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審決分類 審判 全部無効 称呼類似 無効としない Y29
審判 全部無効 商4条1項10号一般周知商標 無効としない Y29
管理番号 1187701 
審判番号 無効2007-890172 
総通号数 108 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2008-12-26 
種別 無効の審決 
審判請求日 2007-11-09 
確定日 2008-11-04 
事件の表示 上記当事者間の登録第5061614号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5061614号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲(1)のとおりの構成からなり、平成18年8月29日に登録出願され、第29類「沖縄産のモズクから抽出したフコイダンを主成分とする粉末・顆粒・粒体・錠剤・カプセル又は液状の加工食品」を指定商品として同19年7月13日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
請求人が引用する登録第4862117号商標(以下「引用商標」という。)は、別掲(2)のとおりの構成からなり、平成16年10月13日に登録出願され、第29類「海藻エキスを主材料とする液状又は粉状の加工食品」及び第32類「清涼飲料,果実飲料,飲料用野菜ジュース」を指定商品として同17年5月13日に設定登録されたものである。

第3 請求人の主張の要点
請求人は、本件商標の登録を無効にする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由及び被請求人の答弁に対する弁駁の理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし同第32号証(枝番号を含む。)を提出している。
1 請求の理由
(1)商標法第4条第1項第11号違反について(無効理由1)
ア 本件商標
本件商標は、別掲(1)のとおりの構成からなるところ、その要部は、「SUPER FUCOIDAN」と「スーパーフコイダン」の2つであり、「SUPER」と「FUCOIDAN」を分離して認識すべきものではない。その理由は、「SUPER」と「FUCOIDAN」が、共に英単語であり、両者を組み合わせるのは自然であること。両単語の間の6本の平行な白線は、文字の高さと傾斜を同じにし、二段書き表示の長さが同じになるようにした一種のデザイン処理であること。その下に記載されている片仮名文字の「スーパーフコイダン」は、本件商標が一連不可分に称呼されることを示していること。以上のような本件商標の構成的特徴から「SUPER FUCOIDAN」は、一連不可分の表示であると認識すべきである。
本件商標の指定商品は、第29類「沖縄産のモズクから抽出したフコイダンを主成分とする粉末・顆粒・粒体・錠剤・カプセル又は液状の加工食品」である。
イ 引用商標
引用商標は、別掲(2)のとおり、漢字で「自然健康館」と片仮名文字で「スーパーフコイダン」とが二段横書きに併記構成されている。しかも、当該「スーパーフコイダン」は、文字の大きさ、字体、色など一連不可分な表示構成である。
引用商標は、「自然健康館」と「スーパーフコイダン」の二段併記になっているため、一般需要者が取引に際して観たとき外観的に両者を区分して認識するのが自然である。また、前者の「自然健康館」の部分は、いわゆるハウスマークとして出所識別機能を発揮し、後者の「スーパーフコイダン」からは、グッズマーク(商品識別マーク)として自他商品識別機能を果たしていると認識される。
しかも、引用商標の指定商品は、第29類「海藻エキスを主材料とする液体又は粉状の加工食品」及び第32類「清涼飲料、果実飲料、飲料用野菜ジュース」を指定商品として設定登録になったものである。即ち「スーパーフコイダン」は、立派な要部として認められたのである。
ウ 本件商標と引用商標との類否
商標の類否判断は、全体観察を原則とし、商標中に独立して自他商品の識別機能を果たす部分(要部)の有する外観、観念、称呼により判断する要部観察、ないしは分離観察により行うものとし、1つの商標に2以上の要部を有するものもある。
本件商標は、その構成上、自他商品識別機能を果たしている要部は、全体構成にあるだけでなく、欧文字「SUPER FUCOIDAN」部分にも、片仮名「スーパーフコイダン」部分にもあることは、誰の目にも明らかである。その指定商品からみて、特許庁も認めたものである。したがって、本件商標から「スーパーフコイダン」の称呼が生じること明らかである。
これに対し、引用商標は、「自然健康館」の漢字と「スーパーフコイダン」の片仮名とが二段併記になっているが、全体観察をすると、商標全体で、一商標として識別機能を果たし、要部と解するのが相当である。同時に、引用商標は、その構成が「自然健康館」と「スーパーフコイダン」の二段併記になっており、一般需要者が取引に際して観たとき外観的に両者を区分して認識するのが自然であるうえ、前者の「自然健康館」の部分は、いわゆるハウスマークとして出所識別機能を発揮し、後者の「スーパーフコイダン」はグッズマーク(商品識別マーク)として自他商品識別機能を果たしていると認識できる。
したがって、引用商標の要部は、商標構成全体を要部とするだけではなく、「自然健康館」と「スーパーフコイダン」という各部分についても独立した自他商品識別力を発揮しているものとして、これらの部分も要部であると認定すべきものである。
してみれば、引用商標は、その3つの要部から少なくとも称呼が抽出されるものと考えるべきである。即ち、商標全体の構成「自然健康館スーパーフコイダン」から「シゼンケンコウカンスーパーフコイダン」の称呼が、「自然健康館」の部分から「シゼンケンコウカン」の称呼が、「スーパーフコイダン」の部分から「スーパーフコイダン」の称呼がそれぞれ生ずると考えるべきである。特に、引用商標では、全体構成から生ずる「シゼンケンコウカンスーパーフコイダン」の称呼は、非常に長い名称となるため、取引の際には、これらの一部を省略した略称を使用する場合が多いと思われる。即ち、引用商標を指定商品に使用して市場の流通に供された場合、「スーパーフコイダン」と略称して商品を選択購入されることが多いと思われるし、それが自然な取引状態になると思われる。したがって、引用商標からは少なくとも「スーパーフコイダン」の称呼も生じるものと認定するのが相当である。
よって、本件商標と引用商標とは「スーパーフコイダン」の称呼を共通にする類似の商標であると確信する。
また、両商標の指定商品は、いずれも第29類の加工食品である。加工食品の種類の表現は多少異なっているが、同一又は類似の商品であること明らかである。
よって、本件商標は商標法第4条第1項第11号に該当する。
エ 本件商標の拒絶理由通知は、事実誤認に基づく不適当なものである。
本件商標は、出願中に審査官より「フコイダン」の文字の意味を認定し、補正案の示された拒絶理由が通知され(甲第3号証)、出願人からの補正案どおりの指定商品にした手続補正書(甲第4号証)を認めて登録査定されたものである。
しかし、この拒絶理由には、以下のとおり、重大な事実誤認と、それに基づく法適用誤りと、不適正な補正案の提示があると思料する。
(ア)第1に、「フコイダン」・「FUCOIDAN」なる文字の意味を誤解し、成分表示であると認定した点が事実誤認である。拒絶理由通知(甲第3号証)には次のように記載されている。
その理由1の中で、「この商標登録出願に係る商標は、その構成中に『海藻のうち、特に褐藻(モズク・コンブ・ワカメなど)に含まれる硫酸基と結合した粘質多糖類』で『健康食品として注目されている』(三省堂 コンサイスカタカナ語辞典第2版)成分を表示する片仮名『フコイダン』の文字及びその欧文字『FUCOIDAN』の文字を有してなりますから、」と記載している。
つまり、審査官は、「フコイダン」・「FUCOIDAN」の文字の意味を、三省堂コンサイスカタカナ語辞典の解説に基づいて、指定商品である加工食品の成分の表示であると認定したものである。
しかし、この認定は事実誤認である。確かに、「フコイダン」・「FUCOIDAN」は、「健康食品として注目されている」のはそのとおりであるが、その使われ方は極めて多様であり、その意味を正確に認識できない概念である。
特許庁では、三省堂コンサイスカタカナ語辞典における意味や認識の説明を正しい意味と信じて認定し、それを前提にしてすべてを判断したものと考えられる。しかし、上記辞典における意味の説明は必ずしも適正なものではない。即ち、上記辞典では「フコイダン」とは、「海藻のうち、特に褐藻(モズク・コンブ・ワカメなど)に含まれる硫酸基と結合した粘質多糖類」であると説明しているが、このような認識は、学術用語としても一般用語としての認識ともずれている。上記辞典の説明は、学術用語や一般用語として認識されている「フコイダン」の概念の中の一例を示したものであるにすぎないと考える。「フコイダン」は、このような一例の意味だけではなく、その他の多くの物質を含む総称であり、もっと広い意味の概念である。これは例えれば、日本食とは、お寿司であると説明しているようなものであり、適正な意味や概念の説明ではない。
