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審決分類 |
審判 全部無効 商4条1項16号品質の誤認 無効とする(請求一部成立)取り消す(申し立て一部成立) Y03 |
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管理番号 | 1189067 |
審判番号 | 無効2007-890165 |
総通号数 | 109 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2009-01-30 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2007-10-18 |
確定日 | 2008-11-20 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第4614438号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 登録第4614438号の指定商品中「化粧品(「日焼け止め化粧品」を除く。)」についての登録を無効とする。 その余の指定商品「日焼け止め化粧品」についての審判請求は成り立たない。 審判費用は、その2分の1を請求人の負担とし、2分の1を被請求人の負担とする。 |
理由 |
第1 本件商標 本件登録第4614438号商標(以下「本件商標」という。)は、「遊び場サンブロック」の文字を横書きしてなり、平成14年1月9日に登録出願、第3類「化粧品」を指定商品として、同年10月4日に登録査定、同年10月18日に設定登録されたものである。 第2 請求人の主張 請求人は、本件商標の登録はこれを無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、理由及び弁駁の理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第44号証(枝番を含む。)を提出した。 1 請求の理由 本件審判は、平成19年10月18日に請求されたものであり、その請求の根拠を本件商標は、商標法第3条第1項第3号又は同第6号及び同法第4条第1項第16号に該当するから、同法第46条第1項第1号又は同第5号により無効とされるべきである。 (1)商標法第3条第1項第3号又は同第6号について 本件商標を構成する「遊び場サンブロック」の文字は、「遊び場」と「サンブロック」の文字との結合である。 ア 「遊び場」とは、「概ね12歳くらいまでの子供が楽しく、安全に遊べるためにさまざまな遊具を備えた場所」を意味するから(甲第2号証)、「遊び場」は本件商品との関係においては、「子供の遊び場所用」であることを示す用途表示である。 イ 「サンブロック」の文字は、英語の「日焼け止めクリーム(ローション)」を意味する「SUNBLOCK」の読みを片仮名文字で表示するものであり(甲第3号証ないし甲第20号証)。そのため、「サンブロック」の文字は、商品「日焼け止めクリーム(ローション)」について自他商品の識別標識としての機能を有しないものである。 さらに、「サンブロック」の文字は、商品名として広く海外を含めて世界的に認識されている(甲第22号証ないし甲第27号証)。 ウ したがって、本件商標を構成する「遊び場サンブロック」の文字は、「子供の遊び場所用の日焼け止めクリーム(ローション)」を意味するものであるから、自他商品の識別標識としての機能を有しないものである。 エ このことは、辞書(甲第3号証ないし甲第20号証)の掲載に限らず、以下の証拠にも基づくものである。 (ア)我が国を指定国とする特許協力条約に基づく国際出願は、指定国段階で日本語への翻訳文を提出し、その内容は「公表特許公報」に掲載されるものであり、当該公報によると「日焼け止め(剤)」を「サンブロック」と表し、「sunblock」の日本語訳として用いられている(甲第21号証の1ないし4)から、「sunblock」は、我が国だけでなく、海外においても普通名称として用いられていることの証左となるものである。 (イ)米国特許商標庁における商標電子調査によれば、登録商標(第1754782号)は、これを構成する「SUNBLOCK」の文字が「日焼け止め」を意味するとして、権利不要求の文字部分となっていることを確認でき(甲第22号証の1、2)、同じく登録商標(第2264212号:本件商標は被請求人が所有する商標である。)