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審決分類 審判 全部無効 称呼類似 無効としない Y25
審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効としない Y25
審判 全部無効 外観類似 無効としない Y25
管理番号 1187561 
審判番号 無効2007-890146 
総通号数 108 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2008-12-26 
種別 無効の審決 
審判請求日 2007-08-31 
確定日 2008-10-20 
事件の表示 上記当事者間の登録第4922147号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
本件登録第4922147号商標(以下「本件商標」という。)は、「cawaly」の文字を書してなり、平成17年6月14日に登録出願、第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,仮装用衣服,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」を指定商品として、同18年1月20日に設定登録されたものである。

2 引用商標
請求人の引用する登録第2448071号商標(以下「引用商標」という。)は、「CANALI」の文字を書してなり、平成元年9月19日に登録出願、第17類「被服、その他本類に属する商品」を指定商品として、同4年8月31日に設定登録され、その後、同15年7月16日に指定商品を、第25類「洋服,コート,セーター類,ワイシャツ類,寝巻き類,下着,水泳着,水泳帽,和服,エプロン,えり巻き,靴下,ゲートル,毛皮製ストール,ショール,スカーフ,足袋,足袋カバー,手袋,布製幼児用おしめ,ネクタイ,ネッカチーフ,バンダナ,保温用サポーター,マフラー,耳覆い,ずきん,すげがさ,ナイトキャップ,ヘルメット,帽子」とする指定商品の書換登録がされたものである。

3 請求人の主張
請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とするとの審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし同第65号証を提出した。
(1)請求の理由
ア 無効事由
本件商標は、商標法第4条第1項第11号、同第15号に該当し、同法第46条第1項第1号により、無効にすべきものである。
イ 無効原因
(ア)本件商標は、請求人の所有に係る引用商標と類似し、指定商品も同-又は類似の商品であるから、商標法第4条第1項第11号に該当する。
(イ)引用商標は、高品質の男性用スーツ並びにその附属品及びスポーツウェア等に長年継続して使用された結果、アメリカ・ヨーロッパはもとより日本国内でも、請求人の服飾製品に使用される商標として、本件商標の出願時には需要者取引者の間に広く認識され、現在もなお需要者取引者の間に広く認識されている(甲3ないし甲45)。
よって、本件商標がその請求に係る指定商品に使用された場合は、請求人目身又は請求人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかの如く、その出所について混同を生ずるおそれがあり、商標法第4条第1項第15号にも該当する。
(ウ)したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号若しくは同項第15号の規定に該当し、同法第46条第1項第1号の規定により、無効にすべきものである。
ウ 商標法第4条第1項第11号について
(ア)本件商標及び引用商標の構成
本件商標は、欧文字で「cawaly」と構成され(甲1の1)、この欧文字に照らして、称呼「カワリー」或いは「キャワリー」が生じると認められる。
引用商標は、欧文字「CANALI」で構成され(甲2の1)、第25類の商品「洋服,コート,セーター類,ワイシャツ類,寝巻き類,下着,水泳着,水泳帽,和服,エプロン,えり巻き,靴下,ゲートル,毛皮製ストール,ショール,スカーフ,足袋,足袋カバー,手袋,布製幼児用おしめ,ネクタイ,ネッカチーフ,バンダナ,保温用サポーター,マフラー,耳覆い,ずきん,すげがさ,ナイトキャップ,ヘルメット,帽子」を指定して、平成元年9月19日に商標登録出願され、同4年8月31日に設定登録され、現に有効に存続している(甲2の2)。引用商標は、その欧文字に照らして、称呼「カナリ」或いは「キャナリ」が生ずると認められる。
