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審決分類 審判 全部無効 商4条1項10号一般周知商標 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Y26
管理番号 1189016 
審判番号 無効2006-89181 
総通号数 109 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2009-01-30 
種別 無効の審決 
審判請求日 2006-12-27 
確定日 2008-11-09 
事件の表示 上記当事者間の登録第4774951号商標の商標登録無効審判事件についてされた平成19年10月30日付け審決に対し、知的財産高等裁判所において審決取消の判決(平成19年(行ケ)第10392号、平成20年6月26日判決言渡)があったので、さらに審理のうえ、次のとおり審決する。 
結論 登録第4774951号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4774951号商標(以下「本件商標」という。)は、「コンマー」及び「CONMAR」の文字を上下二段に横書きしてなり、平成15年7月4日に登録出願され、第26類「ボタン類」を指定商品として、同16年5月28日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張の要点
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由及び被請求人の答弁に対する弁駁の理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第70号証(枝番を含む。)を提出している。
1 請求の理由
(1) 商標法第4条第1項第7号について
(ア)請求人
請求人、アイディアル・ファスナー・コーポレーションは、1936年にスライドファスナーの分野を専門とする会社として設立され、現在ではスライドファスナーの分野において世界で2番目に大きな規模を誇る米国の会社である(甲第5号証の1)。
請求人は、米国内に3つの営業所(ニューヨーク・オレゴン・フロリダ)及び世界9ヶ国(香港・メキシコ・バングラディシュ・ドバイ・インド・インドネシア・パキスタン・韓国・台湾)に営業所を構えている(甲第5号証の2)。
請求人が、スライドファスナーのみを取引している状況でこれだけの規模を誇るのは、請求人の商品にそれだけ需要があることに他ならない。
請求人がスライドファスナーの分野で米国内にて周知著名であることは、請求人の商品が、例えば1964年に米国テキサス州ヒューストンにある「Houston Astrodome」球場の芝の貼り付けにそのファスナーが用いられたり、米国にあるスミソニアン博物館に、世界一長いスライドファスナーとしてレーガン元大統領に寄贈したものが展示されている事実、また、第二次世界大戦時及び60年代に米軍に大量のスライドファスナーを提供したことを称えて、スミソニアン博物館の「Air and Space Museum」にてその事実が紹介されていることが示している(甲第5号証の1)。
請求人は、1996年に、米国にある「Scovill Fasteners, Inc.」(以下「スコービル社」という。)を吸収し、その際に、「CONMAR」の欧文字よりなる商標(以下「引用商標」という。)を取得した。
米国における引用商標の登録は「スコービル社」が所有していたところ、更新せずに失効してしまったため、請求人は再出願等を行い、現在、スライドファスナーについて米国連邦登録第2520055号を所有している(甲第6号証)。
日本においても、スライドファスナーについて、引用商標(商願2004-33371及び2004-44687)を出願している(甲第7号証及び甲第8号証)。

(イ)「CONMAR」ファスナー
「CONMAR」ファスナー(甲第5号証の3ないし5及び甲第9号証)が広く世に知られたのは、第2次世界大戦時、軍用ファスナーとしてフライトジャケット等に広く使用されていたことに基づく。
その後、「CONMAR」ファスナーは、50年代及び60年代のフライトジャケットに多用され、70%のシェアを誇っていた(甲第10証及び甲第11号証)。
米国及び日本には、当該フライトジャケットの愛好家が多く存在している。
事実、日本にもフライトジャケットを専門とした雑誌が存在しているほどである(甲第12号証)。
そして、フライトジャケットの年代やモデルを判別するのに、ファスナーは重要な判断要素となっており、ファスナーが特に気になるという愛好家もいるほどである。
インターネットをみても、フライトジャケットの取引にあたり、ファスナーのブランドを明記しているものが非常に多く(甲第13号証ないし甲第18号証)、ファスナーのみ提供する業者も存在している(甲第10号証、甲第11号証、甲第19号証及び甲第20号証)。
このように、「CONMAR」ファスナーは、フライトジャケットや軍服用に製造されていた関係上、需要者・取引者というのは、フライトジャケットや軍服の製造者あるいはそのような衣類を取引する者となる。
そして、「CONMAR」ファスナーは、1950年代及び60年代に多くのシェアを有していたことから当時米国では既に周知・著名となっており、現在においても同様の製品や復刻したフライトジャケット等が取引されていることから、米国で周知・著名であることは明白の事実である。
また、このような製品の愛好家が日本にも多く存在し、雑誌でもそれだけを取り上げられているものも存在している(甲第12号証)ことから、日本でも、「CONMAR」ファスナーは、遅くとも本件商標が出願された2003年以前に既に周知な商標であったといえる。
当該、「CONMAR」ファスナーは、現在でも流通し、取引が行われているため本件商標の登録時にも周知性は失われていないことも明白である。
(ウ)本件商標が剽窃されて出願された経緯
本件商標は、請求人が所有する引用商標と同一の称呼を生じ、欧文字部分の構成も同一のものである。よって、実質的に同一の商標である。
請求人は、本件無効審判を請求するきっかけとなった異議申立を行う前に、本件商標の権利者(代理人)に接触し、「CONMAR」ファスナーは本来的に請求人の商標であるから、引用商標並びにこれに関連する商標の全てを放棄するよう申し入れた経緯がある(甲第21号証)。
これに対して、甲第22号証に示される内容の回答を授かった。その回答の主旨は以下のとおりである。
(a)請求人の引用商標は1990年以降使用されていない。