は、その国際分類第3類の指定商品中の「日焼け止め剤」を「sunblock preparation」と、被請求人自らが指定しているものであり(甲第23号証の1、2)、同様に被請求人が所有する米国商標「SUNMEDIC」(登録第78187557号:甲第24号証)及び英国商標「IPSA」(登録第2180386号:甲第25号証)においても指定商品中に「sunblock」の表示があるから、「SUNBLOCK」の文字が国際的に「日焼け止めクリーム」、「日焼け止めローション」等の化粧品を表示する普通名称となっていることは明らかである。 また、米国において「sunblock」が商品表示として認容可能であることを示す米国特許庁ホームページの該当頁(甲第26号証)及び「sunblock」は「日焼けを防ぐ調合剤」を意味するとした米国の辞書の該当頁(甲第27号証)を提出する。 (ウ)「知恵蔵2003」及び「知恵蔵2006」においても「サンブロック」の掲載がある(甲第19号証、甲第20号証)。 また、現在、化粧品の取引において、各化粧品会社が展示する商品「日焼け止めクリーム(ローション)」は、「サンブロック」と称され、普通に使用されている商品名であり普通名称でもある(甲第28号証の1ないし7)。 オ 小括 そうすると、本件商標は、その指定商品「化粧品」について使用しても、これに接する取引者、需要者は、当該商品が「子供の遊び場所用の日焼け止めクリーム(ローション)」であること、すなわち商品の用途、品質を表示したものと理解するにとどまり、自他商品の識別標識として認識し得ないものといわなければならないから、本件商標は、その指定商品中「子供の遊び場所用の日焼け止めクリーム(ローション)」については商標法第3条第1項第3号又は同第6号に該当する。 (2)商標法第4条第1項第16号について 本件商標を指定商品中の「子供の遊び場所用の日焼け止めクリーム(ローション)」以外の「化粧品」に使用するときは、商品の品質について誤認を生じさせるおそれがあるから、商標法第4条第1項第16号に該当するものである。 また、本件商標中の「遊び場」が識別標識機能を具備しているとしても、上述のとおり、識別性を有しない「サンブロック」の文字より、本件商標を「日焼け止めクリーム(ローション)」以外の化粧品に使用する場合は、商品の品質について誤認を生ずるものである。 そして、本件商標の登録時に商取引の実情として上述の認識が成立していなかったとしても、甲第14号証ないし甲第20号証にみられるように、審判請求時点において「サンブロック」、「SUNBLOCK」は当該商品が「日焼け止めクリーム(ローション)」であるという、商品の品質を表示したものと理解され、「日焼け止めクリーム(ローション)」以外の「化粧品」に使用すれば商品の品質について誤認を生ずるものである。 2 弁駁の理由 (1)本件商標の造語性について 被請求人は、「子供の遊び場所用の日焼け止めクリーム(ローション)」といった商品は存在しないから、本件商標は造語商標として自他商品識別機能を有すると主張するが、本件商標は冗長な部類に属する商標であって、かつ「遊び場」と「サンブロック」という異なる書体を並べてなる構成態様の商標であるから、全く観念の生じない一連の造語とするのは不自然である。 また、商品の品質・用途等を表示するか否かとは、現実の商品の有無によって決するものではなく、当該標章を構成する語自体の意味が商品の品質・用途等を指し示すかによって決されるものである。 (2)「遊び場」の文字が「子供の遊び場所用」との用途表示であるか 被請求人は、本件商標を付した商品「子供の遊び場所用の日焼け止めクリーム(ローション)」を販売している(甲第30号証)。 (3)「サンブロック」の文字が英語の「日焼け止めクリーム(ローション)」の普通名称であるか 「サンブロック」なる表現は、化粧品の分野においては「日焼け止めクリーム(ローション)」の普通名称として認識されているが、例えば、他に美容整形及び皮膚科の分野での医療行為に関する場において、コンタクトレンズ、ズボン、下着、手袋、帽子、上着等の身に着けるものにおいて、そしてさらに屋外装置品としてのシェード(日除け)においてまでも紫外線を遮るものの品質・用途等を表す語として「サンブロック」なる表現は日常的に用いられている(甲第31号証ないし甲第42号証)。 したがって、「サンブロック」なる表現は、化粧品をはじめ多くの商品の一般的な名称として需要者・取引者が充分に認識しているといえる。 ア 乙第8号証、乙第9号証は、当該商標の登録時には充分に登録要件を具備していた商標であったが、特許庁が設定登録をした後、当該商標が辞書等に掲載された場合においての普通名称化の判断をいうものである。 