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審決分類 審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Z25
管理番号 1186146 
審判番号 無効2007-890182 
総通号数 107 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2008-11-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 2007-12-17 
確定日 2008-10-08 
事件の表示 上記当事者間の登録第5020515号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第5020515号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5020515号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲に表示するとおり「TokyoWalker」の構成よりなり、平成12年12月28日に登録出願され、第25類「洋服,コート,セーター類,ワイシャツ類,寝巻き類,下着,水泳着,水泳帽,和服,ナイトキャップ,ヘルメット,帽子,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,靴類(「靴合わせくぎ・靴くぎ・靴の引き手・靴びょう・靴保護金具」を除く。),げた,草履類,仮装用衣服」を指定商品として、同19年1月26日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁の理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第45号証(枝番号を含む。)を提出した(なお、甲号証の枝番号を有するものについて、枝番号のすべてを引用するときは、以下枝番号を省略する)。
1 無効理由について
本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項の規定により、その登録は無効とされるべきである。

2 請求の利益について
本件審判請求人(以下「請求人」という。)及び請求人の関連会社は、後述のとおり、商品「印刷物」についての登録商標「東京ウォーカー/TokyoWalker」(登録第4637180号)を有し、雑誌「東京ウォーカー/TokyoWalker」をはじめとして、「ウォーカー(Walker)」の語を含む商標を使用した、雑誌、雑誌の増刊号、ムック、書籍、フリーマガジン等を多数発行している。なお、上記の「関連会社」とは、請求人と会社法上の子会社または会計上の連結子会社の関係にあり、上記雑誌等の発行に際し、請求人が商標権等の使用許諾を与えている会社をいう(以下、「請求人」と記載した場合、関連会社も含めるものとする)。
請求人は、他社とのタイアップにより「被服」について商標「東京ウォーカー/TokyoWalker」を使用する予定であり、商標「東京ウォーカー/TokyoWalker」を出願したところ(商願2001-23614号)、本件商標の存在を理由として拒絶査定がされた。
したがって、本件商標が存在していると、請求人が、本件商標と同一の商標をその指定商品「洋服,コート,セーター類,ワイシャツ類,寝巻き類,下着,靴類(「靴合わせくぎ・靴くぎ・靴の引き手・靴びょう・靴保護金具」を除く。)」等に使用することができなくなる。そればかりか、後記のとおり、本件商標がその指定商品に使用された場合には、需要者・取引者が、請求人の業務に係る商品であると誤認・混同を生じることになり、請求人の利益が著しく阻害されるばかりではなく、公衆にも不利益を生ぜしめるおそれがある。
以上より、請求人は、本件無効審判請求をすることについて利害関係を有する者である。

3 無効理由の要旨
本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものであることから、商標法第46条第1項の規定により、その登録は無効とされるべきである。商標法第4条第1項第15号の判断時期は、「商標の出願時」及び「登録査定時」である(商標法第4条第3項)。
本件商標「TokyoWalker」は、請求人が平成2年(1990年)3月から発行している雑誌「東京ウォーカー/TokyoWalker」と同一の商標である。雑誌「東京ウォーカー/TokyoWalker」(以下、「請求人使用商標」という。)は本件商標の出願日(平成12年12月28日)及び登録査定時(平成18年9月21日)、さらには現在においても、全国的に周知・著名な雑誌である。
請求人の雑誌「東京ウォーカー/TokyoWalker」の著名性に加え、雑誌「東京ウォーカー/TokyoWalker」の需要者・取引者層、及び、請求人の事業実績を鑑みれば、本件商標をその指定商品「洋服,コート,セーター類,ワイシャツ類,寝巻き類,下着,靴類(「靴合わせくぎ・靴くぎ・靴の引き手・靴びょう・靴保護金具」を除く。)」等に使用した場合、需要者・取引者は、請求人の業務に係る商品であると誤認・混同することは必定である。
したがって、本件商標は、他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標である。

4 無効理由の証拠について
以下に本件商標の出願日(平成12年12月28日)及び登録査定時(平成18年9月21日)、さらには現在においても、本件商標が「他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標」であることを説明する。
そして、請求人は、甲第1号証ないし甲第41号証を、本件商標が商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものであることを証する証拠として提出する。
(1)雑誌「東京ウォーカー」が全国的に周知著名であることについて
ア 裁判所の判示について
まず、雑誌「東京ウォーカー/TokyoWalker」の「著名性」及び指定商品に関しての「出所混同のおそれ」に関して、過去の裁判の判決において、裁判所の判示が出されているので、その内容を説明する。
甲第1号証は、請求人が被告となった平成15年(行ケ)第171号審決取消請求事件における判決の謄本の写しである。また、原告は「福岡繊維工業株式会社」である。
甲第40号証に示すように株式会社タイムゾーン所有の登録商標「FashionWalker/ファッションウォーカー」(登録第4049523号)の原簿を閲覧したところ、「福岡繊維工業株式会社」から「株式会社タイムゾーン」へと登録名義人の表示変更手続きがなされていることから、原告「福岡繊維工業株式会社」と本件商標の商標権者である「株式会社タイムゾーン」は同一の法人であると思われる。
なお、本件商標は出願時、「岡田総一」という人物によって出願されていたが、この「岡田総一」なる人物は福岡繊維工業株式会社の意向によって出願人となった「ダミー」の出願人であることは甲第41号証から明らかである。この判決では、以下のとおり判示されている。
『以上の認定事実によれば、本件商標の登録査定日(平成9年2月13日)においてはもとより、登録出願日(平成6年9月1日)においても、雑誌名としてではあるが、「TokyoWalker」との標章は、全国で周知著名となっていたことが認められる。すなわち、雑誌名として一体不可分に認識される形で「TokyoWalker」が周知著名となっていたものと認められる。
ところで、本件商標の指定商品は、雑誌ではなく、前記被服等である。しかし、本件指定商品は、その性質からして、需要者は一般消費者であると認められるところ、周知著名な「TokyoWalker」との標章が雑誌の表紙上部に大きく目を引く形で記載されており、その表示と本件商標との表示態様の特徴が酷似していること、同雑誌は、総合情報誌でファッション関係の情報が掲載されていることは前認定のとおりである。
そうすると、本件商標の登録出願日及び登録査定日の当時において、一般消費者が被服等の本件商標の指定商品を購入ないし取引する際に、本件商標「TokyoWalker」に接した場合にも、容易に「TokyoWalker」を一体不可分のものとして認識し、被告ないしは上記雑誌に関係する商品であると想起するものと推認される。この点は、被服等の取引業者についても同様であって、業者ゆえに一般消費者以上に本件各引用商標を知っているとは推察されるが、そのことが上記認定を妨げるものではない。』
上記の判決では雑誌「東京ウォーカー/TokyoWalker」の著名性を認めると共に、商品「被服等」について「東京ウォーカー/TokyoWalker」の商標が使用された場合には、雑誌「東京ウォーカー/TokyoWalker」に関係する商品であると需要者・取引者が想起する旨の判示が出されている。
そして、(本件無効審判の対象となる)本件商標の指定商品は第25類の「洋服,コート」等であり、商品「被服等」に含まれるか、または関連する商品である。
したがって、上記の判決は、他人が「TokyoWalker」の商標、すなわち本件無効審判の対象となる本件商標「TokyoWalker」を指定商品「被服等」に使用した場合に、商品の出所について混同が生じるおそれがあることをまさに認めているものである。
よって、上記の判決によって、雑誌「東京ウォーカー/TokyoWalker」の「著名性」と「出所混同のおそれ」についての裁判所の判断が示されている以上、本件の審理においても、この判決の内容を十分に考慮及び尊重すべきである。
また、上記判決においては、「登録査定日(平成9年2月13日)においてはもとより、登録出願日(平成6年9月1日)においても(中略)全国で周知著名となっていた」と判示されているが、請求人は平成9年2月13日以降も、後述するとおり、「東京ウォーカー/TokyoWalker」の商標を商品「印刷物」等に、継続的、頻繁、かつ大量に使用し続けており、その「著名性」と「出所混同のおそれ」が、上記判決後において事後的に喪失するということは、到底、あり得ない。
なお、本件商標の審査過程において、請求人は、上記判決が出された平成17年(2005年)9月9日に、上記判決の存在を指摘する刊行物等提出書を提出した。それにもかかわらず、本件商標が登録されてしまったのは、「原則として出願日から1年6月以内に商標登録出願について拒絶の理由を発見しないときには、商標登録をすべき旨の査定をしなければならない」という旨の商標法第16条及び商標法施行令第2条の規定によるものと確信する。
イ 雑誌「東京ウォーカー/TokyoWalker」の著名性について
上記の判決に加えて、以下、雑誌「東京ウォーカー/TokyoWalker」が全国的に広く知られていることを立証する。
(ア)雑誌「東京ウォーカー/TokyoWalker」の使用実績について
(a) 使用の事実について
甲第2号証の1は、請求人が公開するホームページの雑誌「東京ウォーカー/TokyoWalker」に関する情報であり、甲第2号証の2は国立国会図書館のデータベース(URL:http://opac.ndl.go.jp/)から検索した雑誌「東京ウォーカー/TokyoWalker」に関する情報である。
また、甲第3号証の2ないし甲第3号証の19の14は請求人が定期的に発行する雑誌「東京ウォーカー/TokyoWalker」の一部の写しである。甲第3号証の8の1以降で提出した数々の記事には、以下の請求人主張を裏付ける内容が掲載されている。この記事内容及び提出の趣旨を一覧にしたものとして甲第3号証の1を提出する。
なお、「東京ウォーカー/TokyoWalker」は平成2年(1990年)3月の創刊から平成16年(2004年)5月までは週刊雑誌であったが、それ以降は隔週刊雑誌へと変更された。
以上のとおり、甲第2号証の1ないし甲第3号証の19の14に示されるように、請求人は「東京ウォーカー/TokyoWalker」の商標を商品「印刷物」について、17年以上継続して使用している。
(b) 雑誌の販売部数に関するレポート(写し)について
甲第4号証の1ないし14は、社団法人日本ABC協会から発行された雑誌の販売部数に関するレポート(平成4年[1992年]?平成17年[2005年]上半期)の写しである。甲第4号証の1ないし14には、「東京ウォーカー/TokyoWalker」(及び後述する「関西ウォーカー/KansaiWalker」「東海ウォーカー/TokaiWalker」等)の商標を使用した雑誌の各年における1号あたりの販売部数が記載されている。
甲第4号証の1ないし14に示される、「東京ウォーカー/TokyoWalker」の商標を使用した雑誌の販売部数は、雑誌(週刊誌、隔週刊誌及び月刊誌も含む)の販売部数として非常に多いといえる。
(c) マガジンデータの資料について
「東京ウォーカー/TokyoWalker」(及び後述する「関西ウォーカー/KansaiWalker」「東海ウォーカー/TokaiWa1ker」等)の商標を使用した雑誌については社団法人日本雑誌協会から発行される「マガジンデータ」にも、発行の事実を示す記事及び印刷証明付発行部数が掲載されている(甲第5の1ないし3)。なお、「印刷証明付発行部数」とは、印刷会社が証明する発行部数であり、証明が付いていない発行社の自己申告である「(公称)発行部数」とは全く異なる。
雑誌「東京ウォーカー/TokyoWalker」の「印刷証明付発行部数」は以下のとおりである。
平成16年[2004年]:平均約14万部(甲第5号証の1)、
平成17年[2005年]:平均約14万部(甲第5号証の2)、
平成18年[2006年]:平均約12万部(甲第5号証の3)
これらの証拠から、需要者・取引者にとっても請求人の発行する「東京ウォーカー/TokyoWalker」の商標を使用した雑誌が広く知られているものであることが認識できる。
とりわけ、「マガジンデータ」に掲載されている印刷証明付発行部数は、(上述の「公査レポート」と異なり)市場に流通した部数の目安といえる。例えば平成16年(2004年)には2週間に1回約14万部の「東京ウォーカー/TokyoWalker」の商標を使用した雑誌が市場に流通していたことが明らかである。
このことからしても、非常に多くの需要者・取引者が「東京ウォーカー/TokyoWalker」という雑誌を目にしたであろうことが容易に理解できる。
なお、非常に多くの需要者・取引者が「東京ウォーカー/TokyoWalker」という雑誌を目にしていることは、後述する甲第15号証に示す株式会社ビデオリサーチによる「雑誌閲読率」に関する調査からも十分に裏付けられている。
(d) 日本有名商標集への掲載について
以上に述べた使用実績(及び後述する種々の資料)が考慮されて、「東京ウォーカー/TokyoWalker」(及び後述する「関西ウォーカー/KansaiWalker」「東海ウォーカー/TokaiWalker」等)に係る登録商標が日本有名商標集に選定されている。甲第6号証に示す書籍は、社団法人日本国際知的財産保護協会(AIPPI・JAPAN)が、日本における有名商標と選定したものを収録し、平成16年(2004年)に発行した書籍「FAMOUS TRADE MARKS IN JAPAN」(日本有名商標集)の写しである。この書籍に掲載された商標は、特許庁作成の審査便覧においても『(「日本有名商標集」に)掲載されている商標については、原則としてわが国における需要者の間に広く認識されている商標と推認して取り扱うものとする。』と定めている(甲第6号証の2)。甲第6号証の1に示すように、第16類「印刷物」を指定商品とする登録商標「東京ウォーカー/TokyoWalker」(登録第4637180号)の登録商標が日本国の有名商標として選定されている。したがって、商品「印刷物」についての登録第4637180号は、「原則としてわが国における需要者の間に広く認識されている商標と推認して取り扱う」べき商標である。
以上のとおり、甲第1号証ないし甲第6号証の2に示した各証拠からも明らかなように、商品「印刷物」についての商標「東京ウォーカー/TokyoWalker」は、請求人により永年使用されており、かつ、周知・著名性を獲得していることは明らかである。
(イ)雑誌「東京ウォーカー/TokyoWalker」が全国的に周知・著名であることについて(その他のウォーカーシリーズの使用実績から)
次に、上記のとおり、雑誌「東京ウォーカー/TokyoWalker」が広く全国各地に配本され販売されていること(雑誌の実際の流通という観点)から全国的にも周知・著名であるといえることに加えて、その他の事情からも「東京ウォーカー/TokyoWalker」の雑誌が全国的にも周知・著名であることを以下に説明する。
