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審決分類 審判 全部無効 外観類似 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Z30
審判 全部無効 称呼類似 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Z30
審判 全部無効 観念類似 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Z30
管理番号 1184510 
審判番号 無効2007-890103 
総通号数 106 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2008-10-31 
種別 無効の審決 
審判請求日 2007-06-28 
確定日 2008-09-05 
事件の表示 上記当事者間の登録第4898886号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第4898886号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4898886号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲(1)のとおりの構成からなり、平成11年6月16日に登録出願、第30類「うなぎを用いてなるパイ菓子」を指定商品として、同17年7月29日に登録をすべき旨の審決がなされ、同年10月7日に設定登録されたものである。

第2 請求人の引用する商標
請求人が本件商標の登録の無効の理由に引用する登録第2719548号商標(以下「引用商標」という。)は、別掲(2)のとおりの構成からなり、昭和61年1月17日に登録出願、第30類「うなぎの粉末を加味してなるパイ菓子」を指定商品として、商標法第3条第2項の適用により、平成8年10月3日に登録査定、同9年1月31日に設定登録されたものである。その後、指定商品については、平成19年3月28日に指定商品の書換登録がされ、第30類「うなぎの粉末を加味してなるパイ菓子」と書き換えられている。

第3 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求めると申し立て、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第675号証(枝番号を含む。)を提出した。

1 無効理由の要点
本件商標は、引用商標と類似し、指定商品も同一又は類似のものであるから、商標法第4条第1項第11号に該当するとともに、引用商標に鰻職人の図形を配した商標(以下「請求人使用商標」という。)とも類似し、同商品と類似する商品について使用をするものであるから、同第10号に該当し、本件商標は、請求人の業務に係る商品と混同を生じさせるものであるから、同第15号にも該当し、更に、本件商標は不正の目的をもって使用をするものであるから、同第19号にも該当するものである。

2 本件商標登録を無効とする理由
(1)本件商標の構成について
本件商標は、別掲(1)のとおり、横長な楕円図形中に「浜名湖うなパイ」の文字を書し、楕円図形の左側に該図形から上下に突出する「鰻の図」と、同図形の右側に一部が上記楕円図形に重なり、他の部分が当該楕円図形から突出する「鰻職人の図」とを組合せたものであって、指定商品は、第30類「うなぎを用いてなるパイ菓子」である。
本件商標の「浜名湖うなパイ」の文字は、「うなパイ」の部分が「浜名湖」より大きく表わされている。また、「鰻職人の図」は、「二人の鰻職人が作業をしており、一人が鰻を篭から取り出し、もう一人が鰻を焼いている図」である。
本件商標には色彩が施されており、楕円図形は、地色が赤色、輪郭が黄色で縁取りされたものである。また、「浜名湖うなパイ」の文字部分のうち、「浜名湖うな」の部分は黒色であり、「パイ」の部分は楕円図形の輪郭と同じ黄色で着色されており、「鰻の図」及び「鰻職人の図」は、いずれも黒色で描かれている(甲第1号証の1)。
(2)引用商標について
(ア)引用商標の構成について
引用商標は、左端が下隅部をやゝ鋭角とした斜線を画し、右端が半円形となる横長な長円図形中に「うなぎパイ」の文字を書したものであって、指定商品は第30類「うなぎの粉末を加味してなるパイ菓子」であり、商標法第3条第2項の適用を受けて登録になったものである。
引用商標には色彩が施されており、長円図形は、地色が赤色、輪郭が黄色で縁取りされており、また、「うなぎパイ」の文字のうち、「うなぎ」の部分が黒色であり、「パイ」の部分が長円図形の輪郭と同じ黄色であり、後述するように、引用商標の要部は文字部分にある。
(イ)引用商標の使用状況について
引用商標は、請求人によって昭和36年(1961年)から「鰻を用いたパイ菓子」について使用され、その後今日に至るまで継続して使用されているものである。また、引用商標を使用した「うなぎパイ」は、昭和36年の販売開始以来、パイ菓子を1本ずつ子袋(甲第5号証の1)に包装したものを箱詰めしたうえで販売されており(甲第5号証の2)、引用商標は、実際のパイ菓子の子袋上においては、引用商標の右隣に鰻職人の図を配置した態様で表示されている(甲第5号証の1)。この甲第5号証(枝番号をまとめて引用するときはその枝番号を省略する。以下同じ。)の商品が「うなぎパイ」のスタンダード版とも言うべきものであって、最も多く販売されているものである。
上記以外にも、「うなぎパイ(ナッツ入り)」等の商品が販売されており(甲第6号証ないし甲第8号証)、いずれも包装紙(甲第9号証)によって包装され、また、商品を持ち帰るための手提げ袋(甲第10号証)が使用されており、商品を配送する時には、専用のダンボールケース(甲第11号証)が使用されている。