イ 乙第10号証は、設定登録時には新造語であった「セロテープ」に関する判例であるから、出願時に既に辞書に掲載されていた本件とは事案を異にし、また、乙第11号証は専門書に掲載させた特殊な語「サークライン」に関する判例であって、これも本件には妥当しない。 ウ 当該商標の出願時には既に辞書及び公報に複数掲載され、その他にも使用事例が見られる場合、商標法第3条第1項第3号に該当すると認定されている審決がある(甲第43号証)。 エ 甲第21号証の1ないし4について 被請求人は専門用語として用いられていることを示すに留まり、一般名称として普通に使用されていることを示唆しないと主張するが、PCT出願等で翻訳文を作成する場合を含み特許明細書を作成する場合、仮に「sun block」が商標であれば「サンブロック(登録商標)」とすべきである。 オ 甲第28号証の1ないし7について 本件審判で争われているのは「サンブロック」が商品の普通名称であるか否かであって「周知性・著名性」が争点ではなく、辞書等にも掲載されており、さらに一般の認識として普通名称として使用されている取引の実情にあるかが問題なのであって、多くの販売・製造事業者が普通名称として「サンブロック」を使用しているのであれば普通名称であると認定される。 第3 被請求人の答弁 被請求人は、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第11号証を提出した。 1 商標法第3条第1項第3号又は同第6号について (1)本件商標の造語性について 本件商標は、「遊び場サンブロック」の文字を同書、同大に一体的に表してなり、かかる外観上簡潔な構成にあっては、これより生ずる一連の称呼が格別冗長なものではないことも相侯って、本件商標に接する取引者・需要者は、特定の観念を生じさせない造語商標と理解すると考えるのが自然である。 なお、請求人は、本件商標中「遊び場」と「サンブロック」の各部分を分断して観察し、前半部分の「遊び場」から「子供の遊び場所用」との意味を抽出し(甲第2号証)、さらには後半部分の「サンブロック」から「日焼け止めクリーム(ローション)」との意味を抽出し得るとし、本件商標が商品の品質、用途を表示するにすぎないと断じている。 しかしながら、審判請求書においては、本件商標を構成する「遊び場サンブロック」の文字が商品の品質等表示として普通に使用されている実情を証左する証拠が示されておらず、被請求人が辞書やウェブサイト等を調査した限りにおいても、かかる実情は確認されなかった。 また、請求人は、本件商標全体から「子供の遊び場所用日焼け止めクリーム(ローション)」との意味合いが想起されると主張しているが、そもそもこのような商品が我が国で販売されているのかさえ不明である。 以上のとおり、「子供の遊び場所用日焼け止めクリーム(ローション)」といった商品は存在しないから、本件商標は、被請求人の造語商標と理解され、その指定商品との関係で自他商品識別機能を発揮するものである。 (2)「遊び場」の文字が「子供の遊び場所用」との用途表示であるか 「遊び場」の意味は、必ずしも児童公園などの「子供の遊び場所」(甲第2号証)に限るものではない。例えば、商業施設、水族館、美術館、室内プール、映画館、温泉といった場所も一般的に「遊び場」といわれている(乙第1号証ないし乙第4号証)。 したがって、「遊び場」の文字は、多義的で漠然とした用語であり、必ずしも「子供の遊び場」の意味で限定的に解釈されることはないから、取引者・需要者が「子供の遊び場所用」といった商品の用途表示と認識するおそれもない。 (3)「サンブロック」の文字が英語の「日焼け止めクリーム(ローション)」の普通名称であるか 請求人は、甲第3号証ないし甲第29号証を挙げ、「サンブロック」の文字が「日焼け止めクリーム(ローション)」の普通名称であると主張するが、以下に述べるように、「サンブロック」の文字は、「日焼け止めクリーム(ローション)」の一般名称として取引界で普通に使用されているものではなく、自他商品識別機能を発揮することは明らかである。 ア 「普通名称」の意義・判断基準について 特許庁の工業所有権法逐条解説(乙第5号証)によると、「普通名称」は「取引界においてその名称が特定の業務を営む者から流出した商品又は特定の業務を営む者から提供された役務を指称するのではなく、その商品又は役務の一般的な名称であると意識されるに至っているものをいう。」と定義されている。 そして、この認定の人的判断基準については、一般需要者及び取引者が特定の商品・役務の一般名称として認識しているかどうかを考慮するべきと考えるのが学説・判例の傾向である(乙第6号証ないし乙第10号証)。 