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審決分類 審判 一部無効 外観類似 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Y18
管理番号 1190665 
審判番号 無効2007-890176 
総通号数 110 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2009-02-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 2007-11-22 
確定日 2008-12-10 
事件の表示 上記当事者間の登録第4709286号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第4709286号の指定商品中「かばん類,袋物,傘,ステッキ,つえ,つえ金具,つえの柄」についての登録を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
本件登録第4709286号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲(1)に示すとおりの構成からなり、平成14年8月5日に登録出願、第18類「かばん金具,がま口口金,皮革製包装用容器,愛玩動物用被服類,かばん類,袋物,携帯用化粧道具入れ,傘,ステッキ,つえ,つえ金具,つえの柄,乗馬用具,皮革」を指定商品として、平成15年9月12日に設定登録されたものである。

2 引用商標
請求人が引用する登録第3262715号商標(以下「引用商標」という。)は、別掲(2)に示すとおりの構成からなり、平成4年9月11日に登録出願、第18類「かばん類,袋物,傘,ステッキ,つえ」を指定商品として、平成9年2月24日に設定登録され、その後、平成19年2月27日に商標権の存続期間の更新登録がされ、現に有効に存続しているものである。

3 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし同第33号証(枝番を含む。)を提出した。
(1)本件商標は、引用商標に類似する商標であり、その指定商品と同一又は類似する商品について使用するものであるから、商標法第4条第1項第11号に該当し、指定商品中「かばん類,袋物,傘,ステッキ,つえ,つえ金具,つえの柄」についての登録は、同法第46条第1項に基づき無効とされるべきである。
(2)本件商標と引用商標の類否について
ア 本件商標は、横向きで静止状態にあるカンガルーの黒いシルエット図形からなる。
他方、引用商標は、やはり横向きで静止状態にあるカンガルーの黒いシルエット図形が大部分を占め、下方に「KANGOL」の文字が配されている。
イ 本件商標と引用商標を子細に観察するならば、本件商標が左向きでカンガルーの前足の部分が丸く描かれている点や引用商標が右向きで胸の部分に小さな白抜き部分が存在し「KANGOL」の文字が付されている点などにおいて差が見られるものの、両商標ともに横向きで静止状態にあるカンガルーの黒いシルエット図形からなる点、その首から背中、尾にかけてなだらかな曲線を描いており、その後足及び尾を仮想地面上につけて、大きな後足を揃えてどっしりと垂直に立った状態にあるという点において両商標は構成の軌を一にしている。
本件商標と引用商標は、カンガルーのシルエット図形の構成において共通であり、その外観全体から受ける視覚的印象が著しく似通ったものなので、上記したようなカンガルーの左右の向き、目や胸の白抜き部分の有無、前足、後足、尾の部分における若干の差異は、需要者が両商標に離隔的に接した場合には明瞭に把握できない程度の微差であり、全く印象に残り難いものである。そして、簡易、迅速を重んじる取引の実際においては、このような両商標の構成上の細部の要素における微差は、外観全体から受ける視覚的印象には影響せず、両商標は互いに類似する商標である。
