったとは認められないので、商標法第4条第1項第19号に該当しないとするのが相当である。
(4)商標法第4条第1項第7号の該当性について
(ア)公序良俗違反の意義について
乙第9号証として提示する「東京高等裁判所 判決 平成15年5月8日 平成14年(行ケ)616号 商標登録取消決定取消請求事件」によれば、「商標の登録出願が適正な商道徳に反して社会的妥当性を欠き、その商標の登録を認めることが商標法の目的に反することになる場合には、その商標は商標法第4条第1項第7号にいう商標に該当することもあり得ると解される。」
その一方で、乙第9号証の事件の判決では、商標法第4条第1項第7号が「『公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標』として、商標自体の性質に着目した規定となっていること、商標法の目的に反すると考えられる商標の登録については同法第4条第1項各号に個別に不登録事由が定められていること、及び、商標法においては、商標選択の自由を前提として最先の出願人に登録を認める先願主義の原則が採用されていることを考慮するならば、商標自体に公序良俗違反のない商標が商標法第4条第1項第7号に該当するのは、その登録出願の経緯に著しく社会的妥当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合に限られるものというべきである。」ともされている。
そうだとすると、本件商標の商標権者の出願行為について、請求人の言うように単に「登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがある」程度では足りず、「その登録出願の経緯に著しく社会的妥当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合」当たるか否かを検討する必要がある。
この点、請求人の提示する裁判例の「母衣旗事件」では、被請求人の代表者が「人口2万1千人」しかない小さな町である石川町出身で同町内に住所も有していたことのみならず、石川町の母畑地区公民館その公民館だよりに「母衣旗」の名称を付して住民に配布していること等も総合的に判断していることを、請求人は看過しているもので、「本件商標の商標権者が沖縄県の沖縄本島内に本店を有している」ことのみをもって、本件商標の商標権者が「請求人商標の周知活動を承知していたこと」にはならないものである。
また、本件商標の商標権者の乙第3号証に示す商品のパッケージには豚の図柄を示しているところ、当該商品には「あぐー」を原材料の1つとして用いているもので、そのことを豚の図柄としてパッケージに示すのは商行為として良くなされるものであり、何らの問題も認められないことから、このことをもって請求人商標の豚肉商品「あぐー」の周知性に便乗し、同商標の顧客吸引力を不正に利用することに繋がるのか理解に苦しむものである。逆に、請求人等から正当に豚肉商品「あぐー」を購入して原材料とするのにも関わらず、「あぐー」やその豚の図柄をパッケージに一切使用することができないと言うのは、商品の流通秩序をかえって損なわせるものであり不当である。したがって、本件商標の商標権者の乙第3号証に示す商品のパッケージに豚の図柄を示す行為が著しく社会的妥当性を欠くとは認められない。
さらに、本件商標の商標権者の乙第3号証に示す商品のパッケージには「あぐー」の文字を用いているところ、「あぐー」について悪意的な使用をしておらず、且つ、「せんべい等」に「あぐー」を原材料として使用する行為は、「あぐー」を購入した者の自由の範疇にあるため、当然ながら著しく社会的妥当性を欠くとは言えないことから、請求人商標の価値を毀損させるとの正当な論理付けは導かれないので、ここでも請求人の主張は失当である。
なお、請求人の言うところの「本件商標の使用は請求人商標と出所の混同が生じさせる」かどうかは、商標法第4条第1項第15号という規定があるのでそちらで争うべきところであり、商標法第4条第1項第7号公序良俗違反で争うべきものではないことは、上記裁判例のみならず乙第10号証として示す下記する裁判例でも「商標法は、出願人からされた商標登録出願について、当該商標について特定の権利利益を有する者との関係ごとに、類型を分けて、商標登録を受けることができない要件を、法4条各号で個別的具体的に定めていることから、このことに照らすならば、当該出願が商標登録を受けるべきでない者からされたか否かについては、特段の事情がない限り、当該各号の該当性の有無によって判断されるべきであるといえる。」として示されているところである。
