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審決分類 審判 全部申立て  登録を取消(申立全部取消) Y16353637384041434445
管理番号 1186204 
異議申立番号 異議2007-900229 
総通号数 107 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2008-11-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2007-05-11 
確定日 2008-10-01 
異議申立件数
事件の表示 登録第5024626号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第5024626号商標の商標登録を取り消す。
理由 第1 本件商標
本件登録第5024626号商標(以下「本件商標」という。)は、「インナートリップ霊友會インターナショナル日本センター」(「霊」は旧字体、「會」は略字、以下同じ)の文字を書してなり、平成17年1月7日に登録出願、第16類「事務用又は家庭用ののり及び接着剤,封ろう,印刷用インテル,活字,青写真複写機,あて名印刷機,印字用インクリボン,自動印紙はり付け機,事務用電動式ホッチキス,事務用封かん機,消印機,製図用具,タイプライター,チェックライター,謄写版,凸版複写機,文書細断機,郵便料金計器,輪転謄写機,マーキング用孔開型板,電気式鉛筆削り,装飾塗工用ブラシ,紙製幼児用おしめ,紙製包装用容器,家庭用食品包装フィルム,紙製ごみ収集用袋,プラスチック製ごみ収集用袋,型紙,裁縫用チャコ,紙製のぼり,紙製旗,観賞魚用水槽及びその附属品,衛生手ふき,紙製タオル,紙製テーブルナプキン,紙製手ふき,紙製ハンカチ,荷札,印刷したくじ(おもちゃを除く。),紙製テーブルクロス,紙類,文房具類,印刷物,書画,写真,こんにゃく版複写機」、第35類「ホームヘルパー養成講座・福祉用具専門相談員養成講座・介護福祉士資格取得講座・介護支援専門員受験対策講座への講師のあっせん,介護福祉士・ホームヘルパーの紹介,介護福祉士のあっせん,その他の職業のあっせん,介護福祉施設の経営の診断及び指導,社会福祉団体の経営に関する助言,その他の福祉事業についての経営の診断又は経営に関する助言,授産所および福祉作業所の事業の管理,商品の販売に関する情報の提供,人材の派遣または受託による福祉サービスを提供する事業者の事業に関する事務処理の代理又は代行,福祉サービス及び医療サービスを提供する事業者の事業に関する情報の提供,広告,書類の複製,文書又は磁気テープのファイリング,市場調査」、第36類「預金の受入れ(債券の発行により代える場合を含む。)及び定期積金の受入れ,資金の貸付け及び手形の割引,内国為替取引,債務の保証及び手形の引受け,有価証券の貸付け,金銭債権の取得及び譲渡,有価証券・貴金属その他の物品の保護預かり,両替,金融先物取引の受託,金銭・有価証券・金銭債権・動産・土地若しくはその定著物又は地上権若しくは土地の賃借権の信託の引受け,債券の募集の受託,外国為替取引,信用状に関する業務,割賦購入のあっせん,前払式証票の発行,ガス料金又は電気料金の徴収の代行,有価証券の売買・有価証券指数等先物取引・有価証券オプション取引及び外国市場証券先物取引,有価証券の売買・有価証券指数等先物取引・有価証券オプション取引及び外国市場証券先物取引の媒介・取次ぎ又は代理,有価証券市場における有価証券の売買取引・有価証券指数等先物取引及び有価証券オプション取引の委託の媒介・取次ぎ又は代理,外国有価証券市場における有価証券の売買取引及び外国市場証券先物取引の委託の媒介・取次ぎ又は代理,有価証券の引受け,有価証券の売出し,有価証券の募集又は売出しの取扱い,株式市況に関する情報の提供,商品市場における先物取引の受託,生命保険契約の締結の媒介,生命保険の引受け,損害保険契約の締結の代理,損害保険に係る損害の査定,損害保険の引受け,保険料率の算出,建物の管理,建物の貸借の代理又は媒介,建物の貸与,建物の売買,建物の売買の代理又は媒介,建物又は土地の鑑定評価,土地の管理,土地の貸借の代理又は媒介,土地の貸与,土地の売買,土地の売買の代理又は媒介,建物又は土地の情報の提供,骨董品の評価,美術品の評価,宝玉の評価,中古自動車の評価,企業の信用に関する調査,税務相談に関する情報の提供,税務代理に関する情報の提供,慈善のための募金,紙幣・硬貨計算機の貸与,現金支払機・現金自動預け