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審決分類 審判 一部無効 商4条1項16号品質の誤認 無効としない Y21
審判 一部無効 観念類似 無効としない Y21
審判 一部無効 称呼類似 無効としない Y21
管理番号 1184511 
審判番号 無効2007-890173 
総通号数 106 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2008-10-31 
種別 無効の審決 
審判請求日 2007-11-13 
確定日 2008-09-05 
事件の表示 上記当事者間の登録第4982065号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
本件登録第4982065号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲のとおりの構成よりなり、平成17年12月20日に登録出願、第21類「ハチ捕獲器,デンタルフロス,ガラス基礎製品(建築用のものを除く。),かいばおけ,家禽用リング,魚ぐし,おけ用ブラシ,金ブラシ,管用ブラシ,工業用はけ,船舶ブラシ,家事用手袋,ガラス製又は陶磁製の包装用容器,なべ類,コーヒー沸かし(電気式又は貴金属製のものを除く。),鉄瓶,やかん,食器類(貴金属製のものを除く。),携帯用アイスボックス,米びつ,食品保存用ガラス瓶,水筒,魔法瓶,アイスペール,泡立て器,こし器,こしょう入れ・砂糖入れ及び塩振り出し容器(貴金属製のものを除く。),卵立て(貴金属製のものを除く。),ナプキンホルダー及びナプキンリング(貴金属製のものを除く。),盆(貴金属製のものを除く。),ようじ入れ(貴金属製のものを除く。),ざる,シェーカー,しゃもじ,手動式のコーヒー豆ひき器及びこしょうひき,じょうご,すりこぎ,すりばち,ぜん,栓抜,大根卸し,タルト取り分け用へら,なべ敷き,はし,はし箱,ひしゃく,ふるい,まな板,麺棒,焼き網,ようじ,レモン絞り器,ワッフル焼き型(電気式のものを除く。),清掃用具及び洗濯用具,アイロン台,霧吹き,こて台,へら台,湯かき棒,浴室用腰掛け,浴室用手おけ,ろうそく消し及びろうそく立て(貴金属製のものを除く。),家庭用燃え殻ふるい,石炭入れ,はえたたき,ねずみ取り器,植木鉢,家庭園芸用の水耕式植物栽培器,じょうろ,愛玩動物用食器,愛玩動物用ブラシ,犬のおしゃぶり,小鳥かご,小鳥用水盤,洋服ブラシ,寝室用簡易便器,トイレットペーパーホルダー,貯金箱(金属製のものを除く。),お守り,おみくじ,紙タオル取り出し用金属製箱,靴脱ぎ器,せっけん用ディスペンサー,花瓶及び水盤(貴金属製のものを除く。),風鈴,ガラス製又は磁器製の立て看板,香炉,化粧用具,靴ブラシ,靴べら,靴磨き布,軽便靴クリーナー,シューツリー,コッフェル,ブラシ用豚毛」を指定商品として、平成18年8月25日に設定登録され、その商標権は、現に有効に存続しているものである。

2 引用商標
請求人が本件商標の登録無効の理由に引用する登録第4879372号商標(以下「引用商標」という。)は、「キャッチャー」の文字を標準文字で書してなり、平成16年9月28日に登録出願、第5類「薬剤」及び第21類「ゴキブリ捕獲器,その他の害虫捕獲器(電気式のものを除く。)」を指定商品として、平成17年7月15日に設定登録され、その商標権は、現に有効に存続しているものである。

3 請求人の主張の要点
請求人は、「本件商標の指定商品中、『ハチ捕獲器,ねずみ取り器』についての登録を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求めると申し立て、その理由及び答弁に対する弁駁を次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第19号証(枝番号を含む。)及び参考資料を提出した。
(1)請求の理由
ア 商標法第4条第1項第11号について
(ア)本件商標は、「フマキラー」の文字と「ハチとりキャッチャー」の文字とを上下二段に分離して横書きし、また、上段の「フマキラー」の文字は、本件商標権者の略称と認められるから、それぞれの文字部分が独立して自他商品の識別機能を果たすものというべきである。そして、「ハチとりキャッチャー」の文字は、「ハチ」、「とり」、「キャッチャー」をそれぞれ異なる字体で表してなるものであるから、視覚上分離して把握されるということができる。さらに、「ハチとりキャッチャー」の文字部分を大書してなる本件商標にあっては、これをその指定商品中、「ハチ捕獲器」について使用したときは、前半の「ハチとり」の文字は「ハチ(蜂)取り」に通じ、該商品が「ハチ取り用」又は「ハチ捕獲用」の商品であることを容易に理解、認識させることは明らかである。