よって、「サンブロック」の文字が我が国で「日焼け止めクリーム(ローション)」の普通名称か否かについても、かかる基準に基づき判断されるべきである。そして、甲第3号証ないし甲第29号証を検討したところ、そのいずれも、請求人の主張を裏付けるものとは到底いえないと考えるので、以下に被請求人の考えを述べる。 イ 甲第3号証ないし甲第29号証について (ア)甲第3号証ないし甲第18号証 甲第3号証ないし甲第18号証(甲第16号証を除く)は、「sun block」の欧文字が「日焼け止めクリーム(ローション)」の訳語で掲載されている英和・和英辞書の該当部分の写しである。これらの文献は、「sun block」が「日焼け止めクリーン(ローション)」という意味を有する英単語であることを示してはいるものの、我が国の一般取引者・需要者の間で「日焼け止めクリーム(ローション)」の一般名称として認識されていることを直ちに立証するわけではない。 また、甲第16号証は、医学用語辞典の該当部分の写しであるが、医学用語「サンスクリーン」の訳語が「sun block」であることを示すに留まり、上記と同様に、「サンブロック」の文字が、我が国において、実際に一般名称として普及していることを立証するわけではない。 さらに付言すれば、ある文字が多くの辞書や学術書等に定義や一般名称的に掲載されていることのみをもって、その文字が普通名称化したと直ちに判断はできないと考える(乙第8号証、乙第9号証)。 我が国の商標権者には、そもそも普通名称的な使用に対する差止請求権又は登録商標である旨の表示請求権といった法的に明確な権利はない。また一般消費者は、商標とか普通名称とかの知識が乏しいのが一般であるから、辞書や学術書での掲載のみをもって普通名称化を認定するのは妥当でないと考える。 かかる考えは、過去の判例でも支持されている。例えば、登録商標「サークライン」に関する審決取消請求事件(乙第11号証)では、学会機関紙や学術書において「サークライン」の文字が「サークラインけいこう燈」、「サークライン蛍光放電管」といった一般名称的に掲載されていたところ、裁判所は、以下のように判旨し、該文字の普通名称化を認定しなかった。 「…そのことは、我が国における蛍光燈関係の技術者・研究者等には知られていたことが認められる。しかしながら、本件登録商標が登録された昭和三〇年七月当時我が国において、一般に環状蛍光燈の取引において『サークライン』の語が商標としてでなく、商品自体の一般名称を指すものとして使用されていたという事実はこれを認めるに足る証拠はない。」かかる判例に鑑みれば、辞書や技術文献等における「サンブロック」の文字の掲載事実を挙げることは、該文字の普通名称化の有無を認定するに際し無意味であると考える。 (イ)甲第19号証、甲第20号証 甲第19号証、甲第20号証は、それぞれ、「知恵蔵」の2003年および2006年度版の「サンブロック」の説明箇所の写しであるが、出版社において「サンブロック」は既に普通名称として確立していると判断をしたわけではない。また、辞書や専門書等での掲載のみをもってある文字の普通名称化を認定するのは妥当でないことは上述したとおりであるから、「サンブロック」の語が「知恵蔵」の2003年版に引き続き2006版にも掲載されているからといって、直ちに「サンブロック」が普通名称であると認定されるべきではない。 (ウ)甲第21号証の1ないし4 甲第21号証の1ないし4は、米国とフランスを基礎とする国際特許出願の公表特許公報である。しかし、これらは、化学研究という技術分野で「sunblock」が組成物を意味する専門用語として用いられていることを示すに留まり、我が国の化粧品の取引界において「サンブロック」の文字が一般名称として普通に使用されていることを示唆するものではない。 (エ)甲第22号証の1ないし甲第27号証 甲第22号証の1、2は、「SUNBLOCK」の文字の権利不要求を宣言した米国での登録商標を示し、甲第23号証の1ないし甲第25号証は、指定商品に「SunBlock preparations」を含む米国の登録商標を示している。しかしながら、これらはいずれも、米国で欧文字「sunblock」が商品表記として使用されていたことを示すにすぎず、我が国で、「サンブロック」が「日焼け止めローション(クリーム)」を示す普通名称として使用されていることを立証するわけではない。 また、甲第26号証は、米国特許商標庁で「sunblock」の掲載が許容されたことを示す同庁のサイトの写しであり、甲第27号証は、「sunblock」の用語をオンラインの英英辞典で検索したページの写しである。