(ウ)引用商標の著名性について
請求人は、昭和24年(1949年)12月に設立された有限会社であり、「鰻を用いたパイ菓子」を開発し、これを「うなぎパイ」と名づけて昭和36年(1961年)から販売を開始し、その後、今日に至るまで継続して製造販売をしてきている(甲第12号証)。
「うなぎパイ」の売上高は、直近の10年間においてみれば、平成7年度では43億円であったものが、平成16年度には60億円を超える額に達している(甲第13号証)。
そして、「うなぎパイ」は、請求人の直営店において販売されているばかりでなく(甲第17号証ないし甲第21号証)、合計286社の取引業者によって扱われ、合計3,066の小売店で販売されている(甲第14号証)。小売店の主なものとしては、JR東海道線「浜松駅」を始めとする鉄道の主要駅構内、東名高速道路を始めとする高速道路の主要なサービスエリア及びパーキングエリア、東京及び大阪を含む全国の主要デパート、スーパーマーケット並びに菓子店等である。
そして、引用商標は、商標登録時の前後を問わず、新聞、雑誌、テレビ番組等で積極的に取り上げられてきており、また、請求人自らも、新聞、雑誌、新聞等を通じて積極的に広告宣伝活動を行なってきている(甲第22号証ないし甲第658号証)。
これらの一連の諸活動を通じて、引用商標は、請求人の出所を示すものとして、本件商標の出願時及び登録審決時においてはもとより、現時点においても、需要者の間に強固に根付くに至っているものである。
これと共に、請求人が販売する「うなぎパイ」は、パイ菓子を1本ずつ包装した子袋(甲第5号証の1)上に、引用商標とその右側に「鰻職人の図」が表示されており、請求人が使用をする引用商標と「鰻職人の図」とを組合せた商標も著名な商標となっているものである。
よって、上記のとおりであるから、引用商標並びに引用商標と「鰻職人の図」を組合せた商標は、我が国を代表する菓子についての著名な商標となるに至っているものである。
(3)「うなぎパイ」に類似する商標の違法使用の実情
請求人は、これまで、裁判所での仮処分申立や特許庁での無効審判等を通じて、これらの只乗り商品の排除に努めてきた。
その経緯の概略は、以下のとおりである。
(ア)無効審判
特許庁は、無効審判2000-35719号(登録第4395432号商標「フレッシュうなパイ」)、無効審判2000-35720号(登録第4398862号商標「ハニーうなパイ」)、無効審判2000-35721号(登録第4398863号商標「ハニーうなパイ」)の無効審判事件において、いずれの商標も、請求人の引用商標「うなぎパイ」と類似すると判断して、その登録を無効にしてきた(甲第659号証ないし甲第664号証)。
(イ)訴訟(仮処分申立)
請求人の「うなぎパイ」が有名になるにつれて類似商標を付した商品が出現してきたので、請求人は自己の商標に化体された信用を維持するために、「うなぎてり焼きパイ」(甲第665号証)、「プチうなパイ」(甲第666号証)、「うなぎかばやきパイ」(甲第667号証)、「浜名湖マイルドうなパイ」(甲第668号証)、「浜名湖ピュアうなパイ」(甲第669号証)、「ロングうなパイ」(甲第670号証)の各商標使用者に対して静岡地方裁判所浜松支部に使用差止め仮処分の申し立てを行い、このうち「浜名湖マイルドうなパイ」「浜名湖ピュアうなパイ」「ロングうなパイ」(以下、「関連事件標章」という。)については、平成11年9月13日付けで、「うなぎパイ」と類似商標であるから使用してはならないとする仮処分決定を得た(甲第671号証)。
また、「うなぎてり焼きパイ」「プチうなパイ」「うなぎかばやきパイ」については使用を中止することを内容とする裁判上の和解をした。
なお、上記の他、「うなリッチパイ」「フレッシュうなパイ」「ハニーうなパイ」「浜名湖うなパイ」(被請求人の商品)の各商標使用者に対しても使用中止を求めた結果、何れの使用者も使用を中止した経緯がある。
裁判所は、仮処分決定において、引用商標(請求人商標)は請求人の販売に係るパイ菓子の名称として全国的に一般消費者の間で広く認識されている商標であること並びにその要部は「うなぎパイ」の文字部分であることを認定した。
そして、関連事件標章中のそれぞれ「マイルドうなパイ」「ピュアうなパイ」「ロングうなパイ」を要部と認定し、これらと引用商標(請求人商標)とが観念類似であるとして、両者が類似商標であると判示したのである。
(ウ)上記のとおり、被請求人は、平成11年当時、「鰻を加味したパイ菓子」に、本件商標「浜名湖うなパイ」をパイ菓子の包装紙及び子袋上に付して使用していた(甲第672号証)。
そこで、請求人は、被請求人に対し、本件商標の使用中止を申入れたところ(甲第673号証)、被請求人から、本件商標を使用しない旨の回答(甲第674号証、甲第675号証)がなされたので、仮処分申立の対象者から外した経緯がある。
すなわち、被請求人は、請求人が同業他社に対して仮処分申立を行ったこと、裁判所が「浜名湖マイルドうなパイ」、「浜名湖ピュアうなパイ」、「ロングうなパイ」が「うなぎパイ」と類似していると仮処分決定したことについて当然に承知していたものである。
(4)商標法第4条第1項第11号について
(ア)本件商標と引用商標の構成について
本件商標は別掲(1)のとおりの構成からなり、引用商標は別掲(2)のとおりの構成からなるところ、本件商標と引用商標とは、前者が楕円形中に「浜名湖うなパイ」の文字を表記し、後者が横長な長円図形中に「うなぎパイ」の文字を表記したものであるところ、両者は、いずれも横長図形の地色を赤色とし、輪郭を黄色で縁取りした点で同一であり、また、文字部分は、前段の「浜名湖うな」及び「うなぎ」が黒色であり、後段の「パイ」が黄色である点においても両者は同一である。