このことは、害虫捕獲器又は殺虫剤等の各メーカーが「○○とり」、「○○取り」(○○は害虫名)と表記して使用している事実(甲第3号証)からも容易に窺い知ることができる。
そうすると、前半部分の「ハチとり」の文字部分は、指定商品「ハチ捕獲器」との関係においては、単に商品の用途を表示したものと認識され、後半の「キャッチャー」の文字部分が自他商品の識別機能を果たす部分として認識されるから、本件商標は、「ハチトリキャッチャー」の一連の称呼のほか、「キャッチャー」の文字部分に相応して、単に「キャッチャー」の称呼をも生ずるものといわなければならない。
また、「キャッチャー」の語は、「(野球の)捕手」等の意味を表す語として、日本語化しているほど親しまれている語であるから、これより「捕手」等の観念を生ずるものである。
なお、本件商標の異議の決定において、「それぞれの構成文字は、外観上、まとまりよく一体的に表され、これより生ずると認められる『フマキラーハチトリキャッチャー』の称呼もよどみなく、一気一連に称呼し得るものであり、『キャッチャー』の文字のみが独立して認識される特段の事情は見出せない。したがって、『キャッチャー』の称呼、観念は生じない」旨判断している。しかしながら、上記称呼は著しく冗長であるばかりでなく、本件商標の二段に分離された構成、上段と下段の圧倒的な文字の大きさの相違、及び下段の「ハチとり」の文字が「ハチ取り用」、「ハチ捕獲用」であることを容易に認識させ、指定商品「ハチ捕獲器」の用途を表す識別力を有しない文字部分であること等を総合考慮すれば、上記判断は誤りというほかない。
(イ)引用商標について
引用商標は、標準文字で「キャッチャー」の文字を表してなるから、これより「キャッチャー」の称呼及び「捕手」等の観念を生ずることは明らかである。
(ウ)本件商標と引用商標との類否
前記(ア)及び(イ)のとおり、本件商標と引用商標は、いずれも「キャッチャー」の称呼及び「捕手」等の観念を生じるものであるから、称呼及び観念を同一にする類似の商標といわざるを得ない。
また、本件商標の指定商品中、「ハチ捕獲器」と引用商標の指定商品中、第21類「ゴキブリ捕獲器、その他の害虫捕獲器(電気式のものを除く。)」とは、同一又は類似の商品である。請求人の前記主張が妥当であることは、過去の審決・判決例によっても裏付けられる(甲第4?7号証)。
(エ)出所の混同について
商標が類似するか否かは、対比される両商標が同ー又は類似の商品に使用された場合、商品の出所について混同を生ずるおそれがあるか否かによって決すべきである、とされている(最高裁昭和43年2月27日第三小法廷判決)。
請求人は、「金鳥」ブランドで知られる家庭用殺虫剤、衣料用防虫剤、家庭用洗浄剤、トイレタリー製品の製造、販売等を主な業務とする会社である。そして、「キャッチャー」ブランドについては、登録第1718324号及び第3292095号の各商標を有しており、平成9年(1997年)からゴキブリ捕獲器に「ゴキブリ キャッチャー」等の態様で使用している(参考資料21頁)。また、「コバエキャッチャー」(登録第4990667号)を「はえ捕獲器」にも使用している。
このように、「害虫捕獲器」について「キャッチャー」を使用しているは請求人のみであるから、これと同一又は類似の商品に被請求人が、要部を「キャッチャー」とする「ハチとりキャッチャー」を使用した場合は、取引者、需要者が、出所を同じくする商品であると混同を生じるおそれがあり、したがって、本件商標と引用商標とは、商品の出所の混同を生ずるおそれのある類似の商標といわざるを得ない。
イ 商標法第4条第1項第16号について
(ア)本件商標は、前記のとおり、その構成中の「ハチとりキャッチャー」の文字が上段の文字に比較して圧倒的に大きく書してなり、独立して自他商品の識別機能を有すること、及び前半の「ハチとり」の文字が、「ハチ(蜂)取り用」、「ハチ捕獲用」の商品であることを容易に理解、認識させるものである。
(イ)取引の実情
