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審決分類 審判 査定不服 商4条1項16号品質の誤認 登録しない Y38
審判 査定不服 商3条1項3号 産地、販売地、品質、原材料など 登録しない Y38
管理番号 1184505 
審判番号 不服2006-22726 
総通号数 106 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2008-10-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-10-06 
確定日 2008-09-01 
事件の表示 商願2006-57706拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 第1 本願商標
本願商標は、「e-帳票FAXサービス」の文字を横書きした構成よりなり、第38類「電気通信(放送を除く。),ボイスメール通信,電子メール通信,電子掲示板通信,電気通信に関する情報の提供,電子計算機端末による通信ネットワークへの接続の提供」を指定役務とし、平成16年11月24日に登録出願された商願2004-107315に係る商標法第10条第1項の規定による商標登録出願として、同17年8月8日に登録出願された、商願2005-73893をもとの商標登録出願とし、さらに、商標法第10条第1項の規定による商標登録出願として、同18年6月21日に登録出願されたものである。

第2 原査定の拒絶の理由の要旨
原査定は、「本願商標は、『e-帳票FAXサービス』の文字よりなるところ、『e-』の文字部分は『電子の、インターネットの』等の意味を有し、『帳票』の文字部分は『帳簿・伝票類などの総称』を意味するものとして、いずれも一般に親しまれている文字であるので、これよりは『電子帳票のファクシミリサービス』程の意味合いを認識するに止まるというのが相当であるから、これをその指定役務中『ファクシミリによる通信』に使用するときは役務の質、内容を普通に用いられる方法で表してなるにすぎないものと認める。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、前記役務以外の役務に使用するときは、役務の質の誤認を生じさせるおそれがあるので、同法第4条第1項第16号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

第3 当審における証拠調べ通知
本願商標を構成する「e-帳票FAXサービス」の語が、役務の質を表すものとして使用されている事実について、証拠調べを行ったところ、以下の事実を発見したので、商標法第56条第1項で準用する特許法第150条第5項の規定により、請求人に対し、期間を指定して意見を述べる機会を与えて通知した。
1 「e-」及び「e」の語について
(1)「コンサイスカタカナ語辞典 第3版(2005年10月20日 株式会社三省堂発行)」には、「e-〔electronic〕名詞の前に付けて『電子の、インターネットの』の意を表す。特に、インターネットなどコンピューター・ネットワークを媒体とするものであることを表す。E-とも。」との記載及び、これに続けて「電子商取引」の意で「e-コマース」、「電子調達」の意で「e-プロキュアメント」、「インターネットを利用した政治活動」の意で「e-ポリティックス」、「電子マネー」の意で「e-マネー」、「ネットワークを活用した教育や研修」の意で「e-ラーニング」との記載がある。
(2)平成17年4月1日に施行された「民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律」と「同法施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」とをあわせて「e文書法(電子文書法)」と総称され、これらの法律は、民間企業において書面(紙)での保存が義務付けられている財務や税務関連の書類・帳票等を、電子データとして保存することを認め、民間企業の事務の効率化、文書保存コスト削減を目的とし、政府が発表した「e-Japan戦略II加速化パッケージ」の重点分野の一つにもなっている。本政策により、企業で保管が義務づけられている財務・税務関連の文書や帳票類の電子化が今後さらに促進されることが見込まれているところである。
2 「電子帳票」の語について
(1)株式会社三菱電機ビジネスシステムのホームページの製品紹介(ソフトウエア)において、「電子帳票システム/e-image」の見出しのもと、「電子帳票化すると、こんなに変わる!/電子帳票システムは、基幹業務アプリケーションから印刷されるデータを取得し、帳票イメージと印刷データを電子媒体に保管するシステムです。」との記載がある。