(イ)本件商標と引用商標の類否
本件商標は、引用商標とは、近年無視される傾向が強い語尾長音の有無の相違を除けば、中間の第2音で鼻音「ナ」と半母音「ワ」の相違を有するに過ぎない。
一方で両称呼は、称呼の識別上重要な要素を占める語頭音「カ(キャ)」及び語尾の弾音「リ」を共通にするほか、相違する第2音の開母音「ア」も共通する。
また、両称呼の相違は、僅かに中間第2音の子音に相当する音素の相違に過ぎず、その子音(音素)も、歯茎鼻子音「n」と軟口蓋半母音「w」との相違があるものの、極めて強く発音される歯茎閉鎖音「カ(キャ)」と歯茎弾音「リ」或いはその前に位置する第2音の開母音「ア」に挟まれている。この場合、前後の音が極めて強く明瞭に発音されるから、中間第2音又はその子音(音素)は比較的弱く不明瞭に発音され、その相違は微差に過ぎないといえる。したがって、両称呼は、全体の語感語調が極めて近似し、称呼上明らかに類似する。
更に、両商標は、欧文字の綴りにおいて、大小文字の相違があるが、中間の第3字が「w」か「N」かの相違と、末尾の欧文字が半母音に相当する「y」か母音に相当する「I」かの相違しかなく、外観上の印象も、極めて近似している。
なお、本件商標の指定商品中「被服」は、引用商標の指定商品と同-又は類似の商品と認められる。
したがって、本件商標は、引用商標と称呼上類似し、かつ、外観上も近似すると認められ、その指定商品中「被服」は、引用商標の指定商品と同-又は類似であるから、商標法第4条第1項第11号の規定に該当する。
エ 商標法第4条第1項第15号について
本件商標は、指定商品中「ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,仮装用衣服,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」に関しては、引用商標の周知性故に、商品の出所の混同を生じさせるおそれがあると認められる。
また、仮に本件商標が引用商標と非類似であるとしても、指定商品中「被服」に関しては、本件商標は、引用商標の周知性故に、商品の出所の混同を生じさせるおそれがあると認められ、商標法第4条第1項第15号に該当する。
(ア)本件商標と引用商標の比較
本件商標は、欧文字「cawa1y」の構成からなり(甲1)、一方、引用商標は、欧文字「CANALI」で構成され(甲2)、称呼上中間第2音の相違は微差であり、明らかに類似すると認められ、また、外観上も近似する商標と認められる。
(イ)引用商標の周知性に関する証拠の説明
請求人は、本件商標の出願前から、長年にわたり高級紳士服その他に引用商標を使用している。そして、請求人の服飾製品に関しては、日本においても数多くの宣伝広告が為されており、引用商標は、請求人の服飾製品に使用される商標として日本国内で周知性を獲得している。仮に日本国内での引用商標の周知性が希薄だとしても、欧米諸国における周知著名性は、我が国でも紹介されて知れ渡るところとなっている。したがって、外国商標の周知性に関する審査基準に鑑み、引用商標は、日本国内で周知性を獲得するに至っていると認められる。以下、引用商標の周知性に関する証拠を説明する。
甲3ないし甲12 2000年ないし2005年の請求人のカタログの抜粋写し
これらは、引用商標と、モデルが着用した高級紳士服の写真等から構成され、基本的に無粋な説明文などは記載されていない。すなわち、引用商標と共に、その指定商品に含まれる「洋服」、特に「高級紳士服」の写真が掲載され、また、イタリアをはじめ各国の店舗が一覧で記載されている。
なお、これらに記載された日本国内の店舗などは、以下のとおりである。
東京都千代田区丸の内所在の店舗(甲3ないし甲7)
同 渋谷区神宮前所在のショールーム(甲3ないし甲6)
同 新宿区高田馬場所在のショールーム(甲7)
同 品川区所在のダーバン株式会社内のショールーム(甲8ないし甲11)
同 中央区銀座所在の店舗(甲8ないし甲11)
同 新宿区新宿所在の伊勢丹新宿店内の店舗(甲11)
同 渋谷区道玄坂所在の東急デパート内の店舗(甲11)