ねずみ、ゴキブリ、はえなど害虫の駆除のためには、大別して殺虫剤を使用して駆除する方法と匂いなどで誘引して捕獲・駆除する方法があるところ、殺虫剤にしても、害虫捕獲器にしても、それぞれの害虫に効く殺虫剤や、個々の害虫に対して、より効果的な誘引物質を具えた捕獲器等が開発されているところである。また、開発された商品を市場に出すときは、該商品がどのような害虫に効き目があるのか、また、どのような害虫を捕獲するための商品であるか等をその商品のパッケージや取扱説明書にわかり易く明記することにより、当該商品がどのような害虫向けの商品であるかを一目でわかるように示しているのが実情である(甲第3、8号証、参考資料)。かかる実情のなかで、「ハチ(蜂)取り用」、「ハチ捕獲用」の商品であることを容易に理解、認識させる「ハチとり」の文字部分を有する本件商標については、何人が見ても、該商品が「ハチ捕獲器」であることを認識させるものであることは、疑いのないことである。
したがって、本件商標を「ハチ捕獲器」以外の商品である「ねずみ取り器」について使用するときは、あたかも該商品が「ハチ捕獲器」であるかのように、商品の品質(用途)について誤認を生ずるものであることは明らかといえる。このことは、商品の品質の誤認を生ずるおそれがあるとした審決・判決例からも明らかである(甲第9?12号証)。
よって、本件商標の指定商品中、「ねずみ取り器」については、商標法第4条第1項第16号に違反して登録されたものといわなければならない。
(2)答弁に対する弁駁
ア 商標法第4条第1項第11号について
(ア)商標の類否判断基準
商標の類否は、対比される両商標が同ー又は類似の商品に使用された場合に、商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるか否かによって決すべきであるが、それには、そのような商品に使用された商標がその外観、称呼、観念等によって、取引者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すべく、しかも、その商品の取引の実情を明らかにし得るかぎり、その具体的な取引状況に基づいて判断するのを相当とする(最高裁昭和43年2月27日第三小法廷判決)。
(イ)被請求人は、本件商標中の「ハチとりキャッチャー」の文字を「ハチ」「とり」「キャッチャー」の各語に分解し、かつ、その音に相当する語を想定すれば、各語は多様な意味を有する旨主張する。
しかし、前記(ア)のとおり、商標の類否判断は、称呼のみによるわけではなく、その外観、称呼及び観念の3の要素を総合的に考察し、全体観察がなされるべきであり、かつ、使用される指定商品との関係を考慮してなされるべきである。
したがって、各語を分解するよりも、むしろ、「ハチとりキャッチャー」の文字全体がその指定商品中の「ハチ捕獲器」について使用された場合を想定して、その外観、称呼及び観念から類否判断がなされるべきである。
(ウ)被請求人は、各文字の大きさや形態に差異がなく、これらの文字が一体的に結合されるから、一連不可分の造語と理解、認識され、その称呼もさほど冗長でなく、「ハチトリキャッチャー」の称呼のみを生ずると主張する。
しかしながら、その商標の構成中に指定商品の品質、用途などを表す文字部分を有するような場合には、この部分を捨象して、他の自他商品識別力のある部分をもって、称呼されることは、幾多の審決・判決例が示すところであるし、また、「特許庁商標課編 商標審査基準 改訂第9版」の記載からも、これを首肯し得るものである(甲第13号証)。
そして、本件商標中の「ハチとりキャッチャー」の文字部分がその指定商品中の「ハチ捕獲器」について使用された場合、取引者、需要者が前半部の「ハチとり」の部分をどのように理解、認識するかが重要である。すなわち、「ハチとり」の文字部分を請求人の主張するように、「ハチ取り用、ハチ捕獲用」の商品(用途・品質)を認識させるか、あるいは、被請求人の主張するように、「ハチ」の部分を「蜂」「(数字の)八」「鉢」のように、また、「とり」の部分を「酉」「取り」「鳥・禽」のように理解するから、「ハチ(蜂)取り用」の商品と認識し得ないか、である。
商品の取引は、電話など音声のみによってされるばかりではなく、例えば、店頭において付された商標をみて商品を識別する場合も多いところ、その場合、「ハチ捕獲器」等は、通常、殺虫剤コーナーのような特定の場所で販売されるものであるから、「ハチ」や「とり」の文字から、被請求人のいうように多様の意味合いを想像することは考えられないものと思料する。また、たとえ、電話取引等において音声のみで取引するにしても、通常は、その会話の前後関係から該音(ハチトリ)の意を理解、認識するから、そのような中で「ハチトリキャッチャー」と一連に称呼した場合、「ハチ」の称呼から「蜂」「(数字の)八」「鉢」等の、また、「トリ」の称呼から「鳥」「酉」「取り」等の多様な意味合いを想像する余地などあり得ないというべきである。