払い機の貸与,ボランティア・福祉活動を目的とした慈善のための募金」、第37類「医療福祉施設における清掃,仏壇及び仏具の修理又は保守」、第38類「ボランティア活動又は慈善事業活動を内容とするテレビジョン放送・有線テレビジョン放送・ラジオ放送に関する指導・助言,電気通信(放送を除く。),放送,報道をする者に対するニュースの供給」、第40類「仏壇の加工・製造に関する指導・助言,印章の彫刻,一般廃棄物の収集及び処分,裁縫,ししゅう,映画用フィルムの現像,写真の引き伸ばし,写真の焼付け,写真用フィルムの現像,製本,浄水装置の貸与,印刷」、第41類「ボランティア活動又は慈善事業活動に関する研修会・講演会・セミナー・講習会の企画・運営又は開催又はこれらに関する情報の提供,ボランティア活動又は慈善事業活動のための教育研修のための施設の提供に関する指導・助言,介護福祉士資格取得講座における教授,福祉用具専門相談員養成講座における教授,宗教に関する教義・儀式・経典・教典・知識・思想の教授,政治・経済・社会・芸術・文化・歴史・宗教・技芸・スポーツに関する講演会及び研修会の企画・運営及び開催に関する指導及び助言,技芸又はスポーツの教授,電子出版物の提供,図書及び記録の供覧,美術品の展示,庭園の供覧,書籍の制作,映画・演芸・演劇又は音楽の演奏の興行の企画又は運営,映画の上映・制作又は配給,演芸の上演,演劇の演出又は上演,音楽の演奏,放送番組の制作,教育・文化・娯楽・スポーツ用ビデオの制作(映画・放送番組・広告用のものを除く。),放送番組の制作における演出,スポーツの興行の企画・運営又は開催,興行の企画・運営又は開催(映画・演芸・演劇・音楽の演奏の興行及びスポーツ・競馬・競輪・競艇・小型自動車競走の興行に関するものを除く。),音響用又は映像用のスタジオの提供,運動施設の提供,娯楽施設の提供,映画・演芸・演劇・音楽又は教育研修のための施設の提供,映画機械器具の貸与,映写フィルムの貸与,楽器の貸与,運動用具の貸与,テレビジョン受信機の貸与,ラジオ受信機の貸与,図書の貸与,レコード又は録音済み磁気テープの貸与,録画済み磁気テープの貸与,ネガフィルムの貸与,ポジフィルムの貸与,おもちゃの貸与,遊戯用器具の貸与,書画の貸与,写真撮影,通訳,翻訳,カメラの貸与,光学機械器具の貸与」、第43類「宿泊施設の提供,宿泊施設の提供の契約の媒介又は取次ぎ,飲食物の提供,保育所における乳幼児の保育,老人の養護,会議室の貸与,展示施設の貸与」、第44類「高齢者及び心身の障害者の居宅・医療施設又は福祉施設における看護,高齢者及び心身の障害者の居宅・医療施設又は福祉施設における看護に関する情報の提供および相談,美容,理容,入浴施設の提供,あん摩・マッサージ及び指圧,カイロプラクティック,きゅう,柔道整復,はり,医業,医療情報の提供,健康診断,歯科医業,調剤,栄養の指導,動物の飼育,動物の治療,植木の貸与」、第45類「新聞記事情報の提供,結婚又は交際を希望するものへの異性の紹介,婚礼(結婚披露を含む。)のための施設の提供,葬儀の執行,墓地又は納骨堂の提供,個人の身元又は行動に関する調査,占い,身の上相談,家事の代行,衣服の貸与,祭壇の貸与,装身具の貸与,仏壇の貸与の取次ぎ」を指定商品及び指定役務として、同19年2月9日に設定登録されたものである。

第2 登録異議の申立ての理由(要点)
1 引用商標
登録異議申立人霊友会及び株式会社いんなあとりっぷ社(以下「申立人」という。)は、下記の11件の登録商標を引用している(以下、これらの商標をまとめて「引用商標」という。)。
(1)登録第4192980号商標は、「霊友会」の文字を書してなり、平成8年12月11日に登録出願、第16類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同10年10月2日に設定登録されたものである。
(2)登録第3051038号商標は、「霊友会」の文字を書してなり、平成4年9月29日に登録出願、第35類に属する商標登録原簿に記載のとおりの役務を指定役務として、同7年6月30日に設定登録され、その後同17年3月1日に商標権の存続期間の更新登録がされたものである。
(3)登録第3025313号商標は、「霊友会」の文字を書してなり、平成4年9月29日に登録出願、第38類に属する商標登録原簿に記載のとおりの役務を指定役務として、同7年2月28日に設定登録され、その後同16年9月7日に商標権の存続期間の更新登録がされたものである。