本件商標は、これと共に、楕円図形の右側部に「鰻職人の図」を表しているが、このような表示態様にて文字部分の右側に鰻職人を配置する図は、もともと請求人が考案した図形であって、請求人がパイ菓子の子袋上において長年使用してきた著名な商標である(甲第5号証の1)。
これに加えて、「浜名湖うなパイ」の文字を表記した楕円図形の右側部に「鰻職人の図」を配した本件商標は、仮に、楕円図形の左側部に「鰻の図」を描き加えていたとしても、基本的には請求人が請求人商品上で使用してきた引用商標と「鰻職人の図」とを組み合わせた商標を模倣しているというにすぎず、被請求人において請求人の信用に只乗りせんとして、意図的に採用したものであることが明らかというべきである。
(イ)称呼類似について
本件商標と引用商標とは、全体で4音ないし5音で構成される商標であるところ、両者は、3音目に「ギ」の有無という差異があるだけであるから、それぞれを一連に称呼すると、両者は彼此紛らわしいものとなることが明らかである。
また、「うなちゃ」又は「うなちゃづけ」が「鰻茶漬(うなぎちゃづけ)」のことであり、「うなどん」が「鰻丼(うなぎどんぶり)」のことであるように、「うなぎ」を「うな」と省略することは極めて日常的である。
したがって、「うなぎパイ」が「うなパイ」と略称されるであろうことは、容易に予想されることであって、そうであれば、本件商標と引用商標とは、称呼において類似していることが明らかである。
(ウ)外観類似について
本件商標及び引用商標は、ともに前半の「うなぎ」または「うな」の文字を平仮名とし、後半の「パイ」の文字を片仮名文字とする点において着想を同じくするものであるだけでなく、いずれも横長な図形中に文字部分が表されていること、図形の地色が同一であること、図形の輪郭縁取りの色が同一であること、文字部分を前段と後段に分けて異なる色で着色したことの各構成要素において一致している。
そして、本件商標上に配置された「鰻の図」及び「鰻職人の図」は、指定商品の原材料として鰻が使用されることとの関係で理解されるべきものであるから、装飾的模様ないしは背景的図柄として解することが相当である。
そうとすれば、本件商標と引用商標とは、商標を構成する文字部分において、相互に類似していることが明らかであり、前記した構成の一致点からみれば、両商標を全体的に考察した場合においても、「鰻の図」、「鰻職人の図」の有無に拘わりなく、両者が外観において類似していることは明らかというべきである。
(エ)観念類似について
本件商標からは「うなぎを用いたパイ菓子」の観念が生じ、引用商標からも同様であるから、両者は、観念において類似していることは明らかである。
(オ)出所の混同について
本件商標及び引用商標が使用される対象商品は、土産物としての「パイ菓子」であり、老若男女を問わず、あらゆる需要者層の人を購買対象者とするものであって、十分な商品知識を有する者が需要者となるものではなく、商標に対して払われる注意力も決して高いものではないから、商品名により商品選択がなされる商品であるといえる。
したがって、商標類否の判断においても、外観、称呼、観念のうち、いずれか一つが類似していれば、基本的に商標は類似していると判断されるべき商品であるといえる。
そして、引用商標が「鰻を用いたパイ菓子」に使用する商標として圧倒的な知名度を有することを勘案した場合には、需要者は、商品の購入に当って、まず「浜名湖うなパイ」と「うなぎパイ」の文字部分に着目することが容易に予測されるところである。
(カ)まとめ
以上のとおり、本件商標は、外観、称呼、観念のいずれの点においても引用商標と類似しており、これに加えて、取引の実情に基づいて総合的に考察した場合においても、引用商標と出所の誤認混同を生ずることが明らかである。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しており、その登録は無効とされるべきである。
(5)商標法第4条第1項第15号について
上記したとおり、引用商標及びパイ菓子を包装した子袋上において使用している引用商標とその右側に「鰻職人の図」を配置した構成からなる請求人使用商標(甲第5号証の1)は、いずれも、請求人の出所を示すものとして、本件商標の出願時及び登録審決時において、著名商標となっていたものであり、本件商標と引用商標及び請求人使用商標とは、相互に類似しているものであって、これらの商標は、いずれも「鰻を用いたパイ菓子」あるいは「鰻の粉末を加味してなるパイ菓子」に使用されているものであるから、実質的にみて同一の商品に使用されるものである。
そして、本件商標は、もともと請求人が考案したパイ菓子の子袋上の商標(引用商標と「鰻職人の図」とを組み合わせた商標)を模倣したものにすぎず、両者がここまで一致しているということは、被請求人において、請求人が使用している商標の模倣の意図、換言すれば、請求人の信用に只乗りせんとする明確な意図を示すものに他ならないものである。
したがって、本件商標は、引用商標との間で混同を生ずる商標であり、これと共に、請求人使用商標との間においても、商品の出所について混同を生ずることが明らかであるから、商標法第4条第1項第15号の規定に該当しており、その登録は無効とされるべきである。
(6)商標法第4条第1項第10号について
請求人が使用している引用商標と「鰻職人の図」とを組み合わせた商標は、本件商標の出願時においても、登録審決時においても、引用商標と共に、請求人の「鰻を用いたパイ菓子」を表示するものとして、需要者の間に広く認識されている商標となっていた。
本件商標は、引用商標と類似しており、これと共に、請求人使用商標とも類似している商標であって、かつ、商品「鰻を用いたパイ菓子」に使用をするものであるから、商標法第4条第1項第10号の規定に該当することが明らかであり、その登録は無効とされるべきである。
(7)商標法第4条第1項第19号について