(エ)「ハチとり」の文字について
被請求人は、「ハチとり」の文字から「ハチ取り用」の商品であることを直ちに特定し難い旨主張する。
害虫捕獲用商品については、前述のとおり、「○○とり」、「○○取り」の文字が多数使用されている(甲第3号証)し、また、商標法施行規則別表の例示商品においても、第5類「はえ取り紙」、第21類「ねずみとり器」などの例示が掲載されている(甲第14号証)。さらに、商品採択例においても、多数存在する(甲第15号証)。
そうすると、本件商標中の「ハチとりキャッチャー」の文字部分に接する取引者、需要者は、前半の「ハチとり」の文字が、「ハチ(蜂)取り用」の商品(用途・品質)を表したものと理解・認識するのがごく自然ということができ、本件商標からは、自他商品の識別機能を果たす「キャッチャー」の文字部分から「キャッチャー」の称呼及び「捕手」の観念をも生ずるというべきである。
なお、被請求人は、「フマキラー/ハチキャッチャー」の無効審判事件の審決(乙第2号証)を引用するが、「ハチキャッチャー」と本件商標の「ハチとりキャッチャー」では明らかに文字構成も意味合いも異なるから参考にならない。さらにいえば、「商標の類否は、対比される両商標が同一又は類似の商品に使用された場合に、商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるか否かによって決すべきである」ことは、前述の最高裁の判決に示したとおりであり、本件商標と引用商標の共通する指定商品である「ハチ捕獲器」について、本件商標と引用商標とをそれぞれ付して、例えば、殺虫剤コーナー等で販売した場合、商品について出所の混同を生ずるおそれがあることは自明のことと思料する。
イ 商標法第4条第1項第16号について
被請求人は、本件商標「ハチとりキャッチャー」の文字は特定の意味合いを有しない造語であって、前半の「ハチとり」の文字が「ハチ(蜂)取り用の」商品の意味合いで商品の用途を表したものといえないから、「ねずみ取り器」に使用しても、商品の品質について誤認を生じない旨主張する。
しかしながら、前記のとおり、該文字が「ハチ(蜂)取り用」の商品、すなわち用途、品質を表したものと認識するのが自然であって、これを本件指定商品中の「ねずみ取り器」に使用した場合、「ハチ(蜂)取り用」の商品であるかのように、商品の品質について誤認を生ずるおそれがあるというべきである。このことは、本件商標と同じく、いずれも同書、同大、等間隔に一連に書されていても、「商品の品質について誤認を生ずるおそれがある」と判断され、商品を補正した結果、登録された審査例(甲第16?19号証)からも是認し得るものである。
(3)むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、指定商品中「ハチ捕獲器」について、商標法第4条第1項第11号に違反し、また、「ねずみ取り器」について、同法第4条第1項第16号に違反してされたものであるから、同法第46条第1項の規定により、無効とされるべきである。

4 被請求人の答弁の要点
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第3号証を提出した。
(1)商標法第4条第1項第11号について
本件商標は、その構成中の「フマキラー」と「ハチとりキャッチャー」の各文字がそれぞれ独立して看者の注意を惹くものである。
また、本件商標中の「ハチとりキャッチャー」の文字は、これを「ハチ」「とり」と「キャッチャー」の文字に分離すれば、「ハチ」の文字は、その音に通ずる文字として、「蜂」「(数字の)八」「鉢」が存在し、「とり」の文字は、その音に通ずる文字として、「酉」「取り」「鳥・禽」が存在し、「キャッチャー」の文字は、「とらえる人、また、もの。捕手。」の意味を有する外来語(乙第1号証)として、一般に親しまれ使用されているといい得るものである。