(b)引用商標は米国では1996年に消滅している。

(c)被請求人は1995年に「スコービル社」(当時の米国での登録権利者)から「CONMAR」製品を製造する許可を得た。

(d)米国ランハム法によると、登録を失効させ、かつ3年以上不使用の場合は権利放棄されたと認められ、請求人はこれに該当する。

(e)引用商標は米国法律事務所によると米国では周知ではない。

(f)請求人が引用商標について権利承継した証拠がない。

さらに、本件商標について特許庁から米国ファスナーメーカー(請求人)の著名な引用商標と出所混同を生ずるおそれがあるため商標法第4条第1項第15号に該当するとの拒絶理由を受け、これに対して提出された意見書においても、やはり同様の主張がされている(甲第23号証)。
しかし、以上は、いずれも事実と異なる主張である。
まず、(a)の引用商標の使用の有無であるが、これは、甲第24号証から、引用商標が1998年に使用されていることは明らかである。
すなわち、甲第24号証では、1998年4月24日付で、日本の「株式会社ザ・リアルマッコイズ・ジャパン」(以下「リアルマッコイズ社」という。)に「#5Vintage Conmar S1ider」を納品し、請求書も送っていることを示している。
また、1999年から2000年にかけて使用していた証拠として、「CONMAR」ファスナーに関する請求書を甲第25ないし31号証に示す。
この請求書には、「CONMAR」の文字は記載されていないが、その省略語として「AUSTRCON07B0」あるいは「AUSTRCON7BS」と記述されている。これは、「Autostirup CONMAR zipper(及び品番)」の略である。このような省略した商品記載は請求書には通常見受けられるものであり、使用していた証拠として採択されるものである。
加えて、該表示が示す商品は甲第32号証に示すファスナーである。
さらに、2002年以降にも、請求人は「CONMAR」ファスナーについて取引を行っている(甲第33号証ないし甲第52号証)。
よって、請求人が「CONMAR」商標を1990年以降使用していないという主張は事実と全く異なる。
次に、(b)の引用商標の米国での消滅についてであるが、1996年に権利が事故により消滅したのは事実であるが、現在では、請求人は甲第6号証に示すとおり「CONMAR」について商標権を所有している。
また、(c)の製造許可についてであるが、被請求人が1995年に「スコービル社」から許可を得たと主張しているが、被請求人が設立されたのは1996年5月であり(甲第53号証)、被請求人がスコービル社に接触したと考えるのは無理がある。
加えて、「スコービル社」においても被請求人と接触したことを示す文書は見当たらず、被請求人の主張は事実に反しているといわざるを得ない。
ところで、請求人は1998年以降に日本企業の「リアルマッコイズ社」と商談・取引を行ったことがある。
この会社は現在解散しているが、該会社の登記簿謄本(甲第54号証)を見てみると、本店が被請求人の本店と同一の住所にあったことがわかった。 そして、同一人物が役員及び代表取締役を行っている事実も判明した。
したがって、被請求人と「リアルマッコイズ社」は実質的に同一であるといえる。
さらに、被請求人が1995年に「スコービル社」と接触したのが事実とすれば、それは、被請求人自身が「リアルマッコイズ社」と自身を同一であると考えていることに他ならず、両社は実質的に同一であると考えるのが自然である。
請求人と「リアルマッコイズ社」との商談であるが、そのやり取りを示す手紙を甲第55ないし60号証に示す。
甲第55号証は、「リアルマッコイズ社」から請求人へ宛てた手紙である。
甲第56号証は、請求人が「リアルマッコイズ社」へ宛てた手紙で、「リアルマッコイズ社」の石塚政秀氏の来訪を歓迎するという内容である。
甲第57号証は、請求人から「リアルマッコイズ社」宛ての手紙で、「CONMAR」ファスナーの商談を行ったことが示されている。
即ち、「貴殿(石塚政秀氏)が我々の工場を訪ねてきてお会いできたことを嬉しく思います。5番ビンテージ「CONMAR」オートマチックロッキングファスナーを8月中旬までに製造するために現在スケジュールの調整を行っているところであります。(中略)我々の「CONMAR」ファスナープログラムに興味を持っていただきまして有難うございます。」という内容である。
甲第58号証は、請求人から「リアルマッコイズ社」へ宛てた手紙で、ビンテージ5番「CONMAR」ファスナーに関する契約書を「リアルマッコイズ社」から受け取ったこと、及び「CONMAR」ファスナーに関する請求書を送ることを示している。
甲第59号証は、請求人から「リアルマッコイズ社」に送られた手紙である。契約書に署名して返送した事実が述べられている。
甲第60号証は、請求人から「リアルマッコイズ社」への手紙で、5番「CONMAR」ファスナーを4つ送った事実が述べられている。
「CONMAR」ファスナーの取引は、結局、「リアルマッコイズ社」の希望する商品ではないとの理由で2000年10月に終わったようである(甲第61号証)。
しかし、その間、「CONMAR」ファスナーが「リアルマッコイズ社」に供給されつづけていた事実は甲第25ないし31号証の請求書の宛先からも明らかである。
以上の手紙のやり取りを見ると、請求人が「リアルマッコイズ社」と「CONMAR」ファスナーについて取引を行っていたのは明白である。
そして、「リアルマッコイズ社」と被請求人が実質的同一人であるので、被請求人自身が請求人に製造依頼を行っていたともいえる。
つまり、被請求人は、請求人が「CONMAR」ファスナーの真の所有者であるとの認識があった上で取引を行っていたのである。
したがって、「スコービル社」の許諾が1995年にあろうとなかろうと、1998年以降の商取引の事実を見れば、「スコービル社」の承諾は本件商標を取得した正当な理由にはならず、無関係な事実であることは明らかである。
加えて、以上の取引事実からすれば、「CONMAR」ファスナーの真の所有者が請求人であることは「リアルマッコイズ社」も認めているところであり、それにもかかわらず、本件商標を出願し登録を受けることは、剽窃行為の何ものでもなく、社会の取引における道徳観念から著しく逸脱する行為であり許されない。
これに対して、被請求人は、異議申立の取消理由通知に対する意見書にて、ファスナーにおける引用商標の真の所有者は被請求人自身であると主張するが、かかる主張が失当であることは以下の(エ)にて言及する。
次に、(d)の米国法の解釈であるが、請求人は、1996年に「CONMAR」ブランドを「スコービル社」から取得した後、当該商標を米国にて使用していることは、甲第25号証ないし甲第31号証及び甲第33号証ないし甲第52号証に示すとおり明らかである。
したがって、仮に、被請求人が示す米国法の基準が正しいとしても、継続して使用しているため、請求人が引用商標を放棄したということにはならない。よって、当該主張も的外れである。
また、(e)の引用商標の周知性の有無であるが、これは恣意的であり参酌に値しないことはもとよりである。
最後に、(f)の請求人の引用商標の権利承継の有無であるが、請求人が「CONMAR」商標について権利承継していることは甲第5号証の1及び米国商標登録を所有していること(甲第6号証)より明らかである。
以上のとおり、被請求人が自らを正当権利者と主張する内容のほとんどが事実と異なり、被請求人が本件商標を含む「CONMAR」商標の所有者であると主張することになんら根拠がない。