請求人は、平成2年(1990年)3月の都市情報誌「東京ウォーカー/TokyoWalker」の創刊を皮切りに、以下の情報誌(定期刊行物)を現在までに発行してきた。
請求人は、『「東京/Tokyo」等の都市名・地域名や「メンズ/MEN’S」等の情報の対象を示す語』(以下「情報を示す語」という。)と「ウォーカー(Walker)」の語を組み合わせた語を共通の商標(以下「情報を示す語+ウォーカー(Walker)」という。)として、これらの商標を使用した雑誌を多数創刊してきた。
さらに、請求人は、この雑誌等の媒体を通じて提供される『情報を示す語+ウォーカー(Walker)』というブランドを広め、さらにはその価値を高めるため、定期的に発行される雑誌等の他に、流行や読者層に沿ったタイムリーな情報を提供すべく、「情報を示す語+ウォーカー(Walker)」の商標を使用した増刊号、ムック、書籍、フリーマガジン等を種々発行している。
なお、「フリーマガジン」(媒体の綴じ方によっては「フリーペーパー」とも言われるが、本審判請求書では統一して「フリーマガジン」と称する。)とは、「無料で配布する情報誌(紙)で、イベント、タウン、ショップ、求人求職、住宅・不動産、グルメ・飲食店、ショッピング、演劇、エステ・美容、レジャー・旅行、各種教室など多岐にわたる情報を記事と広告で伝える」(参考:日本生活情報紙協会[JAFNA])もので、雑誌・新聞と同様の商品としての性質と、広告等の役務としての性質を併せ持つものと考えることができる印刷された紙媒体である。
また、ウェブサイト上をはじめとする出版物以外の商品・役務についても請求人は『情報を示す語+ウォーカー(Walker)」の商標を活用して事業展開を行っている(以下、請求人の「情報を示す語+ウォーカー(Wa1ker)」の商標を使用した事業全体を「ウォーカーシリーズ」という。)。
a 定期的に発行される「都市名又は地域名+ウォーカー(Walker)」シリーズの雑誌について
(a) 使用の事実について
甲第7号証の1ないし7は、請求人が公開するホームページの情報であり、現在、定期的に発行される「都市名又は地域名+ウォーカー(Walker)」シリーズが「東京ウォーカー/TokyoWalker」の他に7誌あることを示している。また、甲第7号証の8ないし14は国立国会図書館のデータベース(URL:http://opac.ndl.go.jp/)から検索した前記7誌に関する情報である。甲第7号証の1ないし7に示す「KansaiWalker」や「HokkaidoWalker」は、それぞれ創刊当初より現在に至るまで隔週刊雑誌である。
なお、平成19年(2007年)3月より「KobeWalker」は隔週刊雑誌から月刊雑誌へと変更された。
甲第8号証ないし甲第14号証は、請求人が定期的に発行する雑誌の一部の写しである。なお、これらの証拠についても、甲第3号証に示した「東京ウォーカー/TokyoWalker」と同様に、請求人の主張を裏付けるために、各雑誌の記事内容及び提出の趣旨の一覧を併せて提出する(甲第8号証の1、甲第9号証の1、甲第10号証の1、甲第11号証の1、甲第12号証の1、甲第13号証の1、甲第14号証の1)。
甲第7号証ないし甲第14号証に示されるように、請求人は「東京ウォーカー/TokyoWalker」の創刊後、「北海道ウォーカー/HokkaidoWalker」等の「都市名又は地域名」と「ウォーカー/Walker」の語とから構成される商標を商品「雑誌」について永年にわたって継続して使用している。
次に、これらの「都市名又は地域名+ウォーカー(Walker)」の商標を使用した雑誌も、雑誌「東京ウォーカー/TokyoWalker」と同様に配本比率が高い各地域を中心に全国的に多くの需要者を獲得していることを説明する。
(b) 雑誌の販売部数及び発行部数に関するレポート(写し)等について
上述したように甲第4号証の1ないし14は社団法人日本ABC協会から発行された雑誌の販売部数に関するレポート(平成4年[1992年]?平成17年[2005年]上半期)の写しである。甲第4号証の1ないし14には、「東京ウォーカー/TokyoWalker」のみならず、「関西ウォーカー/KansaiWalker」「東海ウォーカー/TokaiWalker」等、「都市名又は地域名+ウォーカー(Walker)」の商標を使用した雑誌の各年における1号あたりの販売部数が記載されている。
甲第4号証の1ないし14に示される、「都市名又は地域名+ウォーカー(Walker)」の商標を使用した雑誌の販売部数は、雑誌(週刊誌、隔週刊誌及び月刊誌も含む)の販売部数としては非常に多いといえる。
他の雑誌と比較して販売部数が多いことは、例えば、発行頻度を考慮して、2週間に販売される部数を比較した場合であっても、現在の定期的に発行される「都市名又は地域名+ウォーカー(Walker)」の8つの雑誌が発行された平成12年(2000年において『「東京ウォーカー/TokyoWalker(週刊):平均約17万部×2」+「関西ウォーカー/KansaiWalker(隔週刊):平均約30万部」+「東海ウォーカー/TokaiWalker(隔週刊):平均約17万部」+「九州ウォーカー/KyushuWalker(隔週刊):平均約17万部」+「横浜ウォーカー/YOKOHAMAWalker(隔週刊):平均約18万部」=平均約116万部』となり、「千葉ウォーカー/ChibaWalker」、「神戸ウォーカー/KobeWalker」、「北海道ウォーカー/HokkaidoWalker」の販売部数も合わせれば、全国誌である週刊誌「週刊朝日」(約31万部×2=約62万部)、「週刊新潮」(約51万部×2=約102万部)よりははるかに多く、また「週刊ポスト」(約61万部×2=約122万部)についても同等かそれ以上の販売部数を誇っていたことは明らかである。
さらに、「東京ウォーカー/TokyoWalker」が隔週刊雑誌へと変更された平成16年(2004年)において、隔週刊の雑誌同士の比較を行ってみても、全国的に販売されている隔週刊雑誌の「スポーツグラフィック・ナンバー」と比べ、定期的に発行される「都市名又は地域名+ウォーカー(Walker)」シリーズの雑誌の総販売部数は、以下に示すとおり圧倒的に多い。
この「Sports Graphic/Number(スポーツグラフィック・ナンバー)」は全国的な周知・著名性が認められ、平成11年(1999年)8月20日には最初の防護標章登録がされている雑誌である(第4263527号防護標章登録第1号、甲第38号証)が、その販売部数は、平成16年において約14万部である。
これに対して、定期的に発行される「都市名又は地域名+ウォーカー(Walker)」シリーズの雑誌の総販売部数は、上記のとおり、平均約63万部(平成16年における東京ウォーカー、関西ウォーカー、東海ウォーカー、九州ウォーカーと横浜ウォーカーの販売部数の合計)を優に超えているのであって、圧倒的に多い。
以上の比較からしても、「都市名又は地域名+ウォーカー(Walker)」シリーズの雑誌が周知・著名であることは疑う余地がない。
また、「東京ウォーカー/TokyoWalker」同様、「北海道ウォーカー/HokkaidoWalker」を除く「都市名又は地域名+ウォーカー(Walker)」の商標を使用した雑誌6誌についても社団法人日本雑誌協会から発行される「マガジンデータ」にも、発行の事実を示す記事及び印刷証明付発行部数が掲載されている(甲第5の1ないし3)。
これらの証拠から、上述した「東京ウォーカー/TokyoWalker」の発行部数と同様、例えば平成16年(2004年)には2週間に1回数万部から数十万部の「都市名又は地域名+ウォーカー(Walker)」の商標を使用した雑誌が各々の主要配布地域を中心に流通していたことは明らかである。すなわち、非常に多くの需要者・取引者が「都市名又は地域名+ウォーカー(Walker)」シリーズの雑誌を目にしたであろうことが容易に理解できる。
(c) ビデオリサーチ雑誌閲読率ランキングについて
甲第15号証の1の1ないし甲第15号証の7の3は、株式会社ビデオリサーチによる「雑誌閲読率ランキング」の写しであり、甲第15号証の8ないし14は前記閲読率に関する分析等の報告書「MAGASCENE」の一部写しである。
株式会社ビデオリサーチはテレビ番組の視聴率調査等で有名な、マーケティング調査全般を行う企業である。また、「閲読」とは、その雑誌がどれだけの人に読まれているかを示すものであり、例えばコンビニエンスストアで立ち読みした場合や知人から借りた場合のように、購入しなくとも読んでいれば「閲読している」ということになり、このような閲読する需要者のパーセンテージを示すものが「閲読率」になる。すなわち「雑誌閲読率ランキング」における閲読率は、需要者における雑誌の認知度を判断する上で一つの重要な指標となるものである。
具体的な閲読率の算出方法は以下のとおりである(甲第15号証の14)。
この「閲読率」の調査対象は以下の7地区である。
東京30km圏・関西・名古屋・北部九州・札幌・仙台・広島
そして、例えば、「東海ウォーカー/TokaiWalker」であれば、名古屋地区だけが調査対象とされている。すなわち、名古屋以外の地域の調査対象者には、「東海ウォーカー/TokaiWalker」についての質問はされず、名古屋以外の地区に住んでいて「東海ウォーカー/TokaiWalker」を読んでいる人は、調査対象とならない。
一方、閲読率を算出する際には、全国7地区の合計を母数として計算されている。
仮に、全国7地区の推定人口が50,000人であり、名古屋地区の推定人口10,000人で、その地区の有効回答者数が100人あった場合において、回答者1人は100人分の意見を代表することになる。
そして「東海ウォーカー/TokaiWalker」を読んでいると回答した人が有効回答者数100人中20人だったとすると、その回答者1人1人は100人分の意見を代表していることになるので、名古屋地区において「東海ウォーカー/TokaiWalker」を閲読した人数は2,000人と計算される。そして閲読率を算出する際には、全国7地区合計を母数として計算されることになるため、閲読率は「2,000/50,000=4%」となる。
各地域の「都市名又は地域名+ウォーカー(Walker)」の雑誌についても同様の計算方法が採用されているから、「都市名又は地域名+ウォーカー(Walker)」の各雑誌について全国での閲読率がわかることになる。
したがって、「Walker7地区合計」という数字は、上記のように定期的に発行される「都市名又は地域名+ウォーカー(Walker)」の各雑誌について全国での閲読率がわかっているので、それらを単純合計した数字になる。
以上より、「Walker7地区合計」という数字は上記の7地区において、定期的に発行される「都市名又は地域名+ウォーカー(Walker)」の雑誌を読んだことがある人数の割合を示す数字となる。
甲第15号証の1の1ないし甲第15号証の7の3に個人全体の「都市名又は地域名+ウォーカー(Walker)」シリーズの雑誌全体の閲読率のランキングを示す。
「都市名又は地域名+ウォーカー(Walker)」シリーズ全体は、第3位又は第4位という圧倒的に高い順位の閲読率を、平成11年(1999年)以来、7年間という長期にわたって、一貫して維持している。また、「都市名又は地域名+ウォーカー(Walker)」シリーズ全体の閲読率よりも閲読率が高い雑誌は、7年間を通して、少年向けコミック誌である「週刊少年ジャンプ」と「週刊少年マガジン」、そして会員誌の「JAFMate」だけであり、たとえば有名な女性週刊誌「女性自身」や写真週刊誌「FRIDAY」と比較しても、「都市名又は地域名+ウォーカー(Walker)」シリーズ全体の閲読率は、非常に高いといえる。また、20代の女性では平成11年(1999年)から5年連続で首位を獲得している(甲第15号証の1の3、甲第15号証の2の3、甲第15号証の3の3、甲第15号証の4の3、甲第15号証の5の3)。
したがって、発行部数や販売部数という観点からだけではなく、需要者の閲読率という観点から見ても、請求人の「都市名又は地域名+ウォーカー(Walker)」シリーズは非常に多数の需要者・取引者によって認知されていることは明白である。
さらに、このような調査対象が一地域のみであるにもかかわらず、「都市名又は地域名+ウォーカー(Walker)」の各雑誌の閲読率が、他の全国誌と同等の閲読率であることは、各地域においていかに多くの需要者・取引者が、定期的に発行される「都市名又は地域名+ウォーカー(Walker)」の雑誌を目にしているかを示すものである。
なお、甲第4号証の12の1に示す資料に示すように、同じくビデオリサーチの調査によれば「2002年の東海地区における20代男女」の「東海ウォーカー/TokaiWalker」の閲読率は「28.6パーセント」という驚異的な数値を示している。この数値から、閲読率の計算の分母を一地域とした場合には、各地域における「都市名又は地域名+ウォーカー(Walker)」の各雑誌の閲読率はきわめて高いものとなることは明白である。
(d) 日本有名商標集への掲載について
以上に述べた使用実績(及び後述する種々の資料)が考慮されて、上述したように商標「関西ウォーカー/KansaiWalker」、商標「東海ウォーカー/TokaiWalker」、商標「九州ウォーカー/KyushuWalker」等に係る登録商標についても日本有名商標集に選定されている(甲第6号証の1)。そして、甲第6号証の2に示すように、第16類「印刷物」を指定商品とする登録商標「カンサイウォーカー/KansaiWalker」(登録第3209459号)、登録商標「トーカイウォーカー/TokaiWalker」(登録第4067967号)、登録商標「九州ウォーカー/KyushuWalker」(登録第4707146号)等も、「原則としてわが国における需要者の間に広く認識されている商標と推認して取り扱う」べき商標である。
(e) 合同企画・イベント開催等について
これらの「関西ウォーカー/KansaiWalker」、「東海ウォーカー/TokaiWalker」等、「都市名又は地域名+ウォーカー(Walker)」の雑誌には、「東京ウォーカー/TokyoWalker」を初めとする、他の「都市名又は地域名+ウォーカー(Walker)」の雑誌が存在していることを認識できる記事が多数掲載されている。
すなわち、これらの「関西ウォーカー/KansaiWalker」、「東海ウォーカー/TokaiWalker」等、「都市名又は地域名+ウォーカー(Walker)」の雑誌の発行に伴って、請求人は「東京ウォーカー/TokyoWalker」と「関西ウォーカー/KansaiWalker」等の複数の各雑誌で、合同のイベント・合同企画や合同懸賞を行っている(甲第3号証の9の25、甲第3号証の12の19、甲第8号証の2の1、甲第9号証の2の13、甲第10号証の3の15、甲第11号証の4の1、甲第12号証の5の17、甲第13号証の2の5、甲第14号証の3の8等)。
そして、このようなイベントや企画が行われた際には、各誌において『「東京ウォーカー/TokyoWalker」「関西ウォーカー/KansaiWalker」・「東海ウォーカー/TokaiWalker」合同企画である○○が行われた』という記事が必ず掲載される。また、合同懸賞の際には『「東京ウォーカー/TokyoWalker」「関西ウォーカー/KansaiWalker」・「東海ウォーカー/TokaiWalker」合同プレゼントクイズ』等の見出しで懸賞が行われている。
さらに、このような各雑誌における合同企画や合同懸賞だけではなく、請求人は、販売促進活動の一環として定期的に、各種のイベント開催してきた。甲第26号証の5の2、甲第26号証の5の7、甲第26号証の5の10、甲第26号証の5の11及び甲第26号証の5の12は、請求人が「全国ウォーカーまつり」、「Walkerミーティング」といったタイトルを使用して全国一斉のイベントを開催してきた事実を示している。なお、これらに示す資料は、各イベントの実施報告書であり、株式会社電通により作成されたものである。
これらのイベントは各地の会場と連動して行われたイベントであり、例えば九州会場でも他の地域の「都市名又は地域名+ウォーカー(Walker)」シリーズの雑誌がこのイベントで紹介されていた(なお、これらのイベントについては後段に詳述する。)。
次に示す甲第16号証の1は、平成12年(2000年)6月から平成15年(2003年)4月まで実施された「WalkerClub」開始の告知の写しである。これは、全国の書店で他の地域の「都市名又は地域名+ウォーカー(Walker)」シリーズの雑誌が購入できる書店である。なお、甲第3号証の12の40や甲第14号証の5の18等に示すように、この告知は雑誌「東京ウォーカー/TokyoWalker」、「関西ウォーカー/KansaiWalker」等に多数掲載されている。