被請求人は、平成11年11月26日付けで、請求人から本件商標の使用中止を求める警告を受けており(甲第673号証)、また、被請求人は、当該警告に対して、平成11年12月8日及び同年12月16日付けの回答書によって、本件商標の使用を中止することを約した経緯がある(甲第674号証、甲第675号証)。そして、被請求人は、請求人からの警告によって、自らが使用していた商標を別のものへと変更しており、この事実は、本件商標が引用商標と類似していることを自認していたことを示すものである。
加えて、本件商標は、前述したとおり、請求人の信用に只乗りする意図のもとで、請求人使用商標を基本的に模倣していたに他ならないものである。
そうとすれば、本件商標は、このような模倣の意図のもとに商標出願されたものであり、請求人の信用に只乗り(フリーライド)を行ない、請求人の信用を毀損し、損害を与えることを承知のうえでなされているものであり、不正の目的を伴うものであることが明らかである。
したがって、本件商標は、本件商標の出願時においても、登録審決時においても、請求人の業務に係る商品を表示するものとして日本国内における需要者の間に広く認識されていた「うなぎパイ」に使用されていた引用商標及び請求人使用商標と類似する商標であって、かつ、不正の目的をもって使用をするものであるから、商標法第4条第1項第19号に該当しており、その登録は無効とされるべきである。
(8)結論
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号、同第15号、同第10号、同第19号に違反して登録になったものであるから、同法第46条第1項第1号により、その登録は無効とされるべきである。

第4 被請求人の主張
被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とするとの審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第7号証を提出した。
(1)商標法第4条第1項第11号について
(ア)称呼について
両商標を比較すると、引用商標が「ウナギパイ」の5音であるのに対し、本件商標は「ウナパイ」の4音であり、3音目において、「ギ」の有無という差異を有し、4音と5音という比較的短い音構成においては、該差異が両称呼に与える影響は小さいものとはいえず、両者をそれぞれ称呼したときは、十分に識別し得るものである。請求人は、「ギ」の音が口を開けて発音しないために聞き取り難い音である旨主張しているが、もしそうであるとしても、そこに何らかの音が挿入されることに変わりはなく、4音と5音では発音時のリズム・長さが異なり、聴く者に与える印象は大きく異なるため、いずれにしろ両称呼は十分に識別できるものである。
また、請求人は、「うな茶」や「うな丼」の例を挙げたうえで、「『うなぎパイ』が『うなパイ』と略称されるであろうことは、容易に予想されることであって、そうであれば、本件商標と引用商標とは、称呼において類似していることが明らかである」と述べている。しかしながら、「うなぎ」と他の語が結合した場合、「うなぎ」を省略するか否か、また省略するとすればどのように略すかは一様ではない。例えば、「うなぎ蒲焼」を「うな焼き」、「うなぎ包丁」を「うな包丁」などと略すことはないし、また、「うなぎ巻き」の場合は「う巻き」と省略される。つまり「うなぎパイ」を「うなパイ」と略称することは決して一般的ではなく、「うなパイ」は、被請求人による造語であるといえ、両称呼の違いは明らかである。
仮に、請求人の主張するように、「うなぎパイ」を「うなパイ」と略称することが一般的であるというのであれば、「うなパイ」=「うなぎパイ」ということとなり、「うなパイ」は、商標としての識別力を有さない内容表示にあたるため、類否に影響を与えないものとなる。
(イ)外観について
本件商標の構成要素のうち、「浜名湖」の文字については、産地を示すに過ぎず、鰻の図形は、商品の内容表示にあたり、また、「楕円の図形」については簡単かつありふれた図形であるため、識別力は弱い。よって、本件商標の要部を挙げるとすれば、「うなパイ」の文字及び「鰻を焼く2人の人物」の図にあると思われる。
一方、引用商標は、「左側が斜めに切り取られた長円」という簡単かつありふれた図形及び内容表示にあたる「うなぎパイ」の文字のみから構成されている。よって、「鰻を焼く2人の人物」の要部を有する本件商標と引用商標とは、外観において異なり十分区別できるものであり、非類似であることは明白である。
なお、請求人は「『鰻の図』及び『鰻職人の図』は、指定商品の原材料として鰻が使用されることとの関係で理解されるべきものであるから・・・装飾的模様ないしは背景的図柄として解することが相当であり」と主張しているが、根拠に乏しく、何故、当該図柄が識別機能を発揮しないと考えるのか全く明確にされてはいない。請求人が引用した無効2000-35719号の審決(甲第660号証)においては、地模様に標章が繰り返し表示された、いわば包装紙の一部をそのまま抜き出したような商標であるから、図柄部分を「装飾的模様ないし背景的図柄」としたものであり、本件商標とは全く態様が異なっている。
(ウ)観念について
引用商標からは「鰻のパイ」という観念を生じるのに対して、本件商標からは何ら特定の観念は生じないものである。前述したとおり、「うなパイ」という言葉は造語であり、必ずしも「うなぎパイ」の略であると捉えられるとは限らないからである。
仮に、請求人の主張するように、「うなぎパイ」を「うなパイ」と略称することが一般的であり、直ちに「鰻のパイ」という観念を想起させるというのであれば、「うなパイ」は、商標としての識別力を有さない内容表示にあたるため、商標の類否に影響を与えないものとなる。