大阪市中央区心斎橋筋所在の大阪大丸内の店舗(甲11)
また、甲12は、請求人が製造販売する商品のうち、紳士物のスポーツウェアを掲載したカタログである。請求人は、男性用スーツのほかスポーツウェアに関しても、別個のカタログを設けるほど多くの商品を取り扱っている。
甲13 「PAMBIANCO NEWS」(2003年9月9日付)の写し
これは、イタリアで最も権威のあるファッション関係の総合研究所が頒布する刊行物であるが、添付した訳文から、本件商標の出願前の2003年9月時点での請求人に対する第三者の客観的な評価が明らかである。即ち、請求人は、高品質の紳士服の製造販売により非常に高い収益を上げると共に、紳士服の分野で大きなシェアを獲得しており、極東市場での販路拡大の潜在能力や高級紳士服以外のスポーツウェアの分野での高成長の潜在能力が認められている。なお、請求人の市場、製品ラインナップ及び会社概要に関する概略も述べられている。
甲14ないし甲16 1997年及び1998年に頒布された雑誌の抜粋写し
甲17ないし甲32 2005年に頒布された雑誌の抜粋写し
これらは、いずれも引用商標及び請求人の商品が掲載され又は宣伝広告されたものであるが、引用商標及び請求人の商品が、一般に市販されている雑誌で種々の記事として取り上げられ、又は、宣伝広告されている事実が明らかである。
例えば、甲17には、請求人の新ショップが伊勢丹新宿店、渋谷東急本店及び大阪・大丸心斎橋店にオープンする旨が記載され、紳士服の附属品としての商品「ネクタイ、チーフ、ボタンダウン、ベルト、ニット、靴下及び革靴」が紹介されている。このほか、請求人の紳士服について、甲20には「着心地のよさを追求した服は、世界中のエグゼクティブの支持を得ている。」と、甲21には「イタリアを代表するメンズファクトリーブランド」と、甲25には「『王道』をいく、ミラノの名門。」と、更に、甲26では、数多の紳士服ブランドの中から「スーツはこの10着」として厳選された10ブランドの一つとして請求人が紹介され、「コンサバなミラノオヤジご用達ブランド」と、各々紹介されている。
甲33ないし甲35 JAL機内誌の抜粋写し
これらでも、引用商標及び請求人の商品が取り上げられている。
甲36ないし甲38 各種全国紙・地方紙
これらの紙面でも、引用商標及び請求人の商品の宣伝広告が為されている。なお、甲38では、請求人の引用商標及び紳士服が、「世界中のエグゼクティブから支持を集めるイタリアのメンズファクトリーブランド」と紹介されている。
甲39 1987年ないし2005年3月期までの請求人の商品総売上高一覧表
請求人名称からも明らかなとおり、引用商標は、請求人を表示する社標(いわゆるハウスマーク)であり、請求人の販売する商品には、基本的に全て引用商標が付されて使用されている。よって、この一覧表に記載された金額が、引用商標が使用された商品の売上高とほぼ同一であると、容易に椎認することができる。
なお、円で表された金額は、現在の換算レートによるもので、当時の換算レートによっては現実の金額と異なるが、それでも1987年に約40億円の売上が、1994年には倍増し、1996年には100億円を超し、2003年に約180億円、2004年には200億円を超え、2005年は3月期迄でも既に100億円を超しており、過去最高の売上高を更新することはほぼ確実である。
甲40 甲39と同年度の引用商標に関する請求人の世界的な宣伝広告費一覧
これによると、1987年には1億2650万円だった宣伝費が、1995年には倍増して2億8750万円となり、2000年以降は更に倍増して5億8650万円となり、現在に推移している。このように、請求人は、引用商標を付した自己の商品について全世界的な宣伝広告を大々的に行っている。
なお、これらは、あくまでも請求人自身が用いた宣伝広告費に関するものである。
引用商標及び請求人の商品に関する宣伝広告は、請求人自身のみならず、例えば、伊勢丹新宿店がオープンする際には伊勢丹が行うなど、系列販売店その他が独自に行うものもある。つまり、正確に算出すれば上記宣伝広告費は更に増大するものと推認され、引用商標が世界的に広く宣伝広告されている事実は明らかである。
甲41ないし甲63 請求人の商品の送り状の抜粋写し並びに同一覧表
