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審決分類 審判 全部申立て  登録を取消(申立全部取消) Y09
審判 全部申立て  登録を取消(申立全部取消) Y09
管理番号 1187735 
異議申立番号 異議2007-900191 
総通号数 108 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2008-12-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2007-04-20 
確定日 2008-10-29 
異議申立件数
事件の表示 登録第5021342号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第5021342号商標の商標登録を取り消す。
理由 第1 本件商標
本件登録第5021342号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲(1)の構成よりなり、平成17年12月21日に登録出願され、第9類「測定機械器具,電気磁気測定器,電気通信機械器具,電子応用機械器具及びその部品」を指定商品として、同19年1月26日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
登録異議申立人「アルパイン株式会社」(以下「申立人」という。)は、次の16件の登録商標を引用している。
(1)登録第1339287号商標(以下「引用商標1」という。)は、「ALPINE」の文字及び「アルパイン」の文字を2段に書してなり、昭和50年11月22日に登録出願、第11類「電気機械器具,電気通信機械器具,電子応用機械器具(医療機械器具に属するものを除く)電気材料」を指定商品として、同53年8月17日に設定登録され、その後、3回にわたり商標権の存続期間の更新登録がされているものである。

(2)登録第1339288号商標(以下「引用商標2」という。)は、「アルパイン」の文字を書してなり、昭和50年11月22日に登録出願、第11類「電気機械器具,電気通信機械器具,電子応用機械器具(医療機械器具に属するものを除く)電気材料」を指定商品として、同53年8月17日に設定登録され、その後、3回にわたり商標権の存続期間の更新登録がされているものである。

(3)登録第1553927号商標(以下「引用商標3」という。)は、別掲(2)の構成よりなり、昭和51年8月27日に登録出願、第11類「電気機械器具,電気通信機械器具,電子応用機械器具(医療機械器具に属するものを除く)電気材料」を指定商品として、同57年12月24日に設定登録され、その後、2回にわたり商標権の存続期間の更新登録がされ、また、指定商品については、平成14年8月14日に、第9類「電気通信機械器具,電子応用機械器具及びその部品」を指定商品とする書換登録がなされたものである。

(4)登録第1666152号商標(以下「引用商標4」という。)は、「ALPINE ELECTRONICS INC.」の文字を書してなり、昭和53年11月7日に登録出願、第11類「電気機械器具,電気通信機械器具,電子応用機械器具(医療機械器具に属するものを除く)電気材料」を指定商品として、同59年3月22日に設定登録され、その後、2回にわたり商標権の存続期間の更新登録がされ、また、指定商品については、平成16年5月12日に、第9類「電気通信機械器具,電子応用機械器具及びその部品」を指定商品とする書換登録がなされたものである。

(5)登録第1666153号商標(以下「引用商標5」という。)は、「アルパイン株式会社」の文字を書してなり、昭和53年11月7日に登録出願、第11類「電気機械器具,電気通信機械器具,電子応用機械器具(医療機械器具に属するものを除く)電気材料」を指定商品として、同59年3月22日に設定登録され、その後、2回にわたり商標権の存続期間の更新登録がされ、また、指定商品については、平成16年5月12日に、第9類「電気通信機械器具,電子応用機械器具及びその部品」を指定商品とする書換登録がなされたものである。

(6)登録第2086718号商標(以下「引用商標6」という。)は、別掲(3)の構成よりなり、昭和61年5月22日に登録出願、第11類「電気機械器具,電気通信機械器具,電子応用機械器具(医療機械器具に属するものを除く)電気材料」を指定商品として、同63年10月26日に設定登録され、その後、商標権の存続期間の更新登録がされているものである。

(7)登録第2086719号商標(以下「引用商標7」という。)は、「ALPINE BLUE」の文字を書してなり、昭和61年5月22日に登録出願、第11類「電気機械器具,電気通信機械器具,電子応用機械器具(医療機械器具に属するものを除く)電気材料」を指定商品として、同63年10月26日に設定登録され、その後、商標権の存続期間の更新登録がされているものである。