(4)登録第3030933号商標は、「霊友会」の文字を書してなり、平成4年9月29日に登録出願、第41類に属する商標登録原簿に記載のとおりの役務を指定役務として、同7年3月31日に設定登録され、その後同16年10月19日に商標権の存続期間の更新登録がされたものである。
(5)登録第3095766号商標は、「霊友会」の文字を書してなり、平成4年9月29日に登録出願、第42類に属する商標登録原簿に記載のとおりの役務を指定役務として、同7年11月30日に設定登録され、その後同17年6月14日に商標権の存続期間の更新登録がされたものである。
(6)登録第1106155号商標は、「いんなあとりっぷ」の文字を書してなり、昭和47年3月16日に登録出願、第26類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同50年2月10日に設定登録され、その後3回にわたり商標権の存続期間の更新登録がされ、さらに平成17年8月10日に第6類、第9類、第16類、第19類及び第20類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品とする指定商品の書換登録がされたものである。
(7)登録第1127796号商標は、「インナートリップ」の文字を書してなり、昭和47年3月16日に登録出願、第26類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同50年6月19日に設定登録され、その後3回にわたり商標権の存続期間の更新登録がされ、さらに平成17年10月12日に第6類、第9類、第16類、第19類及び第20類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品とする指定商品の書換登録がされたものである。
(8)登録第1127797号商標は、別掲のとおりの構成よりなり、昭和47年3月16日に登録出願、第26類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同50年6月19日に設定登録され、その後3回にわたり商標権の存続期間の更新登録がされ、さらに平成17年10月12日に第6類、第9類、第16類、第19類及び第20類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品とする指定商品の書換登録がされたものである。
(9)登録第3030938号商標は、「インナートリップ」の文字を書してなり、平成4年9月29日に登録出願、第41類に属する商標登録原簿に記載のとおりの役務を指定役務として、同7年3月31日に設定登録され、その後同16年10月19日に商標権の存続期間の更新登録がされたものである。
(10)登録第3030939号商標は、「いんなあとりっぷ」の文字を書してなり、平成4年9月29日に登録出願、第41類に属する商標登録原簿に記載のとおりの役務を指定役務として、同7年3月31日に設定登録され、その後同16年10月19日に商標権の存続期間の更新登録がされたものである。
(11)登録第3030940号商標は、別掲のとおりの構成よりなり、平成4年9月29日に登録出願、第41類に属する商標登録原簿に記載のとおりの役務を指定役務として、同7年3月31日に設定登録され、その後同16年10月19日に商標権の存続期間の更新登録がされたものである。
2 商標法第3条第1項柱書について
自然人である商標権者が商品及び役務の区分の10区分にわたって、かつ、その区分においてもほとんどの商品及び役務について使用することの合理的根拠はない。したがって、本件商標は、自己の業務に係る商品又は役務について使用する商標とはいえず、商標法第3条第1項柱書の要件を具備せず、登録を受けることができなかったものである。
3 商標法第4条第1項第7号について
本件商標は、申立人「霊友会」の会員であって、後に組織を除名された者が登録を受けたものである。したがって、申立人の名称を含む本件商標の取得を試みた商標権者の行為は、公の秩序、善良の風俗を害する行為であって、該行為によって取得した本件商標は、世人を欺瞞し、公の秩序、善良の風俗を害する商標であるから、商標法第4条第1項第7号の規定に該当し、登録を受けることができなかったものである。
4 商標法第4条第1項第8号について
本件商標は、申立人の一人の名称「霊友会」をそのまま含み、しかも「霊友会」と密接な関係にあり、会員の間で著名なもう一人の申立人「株式会社いんなあとりっぷ社」の名称の略称をも含む商標であるから、商標法第4条第1項第8号の規定に該当し、登録を受けることができなかったものである。