ところで、文字のみからなる商標の場合には、通常その文字に相応した称呼、観念を生ずるものであるから、たとえ、それが片仮名、平仮名、片仮名といった3語(文字)を結合してなるものであっても、これを構成する各文字が一様に連なり、その各語に対応する文字の大きさや形態に差異がない場合には、3語のうちの1又は2が日常使用されない特異な語であるなどその語自体が特別顕著な印象を与えるとか、その称呼が全体として殊更冗長であるなど特段の事情がない限り、その商標は原則として一連に称呼され一体的に観念されるものとみるべきである。
そして、本件商標中の「ハチとりキャッチャー」の文字は、その構成各文字が同一の書体及び同一の間隔で外観上まとまりよく一体的に構成されていて、その結合は強固なものであり、また、これより生ずると認められる「ハチトリキャッチャー」の称呼も格別冗長というべきものでなく、よどみなく一連に称呼し得るものである。さらに、該「ハチとりキャッチャー」の文字は、これを構成する「ハチ」「とり」と「キャッチャー」の各文字がその意味合いからして、いずれも高い識別力を有するといえるほど特異なものではないことなどを併せ考慮すれば、かかる構成においては、前半の「ハチとり」の文字が請求人主張のような「ハチ(蜂)取り用」「ハチ(蜂)捕獲用」といった意味合いで商品の用途を表示するものというよりは、むしろこれに接する取引者、需要者をして、その文字の有する意味合いを深く詮索することなく、一連不可分の造語よりなるものと把握、認識されるとみるのが自然である。他に、本件商標中の「ハチとりキャッチャー」の文字を「ハチとり」と「キャッチャー」の文字部分に分離して観察しなければならない格別な事由は見当たらない。
してみると、本件商標中の「ハチとりキャッチャー」の文字は、その構成文字全体に相応して、「ハチトリキャッチャー」の一連の称呼のみを生ずるものというべきである。
なお、請求人は、本件商標中の「ハチとりキャッチャー」の文字は、「ハチ捕獲器」に使用したときは、前半の「ハチとり」の文字は「ハチ(蜂)取り」に通じ、該商品が「ハチ取り用」「ハチ捕獲用」の商品であることを容易に理解、認識させ、単に商品の用途を表示するにすぎないから、後半の「キャッチャー」の文字が商標の要部である旨主張するが、「ハチ」「とり」の文字は、前記のとおり、その音に対応する文字として、「蜂」「取り」のほか、「(数字の)八、鉢」(前者)、「酉、鳥、禽」(後者)の文字も一般に親しまれ使用されているところからみれば、「ハチとりキャッチャー」と一連に表してなる構成においては、これに接する取引者、需要者をして、前半の「ハチとり」の文字を捉え、「ハチ(蜂)取り用の」商品であることを表したと直ちには特定され難いものであるから、当該「ハチとりキャッチャー」の文字は、前記に被請求人が主張するように判断するのが相当である。
また、被請求人の前記主張は、同人所有の登録商標「フマキラー/ハチキャッチャー」に対する無効審判事件の審決(乙第2号証)の認定、判断及び「コレステロールキャッチャー」「WEEDCATCHER/ウィードキャッチャー」「ふんわりキャッチャー」の文字よりなる各商標(乙第3号証)が、指定商品が抵触するにも拘わらず、引用商標とは非類似の商標として登録されている等からみても、妥当なものとして是認できる。
したがって、本件商標中の「ハチとりキャッチャー」の文字は、一体不可分のものとして捉えるべきであるから、その構成中後半の「キャッチャー」の文字が独立して自他商品の識別機能を果たすものであることを前提として、本件商標と引用商標とが類似するとする請求人の主張は、その前提において失当なものといわざるを得ない。
その他、本件商標と引用商標とは、その外観、称呼及び観念のいずれよりみても類似のものとすべき事由は見出せない。
加えて、請求人は、「ゴキブリ キャッチャー」「コバエキャッチャー」等の商標を「害虫捕獲器」に使用するものであるから、その商品と同一又は類似の商品に本件商標が使用された場合、商品の出所の混同を生ずるおそれがある旨主張するが、請求人提出の参考資料は、「ゴキブリキャッチャー」の文字よりなる標章が「ゴキブリ捕獲器」に使用されている事実を確認できる程度のものであるばかりでなく、当該「ゴキブリキャッチャー」「コバエキャッチャー」の文字よりなる標章は、一連のものとして捉えるべきであり、さらに、引用商標自体が「害虫捕獲器」に使用され周知性を獲得しているといった事実も見当たらないから、請求人の前記主張及び参考資料のみをもっては、本件商標が「ハチ捕獲器」に使用された場合、請求人の業務に係る商品と混同を生ずるおそれがあるとは到底言い得ないものである。
(2)商標法第4条第1項第16号について