(エ)被請求人がファスナーにおける引用商標の真の所有者であることの失当
請求人は、本件商標に対して異議申立を行い、異議の審理にて本件商標に対しては商標法第4条第1項第7号に該当するとの取消理由通知が発せられた(甲第62号証)。
この取消理由通知に対して、被請求人は、意見書(甲第63号証)を提出しており、被請求人自身がファスナーにおける引用商標の真の所有者であると主張している。その内容を抽出すると以下のとおりである。
(a)「リアルマッコイズ社」は、1992年末に商標「CONMAR」を付したファスナーの製造委託のために「スコービル社」との交渉を開始した。(中略)交渉において、「スコービル社」社長Mr. Ronnie LOVELは、既に自社の商標「CONMAR」に対する興味を失っているため、(中略)「リアルマッコイズ社」からの特注により「CONMAR」の文字を加え、これにより製造された商標「CONMAR」が付されたファスナーを「リアルマッコイズ社」が自由に販売することで両社は合意した。(甲第63号証の「意見書」中3頁5行目以下)

(b)「リアルマッコイズ社」と「スコービル社」との間で交わされた商標「CONMAR」が付されたファスナーを自由に販売する旨の合意は、以後「スコービル社」が米国を含め商標「CONMAR」を自己の商標として使用する意思はなく、また「リアルマッコイズ社」による商標「CONMAR」の使用行為に対して自己の商標権を行使しないことを表明するものである。(甲第63号証の「意見書」中3から4頁)

(c)異議申立人(請求人)は1996年3月4日をもって商標「CONMAR」にかかる商標権(米国)を事故により失効させており、しかもその直後に再出願を行っていない。
これは、「スコービル社」のみならず承継会社である異議申立人もまた、商標「CONMAR」を自己の商標として使用する意思はなく、また、「リアルマッコイズ社」による商標「CONMAR」の使用行為に対して商標権の権利行使をする意思がないことを示すものである(甲第63号証の「意見書」中4頁4行目以下)。

(d)「リアルマッコイズ社」と「スコービル社」との間で交わされた、商標「CONMAR」が付されたファスナーを「リアルマッコイズ社」が自由に販売する旨の合意は、少なくともわが国においては、「スコービル社」及びその承継会社である異議申立人(請求人)が商標「CONMAR」について権利取得をすることはなく、また権利行使をすることもないという意思表示であると理解される。」(甲第63号証の「意見書」中4頁19行目以下)

(e)異議申立人のカタログにおいて「CONMAR」が付されたファスナーが、他社の商標が付されたファスナーとともに「Custom Zippers」のカテゴリーで並べて掲載されている事実もまた、「リアルマッコイズ社」からの依頼に基づいて異議申立人(請求人)が生産したファスナーであることを異議申立人自らが明らかにしている。(甲第63号証の「意見書」中6頁7行目以下)

要約するに、被請求人の主張は、被請求人自身がファスナーにおける引用商標の真の所有者であるとの認識がある。
しかし、かかる認識は完全な誤認であることは以下のとおり自明であり、採用される余地は全くない。
まず、上記(a)について言及するに、被請求人が「スコービル社」と「CONMAR」ファスナーについて交渉を開始したところ「金型が存在しない」ので製造できないとの回答を得たと主張しているが、「スコービル社」に金型が存在していた事実は、「スコービル社」が「CONMAR」ファスナーの原始的製造者であったことが裏づけされていることがわかる。
また、もし、被請求人が「CONMAR」ファスナーの真の所有者なら、「スコービル社」に接触する必要性はない。
それにもかかわらず「スコービル社」と接触したのは被請求人自身、「スコービル社」が原始的に「CONMAR」ファスナーの所有者であるとの認識があったからに他ならない。また、「スコービル社」が「CONMAR」ファスナーへの関心度が低いことが真の商標権者の立場を打ち消す根拠にならないことはいうに及ばない。
上記(b)の主張に対して、被請求人は合意書を提出していない。
また、請求人はかかる合意について認識しておらず、かかる合意に請求人の引用商標を使用しない旨の意思が表明されていたか、あるいは米国での権利不行使特約が含まれていたかは不明であるが、少なくともこの合意の事実の有無と日本での権利取得の正当性は別問題であり、考慮に値しないことは明らかである。
上記(c)の主張では、米国での商標権失効について言及されているが、米国では商標の権利登録は商標を使用するための前提義務ではない。
これは米国特許商標庁もそれをウェブサイトにて明らかにしている。
したがって、米国で、引用商標の商標権が失効したからといって、日本での引用商標の出願が正当化されることはない。
上記(d)では、「リアルマッコイズ社」と「スコービル社」との間で交わされた「CONMAR」ファスナーの合意がわが国では「スコービル社」及びその承継会社である異議申立人(請求人)が商標『CONMAR』について権利取得をすることはなく、また権利行使をすることもないという意思表示であると理解される。」と述べているが、合意における契約の準拠法が明らかにされておらず、当該合意がわが国でも効力があるのか不明であるので、合意の存在のみで日本での引用商標のファスナーについての出願が正当化されるとの主張は採用できない。
上記(e)では、請求人のカタログの「Custom Zippers」のカテゴリー内で「CONMAR」が掲載されていることを述べているが、この「Custom Zippers」は商品のデザインにあわせてファスナーのサイズや色、材料等を変更しなければならない場合に対応するという趣旨で、ここに掲載されているファスナー全て請求人が所有する商標ではない。
事実、この頁に請求人のオリジナル商品「IDEAL」の刻印の入ったファスナーも掲載されている。
加えて、「CONMAR」ファスナーはそれ以外の頁でも紹介されている(甲第5号証)。
この「CONMAR」ファスナーが脚光を浴びたのは、甲各号証にみられるように第2次世界大戦時のことであり、この当時「CONMAR」ファスナーを製造していた米国会社が原始的な所有者であることは疑いのない事実である。
逆を言うと、日本人である被請求人が原始的所有者であるはずがない。
請求人は正当に「スコービル社」から「CONMAR」のブランドを引き継いでいる正当な権利者であり(甲第5号証)、被請求人がそれであるはずはない。
また、甲第57号証の請求人から被請求人に宛てた手紙の末文に「Thank you for your continuing interest in our Conmar zipper program.」と記載されている。
これは、訳すと「我々(請求人)のConmarジッパープログラムに興味を示し続けてくれて感謝します。」という内容である。
もし、被請求人が「CONMAR」の所有者であることが請求人においても理解されているものであれば、この行、とりわけ「our Conmar zipper program」は存在し得ない。
この行から、請求人が「CONMAR」ファスナーの所有者であり、(Custom Zipperとして)被請求人の求めに応じて改良・改変を進めていると認識できる。そして、事実そうであった。
被請求人は、自らが所有者であることの根拠として意見書にて乙第1号証を提出している。しかし、いずれも、宛先、送信者、日付が記載されておらず、しかも日本語で作成されている。
「スコービル社」から受領した書類の提出は一切なく、この乙第1号証をして、被請求人が「CONMAR」商標の所有者であることは証明されていない。
また、乙第1号証は単なる製造における注意やポイントを喚起するものにすぎない。
以上述べたとおり、被請求人の主張や立証内容をみても、被請求人がファスナーについて「CONMAR」商標の所有者であることは何ら根拠がなく、失当であることは明らかである。