一般の認識では、「フコイダン」・「FUCOIDAN」は、後述するように、未だ定義が定まっていない多様な意味を有する総称概念であり、加工食品の成分を明確に特定できる概念ではないとされているのである(甲第5号証ないし同第11号証)。
<「フコイダン」の適正な意味について>
「フコイダン」・「FUCOIDAN」なる文字表示は、昔からある一般食品としてはあまりなじみのない用語であり、近年、健康食品業界で注目され始めたものである。したがって、その正確な意味を知っている者は少ない。そこで「フコイダン」・「FUCOIDAN」について、その意味とその使われ方を調査した結果、次のようなことが解った。
まず、この用語の起源であるが、「フコイダン」・「FUCOIDAN」は、約90年前(1913年)にスエーデンのヌプサラ大学のH・Z・キリン教授が昆布のヌメリ成分のひとつとして発見したもので、当時「フコイジン」と命名されていたが、分子構造が複雑で、抽出や分析が困難であったことから、近年まで研究されることがなかった。その後、国際糖質命名規約によって「フコイダン」「FUCOIDAN」と呼ばれるようになったものである(甲第7号証及び同第10号証)。
通説として一般に認められている「フコイダン」の意味とは、海藻の中でもコンブ、ワカメ、モズクといった褐藻類に特に多く含まれるヌメリ成分で、水溶性植物繊維の一種である。化学的には、硫酸化フコースを主体とする多糖体(硫酸化多糖体)の一種である。褐藻類のフコイダンは、このように糖がいくつも結合しあってくっついた「多糖体」に分類されるが、構成する糖にはフコース以外に、ガラクトース、マンノース、キシロース、ウロン酸などが結合している場合があり、複数の種類に分けられる(甲第7号証ないし同第10号証)。
現在判明しているだけでも、次のようなフコダイン(審決注:「フコイダン」の誤記と認められるので、以下、「フコダイン」とあるときは「フコイダン」と訂正する。)の種類がある。
a アセチルフコイダン【オキナワモズクのみに含まれるフコイダン】
b L-フコイダン【昆布の中でもガニアシのみに含まれるフコイダン】
c GA-フコイダン【コンブの中でもガニアシのみに含まれるフコイダン】
d F-フコイダン【フコースのみからなるフコイダン】
e U-フコイダン【グルロン酸とマンノースからなるフコイダン】
f G-フコイダン【ガラクトースとフコースからなるフコイダン】
即ち、一般的に使用されている「フコイダン」という名称は、同一構造の物質につけられたのではなく、主成分がフコースである糖鎖の総称として使用されており、フコース以外の糖を含むものを「フコイダン様多糖体」と称している場合が多い。しかし、「フコースを主成分とする多糖体」とフコース以外の糖を含む「フコイダン様多糖体」との両方を総称してフコイダンと呼ぶ場合もある。主成分であるフコースの分子量は、数万?数百万とその示す範囲は非常に広く、多様である。その他、硫酸基の結合した多糖体だけをフコイダンと呼ぶ場合もあるし、硫酸基の結合は関係なく、海藻から抽出される糖の結合体そのものをすべてフコイダンと呼ぶ場合もある。したがって「フコイダン」は、海藻類に含まれる硫酸化アミノ多糖類(植物繊維の一種)の総称であるともいえる。このように、「フコイダン」・「FUCOIDAN」について様々な意味や概念として多様な使われ方をしており、未だ明確な定義づけがされていないというのが現状である。
さらに、「フコイダン」を、海藻の中でもコンブ、ワカメ、モズクといった褐藻類に含まれるヌメリであり、水溶性植物繊維の一種であるとした場合であっても、次のような要素の違いによってその分子量、構造、成分、品質、機能のいずれもが大きく違っている。
その違いは、次のような要素の違いによって生じていると考えられる。
a 原料である海藻の種類(由来)の違い
b 原料である海藻の産地の違い
c フコイダン商品の形状の違い
d フコイダン商品の製法の違い
e フコイダンの抽出方法の違い
f フコイダンに結合している硫酸基の量の違い
g 商品におけるフコイダンの純度(含有量)の違い
叙上のように、「フコイダン」・「FUCOIDAN」という用語は、その定義や概念が未だ定まっていないうえ、原料である海藻の種類、産地、抽出法、硫酸基量、純度、製法、形状などの要素により、その分子量、構造、成分、品質、機能が違っていても総称として使用されているというのが現状である。そのため健康食品の業界では「フコイダン」を、前記よりもさらに広い意味で多様に使用されていて、海藻の成分である多糖体を含むものを全部ひっくるめて「フコイダン製品」又は「フコイダン含有製品」の総称として多様に使用されている。よって、「フコイダン」・「FUCOIDAN」という用語を、加工食品の成分表示のような態様で使用したとしても、具体的にその成分を特定することは出来ないものである。
(イ)第2に、拒絶理由として、「商標法第4条第1項第16号に該当する。」及び「商標法第6条第1項の要件を具備していない。」の2点を挙げているが、これは第1の事実誤認を前提にしたもので誤りである。
a 商標法第4条第1項第16号の適用について
拒絶理由通知(甲第3号証)で、「フコイダン」・「FUCOIDAN」は、成分を表示する文字なので、「これを指定商品中、例えば、『沖縄産のモズクから抽出したフコイダンを主成分とする粉末・顆粒・粒体・錠剤・カプセル又は液状の加工食品』以外の商品に使用するときは、商品の品質について誤認を生じさせる恐れがあるものと認めます。」として、商標法第4条第1項第16項に該当すると認定している。
しかし、叙上のように、「フコイダン」・「FUCOIDAN」という用語は、その定義や概念が未だ定まっていないうえ、原料である海藻の種類、産地、抽出法、硫酸基量、純度、製法、形状などの要素により、その分子量、構造、成分、品質、機能が違っていても総称として使用されているものである。よって、「フコイダン」・「FUCOIDAN」という用語を、加工食品の成分表示として使用しようとしても、具体的にその成分を特定することは出来ないものである。本件拒絶理由通知は、「フコイダン」・「FUCOIDAN」の意味を誤って認識し、それに基づいて品質誤認を生じさせる恐れがあると判断したもので、誤りである。
また、「沖縄モズク」は、モズクの品種を表しており、必ずしも沖縄だけで生産されているものではない。トンガ国や台湾などでも養殖されている。したがって、これを「沖縄産のモズク」と認識するのも誤認である。
そうすると、本件商標登録出願当初、指定商品として「沖縄モズクを主原料とする粉末・顆粒・粒体・錠剤・カプセル又は液状の加工食品」と記載したことによって品質の誤認を生ずるおそれはないはずである。よって、特許庁が拒絶理由として、「商標法第4条第1項第16号に該当する。」としたことは、理由がない。
さらに、本件商標の上記判断は、商標構成中に「フコイダン」の文字を含む他の登録商標の審査事例と矛盾している。
特許庁の審査例として「フコイダン」及び「フコイダン」を含む商標について、指定商品に「沖縄産のモズクから抽出したフコイダンを主成分とする」という制限事項を付さないで登録した事例が次のように多数ある(甲第12号証ないし同第23号証)。
(a)「フコイダン」(登録第4097007号、第31類)、「フコイダン」は識別力ありとして、成分表示や品質表示としての制限をしていない。指定商品中に多数の食物、特に海草類が含まれている。
(b)「フコイダン」(登録第3012033号、第1類「化学品」)、フコイダンが食品成分ではないことは明確である。
(c)「ウベフコイダン/UBE-fucoidan」(登録第5003753号、第1類「硫酸基と結合した多糖類」)
(d)「マリンテックフコイダン」(登録第5040708号、第29類)、「フコイダン」を食品の成分表示や品質表示として制限をしていない。指定商品中に多数の食物、特に海草類が含まれている。
(e)「フコイダンZ」(登録第4736032号、第29類)、「フコイダン」を食品の成分表示や品質表示としての制限をしていない。指定商品中に多数の食物や加工水産物が含まれている。
(f)「フコイダンブロック」(登録第4853289号、第29類)、指定商品を「海草類を主成分とする・・・加工食品」と一部制限している。
(g)「フコイダンの力」(登録第5049497号)、第29類「加工水産物」及び第30類「海草を主成分とする茶」と指定商品を制限していない。
(h)「フコイダンエクセル」(登録第4860593号、第29類「モズク及びモズク抽出物を主原料とした粉末状・タブレット状・顆粒状・液状・カプセル状の加工食品」及び第32類「海洋植物から抽出した成分を含有ししてなる清涼飲料、海洋植物から抽出した成分を含有してなる果実飲料」)
(i)「フコイダンプラス」(登録第4455738号、第29類「海藻植物繊維に米胚芽油抽出物・植物性油脂等を加えてなる粒状の加工食料品」)
(j)「フコイダンアルギン酸パワー」(登録第4852713号、第29類「スープのもと」)
(k)「ルルドフコイダン」(登録第4742574号、第29類「モズク及びモズク抽出物を主原料とした粉末状・タブレット状・顆粒状・液状・カプセル状の加工食品」)