(8)登録第2218412号商標(以下「引用商標8」という。)は、別掲(4)の構成よりなり、昭和61年12月11日に登録出願、第11類「電気機械器具,電気通信機械器具,電子応用機械器具(医療機械器具に属するものを除く)電気材料」を指定商品として、平成2年3月27日に設定登録され、その後、商標権の存続期間の更新登録がされているものである。

(9)登録第2397285号商標(以下「引用商標9」という。)は、「ALPINE MARMOT」の文字を書してなり、平成1年4月27日に登録出願、第11類「電気機械器具,電気通信機械器具,電子応用機械器具(医療機械器具に属するものを除く)電気材料」を指定商品として、同4年3月31日に設定登録され、その後、商標権の存続期間の更新登録がされ、また、指定商品については、同14年10月16日に、第9類「電気通信機械器具,電子応用機械器具及びその部品」を指定商品とする書換登録がなされたものである。

(10)登録第3196603号商標(以下「引用商標10」という。)は、「アルパインテクノ」の文字を書してなり、平成5年8月30日に登録出願、第9類「電気通信機械器具,電子応用機械器具,配電用又は制御用の機械器具,電線及びケーブル」を指定商品として、同8年9月30日に設定登録され、その後、商標権の存続期間の更新登録がされているものである。

(11)登録第3306076号商標(以下「引用商標11」という。)は、別掲(4)の構成よりなり、平成6年8月26日に登録出願、第9類「電気通信機械器具,電子応用機械器具」を指定商品として、同9年5月16日に設定登録され、その後、商標権の存続期間の更新登録がされているものである。

(12)登録第4508534号商標(以下「引用商標12」という。)は、別掲(5)の構成よりなり、平成12年8月21日に登録出願、第9類「電気通信機械器具,電子応用機械器具」を指定商品として、同13年9月21日に設定登録されているものである。

(13)登録第4508535号商標(以下「引用商標13」という。)は、別掲(6)の構成よりなり、平成12年8月21日に登録出願、第9類「電気通信機械器具,電子応用機械器具」を指定商品として、同13年9月21日に設定登録されているものである。

(14)登録第4508536号商標(以下「引用商標14」という。)は、別掲(7)の構成よりなり、平成12年8月21日に登録出願、第9類「電気通信機械器具,電子応用機械器具」を指定商品として、同13年9月21日に設定登録されているものである。

(15)登録第4508537号商標(以下「引用商標15」という。)は、別掲(8)の構成よりなり、平成12年8月21日に登録出願、第9類「電気通信機械器具,電子応用機械器具」を指定商品として、同13年9月21日に設定登録されているものである。

(16)登録第4931967号商標(以下「引用商標16」という。)は、別掲(9)の構成よりなり、平成17年6月20日に登録出願、第9類「電気通信機械器具,電子応用機械器具及びその部品」を指定商品として、同18年2月24日に設定登録されているものである。

以下、上記(1)ないし(16)をまとめていうときは、単に「引用商標」という。

第3 登録異議の申立ての理由(要点)
(1)商標法第4条第1項第11号について
本件商標と引用商標とは、商標が類似し指定商品も抵触する。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当するから、本件商標の指定商品中「電気磁器測定器,電気通信機械器具,電子応用機械器具及びその部品」について登録を取り消されるべである。

(2)商標法第4条第1項第15号について
引用商標11の構成よりなる商標(以下「使用商標」という。)は、「カーコンポ、カーナビゲーションシステム」等の商品の商標として、また、申立人の社標(コーポレートロゴマーク)として永年使用され、盛大に宣伝広告された結果、本件商標の登録出願時及び登録査定時には既に、申立人の業務に係る商品を表示するものとして取引者、需要者の間に広く認識されていたものというべきである。
そして、使用商標の周知著名性は、本件商標の指定商品中の「測定機械器具」に係る取引者、需要者の間にも及んでいたものといえる。
そうすると、本件商標をその指定商品中「測定機械器具」に使用した場合には、これに接する取引者、需要者は、周知著名となっている引用商標11ないしは申立人を連想、想起し、該商品が申立人又は同人と経済的・組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかの如く、その出所について混同を生ずるおそれがあるものというべきである。
したがって、本件商標は、その指定商品中「測定機械器具」については、商標法第4条第1項第15号に該当するものである。

