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審決分類 審判 全部無効 称呼類似 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Y05
審判 全部無効 観念類似 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Y05
管理番号 1190727 
審判番号 無効2007-890184 
総通号数 110 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2009-02-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 2007-12-21 
確定日 2008-12-17 
事件の表示 上記当事者間の登録第4894068号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第4894068号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
本件登録第4894068号商標(以下「本件商標」という。)は、「キャベクリア」の文字を標準文字で表してなり、平成16年12月28日に登録出願され、第5類「薬剤」を指定商品として、同17年9月9日に設定登録されたものである。

2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第13号証を提出した。
(1)商標法第4条第1項第11号について
(ア)請求人の引用する商標
請求人が本件商標の無効の理由に引用する登録第1837004号商標(以下「引用商標」という。)は、「キャベ」の片仮名文字を横書きしてなり、昭和58年3月7日に登録出願され、第1類「化学品、薬剤、医療補助品」を指定商品として、同61年1月24日に設定登録され、その後、平成17年10月19日に指定商品を第1類「植物成長調整剤類」及び第5類「薬剤」のほか、第1類、第5類及び第10類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品とする指定商品の書換登録がされたものである。また、当該商標権は、2回に亘る存続期間の更新登録がされ、現に有効に存続しているものである。
(イ)本件商標と引用商標の対比
前記のとおりの構成よりなる本件商標からは「キャベクリア」の称呼が生じるほか、その後半部の「クリア」の文字が「澄んだ」、「透明」等を意味する語として日常汎用されており、この語に接した取引者・需要者は、当該商品の品質ないし性状を表示したものと直ちに理解するのが通常である。すなわち、当該「クリア」の文字は識別力が無いか、仮にあったとしてもその識別力は極めて薄弱なものである。
してみれば、商取引の実際においては、本件商標に接した取引者・需要者が前半部の「キャベ」に着目し、当該文字から生じる「キャベ」のみの称呼を以って取引するというべきである。
他方、引用商標は、前記のとおりの構成よりなるから「キャベ」の称呼が生じる。
(ウ)したがって、本件商標と引用商標とは、「キャベ」の称呼を同一にする類似の商標であり、また両商標の指定商品が相抵触するものであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当し、これに違反して登録されたものである。
(2)商標法第4条第1項第15号について
(ア)請求人は、「キャベ」なる商標を、医薬品「胃腸薬」について平成元年4月から現在まで継続して使用しており、これを使用した医薬品「胃腸薬」の平成元年度から平成15年度までの売上高総額は230億2,000万円に達している(甲第3号証)。
また、当該商標「キャベ」を使用した医薬品「胃腸薬」の発売準備期間を含む平成元年4月から平成15年度までの新聞広告量は総計6万6,723段、雑誌広告量は総計53.1頁、TVCM(テレビコマーシャル)量は総計16万2,788GRP(延べ視聴率)に達している(甲第4号証)。
(イ)以上の事実によれば、「キャベ」なる商標が、遅くとも本件商標の登録出願日前には、「医薬品」の分野において請求人の著名な商標となっていた。
このことは、株式会社ドラッグマガジン(甲第5号証)が1991年2月に、当該商標「キャベ」を使用した「胃腸薬」を、薬粧ヒット商品大賞に選定した事実(甲第6号証)及び同ドラッグマガジンが1992年1月に、当該商標「キャベ」を使用した「胃腸薬」を、薬粧ヒット商品として第3位にランク付けした事実(甲第7号証)、並びに胃腸薬の分野における当該商標「キャベ」を含むキャベジン「胃腸薬」の販売シェアが、1990年度ないし2004年度までの間、1991年度の第2位を除き、他は全て第1位にランク付けされている事実(甲第8号証ないし甲第12号証)からも明らかであると共に、異議2007-900106の異議決定謄本(甲第13号証)において、当該「キャベ」が著名商標として認定されている。