(l)「なにかのご縁でストロングフコイダン」(登録第4825120号、第29類「モズク・ビタミンC・蜂蜜を主成分とする粉末状・タブレット状・顆粒状・液状・カプセル状の加工食品」)
叙上のように「フコイダン」を含む商標について、制限事項をつけなくても登録した事例が多数あるということは、本件商標の拒絶理由において「沖縄産のモズクから抽出したフコイダンを主成分とする」としなければ商標法第4条第1項第16号違反になるとしたのは、誤った法適用であるといわざるを得ない。特に、本件商標で「沖縄産モズク」と地域名称まで付して限定する必要があるとしている理由が理解できない。
b 商標法第6条第1項の適用について
また、本件商標の拒絶理由通知では、理由2において、「この商標登録出願に係る指定商品中『沖縄モズクを主原料とする粉末・顆粒・粒体・錠剤・カプセル又は液状の加工食品』は、その内容範囲を明確に指定したものとはみとめられません。したがって、この商標登録出願は、商標法第6条第1項の要件を具備しません。ただし、上記理由1と理由2を合わせて解消するため、本願指定商品を例えば『沖縄産のモズクから抽出したフコイダンを主成分とする粉末・顆粒・粒体・錠剤・カプセル又は液状の加工食品』以外の商品に使用するときは、商品の品質について誤認を生じさせる恐れがあるものと認める。」と記載されている。
しかし、上述したように出願当初の指定商品の内容範囲は明確である。このことは従来同様の指定商品の記載で登録されている複数の登録例からみても明らかである。
それより、本件について「沖縄産のモズクから抽出したフコイダンを主成分とする」と補正するよう示したことに問題がある。なぜなら「フコイダン」は、上記甲第12号証及び同第13号証のように登録商標だからである。商標審査基準では、「特定の商品を表すものとして登録商標が用いられている場合は、原則として、第6条第1項の要件を具備しないものとして拒絶理由を通知する。」とされている。この審査基準に従えば、上記拒絶理由通知は、第6条第1項の要件違反を促す補正を指示したことになるし、その補正を認めたことは第6条第1項の要件違反を積極的に認めたことになる。よって、本件商標は、法適用を誤って登録査定された不当なものといわざるを得ない。
(ウ)第3に、拒絶理由では「沖縄モズク」を「沖縄産モズク」に補正するよう提示している。この補正案は両用語の意味を誤解して要旨変更の補正を求めたものであり、不適正である。
本件の商標登録願(甲第24号証)において当初に記載された指定商品は、「沖縄モズクを原料とする粉末・顆粒・粒体・錠剤・カプセル又は液状の加工食品」である。これに対し拒絶理由通知書(甲第3号証)では「沖縄モズク」を「沖縄産モズク」に補正するよう提示している。
しかし、「沖縄モズク」はモズクの品種名であり、「沖縄産モズク」はモズクの産地表示である。甲第25号証ないし同第27号証に示すように、「沖縄モズク」は褐藻類の一種でナガマツモ科に属し、英名Cladosiphon okamuranusと称されるモズクの品種名であり、通称「フトモズク」とも称されている。甲第25号証及び同第26号証によれば、沖縄県では、沖縄モズク以外にもモズク科の一種の「モズク」、英名Nemacystus decipiens、通称「イトモズク」又は「ホンモズク」が養殖されていると公表されている。つまり、本件拒絶理由通知で、「沖縄モズク」を「沖縄産モズク」に補正させたことにより、モズクの種類が実質的に増えたものである。これは、要旨変更の補正であり、権利範囲を拡大する違法な補正である。
(2)商標法第4条第1項第10号違反について(無効理由2)
ア 「スーパーフコイダン」は、請求人の商品を表示する商標である。
請求人は、平成13年7月頃から、請求人が製造・販売する商品である海藻エキスを主原料とする液状又は粉状の加工食品を、ウェブサイトあるいは販売代理店を通じて、顧客に販売し、請求人の商品を表示するものとして「スーパーフコイダン」との商標を用いている。
イ 請求人の商品を表示する商標「スーパーフコイダン」は、本件商標出願時には、需要者の間に広く認識されていた商標である。
請求人は、商標「スーパーフコイダン」を使用した自社商品を請求人の所在地である東京都を中心に日本全国に向けて盛大に販売しており、その販売実績、宣伝広告の状況からみて、本件商標の出願時(平成18年8月頃)には、商標「スーパーフコイダン」は請求人の商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されていた。
商標の使用状況については、例えば、平成15年4月には季刊誌「はいから」に請求人の商品紹介記事が掲載されたが、当該季刊誌は12万部が発行・販売されており(甲第28号証)、同年7月には請求人商品の紹介記事が週刊誌「女性セブン」に掲載されたが、この週刊誌は当時毎月平均40万部販売されており(甲第29号証)、平成16年2月に請求人の商品の紹介記事が掲載されたビジネス情報誌「エルネオス」は2万3000部が販売されており(甲第30号証)、請求人の商品が紹介されている2004年2月号の月刊誌「がんを治す完全ガイド」は5万部が販売されている(甲第31号証)。さらに2004年7月2日号の週刊誌「週刊ポスト」にも請求人の商品が紹介されている(甲第32号証)。
その他、請求人の商品の販売状況も併せてみれば、「スーパーフコイダン」が請求人の商品を表示するものとして周知であったことは明らかである。
よって、本件商標は、他人である請求人の業務にかかる商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標又はこれに類似する商標であって、その商品又はこれに類似する商品について使用するものであるので、商標法第4条第1項第10号に該当する。
ウ 請求人と被請求人とは、現在、知的財産高等裁判所において、平成19年(ネ)第10065号損害賠償等請求控訴事件として係争中である。
(3)むすび
叙上のように、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び第10号の規定に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効にすべきである。
2 弁駁の理由
(1)被請求人の主張
被請求人は、本件商標について、(a)「フコイダン」が、商品の内容、品質、原材料を表示する一般的な用語である、(b)「スーパーフコイダン」には自他商品識別力がない、(c)本件商標の要部は、6本の横線を菱形に表した2つの図形部分又はこれら図形と「SUPER」、「FUCOIDAN」及び「スーパーフコイダン」の文字を組み合わせた全体により識別力を生じさせるものである、(d)本件商標と引用商標とは非類似である、と主張している。
(2)被請求人の主張の矛盾
被請求人の上記主張は、被請求人自ら本件商標には識別力がないことを自白しているような矛盾した主張である。なぜなら、本件商標構成のうち、誰が見ても主要な構成要素と認める文字部分は識別力がなく要部ではないとの主張だからである。もしそうだとすれば、本件商標はどこにも識別力を認識できる要素がなくなり、登録されるべきものではなくなる。
被請求人は、本件商標について図形部分が要部であると主張するが、それは無理な理由であり、到底承服できない。なぜなら、この図形部分は何ら意味も特徴も無いありふれた幾何学的図形であり附飾的なものである。即ち、この図形は、英文字構成に連続して、それと同じ高さで同じ角度に傾斜させた横線を配したものであり、「SUPER」と「FUCOIDAN」とが連続する構成であることを示すと共に、二段書きした構成文字の長さが同じになるように図形的処理をしたものである。このように図形部分は英文字構成の印象的効果を喚起させるために附飾的な処理を施しただけのものであり、このようなデザイン的処理はマークを作成する際に普通に用いられるごくありふれた手法である。
市場において本件商標を使用した場合、需要者は英文字とカタカナ文字との相乗効果として「SUPER FUCOIDAN」「スーパーフコイダン」という一連用語を要部として認識し識別するのが自然な認識の仕方である。したがって、被請求人の主張するように文字部分が商標の要部ではないとすれば、識別力を有する部分が無くなり、全体をもってしても自他商品を識別するための標識とは認識しえないものとなる。
(3)被請求人の主張は事実誤認
被請求人の主張は、「フコイダン」の意味について事実誤認をしていると思料する。被請求人は、「フコイダン」について定義がないこと、「フコイダン」が原料である海藻の種類、産地などの要素により分子量や構造が相違するものの総称であることを認めながら、健康食品業界で使われているからという理由だけで特定の成分を表示する一般名称として通用しているものであると認定している。しかし、健康食品業界での使われ方は、その意味について規制されておらず、その使われ方についてのコンセンサスも統一性もなく、使用者がかってな思いで様々な意味に使われているのが実態である。このため、健康食品業界自体が、「フコイダン」は特定の意味が未だ定まっていないこと、この語の意味が「一人歩き」していること、無秩序に使われているのを認めており、これから成分や品質についての研究をしなければならないことが多くの書面や新聞や宣伝広告などで盛んに述べられている。特許庁の審査事例でも、統一された取り扱いがされていない。
