• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効としない Y25
審判 全部無効 商4条1項11号一般他人の登録商標 無効としない Y25
管理番号 1187524 
審判番号 無効2007-890073 
総通号数 108 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2008-12-26 
種別 無効の審決 
審判請求日 2007-06-05 
確定日 2008-06-24 
事件の表示 上記当事者間の登録第4906667号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
本件登録第4906667号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲(1)のとおりの構成からなり、平成17年4月27日に登録出願、第25類「被服,ズボンつり,バンド,ベルト,履物」を指定商品として、同年10月6日に登録査定、同年11月4日に設定登録されたものである。

2 引用商標
請求人が本件商標の登録無効の理由に引用した商標は、下記の2件である(以下、これらをまとめて、単に「引用商標」という。)。
(ア)登録第2324652号商標は、別掲(2)のとおりの構成からなり、昭和63年6月30日に登録出願、第17類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、平成3年7月31日に設定登録、その後、同13年8月7日に商標権存続期間の更新登録、さらに、その指定商品及び商品の区分については、同14年5月15日に、第20類「クッション,座布団,まくら,マットレス」、第22類「衣服綿,ハンモック,布団袋,布団綿」、第24類「布製身の回り品,かや,敷布,布団,布団カバー,布団側,まくらカバー,毛布」及び第25類「被服」とする書換の登録がされたものである。
(イ)登録第2329483号商標は、別掲(2)のとおりの構成からなり、昭和63年6月30日に登録出願、第22類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、平成3年8月30日に設定登録、その後、同13年8月7日に商標権存続期間の更新登録、さらに、その指定商品及び商品の区分については、同14年5月15日に、第18類「傘,ステッキ,つえ,つえ金具,つえの柄」、第25類「履物」及び第26類「靴飾り(貴金属製のものを除く。),靴はとめ,靴ひも,靴ひも代用金具」とする書換の登録がされたものである。

3 請求人の主張
請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とするとの審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第20号証(枝番を含む。)を提出した。
(1)商標法第4条第1項第11号について
本件商標は、下部に黒塗り山形図形を配し、その上部に、4つの黒塗り歪形の図形を該黒塗り山形図形の凸部に沿うように配してなるものであり、全体の図形は、仮想垂直線より左方向に約20度位傾いて描いてなり、かつ、上記黒塗り山形図形は、獣類の足裏の肉瘤を、また、上部の4つの黒塗り歪形の図形は、その足指を表したかのように看取され、これら全体として、漫画風に描いた獣類の足跡を表現したものと、かつ、前者の右横には、同様に、全体の図形が仮想垂直線より右方向に約20度位傾いた一回り小さい漫画風に描いた獣類の足跡と思しき図形を表示してなるものと認識される。
しかして、本件商標からは、前記の歩行状態の結果を示す2個の犬等の「獣類の足跡」と思しき図形部分から、一応「ニコノジュウルイノアシアト」の称呼及び「2個の獣類の足跡」の観念が生じ得ることを否定するものではない。
しかしながら、上記2個の犬等の「獣類の足跡」と思しき図形は、歩行することによって印される足跡の極めて自然な状態を描いてなるものであって、2個であることに格別の意味があるものとの印象を受け難いものであるから、これに接する取引者・需要者は、足跡の状態に留意することなく、これを単なる「獣類の足跡」の図形として認識する場合も決して少なくないものといわなければならない。
かかる事実を考慮した場合、本件商標からは、これを簡易、かつ、明快に表現した「ジュウルイノアシアト」の称呼及び「獣類の足跡」の観念をも生じせしめるものと認められる。
ちなみに、上記事実は、甲第2号証(商標公報)に記載のとおり、本件商標が「(531)ウィーン分類(参考情報)3.6.1;3.6.3」、すなわち「3.6.1 四足獣又は四手獣の身体の一部・骸骨・頭蓋骨」「3.6.3 かぎつめのある足、ひづめの足、これらの足跡」に分類されていることからも明らかである(甲第7号証)。
これに対し、引用商標は、上記のとおり、下部に黒塗り山形図形を配し、その上部に、4つの黒塗り歪形の図形を該黒塗り山形図形の凸部に沿うように配し、これら4つの黒塗り歪形の図形の上部には、それぞれ小さい黒塗り三角形を配してなるものであり、全体の図形は、仮想垂直線より右方向に約45度位傾きをもって描いてなるものである。
そして、上記黒塗り山形図形は、獣類の足裏の肉瘤を、また、上部の4つの黒塗り歪形の図形は、その足指を、そして、先端の小さな黒塗り三角形は、その爪を表したかのように看取され、これら全体として、獣類の足跡を表現したものと理解させるものといえる。
しかして、引用商標は、「ジュウルイノアシアト」の称呼及び「獣類の足跡」の観念をもって、取引に資されるとするのが自然である。
したがって、両商標は、「ジュウルイノアシアト」の称呼及び「獣類の足跡」の観念を共通にする類似の商標である。
ちなみに、上記請求人の主張の正当性は、本件商標と同種事件において、「称呼、観念において互いに紛れるおそれがある」と判断された、その他の同種審決事例の存在からも明らかである(甲第8号証ないし甲第13号証)。
(2)商標法第4条第1項第15号について
請求人の創業者であるウーリッヒ・ダウズインは、学生時代に生協向けにテントやザック、スリーピングバッグ等の製造・販売を始め、その後、「使う身になってこそ、良い製品を作ることができる」と考え、世界各地でアウトドア旅行を行い、たまたまカナダのユーコン川でカヌーツーリング中にグリズリーに襲われ怪我の静養中に、川に残された野生動物たちの足跡を見て、「人間を過酷な自然環境から守る、野生動物たちの毛皮(スキン)のような製品」を作ることを思い立ち、特に、環境を破壊することなく自然の掟にしたがい、自然と共存する狼(ウルフ)をイメージし、「ウルフスキン」の名前を生み出した。
また、彼の愛読書の著者である「ジャック・ロンドン(Jack London・1876?1916・米国の小説家)」に由来する「ジャック(Jack)」と「狼の皮」を意味する「ウルフスキン・wolfskin」を組み合わせたブランドネーム「JackWolfskin」と「狼の足跡」の図形マークが誕生し、これらは、今日、請求人の製品を象徴するものとして、世界中のアウトドア・スポーツの愛好家に知られた存在となっている。
請求人会社の設立は、1981(昭和56)年で、その取扱いに係るアウトドア関連製品は、国内では、東京都豊島区在の株式会社キャラバンを通じ、1986(昭和61)年に初めて輸入販売され、今日では、三越、小田急、京王の各百貨店をはじめ14の直営店のほか、全国で340の特約店で販売されている。また、アウトドア専門誌である「山と渓谷」(山と渓谷社発行)や「BE-PAL」(小学館発行)等に広告を掲載している(甲第14号証ないし甲第19号証)。
したがって、本件商標がその指定商品に使用されれば、その出願時及び登録査定時には、著名な引用商標との類似性から、請求人の商品との関連において、出所につき混同を生じるおそれは明らかなところである。仮に、本件商標と引用商標とが商標自体において非類似であったとしても、商標の構成やアイデア等から容易に著名な引用商標を連想せしめるから、これをその指定商品に使用する場合においては、請求人の業務に係る商品と出所につき混同を生じるおそれは明白なところであり、いずれの場合も、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するものである(甲第20号証参照)。
(3)以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号又は同法第4条第1項第15号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項第1号の規定により、その登録は無効にされるべきものである。

