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審決分類 審判 全部無効 商4条1項8号 他人の肖像、氏名、著名な芸名など 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Z04
管理番号 1184448 
審判番号 無効2007-890164 
総通号数 106 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2008-10-31 
種別 無効の審決 
審判請求日 2007-10-17 
確定日 2008-08-29 
事件の表示 上記当事者間の登録第4613097号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第4613097号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4613097号商標(以下「本件商標」という。)は、「TWIGGY」の欧文字を標準文字で表してなり、平成13年11月19日に登録出願、第4類「工業用油,工業用油脂,燃料,ろう,靴油,固形潤滑剤,保革油,ランプ用灯しん,ろうそく」を指定商品として、同14年10月18日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張
請求人は、結論と同旨の審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第29号証を提出した。
1 商標法第4条第1項第8号について
(1)本件商標に請求人の芸名が含まれることについて
本件商標は、「TWIGGY」の欧文字を標準文字で横書きした構成よりなり、請求人の芸名は、欧文字綴りにするときは「TWIGGY」ないし「Twiggy」であり、片仮名綴りにするときは、「ツイギー」、「ツイッギー」、「ツィギー」ないし「トゥイギー」などと綴られる。
また、本件商標より生じる称呼は、我が国において、通常、「ツイギー」、「ツイッギー」、「ツィギー」ないし「トゥイギー」であり、他方、請求人の芸名は、我が国において、通常、「ツイギー」、「ツイッギー」、「ツイギー」ないし「トゥイギー」と発音される。
よって、本件商標と請求人の芸名とは同一であって、本件商標に請求人の芸名が含まれることは明白である。
(2)「TWIGGY」が請求人の著名な芸名であることについて
ア 請求人は、本名をレズリー・ホーンビー(Lesley Hornby)といい、1966年にモデルとしてファッション界にデビューし、フランスの「エル」、英国・米国の「ヴォーグ」をはじめとする世界的に著名なファッション雑誌で活躍した(甲第3号証)。請求人は、その手足が小枝(Twig)のように細いことから「TWIGGY」との愛称で知られるようになり、請求人のファッションの特徴であるミニ・スカートとボーイッシュな髪型は、1960年代後半に世界中の若い女性たちの間で大流行した。請求人は1967年に来日し、我が国でも当時の社会現象となったミニスカート・ブームのなかで、そのファッション・スタイルは「ツイギー・ルック」と称され、請求人は「ミニの女王」と異名をとるほどの有名人となった(甲第4号証及び甲第5号証)。請求人は、現在も女優、歌手として活躍しており、2004年に再来日した際にもそのインタビューが我が国を代表するファッション雑誌「エル・ジャポン」に掲載される等、注目を集めている(甲第6号証)。
イ 請求人の来日した1967年当時、請求人の芸名である「TWIGGY」が我が国において世間一般に広く知られていることは、以下に示す事実から明白である。
(ア)朝日新聞が、請求人が1967年に来日したことを社会面で写真付きで報じ、また、請求人の来日を当時の社会風俗や産業に与える社会現象として報じる記事を掲載したこと(甲第5号証及び甲第7号証ないし甲第9号証)。
(イ)TBSテレビが、1967年11月4日、いわゆるゴールデン・タイムである午後8時から1時間にわたって、請求人自身が出演する「ツイッギー・イン・ジャパン」と題する特別番組を放送したこと(甲第10号証)。
(ウ)1967年当時、東レ、森永製菓及びトヨタ自動車が、請求人といわゆるスポンサー契約を締結し、テレビCMを含む自社の広告宣伝活動に起用していたこと(甲第7号証及び甲第11号証ないし甲第14号証)。
(エ)1967年当時、「女性自身」や「女性セブン」といった女性向け大衆誌の「見出し広告」に、請求人の芸名及び肖像写真とともに、請求人の私生活上の行状に対する大衆の関心に訴える記事見出しを掲載したこと(甲第15号証及び甲第16号証)。
ウ なお、商標法第4条第1項第8号にいう「著名」性の程度の判断について、問題とされる商標の指定商品の属する分野との関連で検討するべきとの見解に立ったとしても、本件における請求人の芸名である「TWIGGY」の著名性は、いっそう容易に肯定することができる。なぜなら、請求人の芸名は、まず、請求人のモデルとしての活動によってファッションに関連する分野における需要者、取引者において著名性を獲得し、かつ、それを維持したままで、次いで、当該特定の需要者、取引者を含む世間一般における著名性を具備するに至ったものであるからである。