ア 請求人は、本件商標はその指定商品中の「ねずみ取り器」に使用した場合、需要者、取引者は、あたかも該商品が「ハチ捕獲器」であるかのように、商品の品質について誤認を生ずる旨主張する。
しかしながら、本件商標は、前記(1)のとおり、その構成中の「ハチとりキャッチャー」の文字が一連不可分の造語よりなるものであって、かつ、その前半の「ハチとり」の文字が「ハチ(蜂)取り用の」の意味合いで商品の用途を表したものとして直ちに把握、理解されるとはいい難いものであるから、これをその指定商品中の「ねずみ取り器」に使用しても、「ハチ捕獲器」であるかのように商品の品質について誤認を生じさせるおそれのないものといわなければならない。
イ 甲第4号証ないし甲第7号証、甲第9号証ないし甲第12号証について
甲第4号証ないし甲第7号証及び甲第9号証ないし甲第12号証の審決・判決例は、その審決又は判決における商標と本件商標とは、その構成態様及び指定商品が全く相違するばかりでなく、当該審決が、商標全体としての自他商品識別性を否定した上で商標法第4条第1項第16号にも該当するとするものであること等、本件とは事案を異にするから、これら審決・判決例をもって、被請求人の上記アの主張を左右するものではない。
(3)むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号及び同第16号に違反してされたものではないから、同法第46条第1項の規定により、無効とすべきものではない。

5 当審の判断
(1)商標法第4条第1項第11号について
ア 本件商標について
本件商標は、別掲のとおり、「フマキラー」の文字と「ハチとりキャッチャー」の文字を二段に横書きしてなるものであるところ、その構成中の「フマキラー」の文字部分は、下段の「ハチとりキャッチャー」の文字部分に比べて小さく表されているが、被請求人の取扱いに係る殺虫剤などの害虫駆除剤等を表示するためのものとして、また、被請求人の商号の略称を表すものとして、この種商品分野において、その需要者に広く知られているものである。したがって、本件商標中の「フマキラー」の文字部分は、それ自体強い顧客吸収力を有するものであるから、独立して自他商品の識別機能を果たし得るものというべきである。
一方、本件商標中、大きく表示された「ハチとりキャッチャー」の文字部分は、「ハチ」、「とり」、「キャッチャー」と種類の異なる文字の組み合わせよりなるものであるところ、これらの文字は、同じ大きさ、同じ間隔で外観上まとまりよく一体的に表されているものであるから、外観上いずれかの文字部分のみを分離、抽出して観察しなければならない特段の理由は見出せない。また、これより生ずると認められる「ハチトリキャッチャー」の称呼も、例えば、「ハチトリ」と「キャッチャー」とに分断して称呼しなければならないほど冗長といえるものではなく、無理なく称呼し得る程度のものである。したがって、本件商標中の「ハチとりキャッチャー」の文字部分は、外観及び称呼の面からみれば、構成全体をもって一体不可分のものを表したと理解されるとみるのが相当である。
ところで、本件商標は、その指定商品中に「ハチ捕獲器」を含むものであるところ、本件商標中の「ハチとりキャッチャー」の文字部分を「ハチ捕獲器」との関係からみると、該「ハチとりキャッチャー」の文字部分中の「ハチ」の文字は「ハチ」、すなわち「蜂」の意味を、「とり」の文字は「採り」の意味を、「キャッチャー」の文字は「捕獲するもの、捕獲器」の意味を、それぞれ表したと理解されるものであって、文字全体として、「蜂採り捕獲器」、進んで、「蜂捕獲器」なる意味合いを表したものと認識される場合も決して少なくなく、これを指定商品中の「ハチ捕獲器」について使用するときは、自他商品の識別機能がきわめて弱いものであるか、あるいは、自他商品の識別機能を有しないとする見方もないではない。しかし、該「ハチとりキャッチャー」の文字部分は、上記認定のとおり、先ず第一に、外観及び称呼上一体不可分のものであること、次に、文字の意味的ないし内容的な面についてみれば、「ハチとりキャッチャー」の語が「ハチ捕獲器」等害虫捕獲器を取り扱う商品分野において、商品の品質等を表示するためのものとして普通に使用されている事実は見出せないこと、加えて、「採り」を理解させる「とり」と「捕獲するもの、捕獲器」を理解させる「キャッチャー」の2語は、いずれも「(ハチ)捕獲器」と関連性の強い語であり、これら同義語と取れる2語を続けて使用することにより、一種独特なニュアンスが生じ、単に商品の品質を表示する語にとどまらない主たる要因となっていることなどを併せ考慮すると、その意味的ないし内容的な面からみても、構成全体が一体不可分の造語を表したものとみることができ、弱いながらも独立して自他商品の識別機能を果たし得るものとみるのが相当である。