(オ)異議申立の維持決定の失当
請求人が申し立てた異議申立について、特許庁では登録を維持する決定がなされた(甲第64号証)。
しかしながら、この異議申立の維持決定の理由は、取消理由とは明らかに内容にずれがあり、請求人に納得できるものではなかった。
すなわち、取消理由通知(甲第62号証)では、本件商標は「公正な取引秩序を乱し、社会一般の道徳観念ないしは国際信義に反するものであるので商標法第4条第1項第7号に該当する」と判断しているが、異議の決定では「本件商標は、その構成自体が矯激、卑わい、差別的な印象を与えているような文字又は図形からなるものではなく、これをその指定商品について使用することが社会公共の利益、一般道徳観念に反するものということができず、」と述べており、「国際信義に反する」かどうかについての判断が避けられている。
さらに、異議の決定には異議申立書及び意見書の内容について言及することなく、周知性の立証について主に言及しており、第4条第1項第7号の議論が十分ではないことは明らかである。
同号に該当する商標として「剽窃」及び「国際信義に反する」商標が該当することは以下に述べるとおり明らかであり、特許庁は異議の決定において、これについても言及すべきであった。
請求人及び被請求人いずれも、本件商標が「卑わい」等かどうかの議論は異議申立の審理において全くしていない。
請求人は、この決定に不服であり、この度無効審判を請求して十分な議論及び納得のいく結論が導き出されることを期待する。

(カ)商標法第4条第1項第7号の解釈
商標法第4条第1項第7号公序良俗に反する商標は登録されないと規定されているところ、その適用範囲は、単に卑わいや不快な商標が該当するのみならず、剽窃された出願についても社会の一般的道徳観念に反するとして本号が適応される。
事実、裁判所においても「商標法4条第1項第7号の『公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標』には、商標の構成自体がきょう激、卑わい、差別的又は他人に不快な印象を与えるような文字、図形、又は、当該商標を指定商品あるいは指定役務について使用することが社会公共の利益に反し、あるいは、社会の一般道徳観念に反するような商標、(中略)そして、上にいう、社会の一般道徳観念に反するような場合には、本件のように、ある商標をその指定役務について登録し、これを排他的に使用することが、当該商標をなす用語等につき当該商標出願人よりもより密接な関係を有する者等の利益を害し、剽窃的行為である、と評することのできる場合も含まれ、このような商標を出願し登録する行為は、商標法4条第1項第7号に該当するというべきである。」と判断している(甲第65号証)。
さらに、特許庁においても同様の審決・決定がなされている(甲第66及び67号証)。

(キ)結論
以上述べたとおり、本件商標は請求人の商標を剽窃して登録されたものであり、社会の一般道徳観念に照らすと被請求人に登録を認めることは信義則に反し、許されるものではない。

(2) 商標法第4条第1項第10号について
本件商標は、請求人の日本で周知な引用商標と称呼を同一にする商標で、指定商品も請求人が使用している商品が「スライドファスナー」であるのに対して、本件商標の指定商品は、これと同ー又は類似するものである。
引用商標が本件商標の出願時前から周知であったことは、各証拠から明らかであり、現在においても周知性を失っていない。

(3) 商標法第4条第1項第15号について
上述したとおり、本件商標は、請求人の周知商標である引用商標と実質的に同一で指定商品も同一のものを含んでいる。
このような商標を指定商品に使用した場合は、請求人に係る商品と誤認混同を生じさせるおそれがある。
事実、被請求人の「CONMAR」商標の出願に対して特許庁は、商標法第4条第1項第15号の拒絶理由通知を出している(甲第68号証)。
これに対して、意見書が提出され(甲第23号証)、登録査定となったが、意見書の内容は前述のとおり事実と異なっている。

(4)商標法第4条第1項第19号について
本件商標は、米国ではもとより、日本においても周知な引用商標と実質的に同一の商標で、引用商標及びこれに関連する商標は請求人の商標であるとの認識があり、製造依頼を行っていたにもかかわらず、日本で登録されていなかったことを奇貨として出願・登録し、請求人の国内参入を阻止している。これは不正の目的というに他ならない。
そして、上述のとおり、請求人の引用商標は本件商標の出願時及び登録時においても周知であること明らかである。

(5)むすび
以上から明らかなように、本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同第10号、同第15号又は同第19号の規定に該当するにもかかわらず登録されたものであるから、その登録は商標法第46条第1項の規定により無効とされるべきである。

3 弁駁の理由
(1)被請求人は、審判事件答弁書の理由において主張の省略を行っているが、無効審判は異議申立と続審の関係にはないため主張の援用・省略は許されないものである。