甲41ないし甲62は、請求人のイタリア本社から日本国内に所在する店舗への商品の送り状であるが、商品が納品される店舗名の外、送り状の作成年月日、商品のコード番号、サイズ、数量、価格(単価)、日本円に換算した価格、及び、納品された商品の合計金額等が記載されている。
甲41ないし甲55は、西武百貨店池袋店所在の店舗への2000年ないし2003年の送り状であるが、イタリア本社から同店舗へは年間5回の頻度で各種商品が納品されている。1回に納品される商品の合計金額は平均2000万円前後で、多いときには3400万円分もの商品が納品されている。つまり、年間で1億円を超える金額に相当する商品が同店舗に納品され、販売されていることなる。なお、送り状記載の金額は、あくまでも卸値であるから、返品分を考慮しても、実際には同店舗がこれを上回る(例えば、2倍程度の)売り上げをあげていると推認される。また、同店舗へ納品されている商品の金額は、2000年には約1億30万円、2001年には約1億100万円、そして、2002年には約1億1500万円と、年々納品額が上昇している(甲45)。
また、甲56は、丸の内の店舗への2003年の送り状で、甲57ないし甲59は、台東区柳橋所在の店舗(問屋)への2004及び2005年の送り状で、甲60ないし甲62は、西五反田所在のダーバン株式会社のショールームへの2005年の送り状である。
更に、甲63は、甲41ないし甲62の全ての送り状の内容(送り状作成年月日及び納品額)を一覧にした表である。
これらから、請求人の商品は、本件商標の出願前から日本国内に所在する複数の店舗に納品され、各店舗で相当量の商品が販売されている事実が明らかである。
(ウ)引用商標の周知性
請求人の前身Canali S.p.A.は、1934年にイタリア国ミラノで設立され、その後、高級紳士服の輸出により、同国内はもとより海外市場のシェアをも獲得して企業力を伸ばし、世界的な名声を得て、現在に至っている(甲13)。
その市場は、主にアメリカ合衆国及びヨーロッパ諸国であるが、単一ブランドブティックによる戦略で、東京を含むアジアの主要都市でも販売系列店を開拓してきたことが明らかである(甲3ないし甲11)。
また、ヨーロッパで権威有るファッション関係の研究所による評価(甲13)では、請求人は、高収益、高成長率で、高級紳士服の分野で世界的主導者の一社と評価されており、極東市場での販売開発の潜在能力やスポーツウェア分野で高成長する潜在能力等が取り上げられている。
更に、その世界的な総売上高や宣伝広告費が、急激に成長していることも明らかである(甲39ないし甲63)。
以上、引用商標が、高級紳士服の分野において世界的に周知著名であり、また、その取扱商品である高級紳士服の附属品「シャツ類、ニット類、ネクタイ、ベルト、靴下、革靴」や「スポーツウェア」の分野でも、周知性を獲得していることは明らかである(甲3ないし甲63)。
そして、日本国内における宣伝広告や雑誌・新聞などの記事の実態(甲10ないし甲34)に鑑みれば、1997年から1998年にかけて、引用商標が世界的に周知著名である事実が我が国にも知られており、本件商標が出願された2005年(平成17年)6月においては、その世界的な周知著名性は、もはや我が国でも十分確立されていたと、容易に推認することができる。
したがって、引用商標は、紳士服やその附属品、スポーツウェアを含む「被服」に関し、本件商標の出願前に既に周知性を獲得しており、その周知性は、本件商標の登録時にも十分維持されていた、否、それ以上に増大していたと認められる。
(エ)本件商標と引用商標との間の出所の混同のおそれ
引用商標は、「被服」に属する高級紳士服及びその附属品と認められる「シャツ類、ニット類、ネクタイ、ベルト、靴下、革靴」その他について世界的に使用された結果、本件商標の出願時において、日本国内においても周知性を十分獲得していたと認められる。そして、請求人の取り扱いに係る商品は、上記商品に留まらず、「スポーツウェア」等の分野にも拡大している(甲12)。
一方、本件商標は、指定商品が「第25類 被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,仮装用衣服,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」であり、前述のとおり、引用商標と類似し、その綴りも近似している。