(イ)最新の裁判例の適用について
請求人は、商標「あぐー」について平成5年10月4日に出願し、平成8年12月25日に商標登録を受けた後、平成19年4月26日と、14年も経過した後に、第30類の「豚肉入りぎょうざ,豚肉入りサンドイッチ,豚肉入りしゅうまい,豚肉入りたこ焼き,豚肉まんじゅう,豚肉入りハンバーガー,豚肉入りピザ,豚肉入りべんとう,豚肉入りホットドッグ,豚肉入りミートパイ,豚肉入りラビオリ」を指定商品として「あぐー」の文字を有する商標について商標登録出願をしてきたものであるところ、本件商標が先出願・先登録されていたので、請求人が本来商標登録を受けるべき者であるとして本件商標登録無効審判を請求してきたものである。
この点、上記乙第10号証として示す裁判例では、「請求人が本来商標登録を受けるべき者か否かを判断するに際して、先願主義を採用している日本の商標法の制度趣旨や国際調和や不正目的に基づく商標登録出願を排除する目的で設けられた商標法第4条第1項第19号の趣旨に照らすならば、その趣旨から離れて、商標法第4条第1項第7号の『公の秩序又は善良の風俗を害するおそれ』を私的領域まで拡大解釈することによって商標登録出願を排除することは、商標登録の適格性に関する予測可能性及び法的安定性を著しく損なうことになるので、特段の事情のある例外的な場合を除くほか、許されないというべきである。」とされている。さらに、この裁判例では、「本来商標登録を受けるべきと主張する者との関係を検討して、例えば、本来商標登録を受けるべきと主張する者が、自らすみやかに出願することが可能であったにも関わらず、出願を怠っていたような場合は、出願人と本来商標登録を受けるべきと主張する者との間の商標権の帰属等をめぐる問題は、あくまでも当事者同士の私的な問題として解決すべきであるから、そのような場合にまで『公の秩序又は善良の風俗を害する』特段の事情がある例外的な場合と解するのは妥当でない。」とされている。
そうだとすると、請求人は、商標「あぐー」について平成5年10月4日に出願し、平成8年12月25日に商標登録を受けた後、14年も経過した後に第30類の「豚肉入りぎょうざ,豚肉入りサンドイッチ,豚肉入りしゅうまい,豚肉入りたこ焼き,豚肉まんじゅう,豚肉入りハンバーガー,豚肉入りピザ,豚肉入りべんとう,豚肉入りホットドッグ,豚肉入りミートパイ,豚肉入りラビオリ」を指定商品として「あぐー」の文字を有する商標について商標登録出願をしたものであり、請求人は出願を怠っていたと言わざるを得ない。
このため、請求人に対し出願における怠慢があるという状況下において、本件商標について「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある」として商標法第4条第1項第7号の該当性を認めるのは「公序良俗」をいたずらに私的領域まで拡大することから不当である。
(ウ)よって、被請求人の商標は、「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある」とは認められないので、商標法第4条第1項第7号に該当しないとするのが相当である。
(5)まとめ
以上のように、本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同項第10号、同項第15号、同項第19号のいずれの無効理由も有しないものである。

第5 当審の判断
1 引用商標の周知性について
(1)請求人の提出に係る証拠によれば、以下の事実が認められる。
(ア)請求人は、平成19年10月19日にJAおきなわ銘柄豚推進協議会設立総会を開催し、「あぐ?」の定義、引用商標の取扱い要領、JAおきなわ銘柄豚推進協議会会則、商標使用許諾契約書を定めた。上記「あぐ?」の定義によれば、「2.『あぐ?』は交配方式にあたり、琉球在来豚『あぐ?』の血液(雄方)50%以上を有する肉豚を言う。なお、種雄豚に関しては、『沖縄県ブランド豚推進協議会』において認定・登録されたものとする。3.『あぐ?』肉豚は沖縄県内にて繁殖生産され、肥育した去勢・雌肥育豚とする。」というものである。