5 商標法第4条第1項第11号について
本件商標は、申立人の所有する引用商標の登録商標「霊友会」及び「インナートリップ」と類似する商標であって、「霊友会」及び「インナートリップ」に使用する商品又は役務と同一又は類似の商品又は役務に使用する商標である。したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号の規定に該当し、登録を受けることができなかったものである。
6 商標法第4条第1項第15号について
本件商標は、申立人の広く知られた名称を含むが故に本件商標を商品又は役務に使用すると申立人の業務に係る商品又は役務と混同を生じるおそれのある商標であり、商標法第4条第1項第15号の規定に該当し、登録を受けることができなかったものである。

第3 当審の取り消し理由(要旨)
申立人霊友会及び株式会社いんなあとりっぷ社の申立て理由及び提出に係る証拠(甲第15号証の1、2)によれば、申立人中の「霊友会」は、その「名称」が「霊友会」であって、「霊友会」は、昭和27年11月21日に宗教法人として設立され、その目的を達成するために必要な業務として公益事業等も行っていることが認められる。
しかして、本件商標は、「インナートリップ霊友會インターナショナル日本センター」の文字よりなり、前半部分の片仮名文字の中間部に漢字の「霊友會」の文字を有してなるから、構成中の該漢字部分「霊友會」は、他人(申立人「霊友会」)の名称をその構成中に含む商標である。
したがって、本件商標は、他人(申立人「霊友会」)の名称をその構成中に含む商標であって、その他人(申立人「霊友会」)の承諾を得ていなから、商標法第4条第1項第8号に違反して登録されたものである。

第4 商標権者の意見(要旨)
1 本件商標権者(後藤義弘)について
別紙登録原簿(乙第1号証)記載のとおり、本件商標権者(以下「商標権者」という。)は、後藤義弘であり、前権利者である保田健一より移転されたものである。申立人は、平成19年6月12日提出の商標登録異議申立理由補充書(以下「理由補充書」という。)の18頁において、「一方、商標権者は、元霊友会会員であり、かつ、霊友会職員であったが、…(略)… 。…(中略)…したがって、商標権者が元霊友会の会員であり、かつ、霊友会の職員であったことに相違はない。」としているが、保田健一より本件商標権を譲り受けた商標権者の後藤義弘も、また、「元霊友会の会員であり、かつ、霊友会の職員であった」者であり、現在は、乙第2号証に示すとおり、松本廣を代表とする「ITRI日本センター」のマネージャーとして、商標権の管理等を行う者である。当団体は、法人格を有さないため、管理者を商標権者としているものであり、実体は、団体の使用に係る商標である。そして、商標権者である後藤義弘は、「霊友会創立者久保角太郎先生の「一天の戒壇を念ず」「宇宙の生きとし生けるもの全てを幸せにする」一大事業を進めるという固い意志」の基に活動する者の一人であり、この点においては、申立人とその信仰の端緒を同一にするものである。
2 霊友会の歴史と霊友会の名称について
申立人の理由補充書において、本事件において問題となっている「霊友会」という名称は、あたかも昭和27年11月21日に設立された宗教法人の名称とイコールの存在であり、当該法人設立に際して、当該法人の前身となる団体が当該名称を選択し採択したかのような主張をし、さらに取消理由通知書においては、これをそのまま採用しているが、この主張及び認定は、「霊友会」という名称について十分に言い当てたものとはいえない。「霊友会」との名称は、乙第4号証の1ないし3として提出する申立人(霊友会)のウェブページの「あゆみ いのちを育みつづけて(沿革)」(乙第4号証の3)に「5年7月13日霊友会発会式を挙行。本部を東京赤坂伝馬町に置く」に掲載されているとおり、遅くとも昭和5年7月13日から久保角太郎氏により、使用されていた名称である。そして、この名称の選択者である久保角太郎氏は、申立人である宗教法人霊友会が設立される8年以上前の昭和19年11月18日に他界されている(乙第4号証の3参照)。
そして、「霊友会」との名称が世間一般ではどのように認識され、定義づけられているかは、ウィキメデイア財団が運営するオンラインのフリー百科辞典である「ウィキペディア」の記載が参考となる。「ウィキペディア」 における「霊友会」に関する記載について乙第5号証に示す。乙第5号証には、「霊友会」の定義として、次のような記載がある。