したがって、本件商標が、その各指定商品に使用された場合は、恰も請求人自身が当該商品の製造販売を行っているかのような誤認混同を生じさせ、又は、本件商標が、請求人と経済的・人的な何らかの関連性により使用されているなどの広義の出所の混同が生ずることは明らかである。
オ まとめ
以上、本件商標は、引用商標と類似し、指定商品中「被服」に関しては、商標法第4条第1項第11号に該当する。
また、引用商標は、本件商標の出願前に、高級紳士服及びその附属品たる「シャツ類、ニット類、ネクタイ、ベルト、靴下、革靴」や「スポーツウェア」等で請求人の使用に係る商標として、我が国で周知性を獲得しており、本件商標が、その各指定商品に使用された場合は、明らかに出所の混同が生じるおそれがあり、商標法第4条第1項第15号の規定にも該当する。
(2)弁駁
第4条第1項第11号について
被請求人は、請求人の主張に対して答弁書で種々の反論をしているが、いずれも請求人の主張をわざわざ曲解して論点を転化した無為な反論であって、以下の理由により採用できない。
(ア)まず、被請求人は、冒頭で唐突に社史を述べ、自身を「長年お客様に愛されている歴史深き老舗」であるとしているが、これを証する証拠は何ら提出されておらず、社史を述べた理由も不明確である。
念のために、インターネット検索サイト「Google」で「カワシマ」の語を検索したところ、少なくとも1?100件中には被請求人に関するページが1件も見当たらない(甲第64号証)。「株式会社カワシマ」の語に「新潟」の語を組み合わせてAND検索すると、被請求人に関するページが唯2件(「Yahoo!電話帳」のページ及び「求人・転職情報」のページ)ヒットするが、どちらも至って事務的な内容の記事であって、被請求人が「歴史深き老舗」であるか否かを推し量ることはできない。
また、同検索サイトで「cawaly」の語を検索すると3件のみがヒットする(甲第65号証)。
ただし、うち1件は本件商標の異議決定に関する記事、もう1件は本件商標とは関連のない音楽のCDを紹介する記事、残りの1件は個人のブログで、被請求人のブランド「CAWALY」と思われる記載がなされているが、被請求人に関する記事はこの1件に過ぎない。
(イ)また、被請求人は、本件商標と引用商標とが「まったく違う読み方である」と、称呼上非類似である旨を主張しつつ、すぐ後に「ひらがなの50音の組み合わせでは、文字が似てしまうように見えるだけで、同じではない。」と、なぜか両者の外観について非類似である旨を主張している。そして、見た目が同じように見える語の例として片仮名の「トマレ」と「トイレ」を挙げている。
「トマレ」と「トイレ」とが実際に外観上類似するか否かはともかく、そもそも請求人は、平仮名であれ片仮名であれ「カワリ(かわり)」と「カナリ(かなり)」とが外観上類似するとは主張しておらず、本件商標「cawaly」と引用商標「CANALI」とが外観上相紛れるおそれがあると主張しているのである。
そして、両商標の「真ん中のアルファベット文字が異なる事」は請求人も認めるが、両者は共に欧文字6文字からなるところ、商標の構成で最も目に留まりやすい語頭における「CA(ca)」及び4?5文字目の「AL(al)」を共通にするものであり、その構成上の差異は、比較的目の留まりにくい3文字目の「N」と「w」及び語尾の「I」と「y」の文字にあるに過ぎない。外観上これだけの共通性があれば、両商標を時と処を異にして離隔的に観察した場合、両者が共に特定の観念を有しない造語であることと相俟って、該差異が曖昧になり、外観上相紛れるおそれがあるものとみるのが相当である。
(ウ)また、被請求人は、本件商標を「キャワリー」と読む旨主張している。確かに、本件商標が「cawa1y」の構成よりなるところ、「キャワリー」の称呼が生ずることは認める。しかし、例えば、「cacao」が「カカオ」、「carbon」が「カーボン」、「card」が「カード」、「calendar」が「カレンダー」、「calorie」が「カロリー」と読むのが自然であるように、本件商標から「カワリー」の称呼をも生ずるものと認められる。ただし、引用商標も語頭が「CA」であって、仮名文字等により称呼は特定されておらず、又、特定の観念を有しない造語であるから、「カナリ」の称呼も「キャナリ」の称呼も生じ得る。
したがって、本件商標の語頭「ca」を「キャ」と読むか「カ」と読むかは両者の類否判断にさして影響はない。