このような実態の中で、健康食品業界で使われているからという理由だけで「特定の成分を表示する一般名称として通用している」と認定し、主張するのは事実を無視する強弁であり矛盾した主張である。
健康食品業界で使われている実態については、請求人が審判請求書において多くの証拠を提出したが、被請求人が提出した乙号証の中でも、「フコイダン」の品質は不明である旨が次のように複数記載されている。
ア 乙第1号証:左上の段の「機能性、構造解明が飛躍の鍵」中に、次のように記載されている。
「構造の異なるフコイダンが存在するなどの理由から、研究者たちは、その仕組みを解明するのに困難を極めていた。『フコイダン」とは、単なる総称であり、ビタミンのようにA、B、C、Eとまで解明されないと、有効成分を同定したとはいえない。』(関係者)とするように、その複雑な構造を解明する徹底した研究が原料サプライヤーには必要不可欠とされている。」
イ 乙第2号証:左上の段「フコイダンという総称で一括りにされ、差別化しづらい商材だけに、原料メーカーでは、バックデータ整備に余念がない。」、左中の段「フコイダンは、その由来によって、構造が違うのだから、機能性も異なるのは当然だ」との記載
ウ 乙第4号証:16頁下段「フコイダン研究所が設立されました。」中、「いまだに『フコイダン』の定義に公的なものが無いため、品質にもバラツキが大きいのが現状です。」との記載、20頁左上「フコイダンという成分が徐々に一般消費者に浸透し始めている一方で、『総称であるフコイダンという言葉が一人歩きしてしまっている』とする声は少なくない。『由来別のフコイダンの構造が異なるのだからその機能性も違う』という観点から、各社では独自の研究データの蓄積を進めている。」との記載
以上のように、被請求人の提出に係る証拠の中でも、「フコイダン」の成分は不明であり、その品質は多様であることが明記されている。このような実情を無視して、「フコイダンは商品の内容、品質、原材料を表示する一般的な用語である。」と認定するのは、明らかな事実誤認である。
なお、審査基準でも品質を間接的に表示するものは、品質表示には該当しないとされており、例えば、第7類で「ケミカルアンカー」は、極めて漠然とした広範な意味をもち、品質表示には該当しないとされている(東京高裁平成10年(行ケ)第109号、平成11年1月27日判決、速報288-8632)。
このような経験則からも、本件商標のように漠然とした広範な意味をもち、意味が定まっていない用語の場合には、安易に品質表示とすべきではない。
(4)「スーパーフコイダン」には自他商品識別力がないとの被請求人の主張は誤った認定である。
被請求人は、「フコイダン」には自他商品識別力がないという事実誤認を前提にして、これに「スーパー」を結合させたからという論理で、自他商品識別力がないと推論しているが、このような認定は誤りである。その理由として、特許庁では、「スーパー・ルテイン」、「スーパーイソフラボン」、「スーパーDHA」、「スーパーエコザイムQ10」、「スーパープロポリス」、「スーパーレシチン」などが拒絶になったからというのが理由付けである。
しかし、この事例は、本件商標の場合と本質的に相違する事例であり、すり替え理由付けである。なぜなら、これらの商品材料である「ルティン」、「イソフラボン」、「DHA」、「エコザイムQ10」、「プロポリス」、「レシチン」などは、品質も成分も既にその意味が特定されているものばかりである。したがって、この明らかな材料の用語に、品質を誇示する「スーパー」の文字を結合させても、自他商品識別力が無いことは当然である。
これに対し、本件商標の「フコイダン」は、その材料も品質もいまだに特定されていない用語である。このような品質の定まらない用語にスーパーの文字を結合させた場合は、当然品質表示ではなく識別力が認められる用語とするのが自然であり一般的である。
経験則として、「スーパーベース」は建築専門材料について、識別力を認めている例がある。この場合、ベースは極めて広範な意味を有する漠然とした語で、指定商品の用途、品質などを表すものではないとされた事例である(東京高裁平成12年(行ケ)第212号、平成13年10月31日判決)。
また、「スーパードライ」についても数多く商標登録になっている。例えば、登録4332216号、登録4530402号、登録4553136号、登録4973513号、登録4989183号その他などがある。
したがって、スーパーが付いたというだけで、品質表示であるとする被請求人の主張は間違いである。
(5)むすび
叙上のように、被請求人の主張は、矛盾していたり、現実を無視した事実誤認を犯したものであったり、到底承服できないものである。特に、「スーパーフコイダン」には自他商品識別力がないと認定したのは、上記のように2点で事実誤認をするものであり、いずれも理由として承服できるものではない。

第4 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし同第23号証(枝番号を含む。)を提出している。
1 無効理由1(商標法第4条第1項第11号違反)について
(1)請求人は、本件商標と引用商標は類似の商標であると主張し、その理由を種々述べているが、結局のところ、無効理由1の要点は、商標の類否判断において、引用商標から「スーパーフコイダン」という称呼が生ずるか否か、すなわち、「自然健康館」と「スーパーフコイダン」との二段書きにした引用商標の構成要素中の「スーパーフコイダン」という文字が商標の要部(自他商品の識別機能を果たす部分)となり得るか否かという点である。
そこで、以下において、まず、「フコイダン」が商品の内容、品質、原材料等を表示する一般的な語であることを述べ、次いで、「スーパーフコイダン」が自他商品の識別機能を発揮し、出所表示機能を果たし得る語ではあり得ないことを述べる。
(2)「フコイダン」が商品の内容、品質、原材料等を表示する一般的な用語であること
ア 「フコイダン」は、「海藻類の硫酸化多糖類」若しくは「海藻多糖抽出成分」の一般的な名称、又は「海藻の成分である多糖体を含む製品の総称」として、健康食品の分野において一般的に使用されているものである。このことは、1972年(昭和47年)12月1日に初版が発行された「藻類研究法」の第616頁「細胞間粘質多糖」の「a)フコイダン」の項(甲第5号証)において、「たとえば、乾コンブなどの藻体の断片を水に浸しておくと粘重な物質として抽出されてくる。・・・フコイダンはフコースのほかに中性糖としてはガラクトース、キシロースなど含み、そのほか比較的少量のグルクロン酸も含む。その上に、フコースの量、もしくはそれ以上にエステル型硫酸を含むのが特徴である。・・・これら硫酸多糖には、ヘバリン(動物の硫酸多糖)の生理作用と同じ作用、つまり血液凝固を阻げる作用とか・・・」との記載があること、また、「海藻フコイダンの科学」の第10頁の「フコイダン」の項(甲第6号証)に、「『フコイダン』の理化学的な性状については多くの報告があり、硫酸を含む多糖類であることとフコースが主成分であること、などについてはかなり以前から分かっていたが・・・」との記載があることからも明白である。
イ この「フコイダン」の語の起源に関しては、請求人自身も、「『フコイダン』・『FUCOIDAN』は、約90年前(1913年)にスエーデンのヌプサラ大学のH・Z・キリン教授が昆布のヌメリ成分の一つとして発見したもので、当時『フコイジン』と命名されていたが、分子構造が複雑で、抽出や分析が困難であったことから、近年まで研究されることはなかった。その後、国際糖質命名規約によって『フコイダン』『FUCOIDAN』と呼ばれるようになったものである(甲第7号証及び同第8号証)」と述べ、「フコイダン」が90年前に発見された「昆布のヌメリ成分の一つ」であることを認めている。
また、請求人は、「通説として一般に認められている『フコイダン』の意味とは、海藻の中でもコンブ、ワカメ、モズクといった褐藻類に特に多く含まれるヌメリ成分で、水溶性植物繊維である」、「『フコイダン』は、海藻類に含まれる硫酸化アミノ多糖類(植物繊維の一種)の総称であるともいえる」、「(「フコイダン」は、)健康食品の業界では『フコイダン』を、前記よりもさらに広い意味で多様に使用されていて、海藻の成分である多糖体を含むものを全部ひっくるめて『フコイダン製品』又は『フコイダン含有製品』の総称として多様に使用されている」と述べ、「フコイダン」が海藻類に含まれる硫酸化アミノ多糖類又はその製品の総称であることを認めている。
ウ ところで、請求人は、この「『フコイダン』・『FUCOIDAN』という用語は、その定義や概念が未だ定まっていないうえ、原料である海藻の種類、産地、抽出法、硫酸基量、純度、製法、形状などの要素により、その分子量、構造、成分、品質、機能が違っていても総称として使用されているのが現状である」から、「『フコイダン』・『FUCOIDAN』という用語を、加工食品の成分表示のような態様で使用したとしても、具体的にその成分を特定することが出来ない」と主張する。