「霊友会は、法華系の新宗教である。現在、霊友会は事実上2団体存在する。会員を合わせると、信者数は公称440万人(2004年1月15日現在)。本部は2団体いずれも東京都港区内にある。
霊友会大形派(大形市太郎会長) 「霊友会」:東京都港区麻布台1-7-8
霊友会松本派(松本廣代表)「Inner Trip REIYUKAI Internationa1」:USA NY 市エンパイア・ステート・ビルディング」
このように、百科辞典においても、「霊友会」との名称イコール宗教法人としての霊友会、すなわち申立人名称であるとの記載はなされていない。
申立人が理由補充書の18頁において記載し、甲第18号証及び甲第19号証等々において示した訴訟事件の申立人の主張は、判決の内容を都合よく捉え正確に再現するものではなく、失当である。すなわち、甲第19号証の25頁には、「そして、控訴人久保が現在被控訴人霊友会の会長でないと判断された以上、『霊友会の会長』を名乗って活動することが許されないのは当然であり、また、現に宗教法人としての被控訴人霊友会が存在する以上、控訴人久保及びその運営する団体がこれと全く区別し得ない名称を使用することは許されないのであって、…(略)… 。」と記載のとおり、正確には「霊友会の名称を使用してはならない」との判断ではなく、「霊友会と全く区別し得ない名称を使用することは許されない」との判断である。
3 第4条第1項第8号の規定の趣旨及び解釈について
本号は、他の第4条第1項の規定と異なり、出所の混同のおそれを防止することを目的としたものではないから、商標の構成として出所を識別する機能を発揮しうる付加語が付されていたとしても、氏名や名称等を含むと認められる限り、本号に該当するものと判断されるものである。
以上のように、本件商標が、第4条第1項第8号に該当するか否かに当たっては、「他人の名称」と本件商標とが混同され得るか否かではなく、本件商標の使用が、「他人の名称」に存する人格的利益を害するものであるか否かを判断した上で、結論付ける必要がある。
4 宗教の名称の人格的利益について
宗教法人の名称権、すなわち、宗教法人の名称の人格的利益について争われた事件として、乙第7号証に示すいわゆる「天理教事件」(最判平成18年1月20日・民集60巻1号137頁)がある。この事件について、最高裁第2の小法廷は、(ア)「天理教」の名称が周知であること、(イ)その名称を冒用された場合には、天理教に少なからぬ不利益が生ずること、(ウ)「天理教」の名称に他の用語を付加した名称を冒用されない権利を含むこと、(エ)「天理教」との名称と「天理教豊文教会」との名称が類似性を有し相紛らわしいこと、の4点を認定した上で、(1)「天理教豊文教会」は、宗教法人法に基づく宗教法人となってから約50年にわたり「天理教豊文分教会」の名称で宗教活動を行ってきたのであり、その前身において「天理教豊文宣教所」等の名称を使用してきた時期も含めれば80年にもわたってその教義を示す「天理教」 の語を冠した名称を使用していること(2)「天理教豊文教会」が従前の名称と連続性を有し、かつ、その教義も明らかにする名称を選定しようとすれば、現在の名称と大同小異のものとならざるを得ないと解されること(3)「天理教」との被包括関係の廃止により上告人と一線を画することになったとはいえ、中山みきを教祖と仰ぎ、その教えを記した教典に基づいて宗教活動を行う宗教団体であり、その信奉する教義は、社会一般の認識においては、「天理教」にほかならないと解されること
(4)「天理教」の名称の周知性を殊更に利用しようとするような不正な目的をうかがわせる事情もないことの4点の事情を総合考慮して、「天理教豊文教会」の不利益を考量し、「天理教」の語を含む名称を独占することができなくなったとしても、宗教法人の性格上やむを得ない面があることも認めざるを得ないと結論付けた。
このような判断を本件に当てはめれば、次のとおりである。
(ア)「霊友会」との名称が、申立人が理由補充書において主張するような著名性を有することに異論はない。また、(イ)商標権者が商標を有することにより申立人に少なからぬ不利益が生ずるとは、商標権者は思わないが、百歩譲って申立人の主張するように(申立人の権利取得努力によるものであり、必ずしも商標権者が所有することによる不利益と言えないと考えるが、)商標登録が拒絶されるというような少なからぬ不利益が生ずると仮定することもできる。(ウ)申立人が、「霊友会」の名称に他の用語を付加した名称を冒用されない権利を有することは、宗教法人の名称の人格的利益を考えれば当然であり、この点に異論はない。