(2)次に、被請求人は、請求人の米国連邦登録第2520055号「CONMAR」に関する言及がないと述べている。すなわち、米国で第三者が当該商標を出願し登録を受けた後に請求人がそれを譲り受けた事実に関する言及を求めている。
米国での権利の変動は本件とは全く無関係であり、言及は不要であると認識するが、念のため言及する。米国での第三者による引用商標の登録第2520055号は完全なる過誤登録であった。
請求人は、当該第三者の引用商標の登録に気づき、当該第三者と接触したところ、当該第三者は該商標登録が請求人によって無効にされることを認識して、請求人に権利を譲り渡したのである。
交渉の経緯を示す書類は当該第三者との間で守秘義務が課されているので提出することは差し控えるが、米国の商標登録が過誤であるとき、被請求人の主張には根拠がなくなる。
また、米国の商標登録簿記載事項に公信力が認められるとする根拠もない。
この点、米国は先使用主義を採用しているため、登録を取得したとしても先使用者の存在により後で無効となる可能性を含んでいる法体系をとっている。
引用商標はまさにその例であり、請求人は米国において継続して引用商標をファスナーに使用し周知・著名性を獲得していたので、簡単な説得によって米国での引用商標の権利を第三者より譲り受けることができたのである。 よって、「『米国において第三者が出願し、米国連邦登録を受けた』という事実は、請求人が重ねて主張する『CONMAR』商標の米国における周知・著名性を否定する証左に他ならない」との主張は、根拠にならない事実を持ち出しており、採用できないことは明白である。

(3)さらに、米国で連邦登録第2520055号の最初の権利者Mr. Phi1ip Bueh1erから公証付宣誓供述書を入手したのでこの写し(甲第69号証)を提出し、米国でのMr. Phi1ip Bueh1erによる引用商標の登録が過誤であったことを裏付ける資料とし、請求人が引用商標の正統な権利者であることの証明を補強する。
甲第69号証に添付した公証付宣誓供述書に示されているとおり、連邦登録第2520055号の最初の権利者Mr. Phi1ip Bueh1erは、請求人が「CONMAR」商標についてコモンローに基づく権利を有していることを認識しており、そして、請求人がCONMARブランドのファスナーの唯一の製造・販売者であると認識している。
すなわち、Mr. Phi1ip Bueh1erが登録した米国連邦登録が、請求人のコモンローに基づく権利によって取り消される可能性があることを、Mr. Phi1ip Bueh1er 自身が認識していることが、この宣誓供述書によって明白となった。
そして、この宣誓供述書によって、被請求人の答弁における上記(2)の主張は、その根拠が無くなり、被請求人がファスナーに関する引用商標の権利者となる理由は何処にも存在しなくなった。

(4)被請求人のこれまでの主張には、自らが正当な権利者であるとする積極的な根拠がまったく示されておらず、「米国企業が興味を示していない」や、「米国で権利が失効された」「第三者が登録を受けた」という消極的なものに終始している。
そしてその消極的根拠も全て採用されるものではないことは、これまでの請求人の主張により明らかである。

(5)被請求人は、いわゆる復刻版のジャケット等を扱う会社であることは、被請求人のウェブサイト(http://www.toys-mccoy.com/store/index.htm1#Jacket)から明らかである。
上記のURLをみると、米国の空軍で着られていたジャケットの復刻版を多く販売していることがわかる。
CONMARファスナーが米軍のフライトジャケットに利用されていたことは請求理由で述べたとおりであり、被請求人がフライトジャケットの復刻版を販売している事実は、被請求人は引用商標が原始的に自己に帰属していないことを明確に認識していたことが窺える。
それにもかかわらず、日本で登録されていないことを奇貨として自己がCONMAR商標主であると主張することは、国際信義則上許されないことであり、本件商標の登録は商標法第4条第1項第7号に該当するものとして無効にされるべきである。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨以下のように述べている。
1 まず、被請求人である商標権者は、請求人から複数の商標登録に対して度重なる商標登録異議申立て、無効審判請求を受けており、その応答負担が過大となっている。
また、本件商標登録に対する平成16年8月30日付申立ての商標登録異議申立事件(異議2004-90538)の申立て理由との比較において、本件審判請求理由は追加された一部を除いてほぼ同旨である。
したがって、上記異議事件と重複する請求理由については、これに対する被請求人の主張内容も同旨であるから、審判請求書添付の甲第63号証(平成17年8月15日付「意見書」)と重複する内容の主張は可能な限り避けることとし、以下においては被請求人たる商標権者が特に強調しておきたい点のみ、主張することとする。

2 米国における引用商標の周知・著名性について
請求人は、審判請求書において、上記異議申立事件において被請求人が提出した意見書に対する反論を種々述べているが、いずれも引用商標の原始的取得者であることの主張に終始している。
その一方で、現在請求人の名義となっている米国連邦登録第2520055号に関しての当該意見書での被請求人の主張については、何らの言及もない。
すなわち、先の異議申立事件から本件審判事件を通じて、請求人は引用商標を失効させた後、あたかも自らが米国において出願し、権利取得をしたかのような主張を展開している。
しかし、実際は、請求人と「リアルマッコイズ社」との取引関係が終了し、被請求人「有限会社トイズマッコイプロダクト」による本件商標権に係る商標登録出願がなされた後である2004年になってから、米国にて第三者が出願し、米国連邦登録(第2520055号)を受けた「CONMAR」に係る商標権を取得しているのである(甲第63号証「意見書」中、第6頁第28行目以下)。
この点については、本件商標の審査段階で提出した平成16年3月3日付意見書(甲第23号証)でも米国弁護士からの回答として記しており、2001年4月16日に個人(フィリップ ベーラー)が、遅くとも2001年3月21日以降のアメリカの州際通商での使用を主張して「CONMAR」に係る商標を出願し、異議なく公告され、ベーラー氏に対して2001年12月18日に第2520055号をもって登録がなされている事実がある(甲第23号証「意見書」中、第4頁第5行目以下)。
以上の「米国において第三者が出願し、米国連邦登録を受けた」という事実は、請求人が重ねて主張する引用商標の米国における周知・著名性を否定する証左に他ならないものと思料する。

3 平成19年5月18日付提出の弁駁書について
(1)商標に関する審判手続では民事訴訟手続と異なり職権主義を採用しており(商標法56条で準用する特許法150条、同152条、同153条等)、仮に被請求人の主張が全く無かったとしても請求人の主張が直ちにすべて認められるような審理構造は採られていない。
したがって、請求人は一体何を根拠に主張の援用・省略は許されないとしているのか不明であり、請求人には商標の審判制度に対する何か大きな誤解があるものと思料する。
また、前記答弁書の内容より、被請求人が別事件の主張を援用したり、主張を省略したりしていると考えるのは、早計であるものと思料する。
すなわち、答弁書では既に行われた異議事件との相違点を明確にするべく、その相違点に関する主張を明示的に記載した上で、その他の点については甲第63号証の内容と同旨であることをこれまた明確に主張している。
そして、この甲第63号証は本審判事件の審判請求書に添付されたものであるから、別事件の主張や証拠を援用したことにも当たらない。さらに念のために言えば、請求人提出の証拠を被請求人が使用する点は、民事訴訟手続における証拠共通の原則が妥当し、当然認められるものと考えられる。