よって、本号にいう「著名」性の程度の判断について、問題とされる商標の指定商品の属する分野との関連で検討するべきとの見解に立とうと、さらに世間一般において著名といえるかどうかにより検討するべきとの見解に立とうと、請求人の芸名である「TWIGGY」が著名であることには疑いがないところである。
(3)請求人の芸名の著名性が本件商標の登録出願時及び登録時においても喪失されていないことについて
ア 請求人の芸名の著名性は、本件商標の登録出願時及び登録時においても喪失されていないことは、以下に示す事実から明白である。
(ア)「エル・ジャポン」(1998年2月号)において、「時代の動きが鮮やかによみがえる 60年代のイコン、ツイギーの自伝」との見出しで、請求人が自伝を出版したことが報じられたこと(甲第17号証)。
(イ)「MORE(1998年3月号)において、ワンピースの着こなし例を解説する記事中で、ブリジット・バルドー、ジュリア・ロバーツ、アンヌ・パリローらの超有名ハリウッド女優と並んで、請求人が紹介されたこと(甲第18号証)。
(ウ)「AERA」(1999年4月19日号)において、「過去の栄光で会見百万円 ロンドン」との見出しで、請求人の自伝がベストセラーになり、文庫化されたこと、請求人を山口百恵になぞらえつつ、請求人への会見の費用が高額であることなどに関する記事が掲載されたこと(甲第19号証)。
(エ)「エル・ジャポン」(1999年6月号)において、「20世紀を変えた女たち 第4回 ツイッギー ヤングジェネレーションが時代を作った‘60年代のシンボル」と題する特集記事が掲載されたこと(甲第20号証)。
(オ)「エル・ジャポン」(2000年7月号)において、「MODEL NEWS/トップモデルたちの最新情報!」欄で、請求人が、1990年代を代表するモデルであるケイト・モスとともに、乳ガン撲滅基金のチャリティのために販売するTシャツのキャンペーンガールを務めたとの記事が掲載されたこと(甲第21号証)。
(カ)「広告批評」(2002年06/07号)において、「元祖スーパーモデル ツィギーが交通広告を埋め尽くす」と題して、JCBの広告に請求人が起用され、請求人の肖像を使用した広告ポスターが車内吊りや駅構内に大量に掲載されて話題となったことが報じられたこと(甲第22号証)。
(キ)「エル・ジャポン」(2003年2月号)において、「おしゃれの手本は‘60年代ミューズたち」の特集記事中、「ツイッギー/美の概念を覆したスウィンギング・ロンドンの象徴」として、請求人に関する記事が掲載されたこと(甲第23号証)。
(ク)産経新聞(2004年3月5日朝刊の全国版)の1面で、「小枝のような … 変わらぬスタイル ツイギーさん来日会見」との見出しで、請求人が来日して行った会見の様子を報じたこと(甲第24号証)。
(ケ)毎日新聞(2004年3月5日朝刊の全国版)の社会面で、請求人が来日して行った会見の様子を報じたこと(甲第25号証)。
(コ)「週刊新潮」(2004年3月11日号)において、「小枝変じて…」と題し、請求人が37年ぶりに来日した記事が掲載されたこと(甲第26号証)。
(サ)「女性自身」(2004年3月23日号)において、「ツィギー(54)当時、本誌の表紙も飾っていた元祖スーパーモデルが37年ぶりのオフィシャル来日」と題する特集記事が掲載されたこと(甲第27号証)。
(シ)「週刊文春」(2004年3月25日号)において、「阿川佐和子のこの人に会いたい」という連載記事で、「六〇年代のツイギーは私の妹みたいなものね」と題し、対談記事が掲載されたこと(甲第28号証)。
(ス)「ファッション事典」(1988年8月25日 初版第1刷発行)において、請求人の芸名である「ツイッギー Twiggy」が見出し語として採用され、請求人を表示するものとして解説されていること(甲第3号証)。
(セ)「ファッション辞典」(1999年3月31日 初版第1刷発行)に、請求人の芸名である「ツイギー Twiggy」が見出し語として採用され、請求人を表示するものとして解説されていること(甲第29号証)。
(ソ)「新・実用服飾用語辞典」(2000年5月28日 第1刷発行)において、請求人の芸名を含む「ツイギールック Twiggy look」が見出し語として採用され、「ツイギー」なる語が請求人を表示するものとして解説されていること(甲第4号証)。
イ このように、自伝出版が報じられ、企業広告に起用され、37年ぶりの来日が新聞や雑誌で報じられ、ファッション関係の辞典に見出し語として収録された等の諸事実に鑑みると、「TWIGGY」は、請求人を表示する芸名として、本件商標の登録出願時及び登録時においても、本件商標の指定商品の属する分野における需要者、取引者を含む我が国の世間一般において、著名性を具備していたものである。
なお、念のために付言するに、「TWIGGY」という語は、英語において、「小枝」を意味する普通名詞「twig」から派生した、「小枝のような、ほっそりした、か細い」という意味を表す形容詞「twiggy」と同一の欧文字からなるが、この事情は、「TWIGGY」が請求人の著名な芸名であることを認めるにあたり、何ら妨げになるものではない。
(4)請求人の承諾の不存在
被請求人は、本件商標を登録出願するにあたり、請求人の承諾を得ていない。
(5)以上のとおり、本件商標は、他人の著名な芸名を含む商標であり、商標法第4条第1項第8号に違反して登録されたものである。
2 商標法第4条第1項第7号について