したがって、本件商標中の「ハチとりキャッチャー」の文字部分は、その構成文字に相応して、「ハチトリキャッチャー」の一連の称呼のみを生ずるものといわなければならない。
そうすると、本件商標は、その構成中の「フマキラー」の文字部分が強い自他商品の識別機能を発揮するものであるから、本件商標に接する需要者は、該「フマキラー」の文字部分に着目して、これより生ずると認められる「フマキラー」の称呼をもって、商品の取引に当たる場合が多いとみるべきである。仮に、本件商標中、大きく表示された「ハチとりキャッチャー」の文字部分に着目する場合があるとしても、上記事情からすれば、構成文字全体から生ずる「ハチトリキャッチャー」の称呼のみをもって商品の取引に当たるとみるべきであり、一体的に書された「ハチとりキャッチャー」の文字部分より、「捕獲器」の意味を理解させ、「ハチ捕獲器」との関係において識別力の弱い「キャッチャー」の文字部分のみを殊更分離、抽出して、「キャッチャー」と称呼することはないといわなければならない。
以上によれば、本件商標より生ずる称呼は、先ず第一に、需要者によく知られている「フマキラー」の文字部分より生ずる「フマキラー」の称呼であり、そのほか、構成文字全体より生ずる「フマキラーハチトリキャッチャー」の称呼、若しくは、「ハチとりキャッチャー」の文字部分より生ずる「ハチトリキャッチャー」の称呼を生ずる場合もあるとしても、単に「キャッチャー」の称呼は生じないというべきである。
また、本件商標は、構成全体としてはもとより、「フマキラー」、「ハチとりキャッチャー」の各文字部分についても、特定の観念を有しない造語よりなるものと認められる。
イ 引用商標
引用商標は、前記2のとおり、「キャッチャー」の文字を書してなるものであるから、その構成文字に相応して、「キャッチャー」の称呼を生ずるものであって、「捕える人(もの)、捕手」等の観念を生ずるものである。
ウ 本件商標と引用商標との比較
本件商標は、前記ア認定のとおり、その構成文字より、「フマキラー」、「フマキラーハチトリキャッチャー」、「ハチトリキャッチャー」の称呼が生ずるものである。
これに対して、引用商標は、前記イ認定のとおり、「キャッチャー」の称呼を生ずるものである。
してみると、本件商標より生ずる「フマキラー」、「フマキラーハチトリキャッチャー」、「ハチトリキャッチャー」の称呼と引用商標より生ずる「キャッチャー」の称呼は、構成する音数、各音の音質・音感等の差により、それぞれの称呼を一連に称呼した場合、十分に聴別し得るものである。
また、本件商標は、前記ア認定のとおり、造語よりなるものであるから、「捕える人(もの)、捕手」等の観念を有する引用商標とは、観念上比較することができない。
さらに、本件商標と引用商標は、別掲及び前記のとおりの構成よりみて、外観上明らかに区別し得る差異を有するものである。
したがって、本件商標と引用商標は、称呼、観念及び外観のいずれの点においても、相紛れるおそれのない非類似の商標というべきものである。
エ 請求人の主張について
(ア)本件商標をその指定商品中「ハチ捕獲器」について使用したときは、「ハチとりキャッチャー」の文字部分中の「ハチとり」の文字は、「ハチ取り用」又は「ハチ捕獲用」の商品の意味をもって、商品の用途を表示したものと認識され、後半の「キャッチャー」の文字が自他商品の識別機能を果たす部分として認識されるから、本件商標は、「キャッチャー」の文字部分に相応して、単に「キャッチャー」の称呼をも生ずるものであって、「キャッチャー」の語は、「(野球の)捕手」等の意味を表す語として、日本語化しているほど親しまれている語であるから、これより「捕手」等の観念を生ずるものである旨主張する。
しかし、前記認定のとおり、本件商標においては、強い自他商品の識別機能を発揮する「フマキラー」の文字部分が存在している一方で、その構成中の「ハチとりキャッチャー」の文字部分は、「ハチ捕獲器」との関係からみると、自他商品の識別機能はさほど強いものとはいえない文字部分であり、かつ、該文字部分は、外観及び称呼上一体不可分のものと理解されるものであるところからすると、本件商標に接する需要者は、その構成中の「キャッチャー」の文字部分を殊更抽出して、これを自他商品の識別標識として捉えて商品の取引に当たることはないとみるのが相当である。