(http://www.melb.co.jp/p_global/e-image/i-index.htm)
(2)ベル・データ株式会社(BELL DATA, Inc.)のホームページの製品紹介(ソフトウエア)において、「電子帳票システムPandora-AXは、メインフレームや各種サーバーの出力帳票を電子化してサーバーに保管し、それをパソコンで利用することでペーパレスを実現するシステムです。」との記載がある。
(http://www.belldata.com/ps/software/pandora/index.html)
(3)株式会社NEC情報システムズのホームページの製品紹介(ソフトウエア)において、「電子帳票システム/PIFVIEWER/紙帳票から電子帳票へ」の説明として「膨大な量の帳票書類を電子化することにより、業務の効率化、管理の簡素化、経費削減等、TCO削減に貢献します。」との記載がある。
(http://www.nec-nis.co.jp/pif-viewer/)
(4)2007年10月24日付け日刊工業新聞の11頁には、「NEC、帳票作成・管理支援するミドルウエアの最新版発売」の見出しの下に「帳票の設計から印刷、印刷管理、電子帳票作成までを支援する帳票システム。…電子帳票ファイルの高速検索機能により、電子帳票の統合管理や長期保存など内部統制強化を実現する。」との記載がある。
(5)2007年9月4日付け日刊工業新聞の11頁には、「ミツイワ、中堅企業向けERPを強化-ウェブ対応製品投入」の見出しの下に「アクセスログ管理やアクセス制御機能に加え、電子帳票機能も装備。これらを活用することで情報漏えいを未然に防ぐとともに、内部統制に対応した業務フローワークの構築を実現する。」との記載がある。
(6)2007年4月16日付け日本食糧新聞には、「新生日本アクセス特集:情報・機能戦略=基幹システム」の見出しの下に「…業務・会計システムに自動連結するとともに、経営情報システムに日々実績データを提供している。帳票イメージを画面から閲覧する電子帳票システムの活用も進んでいる。各々のシステムは、その特性に合わせて、集中処理、分散処理、外部サービスを活用するなど、最適な処理形態を組み合わせながら、相互に連携している。」との記載がある。
(7)2007年4月10日付け日刊工業新聞の11頁には、「野村総研、閲覧性を向上させたドキュメント管理ソフト発売」の見出しの下に「新管理ソフト…は、既存の電子帳票ソフト…と文書管理を行う…のコア機能を統合。これまで専用ソフトを用いなければ読めなかった文書データがインターネット閲覧ソフトで読むことが可能になり、汎用性の向上を実現した。」との記載がある。
(8)2007年4月2日付け日刊工業新聞の27頁には、「AIT、承認・決裁まで電子化する金融機関向けソリューション開発」の見出しの下に「企業が導入済みの電子帳票システムに、承認・決裁の仕組みを構築するワークフローシステムを追加する。日本版SOX法(内部統制報告制度)や個人情報保護法に対応し、内部統制を厳格化したい企業へ売り込む。」との記載がある。
(9)2007年2月28日付け日刊工業新聞の9頁には、「JDL、税理士向けノートパソコン発売-会計事務所の実務搭載」の見出しの下に「日本デジタル研究所(JDL)は…、実務の大半をペーパーレスとする電子帳票管理システムや、インターネット会計にも対応する。」との記載がある。
(10)2006年11月29日付け毎日新聞三重版の21頁には、「ベンチャー総合補助金:対象決まる」の見出しの下に「ウィズダムウェブは、試験問題やアンケート用紙、請求書など紙に書かれたものをスキャナーで取り込み、パソコンの画面上で回答などを入力できる『電子帳票』技術を開発。普段使用している紙の帳票を扱う感覚で帳票管理ができ、コスト削減にもつながるという。」との記載がある。
(11)2006年11月28日付け読売新聞中部朝刊の33頁には、「ベンチャー補助金 交付3社決まる 県産業支援センター募集=三重」の見出しの下に「…同社は、領収書や請求書、アンケート用紙、テスト問題など様々な『表』をスキャナーで取り込み、パソコン上で入力できる『電子帳票』技術を開発した。インターネット上で各種のデータを簡単に管理でき、必要経費の大幅な削減を実現した。」との記載がある。
(12)2006年9月29日付け日刊工業新聞の10頁には、「NECなど、帳票管理業務を支援する帳票印刷ミドルウエアを発売」の見出しの下に「企業活動では見積書や請求書、納品書など多様な帳票類が処理されており、同ソフトにより管理業務を軽減できる。05年4月にe-文書法が施行されたのに伴い、電子帳票に関するニーズも高まっていると判断、製品化した。」との記載がある。