(エ)「霊友会」の名称と、本件商標との名称が、相紛らわしいか否かについて、商標権者は、本件商標が結合商標であるものの、構成上、文字が同大同書にして一連一体に表されるものであるから、一体不可分に外観、称呼されるものであると考えるが、上記のとおり「霊友会」の名称は著名であると言えるので、百歩譲って判断すれば、両名称は相紛らわしいものとするロジックも当然にあり得よう。(1)一方で、本件商標は、乙第8号証の13及び19等として示すように、平成15年の分裂以降、松本廣を代表として、継続的に使用されていることがわかる。なお、乙第8号証は、上記甲第19号証の東京高裁判決が確定したことに伴い、申立人が債権者とし、ITRI日本センターの代表・松本廣を債務者として、東京地方裁判所に、平成9年(ワ)第918号地位確認等請求事件、同第6611号名称使用禁止等請求事件、平成11年(ワ)第18137号建物等施設引渡請求事件の執行力のある判決正本に基づく債権者の申立に関する記録である。(2)また、上記前提となる事実において述べたように、「霊友会」との名称は、申立人が宗教法人として設立される20年以上前に、創立者久保角太郎が会名とした「霊(こころ)の友」に由来するものであり、この「霊(こころ)の友」とは、釈尊が人類に教えた縁起の理法を主体的に受け止め、自分の今につながる親たち(先祖、霊界の人々)に心を向けることであり、さらに、この世で縁をもった家族を始め人々と霊(こころ)の友となることによって、啓発され、生きる力を与えられる、このことが先祖に応える道である、という宗教上の教義を指標するものであり、商標権者の活動において、その教義を明らかにする名称を選定しようとすれば、「霊友会」との名称を含む商標を採択せざるを得ない。さらに、(3)久保角太郎、小谷喜美両恩師の立教に始まり法華経の大儀を遵奉し、その奥義とする先祖供養を行践し、その教えをひろめ、儀式行事を行い、会員を教化育成し、思想の善導、社会の教化を図ることを本旨として、昭和5年以降昭和27年の宗教法人化を経て平成8年頃に至るまでの60年以上にわたり、一つの宗教団体として活動してきた団体が、申立人と、商標権者の属する団体として一線を画することになったとはいえ、両団体ともに、久保角太郎、小谷喜美両氏を恩師と仰ぎ、その教えをしたがった宗教活動を行う宗教団体であり、その信奉する教義は、乙第5号証として示した百科辞典の記載からも明らかなとおり、社会一般の認識においては、「霊友会」に他ならないと解される。また、(4)申立人は、理由補充書の18頁等において、特に証拠を示すことなく、商標権者は、「『霊友会』について熟知しているにもかかわらず、このようなあたかも申立人と関係があるかのような標章を商標登録することは、世人を欺瞞する何ものでもない」としているが、商標権者が乙第8号証において示した商標権者の本件商標の使用実態を見る限りにおいて、商標権者が「霊友会」の名称の周知性を殊更に利用しようとするような不正な目的をうかがわせる事情はなく、あくまでも「霊友会」との名称が「久保角太郎氏の教えの指標」であるという範囲内において使用するに過ぎない。
以上のような事情を総合考慮すれば、商標権者による本件商標の登録は、宗教団体として名称選択の自由の範囲内の行為であって、本件商標の登録が、申立人の「霊友会」という名称に係る法人の人格的利益を侵害するものであるということはできない。
5 結論
以上示したように、取消理由通知書における認定には誤りがあり、本件商標は、商標法第4条第1項第8号に該当するものではない。
よって、本件商標に商標法第43条の2第1号に規定する取消理由は存しないから、本件商標登録は、その登録を維持されるべきである。

第5 当審の判断
1 申立人霊友会及び株式会社いんなあとりっぷ社が提出した甲第15号証の1は平成19年2月8日付けの登記簿謄本(写し)である。これによれば、申立人の一人である名称(申立人霊友会)が「霊友会」であることが認められる。そして、「霊友会」は、昭和27年11月21日に宗教法人として設立され、その目的を達成するために必要な業務として公益事業等も行っていることが認められる。
しかして、本件商標は前記第1のとおり「インナートリップ霊友會インターナショナル日本センター」の文字よりなり、構成全体が極めて冗長であり、しかも片仮名文字の中間部に漢字の「霊友會」の文字を有してなるから、視覚上構成中の該漢字部分「霊友會」が取引者、需要者に特に着目されるといえるものであり、かつ、後記3のとおり「霊友会」は著名である。そして、構成中の該漢字部分「霊友會」は、他人(申立人「霊友会」)の名称をその構成中に含む商標であり、しかも、その他人(申立人「霊友会」)の承諾を得ていないものである。