しかしながら、仮に請求人が主張するように「フコイダン」が原料である海藻の種類、産地等の要素により分子量、構造等が相違するものの総称として使用されているとしても、いわゆる健康食品の取引者・需要者の間では、少なくとも海草類に含有され、かつ健康食品の主成分に用いられる物質であり、がん細胞等に対し効果があるといわれているものとして、認識されているものであるから、例え、「フコイダン」についての厳密な定義が確立していないとしても、「フコイダン」は、健康食品業界において、少なくとも海藻の成分である多糖体を含む製品を表示する語として認識されるものであり、その商品の内容、品質、原材料等を表示する語として十分に通用しているものであるといえる。
エ さらに、請求人の提出する甲第30号証では、本件商標登録出願日である平成16年10月13日以前の2004(平成16年)2月時点で、「中には、がん治療に効果があると報告されているものさえある。その代表格として最近とみに話題に上がっているのが『フコイダン』である。」(44頁本文上段7行ないし11行)、「この『フコイダン』の販売を手がけている会社の一つ自然健康館(東京都中央区銀座)・・・」(44頁本文下段から24行及び25行)とされ、「フコイダン」が取引者間において一般的な名称として用いられていることは明らかであり、請求人はその「フコイダン」の販売を手がける多数の会社のうちの一つにすぎないことも明らかである。これらの事実からしても、「フコイダン」が多数の取引者・需要者において、一般的に使用されているものであることは明白である。
オ 以上のとおり、「フコイダン」は、約90年以上前に発見された成分の名称であり、その後、国際糖質命名規約によって命名されたものであって、そもそも過去においても特定の者の商品の出所を表示する商標として機能していたものではなく、当初から、特定の成分を表示する一般的な名称として通用しているものであり、このことは、取引者において自明のことである。さらに、「フコイダン」が取引者において特定の成分の一般名称であることは、業界紙である「健康産業新聞」(乙第1号証ないし同第4号証)において、「フコイダン」を原料とする健康食品の特集が組まれていること等からも明らかである。
したがって、「フコイダン」は、商品の内容、品質、原材料等を表示する一般的な語として取引者・需要者をして認識されるものである。
(3)「スーパーフコイダン」には自他商品識別力がないこと
ア 上記(2)で述べたとおり、引用商標の構成要素中の「フコイダン」は「海藻多糖抽出成分」又は「海藻の成分である多糖体を含む製品」の一般名称である。また、「スーパー」は「高品質」等の意味合いを有するものであり、取引界においてその商品が高品質であることを誇示する記述的な語として一般的に用いられているものである。そのため、「スーパー」及び「フコイダン」の各語は、何人も自由に使用し得るものであり、自他商品識別機能及び商品の出所表示機能を果たし得ない。これらの2語を結合させた「スーパーフコイダン」についても、全体として「高品質の海藻多糖抽出成分」又は「高品質の海藻の成分である多糖体を含む製品」の観念を生じさせる。そして、これら観念は、その商品の内容、品質、原材料を直接的に表示するものに他ならないから、当該観念を生じさせる「スーパーフコイダン」の文字部分は、単なる商品の成分、原材料を表示するにすぎないものとして把握、認識されるものである。
イ 特に、いわゆる健康食品の分野においては、その加工食品の成分、原材料の有する効能が優れていることが商品価値に直接的に影響することもあり、「スーパー」等の商品の品質等を誇示する語が好んで使用される傾向が強い。
このことは、現実の取引界において、「スーパー・ルテイン」、「スーパーイソフラボン」、「スーパーDHA」、「スーパーコエンザイムQ10」、「スーパープロポリス」、「スーパーレシチン」等のように「スーパー」という文字が付された商標の商品が多数販売されていることからも明らかである(乙第5号証ないし同第10号証)。そして、これらの文字のみから構成される商標については、いずれも特定の者によって商標登録はされていない。
ウ そして、「SUPER FUCOIDAN」又は「スーパーフコイダン」の文字が商標としての自他商品識別機能及び出所表示機能を有しないものであることは、いわゆる健康食品の分野において、次のような商標の出願が自他商品識別力を有しないことを理由として特許庁の審査・審判で拒絶されていることからも明らかである(乙第11号証ないし同第20号証)。
(ア)「スーパーアガリクス」(商願平11-83330号)
(イ)「スーパー・ルテイン」(不服2000-134625号審決)
(ウ)「スーパーイソフラボン」(商願2001-44817号)
(エ)「スーパーダイズ」(商願2002-40432号)
(オ)「SUPER/COLLAGEN/スーパーコラーゲン」(商願2005-105333号)
(カ)「ピュアフコイダン/PUREFUCOIDAN」(商願2005-7338号)
(キ)「ナノフコイダン」(商願2005-50826号)
(ク)「ダブルフコイダン」(商願2003-86646号)
(ケ)「トリプルフコイダン」(商願2003-56583号)
(コ)「プラチナフコイダン」(商願2004-39552号)
これら商標はいずれも、商品の品質を誇示する「スーパー」の文字と商品の原材料の一般名称である「アガリクス」、「ルテイン」、「イソフラボン」、「ダイズ」若しくは「コラーゲン」の文字とを結合させたもの、又は原材料を表示する「フコイダン」の文字と商品の品質等を直接的に表示する「ピュア(PURE)」、「ナノ」、「ダブル」、「トリプル」若しくは「プラチナ」の文字とを結合させたものであり、引用商標の構成要素中の「スーパーフコイダン」と文字構成の基軸を共通にするものである。そして、これら商標と「スーパーフコイダン」とを区別して「スーパーフコイダン」については自他商品識別機能を果たし得るものであるとすべき特段の事情も見当たらない。
また、前掲の商標中の「スーパー・ルテイン」については、自他商品識別力の欠如を理由とする拒絶査定に対する審判が請求されたが、その審決においても、「その構成中『スーパー』の文字は、健康食品の分野においては、例えば、『スーパーカテキン』、『スーパーカルシウム』のように、『スーパー』のあとに効能を具体的に想起できる原材料名をつなげて、その原材料に含まれる有効成分の品質のよさを強調するかたちでよく使用される語と認められる」と認定され、自他商品識別力を欠如する旨の拒絶査定が維持されている(乙第12号証の4)。
エ 「フコイダン」についても、「多糖類の一つを表し、健康によい多糖類として大変注目されている」(乙第16号証の2)、「食物繊維の一種で商品の原材料として使用されている」(乙第17号証の2)、「海草類の中に含まれる物質であり、化学的には『全糖』『灰分』『硫酸基』『ウロン酸』が結びついた『Dキシロース』『Lフコース』を主成分とした粘質多糖類の一種」(乙第18号証の2)、「『こんぶ、モズクなど海藻のヌメリ成分の一つである硫酸化多糖類』を意味する語で、近年ガン細胞を自滅させる効能があるとされ、また、健康にも効能があるとされ、所謂『健康食品』の原材料としても多く使用されているもの」(乙第19号証の2)のように、商品の内容、品質等を表示する一般的な語であることを前提に判断されている。
オ また、被請求人は、「SUPER AGARICUS(スーパーアガリクス)」の標章を付したアガリクス茸を主原料とする加工食品の製造販売を行っているところ(乙第20号証)、過去に、この「SUPER AGARICUS(スーパーアガリクス)」の標章についての商標登録出願を行い、その特許庁の審査において、「『スーパー』『SUPER』の文字は、商品の誇称表示として一般的に使用されているものであり、『アガリクス』『AGARICUS』の文字は、昨今、その効用のため、各種健康食品の原材料として使われることの多い『アガリクス茸』の略称として広く認識されていることからしますと、これをその指定商品に使用しましても、単に自社の『アガリクス茸』『アガリクス茸を使用した(いわゆる)健康食品』を誇称的に表示したものとして認識されるに過ぎないものと認めます。」との理由で、当該商標は商標法第3条第1項第3号に該当するとして、その出願は拒絶された(乙第11号証)。
このように、健康食品の原材料名に「スーパー」を付してもその原材料の健康食品の誇称的に表示として、商標登録は認められていない。この理は、フコイダンという健康食品の原材料についても同様に当てはまる。
さらに、請求人の引用商標は「自然健康館」の文字と「スーパーフコイダン」の文字とを二段に表すものであるところ、このように、請求人が「自然健康館」の文字が付加された引用商標を出願したのは、請求人自身も「スーパーフコイダン」の文字単独では商標法第3条第1項第3号に該当し、商標登録を受けることができないと判断したことを示すものに他ならない。
カ 以上より、「フコイダン」が「海藻多糖抽出成分」「海藻類の硫酸化多糖類」を意味する一般的な名称であることは明白であり、そして、この「フコイダン」に商品の品質を誇称する「スーパー」を付加した「スーパーフコイダン」が「優れたフコイダン」を意味するにすぎないものであることは明らかである。