(2)請求人は「交渉の経緯を示す書類は当該第三者との間で守秘義務が課されているので提出することは差し控える」とし、当弁駁書では他に何らの証拠も添付することなく、貴庁や被請求人など第三者がおよそ知ることのできない、交渉当事者のみが知り得る内容を強弁しているのみである。
したがって、請求人による米国連邦登録第2520055号が過誤登録であったこと及び請求人へ譲渡された経緯に関する主張は、反論する価値も無い、全くもって信憑性の無い主張であるものと思料する。

4 平成19年6月20日付提出の弁駁書について
(1)「2007年6月12日」とされた宣誓供述書の日付を見ても明らかであるとおり、先に提出された弁駁書における主張が、何らの証拠も示さずになされた信憑性の無い主張に止まるものであることを請求人も自覚し、弁駁書提出後に慌ててMr.Phi1ip Buehlerに依頼して一筆取った、とも言える代物であることは容易に推察できる。
仮に、この宣誓供述書が、2004年7月の譲渡の際、Mr.Ph111p Buehler に請求人主張のような事実を認めさせて取得したものであるなら、まだ、その内容も信用するに足るものであると考えられる。
しかしながら、譲渡から約3年も経過し、Mr.Phi1ip Buehlerにおいて既に興味もなくなったであろう商標についての宣誓供述書を今さら取得したところで、その内容について証明されたというのはあまりに無理があり、証明力に欠ける証拠であるものと言わざるを得ない。
しかも、弁駁書では、交渉の経緯は守秘義務が課されているとしながら、Mr.Phi1ip Buehlerにとって、これほどまで不利な内容のものが、今になって宣誓供述書の形で示されるということも辻棲が合わず、不可解といわなければならない。この宣誓供述書及びその内容の真偽については、請求人からMr.Phi1ip Buehlerに本宣誓供述書が依頼された経緯を示す連絡書簡(コレポン)等と併せ見て判断されるべきものと思料する。
さらに百歩譲って、宣誓供述書の内容が真正であったとしても、結局のところ請求人が「CONMAR」商標の原始的取得者であることが示されているにすぎず、請求人が異議事件から本審判事件まで通じて重ねて主張する引用商標の米国における周知・著名性を裏付ける内容は把握できない。
したがって、弁駁書に添付して提出された上記宣誓供述書は、少なくとも「CONMAR」商標出願時の米国における周知・著名性を裏付ける証拠には該当しないものと思料する。

(2)我が国の商標法は登録主義を前提とし、未登録の商標に関しては周知・著名である場合にのみ保護されることが大原則である(4条1項10号等)。
したがって、剽窃的な出願とされるには、対象となる商標が我が国や外国において周知・著名であることが前提となるものと思料する。
例えば甲第65号証において示されている裁判例においても、「KJ法」なる語が一般に普及し、広く認識されていることを前提として、剽窃的出願と認定されていることがその証左である。
この点に関し、請求人は、審判請求書において、本審判事件に先立って行われた異議事件の維持決定について、「周知性の立証について主に言及しており、第4条第1項第7号の結論が十分ではない」と批判している(同請求書第13頁24行目)。
しかし、上記のとおり法4条1項7号の適用対象となる商標は、周知・著名商標であることが前提となることを考慮すれば、維持決定における周知性への言及は、法4条1項7号の異議理由についての判断でもあるものと理解でき、そうすると請求人による当該維持決定に対する批判は全く当を得ていないものであると思料する。
よって、対象商標の周知・著名性をないがしろにした上での剽窃的行為であるとする請求人による主張は全くもって当を得ていないものであり、本件商標の登録は商標法第4条第1項第7号に該当しないものである。

5 むすび
したがって、本件商標登録は、請求人の主張する登録無効理由のいずれにも該当しないものであるから、本件審判請求は成り立たないものである。

第4 当審の判断
1 商標法第4条第1項第10号について
商標法第46条第1項は、商標登録が、「他人の業務に係る商品若しくは役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標又はこれに類似する商標であつて、その商品若しくは役務又はこれらに類似する商品若しくは役務について使用をするもの」(商標法第4条第1項第10号)に該当するときは、その商標登録を無効にすることについて審判を請求することができる旨を規定している。
そこで、これを本件について検討する。

2 引用商標の周知性について
(1) 事実認定
(ア) コンマー社による米国商標の登録
被請求人が、審査において平成16年3月3日に提出した意見書のうちの添付資料によれば「CONMAR」の文字からなる米国商標(第324689号)は、もともとは米国のコンマー社が、その製造販売するファスナーに使用していたものであり、昭和10年5月28日に登録されたことが認められる。

(イ) インターネットにおけるコンマー社製ファスナーの紹介等
(a)甲第10号証は、平成18年8月24日ころインターネットに掲載されていた「MASH-JAPAN」作成のコンマー社のファスナーの紹介記事であり「WWII時、軍用ファスナーにおけるTALONのシェアを、仮に50%とすると後の50%をCONMARとCROWNが二分した感がある。WWII時のシェアにおいてTALONに遅れを取ったCONMARではあったが、50年代、60年代のAFフライトジャケットに関しては、このメーカーのブラックフィニッシュ・ファスナーが多用され、多くのフライトジャケットファンには馴染み深いメーカーである」と記載されており、コンマー社の5種類のファスナーの写真が掲載されている。

(b)甲第11号証は、平成18年8月24日ころインターネットに掲載されていた「有限会社レッドクラウド」作成のファスナーの紹介記事であり、米国のファスナーの各製造メーカーについて説明が記載されており、各メーカーのファスナーの引き手の写真が多数掲載されている。
このうち「CONMAR」については、1930年代後半よりA-2など、 フライトジャケットに多く採用され、1950から1960年代頃には約70%ものシェアを誇っていた旨が記載されている。