この「WalkerClub」に参加した書店は、甲第16号証の1等から示されるように全国で約400店舗存在し、これらの店舗には各地における有力な大型店が多数含まれている。甲第16号証の2はこの「WalkerClub」の覚書の写しである(なお、覚書は、請求人が保管するものの一部を提出したに過ぎないことを付言する。)。営業上の秘密により、どの書店が何冊の「都市名又は地域名+ウォーカー(Walker)」シリーズの雑誌を購入しているかは明らかにすることができないのでマスキングをしてある。しかしながら、住所だけ見ても、北は北海道から南は九州まで、日本全国のあらゆる地域の書店で他の地域の「都市名又は地域名+ウォーカー(Walker)」シリーズの雑誌が販売されていたことは明らかである。また、甲第16号証の3は「WalkerClub」において「都市名又は地域名+ウォーカー(Walker)」の雑誌を陳列するラックの写しである。
さらに、甲第3号証の12の22や甲第11号証の6の8に示すように、この「WalkerClub」のみならず、定期的に「都市名又は地域名+ウォーカー(Walker)」の雑誌の年間購読を雑誌「東京ウォーカー/TokyoWalker」等を通じて宣伝広告している。
以上、上記(a)ないし(e)で説明した使用実績及び証拠から、以下の事実があることは明らかである。
・請求人は全国の主要都市を中心にその「都市名又は地域名+ウォーカー(Walker)」という共通の商標を使用した雑誌を、東京を含め8誌発行している。
・これらの各雑誌は、主要配布地域を中心として多数、定期的かつ頻繁に、発行・販売されており、また非常に多くの需要者に読まれていることから、主要配布地域を中心に広く需要者に知られている雑誌である。
・これらの広く知られた各雑誌は、それぞれの他の地域の雑誌と合同で又は連動してイベント・企画・懸賞等を行っている。そして、これらのイベント等が行われた事実は各雑誌で報告がされるため、「東京ウォーカー/TokyoWalker」その他の「都市名又は地域名+ウォーカー(Walker)」の雑誌が存在していることを認識できる記事が掲載されている。
これらの事実は、例えば、主として関西地方において流通している「関西ウォーカー/KansaiWalker」に、シリーズとして他の地域(例えば、首都圏)においても同様の「都市名又は地域名+ウォーカー(Walker)」の雑誌(例えば、「東京ウォーカー/TokyoWalker」)が存在していることを、需要者が認識できる記事が多数掲載されていることを意味するものであり、すなわち、「関西ウォーカー/KansaiWalker」の需要者であっても、他の地域(例えば、首都圏)においても同様の「都市名又は地域名+ウォーカー(Walker)」の雑誌(例えば、「東京ウォーカー/TokyoWalker」)が存在していることを認識していることを意味するものであることは明白である。
したがって、雑誌「東京ウォーカー/TokyoWalker」を実際に目にする機会が、主要な配布地域ほどではない地域であっても、雑誌「東京ウォーカー/TokyoWalker」の存在は全国の需要者に広く知られるところとなっていることは明らかである。
特に雑誌「東京ウォーカー/TokyoWalker」は、これら「都市名又は地域名+ウォーカー(Walker)」の雑誌の第一段として発行されたものであることから、各雑誌の中でもとりわけ「東京ウォーカー/TokyoWalker」という雑誌の存在が、全国の需要者・取引者に十分に知られていたことは疑いようもない。すなわち、「東京ウォーカー/TokyoWalker」以外の他の「都市名又は地域名+ウォーカー(Walker)」の雑誌は、いわば旗艦誌ともいうべき「東京ウォーカー/TokyoWalker」の姉妹誌として認識されていたといえる。
さらに、上述の配本比率から明らかなように、全国各地で「東京ウォーカー/TokyoWalker」が配本されていたこと、インターネットにおいて「東京ウォーカー/TokyoWalker」を購読することが可能であったこと、そして「WalkerClub」という企画が各地で成立していることから、全国の需要者が「東京ウォーカー/TokyoWalker」の実際の雑誌を居住する地域に限定されることなく購入できたことは明らかである。
なお、上述の「WalkerClub」において、北海道では創刊間もない「北海道ウォーカー/HokkaidoWalker」が多くの書店で購入され、また他の地域のウォーカーシリーズの雑誌も購入されている事実が分かる。
仮に「北海道ウォーカー/HokkaidoWalker」が創刊されるまで北海道の需要者・取引者が、先行して発行されている「東京ウォーカー/TokyoWalker」他6誌を全く知らなかったのであれば、これだけ大量の雑誌を購入することを躊躇することが予想されるため、このような企画が北海道で成功することはありえなかったはずである。すなわち、このような企画が北海道をはじめ、全国各地でも成功したのは、全国各地において先行して発行されていた「東京ウォーカー/TokyoWalker」等の雑誌の存在が広く知られていたことの証左である。
b その他のウォーカーについて
(a) 定期的に発行される「その他の情報を示す語+ウォーカー(Walker)」の雑誌について
上述したように、請求人は、雑誌を通して提供される情報の対象を「都市・地域」というカテゴリだけではなく、「ゲームの情報」や「男性向けの情報」のように情報を特定の内容に特化した「その他の情報を示す語+ウォーカー(Walker)」シリーズの雑誌も本件商標の出願日より前から現在に至るまで複数種類発行している(甲第17号証の2の1ないし甲第17号証の5の2)。
なお、請求人の主張を裏付けるために、各雑誌の記事内容及び提出の趣旨の一覧を併せて提出する(甲第17号証の1)。
これらの雑誌は、広く全国的に配布されており、後述するとおり新聞・雑誌にも多数紹介されていた(甲第21号証及び甲第25号証)。
そして、これらの雑誌の中には、雑誌「東京ウォーカー/TokyoWalker」が存在していることを需要者に認識させる記事が多数掲載されている。
このように「メンズウォーカー/MEN’S WALKER」等の「Walker」を含む雑誌タイトルが付いた雑誌内に雑誌「東京ウォーカー/TokyoWalker」が存在していたことを需要者に認識させる情報が多数掲載されていることにより、「メンズウォーカー/MEN’S WALKER」等の需要者は、「メンズウォーカー/MEN’S WALKER」等の雑誌との関連性を持って、雑誌「東京ウォーカー/TokyoWalker」の存在を認識することは疑いがない。
すなわち、全国的に流通する「Walker」を含む雑誌タイトルが付いた雑誌に「東京ウォーカー/TokyoWalker」の雑誌に関する情報が多数掲載されていることは、「東京ウォーカー/TokyoWalker」の雑誌の存在を全国の需要者・取引者に強く印象付けることに寄与していることは明白である。
(b) 増刊号について
請求人は定期的に発行している雑誌「東京ウォーカー/TokyoWalker」以外でも、流行や読者層に沿ったタイムリーな情報を提供し、また「東京ウォーカー/TokyoWalker」をはじめとする「情報を示す語+ウォーカー(Walker)」の雑誌の商標の使用により形成されたブランド力をさらに高めるために、これらの雑誌の増刊号、ムック、書籍、フリーマガジンを種々発行している。
甲第18号証は雑誌「東京ウォーカー/TokyoWalker」の増刊号・臨時号等の特別版として発行された雑誌・ムック・フリーマガジンである。これらの雑誌の多くは全国的に流通している。
そして、これらの増刊号やムック等では、表紙に「TokyoWalker増刊号」等の表示が記載されている。これらの記載は、増刊号やムックに接した需要者・取引者に、「東京ウォーカー/TokyoWalker」の存在を認識させる助けになっている。
以上、甲第17号証に示した定期的に発行される「その他の情報を示す語+ウォーカー(Walker)」の雑誌や、甲第18号証に示した「東京ウォーカー/TokyoWalker」の増刊号等が複数種類発行され、かつ全国的に流通している事実は、請求人の「雑誌」についての商標「東京ウォーカー/TokyoWalker」の周知・著名性の獲得のために役に立っていることは疑いがない。
c ウェブサイト上におけるウォーカーシリーズの使用実績について
請求人は、インターネット上のウェブサイトを出版物と連動させて、相乗効果を生み出すことを平成7年(1995年)ごろから開始しており、現在、請求人は「都市名又は地域名+ウォーカー(Walker)」の公式サイト「Walkerplus」(旧名称「Walkerplus.com」)を各地域の「都市名又は地域名+ウォーカー(Walker)」の雑誌と連動し、また時には独立したサービスとして展開するに至っている。
このような事業展開は、以下のような経緯で展開された。
平成7年[1995年]:パソコン通信を用いて「東京ウォーカー」や「月刊ゲームウォーカー」のダイジェスト版を配信、平成8年[1996年]:「東京ウォーカー」のホームページを開設、平成9年[1997年]:首都圏、関西、東海、九州の映画やイベント、飲食店情報を提供するウェブサイト「WalkersNet」立ち上げ、平成12年[2000年]:地域情報のポータルサイト「Walkerplus.com」の立ち上げ。同時期にエヌティティドコモの携帯サービス「i-mode」のコンテンツ「Walkers i」を立ち上げ
甲第19号証の1の1ないし7は、請求人が平成9年(1997年)から平成12年(2000年)まで開設していた「WalkersNet」に関する資料の写しである。
甲第19号証の2の1ないし14は、現在の地域情報のポータルサイト「Walkerplus」(http://www.walkerplus.com/)の主要ページをプリントアウトしたものである。
このようなパソコン通信やウェブサイトを用いた請求人の事業展開について多数の新聞・雑誌媒体に記事が掲載された(甲第22号証の1の1ないし甲第23号証の22、甲第25号証の21、甲第25号証の25、甲第25号証の30、甲第25号証の37他)。
以下、取り上げられた記事の内容の一例を紹介する。
、甲第20号証の53の1(日本経済新聞・平成7年[1995年]6月1日) 『(前略)首都圏のタウン・イベント情報誌「週刊東京ウォーカー」など角川の人気雑誌二誌のダイジェスト版を提供する。(中略)「週刊東京ウォーカー」「月刊ゲームウォーカー」のダイジェスト版をオンラインで見られる。』
甲第23号証の11(日経産業新聞・平成11年[1999年]5月5日)『(前略)二位の「WalkersNet」(角川書店)は雑誌の高い人気がウェブにもそのまま反映した。』
甲第23号証の13(産経新聞・平成11年[1999年]8月2日)『東京Walkerなどでおなじみの角川書店の「WalkersNet」(http://walkers.channel.or.jp/index.html)もお勧めだ。タウン情報イベント・映画・コンサートといった先取りしたい全国の街の最新エンターテインメント情報が入手できる。』
甲第22号証の1の1(日経産業新聞・平成12年[2000年]2月7日)『角川書店は月内にも新会社を設立し、国内の都市別にタウン情報やエンターテインメント情報を発信する「地域ポータル(玄関)サイト」の運営を始める。(中略)雑誌の「ウォーカー」シリーズとも連動した多メディア展開を加速する。』
このように現在のウォーカープラスの事業が開始される5年前から請求人は雑誌、ムック等の印刷物とウェブサイトの連動を図ってきており、ウェブサイトで発信する情報を印刷物に掲載し、又は、印刷物に掲載する情報をウェブサイトで発信するという事業展開を行ってきたのである。
これらのウェブサイト上のウォーカーシリーズの使用実績及び証拠から、以下の事実が明らかとなる。
・請求人はウェブサイト上で平成8年(1996年)から「東京ウォーカー/TokyoWalker」の公式サイトを開設していた。
・請求人はウェブサイト上で平成9年(1997年)から「ウォーカーズネット/WalkersNet」という当時発行が開始されていた定期的に発行される「都市名又は地域名+ウォーカー(Walker)」の雑誌と連動した公式サイトを開設していた。
・請求人はウェブサイト上で平成12年(2000年)から「ウォーカーブラス/Walkersplus」という定期的に発行される「都市名又は地域名+ウォーカー(Walker)」の雑誌と連動した公式サイトを開設している。
なお、これに伴い、「ウォーカーズネット/WalkersNet」は閉鎖した。
・さらに、定期的に発行される「都市名又は地域名+ウォーカー(Walker)」の各雑誌は、それぞれの主要配布地域を中心に広く需要者に知られている雑誌である。
・定期的に発行される「都市名又は地域名+ウォーカー(Walker)」の各雑誌が周知・著名であることも手伝って、「ウォーカーズネット/WalkersNet」や「ウォーカープラス/Walkersplus」の公式サイトも、広く需要者に知られている。
インターネットは地域を問わず日本全国からアクセスできるものである。例えば、九州在住の需要者・取引者が、九州地方を中心に広く配布されている雑誌「九州ウォーカー/KyushuWalker」に関する情報や九州地方におけるグルメ情報をウェブサイトから入手するために、「ウォーカーズネット/WalkersNet」や「ウォーカープラス/Walkersplus」にアクセスすると、「東京ウォーカー/TokyoWalker」が存在していることを認識する(なお、その逆も当然にしてあり得る。)。
すなわち、請求人が全国の地域情報を提供するサイト「WalkersNet」や「Walkerplus」を各地域の「都市名又は地域名+ウォーカー(Walker)」の雑誌と連動して、また時には独立したサービスとして展開してきたことは、全国の需要者に「東京ウォーカー/TokyoWalker」の存在を広く知らしめることに寄与していることは明らかである。
d 新聞・雑誌・書籍に掲載された記事について
「都市名又は地域名+ウォーカー(Walker)」シリーズの雑誌は、多数の新聞媒体にも取り上げられている。甲第20号証ないし甲第25号証に示す全国であまねく発行され読まれている新聞・雑誌・書籍の記事である。
なお、主として甲第20号証は「東京ウォーカー/TokyoWalker」をはじめとする「都市名又は地域名+ウォーカー(Walker)」シリーズに関する新聞記事、甲第21号証は「その他の情報を示す語+ウォーカー(Walker)」に関する新聞記事、甲第22号証は平成12年(2000)年6月に開設されたウォーカーシリーズの公式ウェブサイト「Walkerplus」及び運営会社・株式会社角川クロスメディア及び旧株式会社ウォーカープラス(株式会社ウォーカープラス・ドットコムも含む)に関する記事、甲第23号証は公式ウェブサイト「Walkerplus」のサービス開始前の公式サイト「WalkersNet」をはじめとするウェブ展開に関する記事、甲第24号証は請求人保管による専門紙等を中心に集めた新聞記事である。また、甲第20号証の1の1ないし甲第23号証の22は、主に新聞雑誌記事データベース「日経テレコン21」収録の記事をプリントアウトしたものであり、甲第24号証の1ないし57は請求人が保存していた新聞記事の写しである。
以下、取り上げられた記事の内容の一例を紹介する。
甲第20号証の2(朝日新聞・平成4年[1992年]5月21日)『雑誌では全国調査にもかかわらず首都圏の娯楽情報を満載した「TokyoWalker」(角川書店)が同種の「ぴあ」を抜き1位。3位の「少年ジャンプ」(集英社)と4位の「AERA」(朝日新聞社)が200余票とほぼ肩を並べた。』
甲第20号証の67(日本経済新聞・平成8年[1996年]6月22日)『新たに創刊されるのは角川書店の隔週刊「東海ウォーカー」。首都圏と関西で同様の雑誌を出し、後発にもかかわらず各地域のタウン誌・情報誌の中で最も多くの読者を獲得した実績を持つ。(中略)出版取り次ぎ最大手トーハンの出版科学研究所では「コンパクトに整理された情報を求める読者ニーズと合致し、東海版もかなり売れる」と予想する。』
甲第20号証の114(東京新聞・平成10年[1998年]4月10日)『「メチャクチャ売れました。創刊誌で増刷したのは、二十三年前の「月刊プレイボーイ」以来だって取次会社さんからも言われましたよ」「TokyoWalker」で成功した角川書店が、全国で五誌目となる「YOKOHAMAWalker」(隔週刊)を出した。創刊日の三月二十四日即日売り切れとなり、五万部増刷したがそれもまた完売したのである。』
甲第20号証の159(毎日新聞・平成11年[1999年]6月6日)『今月8日、タウン情報誌「千葉ウォーカー」(角川書店)が創刊される。 食べ歩きやレジャー情報を満載した「○○ウォーカー」シリーズは首都圏では東京、横浜に続き3誌目。創刊号の発行部数は33万部で、昨春創刊された「横浜ウォーカー」の平均部数30万部を上回る。』