請求人は、引用商標の著名性について種々述べた上で、需要者が本件商標に接した際には、「浜名湖うなパイ」の文字部分に着目することが予測できるとしたうえで、混同のおそれがあると述べている。しかしながら、上述したように、称呼・外観・観念において異なる以上、両商標は、非類似であり、需要者をして出所の混同を惹き起こすものではない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号には該当しない。
(エ)商標法第3条第2項適用商標について
被請求人としては、引用商標が商標法第3条第2項の適用を受け登録されたものであるという事実が重要であると考える。同法第3条第2項は、同法第3条第1項第3号ないし同第5号に該当する場合であっても、使用により識別力を獲得した商標について登録を認めるという趣旨である。つまり、本来は、引用商標を構成する「うなぎパイ」の文字も「左側が斜めに切り取られた長円」の図形も、ともに単独では識別力を有するものではなく、文字と図形が結合した状態で初めて、使用により獲得した識別力を有するものだと認識しなければならない。
ちなみに、請求人の出願より半年ほど前の昭和60年6月17日には、第三者により出願された、指定商品を「うなぎを加味したパイ」とする商標「白秋の柳川うなぎパイ」(乙第1号証)が公告となっている。当時、「うなぎパイ」の文字が請求人の商品を示すものとして周知性、特別顕著性を有していたならば、当該出願は拒絶されたはずである。このことからも「うなぎパイ」という文字部分のみからは何ら識別力を生じないとの認識のもと、引用商標が登録となったことが推察できる。
よって、「うなぎパイ」という文字部分のみから生じる称呼や観念をもって、本件商標と比較し、類否を判断することは、ほとんど意味をなさない。 もし、これが許されるとしたならば、「うなぎを原料に使用したパイ」という内容の表示にあたる「うなぎパイ」やそれに類する表示が含まれるいかなる後願をも排除することとなり、同法第3条第2項及び商標法の本来の趣旨を大きく逸脱するものであるからである。
つまり、仮に、引用商標の「うなぎパイ」の文字部分のみから生ずる称呼・観念において、引用商標と本件商標とが類似しているとしても、この事実をもって、商標法第4条第1項第11号類否判断に影響を与えるものではないと考える。
(2)商標法第4条第1項第15号について
請求人は、請求人使用商標を菓子の包装用子袋上に表示しているため、需要者の目に触れており、引用商標と同程度に周知であると主張している。
しかしながら、実際の子袋における使用態様は、色彩が付されており、目を引く引用商標の右横の透明部分に、「鰻職人の図」を、背景を入れずに配したものとなっている。甲第660号証の無効2000-35719号審決からすると、まさに、この「鰻職人の図」こそが「装飾的模様ないし背景的図柄」であると考えられる。よって、「鰻職人の図」自体が商品識別の機能を発揮し得るとはいい難く、請求人使用商標に接する需要者は、その構成にあって着色された「左側が斜めに切り取られた長円」内に整然と収まっている「うなぎパイ」の文字に着目すると考えられる。
一方、本件商標は、中央がやや膨らんだ楕円の上に「浜名湖うなパイ」の文字と「鰻の図」、「鰻を焼く二人の人物」を配した構成となっている。つまり、楕円の図形と他の各要素との間にスペースが無く重なっているため、それぞれ切り離されることなく一体として看取されるものである。
このことから考えると、両商標には、鰻の図柄の有無、人物の図柄の有無、「浜松」の文字の有無、長円・楕円の切れ込みの有無、「うなパイ」と「うなぎパイ」の文字の違いという明らかな差異があるため、両商標は、非類似であり、需要者に混同を惹き起こすおそれはない。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号には該当しないものである。
また、食品の商標やパッケージのデザインにおいて、その食品の製造される土地ならでは古い時代の人物、または、食品の製造に関わる古い時代の人物の絵を配することは、比較的よく用いられる手法であり、請求人独自のものであるとはいい難い(乙第2号証ないし乙第7号証)。
よって、両商標が静岡県の特産である鰻に関わる人物を配しているという事実をもって、引用商標を模倣したものと断定されることは甚だ心外である。
(3)商標法第4条第1項第10号について
上記のとおり、請求人の商標として著名となっているのは、「左側が斜めに切り取られた長円」及び「うなぎパイ」の文字からなる引用商標の部分である。
一方、本件商標は、すべての要素を一体として看取されるものである。
してみれば、両商標は、鰻の図柄の有無、人物の図柄の有無、「浜名湖」の文字の有無、長円・楕円の切り欠けの有無、「うなパイ」と「うなぎパイ」の文字の違いにより、明らかに非類似である。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当するものではない。
(4)商標法第4条第1項第19号について
上記のとおり、本件商標と引用商標及び請求人使用商標とは、明らかに非類似であるといえる。
また、請求人からの警告によって被請求人が本件商標の使用を一時中断したのは、両商標が類似していることを認めたためではなく、商標登録という正当権原を得ることが先決であると考えたためである。つまり、商標という知的財産の重要性をより尊重したための中断であり、不正の目的によるものではない。請求人の主張は、商標登録という行政庁による正式な決定が下された後の使用に対して、明確な根拠もなく不正の目的という汚名をかぶせるものであり、認められるものではない。
以上より、本件商標は、商標法第4条第1項第19号には該当しない。
(5)結論
以上に述べたとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第10号、同第11号、同第15号及び同第19号のいずれにも該当するものではない。

第5 当審の判断