(13)2006年8月29日付け日刊工業新聞の9頁には、「三菱電、酒類販売の自由化に対応した業務支援システムの最新版を発売」の見出しの下に「…はウェブ受注データの取り込み機能や電子帳票連携機能など、外部連携機能を拡充した。」との記載がある。
(14)2006年8月18日付け日刊工業新聞の8頁には、「キヤノン、帳票出力でウェブメソッドと協業」の見出しの下に「両社の連携ソリューションは、データの受け渡しから帳票作成・出力、電子帳票化までの一連の流れを包括的にサポートする。」との記載がある。
(15)2006年8月11日付け日刊工業新聞の12頁には、「AIT、電子帳票システムソリューション強化」の見出しの下に「AITは拡販中の電子帳票システムにWFを組み合わせられるパッケージモデルを構築し、顧客に積極提案する。」及び「AITはJFEシステムズ製の電子帳票システム…の販売に力を入れている。…」との記載がある。
(16)2006年3月2日付け日刊工業新聞の8頁には、「自動車リサイクル、日立がシステム開発-専門化し超短納期で実現」の見出しの下に「自動車資源有効利用促進法…を円滑に処理するには料金や登録車すべてを管理するデータベース(DB)を持ち、産廃処理の際には電子帳票(マニフェスト)を発行する必要がある。」との記載がある。
(17)2006年1月31日付け日刊工業新聞の11頁には、「IBM、ワークプレース製品群の最新版を投入-脱MSの新選択肢に」の見出しの下に「コラボレーション(協働)機能の強化に加え、カスタマイズ(個別対応)が自在な次世代の電子帳票や開発ツールなどを拡充した。」との記載がある。
(18)2005年12月28日付け日刊工業新聞の7頁には、「AIT、電子帳票と決裁・承認プロセスを連携したシステム発売」の見出しの下に「メタソフトは自社開発のワークフローソフトのソースコードを開示し、AITはJFEシステムズが開発した電子帳票システム『ファイブリッジII』のAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)を利用して連携させる。電子帳票とワークフローを組み合わせることで、企業内の原本保存などを含む文書管理と決裁・承認プロセスを一貫して記録できるソリューションを実現する。」との記載がある。
(19)2005年11月16日付け日刊工業新聞の17頁には、「マイクロアーツ、建築CAD図面を瞬時にPDF化するソフトを発売」の見出しの下に「これまで建築CADで作成した図面はWeb公開や、電子納品などではPDFに変換して行っていた。変換には1枚ずつ時間をかけなければならず、大量電子帳票時代に大きな問題になっていた。新開発したソフトはPDFに瞬時に変換するだけでなく、マルチページ機能、レイヤー機能、ファイル添付機能、しおり機能、セキュリティー機能などが付加されている。」との記載がある。
(20)2004年11月2日付け日刊工業新聞の24頁には、「富士通研、カラー紙帳票を電子的に復元する技術を開発」の見出しの下に「カラー紙帳票と同一のレイアウトと色合いを持つ電子帳票の設計時間を6分の1に短縮できるという。新技術は電子カラー帳票への変換設計作業を効率化して電子帳票システム構築を容易にする。」との記載がある。
(21)2001年11月9日付け日刊工業新聞の8頁には、「富士通、運用管理ソフト製品群の最新版発売」の見出しの下に「富士通は、運用管理ソフト製品群の最新版『システムウォーカーV10』を発売した。…適用対象分野を拡大してブロードバンド環境に対応する。…またe-Japan構想に向けて、アプリケーションを変更せずに既存帳票類を電子化してウェブ対応とするほか、各種形式の帳票を一元管理する。」との記載がある。
(22)2000年1月6日付け日刊工業新聞の1頁には、「大日印、加・ジェットフォームとネット対応経営支援事業で提携。帳票管理を電子化」の見出しの下に、「大日本印刷とカナダ・ジェットフォーム社(本社オタワ)の日本法人は電子帳票を中心とする企業向け業務改革支援事業で提携した。大日本の帳票制作ノウハウとジェットフォーム社の電子帳票作成ツールを組み合わせることで、ネットワーク時代に対応したワークフローシステム構築を進めるのが狙い。…インターネットの普及を背景に、企業内では伝票や申請書類など帳票類の電子化が進んでいる。今回の提携により、両社は企業に対して帳票類の電子化からデータのやり取り、文書管理まで一連の業務をウェブ上で処理できるソリューションシステムを売り込む。」との記載がある。