甲第20号証の177(産経新聞・平成11年[1999年]9月16日)『角川書店(角川歴彦社長)の人気都市情報誌「ウォーカー」シリーズの初の海外版「台北ウォーカー」(中国語、隔週発行)が十七日、台湾で創刊される。発行部数は二十一万部で、台湾ではいきなり部数トップ級の雑誌になるとあって話題を呼んでいる。』
また、甲第25号証の1ないし59は、雑誌・ムック・書籍等の出版物及び出版物以外の事業展開(ウェブ等)も含めたウォーカーシリーズに関する雑誌記事の写しであり、甲第25号証の60ないし68は単行本(書籍)に「東京ウォーカー/TokyoWalker」等が掲載された事実を示すものである。
例えば、甲第25号証の3に示す雑誌「日経ビジネス」(日経BP社発行・平成5年[1993年]11月)には、『角川書店がタウン情報誌「東京ウォーカー」関西版の創刊準備を進めている。(中略)「東京ウォーカー」はこの2、3年で急速に発行部数を伸ばし、「ぴあ」を抜いた首都圏最大のタウン情報誌に成長した。』という記事がある。
さらに、甲第25号証の68は、著名な週刊漫画雑誌である「ビッグコミックスピリッツ」誌上に連載された、時事的トピックを織り交ぜた漫画「気まぐれコンセプト」の単行本「気まぐれコンセプトクロニクル」(1984年以降の23年分を再編集)の写しである。
このような著名な週刊漫画雑誌に連載される時事漫画にも、雑誌「東京ウォーカー/TokyoWalker」に関する情報が掲載されたのである(なお、2枚目の「’93」、3枚目の「’94」の数字から平成5年(1993年)及び平成6年(1994年)のビックコミックスピリッツ誌に掲載された内容であることは明らかである。また、当該証拠の388頁において「東京ウォーカーがどういうわけか横組みだぞ」との吹き出しがあるが、これは「東京ウォーカー」が平成2年(1990年)3月?10月まで横組みであったことに由来する。)。
上記のとおりの新聞・雑誌のみならず、このように全国で販売される書籍や全国の需要者に広く読まれる漫画雑誌の記事においても「東京ウォーカー/TokyoWalker」等が掲載されていることからしても、特定の地域に偏らず全国の需要者に雑誌「東京ウォーカー/TokyoWalker」の存在が認識されていたことは明白である。
これらの記事は一読すれば明らかなとおり、紹介記事にとどまるもののみならず、丹念な取材に基づく詳細な記事も多数掲載されている。また、平成2年(1990年)に創刊された雑誌「東京ウォーカー/TokyoWalker」をはじめ、請求人のウォーカーシリーズが情報誌・情報提供媒体として非常に高い著名性を誇っていることがわかる。
そして、請求人のウォーカーシリーズのあらゆる事業展開に関して、雑誌「東京ウォーカー/TokyoWalker」との関連で記事が執筆されていることは明らかである(例えば、『「東京ウォーカー」(角川書店)の姉妹誌として「ワールドウォーカー」(同)が創刊された。』[甲第21号証の16]等)。
したがって、これらの記事から、上述したウォーカーシリーズのあらゆる事業展開について、全国の需要者は雑誌「東京ウォーカー/TokyoWalker」との関連性をもって認識していることは疑いがない。
また、甲第20号証ないし甲第25号証に示す新聞・雑誌記事が掲載されているものの中には、全国紙や全国的に販売される雑誌も多数含まれている。したがって当然にして例えば北海道地方においても、「東京ウォーカー/TokyoWalker」が紹介されていたのである。
以上のとおり、これらの新聞・雑誌・書籍の記事により、東京周辺のみならず、北海道から九州に至るまで全国の需要者に対して「東京ウォーカー/TokyoWalker」の存在が広く知らしめられたことは明らかである。
e ウォーカーシリーズの宣伝・広告等の販売促進活動について
次に、雑誌「東京ウォーカー/TokyoWalker」をはじめとする「情報を示す語+ウォーカー(Walker)」について、宣伝・広告、すなわち請求人が行った販売促進活動に関する事実を列挙する。
(a) 店頭等におけるキャンペーンについて
請求人は、「東京ウォーカー/TokyoWalker」をはじめとするウォーカーシリーズの雑誌について需要者・取引者に広く認識してもらうために、雑誌の創刊時にはキャンペーンを戦略的、かつ、大々的に行ってきた。また、多くの需要者が見込める時期(例えば、入学時期や入社時期の4月やゴールデンウィーク等)や、雑誌創刊○○周年記念の時期も同様に戦略的、かつ、大々的にキャンペーンを行ってきた。
甲第26号証の1の1は、請求人が行ってきた書店の店頭や大学生協の店頭での販売の様子を示す写真の写しである。これらの写真からは、多数の需要者が、「TokyoWalker」や「GameWalker」等のウォーカーシリーズの雑誌を手に取る姿が写されていることがわかる。なお、これらの写真は平成4年(1992年)?平成9年(1997年)の間に請求人により撮影されたものである。日付等が明確でない写真も含まれているが、写真の内容に「創刊キャンペーン」や「創刊○○号記念」といった看板が出ていることから、その当時に撮影されたものであることは明らかである。
また甲第26号証の1の2は、広告を担当した株式会社電通の報告による「北海道ウォーカー創刊プロモーション/関係モニター集」の写しである。北海道ウォーカーの創刊時期は、平成12年(2000年)7月である。この資料から、路上やデパートに大きな広告を掲げ、また街頭でキャンペーンを行っていることがわかる。
甲第26号証の1の3は広告を担当した株式会社電通九州の報告による『「九州ウォーカー」全九州県庁都市キャラバンキャンペーンパブリシティ一覧』の写しである。この資料から、株式会社電通九州は、「KyushuWalker」の創刊時に関して多数の新聞媒体に取り上げられたことを請求人に報告してきていることが明らかである。
以上の証拠は、請求人が「東京ウォーカー/TokyoWalker」をはじめとするウォーカーシリーズの雑誌を販売するために多額の費用をかけて大々的なキャンペーンを行ってきたことを裏付ける資料として、現時点で入手できたものである。なおこれらのキャンペーンに関する資料は、現時点で入手できたものであり、今後入手できるものについては追って補充の意志がある。
(b) 各種媒体での広告等について
上述のように請求人は街頭でのキャンペーンの他に、新聞広告・電車の中吊り広告及びラジオやテレビなどの広告等によっても販売促進活動を行ってきた。
甲第26号証の2の1ないし21は新聞に掲載された広告の写しの例である。特に甲第26号証の2の17、甲第26号証の2の19及び20の広告は甲第26号証の5の10及び12に示す「Walkerフェスティバル」等のイベント開催の前に掲載されたものである。このような朝日新聞や読売新聞等の全国紙での全面広告掲載が、多大の費用を要すること及び多大の宣伝効果を発揮することは、証左するまでもなく明らかであろう。なお請求人はこれらの証拠の他にも新聞広告を行っている。
甲第26号証の3の1ないし11は電車の中吊り広告の写しであり、甲第26号証の3の12ないし19は電車の中吊り広告を行った事実を示す費用に関する資料の一部である。なお、甲第26号証の3の2及び7については、1枚目に全体図を表示し、2枚目・3枚目はその内容を拡大したものである。このようにウォーカーシリーズの雑誌を販売するために全国の電車の中吊り広告を利用してきたことも明らかである。
なお、上記の宣伝・広告費に関する証拠については、営業秘密も多数含んでいるものであるため、現時点では、その一部提出するに留める。
甲第26号証の4の1及び2は、ウォーカーシリーズの雑誌のテレビ・ラジオの広告を行ったことを示すものであり、甲第26号証の4の3ないし5は、屋外広告物による広告を行った事実を示すものである。
なお、甲第20号証の247、甲第21号証の13及び14等に示す新聞記事からもテレビ・ラジオで広告が行われたことは明らかである。
これら各種媒体での広告等も、「東京ウォーカー/TokyoWalker」をはじめするウォーカーシリーズの雑誌が全国の需要者に周知・著名となったことを裏付けている。
(c) 請求人が開催するイベントについて
請求人は創刊時だけではなく、販売促進活動の一環として定期的に「TokyoWalker」や「KyushuWalker」の商標を使用したイベントを各都市・各地域において開催している。また、これまで説明してきたように「都市名又は地域名+ウォーカー(Walker)」のウォーカーシリーズを各都市・各地域ごとに展開していった結果、ウォーカーシリーズの雑誌は全国に拡大することになった。これに伴い、甲第26号証の5の2、甲第26号証の5の7、甲第26号証の5の10ないし12に示すように、請求人は「全国ウォーカーまつり」、「Walkerミーティング」といった全国一斉のイベントを開催してきた。
以下、これらのイベントについて説明する。
甲第26号証の5の1ないし14に示す資料は、上述した各イベントの実施報告書である。報告書は、甲第26号証の5の4を除き株式会社電通により作成されたものである。また、甲第26号証の6の1ないし4に示す資料は、甲第26号証の5の2に示す「Walkers’Festival’98秋」の際に、各地のFM局と連動して行われた、ラジオの特別番組の実施報告である。
甲第26号証の5の2に示す「Walkers’Festiva1’98秋」においては、10枚目の上部に新宿会場についての会場立体図面及び写真が記載されているが、正面ステージの上部に「Walkers’Festival’98秋」のイベントのタイトルの下に、当時刊行されていた「東京ウォーカー/TokyoWalker」、「横浜ウォーカー/YOKOHAMAWalker」、「東海ウォーカー/TokaiWalker」、「関西ウォーカー/KansaiWalker」、「九州ウォーカー/KyushuWalker」の5つの商標が列記されている。
また、上述のように、この「Walkers’Festival’98秋」では各地のFM局と連動してラジオの特別番組が行われた。甲第26号証の5の2の6枚目の上部に示すように、生放送時間中に、各地イベント会場からの入り中継(ある放送局が、他の放送局の番組を受けて放送すること)を実施し、関西の会場において、東京の会場の様子を放送した。
甲第26号証の6に示す各特別番組のタイトルのサブタイトルに「TokyoWalker Present WALKIN’ON THE PLANET」、「KansaiWalker Present WALKIN’ON THE PLANET」、「TokaiWalker Present WALKIN’ ON THE PLANET」、「KyushuWalker Present WALKIN’ON THE PLANET」がそれぞれ付されていることから、入り中継の際にそれらのサブタイトルも放送されている。
したがって、各会場に訪れた各地の需要者・取引者は、自己の地域以外に4つの「都市名及び地域名+ウォーカー(Walker)」の雑誌が存在していること、ひいては、「東京ウォーカー/TokyoWalker」が最初に表示されていることから、「都市名及び地域名+ウォーカー(Walker)」の雑誌の中核となる旗艦誌として「東京ウォーカー/TokyoWalker」が存在することを容易に認識するはずである。
さらに、甲第26号証の5の11に示す「全国Walkerミーティング」においてはそのイベントタイトルにおいて、「Walkerまつり」の横に「東京ウォーカー/TokyoWalker」から「北海道ウォーカー/HokkaidoWalker」までの8つの商標が列記されており、甲第26号証の5の11の3枚目の上部のイベントの様子の写真(ラフォーレ会場の写真)からも明らかなように、これらの8つの商標がはっきりと表示されている。
また、2枚目下部に記載のイベント実施内容一覧の「全国ネットワークのイベントコンテンツ」には、「モーニング娘。」や「サザンオールスターズ」などのイベントを東京から全国の会場に発信していることが明らかである。
したがって、「全国Walkerミーティング」に参加した全国の需要者・取引者は、「都市名及び地域名+ウォーカー(Walker)」の各雑誌の存在を容易に認識することができたのである。
また、このことからすれば、上記甲第26号証の5の2や甲第26号証の5の11に示したイベント以外であっても、同時開催のイベントにおいて各地域における「都市名又は地域名+ウォーカー(Walker)」の雑誌の存在、ひいては、その中核となる旗艦誌としての「東京ウォーカー/TokyoWalker」の存在を認識させる事実があった。
このような著名人を招きトークショーを開催し、またさまざまな個別のイベントを行った結果、多数の観客(需要者)を集めて、効果的に販売促進活動が行われた。このような雑誌のイベントを大々的に行うことは、過去に多くの例を見ないものである。
甲第26号証の5の1ないし14の報告書から明らかなように、これらのイベントは非常に多くの企業からの協賛を得ている。協賛企業は、「ウォーカー」のブランドを冠したこのイベントに多くの観客(需要者)が集まることが確実であるからこそ協賛しているのであり、協賛企業の数も、「ウォーカーシリーズ」のブランド力を裏付けるものである。
そのほか請求人は、甲第3号証の10の27に示すように「TokyoWalker」等の商標を冠して、ミスコンテストを行うといった販売促進活動の一環としてのイベントも行っている。なお、甲第号20証の163、甲第24号証の8及び17等に示すように、このミスコンテストで選出された有名な芸能人の中には、「死国」のヒロインを演じた栗山千明氏や、黒澤明映画監督の孫である黒澤優氏等がいる。
(d) 新聞・雑誌に掲載された宣伝広告に関する記事について
請求人が多大な費用を費やして宣伝・広告してきた事実などは、多数の新聞媒体にも取り上げられている。
以下、取り上げられた記事の内容の一例を紹介する。
甲第20号証の41(毎日新聞・平成6年[1994年]10月4日)(「関西ウォーカー」創刊に関して)『日本出版販売大阪支店も「関西ウォーカーは実売で二十九万部から三十万部に達しており、関西情報誌のトップに立ったことは間違いない」とみており、その背景に宣伝力と、選択・提案型の編集を挙げる。(中略)角川書店がウォーカーの関西進出につぎ込んだ宣伝費は三億円強といわれ、一般に全国をマーケットに創刊される雑誌の宣伝費に相当するという。』
甲第20号証の85(朝日新聞・平成9年[1997年]6月12日)(「九州ウォーカー」創刊に際して)『五月下旬から九州各県の書店などを回り、キャンペーンをしてきた。(中略)テレビCMなどを含めた宣伝費の総額は、三億五千万円にのぼるという。』
甲第20号証の247(北海道新聞・平成12年[2000年]8月26日)(「北海道ウォーカー」創刊に際して)『新雑誌がいきなり大部数を獲得したのは、道内では例がない大がかりな宣伝攻勢の効果が大きい。角川書店は、創刊PRのため広告費三億円を投入。盛んにテレビCMを流したほか、人気アイドルを起用したポスターをJR札幌駅などで大量に張り出すなどして浸透を図った。』
また、甲第25号証の7に示す記事には「東海地区に誕生したリージョナル誌/戦略的な創刊キャンペーンで25万部を完売/角川書店・東海ウォーカー」という見出しが付けられ、「東海ウォーカー」及び創刊の際のキャンペーンを高く評価する記事が掲載されている。
これらの新聞記事・雑誌記事からも、各種のキャンペーンが成功してきたことが裏付けられている。
以上のように、請求人は、多大な広告費を投じて大々的なキャンペーンや種々のイベントを開催し、請求人のウォーカーシリーズの雑誌を需要者・取引者に広く認識させる活動を行ってきた。そしてこれらの活動が、請求人のウォーカーシリーズ、ひいては雑誌「東京ウォーカー/TokyoWalker」を、需要者に周知・著名なものとする要因の一つであったことに疑いはない。
f タイアップでのウォーカーシリーズの活用について
(a) 他の企業や団体等との共同によるウォーカーシリーズの雑誌の発行について
これまで説明してきたように、「東京ウォーカー/TokyoWalker」をはじめとする、請求人のウォーカーシリーズの雑誌は、全国の需要者・取引者に広く知られている。請求人は、このウォーカーシリーズのブランド力を活用したいと考える他の企業や団体等とともに「他の企業や団体等の商標」をはじめとする「情報を示す語」と「ウォーカー(Walker)」とを組み合わせて、他企業や団体等の商品やサービスに関する情報を掲載した雑誌やフリーマガジンを多数発行している。また、甲第27号証に示すように、請求人自身もこの種の雑誌やフリーマガジンの発行について自社の宣伝媒体で広告している。
(b) 出版物以外の商品・役務へのウォーカーシリーズの活用について