そして、請求人は、上記「あぐ?」肉豚の品質を維持・管理するために、飼料の種類、出荷体重量、生産、屠畜、販売に関する規定などを細かく定めているほか、引用商標の使用・管理についても、詳細な規定を定め、ブランド構築・維持のために活動を行っている(以上、甲第5号証及び甲第6号証)。
(イ)請求人及びその組合員は、その取扱いに係る豚肉商品について、引用商標と同一の態様からなる標章を印刷したシールラベル、チラシ及び認定書を作成・発行して周知活動を行うと共に、引用商標の使用権者管理台帳を作成し実績報告書等を提出させるなど、商品の品質管理及び引用商標の使用管理を行っている(甲第22号証ないし甲第40号証)。
請求人がJAおきなわ銘柄豚推進協議会を立ち上げ、組合員と共に上記「あぐ?」肉豚のブランド化を官民連携で進めていることは、「沖縄タイムス」、「琉球新報」の各新聞で報道されたほか、請求人や沖縄県物産公社等のホームページでも紹介されている(甲第8号証ないし甲第16号証)。
(ウ)請求人がJAおきなわ銘柄豚推進協議会を設立して琉球在来豚「あぐー」のブランド化を積極的に開始したのは、上記のとおり、本件商標の登録出願後であるが、それ以前にも既に、琉球在来豚「あぐー」は幻の豚肉として沖縄県を中心に注目を浴び、2003年「夏休み!沖縄わくわく体験キャンペーン」で「琉球在来種黒豚あぐー」についての記事が制作され沖縄県観光情報WEBサイトに掲載されていたほか、2005年4月1日掲載の沖縄料理店のホームページには、「こちらのオススメは、最近耳にすることも多くなった『あぐー』。あぐーとは沖縄在来種の黒豚のことで、脂身は多いのに・・・。こちらでは注目され始める以前の2001年頃からいち早くあぐーの魅力に目をつけ、普及に力を入れてきたという。」と記載されている(甲第41号証及び甲第42号証)。
(エ)沖縄県名護市(株)我那覇畜産による「月刊養豚情報2005年3月号」には、「琉球在来種『アグー』から生まれる高級ブランド 夢馳せた『やんばる島豚』に全国が注目」の見出の下、「幻種の保存にも活発化」、「・・・その栄養価や味における価値が認められるようになり、最近では県産ブランドとして、さまざま機関や組織が種の保存と繁殖のための研究を行っている。・・・」等の説明がされている(甲第43号証)。
(オ)雑誌「OKINAWAN STYLE MAGAZINE うるま」2005年8月号では、琉球在来種「アグー」についての特集が組まれ、数頁に亘り記事が掲載され、「・・・沖縄県経済連である。西洋種と在来アグーをかけ合わせ、それをブランド化することによって在来アグーに経済的価値を持たせることに成功したのだ。・・・在来アグーから生まれたブランド豚『あぐー』。」等の記述がされている(甲第44号証)。
(カ)ムサシノミート株式会社のホームページには、「琉球在来豚あぐー」の見出の下に「・・・近年こうした貴重な島の伝統資源を保存していこうという活動が困難な問題を抱えつつも多くの人々の努力により続けられ、徐々にではありますが生産頭数が増えてきています。弊社は約7年前にこうした経緯の『あぐー』に注目し、沖縄県最大の規模を誇る(株)沖縄県食肉センターと提携、県外出荷の全てを販売することとなりました。」との記述がされている(甲第46号証)。
(キ)株式会社カネマサミートのホームページには、「あぐー沖縄県産豚肉の業務用販売PB・OEM商品加工」の表題の下に、「・・・テレビを見た観光客の方が、ガイドマップやホームページ、口コミなどをたよりに、わざわざお店を探してたずねてくる場合が多いなっているそうです。あぐーの知名度が、お店の来店数を増やすのに、一役かっているようですね。」等の記述がされ、平成18年1月10日付けの「沖縄県産あぐー証明書」の写真が掲載されている。該証明書には、生産者、屠畜・加工者の表示と共に、引用商標と社会通念上同一と認められる標章を記載した認証シール・ポスターが掲載され、その下段に「『あぐー』は商標登録された商品です」との記載がある(以上、甲第47号証)。