商標の類否は、対比される両商標が同一又は類似の商品に使用された場合に、商品の出所について誤認混同を生ずるおそれがあるか否かによって決すべきものであり、その類否判断を行うに当たっては、当該商品の具体的な取引状況に基づき、両商標の外観、観念、称呼を観察し、それらが取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すべきものである。以下、この点を踏まえて検討する。
(1)本件商標について
本件商標は、別掲(1)に示すとおり、横長の楕円図形中に「浜名湖うなパイ」の文字を書し、楕円図形の左端部分には、鰻の図形をその一部が該楕円図形にかかるように配し、楕円図形の右端部分には、鰻職人の図形をその一部が該楕円図形にかかるように配した構成からなるものである。これを仔細にみれば、楕円図形は、地色を赤色とし、輪郭部分を黄色で縁取りしてなるものであり、「鰻の図」及び「一人が鰻を篭から取り出し、もう一人が鰻を焼いている二人の鰻職人の図」はいずれも黒色で描かれている。そして、「浜名湖うなパイ」の文字は「うなパイ」の部分が「浜名湖」より大きく表わされており、「浜名湖うな」の部分は黒色、「パイ」の部分は黄色で表されているものである。
しかして、本件商標の構成中の楕円図形、鰻の図及び鰻職人の図は、いずれも装飾的模様ないしは背景的図柄というべきものであって、それら自体が単独で商品識別の機能を発揮し得るものとはいい難く、また、そのように捉えることに特段の不都合も見出せないから、これに接する取引者・需要者は、その構成にあって着色された楕円図形内に整然と収まっていて、それ自体が顕著であり、かつ、親しみ易く馴染み易い「浜名湖うなパイ」の文字部分に着目するとともに、同文字部分を商品識別の標識と捉え、これら文字部分に相応して生ずる称呼、観念をもって取引に当たるとみるのが取引の経験則に照らし相当である。
ところで、該文字構成中の「浜名湖」の文字(語)は、鰻の産地・販売地として知られているばかりでなく、著名な観光地としても知られているものであるから、それ自体が単独で商品識別の機能を果たし得るものとはいえない。
そうすると、本件商標は、「浜名湖」の文字部分を除いた文字部分、すなわち、「うなパイ」の文字部分に相応して、単に「ウナパイ」の称呼をも生ずるものであり、また、一般に、「うなぎ(鰻)」が「うな(ウナ)」と略称され、相互に互換性を有する語であることは顕著な事実であるから(たとえば、岩波書店発行広辞苑「うな」の項より。)、本件商標からは「鰻を用いたパイ(菓子)」の観念を生ずるものといわなければならない。

(2)引用商標について
(ア)引用商標の構成について
引用商標は、別掲(2)に示すとおり、その外周を細幅の黄色線で囲み、そのさらに外側を細幅の白色の間隙をおいて黒色の細線で囲んだ赤色の横長半楕円状図形(横長楕円の左辺上部から同下部に向けて左方に傾斜するようにやや鋭角に切り欠いた形状の図形)内に、黒色の「うなぎ」及び黄色の「パイ」の各文字を同じ大きさで、かつ、等間隔に横書きに表してなるものである。
しかして、引用商標がその指定商品とする「うなぎの粉末を加味してなるパイ菓子」について、商標法第3条第2項の適用を受け、いわゆる「使用による特別顕著性」を具有するもの、すなわち、特定の商品に使用された結果、需要者が何人かの業務に係る商品であるかを認識することができるに至ったものとして商標登録された(平成8年10月3日登録査定)ことは前記に述べたとおりである。
(イ)引用商標の著名性について
引用商標の周知の状況及びこれに関連する請求人業務の趨勢ないし関連事情について、請求人より提出された甲各号証によれば、以下の各点が認められる。
(a)請求人会社は、昭和36年に「うなぎを用いたパイ菓子」(以下、「請求人商品」という。)を開発し、これを「うなぎパイ」と名付けて製造販売を開始し、以降現在まで継続して製造販売してきたこと、最近における請求人商品の年間売上高は、平成7年度では43億円であったものが平成16年度には60億円を超える額に達していること(甲第13号証)
(b)請求人の使用に係る商標は、実際のパイ菓子の子袋上においては、引用商標の右隣に鰻職人の図を配した態様で表示されており(甲第5号証の1)、このパイ菓子を1本ずつ子袋に包装したものを箱詰めして販売されていること(甲第5号証の2)、また、請求人は、上記以外にも、「うなぎパイ(ナッツ入り)」(甲第6号証)、「うなぎパイ(VSOP)」(甲第7号証)、「うなぎパイ(ミニ)」(甲第8号証)を販売していること、そして、請求人は、営業標識でもあり商品標識でもある「春華堂」の文字と「うなぎパイ」の各文字を九区画に仕切った格子様図形内にそれぞれ配置した商標(甲第9号証等)(以下「格子様商標」という。)やいわゆる隅立角様図形を背景とした横長矩形内に「うなぎパイ」の文字を表した商標等も使用しており、これらの商標を個別包装又は包装紙、手提げ袋、包装箱等に表示して継続使用するとともに、これらに共通する「うなぎパイ」の文字のみを横書きしてなる商標(以下「文字商標」という。)を会社案内、パンフレットや店頭広告等に表示して使用していること(甲第5号証ないし甲第12号証、甲第15号証ないし甲第21号証、甲第43号証ないし甲第46号証)
(c)請求人商品については、1978年(昭和53年)から2006年(平成18年)にかけて、書籍「ふるさとの味 特選257」、書籍「全国うまいもの探訪 銘品250選」等々の書籍をはじめ、静岡新聞、中部経済新聞、日本経済新聞、毎日新聞等々の新聞、テレビ朝日系列、読売テレビ系列、フジテレビ系列、日本テレビ系列、テレビ東京系列、静岡朝日テレビ、名古屋テレビ、毎日放送、東海テレビ等々のテレビ放送において、盛んに紹介・報道されていたこと(甲第22号証ないし甲第42号証)
(d)請求人商品については、1996年(平成8年)から2005年(平成17年)にかけて静岡朝日テレビ、静岡放送、静岡第一テレビ、山梨放送、東海テレビ、テレビ静岡等により、これら地域一帯において頻繁にスポットCMが流され、宣伝されたこと(甲第47号証ないし甲第50号証)