しかし、いずれの証拠も、「サンブロック」の文字が我が国で「日焼け止めローション(クリーム)」の普通名称と認識されていることの証左ではない。 (オ)甲第28号証の1ないし7 甲第28号証の1は、有限会社銀座赤レンガという会社が「Sun Block」を通販していること、甲第28号証の2は、アベンヌというメインブランドの下で「アベンヌサンブロック」が楽天市場で紹介されていること、甲第28号証の3は、株式会社フリーゾーンという会社が「野がいこ」という商品に「サンブロックミニ」という商品をセット販売していること、甲第28号証の4は、SunPharmaceuticals Corp社という者の「バナナボートウルトラサンブロック」という商品が個人輸入によってHapima.comという通販サイトで紹介されていること、甲第28号証の5、6は、甲第28号証の3と同様の商品が、それぞれ、シルキーズ、びーけんどっとこむという名の通販サイトで、過去に販売されていた(証拠には、販売を中止している旨の掲載がある)こと、甲第28号証の7は、「サンブロック(日焼け止め)」の文字がケンコードットコムというサイトに掲載されていたことをそれぞれ示す。 このうち、甲第28号証の2は、被請求人がその関連会社をして商標登録第1063069号「サンブロック」を使用させている事例であり、我が国でも著名な通販・情報サイトである楽天市場で販売されているものであるから、「サンブロック」の文字の自他商品識別機能を否定する証拠にはならない。 その他の証拠についても、そこに掲載されているいずれの販売・製造事業者も化粧品の取引分野で広く知られている事業者とは到底いえず、実際に掲載商品を一般消費者へ販売した実績があるのかさえ不明である。仮に販売実績があったとしても、販売数量、販売期間、販売地域などが立証されていないのであるから、甲第28号証の1ないし7(甲第28号証の2を除く)から「サンブロック」又は「SunBlock」の文字が「日焼け止めクリーム(ローション)」の一般名称として一般取引者・需要者の間で認識されていると判断することは不可能である。 (カ)甲第29号証 甲第29号証は、被請求人の商標「デュアルサンブロック」が拒絶査定を受けた出願経過を示すものである。しかし、被請求人は、本拒絶査定に対し、現在、拒絶査定不服審判にて争っており、「デュアルサンブロック」の文字が識別性を有さないとの最終判断が確定したわけではない。 以上のとおりであるから、甲第3号証ないし甲第29号証によって、「サンブロック」の文字が、我が国で「日焼け止めクリーム(ローション)」の普通名称であることを立証するものではない。 2 むすび 以上のとおり、本件商標は、「子供の遊び場所用の日焼け止めクリーム(ローション)」との意味を想起させることはなく、自他商品識別機能を発揮するというべきである。したがって、これを「日焼け止めクリーム(ローション)」について使用した場合でも商標法第3条第1項第3号及び同第6号に該当せず、また「日焼け止めクリーム(ローション)」以外の化粧品について使用しても、商品の品質について誤認を生ずるおそれはないというべきであるから、同法第4条第1項第16号にも該当しない。 第4 当審の判断 請求人は、本件商標が商標法第3条第1項第3号、同第6号及び同法第4条第1項第16号に該当する旨主張し、同法第46条第1項第1号又は同第5号により無効とされるべきであるとしているところ、同法第46条第1項第5号は、後発的な公益的無効事由についてその請求することができる旨の規定であり、その後発的な公益的無効事由の同法第4条第1項第16号に該当するか否かの要件は審判請求時(平成19年10月18日)においても継続して該当するものに適用されると解される。 以下、本件商標が、該規定に該当するかについて検討する。 1 甲各号証における掲載事実について 本件商標は、前記第1のとおり、「遊び場サンブロック」の文字を横書きし、その指定商品を第3類「化粧品」とするものであるところ、その構成文字が、「遊び場」と「サンブロック」という異種文字にて構成されてること、及び、全体として親しまれた観念を有しないことから、その構成文字は、「遊び場」の文字と「サンブロック」の文字とを結合したと容易に看取されるものである。そこで、「遊び場」と「サンブロック」の文字を甲各号証により検討する。 (1)「遊び場」の文字の使用事実について 「遊び場」の文字は、必ずしも児童公園などの「子供の遊び場所」(甲第2号証)に限るものではないとし、例えば、商業施設、水族館、美術館、室内プール、映画館、温泉といった場所も一般的に「遊び場」といわれている(乙第1号証ないし乙第4号証)との被請求人の主張が妥当であり、甲第2号証からして俄に「子供の遊び場所用」といった本件商品の用途表示と認識するとするは困難である。 (2)「サンブロック」等の文字の使用事実について 「サンブロック」及び「sun b1ock」の文字については、次の各種印刷物等及びウェブページ情報にその掲載ないしその使用を認めることができる。 ア 各辞典類 (ア)「小学館ランダムハウス英和大辞典(1994年1月1日 株式会社小学館発行)2715頁の「sun b1ock」の項に、「日焼け止め(クリーム,ローション)」の記載があること(甲第3号証)。 (イ)「新グローバル英和辞典」(1994年1月15日 株式会社三省堂発行)1356頁の「sun b1ock」の項に、「日焼け止めクリーム」の記載があること(甲第4号証)。 (ウ)「新英和中辞典」(1994年11月 株式会社研究社発行)1799頁の「sun b1ock」の項に、「日焼け止めのクリーム〔ローション〕」の記載があること(甲第5号証)。 (エ)「英和中辞典」(1994年11月28日 株式会社講談社発行)2036頁の「sun b1ock」の項に、「日焼け止めクリーム」の記載があること(甲第6号証)。 (オ)「プログレッシブ英語逆引き辞典」(1999年7月1日 株式会社小学館発行)167頁の「sun b1ock」の項に、「日焼け止め(クリーム,ローション)」の記載があること(甲第7号証)。 (カ)「リーダーズ英和辞典」(1999年5月 株式会社研究社発行)2467頁の「sun b1ock」の項に、「日焼け止め(クリーム)《sunscreenよりも効果が強い》」の記載があること(甲第8号証)。 (キ)「研究社 医学英和辞典」(1999年7月 株式会社研究社発行)1188頁の「sun b1ock」の項に、「日焼け止め(クリーム)(cf.SUNSCREEN)」の記載があること(甲第9号証)。 (ク)「大きな活字のコンサイス英和辞典」(2002年4月20日 株式会社三省堂発行)1770頁の「sun b1ock」の項に、「日焼け止めクリーム」の記載があること(甲第10号証)。 (ケ)「研究社新英和大辞典」(2002年3月 株式会社研究社発行)2463頁の「sun b1ock」の項に、「日焼け止めクリーム」の記載があること(甲第11号証)。 (コ)「グランドコンサイス和英辞典」(2002年6月20日 株式会社三省堂発行)1918頁の「日焼け止め」の項に、「sunscreen;a sun b1ock(er)/日焼け止めクリーム」の記載があること(甲第12号証)。 (サ)「新和英中辞典」(2002年9月 株式会社研究社発行)1568頁の「ひやけ【日焼け】」の項に、「日焼け止め(クリーム)sun screen;sun b1ock」の記載があること(甲第13号証)。 (シ)「図解英和大辞典」(2002年12月20日 株式会社マクミラン ランゲージハウス発行)898頁の「sun b1ock」の項に、「日焼け止めクリーム〔ローション〕」の記載があること(甲第14号証)。 (ス)「プログレッシブ英和中辞典」(2003年1月1日 株式会社小学館発行)1854頁の「sun b1ock」の項に、「日焼け止め(sunscreen)」の記載があること(甲第15号証)。 (セ)「医学書院 医学大辞典」(2003年3月1日 株式会社医学書院発行)967頁の「サンスクリーン〔sunscreen,sun b1ock〕」の項に、「…日焼け止め…」の記載があること(甲第16号証)。 (ソ)「研究社 新和英大辞典」(2003年7月 株式会社研究社発行)2223頁の「ひやけどめ【日焼け止め】」の項に、「日焼け止めクリーム(a)sun b1ock」の記載があること(甲第17号証)。 (タ)「ジーニアス英和辞典」(2007年4月1日 株式会社大修館書店発行)1910頁の「sun b1ock」の項に、「サンブロック(sunscreen)(紫外線を防ぐ日焼け止めクリーム・オイルローション)」の記載があること(甲第18号証)。 (チ)「知恵蔵/2003」(2003年1月1日 朝日新聞社発行)1221頁の「サンブロック」の項に、「[sun b1ock]日焼け止め」の記載があること(甲第19号証)。 (ツ)「知恵蔵/2006」(2006年1月1日 朝日新聞社発行)1167頁の「サンブロック」の項に、「[sun b1ock]日焼け止め」の記載があること(甲第20号証)。 