請求人は、出版物と他の媒体(ラジオ・テレビ・インターネット等)と連動させて相乗効果を出すというマルチメディア戦略をとっており、ウォーカーシリーズもその戦略に則って事業展開を行っている。すなわち、雑誌で圧倒的な販売部数を誇るウォーカーシリーズの雑誌を、雑誌やムック等の出版物の範囲にとどまることなく、ラジオ・テレビ、そして上述のインターネットにおいても展開してきたのである。
また、請求人は出版・放送・インターネット等の分野の業種以外の他の業種の企業との提携も積極的に行っており、その事業展開にも多数、「ウォーカー(Walker)」の商標を用いている。
このことを裏付けるものとして、甲第20号証ないし甲第25号証に示す新聞・雑誌記事には請求人の事業展開やタイアップに関する記事が掲載されている。また、甲第3号証、甲第8号証ないし甲第14号証に示す「東京ウォーカー/TokyoWalker」等の記事内容からも明らかである。
例えば、甲第20号証の133、甲第25号証の17(いずれも末尾の枝番号を含む)等には請求人は、ニッポン放送とタイアップをして平成11年(1999年)10月に「サウンドウォーカー」というタイトルのラジオ番組放送を開始した記事が掲載されている。この番組は、雑誌「東京ウォーカー/TokyoWalker」等、首都圏の「都市名又は地域名+ウォーカー(Walker)」の雑誌と連動しており、各エリアのグルメ、ファッション、イベント情報を放送するものであった。さらにはウェブサイトとも連動していた(URL:http://www.soundwalker.com[ただし現在は存在していない。])。なお、「サウンドウォーカー」の放送開始に関する会見資料を甲第27号証の3として提出する。
また、甲第20号証の236や甲第25号証の33に示すように請求人は株式会社東洋水産と平成12年(2000年)7月、「TokyoWalker」や「HokkaidoWalker」等の商標を用いて各地域・都市に合わせたインスタントラーメンを販売している。
このように請求人が雑誌・ムック等の出版物とは異なる商品・役務に「ウォーカー(Walker)」の語を含んだ商標を使用することができるのは、雑誌・ムック等の印刷物についての請求人のウォーカーシリーズ、ひいてはその中核である雑誌「東京ウォーカー/TokyoWalker」が非常に高いブランド力を有しているからに他ならない。
そして、このような印刷物以外の商品・役務に「ウォーカー(Walker)」の語を含んだ商標を使用することにより、請求人の主たる商品である雑誌・ムック等の「印刷物」についての「情報を示す語+ウォーカー(Walker)」、そしてその中核である「東京ウォーカー/TokyoWalker」の商標を需要者・取引者にさらに周知・著名に認識させることができるという相乗効果を生み出している。
なお、念のために付言すれば、雑誌は、一般に、商品の広告宣伝の媒体としての機能があり、当該雑誌自身にとっては、自らの宣伝広告として機能する側面も有している。したがって、ウォーカーシリーズの雑誌を印刷配本して流通におくことは、ウォーカーシリーズの雑誌自らの広告宣伝にあたるといえる。そして、このような自らの印刷発行を通じての広告宣伝が大規模なものであったことは、これまでに述べたところから明らかである。
(c) 裁判所及び特許庁における過去の判断について
請求人のウォーカーシリーズの商標(その中でもとりわけ「東京ウォーカー/TokyoWalker」)が全国的に周知・著名な商標であることは、以下で述べるとおり、特許庁及び裁判所においても認められている。
(d) 平成15年(行ケ)第171号審決取消請求事件について
甲第1号証に示したように、審決取消訴訟において、「東京ウォーカー/TokyoWalker」という「雑誌」の著名性が認定され、そしてその絶対的な著名性ゆえに、「東京ウォーカー/TokyoWalker」の商標の周知性は他の商品(「被服等」)についても及ぶ旨の判断がなされている。
(e) 商標「仙台ウォーカー」(商願平10-68044号)の審査結果について
甲第28号証の1ないし3は「仙台ウォーカー」(商願平10-68044号)の書誌情報、拒絶理由通知書の写し及び拒絶査定の謄本の写しである。この審査においては、請求人が提供した情報が考慮されて、平成11年(1999年)10月27日起案の拒絶理由通知書において、『東京都千代田区在所の「株式会社角川書店」が「TokyoWalker」をはじめ、シリーズで発行している印刷物のタイトル構成と酷似するものであり、同シリーズは1998年1?6月期の平均販売部数が、「TokyoWalker」「KansaiWalker」「TokaiWalker」の3シリーズだけでも988,105部と多数発行している実情があることよりすれば、本件商標に接する需要者は、「地方名(地域名)」の一つである「仙台」の語と「ウォーカー」の語より構成される本願商標を付された商品も上記シリーズの一つとして「株式会社角川書店」の業務と関連のある商品であると認識する場合も少なくない』との理由が通知され、拒絶査定が確定している。
(f) 商標「ザ ウォーカー/The Walker」(商願2005-3201号)の審査結果について
甲第29号証の1ないし3は商標「ザ ウォーカー/The Walker」(商願2005-3201号)の公開商標公報、拒絶理由通知書の写し及び拒絶査定の謄本の写しである。この審査においては、請求人が提供した情報が考慮されて、平成17年(2005年)8月1日起案の拒絶理由通知書において、『東京都千代田区在の角川ホールディングスに関連する者により「東京ウォーカー(TokyoWalker)」を始めとする各地の地名など「ウォーカー(Walker)」の文字を結合した「各種のウォーカー(Walker)」名の雑誌の商標として使用され、本願の出願時前において、これらの商標は、需要者の間に広く認識されているところ、本件商標は、「ウォーカー」「Walker」の文字を要部とするものでありますから、これを本願の指定商品に使用した場合、これに接する取引者、需要者は、同社又は同社と組織的、経済的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるか如く、その商品の出所について混同を生じさせるおそれがあるものと認めます。』との理由が通知され、拒絶査定が確定している。
(g) 平成9年(ヨ)第22076号商標権仮処分命令申立事件について
甲第30号証の1ないし甲第30号証の7は、請求人が原告となった平成9年(ヨ)第22076号商標権仮処分命令申立事件における仮処分決定の謄本の写し及び債権者主張書面の写しである。この決定では、請求人の申立を相当と認定し、雑誌について商標「投稿ウォーカー」の使用差し止めを求める仮処分命令の申し立てを認めている。請求人は債権者主張書面において、「東京ウォーカー/TokyoWalker」をはじめ、当時定期的に発行されていた「関西ウォーカー/KansaiWalker」、「月刊ゲームウォーカー/GameWalker」、「マンスリーウォーカー/MonthlyWalker」、「東海ウォーカー/TokaiWalker」、「メンズウォーカー/MEN’S WALKER」、「ワールドウォーカー/Wor1dWalker」、「九州ウォーカー/KyushuWalker」といったウォーカーシリーズの著名性を強く主張している。
(h) 異議申立事件(異議2005-90151号)について
甲第31号証は登録商標「函館ウォーカーズ/マニュアル」(登録第4827714号)に対する商標異議申立における取消理由通知書の写しである。本件は未だ審理に係属しているものの、この異議申立の審理においては、請求人の異議申立が考慮されて、平成17年(2005年)12月26日起案の取消理由通知書において、『(日本国内外の)都市名又は地域名に「Walker」又は「ウォーカー」の語を結合した商標は、申立人の取扱いに係る情報誌の題号を表示するものとして、本件商標の登録出願前より、わが国の需要者の間に広く認識されていたとみるのが相当である。』との理由が通知されている。
(i) 商標「中国ウォーカー」(商願2006-003473号)の審査結果について
甲第32号証の1及び2は、「中国ウォーカー」(商願2006-003473号)の公開商標公報及び拒絶理由通知書の写しである。
この審査においては、請求人が刊行物等提出などの手続きをとらずして『この商標登録出願に係る商標は、「中国地方の略。」、「中華人民共和国」の意味を有する「中国」の文字と、「歩行者、散歩する人」の意味を有する「Walker」の文字の表音の片仮名表記と認められる「ウォーカー」の文字とを一連に書した「中国ウォーカー」の文字からなるところ、この文字は、「東京都千代田区富士見2丁目13番3号」に住所を有する「株式会社角川ホールディングス」が発行している印刷物等のタイトルである、「TokyoWalker」を初めとする、「○○(地方名、地域名)ウォーカー/Walker」の構成からなるシリーズと酷似する構成であると認められますから、本願商標が付された商品(役務)に接する取引者、需要者は、該商品(役務)を、前記シリーズの一つや、関連のあるものとして認識することも少なくないというのが相当です。』との判断がなされた。なお、出願人はこの拒絶理由に対して商品「印刷物」を削除する補正を行った。
以上、甲第29号証ないし甲第32号証の2に示す特許庁及び裁判所における判断からも、請求人のウォーカーシリーズの商標、その中でもとりわけ「東京ウォーカー/TokyoWalker」が全国的に周知・著名な商標であることは疑いようのない事実であることが明らかである(なお、上記で指摘した特許庁又は裁判所の判断では、そのほとんどが、「『東京ウォーカー/TokyoWalker』をはじめ、…」と述べており、「東京ウォーカー/TokyoWalker」がウォーカーシリーズの中核たる旗艦誌であることを明確に認定している。)。
ウ 「雑誌『東京ウォーカー』が全国的に周知著名であることについて」のまとめ
以上に示した事実から、雑誌「東京ウォーカー」、すなわち商品「印刷物」についての商標「東京ウォーカー/TokyoWalker」は全国的に周知・著名な商標である。
(2)混同の生ずるおそれについて
ア 裁判所の判示について
甲第1号証に示された雑誌「東京ウォーカー/TokyoWalker」についての裁判所の判断は、『総合情報誌でファッション関係の情報が掲載されていることは前認定のとおりである。そうすると、本件商標の登録出願日及び登録査定日の当時において、一般消費者が被服等の本件商標の指定商品を購入ないし取引する際に、本件商標「TokyoWalker」に接した場合にも、容易に「TokyoWalker」を一体不可分のものとして認識し、被告ないしは上記雑誌に関係する商品であると想起するものと推認される。』というものである。この裁判所の判断には、商品「被服等」について「東京ウォーカー/TokyoWalker」の商標が使用された場合には、雑誌「東京ウォーカー/TokyoWalker」に関係する商品であると需要者・取引者が想起することが判示されている。
このように、甲第1号証の判決が、他人が「東京ウォーカー/TokyoWalker」の商標を指定商品「被服等」に使用した場合に、商品の出所について混同が生じるおそれがあることを認めている以上、本件の審理においても、この判決の内容を十分に考慮及び尊重すべきである。
イ ウォーカーシリーズの雑誌の内容及び需要者層について
(ア)ウォーカーシリーズの雑誌の内容
甲第3号証に示すように、雑誌「東京ウォーカー/TokyoWalker」では、グルメ・エンターテインメント・デートスポット・新商品と多岐にわたる分野の記事を掲載している。このことは、甲第8号証ないし甲第14号証に示す「関西ウォーカー/KansaiWalker」等、他の定期的に発行される「都市名又は地域名+ウォーカー(Walker)」の雑誌でも同様である。
雑誌「東京ウォーカー/TokyoWalker」には、このような多岐にわたる記事内容が掲載されていることから、雑誌「東京ウォーカー/TokyoWalker」の需要者層や他の定期的に発行される「都市名又は地域名+ウォーカー(Walker)」やウェブサイト「Walkerp1us」等を通して雑誌「東京ウォーカー/TokyoWalker」を認識している需要者層は、特定の需要者に限られるわけではなく、ファッション関係にも興味を持ち得る一般の需要者である。
実際に、このような多岐にわたる数々の記事においてファッション関連の情報も多数掲載されていることは甲第3号証の8の34、甲第3号証の12の19や甲第9号証の7の6等に示す記事内容からも明らかである。
もしも、ファッションに全く興味がない需要者が、雑誌「東京ウォーカー/TokyoWalker」の需要者層を形成しているのであれば、雑誌の編集方針としてファッション情報を掲載すること自体ありえない。言い換えれば、ファッション記事を掲載することは、その記事内容に興味を示す需要者が多数存在することをまさしく意味するものである。
さらに、「東京ウォーカー/TokyoWalker」を含む定期的に発行される「都市名又は地域名+ウォーカー(Walker)」の雑誌の需要者層がファッションに関連する分野に興味があることから、甲第33号証に示す「キモノウォーカー/KimonoWalker」や甲第27号証の2の8ないし甲第27号証の2の16に示した「ユニフォームウォーカー/UniformWalker」等のファッション分野に特化した複数種類のウォーカーシリーズの増刊号や出版物を発行しているのである。
このとおり、「東京ウォーカー/TokyoWalker」を含む定期的に発行される「都市名又は地域名+ウォーカー(Walker)」の雑誌には、ファッション関連の記事も多数、頻繁に掲載されているのであって、これらの雑誌は、いわばファッション雑誌でもある総合情報誌なのである。
(イ)「MAGASCENE」の分析結果について
「東京ウォーカー/TokyoWalker」を含む定期的に発行される「都市名又は地域名+ウォーカー(Walker)」の雑誌の需要者層がファッションに関連する分野に興味があることは、甲第15号証で示した株式会社ビデオリサーチの調査結果をまとめた報告書「MAGASCENE」からも裏付けられている。
この「MAGASCENE」では、雑誌の需要者層の年代・職業・趣味・趣向等についても分析が行われている。
雑誌「東京ウォーカー/TokyoWalker」をはじめ定期的に発行される「都市名又は地域名+ウォーカー(Walker)」の雑誌を読んでいる需要者層は、年代も10代から40代と幅広い(「1)デモグラフィック特性(性別・年齢・カバー年齢)」参照)。また、趣味・趣向も特定の分野に固まっているわけではない(「2)サイコグラフィック特性」参照)。
さらに、趣味・趣向の関連において、「着るものには気を使うほう」や「人がどのようなかっこうをしているか気になるほう」等のファッション分野の質問に対して、概ね全調査対象者の平均よりも高い数値を示している(「2)サイコグラフィック特性(ファッション志向・海外志向)」参照)。
この数値からは、雑誌「東京ウォーカー/TokyoWalker」をはじめ定期的に発行される「都市名又は地域名+ウォーカー(Walker)」の雑誌の需要者の中には、かなりファッション分野に興味を持っている多数の需要者がいることは疑いようもない。
以上より、雑誌「東京ウォーカー/TokyoWalker」が全国的に周知・著名であり、かつ、その需要者の多くがファッション分野に興味を持っていることは明白である。すなわち、本件商標「東京ウォーカー/TokyoWalker」を本願の指定商品(「被服」や「履物」等)に使用した場合、ファッション分野の情報も多数掲載され、また、その需要者の多くがファッション分野に興味を持っているという周知・著名な総合情報誌「東京ウォーカー/TokyoWalker」と出所の混同が生ずるおそれは確実に存する。
ウ 請求人による「被服,履物」の販売事実及び使用可能性について
上記イで述べた雑誌「東京ウォーカー/TokyoWalker」の記事内容及び需要者層のほか、請求人は実際に「ウォーカー(Walker)」を含む商標のもとで「被服」等を取り扱っており、また他社との提携により「被服」を取り扱う可能性があることを以下に説明する。
(ア)請求人の「被服,履物」の取り扱いについて
甲第34号証の1は、ウォーカーシリーズの雑誌をはじめとする請求人が発行する種々の雑誌と連動した通販サイト「WalkerStore」のトップページ(http://www.k-o-s.jp/)をプリントアウトしたものである。
このページの上段には、「雑誌トップ」とあり、その右側に「Walkerイチオシ通販」というコーナーが存在していることがわかる。これは甲第3号証18の24や甲第10号証の10の9に示す、「都市名又は地域名+ウォーカー(Walker)」の雑誌の通販コーナーと連動しているものである。また、このページの上部にある「人気特集」には「Tシャツ」のコーナーがあり、ここにアクセスすると「Tシャツ」の販売コーナーが表示され、多数のTシャツが販売されている(甲第34号証の2)。