(3)以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号の規定に違反して登録されたものであるから、その登録を取り消すべきものである。

第4 本件商標に対する取消理由
本件登録異議の申立てがあった結果、商標権者に対して平成20年2月27日付けで通知した取消理由は、次のとおりである。

1 商標法第4条第1項第11号について
本件商標と引用商標1、引用商標2、引用商標3及び引用商標11との類否について検討するに、本件商標は、やや図案化されているとしても、「ALFInE」の文字を表したものと容易に認識し理解し得るものであるから、該文字に相応して「アルファイン」の称呼を生ずるものというべきである。
他方、引用商標1及び2は、その構成文字に相応して「アルパイン」の称呼を生ずること明らかである。
また、引用商標3は、やや図案化されているものの、「ALPINE」の文字を表したものと容易に認識し理解し得るものであり、引用商標11は引用商標3に図形を加えたものであって、やはり「ALPINE」の文字を容易に判読できるものであるから、それぞれの文字に相応して、いずれも「アルパイン」の称呼を生ずるものといえる。
しかして、本件商標から生ずる「アルファイン」の称呼と引用商標1、引用商標2、引用商標3及び引用商標11から生ずる「アルパイン」の称呼とは、同音数からなり、称呼の識別上重要な要素を占める語頭部分の「アル」の音をはじめ後半部分の「イン」の音を共通にし、中間において「ファ」と「パ」の音の差異を有するのみである。
しかも、相違する「ファ」と「パ」の音は、母音「a」及び調音位置を同じくする近似した音質の音であるから、かかる差異が全体に及ぼす影響はわずかなものであって、両称呼をそれぞれ一連に称呼するときは、全体の音感音調が極めて近似したものとなり、彼此相紛らわしいものである。
また、本件商標と引用商標3及び引用商標11の文字部分とは、綴りが中間における「F」と「P」の文字が相違するのみであり、それぞれの図案化の程度からしても、外観上も相紛らわしいものといえる。
そうすると、本件商標は、引用商標1、引用商標2、引用商標3及び引用商標11と称呼上類似するものであり、引用商標3及び引用商標11の文字部分とは外観上も類似するものというべきである。
そして、本件商標の指定商品中「電気磁気測定器,電気通信機械器具,電子応用機械器具及びその部品」は、引用商標1、引用商標2、引用商標3及び引用商標11の指定商品と同一又は類似の商品といえるものである。
したがって、本件商標は、その指定商品中「電気磁気測定器,電気通信機械器具,電子応用機械器具及びその部品」については、商標法第4条第1項第11号に該当するものである。

2 商標法第4条第1項第15号について
申立人の提出に係る証拠(甲第5号証の1ないし5、甲第6号証及び甲第7号証並びに甲第8号証の1ないし28)によれば、使用商標は、「カーコンポ、カーナビゲーションシステム」等の商品の商標として、また、申立人の社標(コーポレートロゴマーク)として永年使用され、盛大に宣伝広告された結果、本件商標の登録出願時及び登録査定時には既に、申立人の業務に係る商品を表示するものとして取引者、需要者の間に広く認識されていたものというべきである。
そして、使用商標の周知著名性は、本件商標の指定商品中の「測定機械器具」に係る取引者、需要者の間にも及んでいたものといえる。
また、上記1で述べたとおり、本件商標と使用商標とは相紛らわしく類似するものである。
さらに、使用商標が使用されている「カーコンポ、カーナビゲーションシステム」等は、政令で定める商品及び役務の区分第9類中の「電気通信機械器具」に属する商品と認められるところ、第9類中の「電気通信機械器具」と同類中の「測定機械器具」とは直ちに類似するものとはいえないものの、当該「測定機械器具」には電気や磁気により測定する商品も含まれており、同じ類に属する機械器具として、両者は少なからぬ関係を有するものというべきである。
そうとすると、本件商標をその指定商品中「測定機械器具」に使用した場合には、これに接する取引者、需要者は、周知著名となっている使用商標ないしは申立人を連想、想起し、該商品が申立人又は同人と経済的・組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかの如く、その出所について混同を生ずるおそれがあるものといわざるを得ない。
したがって、本件商標は、その指定商品中「測定機械器具」については、商標法第4条第1項第15号に該当するものである。