(c)甲第13号証は、平成16年8月16日ころインターネットに掲載されていた「ゴールドラッシュ」作成の古着の米軍用フライトジャケットの販売記事であり、販売対象とされている各フライトジャケットについて、写真、商品名、サイズ、状態とコメント、価格が記載されており、状態とコメントの欄に、ファスナーのメーカーが記載されているものが多く、コンマー社製のファスナーを使用したものも相当数掲載されている。

(d)甲第14号証は、平成18年8月24日ころインターネットに掲載されていた「F.J.VECK」作成のフライトジャケットの紹介記事であり、「リアルマッコイズ社」が米軍用フライトジャケットを復刻した製品が紹介されており、その中に「フロントジッパーは合衆国連邦規格V- 、F-106に合格した大型のコンマージッパー」とあり、「コンマー社」のファスナーを使用していることが掲載されている。

(e)甲第15号証は、平成16年8月17日ころインターネットに掲載されていた「ウォルフローブ」作成の古着の米軍用フライトジャケットの販売記事であり、販売対象とされている各フライトジャケットについて、商品名、製造年、サイズ、状態、価格の他、使用されているファスナーの製造会社が記載されており、「コンマー社」製のファスナーを使用したものも相当数掲載されている。

(f)甲第16号証は、平成18年8月24日ころインターネットに掲載されていた「Shinji Noki」作成のフライトジャケットの紹介記事であり、「リアルマッコイズ社」が米軍用フライトジャケットを復刻した製品が紹介されており、その中に「そして忘れてはならないのが、黄金色に光るCONMARジッパー」とあり、コンマー社のファスナーを使用していることが掲載されている。

(g)甲第17号証は、平成16年8月17日ころインターネットに掲載されていたジーンズのズボンの紹介記事であり、「コンマー社」のファスナーを使用していることが掲載されている。

(h)甲第18号証は、平成18年8月24日ころインターネットに掲載されていた、「リアルマッコイズ社」が販売しているフライトジャケットの一覧表であり、各商品について、品名、材質、色などの他、ファスナーのメーカーが記載されており、「コンマー社」製のファスナーを使用したものも相当数掲載されている。

(i)甲第19号証は、平成18年8月24日ころインターネットに掲載されていた「MASH-JAPAN」作成のコンマー社のファスナーの紹介記事であり、第二次世界大戦から1960年代にかけての時期に製造されたとされる8種類のコンマー社製のファスナーについて、その写真とともに、品名、基本長さ、価格などが掲載されている。

(j)甲第20号証は、平成18年8月24日ころインターネットに掲載されていた「IZUMIYA」作成の補修部品(Repair parts)としてのファスナーの紹介記事であり、取り扱っているファスナーのメーカーとして、TALON、CROWN、GRIPPER、YKK、WALDES、ORIGINALなどの他、「CONMAR」が記載されている。

(ウ) コンマー社製ファスナーの写真
甲第9号証(コンマー社製ファスナーの写真)によれば、コンマー社製のファスナーの中には、引き手に「CONMAR」との表示を付したものが
あったことが認められる。

(エ) フライトジャケットのカタログ
甲第12号証は、成美堂出版が平成8年12月及び平成10年12月に発行した「フライトジャケットカタログ」と題するカタログ(単行本、ソフ
トカバー)の表紙の写しである。
平成8年12月発行のカタログの表紙には、題名の他「定番モデルから超最新作までメーカー別に一挙大公開!!」と記載され、メーカー等の表示として「AVIREX/ALPHA/EVIS/C.A.B/ C.C.MASTERS/NAKATA SHOTEN/BUZZ RICKSON’S/THE REAL McCOY’S/MASH」と記載されている。また「INTERVIEW」、「魅力を語る!」という見出しの下に「バックペイント・アーティスト(ザ・リアルマッコイズ・・・」と記載されている。)
平成10年12月発行のカタログの表紙には、題名の他「”FLIG 、HT JACKET OF THE YEAR”」、 「’99シーズンのトピックス」と記載され、メーカー等の表示として「TOYO ENTERPRISE/THE REAL McCOY’S/Pherrow’s/AVIREX USA/NAKATA SHOTEN」と記載されている。
上記の「THE REAL McCOY’S」、 「ザ・リアルマッコイズ」とは、リアルマッコイズ社を指すものと推認される。

(2)原告は、日本においては、「リアルマッコイズ社」が「CONMAR」との表示が付されたファスナーを製造販売するまでは、ファスナー自体が注目されることはなく「CONMAR」との文字からなる米国、商標は全く知られておらず、日本において米軍用フライトジャケットの復刻版の市場を作ったのはリアルマッコイズ社であった旨主張する。
確かに、甲第12号証のカタログ表紙の記載や後記乙第15号証の記載からすると、「リアルマッコイズ社」及び原告は、日本のフライトジャケットの主だった業者に含まれ、市場形成に寄与しており、「リアルマッコイズ社」及び原告の営業活動を通じて日本における「CONMAR」との表示の周知性が高まった面のあることは認められる。
しかし、そうであるとしても、それによって「CONMAR」との表示が「コンマー社」及びそのファスナーに関する事業を引き継いだ者のファスナーを表示するものとして広く知られていたことが否定されるものではない。

(3)「コンマー社」の廃業と「スコービル社」による承継
甲第22号証及び甲第23号証のうちの添付資料によれば、「コンマー社」は廃業し、その事業及び商標権をスコービル社が承継したこと、そのため「CONMAR」との文字からなる米国商標(第324689号)に係る商標権も「スコービル社」が承継したことが認められる。

(4)請求人による「スコービル社」からの商標、事業の承継
甲第5号証によれば、被告は、昭和11年に米国で設立されたスライドファスナーの製造会社であり、当該分野で世界第2位の規模を有しており、9か国に営業所を有することが認められる。
同号証には、請求人が、平成8年に、スコービル社から「Scovill」の表示を付したファスナーの事業及び「Conmar」の表示を付したファスナーの事業を取得した旨記載されている。
そして、「スコービル社」は「CONMAR」との文字からなる米国商標に係る商標権を「コンマー社」から承継したこと、「スコービル社」は、平成5年から平成7年にかけて「CONMAR」との表示を付したファスナーを製造して「リアルマッコイズ社」に販売し「CONMAR」との文字からなる米国商標を使用していたといえることからすれば資産譲渡契約を締結した当時「スコービル社」は「CONMAR」との文字からなる米国商標に係る商標権を有していたものと認められる。
そして、甲第5号証のカタログを考慮し、請求人が平成10年から平成12年にかけて「リアルマッコイズ社」と「CONMAR」との表示を付したファスナーの取引を行っていたことをも考慮すると、請求人は、資産譲渡契約に基づき「スコービル社」からファスナーに関する事業(「CONMAR」との文字からなる米国商標(第324689号)を使用する事業を含む)及び「CONMAR」との文字からなる米国商標(第324689号)に係る商標権を承継したものと認められる。