さらに、このページの中段に掲載されている「今週の新着」では、「Tシャツ」や「履物」を扱っている事実がわかる。また、このページの下段に掲載されているカテゴリには「ファッション」のコーナーがある。
このように請求人は、ウォーカーシリーズの雑誌と連動した通販サイト「WalkerStore」において本件商標の指定商品であるいわゆる「被服,履物」等を取り扱っている。
なお、甲第35号証の1及び甲第35号証の2に示すように過去に「TokyoWalker」の商標が付された「被服類」(Tシャツ、スェットパーカー)が抽選品として一般人に頒布された事実もある。
(イ)他社とのタイアップについて
さらに過去には、東急ハンズとのタイアップにより「WalkerSty1e」という通販雑誌を発行した事実(甲第18号証の1、甲第21号証の33)、ネットプライスとのタイアップによりウォーカーシリーズの雑誌で掲載した商品をネットプライスのウェブサイトや携帯電話サイトで販売した事実(甲第27号証の4)があることは、上記の主張及び証拠から明らかである。このほか甲第9号証の8の6、甲第10号証の9の6等に示す記事内容から「都市名又は地域名+ウォーカー(Walker)」の雑誌とショッピングセンターのタイアップにより被服をはじめとした各種商品を取り扱ってきたことは明らかである。
それゆえ、請求人は、他社とのタイアップによっても、本件商標の指定商品である「被服,履物」を取り扱ってきた実績がある。さらに、今後も、請求人は、他社とのタイアップによって、本件商標の指定商品である「被服,履物」を取り扱う予定である。
このほか契約の締結又は実施にはいたらなかったものの、甲第36号証の1及び甲第36号証の2に示すように、株式会社ムサシノ広告より、『(本件商標の指定商品)「被服,履物」を含めた種々の商品への商標「東京ウォーカー/TokyoWalker」の事業展開』という提案があった。請求人もこれに同意したところ、被服メーカーからも提携に前向きな回答を得て、話し合いが進んだ(なお、その他の事情により契約締結には至らなかった。)。
このような広告代理店からの商標「東京ウォーカー/TokyoWalker」を使用した事業展開の申し込みが存在し、また提携に前向きな企業が存在しているという事実は、周知・著名な雑誌「東京ウォーカー/TokyoWalker」との関連性から、商標「東京ウォーカー/TokyoWalker」を「被服,履物」等の商品に使用すれば十分な顧客吸引力を発揮すると認識されていることを示すものである。言い換えれば、商標「東京ウォーカー/TokyoWalker」を「被服,履物」等の商品に使用した場合に、需要者は請求人の発行する周知・著名な雑誌「東京ウォーカー/TokyoWalker」を想起すると他の企業は考えていることの証左である。
なお、請求人はこのような事業展開を見据えて、複数の区分において「東京ウォーカー/TokyoWalker」や「関西ウォーカー/KansaiWalker」等、定期的に発行される「都市名又は地域名+ウォーカー(Walker)」の雑誌の商標と同一の商標を出願し、登録を受けている(甲第37号証)。
以上、現在、請求人が、請求人の発行する雑誌と連動して、通販サイトで被服や履物を販売している事実、及び、過去のタイアップによる通販、さらには他の企業からの商標「東京ウォーカー/TokyoWalker」の事業展開を提案された事実があったことなどから、請求人が商品「被服,履物」に商標「東京ウォーカー/TokyoWalker」を使用する可能性は十分に存在し、事実、その予定であり、また需要者もその可能性を認識していることは確実である。
したがって、請求人の現在及び過去の事業展開という観点からも、本件商標「TokyoWalker」を本件商標の指定商品「洋服,コート,セーター類,ワイシャツ類,寝巻き類,下着,水泳着,水泳帽,和服,ナイトキャップ,ヘルメット,帽子,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,靴類(「靴合わせくぎ・靴くぎ・靴の引き手・靴びょう・靴保護金具」を除く。),げた,草履類,仮装用衣服」に使用した場合、周知・著名な雑誌「東京ウォーカー/TokyoWalker」と出所の混同が生ずるおそれがあることは明白である。
エ 混同の生ずるおそれについてのまとめ
以上に示した、雑誌「東京ウォーカー/TokyoWalker」の周知性・著名性及び記事内容、請求人による本件商標の指定商品の取り扱い、他社とのタイアップ等々の事情を総合的に勘案すれば、本件商標「TokyoWalker」を本件商標の指定商品に使用した場合に、需要者間に混同が生ずることは、必定である。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすべきである。

5 弁駁
(1)「(1)商標法第4条第1項第15号(以下「本号」という。)該当性について」から「(5)他の事例」に対する弁駁
(ア)請求人の防護標章登録出願に対する審決の判断について
請求人は、第25類「洋服,コート,セーター類,ワイシャツ類,寝巻き類,下着,水泳着,水泳帽,和服,エプロン,えり巻き,靴下,ゲートル,毛皮製ストール,ショール,スカーフ,足袋,足袋カバー,手袋,布製幼児用おしめ,ネクタイ,ネッカチーフ,バンダナ,保温用サポーター,マフラー,耳覆い,ずきん,すげがさ,ナイトキャップ,ヘルメット,帽子,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,靴類(「靴合わせくぎ・靴くぎ・靴の引き手・靴びょう・靴保護金具」を除く。),靴合わせくぎ,靴くぎ,靴の引き手,靴びょう,靴保護金具,げた,草履類,仮装用衣服,運動用特殊衣服,運動用特殊靴(「乗馬靴」を除く。),乗馬靴」について登録第4637180号商標「東京ウォーカー/TokyoWalker」に係る防護標章登録出願を平成17年9月1日に行った。
この防護標章登録出願は、審査段階においては拒絶されたものの、拒絶査定不服審判において、以下のような審決が平成20年1月18日に出された(甲第42号証)。
『本件登録商標は、請求人の取扱いに係る商品である東京をはじめとする地域にファッション、グルメ、娯楽等の情報を紹介する「都市情報雑誌」の題号として永年使用され、その間、新聞、テレビ等の媒体を通じて広範な宣伝、広告活動を行った結果、現在においては、上記商品の題号を表示するものとして取引者、需要者の間に広く認識されているものであることは、原審における平成18年4月5日付け意見書及び当審における同19年7月17日付け手続補正書に係る参考資料及び甲各号証により認めることができる。
してみれば、本件登録商標が、請求人の販売に係る商品を表示するものとして、取引者、需要者に広く認識され、かつ、その需要者は、年齢、性別、職種等を問わない広い分野にわたる一般消費者と認められること、同雑誌は、総合情報誌でファッション関係の情報も掲載されていること及び近年出版業界を含む企業においては多角経営化ないし異業種への進出の傾向があることなどを総合勘案すると、本願標章を他人がその指定商品に使用した場合、これに接する取引者、需要者は、その商品が請求人又は請求人と組織的、経済的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのごとく、その商品の出所について混同を生ずるおそれがあるものというべきである。』
この審決において、商品「印刷物」に係る登録商標「東京ウォーカー/TokyoWalker」(登録第4637180号)が、請求人の業務に係る指定商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されていることが改めて判断されている。
また、この審決では、商品「印刷物」とは類似関係にない商品「洋服,コート」等の第25類に包含される商品について他人が「東京ウォーカー/TokyoWalker」を使用することにより、その商品「洋服,コート」等の第25類に包含される商品と請求人の「東京ウォーカー/TokyoWalker」とが混同を生ずるおそれがあることも明確に認められている。
以上の点に鑑みれば、「雑誌」という商品分野における商標の特殊性から、他の商品又は役務についてその周知性・著名性は及ばないというに等しい被請求人の答弁は、失当以外の何物でもないことは明白である。
さらには、商品「洋服,コート」等の第25類に包含される商品について、登録商標「東京ウォーカー/TokyoWalker」(登録第4637180号)と社会通念上同一の商標とも言える本件商標「TokyoWalker」が使用されると、請求人の業務にかかる商標であると混同が生ずるおそれがあることが、この審決によってはっきりと裏付けられたことになる。
なお、甲第43号証に示すように、特許庁が運用する審査便覧においては「法解釈として、商標法第64条と商標法第4条第1項第15号との混同の範囲は同一と考え」という考え方が明確にされている。
(イ)防護標章の既登録例や審決例について
上記審決に加えて、被請求人の答弁が失当であることを補足する。
被請求人は、「雑誌」という商品分野における商標の特殊性から、他の商品又は役務についてその周知性・著名性は及ばない旨の主張を展開している。
しかしながら、被請求人の主張が正しいのであれば、「雑誌」についての商標は、いかなる著名商標であっても、「被服」をはじめとする他の商品・役務に使用されても混同が生ずるおそれはなく、「雑誌」についての商標は防護標章登録を受けることはできないということになる。しかしながら、前述のように、請求人は防護標章登録を受けている。
したがって、被請求人の主張は、妥当ではない。
被請求人の主張が妥当ではないことをさらに裏付けるものとして、従前より現在に至るまで、請求人の防護標章登録のみならず、「雑誌」のタイトルを示す商標の周知性・著名性に基づき、「被服」をはじめとする他の商品・役務の分類で防護標章登録が認められた例が、甲第38号証及び甲第44号証に示すとおり多数存在している(なお、付言すれば甲第44号証は数多くある防護標章登録のほんの一例である。)。
このことは、「雑誌」のタイトルを示す商標を「雑誌」以外の分野の商品・役務において他人が使用した場合において、混同が生ずるおそれがあることが特許庁において認められていることを裏付けている。このような事実が存在していることを無視した、被請求人の主張は誤りであると言わざるを得ない。
混同が生ずるか否かの判断は、個別具体的に「商標の周知・著名性の程度」、「需要者層」、そして「企業の多角経営の可能性」等、複数の事情が十分勘案されるべきであること、無効審判請求書において請求人は主張した。この請求人の主張は、甲第42号証に示した上記被請求人の防護標章登録出願に対する審決例のみならず、甲第45号証に示す登録第480350号商標「文春」に係る防護標章登録出願に対する拒絶査定不服審判の審決からも裏付けられている。この審判では、以下のように判断されている。
『本願防護標章に係る指定役務について原登録商標を使用する場合、出所の混同の虜があるか否かを判断するに、原登録商標「文春」は独創的な標章であること、前掲指定商品中には一般大衆を需要者とするものも含まれていること及び出版業界を含む企業においては多角経営化ないしは異業種への進出の傾向があることが認められる。』
また、特許庁作成による商標審査基準にも、「他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標」であるか否かの判断基準として、「標章の周知度(広告、宣伝等の程度又は普及度)」「標章が創造標章であるかどうか」「企業における多角経営の可能性」等の基準が例示的に列挙されている。
したがって、「雑誌」という商品分野における商標の特殊性から、他の商品又は役務についてその周知性・著名性は及ばないというような被請求人の主張は、過去の審決例・審査例から判断しても、まったくの誤りである。
なお、上記の審決例及び審査基準の判断基準の一例を参考とするならば、まず、商標「東京ウォーカー/TokyoWalker」が独創的な商標かという点に関して見ると、「東京を散歩する人」のようなイメージを生じさせるものの、既存の名詞などではなく請求人の独創的な商標、すなわち造語の商標であることは明白である。また、請求人の商標「東京ウォーカー/TokyoWalker」を使用している「雑誌」や「印刷物」も、商品「被服」等も、当然にして一般大衆を需要者とするものである。
さらに「出版業界を含む企業の多角経営化」や「異業種への進出の傾向」が実際に存在することは証左するまでもなく明らかであり、また特許庁において周知の事実となっている。
そして、請求人の「雑誌」を含む商品「印刷物」についての商標「東京ウォーカー/TokyoWalker」が著名であることに加えて、上記の事情を十分に勘案されたからこそ、甲第42号証に示したように請求人の商標「東京ウォーカー/TokyoWalker」について、防護標章登録が認められたのである。
(ウ)被請求人のその他の主張について
被請求人は、『請求人の主張に従えば、引用商標と類似する商標の使用は、一般的類似関係を越えた「雑誌」以外の全ての商品や役務範囲についてまで、具体的出所の混同を惹起するということになる。(中略)商標法の理念、公平公正の原則からしても到底容認できることではなく、本件商標の本号該当性は厳に否定されるべきである。』と主張する。
しかしながら、雑誌についての著名商標が、一般的類似関係を越えた「雑誌」以外の商品や役務に使用されたときに、混同が生ずるおそれがあることは、前述の過去の裁判例や特許庁の審決例及び防護標章の審査例が幾つも存在するという事実から明らかである。雑誌についての商標であっても、その商標が著名であって、かつ、他人が同一の商標を雑誌以外の商品・役務について使用することによって、混同が生ずるおそれがあることが明白であるにもかかわらず、混同が生ずるおそれがある商標(本件商標)の登録を認めることこそ、需要者保護を目的とする商標法の趣旨に反することになるのは必定である。
したがって、被請求人の主張は、事実の裏付けのない主張に過ぎず、到底認めることはできない。
次に、被請求人が繰り返し主張する、『周知著名性の度合いが高くなればなる程、需要者間における引用商標についての認識は「雑誌(タウン情報誌)」の商標として益々収斂され、特定されていくという特質を有する。』との主張は、どのような根拠に基づくものなのか理解できない。被請求人の主張を正しいものとすると、著名商標を保護するための、商標法第4条第1項第15号及び防護標章登録制度の存在そのものを否定するに等しい。
さらに、被請求人は、上記被請求人の主張を裏付けるものとして、雑誌についての商標「ぴあ」、「フォーカス/FOCUS」及び「フライデー/FRIDAY」を列挙し、第三者が「雑誌」以外の分類で同一の商標を登録している事実を列挙している。しかしながら、被請求人は、これらの商標と請求人の商標「東京ウォーカー/TokyoWalker」とが、ともに雑誌に使用されている商標である点以外に、周知著名性の程度・商標の独創性・各雑誌の事業展開・各商標権者の他人の商標に対する対応等の他の事情についてどのような関係にあるのかを明らかにしていない。
例えば、商標の独創性(商標の構成)という客観的な観点から見ても、(1)「ぴあ」は、わずか2文字の平仮名から構成されており、そもそも独占を認めにくいこと、(2)「フォーカス/FOCUS」は、「焦点」や「(興味・活動などの)中心」という意味の英単語であり、一般名詞にすぎないこと、(3)「フライデー/FRIDAY」は、「金曜日」という意味の英単語であり、一般名詞にすぎないことという点において、請求人の独創的な商標「東京ウォーカー/TokyoWalker」とは全く事情が異なるのである。
このように、雑誌に使用されている商標であるということ以外の個別の事情を全く考慮していない被請求人の主張は失当であり、単純に、これら雑誌についての商標「ぴあ」、「フォーカス/FOCUS」及び「フライデー/FRIDAY」と同一の商標について、第三者が「雑誌」以外の分類で同一の商標を登録している事実が存在していたとしても、これらの既登録商標の存在は、本件商標が商標法第4条第1項第15号に該当しないということの根拠とはなりえない。
(エ)まとめ
以上に述べたとおり被請求人の主張は、自分に都合の良い解釈と曲解に基づくものであり、過去の特許庁及び裁判所において判断されてきた事案を無視し、ひいては商標法の目的すら無視しようとする根拠の無い主張である。このような根拠の無い主張を展開せざるを得なかった被請求人の答弁こそ、請求人の主張に対して有効な反論ができなかったことの何よりの証拠である。
(2)「(6)甲第1号証について」及び「(7)その他の甲号証について」に対する弁駁
被請求人は、甲第1号証、甲第28号証の1ないし甲第32号証の2に列挙した過去の裁判例や審決例、審査例について「事案を異にする」と主張する。しかしながら、他の事案であっても、適正な審理のために必要または有益であるならば、他の事案の判断に際して参酌をしてはならない理由はどこにもない。