したがって、本件商標が商標法第4条第1項第8号に違反するとの前記第3の取り消し理由は妥当なものであって、これについて述べる前記第4の商標権者の意見は、以下の理由により採用することができない。
2 商標権者は「『霊友会』の名称と、本件商標との名称が、相紛らわしいか否かについて、本件商標が結合商標であるものの、構成上、文字が同大同書にして一連一体に表されるものであるから、一体不可分に外観、称呼されるものであると考える。」旨述べている。しかしながら、前記1のとおり、本件商標は構成全体が極めて冗長であり、しかも片仮名文字の中間部に漢字の「霊友會」の文字を有してなるから、視覚上構成中の該漢字部分「霊友會」が取引者、需要者に特に着目されるといえるもので、かつ、後記3のとおり「霊友会」は著名であるから、この点に関する商標権者の主張は採用できない。
3 また、商標権者は、「天理教事件」の不正競争法による名称使用権差止等請求事件を例に挙げ、本件商標の登録が、申立人の「霊友会」という名称に係る法人の人格的利益を侵害するものでないから、本件も同様に判断すべきである旨述べている。しかしながら、本件は不正競争法でなく、商標法であって、商標法第4条第1項は、商標登録を受けることができない商標を各号で列記しているが、同項第8号が、他人の肖像又は他人の氏名、名称、著名な略称等を含む商標は、その他人の承諾を得ているものを除き、商標登録を受けることができないと規定した趣旨は、人(法人等の団体を含む。以下同じ。)の肖像、氏名、名称等に対する人格的利益を保護することにあると解される。すなわち、人は、自らの承諾なしにその氏名、名称等を商標に使われることがない利益を保護されているのである(平成17年7月22日最高裁判所判決 平成16年(行ヒ)第343号参照)。そして、本件商標に「霊友會」の他人(申立人「霊友会」)の名称が含まれることは紛れもない事実である。また、申立人は、本件商標が人格的利益を侵害するおそれがあるから、それ故本件商標が商標法第4条第1項第8号に違反すると異議申し立てを行ったものと推認できるものである。さらに、(1)「霊友会」が著名であること(この点について、申立人、商標権者に争いがない。)、(2)申立人が出願中の商願2006-81575号(甲第14号の1及び甲第14号の2)について、本件商標が引用された拒絶理由通知があるため、申立人に少なからぬ不利益が生ずること、(3)申立人が、「霊友会」の名称に他の用語を付加した名称を冒用されない権利を有すること(この点について、商標権者は「異論はない。」と述べている。)、(4)「霊友会」の名称と本件商標が紛らわしいこと、これらを総合的に判断すれば、本件商標が人格的利益を侵害するおそれがあると認められるから、この点に関する商標権者の主張も採用することができない。
したがって、本件商標の登録は、上述した取消理由により商標法第4条第1項第8号に違反してされたと認められるから、申立人のその余の申立理由について判断するまでもなく、同法第43条の3第2項の規定に基づき、取り消すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
別掲 別掲 登録第1127797号商標及び同第3030940号商標




異議決定日 2008-03-05 
出願番号 商願2005-971(T2005-971) 
審決分類 T 1 651・ 23- Z (Y16353637384041434445)
最終処分 取消 
前審関与審査官 村上 照美 
特許庁審判長 中村 謙三
特許庁審判官 津金 純子
小畑 恵一
登録日 2007-02-09 
登録番号 商標登録第5024626号(T5024626) 
権利者 後藤 義弘
商標の称呼 インナートリップレーユーカイインターナショナルニホンセンター、インナートリップレーユーカイインターナショナルニッポンセンター、インナートリップレーユーカイインターナショナル、インナートリップレーユーカイ、インナートリップ、レーユーカイ、レーユーカイインターナショナル、レーユーカイインターナショナルニホンセンター、レーユーカイインターナショナルニッポンセンター、インターナショナルニッポンセンター 
代理人 木内 光春 
代理人 宇野 晴海 
代理人 町田 正史 
代理人 茜ケ久保 公二 
代理人 宇野 晴海 
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