ウ さらに、本件商標の指定商品における商標の表示方法は、例えば、バッグに付す場合においては、バッグの皮革に直接カンガルー図形を打ち出して付したり、布製バッグに刺繍して付したり、小さくワンポイントマークとして付したりする場合等があり、かかる場合には、上記したような細部における差異はほとんど認識できないこととなる(甲第4号証ないし甲第9号証)。
又、甲第10号証ないし甲第12号証のようにチェック模様の布製バッグに付されたカンガルー図形の場合などは、図形の背景にあるチェック模様に紛れてカンガルーの前足や腹部の白抜きの部分などの細部は明瞭に判別できない。
エ 特に、引用商標のカンガルー図形は、雑誌に掲載された広告(甲第4号証ないし甲第13号証)が示すように、ワンポイントマークとして使用される場合が多く、ワンポイントマークを付すバッグの素材が、縞柄や格子柄であるとか、ワンポイントマークの色彩と似通っている地色である場合、さらに、皮革上に周囲と同一色で打ち出された場合などには、需要者は殆ど本件商標と引用商標との見分けがつかない。
仮に、需要者が本件商標と引用商標に同時に接して詳細に観察したならばその差異を看取できるとしても、普通の注意力でもって離隔的に接した場合には、カンガルーの前足がわずかに膨らんでいる程度の微差を区別するのは非常に困難である。即ち、それらの商品を見た需要者の視覚に訴えてくるのは、「横向きで、首から背中そして尾までなだらかな曲線を描き、大きな後足を揃えて静止状態にある黒いシルエット状のカンガルー」の全体的な印象のみであり、本件商標と引用商標は同じ出所から出ている商品であると誤認することになる。
オ このような判断については、本件商標と同一の商標について25類において登録された登録商標に対する無効審判においても同様の判断が下されている(甲第14号証ないし甲第16号証)。
その結果、需要者は、両商標を付した商品の間で出所の混同を生じ、それまでに引用商標に蓄積された業務上の信用も希釈化されてしまう。
特に、引用商標は以下に示すように、カンガルーの図形のマークとしては、世界的に知られた周知商標であり、本件商標に接した需要者は、カンガルーの図形としては既に周知な引用商標から出所した商品であると混同を生ずるおそれが非常に高いので、請求人のみならず需要者の蒙る不利益も計り知れないものである。
(3)KANGOL商標の周知・著名性について
ア 1990年研究社発行の「英和商品名辞典」(甲第17号証)には、「KANGOL」についての記載があり、同じく2000年3月に発行された社団法人日本輸入団体連合会の「外国ブランド権利者名簿」(甲第18号証)には、引用商標及びその関連商標が掲載されている。
イ また、1999年読売新聞社発行の「The 一流品 THE BEST OF THE BEST‘99」(甲第19号証の150頁)には「KANGOL」ブランドの紹介として、「1938年、ジャック・スプリリーガンが英国カンブリアで生産される羊毛を素材にベレーを中心とした帽子を製造したのがカンゴール社の起源。… 特に第二次世界大戦中、英雄モンゴメリー将軍が被って有名になった「モンティベレー」ほか、世界各国の軍用ベレー、学校指定の制帽に使われている。カンゴールの人気が世界的になったのは、80年代、ニューヨークのラップミュージシャンたちが愛用したのがきっかけ。ひいきのラップミュージシャンたちが被っていた「カンガルーの帽子」がほしいと若者たちが言い出して以来、製品の大半にカンガルーのワンポイントマークが入るようになった。」「カンゴール帽子の愛用者として歌手のマドンナや人気バンド、オアシスのリアム・ギャラガーがカンゴールを被ってステージに登場している。映画監督のクエンティン・タランティーノも大のカンゴールファン。日本でも公開された映画「ジャッキー・ブラウン」では、ヒロインのジャッキー・ブラウンの扮するパム・グリアーやサミュエル・L・ジャクソンらがカンゴールのベレー帽を被って登場している」との記載があるように、カンガルーの帽子、すなわち、カンゴールといわれるほどにカンガルーの図形商標は著名であった。