3 むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号の規定に違反して登録されたものであるから、その登録を取り消すべきものである。

第5 商標権者の意見
商標権者は、上記第3の取消理由に対し、本件商標は十分に登録要件を満たすものであるとして、次のように意見を述べ、乙第1号証ないし乙第20号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 商標法第4条第1項第11号について
(1)称呼について
被請求人は、「ついに」の意味を有するイタリア語「ALFINE(アルフィーネ)」に由来して採択したものであり、同一商標について、第12類で登録第4955454号として登録を受け(乙第1号証)、自転車部品に使用している。
自転車部品について、被請求人は、本件商標「ALFINE」を「アルフィーネ」として紹介し、また、その宣伝、広告により、取引者、需要者においても「アルフィーネ」の称呼が定着している(乙第2号証)。
かかる事実は、自動車専門雑誌における被請求人の商品についての記載、ウィキペディアにおける被請求人の商品「ALFINE」についての記載、インターネット上の被請求人の自転車部品についてのさまざまな紹介記事からも明らかである(乙第3号証ないし乙第9号証)。
また、本件商標の取引業界の認識を示す資料として、本件商標が「アルフィーネ」と称呼され、自転車業界において被請求人がバイシルクコンポーネントに関し使用する商標として認知されていることを証する取引業者の証明書を提出する(乙第10号証の1ないし8)。
したがって、本件商標の称呼は、「アルフィーネ」である。
そうとすれば、本件商標と「アルパイン」の称呼を生ずる、引用商標1、引用商標2、引用商標3及び引用商標11とは、称呼上、彼此混同を生ずることはあり得ない。
仮に、本件商標から「アルフィネ」の称呼が生ずるとした場合でも、本件商標と「アルパイン」の称呼を生ずる、引用商標1、引用商標2、引用商標3及び引用商標11とは、称呼上、彼此混同を生ずることはあり得ない。

(2)観念について
本件商標は、(1)で述べたとおり、「ついに」の意味を有するイタリア語「ALFINE(アルフィーネ)」に由来する。
しかしながら、被請求人は、かかるイメージよりも、自己が開発する新製品であるシティバイク用自転車コンポーネントに使用する商標として、従来とは異なるシーンで利用される最新かつスポーティな雰囲気をもって、「ついに登場した商品」との意味を込めて独自に採択した造語商標であり、本件商標の観念は、何ら意味をなさない。
これに対して、引用商標における「ALPINE」又は「アルパイン」は、「アルプス山脈の、(スキーの)アルペン競技の」の意味を有する、平均的日本人にも理解可能な英語であるから、我が国一般人は引用商標から、「アルプス山脈の、(スキーの)アルペン競技の」の意味を認識する。
したがって、両者は、観念上類似しない商標である。

(3)外観について
本件商標と引用商標の外観を比較すると、引用商標1及び引用商標2に関しては、本件商標と構成が全く異なり、外観上非類似であることは明らかである。
取消理由によれば、引用商標 3及び引用商標11につき、本件商標とは、綴りが「F」と「P」 において相違するのみであることから外観上相紛らわしいとのことであるが、両者を比較すれば、本件商標が概して右に流れるような流線型の細身で柔らかな書体で文字間に余裕を持って配置され、軽やかさ、スポーティさを印象付けるものであるのに対し、引用商標3及び引用商標11は直立で太さがほぼ均一な書体で構成されており、文字間も近接していることで、より強い印象を与える。
また、引用商標3及び引用商標11の構成中の「ALPINE」 の語は、上述のようにわが国一般人によく知られた語であることも考慮すると、引用商標3及び引用商標11はそのような意味を十分認識してとらえられるものであり、本件商標と引用商標3及び引用商標4とが外観上混同されるおそれはない。
そうとすれば、本件商標と引用商標3及び引用商標11とは、外観上、その全体的印象も全く異なり、明瞭に区別しうる非類似の商標である。