したがって、「フコイダン」は「海藻多糖抽出成分」、「海藻類の硫酸化多糖類」又は「海藻の成分である多糖体を含む製品」を意味する一般的な名称であることは疑う余地のないものであり、そして、この「フコイダン」に商品の品質を誇称する「スーパー」を付加した「スーパーフコイダン」についても、「優れたフコイダン」という商品の品質・内容を表示するにすぎないものである。
よって、引用商標の構成要素中の「スーパーフコイダン」は商標の要部とはなり得ない。
(4)本件商標の要部
請求人は、「本件商標の要部は、『SUPER FUCOIDAN』と『スーパーフコイダン』の2つ」と主張しているが、本件商標は、「SUPER」、「FUCOIDAN」及び「スーパーフコイダン」の文字のみより構成されるものではなく、これらの文字と6本の横線を菱形状に表した2つの図形とを組み合わせたものであるところ、上記(3)のとおり、「スーパーフコイダン」及び「SUPER FUCOIDAN」の文字は、単に商品の内容、品質、原材料等を表示するにすぎないものであり、自他商品の識別力を有しないものであるから、商標の要部とはなり得ない部分である。すなわち、本件商標の要部は、6本の横線を菱形状に表した2つの図形部分、又はこれらの図形部分と「SUPER」、「FUCOIDAN」及び「スーパーフコイダン」の文字部分とを組み合わせた全体により識別力を生じさせるものである。
したがって、本件商標の構成要素中の「SUPER」、「FUCOIDAN」及び「スーパーフコイダン」の部分が商標の要部としての機能を果たし得ないものである以上、本件商標の要部が、「SUPER FUCOIDAN」と「スーパーフコイダン」の2つであることを前提とする請求人の主張が誤っていることは明白である。
(5)本件商標と引用商標との類否
上記(3)のとおり、引用商標の構成要素中の「スーパーフコイダン」は商標の要部とはなり得ない以上、引用商標から生ずる称呼は、「自然健康館スーパーフコイダン」全体に照応した「シゼンケンコウカンスーパーフコイダン」又は引用商標の構成全体から商標の要部となり得ない「スーパーフコイダン」が捨象された「自然健康館」の部分に照応した「シゼンケンコウカン」である。
したがって、引用商標から「スーパーフコイダン」という称呼が生ずるとして、本件商標と引用商標とが類似するとした請求人の主張は、その前提を欠くものであり、失当である。
したがって、本件商標と引用商標とは非類似の商標である。
(6)小括
以上より、本件商標は、引用商標と非類似の商標であるから、商標法第4条第1項第11号に該当するものではない。
(7)その他
請求人は、無効理由1中の「エ(イ)b 商標法第6条第1項の適用について」の項において、「本件商標は、法の適用を誤って登録査定したものであり不当なものである」と述べ、本件商標が商標法第6条第1項に違反して登録されたものであるかのような主張を行っている。また、請求人は、被請求人が審査官の示唆に従って行った指定商品の補正が要旨変更であり、権利範囲を拡大する違法な補正であるとも主張している。
しかしながら、本件商標は商標法第6条第1項に違反して登録されたものではなく、また、本件商標の審査における補正は何ら要旨を変更するものではない。しかも、そもそも、商標法第6条第1項違反及び補正の制限違反は無効理由には該当しない(商標法第46条第1項)。
したがって、請求人のこれらの主張は、明らかに失当である。
2 無効理由2(商標法第4条第1項第10号違反)について
(1)「スーパーフコイダン」は商品の品質等表示にすぎず、請求人の商標ではない。
上記1のとおり、「スーパーフコイダン」は、「優れたフコイダン」、すなわち、その商品が高品質な、海藻類に含有する硫酸化多糖類が含有されている商品であることを記述するものであり、単に商品の内容、品質、原材料を表示するにすぎないものである。そのため、「スーパーフコイダン」は、自他商品識別機能及び出所表示機能を果たし得ないものであるから、需要者等をして、請求人が製造・販売する商品の商標として把握、認識されないものである。
(2)請求人商標には周知性がない。
請求人は、「スーパーフコイダン」が請求人の商品を表示するものとして、本件商標の出願前である平成18年8月頃には、需要者の間に広く認識されていたと主張し、その証拠方法として甲第28号証ないし同第32号証を提出している。
しかしながら、これらの証拠は、取材協力として、請求人の商品が紹介されている程度のものが殆どであり、その広告宣伝の方法、回数及び内容、使用期間等のいずれにおいても極僅かであり、そして、請求人商品の販売状況等については一切立証されていない。
したがって、この程度の使用実績では請求人の商標が周知性を獲得しているとは到底いえない。
(3)小括
以上より、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当しない。
3 裁判例
請求人は、「本件請求人と被請求人とは、現在、知的財産高等裁判所において、平成19年(ネ)第10065号損害賠償等請求控訴事件として係争中である」旨を述べている。
当該事件は、東京地裁平成18年(ワ)第28323号事件の控訴事件であり、同地裁事件では、「『フコイダン』は、海藻類の成分を抽出して作られた健康食品の原材料を表示する用語である。そして、いわゆる健康食品において、『スーパー』は、商品の誇称表示として一般的に使用されている用語である。したがって、本件商標権の指定商品である『海藻エキスを主材料とする液状又は粉状の加工食品』又は『清涼飲料、果実飲料、飲料用野菜ジュース』の分野では、『スーパーフコイダン』という用語は、高品質の『フコイダン』、すなわち、高品質な、海草類に含有される硫酸化多糖類が含有されていることを記述するにすぎないのであって、それ自体では出所識別力を有せず、本件商標の要部とはなり得ないというべきである。そして、『フコイダン』を名称に含む様々な健康食品が販売されている状況に照らせば、本件商標は、『自然健康館』という製造元の表示と相まって初めて出所識別力が生じるというべきであり、『自然健康館スーパーフコイダン』という本件商標全体が要部であると解するのが相当である。」と判断し、請求人の請求が棄却されたが(乙第22号証)、控訴審においても、以下の理由で、平成19年12月25日付けで控訴棄却の判決がされている(乙第23号証)。判断は概ね地裁判決と同様であるが、この判決の理由においても、引用商標(控訴人商標)の構成要素中の「『スーパーフコイダン』の用語は、高品質の『フコイダン』、すなわち、高品質な、海藻類に含有する硫酸化多糖類が含有されていることを記述するにすぎないのであって、それ自体では出所識別力を有しないことは原判決の説示するとおりである(判決書第19頁第2行ないし第6行)」とし、引用商標(被控訴人商標)から「スーパーフコイダン」の称呼は生じないと認定し(第26頁第11行以下)、本件商標(被控訴人商標)と引用商標(控訴人商標)とを非類似の商標と判断して、地裁判決を維持しているものである。
4 むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同項第10号の規定に違反して登録されたものではない。
よって、本件審判の請求は成り立たない。

第5 当審の判断
1 無効理由1(本件商標の商標法第4条第1項第11号該当性)について
(1)「フコイダン」の語について
ア 本件商標と引用商標との類否について判断するにあたり、まず、「フコイダン」の文字が取引者・需要者間において如何なる意味合いの語として認識・解釈されているかについて検討するに、請求人及び被請求人の提出に係る証拠によれば、以下の事実が認められる。
(ア)共立出版株式会社、1979年12月1日発行「藻類研究法」には、「フコイダン:たとえば、乾コンブなどの藻体の断片を水に浸しておくと粘重な物質として抽出されてくる。・・・フコイダンはフコースのほかに中性糖としてはガラクトース、キシロースなど含み、そのほか比較的少量のグルクロン酸も含む。その上に、フコースの量、もしくはそれ以上にエステル型硫酸を含むのが特徴である。・・・これらの硫酸多糖には、ヘパリン(動物の硫酸多糖)の生理作用と同じ作用、つまり血液凝固を阻げる作用とか、血液中のリパーゼの活性を高める作用などがあり、・・・」との記載がある(甲第5号証)。
(イ)株式会社成山堂書店、平成18年10月18日発行「海藻フコイダンの科学」には、「フコイダンは、今から約90年前の1913年にスウェーデンのウプサラ大学のキリン教授によって初めて見出され報告されたもので、当初フコイジンと名付けられたが、その後、国際糖質命名規約によってフコイダンと呼ばれるようになったものである。・・・フコイダンの理化学的な性状については多くの報告があり、硫酸を含む多糖類であることとフコースが主成分であること、などについてはかなり以前から分かっていたが、・・・」との記載がある(甲第6号証)。
(ウ)2001年5月9日付けの「健康産業新聞」には、次の記事及び広告が掲載されている(甲第11号証の1ないし3及び乙第1号証ないし同第3号証)。