(ク)琉球健康倶楽部のホームページには、「幻の琉球豚あぐー」の表題の下に、「あぐー」についての説明がされ、上記(キ)と同様に、平成18年1月10日付けの「沖縄県産あぐー証明書」の写真が掲載されている(甲第49号証)。
上記甲第46号証、甲第47号証及び甲第49号証に係るホームページは、いずれも2008年4月28日にプリントアウトされたものと認められるが、その内容からすると、本件商標の登録出願前から引用商標が使用されていたことが推認されるものである。
(ケ)沖縄タイムス2006年1月13日(金)朝刊9面には、「あぐ?豚まん登場」の表題の下に、「県物産公社は13日から、沖縄産ブランド豚『あぐー』を材料に開発した『あぐーの豚まん』を銀座わしたショップ限定で販売する。・・・あぐーのラードが加わった皮には、JAおきなわの登録商標を示す『沖縄あぐー』の焼き印を入れた。製品はJAおきなわが材料を提供し、沖縄一心産業(那覇市、濱岡一善社長)が製造。・・・」と記述されている(甲第7号証)。
(2)以上の認定事実によれば、本件商標の登録出願時には既に、請求人及びその組合員が取り扱う豚肉は「あぐー」として沖縄県内で知られていたほか、沖縄を訪れる観光客の間に口コミで広がり、さらには沖縄物産商品のアンテナショップともいうべき「銀座わした」においても「あぐー」豚肉を材料とした商品が販売されるなどした結果、引用商標は、申立人の業務に係る商品「豚肉」を表示する商標として取引者、需要者の間に広く認識されていたものというべきである。
2 商品の出所の混同のおそれについて
本件商標に係る本件商品と引用商標が使用されている商品「豚肉」とは、原材料と加工品の関係にあり、現に請求人の業務に係る「豚肉」を材料にした「肉まんじゅう」や「ぎょうざ」が販売されているほか、デパートやスーパーマーケットの食料品売場では両者が隣接した場所で販売される場合が多く、両商品を購入する需要者層も共通しているなど、両者は密接な関係を有するものといえる。
そして、本件商標と引用商標とは、同一の平仮名から構成されるものであって、酷似したものである。
かかる事情の下において、本件商標をその指定商品中の本件商品について使用した場合には、これに接する取引者、需要者は、周知著名となっている引用商標ないしは請求人を連想、想起し、該商品が請求人又は同人と経済的・組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかの如く、その出所について混同を生ずるおそれがあるものというべきである。
3 まとめ
以上のとおり、本件商標をその指定商品中の「ぎょうざ、サンドイッチ、しゅうまい、たこやき、肉まんじゅう、ハンバーガー、ピザ、べんとう、ホットドッグ、ミートパイ、ラビオリ」(本件商品)について使用するときは、商品の出所について混同を生ずるおそれがあり、本件商標は、その指定商品中上記商品については、商標法第4条第1項第15号の規定に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項の規定に基づき、その登録を無効にすべきものである。
なお、念のため付言するに、請求人は当初主張していなかった本件商標の商標法第4条第1項第7号違背を弁駁書において新たに主張しているが、その主張は、明らかに請求の理由の要旨を変更するものであるから、採用することができないものである(商標法第56条第1項において準用する特許法第131条の2第1項参照)。
よって、結論のとおり審決する。
別掲
審理終結日 2008-10-24 
結審通知日 2008-10-28 
審決日 2008-11-10 
出願番号 商願2006-53608(T2006-53608) 
審決分類 T 1 12・ 271- Z (Y30)
最終処分 成立 
前審関与審査官 佐藤 達夫梶原 良子 
特許庁審判長 渡邉 健司
特許庁審判官 鈴木 修
井出 英一郎
登録日 2007-05-25 
登録番号 商標登録第5049909号(T5049909) 
商標の称呼 アグー 
代理人 特許業務法人大貫小竹国際特許事務所 
代理人 杭田 恭ニ 
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