(e)請求人商品については、1985年(昭和60年)から2006年(平成18年)にかけて、文字商標または引用商標ないしは格子様商標のもとに、毎日新聞・遠州版をはじめ、読売新聞、デイリースポーツ、中日新聞、静岡新聞等々の新聞、各種旅行雑誌、趣味の雑誌、更に、営業車上での表示、野立て看板、インターネット上のホームページ等において反復して広告掲載されていたこと(甲第51号証ないし甲第658号証)
(f)このような状況にあって、請求人は、引用商標について商標登録出願を行い(昭和61年1月17日)、同出願は、商標法第3条第2項(使用による特別顕著性)の適用により、商標登録を受けたこと(平成8年10月3日登録査定)、また、請求人は、このほか、関連する前記文字商標(登録第4436728号、登録第4436729号、登録第4436730号)について、引用商標と同様に商標法第3条第2項の適用により商標登録を受けていること
(g)請求人に係る「うなぎを用いたパイ菓子」に関し、同業他社によるいわゆる類似品の製造・販売が行われてきたこと、また、当該使用に係る商標を巡って、請求人との間で問題を生じていたこと(被請求人との間における紛争は甲第672号証ないし甲第675号証のとおり)、そして、これらの事情については、平成11年(ヨ)第16号商標権に基づく商標使用差止等仮処分申請事件(以下「関連事件」という。)による仮処分決定(静岡地方裁判所浜松支部)の存在及びその内容よりして、その状況が十分に窺われること(甲第671号証)
(h)以上の(a)ないし(g)の各認定によれば、いわゆる「うなぎを用いたパイ菓子」を開発・製造・販売(昭和36年)したのは請求人が最初であって、そのやや奇抜ともいえる新趣向とも相俟って、請求人商品は、各種広告用印刷物の継続的頒布活動、各種新聞・テレビ等のメディアによる広告・宣伝活動、さらには各種雑誌等による紹介記事又は広告掲載等により、引用商標の商標登録時(平成8年10月3日登録査定)はもとよりのこと、本件商標に係る拒絶査定不服審判事件の審決時(平成17年7月29日)を含む現在に至るまでの間も引き続き需要者一般に広く親しまれていることが認められる。
また、これに使用されている引用商標は、当初より現在に至るまでの間一貫して請求人商品を表示する商標の一つとして使用されてきたものであって、前記頒布活動、広告活動、販売活動を通じて宣伝された結果、本件商標の登録出願時(平成11年6月16日)は勿論のこと現在に至るまでの間、東海地方はもとより全国的に需要者一般に広く認識せられるに至ったいわゆる周知・著名商標と認め得るものである。
そして、引用商標中の「うなぎパイ」の文字は、中央部に大きく横書きに表されており、背景の色彩こそ赤、黄及び白が組み合わされていて、それ自体看者の注意を惹く部分であるとしても、これら色彩は何ら具体的な観念を表現するものでなく、また、外輪郭図形(横長半楕円状図形)もありふれた形状といえるものであって、取引者・需要者の注意を殊更惹くものでないこと等の点を併せ考慮すれば、これに接する取引者・需要者は、その構成にあって親しみ易く馴染み易い文字部分というべき「うなぎパイ」の文字部分を自他商品の識別標識と捉え、これより生ずる「ウナギパイ」(うなぎ(鰻)パイ)の称呼、観念をもって取引に資する場合も決して少なくないものといわなければならない。
したがって、引用商標ないしその主要部である「うなぎパイ」の文字は、請求人商品を表彰するもの、すなわち、自他商品の識別標識として実質的に機能するものというべきであるから、結局、引用商標からは、その全体から受ける外観・印象とともに、「ウナギパイ」(うなぎ(鰻)パイ)の称呼、観念も生ずるものといわなければならない。そして、ほかに、この認定を左右するに足りる証拠はない。

(3)本件商標と引用商標との類否について
そこで、本件商標と引用商標との類否について判断するに、先ず、両者の称呼・観念の点についてみるに、引用商標からは、「鰻を用いたパイ(菓子)」の観念並びに「ウナギパイ」の称呼を生ずるのに対し、本件商標からは、上記したとおり、「うなぎ(鰻)」が「うな(ウナ)」と略称され、相互に互換性を有する語であることは顕著な事実であるから、これより「鰻を用いたパイ(菓子)」の観念並びに「ウナパイ」の称呼を生ずるものである。
そうすると、両商標は、「鰻を用いたパイ(菓子)」の観念を同じくする点においてすでに紛らわしく、また、称呼(「ウナギパイ」と「ウナパイ」)の点においても、冒頭及び末尾の各2音を共通にする上、前記した同義語的・互換的要因とも相俟って相互に近似した印象を与えるものである。しかも、外観においても、両者はともに、前半の「うなぎ」または「うな」の文字を黒色で表した平仮名とし、後半の「パイ」の文字を黄色で表した片仮名文字とする点において着想を同じくするばかりでなく、背景的図柄といえる横長楕円状図形も地色が同一であり、その輪郭縁取り部分の色も同一であるから、両商標のそれぞれに時と処を異にして離隔的に接した場合、需要者は、全体の記憶・印象において彼此紛れるおそれが少なからずあるものといわなければならない。
加えて、パイ菓子の取引事情についてみるに、一般に、菓子類の需要者は、専門業者のみでなく、老若男女を問わず極めて広範な消費者を対象に流通するものであり、単価もさほど高価なものでなく一般に親しまれ易いこと、また、そうとすれば、需要者一般の当該使用に係る商標に対して払われる注意力の度合いは決して高くないという取引状況並びに前記認定の引用商標または請求人使用商標が著名なものとなっていること等の点を併せ考慮すれば、両商標間の誤認混同の可能性はより大きいとみるのが取引の経験則に照らし相当である。