(4)したがって、本件商標は、称呼、観念、外観のいずれの点においても、引用商標1、引用商標2、引用商標3及び引用商標11とは混同を生じるおそれのない非類似の商標であるから、商標法第4条1項11号には該当しない。

2 商標法第4条第1項第15号について
取消理由によれば、使用商標は、「カーコンポ、カーナビゲーションシステム」の商標として、また申立人の社標として永年使用され、本件商標の登録出願時及び登録査定時には、申立人の業務に係る商品を表示するものとして周知であったとのことである。
この点に関して、申立人の取引業界である自動車業界において、使用商標が申立人の業務に係る商品を表示するものとして周知であったことは商標権者も認めるところである。
しかしながら、申立人の商品は、申立人も述べるように「カーコンポ、カーナビゲーションシステム」等自動車に係るものであり、その周知性は、申立人の取引業界である自動車業界に限定され、取引者、需要者は、使用商標を自動車用音響機器、自動車用情報通信機器に係る商標、社標として認識するものである。
したがって、商標権者が指定商品として使用を想定する自転車用コンポーネントの取引業界である自転車業界とは、その取引経路、取引者、需要者が異なっており、申立人使用商標の周知性は、商標権者の商品を取引する分野にまで及んでいるとはいえない。
ところで、商標権者、「株式会社シマノ」は、自転車部品と釣具の製造販売を主たる業務とする東証一部及び大証一部に上場の株式会社であるが、1921年、島野庄三郎氏により創業、1940年1月29日に商号を改称し、「株式会社 島野鉄工所」 が設立され、1991 年「株式会社シマノ 」 へ社名を変更したが、設立以来自転車部品と釣具を中心に国内国外において積極的な事業展開を行い、毎年売上は順調に伸び続けており、2007年12月期には、単独決算では1684億円、連結決算で2117億円にのぼっている(乙第14号証及び乙第15号証)。
特に自転車業界においては、そのコンポーネントの性能、品質、価格、メンテナンス等の優秀さ故に世界的な評価を得、世界の自動車業界において自転車パーツメーカーとして最大の地位を獲得している(乙第16号証)。
商標権者は、現在開発中のサイクルコンピューター(自転車用測定機械器具の一種で、走行距離・時間等を計測するコンピューターを内蔵する。また、ペース配分機能、心拍数まで計測できる高機能モデルも存在する。)(乙第17号証)について、本件商標を使用する予定であるが、これは、すでに商標「NEXUS」及び「NEXAVE」のもと使用している同商品の改良型である(乙第18号証、同第19号証及び同第20号証)。
商標権者は、当該商品を二つの販売方法、すなわちサイクルコンピューター単体を、正規代理店に販売しそこを通じて一般消費者に販売する方法と、サイクルコンピューターを自転車に取り付け販売する方法により販売するが、後者の場合には自転車販売メーカーがどのような自転車を作るかを企画し、商標権者の商品を購入して組立会社に作らせて販売するものである。
したがって、このような自転車用コンポーネント専門の取引経路を通じて販売される本件商品の実際の取引実情をふまえると、本件商標が「測定機械器具」でもあるサイクルコンピューターに使用されたとしても、これに接する取引者、需要者が、自動車業界で周知著名となっている引用商標4又は申立人を連想、想起し、当該商品が申立人又は同人と経済的・組織的に何らかの関係を有するものであるものかのごとく出所の混同を生じるおそれはないというべきである。
すなわち、申立人の使用商標の周知性は、商標権者の業務分野である自転車業界に及んでいるとは決していえず、商標権者が本件商標を自転車業界において「測定機械器具」 について使用したとしても、上記取引業者である正規代理店、自転車メーカー又は自転車の需要者が、出所について混同を生ずるおそれはない。
また、上述したとおり同一商標「ALFINE」のもとすでに自転車部品が販売され、取引者、需要者はこれをシマノの「アルフィーネ」として広く認知しているものであるから(乙第10号証の1ないし8)、商標権者がその指定商品であるサイクルコンピュータに使用したとしても、引用商標11又は申立人を連想、想起することはありえないというべきである。
さらに、申立人はさまざまなカーレースやモータドライバーを協賛しているとのことだが、これらはいずれもモータースポーツに関連しており、自転車とはスポーツとしてもその分野を異にするため、取引業者、需要者が異なることは明らかである。
よって、本件商標は、その指定商品中「測定機械器具」 について、引用商標11との関連において「他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標」 に該当するものではなく、商標法第4条1項15号には該当しないものである。