a 「ZOOM UP フコイダン」、「抗がん作用、抗アレルギー作用、免疫力強化など」、「海が育てた多機能素材」、「新たな市場形成へ」の表題の下に「コンブ、モズク、ワカメなどの褐藻類に含まれるフコイダン。確立された機能性を持つことから、近年では健康食品としてだけではなく、”代替医療の切り札”として注目が集まっている。・・・」との記載がある。
b 「フコイダンとは・・・」との囲み記事中の「1913年、褐藻類のコンブやヒバマタから硫酸のついた粘質物が単離され、フコイジンと名付けられたのが始まり。その後、多糖類の語尾に「アン」をつけるという国際糖質命名規約によって、フコイダンという名称となる。主な構成成分は、フコース、ガラクトース、マンノース、・・・」との記載がある。
c 「原料市況」の項目下において、業界各社がフコイダンを扱っていることが報じられ、「宝酒造」につき、「宝酒造(株)バイオ事業部門(滋賀県大津市)では、ガゴメコンブ由来の『TaKaRaコンブフコイダン』を提案。機能性、作用機序解明に関して・・・」との記載、「沖縄発酵化学」につき、「(株)沖縄発酵化学(沖縄県糸満市)では、フコイダン含有量が約90%と高い沖縄産モズクから、塩分、低分子成分を除去し、高分子量であるフコイダンを精製。・・・昨年からは末端商品『フコイダン粒』を通販、TVショッピングで展開。月間500?600個という安定した売り上げを継続している。・・・」との記載、「協同乳業」につき、「協同乳業(株)(東京都板橋区)では、南太平洋産モズク由来の『メイトーフコイダン』の提案を開始。同素材は、効率的に不要物を除去する独自技術により抽出したモズク由来のフコイダン粉末。・・・」との記載、「タングルウッド」につき、「タングルウッド(株)(広島県広島市)では、トンガ王国産モズク由来の『AHフコイダン』を上市した。同素材の原料となる天然のモズクは、・・・」との記載がある。
d 「商品市況」の項目下において、末端市場での販売状況が報じられ、「ギデオン」につき、「(株)ギデオン(大阪府茨木市)ではこのほど、海藻の栄養分を1粒に凝縮した『玉藻フコイダン海藻いいとこどり』(250mg×360粒・8000円)を発売した。・・・」との記載、「森下仁丹ファインケミカル」につき、「(株)森下仁丹ファインケミカル(大阪市中央区)では、『仁丹のフコイダン+3』(30ml×30本・3万円)を発売して2年が経つ。・・・」との記載、「アルソア本社」につき、「白鶴霊芝+フコイダンの飲料投入、(株)アルソア本社では、・・・抽出したエキスに宝酒造が提案するガゴメコンブ由来のU-フコイダンを配合した健康飲料。・・・」との記載、「グランヒル大阪」につき、「(株)グランヒル大阪(大阪市阿倍野区)では、2年前に発売した『フコイダンプラス』(250mg×120・粒1万6000円)が好調だ。・・・」との記載がある。
e 各頁の下段において、宝酒造株式会社の販売に係る昆布フコイダン「アポイダン-U」の広告、株式会社沖縄発酵化学の販売に係る「フコイダン粒」の広告、株式会社ギデオンの販売に係る「玉藻フコイダン海藻いいとこどり」の広告が掲載されている。
(エ)2003年10月15日付け「健康産業新聞」には、次の記事及び広告が掲載されている(甲第10号証の1ないし5及び乙第4号証)。
a 「特集フコイダン」、「広がる製品形態、市場規模は40億円に」、「大手参入、研究所設立など活況を呈する成長市場」との見出しの下に、フコイダンの市場が急激に伸びており、末端ベースで40億円に到達していること及びタングルウッド株式会社のトンガ産モズク由来の「フコイダン85」、化粧品原料「フコイダンHV」、穎粒夕イプの「AHフコイダンF」、焼津水産化学工業株式会社の「フコイダンYSK」、「フコイダンYSK(NB)」、理研ビタミン株式会社の「理研メカブフコイダン」、株式会社カイゲンの「ガニアシフコイダン」、協同乳業株式会社の「メイトーフコイダン」、明治製菓株式会社の「明治フコイダン」、株式会社沖縄発酵化学の「フコイダンエキス原末カプセル」、「フコイダンエキス原末頬粒」、「フコイダンS」、有限会社クレセールの「シー・フコイダン」、株式会社ギデオンの「玉藻フコイダン海藻いいとこどり」をそれぞれ紹介する記事が掲載されている。
b 株式会社沖縄発酵化学の販売に係る「フコイダンS」、理研ビタミン株式会社の販売に係る「理研メカブフコイダン」、焼津水産化学工業株式会社の販売に係る「フコイダンYSK」、株式会社ギデオンの販売に係る「玉藻フコイダン海藻いいとこどり」、有限会社クレセールの販売に係る「シー・フコイダン」、株式会社カイゲンの販売に係る「ガニアシフコイダン」、タングルウッド株式会社の販売に係る「AHフコイダン」の各広告が掲載されている。
(オ)「はいから」(熟年生活応援マガジン)2003年春号vol.25には、「フコイダンでガンを克服する!治療最前線からの報告」、「フコイダンとガン細胞の研究と作用」との見出しの下に、「フコイダンとはモズクやワカメ、昆布などの海藻類に含まれる成分、硫酸アミノ多糖類の総称で、フコース、ガラクトース、マンノースなどを含む食物繊維の一種です。近年、フコイダンについての基礎研究も進み、なぜガンに有効なのかがわかってきました。・・・フコイダンにはアポトーシス現象といい、そうしたガン細胞に直接働きかけガン細胞自身を自滅に導く作用があると言われています。・・・またフコイダンには免疫作用も確認されています。」との記事が掲載されており、請求人の商品「スーパーフコイダン」の広告も掲載されている(甲第28号証)。
(カ)「女性セブン」平成15年7月3日号には、「海藻成分驚異のパワー」「フコイダンの実力」との見出しの下に、「フコイダンとは、昆布やワカメ、モズクなどの海藻類に含まれる”ヌルヌル状”の成分のこと。正体は”粘質アミノ多糖類”という物質だ。これに注目したのが農水省と宝酒造の研究グループ。96年の日本癌学会で『制がん作用がある』と発表して注目を集めた。研究は多くの専門家に引き継がれた。」との記事が掲載されており、請求人の商品「スーパーフコイダン」が紹介されている(甲第29号証)。
(キ)ビジネス情報誌「エルネオス」2004年2月号には、「がん治療の効果に話題が集まる『フコイダン』のがん自滅促進作用」との見出しの下に、「『フコイダン』はモズクなど海藻の成分で、それが今、がん患者の救世主になっている。・・・マスコミでも、『フコイダン』が話題になった。例えば、02年9月1日のフジテレビ系『あるある大事典』でも詳細に取り上げられ、・・・その道の権威が、『フコイダン』の効果について具体的資料を示しながら説明した。」などの記事が掲載され、フコイダンの販売を手がけている会社の一つとして請求人とその商品「スーパーフコイダン」が紹介されている(甲第30号証)。
(ク)「がんを治す完全ガイド」2004年2月号には、「抗がん海藻エキス驚異のパワー」、「低分子『フコイダン』の実力」、「がん細胞に働きかけアポトーシスを誘導」、「異常細胞を正常細胞に変える働きも」等の見出しの下に、フコイダンのがん細胞に対する効果を記載した記事が掲載され、同記事では請求人の商品「スーパーフコイダン」が紹介されている(甲第31号証)。
(ケ)「週刊ポスト」2004年7月2日号には、「フコイダン・海藻のヌルヌルでがん細胞が『自殺』する」との見出しの下に、「フコイダンとは、ごく簡単にいえば、昆布やワカメ、モズクなど海藻類のヌルヌルした部分。・・・『海草の中に含まれているフコイダンは、がん細胞が自殺するように死滅するアポトーシスという現象を誘導する働きがあるとみられています。・・・』・・・がんへの効果は今後の研究に待たれるが、フコイダンは胃潰瘍の治癒促進でも知られており、健康食品や一般の食品としても続々と商品化されている。その一つが『スーパーフコイダン』(自然健康館)。・・・この他、ヤクルトも沖縄産モズクからフコイダンを抽出した健康茶『いたわり茶』を発売、協同乳業もフコイダンを100ミリグラム配合した『海のヨーグルト』を6月28日から発売する。」との記事が掲載されている(甲第32号証)。
(コ)本件商標の審査において拒絶の理由に引用された「三省堂コンサイスカタカナ語辞典第2版」には、「フコイダン」が「海藻のうち、特に褐藻(モズク・コンブ・ワカメなど)に含まれる硫酸基と結合した粘質多糖類」で「健康食品として注目されている」と説明されている(甲第3号証)。
(サ)「NPO法人フコイダン研究所」のホームページには、「フコイダンについて」の見出の下に、「『フコイダン』は今から約90年前の1913年にスウェーデンのウプサラ大学のキリン教授がコンブのヌメリ成分のひとつとして発見したもので、当時は『フコイジン』と命名されていましたが、その後、国際糖質命名規約によって『フコイダン』と呼ばれるようになりました。・・・『フコイダン』とは、海藻の中でもコンブ、ワカメ(メカブ)、モズクといった褐藻類にのみ含まれるヌメリ成分で、水溶性植物繊維の一種です。化学的には、硫酸化フコースを主とする多糖体で、・・・」との記載がある(甲第7号証)。
(シ)「(有)ノニインターナショナル」のホームページには、「フコイダンって何?」の見出しの下に、「フコイダンは硫酸化多糖体の一種で、モズク等、褐藻類の表面を覆う『ヌルヌル成分』に含まれていて、水溶性植物繊維の一種です。化学的には、硫酸化フコースを主とする多糖体です。海藻類全般に含まれる硫酸化アミノ多糖類(植物繊維の一種)の総称をいいます。」と記載され、また、「フコイダンの定義」の見出しの下に、「褐藻類のフコイダンは、フコース、キシロース、ガラクトース(褐藻によってはマンノースも含む)等とウロン酸、硫酸で構成されています。フコイダンは未だ明確な定義づけがなされておらず、通常は『フコイダン』や『フコイダン様多糖体』と称しています。」との記載がある(甲第8号証)。