この他にも、引用商標は1998年4月読売新聞社発行の「英国の一流品 The BRITISH BEST」(甲第20号証の80頁)にも取り上げられており、上記と同様のブランド説明がなされている。
ウ さらに、SuperbrandsLtd.発行の「Cool Brand Leaders」(甲第21号証)にも引用商標の歴史が紹介されており、カンゴールの商品は、ビートルズやマドンナなどのような著名な人物が愛用する商品なのである。
また、「1980年初頭迄カンガルーマークはブランドロゴに使用されていなかった。これは市場に介入し始めた偽物業者の影響だけでなく、聞き間違いによるミスという要因もあった。アメリカの人々はカンゴールのキャップやハットではなく、「カンガルー」をほしがった。この混乱を解決し、競争相手からブランドを引き離すためにロゴにカンガルーを加えた。」とあることから、カンゴールが偽物が出回るほどに著名であったことが判明する。引用商標は、映画界、音楽界で著名な俳優たちに愛用されることにより、商標自体も益々著名になって現在に至っている。そして、当初著名であった帽子に限らず、その著名性はトータルファッションとしての様々な衣類関連商品に及んでいる。
エ そして、2002年(株)シンコー・ミュージック発行の「WOOFIN’」(甲第22号証)には、世界的に著名なHIP HOPブランドの特集として「KANGOL」が取り上げられており、80年代から「カンガルー印」といえば、「KANGOL」、「KANGOL」といえば「カンガルー印」といわれるほどに、KANGOLのカンガルー図形は著名であったのである。
オ さらに、当該雑誌においても、KANGOL社の歴史について言及し、その記載内容から、カンゴールの著名性が世界的であり、そのロゴのカンガルー図形が世界的に認知されていることが認められる。
力 我が国においても、1992年11月20日付の繊研新聞(甲第23号証)や1993年6月14日の同新聞(甲第24号証)が示すように、バッグ、衣類を中心とするトータル・ファッションとして大々的に広告宣伝活動を行っており、その後も継続して数々の雑誌などに広告を掲載することにより(甲第4号証ないし甲第13号証)、ますますその周知度を高めていったのである。
そして、周知になればなるほど引用商標を模倣した商標を付した商品などが出回るようになり新聞紙上で度々警告などを行なわなければならない状況であった。例えば、1992年12月18日付の繊研新聞(甲第25号証)に掲載された「謹告」の示す如きものである。
さらに、上記のような引用商標の周知性にあやかった模倣品が多く出回ったことから、雑誌においても警告を促す広告を多数掲載している(甲第26号証の1ないし甲第26号証の9)。
(4)上述のように、引用商標は、カンガルーのマークによって周知となっているものであるので、本件商標と引用商標とは、細部において僅かに異なるところがあるとしても、時と所を異にして使用される取引においては、外観上、相紛らわしい類似の商標である。そして、このことは以下に示す審決例や判例を見ても首肯できるところである。
ア 平成11年異議第90437号(甲第27号証)
イ 平成12年(行ケ)第139号商標登録取消決定取消請求事件(甲第28号証)
ウ 無効2001-35497審判事件(甲第29号証)
エ この他の審決で、昭和54年審判8042号審決(甲第30号証)、不服2000-4268審決(甲第31号証)、平成5年審判第133359号審決(甲第32号証)、昭和52年審判第10141号審決(甲第33号証)が挙げられる。
(5)以上のように、本件商標と引用商標とは、外観及び観念において類似の商標であり、また、その指定商品も同一又は類似するものである。