(23)1999年10月20日の日刊工業新聞の11頁には、「NEC、帳票データ連携ソフトを開発-汎用コンピューターとパソコンサーバ活用」の見出しの下に、「NECは、基幹システムである汎用コンピューターと、オープンシステムであるパソコンサーバで帳票データ連携を実現できるソフトを商品化した。インターネット時代の本格到来でサーバ連携へのニーズが高まっているが、これに対応したのがポイント。…これまで帳票データは、プリンターに出力していたが、これを自動的にパソコンサーバの電子帳票管理フォルダーに格納。これにより汎用コンピューターの帳票データは、パソコンサーバでモニター表示したり、自由に検索したりできるようになり、印刷物の保管や帳票の経費など管理コストの大幅削減を実現できる。」との記載がある。
(24)1996年6月7日付け化学工業日報の9頁には、「日立製作所、統合型グループウエアを販売、ネットワーク対応を強化」の見出しの下に「日立製作所は六日、統合型グループウエア『グループマックス』のインターネット、イントラネット対応を強化し、すべての機能をwww(ワールド・ワイド・ウェブ)ブラウザ環境から利用可能とした『グループマックス・バージョン2』を製品化、十日から販売を開始すると発表した。新製品は、wwwブラウザがあれば、インターネットを利用してどこからでも電子メール/電子掲示板、文書管理、電子帳票、スケジュール管理、ワークフローなど、グループマックスのすべての機能を利用可能としている。」との記載がある。
3 電子化した帳票データをFAXにより提供するサービスについて
(1)2005年10月27日付日本証券新聞の3面には「JFEシステムズ・電子帳票分野で新展開」の見出しの下に「JFEシステムズ(4832・2部・一株)は蝶理情報システム(非上場)と電子帳票分野で連携、電子化帳票の自動FAXソリューションを11月から展開する。…JFEシステムズの電子帳票システム『FiBridgeII』と蝶理情報システムの『ライトニングFAX』は帳票の一元管理とFAX自動印刷による連携でこれらの問題を解決。基幹システムの帳票などを大量に自動でFAXできるほか、送信帳票に関する送信先からの問い合わせには「FiBridgeII」に保存した同一帳票のデータを容易に検索し対応することができる。」との記載がある。
(2)カシオ計算機株式会社のホームページのソリューション紹介の「帳票FAX自動送信ソリューション」において「ソリューション概要 ホストの当日分帳票データを、帳票作成・運用ツールである<FORMG REX>で設計した各種帳票と連動させ、FAX送受信ツールである<FAX STAGE>で自動的に取引先へFAXで配信することができます。」との記載がある。
(http://casio.jp/ppr/products/solution/autofax.html)
(3)株式会社グローイングコンサルタントのホームページの「FAX一斉同報サービス&高機能メッセージングサービス」の「帳票ファックス」の項に「帳票テキストデータをお送りいただくだけで、ご指定のレイアウトで帳票を自動作成し、ご指定の宛先に送信するサービスです。ファックス情報配信に関する時間的・人的負担を大幅に低減でき、貴社のビジネスの効率化に大きく貢献します。」との記載がある。
(http://www.grow-ing.co.jp/faxdoho/tran_01.htm)
4 「帳票FAX」又は「帳票ファックス」の語について
(1)エクスパダイト株式会社のホームページには「サービス紹介- 帳票FAX」の項があり「各種ビジネス帳票の発信業務の効率アップとコスト削減を実現。帳票ファックスはエクスパダイトのシステムに事前に登録された帳票フォーマットに対して、宛先によって異なる内容のデータをご送信頂くことにより、帳票を生成し、一斉にファックス送信するASPサービスです。」との記載がある。
(http://sup-web.xpedite.co.jp/services/trx.html)
(2)「キヤノンソフト情報システム株式会社」と「ウイングアーク テクノロジーズ株式会社」との共有のホームページには「帳票FAX自動送信(ライトニングFAX×SVF)」の項があり「帳票を作成し、取引先にFAXデータを自動送信します。」との記載がある。
(http://www.wingarc.com/iwld/cjs/solution.html#02)
(3)「コクヨS&T株式会社」のホームページには「IBM System I 対応インターネット帳票FAXサービス」の項があり「コクヨS&Tが提供するASPサービス…とアイエステクノポートが提供する…内部で PDF を生成するツール…との連携によって、外部サーバーや機器を一切導入することなく、…のアウトプットを直接 FAX 送信できるサービスです。」との記載がある。
(http://www.attovas.com/products/system/ibm_system_i_fax.html)
(4)「株式会社メタテクノ」のホームページには「G3+G4FAXサーバ装置 書式付帳票FAX送信システム事例」の項があり「ホストよりWSに転送されたデータから、弊社の帳票作成モジュールで書式(オーバレイ機能)付帳票を作成します。」との記載がある。