イ 公表特許公報 (ア)2007年10月15日付け打ち出しの「公表特許公報(特表平10-504520(公表日平成10年(1998)5月6日)」の「要約」及び「特許請求の範囲」の項に、「本発明は、紫外線から皮膚を保護するための局所用サンブロック処方・・・サンブロック成分・・・サンスクリーン物質・・・」等の記載があること(甲第21号証の1)。 (イ)2007年10月15日付け打ち出しの「公表特許公報(特表2002-506805(公表日平成14年3月5日)」の「特許請求の範囲」の項に、「・・・日焼け止め(サンスクリーン)剤・・・」の記載があること(甲第21号証の2)。 (ウ)2007年10月15日付け打ち出しの「公表特許公報(特表2002-521417(公表日平成14年7月16日)」の「要約」の項に、 「・・・無機性物理的日焼け止め剤(サンブロック)・・・」等の記載があること(甲第21号証の3)。 (エ)2007年10月15日付け打ち出しの「公表特許公報(特表2003-525860(公表日平成15年9月2日)」の「特許請求の範囲」の項に、「・・・組成物が物理的サンブロック、サンスクリーン及び・・・」等の記載があること(甲第21号証の4)。 ウ 米国特許商標庁の商標電子調査システムによる米国商標例及び英国商標例 (ア)2007年10月15日付け打ち出しの「米国特許商標庁の商標電子調査システムによる米国商標(登録第1754782号)(抄訳)」の文字『SUNBLOCK』」の「権利不要求」の項(訳文)に、「マーク全体とは別個に『SUNBLOCK』を独占的に使用する権利を要求しない。」の記述があること(甲第22号証の1)。 (イ)2007年10月15日付け打ち出しの「米国特許商標庁の商標電子調査システムによる米国商標『IPSA』(登録第2264212号)」の「商品/役務」の項(原文及び訳文)に、「(国際分類第3類)…、「sunb1ock preparation」が「日焼け止め剤」と訳されていること、及び「商標権者」の項(訳文)に、請求人の名称の記載があること(甲第23号証の1)。 (ウ)2007年10月18日付け打ち出しの「米国特許商標庁の商標電子調査システムによる米国商標『SUNMEDIC』(出願番号78187557)」(訳文)の「指定商品/役務」の項に、「(国際分類第3類)…、即ち日焼け止め(sunscreen,sun b1ock)、…」と記載されていること、及び「出願人:」の項に、請求人の名称の記載があること(甲第24号証)。 (エ)2007年10月17日付け打ち出しの「英国商標『IPSA』(登録第2180386号)」(訳文)の「指定商品(役務)」の項に、「(第3類)・・・、日焼け止め(sun b1ocks)」と記載されていること、及び「商標権者」の項に、請求人の名称の記載があること(乙第25号証)。 (オ)2007年10月18日付け打ち出しの「米国特許商標庁のホームページ「商標登録における認容可能な商品及び役務表示」(訳文)の「2.第3類」の項に、「・・・日焼け止め(sun b1ock)」と記載があること(乙第26号証)。 エ ウェブページ情報 (ア)有限会社銀座赤レンガの商品情報サイトに「sun b1ock」(サンブロック)を「日焼け止め」として商品を紹介されている(甲第28号証の1)。 (イ)楽天市場における化粧品全般情報サイト「コスメランド」の商品情報中に商品名「アベンヌ サンブロック EX50N」を「日焼け止め」に関する商品として紹介されている(甲第28号証の2)。 (ウ)米国直輸入品に関する商品情報サイトに商品名「バナナボートウルトラサンブロックSPF30」とする商品と「sunb1ock」の文字が表示されたパッケージ写真の紹介されている(甲第28号証の4)。 (エ)シルキーズ又はケンコードットコムとする商品情報サイトに「シルク配合の日焼け止めクリーム」として商品名「野がいこサンブロック」とする商品と「サンブロック」の文字が表示されたパッケージ写真の紹介されている(甲第28号証の5、6)。 (オ)014健康食品・サプリメントとする商品情報サイトに「サンブロック(日焼け止め)」の表示の下「サンブロック(日焼け止め)SPF30」と「サンブロック(日焼け止め)SPF20」とする商品紹介されている(甲第28号証の7)。 以上の事実を総合すれば、「サンブロック」なる文字は、「sun block」の文字が、「日焼け止めクリーム(ローション)」又は「日焼け止め」の意味を、「サンブロック」の文字も英語「sun block」の表音の片仮名表記で「日焼け止め」の意味をそれぞれ有すること、及び「サンブロック」の文字が、「日焼け止め剤」又は「日焼け止め(ジェル,クリーム)」の意味合いを表すものとして使用されていることから、「日焼け止め」の意味を有する英語「sun block」の表音の片仮名表記であると認められる。 