4 被請求人の答弁
被請求人は、請求人の上記主張に対し、答弁していない。

5 当審の判断
(1)商標法第4条第1項第11号について
(ア)請求人は、本件商標と引用商標とが称呼及び観念において類似する商標である旨主張しているので、まず、この点について判断する。
本件商標は、別掲(1)に示したとおり、凹状の部分を下にした黒塗りの略ハート形の図形(以下「ハート図形大」という。)を左に傾斜させて描き、該ハート図形大とほぼ同一の形状よりなるものの、それよりもやや小さい図形(以下「ハート図形小」という。)を前記ハート図形大の右横の位置に、右に傾斜するように描くとともに、それらのハート図形大及びハート図形小の凸部に沿うように、それぞれ4つの黒塗り楕円状の図形を配した構成からなるものである。
上記の如き構成からみれば、本件商標は、特定の事物・事象を表したものとして認識し、把握されるとは認め難いから、これより特定の称呼及び観念を生ずることはないといわなければならない。
他方、引用商標は、別掲(2)に示したとおり、中央下部に丸みのある不整形の黒塗り山形図形を配し、その上部に4つの黒塗り縦長楕円形を該黒塗り山形図形の凸部に沿うように並べ、さらに、これら4つの黒塗り縦長楕円形の図形の上部には、それぞれ小さな黒塗り三角形を配してなるものであり、全体の図形は、右斜め上方約45度の角度で描かれてなるものである。
このような構成からみれば、引用商標における山形図形と4つの楕円状図形は、獣類の足裏の肉球を表し、4つの小三角形は、その爪を表したかの如くに看取されるから、全体として獣類の足跡を連想、想起させるものであり、引用商標からは、「爪のある獣の足跡」の観念を生ずるものということができる。
しかしながら、その称呼については、爪のある獣の足跡という観念に相当する的確な称呼があるものとはいえないから、引用商標からは、特定の称呼を生ずることはないものというべきである。
そうとすれば、引用商標から「爪のある獣の足跡」の観念を生ずるとしても、本件商標からは、特定の称呼及び観念を生じないものであるから、両商標は、称呼及び観念において、相紛れるおそれはないものといわなければならない。
また、両商標は、それぞれ上記したとおりの構成よりなるから、その構成における特徴に照らして、外観上、明らかに区別し得るものである。
(イ)請求人の主張について
この点について、請求人は、本件商標から「ジュウルイノアシアト」の称呼及び「獣類の足跡」の観念を生ずる旨主張している。
しかしながら、請求人の主張に沿って、本件商標を足跡様の図形からなる商標と捉えたとしても、本件商標を構成する大小2つの足跡様の図形は、まとまりよく一体的に構成されており、その描出方法も、引用商標における爪の如き図形部分がなく、全体として丸みを帯びた態様をもって描かれていることから、むしろ、穏やかさを感じさせ、可愛らしい足跡といった印象を与えるものということができる。
これに対して、引用商標の図形は、上記したとおり、爪のある獣の足跡を認識させるものであって、不整形な態様の黒塗り図形に爪の如き構成要素を有することから、全体として、勇猛な爪のある獣の足跡といった印象を与えるものということができる。
そうとすれば、請求人の主張に沿って判断したとしても、本件商標と引用商標とは、その構成態様において判然と区別し得る差異を有しており、図形全体から受ける視覚的印象も全く異にするものであるから、これらを時と所を異にして離隔的に観察するも、外観において、相紛れるおそれはないものといわなければならない。
そして、本件商標を足跡様図形からなるものであるとみたとしても、このような構成からなる図形は、看者をして、様々な事物・事象を想起させ得るものというべきであって、直ちに、特定の確定的な称呼・観念を生ずるものとはいい難いから、本件商標から「ジュウルイノアシアト」の称呼及び「獣類の足跡」の観念を生ずる旨の請求人の主張は採用することができない。
また、請求人は、主張の理由付けの一つとして、本件商標がウィーン分類の「3.6.1 四足獣又は四手獣の身体の一部・骸骨・頭蓋骨」「3.6.3 かぎつめのある足、ひづめの足、これらの足跡」に分類されていることを挙げている(甲第2号証、甲第7号証)。