(http://www.meta.co.jp/products/faxsolution/case/03.htm)
(5)「キーマンズネット」のホームページの「インターネット帳票FAXサービス」の項に「サービス概要」として「@Tovasクライアントアプリケーションを利用して、Word、Excel、PDFなどをインターネット経由で直接FAX送信できるASPサービス。ファイルデータのセキュアな送信も可能。」との記載がある。
(http://www.keyman.or.jp/3w/prd/25/10006525/)

第4 請求人の意見の要旨
1 「e-」及び「e」の語(文字)については、「e-コマース」のように、「e-」を名詞の前につけて「電子の、インターネットの」の意を想起させるような使用がなされる傾向にあることは認めるが、「e-」をその構成に持つ標章すべてが、役務の一般名称として使用されているわけではなく、それぞれ、「e-」と結合された他の語が一体の言葉となって、特定の役務の出所表示機能となりうるか否かが判断されるべきであり、商標の構成に、「e-」があることによって、インターネット等、電子的なサービスであることを暗示させる商標であっても、商標全体として把握された場合、一種の造語であると考えられる商標は、自他役務識別機能を有する。
2 「e-」と他の語とが結合された商標は、構成全体をもって一種の造語として需要者に理解されるものである以上、商標としての自他役務識別機能を認めるべきであることは過去の審決例(例えば、不服2002-2984:商標「e-License」)をみても明らかである。つまり、本願商標は、構成に「e-」があることから、電子的なサービスであることを暗示する場合があるとしても、そのような「e-」と他の言葉とが結合されてなる商標は、常に「e?○○」商標全体で認識されているのが実情であると考えられることから、「e-帳票FAXサービス」全体で一つの商標として認識され、サービスの出所を特定しうる商標である。
3 「電子帳票」の語が使用されている例及び「電子化した帳票データをFAXにより提供するサービス」が行われていることを示す資料を列挙しているが、これらはいずれも、帳票を電子的に処理、管理することを内容とする記事等であって、帳票類の電子化が進められていることが認識されるものであるとは思料するが、「e-帳票FAXサービス」の表記そのものが、使用されている例ではない。
4 「帳票FAX」若しくは「帳票ファックス」の語が複数の企業により使用されている例については、帳票をFAXで自動送信できるという内容のサービスを紹介した記載であり、それらのサービスが「e-帳票FAXサービス」という名称を用いてサービスの提供をしている様子は見られず、それぞれ「帳票FAX」、「帳票FAX自動送信」、「インターネット帳票FAXサービス」、「帳票FAX送信システム」、「インターネット帳票FAXサービス」の語の使用は認められるが、「電子化された帳票をコンピューター・ネットワークを利用してFAXにより提供するサービス」が提供されているとしても、それは、「帳票FAX」、若しくは、「インターネット帳票FAXサービス」と一般的に表現されており、本願商標は、サービスの出所を表示する機能を有する商標である。
5 本願商標が、本願指定役務を取り扱う業界において、普通に使用されているという事実も見出せないことは、インターネット検索サイトGoogle、Yahoo及びGooでの検索結果(すなわち、「e-帳票FAXサービス」という言葉を使用しているのは、出願人と関連のある株式会社ネクスウェイのサービスに関する情報のみが得られ、他の者が、一般的に特定の役務を示すものとして「e-帳票FAXサービス」という言葉を使用している様子は見当たらないこと)からも明らかであり、これら事実からも、本願商標は一連一体で自他役務識別機能を有している商標であって、また、実際に使用されていることにより、出願人の関連会社が提供するサービスの名称として、商標全体で、既に自他役務識別機能を有する商標となっている。
6 従って、纏まりよく同書同大からなり、一体的な構成を持つ本願商標について、全体をもって一種の造語を表したものとして認識されるというべきであり、本願商標の指定役務に使用しても、自他役務識別標識としての機能を果たし得る商標である。

第5 当審の判断
本願商標は、前記第1のとおり、「e-帳票FAXサービス」の文字よりなるところ、その構成中前半の「e-帳票FAX」の文字部分からは、前記第3に示した取引の実情等よりすれば、「帳票を電子化し、電子化した帳票をFAXで送る(ファクシミリによる通信)」程度の意を表しているといえるものである。