むしろ、両称呼は、称呼の識別上重要な要素を占める語頭音「カ(キャ)」及び語尾の弾音「リ」を共通にし、更に、相違する第2音の開母音「ア」までも共通する。相違する第2音の子音も、歯茎鼻子音「n」と軟口蓋半母音「w」との相違があるものの、極めて強く発音される歯茎閉鎖音「カ(キャ)」と歯茎弾音「リ」又はその前に位置する第2音の開母音「ア」に挟まれている。この場合、前後の音が極めて強く明瞭に発音されるから、中間第2音又はその子音は比較的弱く不明瞭に発音され、その相違は微差に過ぎない。
(エ)したがって、本件商標は、引用商標と称呼上類似し、且つ、外観上も近似すると認められ、その指定商品中「被服」は、引用商標の指定商品と同一又は類似であるから、商標法第4条第1項第11号の規定に該当する。
第4条第1項第15号について
前述(1)記載のとおり、本件商標と引用商標とは、中間第2音の相違が微差であるから明らかに称呼上類似すると認められ、また、外観上も近似すると認められる。引用商標の周知性については、何ら具体的に反論されておらず、被請求人もその周知性を認めたものと解することができる。
したがって、本件商標は、指定商品中「ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,仮装用衣服,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」に関しては、引用商標の周知性故に、商品の出所の混同を生じさせるおそれがある。
また、仮に本件商標が引用商標と非類似であると判断された場合であっても、指定商品中「被服」に関しては、本件商標は、引用商標の周知性故に、商品の出所の混同を生じさせるおそれがあるから、商標法第4条第1項第15号に該当する。

4 被請求人の主張
被請求人は、結論と同旨の審決を求めると答弁し、その理由を次のとおり述べた。
被請求人「株式会社カワシマ」は、創業54年(昭和28年5月29日設立)の婦人服製造卸の会社で、北は青森、西は広島までの関東を中心に商品を提供していて、長年お客様に愛されている歴史深き老舗である。
Cawalyとは、日本語の「かわいい」から文字って取った言葉であり「キャワリー」と読む。
まず、CANALIとcawa1yは、字体をただ単純に見てもまったく違う読み方である。
請求人の求める第2音「ナ」と「ワ」の読み方以外、類似すると求めているが、日本語は、英語などと違い一文字で音を表現している。ひらがなの50音の組み合わせでは、文字が似てしまうように見えるだけで、同じではない。
例えば、「トマレ」と「トイレ」など見た目は同じように見えるが、発音、そして意味合いとしても、まったく別物である。これにより言葉の違いは明確である。
日本語は、50音の発音の他に、キャ、キュ、キョ、チャ、チュ、チョ、など複雑に読み、物事を区別する。その読み方をアルファベット26文字で表すと類似する言葉、熟語、文字は計り知れない。したがって、これらの表現は何事にも当てはまる。
幸い、請求人は真ん中のアルファベット文字が異なる事を認めている。
したがって、商標法第4条第1項第11号若しくは商標法第4条第1項第15号に該当しない。

5 当審の判断
(1)商標法第4条第1項第11号該当について
本件商標は、「cawaly」の文字からなり、該構成文字に相応して「キャワリー」あるいは「カワリー」の称呼を生ずるというのが相当であり、また、特定の観念を生じない造語からなるものとして看取されるものである。
他方、引用商標は、「CANALI」の文字からなり、該構成文字に相応して「キャナリ」あるいは「カナリ」の称呼を生ずるというのが相当であり、また、特定の観念を生じない造語からなるものとして看取されるものである。
しかして、本件商標と引用商標の各称呼を対比すると、「キャワリー」と「キャナリ」、「カワリー」と「カナリ」とでは、第1音「キャ」あるいは「カ」及び第3音「リ」を共通にするが、第2音の「ワ」と「ナ」及び語尾における長音の有無に差異を有するものである。
そして、差異音の「ワ」と「ナ」は、前者が上下の唇を近づけて発する摩擦子音(w)と母音(a)との結合した音節であるのに対し、後者が舌尖を前硬口蓋に接触して発する鼻子音(n)と母音(a)との結合した音節であって、その調音方法を異にするばかりでなく、ともに明確に発音・聴取される音である。
してみると、構成音数が比較的少なく簡潔である本件商標と引用商標の両称呼にあって、前記の差異が称呼全体に与える影響は決して小さいものとはいい難く、これらをそれぞれ一連に称呼したときには、全体から受ける音感が相違し、聞き違い、取り違えられることなく、十分に区別し得るものというべきである。