そして、「サンブロック」なる文字は、「sun block」及び「サンブロック」が、前記のとおり、「日焼け止め」あるいは「日焼け止め用」の意味合いで多数の辞書類に掲載され、その辞書の中には商品表示として用いられる「sunscreen(サンスクリーン)」と同義語としても掲載されていること、内外国の公報類にも「サンブロック」又は「sun b1ock」の用例が認められること、及び通販サイトにおいて化粧品の取引業者が使用している事実もあることから、商品「化粧品」との関係から「日焼け止め」あるいは「日焼け止め用」を理解するものといわなければならない。 2 商標法第4条第1項第16号(同法第46条第1項第5号)について 本件商標は、前記第1のとおり、「遊び場サンブロック」の文字を書してなるところ、前記1(2)のとおり、「サンブロック」なる文字が、商品「化粧品」との関係にあっては「日焼け止め」あるいは「日焼け止め用」を理解するものであるから、本件商標に接する需要者は、本件商標の構成中「サンブロック」の文字は、指定商品「化粧品」との関係から「日焼け止め」あるいは「日焼け止め用」の化粧品であると認識するものである。 してみれば、本件審判請求時には、本件商標をその指定商品中「日焼け止め化粧品」以外の化粧品について使用した場合、それが「日焼け止め化粧品」であるかの如くその商品の品質について誤認を生ずるおそれがある商標となっているもの、すなわち、商標法第4条第1項第16号に該当する商標になっているものといわざるを得ない。そして、このことは現在においても継続しているというべきである。 3 商標法第3条第1項第3号、同第6号及び同法第4条第1項第16号(同法第46条第1項第1号)について 本件商標は、前記第1のとおり、「遊び場サンブロック」の文字からなるところ、「遊び場」の文字が分離して看取されるとしても、前記1(1)のとおり、甲各号証より、「遊び場」の文字それ自体が直ちに具体的な「化粧品」の用途を表示するものとして理解され使用されている事実は見出せないし、その他、「子供の遊び場所用」といった化粧品の用途であると認識される事実もない。 また、本件商標の構成中の「サンブロック」の文字が前記1(2)で認定したとおり、審判請求時には、もはやそれ自体が独立して商品の出所を示す識別標識として機能するものでないとしても、登録査定時において、本件商標構成中の「サンブロック」の文字が、指定商品「化粧品」との関係から「日焼け止め」あるいは「日焼け止め用」の化粧品であると認識するものとして取引上普通に使用されていた事実はないし、本件商標「遊び場サンブロック」から常に請求人主張の如くに「子供の遊び場所用の日焼け止めクリーム(ローション)」の意味合いを認識し取引に資されていたものとは認め難いものである。 したがって、本件商標は、その登録査定時においては、商品「化粧品」の用途、品質を表示したものとはいえないものであり、これを指定商品に使用しても、商品の品質について誤認を生ずるおそれもなかったものである。 4 結語 以上により、本件商標は、その指定商品中「化粧品(「日焼け止め化粧品」を除く。)」については、商標法第4条第1項第16号に該当するから、同法第46条第1項第5号により、その登録を無効とする。 しかしながら、「日焼け止め化粧品」については、商標法第3条第1項第3号、同第6号及び同法第4条第1項第16号に違反して登録されたものでないから、同法第46条第1項第1号により、その登録を無効とすることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2008-09-24 |
結審通知日 | 2008-09-26 |
審決日 | 2008-10-09 |
出願番号 | 商願2002-666(T2002-666) |
審決分類 |
T
1
11・
272-
ZC
(Y03)
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最終処分 | 一部成立 |
特許庁審判長 |
中村 謙三 |
特許庁審判官 |
前山 るり子 末武 久佳 |
登録日 | 2002-10-18 |
登録番号 | 商標登録第4614438号(T4614438) |
商標の称呼 | アソビバサンブロック、アソビバ、サンブロック |
代理人 | 宮川 美津子 |
代理人 | 舘石 光雄 |
代理人 | 田中 克郎 |
代理人 | 稲葉 良幸 |
代理人 | 萼 経夫 |