本件商標は、請求人の著名な芸名と全く同一の商標であり、請求人と関係のない被請求人が、請求人に無断で、これを自己の商標として採択、使用することは、社会の一般的道徳観念に反して穏当ではないというべきであり、商標法第4条第1項第7号に違反して登録されたものである。
3 まとめ
以上のとおりであり、本件商標は、商標法第4条第1項第8号及び同第7号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項第1号により、その登録を無効とすべきものである。

第3 被請求人の主張
被請求人は、答弁をしていない。

第4 当審の判断
1 請求人の芸名である「TWIGGY」の著名性について
(1)甲第3号証ないし甲第29号証及び請求の理由によれば、請求人は、1966年にファッションモデルとしてデビューし、細くやせた肢体と短く切り込んだボーイッシュな髪型にミニスカートという、かつてなかったファッションスタイルにファッション業界の注目を集め、フランスの「エル」、イギリス、アメリカの「ヴォーグ」等世界的に著名なファッション雑誌に登場したこと、また、同人の身体の特徴から、「小枝のような、ほっそりした」などを意味する「TWIGGY」なる愛称も、請求人の芸名として、ファッション業界において一躍知れわたるようになったこと、我が国においても、請求人が1967年に来日したことを契機に、請求人の細くやせた肢体と短く切り込んだボーイッシュな髪型にミニスカートいうファッションスタイルが若い女性の間で大いに受け入れられ、瞬く間にミニスカートが大流行し、そのファッションスタイルを請求人の芸名である「TWIGGY」から採った「ツイギールック」などと称し、頻繁に使用されたこと、また、請求人は、1967年に来日した際に、被服メーカーの東洋レーヨン株式会社、菓子メーカーの森永株式会社、自動車メーカーのトヨタ自動車工業株式会社などとスポンサー契約を締結し、その宣伝広告に請求人の肖像写真とともに「トゥイギー」の文字が使用されたこと及びその滞在期間中、請求人に関する種々の記事が「トゥイギー」の名のもとで女性週刊誌を賑わしたこと、その後、請求人は、女優として活動する傍ら、自伝「ツイッギー・・・・・・黒と白の中で」がベストセラーとなり、文庫化されたこと、また、60年代の際だったファッションモデルとして1998年以降もファッション雑誌にしばしば取り上げられているばかりでなく、1960年代のファッションスタイルの復興などの動きに伴い、ファッション業界で再度脚光を浴びたこと、2004年(平成16年)3月の再来日の際にも、種々のマスコミに取り上げられたこと、などが認められる。
(2)前記(1)で認定した事実を総合すると、請求人の芸名である「TWIGGY」及びその片仮名表記である「ツイギー」、「トゥイギー」、「ツイッギー」等は、ミニスカートを着用する肢体の細いファッションモデルというイメージと強固に結びつき、1960年代の後半以降、我が国のファッション関連の商品分野の需要者のみならず、一般世人の間にきわめて強い印象を与えたものであることが認められる。
さらに、当時、爆発的に流行したミニスカートというファッションスタイルは、その後の我が国において定着し、ファッションスタイルの一類型として確立されたことや1998年頃に、1960年代のファッションスタイルが再認識されたことなどとも相俟って、請求人の芸名は、本件商標の登録出願時においてもなお、我が国のファッション関連の需要者のみならず、一般の需要者の間においても、広く認識されていたものとみるのが相当であって、その著名性は、本件商標の査定時(平成14年9月3日)にも継続していたものということができる。
2 商標法第4条第1項第8号該当について
本件商標は、前記第1のとおり、「TWIGGY」の文字を書してなるものである。
そして、「TWIGGY」の文字は、前記1認定のとおり、請求人の芸名として、本件商標の登録出願時はもとよりその登録査定時においても、著名なものであったと認め得るものである。
そうすると、本件商標は、請求人の著名な芸名である「TWIGGY」と同一の綴り字よりなるものであるから、他人の著名な芸名を含む商標というべきである。そして、本件商標が請求人の承諾を得て、登録出願されたものと認めるに足る証拠は見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第8号に該当するものである。
なお、被請求人は、上記請求人の主張に対し、何ら答弁するところがない。
3 むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第8号に違反してされたものであるから、同法第46条第1項の規定により、無効とすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2008-06-25 
結審通知日 2008-07-01 
審決日 2008-07-16 
出願番号 商願2001-108240(T2001-108240) 
審決分類 T 1 11・ 23- Z (Z04)
最終処分 成立  
特許庁審判長 井岡 賢一
特許庁審判官 手塚 義明
小川 きみえ
登録日 2002-10-18 
登録番号 商標登録第4613097号(T4613097) 
商標の称呼 ツイッギー、ツイギー 
代理人 山崎 卓也 
代理人 辻 哲哉 

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