また、両商標の外観構成をみると、共に欧文字からなるものではあるけれども、本件商標が小文字のみからなるのに対し、引用商標は大文字のみから構成されているうえ、欧文字の綴りについてみても、中央の3文字目で「w」と「N」、右端の6文字目で「y」と「I」とが相違する。そして、相違する文字は互いに字形が著しく異なるものである。
してみると、欧文字綴りとしてみれば、1文字目及び2文字目の「c」「a」と「C」「A」、4文字目及び5文字目の「a」「l」と「A」「L」とにおいて一部共通する点があるといえるとしても、前記差異によって、両商標の外観全体から受ける印象は明らかに異なるものであり、両商標は、外観上も相紛れるおそれはないというべきである。
さらに、本件商標及び引用商標は、ともに特定の意味を有しない造語と認められ、何らの観念をも生じさせないから、観念上の比較はできないものである。
以上の外観、称呼及び観念より与えられる印象・記憶・連想等を総合してみれば、両商標を同一又は類似の商品に使用した場合、需要者をして当該商品が同一の出所に係るものであるかの如く、その出所について誤認混同を生じさせるおそれがあるものとは認められないから、本件商標は引用商標に類似する商標と判断することはできない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
(2)商標法第4条第1項第15号該当について
請求人提出の証拠(甲第3号証ないし同第63号証)によれば、請求人はイタリア国ミラノに本社を有すること、引用商標は請求人に係る商品(男性用スーツ等)に使用されていること、我が国においても系列店を有すること、本国イタリアから西武百貨店の店舗をはじめ各店舗に継続して納品があったこと、本件商標の出願以前に我が国で発行された新聞や雑誌に引用商標に係る広告が掲載されたこと、引用商標に関する全世界での総売上高は2005年で100億7000万円を超えること等が認められ、本件商標の出願時において、引用商標はその需要者に相当程度には知られるに至っていたということができる。
しかしながら、本件商標が引用商標に類似するものではないと判断されることは上記(1)のとおりであり、引用商標の使用実績及び周知性の程度や両商標が使用される商品の関連性の高さ等を勘案しても、両商標を殊更関連づける格別の事情はみいだせないから、結局、本件商標と引用商標とは別異の出所を表す標識として看取されるものというべきである。
してみれば、本件商標をその出願時において指定商品に使用した場合、これに接する需要者が引用商標を想起し連想して、同商品を請求人あるいは同人と経済的又は組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかの如く誤信するとは認め難いから、商品の出所について混同するおそれがあったとすることはできない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するとはいえない。
(3)結語
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号及び同第15号に違反するものではないから、同法第46条第1項により無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2008-05-22 
結審通知日 2008-05-26 
審決日 2008-06-10 
出願番号 商願2005-58323(T2005-58323) 
審決分類 T 1 11・ 262- Y (Y25)
T 1 11・ 261- Y (Y25)
T 1 11・ 271- Y (Y25)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 八木橋 正雄 
特許庁審判長 石田 清
特許庁審判官 矢澤 一幸
小林 由美子
登録日 2006-01-20 
登録番号 商標登録第4922147号(T4922147) 
商標の称呼 キャワリー、カワリー、カウエリー、キャウエリー 
代理人 泉名 謙治 
代理人 小川 利春 

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