また、「キャッチャー」の語が「(野球の)捕手」等の意味を表す外来語として我が国の国民によく知られているものであることは認め得るとしても、「捕らえる人(もの)」を表す語としてもよく知られているものであって、指定商品「ハチ捕獲器」との関係においては、「捕獲するもの、捕獲器」の意味を容易に想起させるものというべきである。
したがって、上記請求人の主張は理由がない。
(イ)請求人は、その業務に係る「害虫捕獲器」について「キャッチャー」の文字よりなる商標を請求人のみが使用しているから、これと同一又は類似の商品に被請求人が「ハチとりキャッチャー」の文字を有する本件商標を使用した場合、商標の要部である「キャッチャー」の文字を共通にするから、商品の出所について混同を生じさせるそれがある旨主張する。
しかし、前記認定のとおり、本件商標における要部は、「フマキラー」の文字部分であり、構成中の「キャッチャー」の文字のみが独立して自他商品の識別機能を発揮するものではない。
なお、請求人は、本件商標と引用商標とが類似する商標であるとする根拠の一として審決・判決例を挙げるが、商標法第4条第1項第11号の規定による商標の類否の判断は、個別にされるべきものであるから、本件商標と引用商標との類否判断が請求人の挙げた審決・判決例に左右されるものではない。したがって、上記請求人の主張は理由がない。
(2)商標法第4条第1項第16号について
請求人は、害虫捕獲器等における取引の実情を述べ、本件商標中の「ハチとり」の文字部分は、ハチ捕獲用の商品であることを認識させるから、本件商標をその指定商品中の「ねずみ取り器」について使用するときは、商品の品質について誤認を生じさせるおそれがある旨主張する。
しかし、前記(1)認定のとおり、本件商標中の「ハチとりキャッチャー」の文字部分は、「ハチ捕獲器」等害虫捕獲器を取り扱う商品分野において、商品の品質等を表示するためのものとして普通に使用されている事実はなく、構成全体をもって一体不可分の造語を表したと理解されるというべきである。そうすると、「ハチとり」の文字部分から「ハチ捕獲用の商品」であることを認識させるものとは考え難いところである。
してみれば、本件商標は、これをその指定商品中の「ねずみ取り器」について使用しても、該商品が「ハチ捕獲器」であるかのように、商品の品質について誤認を生じさせるおそれはないというべきであるから、上記請求人の主張は理由がない。
なお、請求人は、審決・判決例及び審査例を示し、本件商標についてもこれらと同様の判断がされてしかるべきである旨主張するが、請求人の示す事例は、本件商標とは構成態様等において異なるばかりでなく、過去の審決・判決例及び審査例が必ずしもそのまま本件商標の商標法第4条第1項第16号該当性の判断基準となり得るものではないし、また、請求人の指摘する審決・判決例及び審査例と同様の判断をすべき理由も見当たらない。
したがって、請求人の主張は、採用することができない。
(3)むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、その指定商品中の「ハチ捕獲器」について、商標法第4条第1項第11号に違反してされたものではなく、また、同じく「ねずみ取り器」について、同第16号に違反してされたものではないから、同法第46条第1項の規定により、無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 (別掲)本件商標



審理終結日 2008-07-02 
結審通知日 2008-07-07 
審決日 2008-07-25 
出願番号 商願2005-119395(T2005-119395) 
審決分類 T 1 12・ 262- Y (Y21)
T 1 12・ 263- Y (Y21)
T 1 12・ 272- Y (Y21)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 前山 るり子 
特許庁審判長 伊藤 三男
特許庁審判官 酒井 福造
岩崎 良子
登録日 2006-08-25 
登録番号 商標登録第4982065号(T4982065) 
商標の称呼 フマキラーハチトリキャッチャー、フマキラー、ハチトリキャッチャー 
代理人 為谷 博 
代理人 成合 清 
代理人 萼 経夫 
代理人 山田 清治 
代理人 舘石 光雄 

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