4 被請求人の答弁
被請求人は、請求人の上記主張に対し何等答弁していない。

5 本件審判の審理の対象たる指定商品の範囲
審判長は、請求人に対し、平成20年9月25日付けで、「請求人は、本件商標の指定商品中、第18類『かばん類,袋物,傘,ステッキ,つえ及びこれらに類似する商品』についての登録の一部無効を求めて審判請求した。しかしながら、本件商標に対する登録の一部無効審判の請求に係る指定商品のうち、『これらに類似する商品』については、審理の対象となる指定商品の範囲が不明確であるとともに、登録の一部無効審決が確定した場合における登録商標の効力の及ぶ指定商品の範囲を曖昧にするものである。したがって、『これらに類似する商品』が如何なる指定商品を無効の対象・範囲とするのかについて、客観的、かつ、具体的で、明確な内容とされるよう釈明されたい。」旨の審尋を行った。
これに対して、請求人は、 平成20年10月2日付けの手続補正書において、請求の趣旨を「登録第4709286号商標の登録は、その指定商品中第18類『かばん類,袋物,傘,ステッキ,つえ,つえ金具,つえの柄』についてこれを一部無効とする、審判費用は被請求人の負担とするとの審決を求める。」旨の回答をした。

6 当審の判断
前記5の手続補正書により、本件審判の審理の対象たる指定商品の範囲は、要旨の変更とならない範囲内において明確な表示に補正されたものと認められる。
(1)本件商標は、別掲(1)のとおり、左横向きカンガルーの黒いシルエット図形からなるものである。
他方、引用商標は、別掲(2)のとおり、図形と「KANG●L」の文字からなり、当該図形は、右横向きカンガルーの黒いシルエット図形からなるものである。そして、引用商標にあって、図形と文字とはそれぞれ独立しても自他商品の識別機能を果たし得るものである。
そこで、本件商標と引用商標の図形部分とを対比すると、両者は、左右の向きの違いを有し、前足が一方は丸くひとつであり、他方は二つであること、さらに頭部及び胸部における白抜き部分の有無に差異を有するものである。しかし、両商標は、横向きで静止状態にあるカンガルーの黒いシルエット図形からなる点、その首から背中、尾にかけてなだらかな曲線を描いており、その後足及び尾を仮想地面上につけて、大きな後足を揃えて垂直に立った状態にあるという点を共通にしており、その基本的部分、すなわち、構成における軌を一にするものというべきである。
しかして、両商標は、左右の向きの違い、前足や胸の部分等で差異を有するが、時と処を異にしてみたときには、かかる差異は、全体からみれば微差というべきであり、全体から受ける視覚的印象は似通ったものとなるものである。
(2)ところで、提出に係る甲各号証によれば、引用商標は、1980年代から継続的に使用されて、「カンゴール」の称呼及びカンガルーの右横向きの黒いシルエット図形において、帽子等の需要者に、相当程度広く認識されていると認めることができる。
さらに、バッグ等の取引界において、図形商標をワンポイントマークとして使用することが普通に行われていること、それらはかなり小さな表示形態となること、及び、これには刺繍をもってする場合があることは、取引における一般的な実情というべきものである。また、この種商品の需要者は、恒常的な取引や商品の性格がアフターケアを期待するようなものではないこともあって、短い時間で購入商品を決定することも少なくなく、商品に付された出所標識をさほど厳格に検討して取引にあたるものともいえない。
(3)そうしてみると、本件商標と引用商標とは、構成の軌を一にするものであるから、需要者の印象・記憶に強く残る部分は、ともに基本となる構成部分といわざるを得ない。してみれば、時と所を異にしたときには、殊に、ワンポイントマークとしての使用形態をも勘案すれば、上記差異にもかかわらず、本件商標は、周知な引用商標と彼此相紛れる余地の高いものといわざるを得ない。よって、両者は、その外観において、商品の出所について誤認混同を生じるおそれがあるものであり、類似する商標というべきである。
(4)以上のとおり、本件商標は、特定の称呼、観念を生じることのない図形商標というのが相当であるから、観念や称呼の明らかな相違を理由として、外観上で類似するにもかかわらず、引用商標との間で、商品の出所の誤認・混同が惹起されることはないということはできない。
してみれば、本件商標は、その外観において、引用商標に類似する商標というべきである。
また、本件商標の指定商品中「かばん類,袋物,傘,ステッキ,つえ,つえ金具,つえの柄」には、引用商標の指定商品と同一又は類似の商品が包含されていること明らかである。
(5)したがって、本件商標は、その指定商品中「かばん類,袋物,傘,ステッキ,つえ,つえ金具,つえの柄」について、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲
(1)本件商標

(2)引用商標


審理終結日 2008-10-10 
結審通知日 2008-10-16 
審決日 2008-10-29 
出願番号 商願2002-65935(T2002-65935) 
審決分類 T 1 12・ 251- Z (Y18)
最終処分 成立  
前審関与審査官 橋本 浩子 
特許庁審判長 井岡 賢一
特許庁審判官 佐藤 達夫
小川 きみえ
登録日 2003-09-12 
登録番号 商標登録第4709286号(T4709286) 
代理人 小山 輝晃 

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