(5) 米国商標に係る商標権の消滅等
(ア)甲第22号証、 甲第23号証のうちの添付資料によれば、被告がスコービル社から承継した「CONMAR」との文字からなる米国商標(第324689号)に係る商標権は、平成8年3月4日、更新されずに消滅したことが認められる。
甲第6号証(米国特許商標庁の公開商標公報)によれば、フィリップ・ベスラーは、平成13年12月18日、ファスナーについて「CONMAR」との文字からなる米国商標(第2520055号)の登録を受け、請求人は、この商標に係る商標権の譲渡を受けたことが認められる。
このように、被告が現在有する「CONMAR」との文字からなる米国商標(第2520055号)に係る商標権は、「コンマー社」から「スコービル社」を経て承継されたものそれ自体ではなく、請求人がフィリップ・ベスラーから譲渡を受けたものである。

(イ) しかし、「スコービル社」は、平成5年から平成7年にかけて「リアルマッコイズ社」と「CONMAR」との表示を付したファスナーの取引を行っており、請求人は平成10年から平成12年にかけて「リアルマッコイズ社」と「CONMAR」との表示を付したファスナーの取引を行っていた。
したがって、被告が「スコービル社」から承継した米国商標(第324689号)に係る商標権が消滅し、被告が新たに「CONMAR」との文字からなる米国商標第2520055号の譲渡、登録を受けたものであることを考慮しても、「スコービル社」と請求人の間の資産譲渡契約が締結された平成8年から現在に至るまで、ファスナーについて「CONMAR」との表示は、コンマー社及び、そのファスナーに関する事業を引き継いだ請求人を出所として表示するものであったと認められる。

(6) むすび
上記(1)ないし(5)において認定した事実によれば、(a)コンマー社のファスナーは第二次世界大戦以降米軍用フライトジャケットやジーンズに使用され、1950年代、60年代には、一説によれば米軍用フライトジャケットのファスナーについて約70%のシェアを有していたといわれるほど多く使用されていたこと、(b)遅くとも「フライトジャケットカタログ」と題するカタログ(甲第12号証)が発行された平成8年ころまでには、日本において、フライトジャケットについて、愛好家等による市場が成立し、古着の米軍用フライトジャケットや米軍用フライトジャケットを復刻したものの取引が行われ、それらの取引業者が複数存在したこと、(c)日本においても市場が成立していたことからして、米軍用フライトジャケットが製造、使用された本国ともいうべき米国においても、平成8年より前にフライトジャケットについて愛好家等による市場が成立していたこと、(d)フライトジャケットについて、ファスナーは注目される部分の一つであり、フライトジャケットの取引において、どのメーカーのファスナーが使用されているかを明示することが多いこと、(e)補修部品等としてファスナーだけの取引も行われていること、(f)「コンマー社」製のファスナーの中には、引き手に「CONMAR」との表示を付したものがあったこと、(g)遅くとも日本においてフライトジャケットの市場が成立していた平成8年ころから現在に至るまで「CONMAR」との表示は、「コンマー社」及びそのファスナーに関する事業を引き継いだ者のファスナーを表示するものとして、日本国内及び米国において、それらのファスナーの需要者であるフライトジャケットの取引業者や愛好家等の間で広く知られていることが認められる。

3 本件商標と引用商標の類似について
本件商標は、「コンマー」の片仮名文字及び「CONMAR」の欧文字を二段に書してなるものであるから、その構成文字に相応して「コンマー」の称呼を生ずる。
一方、引用商標は、「CONMAR」の欧文字よりなるものであるから、その構成文字に相応して「コンマー」の称呼を生ずる。
そうとすれば、本件商標と引用商標は、「コンマー」の称呼を共通にする、称呼上類似する商標である。
また、本件商標と引用商標は、「CONMAR」の欧文字部分を共通するから外観上も類似する商標である。
してみれば、本件商標と引用商標とは、ともに特定の観念を有さない造語であって観念上は比較することができないとしても、外観及び称呼において類似する類似の商標である。

4 本件商標の指定商品と引用商標が使用されている商品の類否について
本件商標の指定商品は、「ボタン類」であるところ、「ボタン類」には、引用商標が使用されている「ファスナー」が包含されている。
そうとすれば、本件商標の指定商品「ボタン類」と引用商標が使用されている「ファスナー」とは同一又は類似の商品と認められる。

5 結論
上記2ないし4によれば、引用商標は、他人の業務に係る商品を表示するものとして、本件商標の登録出願前の平成8年より現在に至るまで「ファスナー」の需要者の間で広く認識されており、また、本件商標と引用商標とは称呼及び外観において類似する商標であって、さらに、本件商標の指定商品「ボタン類」と引用商標が使用されている「ファスナー」とは同一又は類似の商品と認められる。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に違反して登録されたものといわざるを得ないから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とする。
なお、被請求人は、平成20年8月8日付けで審理再開の申立てをしたところ、申立の理由として「本件に係る先の審決を取消して差し戻した知的財産高等裁判所の弁論において提出された事実及び証拠方法並びにそれらに関連する事実及び証拠方法の提出の必要がある」旨述べている。
しかしながら、当該申立てから相当の期間が経過するも、何ら証拠等の提出がなされていないから、審理再開の必要は認めないものとする。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2007-10-15 
結審通知日 2007-10-19 
審決日 2007-10-30 
出願番号 商願2003-56119(T2003-56119) 
審決分類 T 1 11・ 25- Z (Y26)
最終処分 成立 
前審関与審査官 門倉 武則 
特許庁審判長 井岡 賢一
特許庁審判官 佐藤 達夫
小川 きみえ
登録日 2004-05-28 
登録番号 商標登録第4774951号(T4774951) 
商標の称呼 コンマー 
代理人 宮永 栄 
代理人 田畑 浩美 
代理人 西村 雅子 
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