そして、その構成中後半の「サービス」の語は、「役務を提供すること」あるいは、「役務」そのものを意味し、「○○サービス」のように、語尾に使われて「○○」の役務を提供している旨を認識させる語であるといえるものである。
そうとすると、本願商標に接する取引者、需要者は、本願商標から、「帳票を電子化し、電子化した帳票をFAXで送る(ファクシミリによる通信)サービス」程度の意味を表していると容易に理解し、認識されるといえるものである。
ところで、請求人は、前記第4において、「商標の構成に、『e-』があることによって、インターネット等、電子的なサービスであることを暗示させる商標であっても、商標全体として把握された場合、一種の造語であると考えられる商標は、自他役務識別機能を有する」旨主張しているが、本願商標が、請求人主張の「一種の造語であると考えられる商標」に該当するとの根拠も証拠も示されておらず、その主張を検討することが出来ないものである。
また、「『e-帳票FAXサービス』という言葉を使用しているのは、出願人と関連のある株式会社ネクスウェイのサービスに関する情報のみであり、他の者が、一般的に特定の役務を示すものとして『e-帳票FAXサービス』という言葉を使用している様子は見当たらない」旨主張しているが、「商標法第3条第1項第3号の趣旨は、同号に列挙されている商標は、商品や役務の内容に関わるものであるために、現実に使用され、あるいは、将来一般的に使用されるものであることから、出所識別機能を有しないことが多く、また、これを特定人に独占させることは適切でないために登録することができないものとされていると解される」(東京高裁 平成11(行ケ)410号 平成12年6月13日判決参照)。さらに、「商標法3条1項3号は、取引者、需要者に指定商品の品質等を示すものとして認識され得る表示態様につき、それ故に登録を受けることができないとしたものであって、該表示態様が商品の品質を表すものとして必ず使用されるものであるとか、現実に使用されている等の事実は、同号の適用において必ずしも要求されないものと解すべきである」(東京高裁 平成12年(行ケ)第76号、平成12年9月4日判決参照)と判示されていることからすると、本願商標を構成する「e-帳票FAXサービス」の語が、仮に、出願人と関連ある会社のみでの使用であるとか、あるいは、一般には知られていない使用であったとしても、将来、取引者、需要者の間において役務の質(内容)として認識される可能性があり、また、これを特定人に独占させることは適切ではないと判断されるときには、該語は同号に該当すると解されるのである。
そして、本願商標「e-帳票FAXサービス」については、上記に認定のとおり、取引者、需要者をして、役務の質を表示したものとして理解するにとどまるものであり、仮に同様の表示を他人が使用していないとしても、上記の趣旨からして特定人に独占させることは適切ではないものである。
さらに、請求人は、過去の登録例を挙げて、本願商標も登録されるべき旨を主張しているが、出願に係る商標が商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に当たるものであるかどうかの判断は、当該商標の構成態様と指定商品、指定役務とに基づいて、個別具体的に判断されるものであって、請求人が挙げる登録例が存在することのみによって、本願商標が同号に該当することを否定することはできず、また、本願商標についての同号該当性の判断が、これらの各登録例に拘束されるものでもないから、該主張も採用することができない。
以上のとおり、本願商標は商標法第3条第1項第3号に該当し、「帳票を電子化し、電子化した帳票のファックシミリによる通信」以外の役務に使用するときは、役務の質の誤認を生じさせるおそれがあるから、同法第4条第1項第16号に該当するものといわざるを得ないから、これと同旨の理由をもって本願を拒絶した原査定は妥当であって、取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2008-05-26 
結審通知日 2008-05-27 
審決日 2008-07-22 
出願番号 商願2006-57706(T2006-57706) 
審決分類 T 1 8・ 13- Z (Y38)
T 1 8・ 272- Z (Y38)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 村上 照美 
特許庁審判長 石田 清
特許庁審判官 末武 久佳
矢澤 一幸
商標の称呼 イイチョーヒョーファックスサービス、エチョーヒョーファックスサービス、チョーヒョーファックスサービス、チョーヒョーファックス、チョーヒョー、イイチョーヒョー 
代理人 稲葉 良幸 
代理人 田中 克郎 

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