しかしながら、このウィーン分類は、甲第2号証の商標公報に「参考情報」と記載されているとおり、図形要素を含む商標の検索の便宜等の観点から記載されているものであって、この記載から、直ちに、本件商標の称呼・観念が導き出されるものではない。
ちなみに、IPDL(特許電子図書館)において、本件商標の指定商品である第25類を指定して、ウィーン分類の「3.6.3 かぎつめのある足、ひづめの足、これらの足跡」の分類が付与されている商標を検索すると、269件もの商標が検索され、この中には、「四足獣の足跡」からなる、あるいは「四足獣の足跡」を含む商標が数多く存在していることが認められる。
そうとすれば、これらの「四足獣の足跡」から一律に「ジュウルイノアシアト」の称呼及び「獣類の足跡」の観念が生ずるとみるのは、取引の実情に即しているものとはいい難いことであり、その構成態様等をも総合勘案して、その類否が判断がされ、取引に供されているものというべきである。
さらに、請求人は、審決例を挙げているが、それらの審判事件で争われている商標は、本件商標とは、その構成・印象を明らかに異にするものであって、事案を異にするものというべきであるから、上記認定に影響を及ぼすものとは認められない。
(ウ)してみれば、本件商標と引用商標とは、外観において、顕著な差異を有するものであり、称呼及び観念においては、比較すべくもないものであるから、互いに紛れるおそれのない非類似の商標といわなければならない。
したがって、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号に違反してされたものということはできない。
(2)商標法第4条第1項第15号について
請求人の提出に係る甲第14号証ないし甲第19号証(枝番を含む。)を総合すれば、請求人は、引用商標と同一の構成よりなる商標(以下「引用標章」という。)、若しくは引用標章と「Jack Wolfskin」の文字とを結合させた商標をアウトドア関連商品に使用し、主に関東地方、東北地方、北海道等において販売活動をし、かつ、アウトドア関連の雑誌に宣伝広告をしていた事実を認めることができ、引用標章は、請求人の取扱いに係るアウトドア関連商品を表示するためのものとして、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、この種商品分野の需要者の間では、広く認識されていたものと認め得るところである。
しかしながら、前記(1)で認定したとおり、本件商標と引用商標とは、互いに紛れるおそれのない非類似の商標であり、別異の商標として印象づけられるものであるから、本件商標に接する需要者は、これより引用標章を想起又は連想することはないというのが相当である。
してみれば、本件商標は、これをその指定商品について使用しても、該商品が請求人若しくはこれと何らかの関係を有する者の取扱いに係る商品であるかのように、商品の出所について混同を生ずるおそれのない商標といわなければならない。
したがって、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第15号に違反してされたものではない。
(3)むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号及び同第15号に違反してされたものではないから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲
(1)本件商標


(2)引用商標1及び2




審理終結日 2008-01-21 
結審通知日 2008-01-28 
審決日 2008-02-13 
出願番号 商願2005-38310(T2005-38310) 
審決分類 T 1 11・ 26- Y (Y25)
T 1 11・ 271- Y (Y25)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 泉田 智宏 
特許庁審判長 山口 烈
特許庁審判官 鈴木 新五
寺光 幸子
登録日 2005-11-04 
登録番号 商標登録第4906667号(T4906667) 
代理人 山崎 和香子 
代理人 アインゼル・フェリックス=ラインハルト 
代理人 安田 敏雄 
代理人 加藤 義明 

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