そもそも、上述したように甲第1号証に示した審決取消請求事件の判決は本件審判請求事件の核心とも言える事実についても踏み込んで判断されており(しかも、当事者は請求人と被請求人である)、この点を意図的に無視した被請求人の主張は不当なものであると言わざるを得ない。
また、甲第28号証の1ないし甲第32号証の2に列挙した過去の裁判例や審決例、審査例については、確かに『引用商標「TokyoWalker」に係る商品「雑誌」と相抵触する商品に関する事例』であることは否定しない。
しかしながら、本件商標が商標法第4条第1項第15号に該当するか否かを判断するにあたり、被請求人の商標「東京ウォーカー/TokyoWalker」の周知性・著名性を述べるのは当然のことであり、甲第28号証の1ないし甲第32号証の2は、このことを立証すべく提出したものである。
(3)「(8)被請求人所有の登録商標について」から「(13)結論」に対する弁駁
被請求人は、被請求人の所有する登録商標「ウォーカー」(登録第765171号)や「WALKER」(登録第853981号)の使用実績を述べ、またその証拠を提出し、『商標「TokyoWalker」「ウォーカー」等の被請求人商標の当該商品分野での使用実績を考えれば、当業界の取引者・需要者間においては、本件商標を含む「Walker」又は「ウォーカー」の文字を含む各商標は、被請求人の商品「被服等」を表示するものとして認識されるであろうことは容易に推認できる』と主張する。
しかしながら、繰り返しになるが、先の判決には『一般消費者が被服等の本件商標の指定商品を購入ないし取引する際に、本件商標「TokyoWalker」に接した場合にも、容易に「TokyoWalker」を一体不可分のものとして認識し、被告ないしは上記雑誌に関係する商品であると想起するものと推認される。』と明確に判断されており、この点を意図的に無視した被請求人の主張は不当なものである。
なお、その他被請求人は、被請求人の所有する登録商標「ウォーカー」(登録第765171号)や「WALKER」(登録第853981号)の使用実績を述べ、またその証拠を提出しているが、本件無効審判請求は、『被請求人の登録商標「TokyoWalker」が請求人の引用商標「東京ウォーカー/TokyoWalker」と混同が生ずるおそれがあるか否か』というものであって、如何に被請求人の商標「ウォーカー」の使用実績を主張しようとも、それは本件の審理とは関係がない。
さらには、「(12)請求人の違法行為について」の項目において請求人が被請求人の商標権を侵害しているかの物言いをしている。
しかしながら、請求人の商標の使用が商標権侵害になるか否かは別途判断されるべきであって、この主張も被請求人の登録商標「TokyoWalker」が請求人の引用商標「東京ウォーカー/TokyoWalker」と混同が生ずるおそれがあるか否かとは関係しない。
なお、請求人が、「Walker」の語を単独で、かつ、商標として使用して「被服」及び「被服の販売」を行ってはいないことは審判請求書及びその資料から明らかである。
(4)まとめ
以上のとおり、請求人の雑誌を含む商品「印刷物」についての「東京ウォーカー/TokyoWalker」の周知性・著名性、及び、本件商標「TokyoWalker」を本件商標の指定商品に使用した場合に、需要者・取引者間において混同が生ずるおそれがある。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、「本件審判の請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。」との審決を求めると答弁し、その理由を次のとおり述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第21号証を提出した。
(1)商標法第4条第1項第15号(以下「本号」という。)該当性について
本号は、出願時及び登録査定時において、他人の周知著名商標が存在することを前提とし、出願商標をその指定商品に使用すると、需要者がその商品を当該周知著名商標の使用者(又はその関係者)の業務に係る商品であると誤認し、その商品の出所について混同するおそれのある場合に適用されるものである。したがって、本号の適用に当たっては、同第10号でいうところの商標よりはより周知著名度の高い商標の存在を前提とし、加えて出願商標をその指定商品に使用すると出所の誤認混同を生じるか否かということを個別具体的に判断しなければならない。
言い換えれば、出願商標が本号に該当するとするためには、他人の周知著名商標の存在は必要不可欠な条件であって十分条件ではない。
(2)引用商標の周知著名性について
引用商標「東京ウォーカー/TokyoWalker」が周知著名であるか否かについては争うものではないが引用商標が周知著名であるのは、あくまでも「雑誌(タウン情報誌)」についてであって、他の商品(役務)分野についてではない。
もちろん、本号適用の条件として、周知著名商標の使用商品(役務)と出願商標の指定商品との間で、その同一又は類似性を求められていないことは承知しているが、本号適用の判断基準「出所の混同を生じるか否か」に照らせば、周知著名商標の使用商品(役務)と本件商標に係る指定商品との関係、さらには、それぞれの業界事情や使用の実態等の個別具体的な事情も十分に考慮されなければならない。
(3)引用商標の特殊事情について
請求人の引用商標「東京ウォーカー/TokyoWalker」が、商品「雑誌(タウン情報誌)」について、ある程度の周知著名性を得ていることを否定するものではない。しかしながら、引用商標は、数多く発行されている雑誌中の一雑誌「タウン情報誌」を個別化するために使用されている題号商標であって、広く複数商品群を包括的に識別し、その結果これらの出所を強く表示する商標(ハウスマーク、等)とは本質的に異なる。
しかも、他の商品分野とは若干異なった顕著性判断や類否判断がなされている商品群「印刷物」に属する商品「雑誌」についての商標である。
すなわち、引用商標「東京ウォーカー/TokyoWalker」は、本来限定された特定商品「雑誌(タウン情報誌)」に、その印象や記憶を収斂させることによって有効にその識別機能を発揮し得るもので、むしろ周知著名性の度合いが高くなればなる程、需要者間における引用商標についての認識は「雑誌(タウン情報誌)」の商標として益々収斂され、特定されていくという特質を有する。
そうとすると、引用商標が「雑誌(タウン情報誌)」の商標として一定程度の周知著名性を獲得しているとしても、引用商標が使用されている商品「雑誌(タウン情報誌)」と一般的類似関係を全く持たない本件商標の指定商品「被服等」に本件商標を使用しても、その認識が「雑誌(タウン情報誌)」に収斂され、特定されている引用商標との間で、具体的に出所の誤認混同を惹起することなどあり得ないのである。
(4)メディア商品の特殊性と本件指定商品との関連について
請求人は、引用商標に係る使用商品「雑誌(タウン情報誌)」と本件商標に係る指定商品「被服等」との関係に付いても種々述べているが、これら商品相互間に特段の関係は存在しない。
すなわち、「雑誌(タウン情報誌)」と「被服等」とでは、関係業界そのものを異にし、全く異質の業者から提供されるものであることは、需要者・取引者間に於いて自明となっている。そして又、商品間においても、生産者、販売者及び流通系統等の全ての要素において、両者は単に一般的類似関係が成立しない非類似商品であるのみならず、具体的に出所混同の惹起が懸念されるべき特段の関係も有していない。これらの事情に前記した引用商標の特殊性を加味するならば、両者は最も具体的に出所混同が生じ難い商品関係にあると言うべきである。
請求人は、雑誌「東京ウォーカー/TokyoWalker」には、ファッション情報も掲載されており、商品「被服等」とも密接な関係があるなどと主張するが、請求人雑誌が「タウン情報誌」であることから考え、各種イベント情報、娯楽情報、スポーツ情報、グルメ情報等と共に、ファッション情報が掲載されていることは当然のことで、これをもって、商品「雑誌」と商品「被服等」との間に一般的類似関係が成立するということにはならない。
請求人の主張に従えば、引用商標と類似する商標の使用は、一般的類似関係を越えた「雑誌」以外の全ての商品や役務範囲についてまで、具体的出所の混同を惹起するということになる。仮に、このような解釈がまかり通るとするならば、露出度において圧倒的優位に立つ新聞、雑誌、TV等のメディアが使用する標章の多くは、他の商品(役務)分野でも自動的に(出願や登録の手当をすることなく)他者による登録やその使用を凌駕してしまう結果となり、我が国商標保護制度の根幹をもねじ曲げかねない。
このような事態の招来はメディアクラシーによる弊害そのものであって、商標法の理念、公平公正の原則からしても到底容認できることではなく、本件商標の本号該当性は厳に否定されるべきである。
(5)他の事例
引例商標「東京ウォーカー/TokyoWalker」よりは、全国的に周知著名度の高い同種雑誌についての商標「ぴあ/Pia」、「フォーカス/FOCUS」、「フライデー/FRIDAY」についての登録例についていえば、これら雑誌についての商標が出願され、登録され、さらに周知著名化した後においても、他者による他分野商品(役務)につき、数多くの同一性ある商標の登録が認められている(乙第19号証ないし乙第21号証)。
このことは、これら商標がメディア商品である「情報誌」の題号商標であるとの事情によることは明らかで、先述のとおり、本来限定された特定商品「情報誌」の題号商標の場合、その印象や記憶を収斂させることによって有効にその識別機能を発揮し得るもので、周知著名性が高くなればなるほど需要者間における認識は、「情報誌」の題号商標として益々収斂され特定されていき、識別標識として他の商品(役務)分野への広がりをより一層持たなくなるのである。
そうとすると、本件商標に限り、これら他の事例とは異なった解釈適用をしなければならない特別な事情や合理的根拠は一切ないのであるから、同様に、本件商標の本号該当性は否定されるべきである。
(6)甲第1号証について
請求人は、当事者間で争われた、平成15年(行ケ)第171号:審決取消請求事件での判決(甲第1号証)を根拠に、本件商標の本号該当性を主張するが、同事件は、主に被請求人商標「ウォーカー」及び「WALKER」と、かつて請求人の登録商標であった登録第3302571号商標「TokyoWalker」との類否(商標法第4条第1項第10号及び同第11号該当性)を争った事件で、その争点は請求人商標「TokyoWalker」から生じる称呼が「トーキョーウォーカー」に限定されるものか、或いは「ウォーカー」なる単独称呼をも生じるか否かの点であった。
判決を要約すると、「本件商標は、『TokyoWalker』の欧文字を横書きしてなるもので、その態様は、『T』と『W』が大文字、その余が小文字の欧文字であり、『Tokyo』と『Walker』との間にはスペースがないという特徴がみられる。…本件商標は被告発行の雑誌の表紙上部に記載された雑誌名『TokyoWalker』と酷似している。…雑誌名としてではあるが、『TokyoWalker』との標章は全国で周知著名となっていること、すなわち、雑誌名として一体不可分に認識される形で『TokyoWalker』が周知著名になっていたものと認められる。…よって本件商標からは、『トーキョーウォーカー』のみの称呼が生じ、原告主張のように『ウォーカー』の称呼が生じるとは認められない。」としたものである。
すなわち、上記判決の認定判断は、本来、「Tokyo」「東京」及び「トーキョー」の語は、「被服等」を指定商品とする場合にあっては、単に産地・販売地等を表示するにすぎない記述的要素であるが、請求人商標「TokyoWalker」が一体不可分な態様をなしていること、同商標が請求人発行の雑誌名と酷似し、その雑誌名が周知著名となっていることの事情を考慮すると、請求人商標「TokyoWalker」からは、「トーキョーウォーカー」との一連の称呼のみが生じ、単なる「ウォーカー」との称呼は生じないとして、被請求人商標「ウォーカー」及び「WALKER」との類似性を否定したにすぎず、本件とはそもそもの事案を異にするものである。
(7)その他の甲号証について
請求人は、上記のほか、過去の審査例及び判例等(甲第28号証の1ないし甲第32号証の2)を提示し、本件商標の本号該当性の根拠とするが、これらいずれの事例も、引用商標「TokyoWalker」に係る商品「雑誌」と相抵触する商品に関する事例であって、本件とは事案を異にする。
また、引用商標の周知著名性の立証の根拠とした多くの証拠資料については、被請求人としても、引用商標が「雑誌(タウン情報誌)」について、ある程度の周知著名性を獲得していることを否定するものではないのでその適否について論じることは省く。
しかしながら、先に述べた事情、すなわち、引用商標は、特定商品「雑誌(タウン情報誌)」にその印象や記憶を収斂させることによって有効にその識別機能を発揮し得るものであるから、周知著名性の度合いが高くなればなる程、需要者間における引用商標についての認識は「雑誌(タウン情報誌)」の商標として益々収斂され特定されることを考えると、これら多くの甲号証は、かえって、「雑誌」とは一般的類似関係を全く持たない「被服等」を指定商品とする本件商標の本号該当性(出所の誤認混同の可能性)を否定する反対証拠となり得るものである。
(8)被請求人所有の登録商標について(乙第4号証)
被請求人は、商品「被服」等について、本件商標のほか、下記(a)ないし(h)のとおり、「ウォーカー」又は「WALKER」及びこれらの文字を含む多くの登録商標(以下、「被請求人商標」という。)を所有している。
(記)
(a)ウォーカー 第765171号商標昭和42年12月22日登録
(b)WALKER第853981号商標昭和45年4月21日登録
(c)Fashion Walker/ファッションウォーカー
第4049523号商標平成9年8月29日登録
(d)City Walker/シティウォーカー
第4049524号商標平成9年8月29日登録
(e)Men’s Walker
第5024158号商標平成19年2月9日登録
(f)Boys Walker
第5039590号商標平成19年4月4日登録
(g)Lady’s Walker
第5039591号商標平成19年4月6日登録
(h)Kid’s Walker
第5039592号商標平成19年4月6日登録
(9)被請求人商標の周知性について
前記被請求人商標中、(a)「ウォーカー」及び(b)「WALKER」は、東レ株式会社により、昭和54年7月9日に被請求人が譲り受けたものであるが、以来、これら被請求人商標は、被請求人商品「衣料品」に永年使用継続している主力商標で、旧本社ビルやその他の関連施設等に社名代わりに表示使用していたことなどと相俟って、遅くとも、昭和50年代には当業者(衣料品業者)間において周知となっており、また、有限会社ウォーカー(100%出資会社)とともに各地直営店の店名として採用し使用している事実や、多くの量販店(高島屋、イトーヨーカ堂、長崎屋、伊勢丹、ジャスコ、等)及び専門店(全国約750店)に対する納品実績、更には、1996年からはグンゼ株式会社とのライセンス契約に基づき、同社が「婦人用ストッキング」について使用を開始したことにより一層の周知性を獲得するに至っている。
(10)当業界への関わりについて
請求人は、少なくとも、平成13年2月7日(取消2001-30013号審判の請求登録日)時点において、引用商標「東京ウォーカー/TokyoWalker」を一切使用していない。このことは、同事件審決において既に認定されているところである(乙第18号証)。
このように、被服業界において何らの実績もない請求人と、大正6年以来、一貫して被服業界において事業展開してきた被請求人との当業界での関わり合いの圧倒的な差、加えて、商標「WALKER」「ウォーカー」等の被請求人商標の当該商品分野での使用実績を考えれば、当業界の取引者・需要者間においては、本件商標を含む「WALKER」又は「ウォーカー」の文字を含む各商標は、被請求人の商品「被服等」を表示するものとして認識されるであろうことは容易に推認できるところである。
このような事情下にあって、請求人が、引用商標の「雑誌」についての周知著名性を根拠に、異質商品である「被服等」についてまで、引用商標又はその頭部に地名等を冠した「○○ウォーカー」「○○Walker」の商標を使用して販売をしたり、安直なライセンスビジネスを展開する事態になれば、被請求人が永年にわたって築き上げてきた被請求人商標の財産的価値が著しく毀損され、被請求人商標の商標権そのものが全く意味をなさない権利(空権利)となってしまうことは明らかである。
(11)誤認混同の現出について