(ウ)してみれば、仮に、本件商標と引用商標が非類似の商標であったとしても、当該著名商標「キャベ」を含む本件商標が医薬品等に使用された場合、「クリア」が品質ないし性状表示であることとも相俟って、取引者・需要者が請求人の業務に係る前記「胃腸薬」のシリーズ商品或いは何らかの関連商品である、と認識するのがむしろ自然であり、自ずとその出所について混同を生じせしめるおそれがあるから、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当し、これに違反して登録されたものである。

3 被請求人の主張
被請求人は、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第29号証(枝番号を含む。)を提出した。
(1)商標法第4条第1項第11号について
(ア)本件商標は、前半部の「キャベ」と後半部の「クリア」との比較的短い5音構成であって、商標構成上において一体的に融合したまとまった外観を呈しており、しかも称呼的にも語呂良く商標全体が一連で称呼され、一体不可分の一連商標として捉えるべきである。
してみると、本件商標に接する取引者・需要者が前半部の「キャベ」と後半部の「クリア」とを恣意的に分離し、殊更、後半部の「クリア」の意味をいちいち深く考察して本件商標の要部を「キャベ」であると認識して商取引するとは現実には到底考えられず、むしろ、本件商標における前半部「キャベ」と後半部「クリア」とは軽重の差のない一連不可分の造語商標として全体を捉えて商取引するのが自然であると考える。
(イ)さらに、特許庁の審査等において、乙第1号証ないし乙第11号証のように本件商標「キャベクリア」と引用商標「キャベ」との関係と同一視できるような既登録商標同士が権利主体を異にし、かつ、相互に非類似商標として登録されているものが枚挙に遑が無い程に存在していることからしても、被請求人の前記主張の正当性が窺える。
(ウ)したがって、本件商標と引用商標とは、外観及び観念は勿論、称呼においても市場において相紛れるおそれのない非類似商標であるから、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しないものである。
(2)商標法第4条第1項第15号について
(ア)本件商標は、前述したように前半部の「キャベ」と後半部の「クリア」とは軽重の差がない一連の造語商標であって、後半部の「クリア」が「キャベ」に比べ軽く扱われるものではなく、また、前半部の「キャベ」が商標の要部として認識されるものではない。
(イ)特許庁における過去の登録例においても、乙第12号証ないし乙第24号証に示すように、「キャベ?」が引用商標の権利者とは権利主体を異にして多数存在している。
しかも、前記登録商標のうち、乙第19号証及び乙第22号証ないし乙第24号証の商標については、乙第25号証ないし乙第29号証に示すように、現実に商品として全国の薬局、薬店、ドラッグストア等で発売しており、引用商標「キャベ」とは市場において業務上の混同を生じることなく、それぞれ各商標の識別機能を十分に発揮している。
(ウ)よって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しないものである。

4 当審の判断
(1)請求人が使用する「キャベ」の文字を含む商標の周知著名性について
(ア)請求人の提出に係る証拠によれば、以下の事実が認められる。
請求人が商標「キャベ2」を付した商品「胃腸薬」を平成元年から使用し、平成元年から同18年5月の間におけるその売上高総額は、242億9,000万円に達している(甲第3号証)。その商品の平成元年4月から同18年3月までの新聞広告量は総計7万1,710段、同じく雑誌広告量は総計53.76頁、テレビコマーシャル量は総計16万2,788GRP(延べ視聴率)に達している(甲第4号証)。
また、株式会社ドラッグマガジンが主催する「薬粧ヒット商品の選抜大会」において、平成3年2月に請求人の「キャベ2コーワ」がヒット商品大賞に選定されたこと、同じく平成4年2月にヒット商品として第3位にランク付けしたことが認められる(甲第5号証ないし甲第7号証)。
さらに、表題を「店頭向医薬品市場の販売動向」とするアニュアルレポート(1992年度・1995年度・1998年度は、株式会社社会調査研究所調査事業本部編集・発行/2001年度は、株式会社インテージマーケティング情報事業部編集・発行/2004年度は、株式会社インテージソリューション本部編集・発行)によれば、1990年度ないし2004年度の胃腸薬において、請求人の「キャベジン」の販売金額・シェアが1991年度の第2位を除き、他は全て第1位にランク付けされていることが認められ、それらの「主要メーカー手持商品一覧」の項に「【興和】キャベ2コーワ/キャベジンAコーワ/キャベジンコーワ消化薬S/キャベジンコーワ(錠・細粒)/液キャベコーワ/液キャベコーワS/キャベジンコーワS」等の各商品の記載(甲第8号証ないし甲第12号証)がそれぞれ認められる。
(イ)そうすると、請求人により、「キャベ2」及び「キャベジン」ほか、液キャベコーワ/液キャベコーワS等について、引用商標と構成文字を同一にする「キャベ」を含む商標をシリーズ的に使用していること、「キャベ2」と「液キャベ」についての売上げや相当な期間に及ぶ多量の宣伝広告をしている状況、また、商標「キャベジン」を使用した胃腸薬の著名性等を総合勘案すれば、「キャベ」の文字よりなる商標及び「キャベ」の文字を含む商標は、本件商標の登録出願時、そして、その登録査定時には、請求人の取り扱いに係る商品「胃腸薬」に使用する商標として、取引者、需要者の間に広く認識されていたと認めることができ、これが現在も継続しているということができる。以上で認定した「キャベ」の文字よりなる商標及び「キャベ」の文字を含む商標を以下「キャベ商標」という。