さらに、両商標に係る指定商品は、その実質において全く同一といえるものであることは、それぞれの指定商品の記載より明らかであって、特定の商品間ないしは極めて狭い範囲の取引分野に関わるものであるという個別的・特殊事情を有するものと認められる。
してみれば、本件商標と引用商標とは、その観念、称呼及び外観の各点を検討し、かつ、取引者・需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察した場合、両者は、その商品の出所について誤認混同を生ずるおそれがあるというべきであるから、結局、両商標は、その出所について紛れるおそれのある互いに類似の商標と判断するのが取引の実情に照らし相当である。
したがって、本件商標は、引用商標と類似のものというべきであり、その登録は、商標法第4条第1項第11号に違反してされたものといわなければならない。

(4)被請求人の主な主張について
(ア)被請求人は、称呼の点について、両商標には「ギ」の音の有無という差異を有し、比較的短い音構成における該差異が両称呼に与える影響は小さいものとはいえず、両者をそれぞれ称呼したときは、十分に識別し得るものである旨主張している。
しかしながら、上記したとおり、この両称呼は、冒頭及び末尾の各2音を共通にする上、同義語的・互換的要因とも相俟って相互に近似した印象を与えるばかりでなく、商標の類否は、その外観及び観念等をも含めて、取引者・需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察して、商品の出所について誤認混同を生ずるおそれがあるか否かにより判断すべきものである。
(イ)被請求人は、外観の点について、本件商標の要部は「うなパイ」の文字と「鰻を焼く2人の人物」の図にあるのに対して、引用商標は簡単かつありふれた図形と内容表示にあたる「うなぎパイ」の文字から構成されているものであるから、両者は、外観において十分区別できるものである旨主張している。
しかしながら、本件商標にあって、楕円図形の中央部に、大きく横書きに表された「うなパイ」の文字部分は、それ自体が自他商品の識別標識(商標)との認識を容易に需要者に抱かしめるべく顕著に表現されてなるものであり、引用商標も同様に「うなぎパイ」の文字部分が実質的に商品識別の機能を果たすものというべき主要な取引指標であって、しかも、両者はいずれも「鰻を用いたパイ(菓子)」という特定商品間ないしは極めて狭い範囲の取引分野に関わるものという個別的・特殊事情下にあること前記認定のとおりであるから、これら取引の実情その他の点を総合判断の上、本件商標と引用商標とを類似のものとした前記認定は相当というべきであって、この点を述べる被請求人の主張は妥当でなく、採用の限りでない。
(ウ)被請求人は、観念の点について、引用商標からは「鰻のパイ」という観念を生じるのに対して、本件商標からは何ら特定の観念は生じない旨主張している。
しかしながら、上記したとおり、「うなぎ(鰻)」が「うな(ウナ)」と略称され、相互に互換性を有する語であることは顕著な事実であるから、本件商標からは「鰻を用いたパイ(菓子)」の観念を生じ、引用商標からも「鰻を用いたパイ(菓子)」の観念を生ずるものといわなければならない。
(エ)被請求人は、商標法第3条第2項の適用により登録を受けた商標権の効力に言及して、引用商標は文字部分と図形部分とが結合した状態ではじめて使用により獲得した識別力を有するものであるから、引用商標における「うなぎパイ」の文字部分のみから生ずる称呼・観念において引用商標と本件商標とが類似しているとしても、この事実をもって、商標法第4条第1項第11号類否判断に影響を与えるものではない旨主張している。
しかしながら、商標法第3条第2項についての一般論はさて措いて、本件事案は、当該商品の創案・製造に最初から関わってきた請求人がその商品について当初から一貫して使用し、既に著名性を獲得するに至った引用商標(「うなぎパイ」の文字部分についても識別標識としての機能を発揮しているものと認められる。)との誤認混同の有無又はその類否判断を特定商品間ないしは極めて狭い範囲の取引分野に限定して具体的に判定するという個別的・特殊事情を有するものであるから、両商標間の誤認混同の有無又はその類否判断をそれら個別的事情をも併せ考慮の上、取引の実情に照らし総合判断した前記認定は相当というべきであって、これら個別的事情を無視して述べる被請求人の主張は妥当でなく、採用の限りでない。
(オ)してみれば、被請求人の主張は、いずれも採用できない。

(5)結語
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号に違反してされたものと認められるから、請求人の主張するその余の無効理由について論ずるまでもなく、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすべきである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲
(1)本件商標(色彩については原本を参照)


(2)引用商標(色彩については原本を参照)



審理終結日 2008-07-03 
結審通知日 2008-07-09 
審決日 2008-07-25 
出願番号 商願平11-53421 
審決分類 T 1 11・ 263- Z (Z30)
T 1 11・ 261- Z (Z30)
T 1 11・ 262- Z (Z30)
最終処分 成立 
前審関与審査官 内山 進小畑 恵一 
特許庁審判長 渡邉 健司
特許庁審判官 酒井 福造
鈴木 修
登録日 2005-10-07 
登録番号 商標登録第4898886号(T4898886) 
商標の称呼 ハマナコウナパイ、ハマナコ、ウナパイ、ウナ 
代理人 井澤 洵 
代理人 井澤 幹 
代理人 水谷 直樹 
代理人 中山 清 
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