現在、被請求人が「WALKER」名で出店している店舗は、柏市、千葉市、吉祥寺(武蔵野市)、越谷市、船橋市の4店であるが、これらの店舗は、「Walker柏(又は、柏店)」「Walker千葉(又は、千葉店)」「Walker吉祥寺(又は、吉祥寺店)」「Walker新越谷(又は、新越谷店)」及び「Walker船橋(又は、船橋店)」の名称で親しまれ取り引きされている(乙第13号証)。
仮に、請求人が、「柏Walker」「千葉Walker」「吉祥寺Walker」「新越谷Walker」「船橋Walker」等の商標と関連づけて「衣料品」等の販売業務が行われ、また、同名称からなる店舗が出店された場合には、市場での混乱もさることながら、被請求人が被る損害が現実的になるばかりか、被請求人による他地域での店舗展開も実際上の問題として制約を受けざるを得ない事態となることは容易に推測できるところである。
したがって、被請求人としては、請求人による「衣料品」等の物販(通販)行為やライセンスビジネスの動向及びその実際については、今後とも注視し、違法行為に対しては毅然とした方針で臨むつもりである。
(12)請求人の違法行為について
先の東京高裁判決(甲第1号証)は、請求人の「雑誌(タウン情報誌)」についての商標「TokyoWalker」の周知著名性を認め、また、「TokyoWalker」と「ウォーカー」及び「WALKER」との非類似性を認定したもので、請求人が使用する他の商標「○○ウォーカー」又は「○○Walker」の周知著名性を認定したものでも、被請求人商標との類似性を否定したものではない。
また、「TokyoWalker」の商標についても、被請求人商標「ウォーカー」「WALKER」との類否については、特許庁判断で類似するものとされた審査経緯(乙第16号証)からしても、極めて微妙であり、請求人は、その使用に当たっては慎重を期すべきである。
にも拘わらず、請求人は、明らかに被請求人商標と類似する商標「Walker」「ウォーカー」「WalkerStore」等を使用して、Tシャツ等「衣料品」について通販事業を行い、或いはライセンスビジネスを展開しようとしている。
これらの事実については、被請求人にあっても大凡掌握しているところであるが、請求人提出の甲号証においても散見でき、請求人自身、本件審判請求書においてその一部事実を認めている。
請求人によるこのような行為は、被請求人所有の商標権を侵害する行為であることは明らかであり、かかる違法行為の事実を示す資料をも含めて証拠資料となし、本件商標の本号該当性についてする請求人主張は荒唐無稽としかいいようがない。
(13)結論
以上のとおり、本件商標には請求人の主張するような無効理由はなく、よって、答弁の趣旨のとおりの審決を求める。

第4 当審の判断
請求人が本件審判の請求をする利害関係を有するか否かについては当事者間に争いはなく、かつ、請求人は本件審判の請求人適格を有するものと認められるので、本案に入って審理する。
1 商標法第4条第1項第15号について
商標法4条1項15号にいう「他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれ」の有無は、「当該商標と他人の表示との類似性の程度、他人の表示の周知著名性及び独創性の程度や、当該商標の指定商品等と他人の業務に係る商品等との間の性質、用途又は目的における関連性の程度並びに商品等の取引者及び需要者の共通性その他取引の実情などに照らし、当該商標の指定商品等の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として、総合的に判断されるべきである。」(最高裁判所第三小法廷、平成10年(行ヒ)第85号)。
そこで、上記基準に沿って、本件商標が、他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標であるか否かについて、以下検討する。
2 請求人使用商標の周知著名性
(1)請求人使用商品「雑誌」の販売部数について
雑誌「TokyoWalker」は、平成2年(1990年)3月の創刊されたが、社団法人日本ABC協会発行の「レポート(1992年?2005年上半期)」(甲第4号証)によれば、雑誌「TokyoWalker」の各号ごとの販売部数は、平成4年の平均が約28万部、平成5年の平均が約38万部、平成6年の平均が約42万部、平成7年の平均が約42万部、平成8年の平均が約40万部、平成9年の平均が約37万部、平成10年の平均が約29万部、平成11年の平均が約24万部、平成12年の平均が約17万部、平成13年の平均が約14万部、平成14年の平均が約11万部、平成15年の上半期の平均が11万部、平成16年の平均が10万部、平成17年の平均が10万部となっているが、請求人は、該雑誌「TokyoWalker」をさきがけとして、「関西ウォーカー/KansaiWalker」、「東海ウォーカー/TokaiWalker」、「九州ウォーカー/KyusyuWalker」などのタイトルを付した各地域ごとの総合情報誌を続々と創刊していった。
また、甲第4号証の12の1によれば、雑誌「TokyoWalker」は、東京を中心とする情報を総合的に扱うものであるが、上記日本ABC協会発行の「雑誌(発行社レポート)」によれば、2003年7月1日号の配本の比率は、東京、神奈川、埼玉、千葉が多いが、これに限定されているわけではなく、広く全国各地に配本され、販売されている。
(2)雑誌の閲読率ランキングについて
甲第15号証の1の1ないし甲第15号証の7の3によれば、株式会社ビデオリサーチによる全国7地区の個人全体の「都市名又は地域名+ウォーカー(Walker)」シリーズの雑誌全体の閲読率のランキングによると、平成11年[1999年]:第3位(11.2パーセント)、平成12年[2000年]:第3位(10.8パーセント)、平成13年[2001年]:第3位(10.0パーセント)、平成14年[2002年]:第3位(9.5パーセント)、平成15年[2003年]:第4位(8.5パーセント)、平成16年[2004年]:第4位(7.2パーセント)、平成17年[2005年]:第4位(7.3パーセント)となっており、第3位又は第4位という高い順位の閲読率を、平成11年(1999年)以来、7年間という長期にわたって、維持していることが認められる。
(3)甲第26号証の1の2、甲第26号証の2の1ないし21、甲第26号証の3の12ないし19、甲第26号証の4の1及び2、及び甲第26号証の5の1ないし14によれば、請求人は、ウォーカーシリーズの販売促進活動として、店頭等におけるキャンペーン、各種媒体での広告等、各種イベントの開催を行ったことが認められる。そして、甲第20号証の41(毎日新聞・平成6年[1994年]10月4日)(「関西ウォーカー」創刊に関しての記事中に「宣伝費は三億円強」との記載)、同号証の85(朝日新聞・平成9年[1997年]6月12日)(「九州ウォーカー」創刊に際しての記事中に「宣伝費の総額は、三億五千万円」との記載)、同号証の247(北海道新聞・平成12年[2000年]8月26日)(「北海道ウォーカー」創刊に際しての記事中「創刊PRのため広告費三億円を投入」と記載されている。
(4)以上の事実を総合勘案すれば、請求人使用商標は、請求人により17年以上に継続して使用、宣伝、広告された結果、本件商標の登録査定日(平成18年9月29日)においてはもとより、登録出願時(平成12年12月28日)においても、請求人の業務に係る商品「雑誌」を表示するものとして取引者、需要者の間に広く認識されるに至っていたと判断するのが相当である。
そして、その周知性は、それ以降にも継続していたものと認められる。
3 請求人使用商標の独創性の程度について
請求人使用商標は、「東京ウォーカー」の文字と「TokyoWalker」の欧文字とを横書きしてなるもので、その欧文字の態様は、「T」と「W」が大文字、その余が小文字の欧文字であり、「Tokyo」と「Walker」との間にスペースがなく、前者は、「我が国の首都」、後者は「散歩する人、歩行者」等の意味を有し、「都市名又は地域名(漢字/英語)」+「ウォーカー/Walker」の組み合わせからなるところに独創性がみられる。
そして、請求人使用商標は、雑誌に使用されるペットネームではあるが、上述のように「都市名又は地域名(漢字/英語)」+「ウォーカー/Walker」の題号商標をもって雑誌を発行し、シリーズ化され、また、雑誌にとどまらずムック等にも使用されるに伴って、独創性のある造語商標としてその周知著名性は一層高まったものと判断することができる。
4 本件商標と請求人使用商標との類似関係について
(1)本件商標は、上記第1のとおり「TokyoWalker」の欧文字よりなるところ、「T」と「W」が大文字、その余が小文字の欧文字であり、「Tokyo」と「Walker」との間にスペースがないところに特徴を有するものである。
(2)そうとすれば、本件商標と請求人使用商標とは、その構成文字の特徴である、綴り字、大文字「T」「W」及びその余の小文字の欧文字を同じくするから外観上類似の商標であり、その構成文字から生ずる称呼「トーキョーウォーカー」及び観念「東京を散歩する人」を同じくするものということができる。
5 本件商標の指定商品と請求人使用商品「雑誌」との類似関係について
(1)請求人使用商品「雑誌」の内容及び購読者層
甲第3号証によれば、使用商品の雑誌「東京ウォーカー/TokyoWalker」では、グルメ・エンターテインメント・デートスポット・新商品と多岐にわたる分野の記事を掲載しているが、このような多岐にわたる数々の記事中においてファッション関連の特集号や情報が多数掲載されており、例えば甲第3号証の11の17、甲第3号証の12の19、甲第3号証の13の11のファッション関連の表紙見出からも明らかであること、さらに、甲第33号証に示す「キモノウォーカー/KimonoWaler」、甲第27号証の2の8ないし甲第27号証の2の16に示す「ユニフォームウォーカー/UniformWalker」等のファッション分野に特化した出版物を発行していることから、本件商標の指定商品「被服」と請求人使用商品とは、ファッション関連の商品において密接な関係を有するということができる。
そうとすれば、該雑誌の購読者は、ファッションに興味のある一般の需要者が含まれていると判断するのが相当である。
(2)したがって、本件商標の指定商品に係る需要者は、一般の需要者であるから、本件商標の指定商品と請求人使用商品の需要者層は同じであり、さらに該雑誌には、ファッション関連の記事が掲載されているから、請求人の使用商品「雑誌」と本件の指定商品「被服」とは、実際の取引場裏では関連性を有する商品というべきである。
(3)被服業界への関わりについて
被請求人は、被服業界において何らの実績もない請求人と、大正6年以来、一貫して被服業界において事業展開してきた被請求人との当業界での関わり合いの圧倒的な差、加えて、商標「WALKER」「ウォーカー」等の被請求人商標の当該商品分野での使用実績を考えれば、当業界の取引者・需要者間においては、本件商標を含む「WALKER」又は「ウォーカー」の文字を含む各商標は、被請求人の商品「被服等」を表示するものとして認識されるであろうことは容易に推認できるところである旨主張している。
しかしながら、請求人は、平成12年からインターネット上のウェブサイト、walkerplus.comをポータルサイトとして、グルメ(連携サイト名:グルメウォーカー)・ショッピング(Walker Store)・宅配(宅配Walker)等の情報等の提供サイトを用意すると共に、「東京のニュースとブーム」をテーマとする「東京ウォーカー/TokyoWaler」、「横浜のニュースとブーム」をテーマとする「横浜ウォーカー/YokohamaWalker」等の「都市名又は地域名(漢字/英語)」+「ウォーカー/Walker」の名称からなる連携サイトも開設しており、連携先のサイトには、雑誌「東京ウォーカー」等の紹介、バックナンバーのほか文庫、書籍等を取り扱うサイトとなっており、本件の指定商品との関係では、上記のファッション関連商品のショッピングサイト(Walker Store)において、商品の通信販売を行っていることが認められる。
そうとすれば、請求人使用商標は、請求人のポータルサイトの連携先のサイト名称としても使用されており、ファッション関係の商品を扱うショッピングサイト(Walker Store)を併設していること、最近のインターネット及びインターネットショッピングの利用状況等を考慮すれば、請求人は、インターネットを利用してグルメ・ショッピング・宅配等に関する各種情報の提供、ファッション関連商品の通信販売等の業務を通じて多角経営を図っているということができる。
したがって、被請求人が、「雑誌(タウン情報誌)」と「被服等」とでは、関係業界そのものを異にし、商品間においても、生産者、販売者及び流通系統等の全ての要素において、両者は単に一般的類似関係が成立しない非類似商品であるのみならず、具体的に出所混同の惹起が懸念されるべき特段の関係も有していないこと、前記した引用商標の特殊性を加味するならば、両者は最も具体的に出所混同が生じ難い商品関係にあると言うべきである旨主張しているが、この主張は採用できない。
6 被請求人所有の商標の周知性について
(1)被請求人は、昭和54年7月9日に譲り受けた「ウォーカー」(登録第765171号)及び「WALKER」(登録第853981号)商標を商品「衣料品」に永年使用を継続し、遅くとも、昭和50年代には当業者(衣料品業者)間において、これら被請求人の商標は周知となっている旨主張している。
そこで、提出に係る乙号証をみるに、乙第7号証ないし乙第9号証、乙第13号証によれば、被請求人は4店舗で商品の販売をしていたことが認められるが、店名を「WALKER」と称していることから、本件商標とは構成態様を異にするので、被請求人の主張は採用できない。
乙第14号証に添付の乙第1号証ないし乙第4号証によれば、ライセンス契約を受けたグンゼ株式会社が製造に係わる「パンティーストッキング」に「CITY Walker」「シティーウォーカー」等の商標を使用して、商品を販売していたことが認められるが、本件商標の使用とは認められないから、該商品の販売実績、販売に係る商品、使用商標の広告、宣伝の程度を考慮しても、本件商標が周知著名性を獲得するに至っているものとは認められない。
(2)被請求人所有の登録商標について
被請求人は、「WALKER」「ウォーカー」の文字を含む被請求人商標が指定商品「被服」等において登録されているが、これと同一又は類似の商標である請求人所有の商標が指定商品「印刷物」に登録されているから、本件商標と請求人使用商標とは、同様に併存してしかるべき旨主張されているが、請求人使用商標が周知著名であることは前記のとおりであり、本件商標と被請求人商標とは、構成態様を含めて事案を異にするから、被請求人の主張を採用することはできない。
7 混同を生ずるおそれについて
以上を総合勘案すると、本件商標は、上記4のとおり、独創性のある造語商標ということができる請求人使用商標と実質的に同一商標であるところ、上記2のとおり、請求人使用商標は請求人が販売する商品「雑誌」等の商標として、本件商標の登録出願前より、各種の販売促進活動を行うこと等により、登録出願時もとより登録査定時には、我が国における該商品の需要者において、周知性を獲得していたと認められるものである。
そうとすれば、本件商標をその指定商品に使用した場合、請求人会社が多角経営化を図っていることをも併せ勘案すれば尚更のこと、本件商標に接する取引者、需要者は、普通に払われる注意力において、請求人の使用商標を連想、想起し、その商品が請求人又は請求人と組織的、経済的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかの如く、その商品の出所について混同を生ずるおそれがあるものと判断するのが相当である。
8 結論
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効にすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲
本件商標



審理終結日 2008-07-31 
結審通知日 2008-08-06 
審決日 2008-08-27 
出願番号 商願2000-141439(T2000-141439) 
審決分類 T 1 11・ 271- Z (Z25)
最終処分 成立  
前審関与審査官 佐藤 達夫井岡 賢一 
特許庁審判長 石田 清
特許庁審判官 鈴木 修
小畑 恵一
登録日 2007-01-26 
登録番号 商標登録第5020515号(T5020515) 
商標の称呼 トーキョーウオーカー、ウオーカー 
代理人 山田 朋彦 
代理人 西浦 嗣晴 
代理人 野原 利雄 

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