(ス)「タングルウッド株式会社」のホームページには、「フコイダン」の見出しの下に、「フコイダンは硫酸化多糖体の一種で、モズク等、褐藻類の表面を覆う『ヌルヌル成分』に含まれています。・・・1913年、スウェーデンの学者Kylinに寄って発見されて以来その効能について・・・」との記載がある(甲第9号証の1)。
イ 以上の認定事実によれば、「フコイダン」は、90年以上前に発見された海藻に含有される硫酸化多糖類を意味する学術用語として使用されており、本件商標の出願(平成18年8月)前には既に、業界誌や雑誌における紹介記事において、「フコイダン」が海藻類に含有される物質のことであり、これを抽出した健康食品ががん細胞に対し効果があるものとして注目されていることが記載され、商品名に「フコイダン」を含む健康食品が多数の企業から販売されていることも記載されていることが認められる。
したがって、「フコイダン」の用語は、本件商標の出願時には、いわゆる健康食品の取引者及び需要者の間において、海草類に含有される硫酸化多糖類であって、健康食品の主成分に用いられる物質であり、がん細胞等に対し効果があるといわれているものとして、広く知られていたものというべきである。
(2)「スーパー」の語について
ア 次に、「スーパー」の文字は、「極上の、すばらしい」等の意味を有する英語「super」に由来する外来語として親しまれているところ、被請求人の提出に係る証拠(乙第5号証ないし同第10号証)によれば、いわゆる健康食品の分野では、「スーパー・ルテイン」、「スーパー・イソフラボン」、「スーパーDHA」、「スーパーコエンザイムQ10」、「スーパープロポリス粒」、「スーパーレシチン」のように、原材料の名称に「スーパー」を付した商品が多数販売されていることが認められる。
イ また、乙第11号証ないし同第15号証(各枝番号を含む。)によれば、いわゆる健康食品を指定商品とした商標登録出願において、原材料の名称たる「アガリクス/AGARICUS」、「ルテイン」、「イソフラボン」、「ダイズ」、「COLLAGEN/コラーゲン」に「スーパー」の文字を付した商標は、「スーパー」の文字が商品の誇称表示として一般的に使用されていることから、商標法第3条第1項第3号に該当するとして登録に至らなかった例があることが認められる。
ウ そうすると、「スーパー」の文字は、商品の品質等が優れていることを示す誇称表示として他の文字に付加して使用されることが多く、それ自体は自他商品の識別標識としての機能を有し得ないものというべきである。
エ さらに、乙第16号証ないし同第20号証(各枝番号を含む。)によれば、「ピュアフコイダン/PUREFUCOIDAN」、「ナノフコイダン」、「ダブルフコイダン」、「トリプルフコイダン」、「プラチナフコイダン」が商品の品質、原材料を表示するものにすぎず、商標法第3条第1項第3号に該当するとして拒絶査定を受けていることが認められる。
(3)引用商標について
ア 引用商標は、別掲(2)のとおりの構成からなるところ、構成中の「スーパーフコイダン」の文字は、上記(1)及び(2)の事実からすれば、「フコイダン」の語と「スーパー」の語とを結合したものと容易に認識し把握されるものというべきである。
イ 既に述べたとおり、「フコイダン」の語は、海藻類の成分を抽出して作られた健康食品の原材料を表示する用語である。そして、いわゆる健康食品において、「スーパー」の語は、商品の誇称表示として一般的に使用されている用語である。
そうすると、引用商標の構成中の「スーパーフコイダン」の文字は、指定商品である「海藻エキスを主材料とする液状又は粉状の加工食品」又は「清涼飲料,果実飲料,飲料用野菜ジュース」の分野では、高品質の「フコイダン」、すなわち、高品質な、海草類に含有される硫酸化多糖類が含有されていることを記述するにすぎないのであって、それ自体では自他商品の識別力を有せず、引用商標の要部とはなり得ないというべきである。
したがって、引用商標は、全体として「シゼンケンコウカンスーパーフコイダン」の称呼又は「自然健康館」の文字部分から「シゼンケンコウカン」の称呼が生ずるとしても、自他商品識別のための単なる「スーパーフコイダン」の称呼は生じないというべきである。
(4)本件商標と引用商標との類否について
上記(3)のとおり、引用商標は「スーパーフコイダン」の称呼が生じないものである以上、本件商標と引用商標とが「スーパーフコイダン」の称呼を共通にする類似の商標であるとする請求人の主張は、前提を欠き、理由がないことになる。
そして、本件商標についてみても、その構成中の「SUPER FUCOIDAN」及び「スーパーフコイダン」の文字部分自体は、自他商品の識別標識としての機能を果たし得ないものというべきであるから、本件商標からは単なる「スーパーフコイダン」の称呼は生じないものといわなければならない。
そうすると、本件商標と引用商標とは称呼上類似するものとはいえない。
その他、両商標は、それぞれの構成に照らし、外観及び観念においても相紛れるおそれはない。
したがって、本件商標と引用商標とは、称呼、外観及び観念のいずれの点からみても相紛れるおそれのない非類似の商標といわざるを得ず、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当するものではない。
2 無効理由2(本件商標の商標法第4条第1項第10号該当性)について
(1)請求人は、「スーパーフコイダン」は請求人の商品を表示する商標として本件商標の登録出願時には需要者の間に広く認識されていた旨主張し、証拠を提出している。
しかしながら、既に述べたように、「スーパーフコイダン」の文字は、高品質の「フコイダン」、すなわち、高品質な、海草類に含有される硫酸化多糖類が含有されていることを記述するにすぎないものであり、自他商品の識別標識としての機能を果たし得ないものである。
そして、請求人の提出に係る証拠を徴するに、請求人が使用していると主張する「スーパーフコイダン」の文字は特別顕著な特殊態様等からなるものでもなく、普通に用いられる書体であるばかりでなく、「スーパーフコイダン」の文字を付した請求人の商品は、数誌に紹介されている程度であり、その具体的な宣伝広告の方法・内容・頻度・期間等が明らかでないし、その販売期間、売上高、市場占有率等が一切不明であるから、該証拠によっては、「スーパーフコイダン」の文字が請求人の業務に係る商品を表示する商標として本件商標の登録出願時に取引者、需要者間において広く認識されていたものと認めることはできない。
(2)加うるに、上記1(4)で述べたように、「スーパーフコイダン」の文字を含む引用商標と本件商標とは非類似の商標であることからすれば、請求人が主張する「スーパーフコイダン」の商標も本件商標とは類似しないものというべきである。
(3)したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当するものではない。
3 その他
請求人は、本件商標の審査過程における経緯を縷々述べ、本件の指定商品の補正が要旨変更に当たる旨、また、本件商標が商標法第6条第1項に違反して登録された旨主張しているが、そもそも補正の制限違反及び同法第6条第1項違反は無効理由に該当しないことは同法第46条第1項の規定から明らかであるから、請求人の上記主張は失当というほかない。
4 まとめ
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第10号及び同第11号のいずれの規定にも違反して登録されたものではないから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効にすべき限りでない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 <別掲>
(1)本件商標(色彩については原本参照)


(2)引用商標


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審理終結日 2008-09-04 
結審通知日 2008-09-09 
審決日 2008-09-22 
出願番号 商願2006-80114(T2006-80114) 
審決分類 T 1 11・ 25- Y (Y29)
T 1 11・ 262- Y (Y29)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 藤田 和美 
特許庁審判長 渡邉 健司
特許庁審判官 酒井 福造
鈴木 修
登録日 2007-07-13 
登録番号 商標登録第5061614号(T5061614) 
商標の称呼 スーパーフコイダン、フコイダン 
代理人 大津 洋夫 
代理人 石田 昌彦 
代理人 松田 純一 
代理人 森崎 博之 
代理人 石原 修 

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