3 むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4 条1項11号及び同15号に該当するものではない。

第6 当審の判断
1 本件商標についてした、上記第4の取消理由の通知は妥当であって、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号の規定に違反して登録されたものといわざるを得ないものである。

2 商標権者の意見
(1)商標権者は、本件商標を構成する「ALFINE」の文字からは「アルフィーネ」または「アルフィネ」の称呼のみを生ずる旨主張する。
しかして、「ALFINE」の語が「アルフィーネ」の称呼を有するイタリア語であることは認められるものの、我が国におけるイタリア語の普及度よりして、当該語が「アルフィーネ」の称呼を有する既成語として世人一般に親しまれているとする事情は認められない。
そうとすれば、本件商標に接する取引者、需要者は、この種外国文字に接する場合の通例として、わが国において最も親しまれている英語の読み方をもって、これを「アルファイン」と読み、その称呼をもって取引に資するとみるのが相当である。
また、商標権者が、自転車用部品に「ALFINE」の商標を使用していること及び当該「ALFINE」の商標が「アルフィーネ」と称呼されていることは、乙第1号証ないし乙第10号証によって認めることができる。
しかしながら、自転車用部品と本件商標の指定商品である「測定機械器具,電気磁気測定器,電気通信機械器具,電子応用機械器具及びその部品」とは、需要者、用途、販売店、品質等を全く異にするものであって、自転車用部品と本件商標の指定商品とが密接な関連を有するとはいい難いから、当該事実を考慮しても、「ALFINE」の文字からは「アルフィーネ」または「アルフィネ」の称呼のみを生ずるとすることはできない。
したがって、この点についての請求人の主張は採用できない。

(2) 商標権者は、我が国一般人は引用商標から、「アルプス山脈の、(スキーの)アルペン競技の」の意味を認識する旨主張する。
しかしながら、引用商標「ALPINE」又は「アルパイン」が、上記意味合いを有するものして広く一般に認識、理解されている事実も見いだせない。
そうとすれば、取引者、需要者は、引用商標を特定の観念を有さない造語であると理解するというべきである。
したがって、この点についての商標権者の主張は採用できない。
そして、取引者、需要者は、引用商標については、商標権者も認めるとおり、特定の観念を有さない造語であると理解するというべきである。
そうとすれば、本件商標と引用商標とは、ともに特定の観念を有さない造語というべきであるから、観念については比較することができない。
また、本件商標と引用商標とが類似する商標であると認められることは、上記第4の取消理由の通知1に述べたとおりである。

3 結論
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号の規定に違反して登録されたものであるから、同法43条の3第2項により、その登録を取り消すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
別掲 別掲


(1)本件商標




(2)引用商標3




(3)引用商標6




(4)引用商標8及び引用商標11




(5)引用商標12




(6)引用商標13


(7)引用商標14




(8)引用商標15




(9)引用商標16






異議決定日 2008-09-09 
出願番号 商願2005-120029(T2005-120029) 
審決分類 T 1 651・ 26- Z (Y09)
T 1 651・ 271- Z (Y09)
最終処分 取消  
前審関与審査官 安達 輝幸 
特許庁審判長 井岡 賢一
特許庁審判官 小川 きみえ
佐藤 達夫
登録日 2007-01-26 
登録番号 商標登録第5021342号(T5021342) 
権利者 株式会社シマノ
商標の称呼 アルファイン、アルフィネ 
代理人 河合 千明 
代理人 初瀬 俊哉 
代理人 網野 友康 

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