(2)本件商標の商標法第4条第1項第11号該当性について
本件商標は、前記のとおり、「キャベクリア」の文字を標準文字で表してなるところ、該語は、全体として特定の意味合いを有する成語ないしは熟語とは認められないものである。
しかして、本件商標構成中、後半部の「クリア」の文字は「澄んだ、透明な」等の意味を有する平易な外来語であるのに対し、前半部の「キャベ」の文字部分は、上記したとおり、我が国において広く認識されている「キャベ商標」と同一の構成からなるものである。
そうとすれば、本願商標がその指定商品「薬剤」に使用された場合、これに接する取引者、需要者は、その構成中の「キャベ」の文字部分に強い印象を受け、これに着目するであろうことは容易に想像し得るところである。
そうすると、本件商標は、その構成全体から「キャベクリア」の称呼を生ずるとともに、「キャベ」の文字部分から、単に「キャベ」の称呼をも生ずるものといわなければならない。さらに、「キャベ」の文字部分に相応して、「キャベ商標」の観念を生ずるものと認められる。
他方、引用商標は、前記のとおり、「キャベ」の片仮名文字よりなるものであるから、該構成文字に相応して、「キャベ」の称呼が生ずること明らかであり、「キャベ商標」の観念を生ずるものである。
してみれば、本願商標と引用商標とは、「キャベ」の称呼及び「キャベ商標」の観念を同じくするものであり、また、「キャベ」の片仮名文字を共通にする外観においてもある程度近似した印象を与えることから、両者は全体として相紛れるおそれのある類似の商標であるといわざるを得ない。
そして、本件商標の指定商品である第5類「薬剤」と引用商標の指定商品中、第1類「植物成長調整剤類」及び第5類「薬剤」とは同一又は類似の商品と認められる。
したがって、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号に違反してされたものである。
(3)被請求人の主張について
被請求人は、既登録商標例(乙第1号証ないし乙第25号証)を示し、かつ、そのうちの登録商標(乙第19号証、乙第22号証ないし乙第24号証)については、現実に商品として全国の薬局、薬店、ドラッグストア等で発売(乙第25号証ないし乙第29号証)しており、引用商標「キャベ」とは市場において業務上の混同を生じることなく、それぞれ各商標の識別機能を十分に発揮している旨を述べている。
確かに、被請求人が示す既登録商標例において、「○○○クリア」と「○○○」とが併存して登録されていること(乙第1号証ないし乙第11号証:枝番号を含む。)、また、登録商標構成中に「キャベ」の文字を有し、請求人を商標権者としない登録商標が存在していること(乙第12号証ないし乙第24号証)は認めることができる。
しかし、それらの併存する登録商標は、本件商標とは、構成態様が相違し、事案を異にするものであるばかりでなく、本件商標と引用商標との関係で混同を惹起させるものかどうかは、既登録商標の登録査定時や請求人に係る「キャベ商標」の使用状況等をそれぞれ個別・具体的に審理し決せられるものであって、それらの登録商標の存在をもってして、本件商標における混同可能性を否定する根拠とするのは適切でなく、前記認定を左右するに足りない。
そして、「キャベオール」(乙第25号証)、「キャベコリンS」(乙第26号証)、「キャベマック」及び「キャベコリンS」(乙第27号証)、「新キャベマックS」及び「新キャベコリンS」(乙第28号証)、「キャベウルソS」(乙第29号証)が現実に商品として発売されているとしても、これが「キャベ商標」を使用した商品群との混同を惹起させ、その需要者が「キャベ2」や「キャベジン」などに係る商品群の一つ、或いは請求人との間で業務提携された商品であると既に混同をしていた可能性も否定できないから、これらの使用例をもって、本件商標を使用した指定商品と請求人に係る商品群との間に出所の混同を生ずるおそれがないと断定することはできず、この点における被請求人の主張は採用できない。
(4)まとめ
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものであるから、請求人の主張するその余の理由について論及するまでもなく、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲
審理終結日 2008-10-17 
結審通知日 2008-10-23 
審決日 2008-11-05 
出願番号 商願2004-119013(T2004-119013) 
審決分類 T 1 11・ 263- Z (Y05)
T 1 11・ 262- Z (Y05)
最終処分 成立  
前審関与審査官 小川 敏 
特許庁審判長 渡邉 健司
特許庁審判官 酒井 福造
鈴木 修
登録日 2005-09-09 
登録番号 商標登録第4894068号(T4894068) 
商標の称呼 キャベクリア、キャベ 
代理人 特許業務法人アルガ特許事務所 
代理人 宮田 信道 

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