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審決分類 |
審判 査定不服 商3条1項3号 産地、販売地、品質、原材料など 登録しない Z31 |
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管理番号 | 1182527 |
審判番号 | 不服2004-10310 |
総通号数 | 105 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2008-09-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2004-05-17 |
確定日 | 2008-07-14 |
事件の表示 | 商願2002- 5435拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 本願商標 本願商標は、「アンデス」の片仮名文字を標準文字で横書きしてなり、第31類「メロンの種子,メロンの苗」を指定商品として、平成12年12月6日に登録出願された商願2000-137808号に係る商標法第10条第1項の規定による商標登録出願として、同14年1月28日に登録出願されたものである。 第2 原査定の拒絶の理由 原査定は、「本願商標は、『アンデス』の文字を表してなるものであるが、該文字は、昭和52年に日本で発売されたメロンの一品種で、皮の表面は細かい網目が特徴で、中身は緑色をしている『アンデスメロン』を容易に認識させるものであるから、これをその指定商品に使用しても、単に商品の普通名称を表示したものとして把握、認識されるにすぎないものと認める。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第1号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。 第3 当審における証拠調べ通知 当審において、本願商標について、職権に基づく証拠調べをした結果、下記の事実を発見したので、商標法第56条第1項で準用する特許法第150条第5項の規定に基づき、その旨を請求人に通知した。 記 1.辞書、辞典等 (1)「世界大百科事典」(1991年印刷 発行所 平凡社)において「メロン」の項によれば「ウリ科の一年草・・・[品種]・・・現在までに数多くの一代雑種(F1)品種が発表されている。プリンスメロンは・・・現在露地メロンの代表的な品種となっている。このほか、主要な品種としてはアムス、アンデス、キンショウなどがある。・・・[栽培]・・3月下旬播種、4月下旬?5月上旬定植、7月上?下旬収穫で、採果は開花後40?60日。」の記載。 (2)「改訂 調理用語辞典」(平成10年12月25日 改訂版第1刷発行 編集発行人 社団法人 全国調理師養成施設協会)において「メロン」の項によれば「ウリ科のつる性1年草。・・現在では・・交配などにより品質もマスクメロンに近いたくさんの品種が育成され、・・主な品種として、コサック、アムス、アンデス、ハネデュー、ホームランスター、しらゆき、プリンスメロン、キンショウ、パパイアメロンなどがある。」の記載。 (3)「食材図典 FOOD’S FOOD」(1995年8月1日初版第8刷発行 発行所 小学館)において「メロン」の項によれば「・・・ハウスメロン(ネット型)・・・大球で細いネットが密に出て高級感のあるアンデスが普及し、現在ではこの2品種が中心となって栽培されている。」の記載。 (4)「野菜園芸大百科 第2版 4 メロン」(2004年1月31日 第1刷発行 発行所 社団法人 農山漁村文化協会)において a)「第3表」中「分類:ハウスメロン アールス利用系メロン それに属する品種:アンデス」(119頁)、 b)「緑肉種では伝統品種であるアンデスは依然熊本県、茨城県、山形県などで大きな栽培面積を持ち、・・・」(147頁)、 c)「第1表 メロンつる割病4レースに対する日本産メロン各品種の抵抗性」中 「品種名:メロン品種・・アンデス・・」(221頁)、 d)「第2表 トンネル早熟栽培メロン1)での地温と育成」の欄外説明に「注1)4月12日定植、品種:アンデス」(316頁)、 e)「第3表 品種・設定温度別のメロンの生育状況(定植35日目の調査)」中「品種 アンデス2号」(326頁)、 f)「山形県=主要作型と栽培」の見出しのもと「第2図」及び「熊本県=主要作型と栽培」の見出しのもと「第1表」及び「第2図」において「播種(期)から収穫(期)」までを表した図表において「(主要)品種 アンデス」(421頁、474頁)の記載。 (5)「園芸植物大事典5」(1989年12月20日 初版第一刷発行 発行所 小学館)において「メロン」の項において「[品種改良 ]・・・今日、市場に出回っているメロン類は、固定品種に代わってそのほとんどがF1品種である。・・・[栽培]・・・栽培品種として、ネット系では、‘アンデス’、‘アムス’‘アールス系’・・・などがある。」(9、10頁)の記載。 2.新聞記事、インターネットによる情報。 (1)「メロン特産化に尽力 営農指導一筋、生産者を先導/茨城・鉾田市の元JAマンの浅田さん」(2007.05.01 日本農業新聞)の見出しのもと「農家は、何品種かのメロンを愛情込めて栽培した。アンデスメロンが東京市場で評価を受けたのは栽培を始めてから10年後のこと・・・現在は「アンデス」「オトメ」「アールス」などの豊かな味とネット(網目)の美しい5品種を主力に栽培し、日本一のメロン産地と評されるまでに成長した。」 (2)「アンデスメロンが出荷最盛期 甘く玉太りも上々/JA熊本うき」(2007.04.17 日本農業新聞)の見出しのもと「春メロンの主力品種「アンデス」が出荷最盛期を迎えた。」の記載。 (3)「県産メロンの主力ブランド、様変わり 「アムス」から「アンデス」へ /福井」(1999.06.25 毎日新聞社 地方版/福井)の見出しの記載。 (4)「【窓辺の花】メロン 人気の3大果物に」(1998.05.11 産経新聞社 東京朝刊)の見出しのもと「メロンのシーズンは・・・5-6月にもなれば“プリンス”“アンデス”のほかに「赤肉系」「大衆アールス」等々多くの品種も加わり、メロンの旬ともいわれる時期になる。」の記載。 (5)「独立行政法人 農畜産業振興機構」のホームページにおける「月報 野菜情報ー産地紹介ー2006年6月」の見出しのもと「メロン年間栽培歴」の図表中「品種:オトメ:アンデス:クインシー:アールス」(http://alic.vegenet.jp/yasaijoho/santi/0606/santi1.html)等の記載。 (6)「福井県農業試験場」のホームページにおいて「今月の農業技術」の見出しのもと「平成16年4月野菜」のpdfファイル中「3野菜 実況」(但し「3」はローマ数字)に、「1施設野菜 果菜類 5)プリンスメロンは、・・・、・・・アールスメロンは、・・・アンデスメロンは、2月23日から播種が開始され、・・・マルセイユメロンは・・・。」の記載。 (7)「農作物の施肥基準 平成18年2月 愛知県」のタイトルのもと「2作物別施肥基準 2野菜 施肥基準」(但し「2」はローマ数字)において、「7 露地メロン」の項に「主要品種名 アンデス ・・・」(http://www.pref.aichi.jp/nogyo-keiei/jizoku/sehi.pdf)の記載。 (8)鳥取県のホームページにおける「平成16年度 業務年報 平成17年4月 鳥取県園芸試験場」において「56.鳥取県の顔となるメロン品種の選定」の見出しものと「・・・供試品種・・・アンデス5号・・・苗の生育・・・着果状況・・・以上の結果、‘G97CLW’‘アンデス5号’‘グリーンヒル’の3品種を再検討したい。」(http://kousetsushi.pref.tottori.jp/cgi-bin/odb-get.exe/%E5%B9%B3%E6%88%9016%E5%B9%B4%E5%BA%A6%E6%A5%AD%E5%8B%99%E5%B9%B4%E5%A0%B1.pdf?WIT_oid=V30tHBe0PJw6RPTXaegaK92wVoA39191JU2EpkNWIT_ctype=application/pdfWIT_jasminecharset=SHIFTJIS)の記載。 (9)「JA鳥取いなば」のホームペジにおいて、「営農質問コーナー」に「代表的な品種には、アンデスメロン・アムスメロン・タカミメロン・北海道キング系メロン(いわゆる夕張メロンの品種)などがあります。」(http://www.jainaba.com/einou/situmon/y_meron.htm#saibai)の記載。 実際の農協等の使用例 (10)「JAかしまなだ」のホームページにおいて、「メロン(特別栽培)JAかしまなだ」の見出しのもと「栽培基準」の項に「品種 アンデスメロン 定植本数10a当り800本 クインシーメロン 定植本数10a当り800本」(http://www.ja-kashimanada.or.jp/)の記載。 (11)「いばらき農産物ネットカタログ」の見出しのもと「●品種名 (アンデスメロン) (オトメメロン) (クインシーメロン) ・・・●栽培体系 耕起日:11月下旬? 播種日:12月中旬?1月下旬 定植日:1月中旬?2月下旬 」(http://ibrk.jp/vipsv2/search.aspx?no=00016373)の記載。 (12)「青果ネットカタログ『SEICA』」において、「品種名 (赤肉=ルピアンレッド、むつみレッド、) (アンデス・メロン) (優香) ・・・アピールポイント 種撒きから、苗の定植、摘果、そして一人前のメロンになるまで、温度管理、病害虫対策と気を遣い、手間をかけて育てています。」(http://seica.info/search/?00022398)の記載。 (13)「トヨハシ種苗株式会社」のホームページにおける「クロロフィル通信」中、「●農場の平成15年春夏作.作付計画表 / 研究農場」の見出しのもと「春夏作付計画表」に「目的:品種比較 状況:タカミメロン、アンデスメロンを標準に3月上旬播種で栽培予定。」の記載。(http://www2.toyotane.co.jp/kuroro/bak/kuroro01.html) (14)「株式会社大田種苗」のホームページにおいて「野菜の苗」の項に「メロン 品種 アンデスメロン 接木 260円 自根(実生)200円 」(http://www.otaseed.co.jp/cgi-bin/list_basket.cgi?mode=naefdir=nae)の記載。 これらの実情からすると、本願の指定商品との関係において、「アンデス」の文字は、その取引者、需要者間において、メロンの品種を表すものとして認識されているものであると見るのが相当である。 そうすると、本願商標は、これをその指定商品に使用しても、取引者、需要者は、「アンデス」というメロンの品種と把握し理解するに止まり、自他商品の識別標識としての機能を有する商標としては認識し得ないものといわざるを得ない。 してみれば、本願商標は、これをその指定商品に使用するときは、単に商品の品質を表示するにすぎないものであるから、商標法第3条第1項第3号に該当する。 なお、原査定において、本願商標は、商標法第3条第1項第1号に該当するとして拒絶したものであるが、当審における職権による調査により、同法第3条第1項第3号に該当するものと判断したものである。 第4 証拠調べ通知書に対する意見 請求人は、前記第3の証拠調べ通知に対して、平成19年7月2日付け上申書において、「本願商標『アンデス』が、商品『メロン』自体の品種として理解されるか否かという問題と、商品『メロンの種子,メロンの苗』の表示として、どの様に理解されるかは、当該業界の実情により、かなり異なっており、又、その旨は、指定商品『メロン』に対して為された平成17年(行ケ)第10821号判決でも示唆されている。審判請求人は、現在、職権証拠調べにより指摘された各証拠を検討すると共に、先の判決との関連において、更に独自の証拠を追加すると共に、本願の指定商品『メロンの種子,メロンの苗』に関しては、本願商標が自他商品の識別機能を有していることを主張、立証する予定である。」と述べているが、その後、相当の期間、経過したが、何らの主張、立証もなされていない。 第5 当審の判断 1.本願商標について 本願商標は、前記第1のとおり、「アンデス」の片仮名文字を標準文字で表してなるところ、前記第3の実情よりすれば、本願商標を構成する「アンデス」の文字は、その指定商品との関係において、「メロン」の品種の一を表示する語として普通に使用されているといえる。 そうすると、本願商標は、これをその指定商品に使用しても、取引者、需要者が、「アンデス」というメロンの品種と認識し、理解するにとどまり、自他商品の識別標識としての機能を有する商標としては認識し得ず、商品の品質を表示するものとして理解されるにすぎないと判断するのが相当である。 2.審判請求の理由及び証拠調べ通知書に対する意見について (1)請求人は、審判請求の理由において「『アンデス』の名称は、『社団法人日本種苗協会』の自主登録制度に、本願の出願人である『サカタのタネ』が育成し、使用する『種子の名称』として昭和53年登録されており、現在に至るもなお、出願人のみの使用する名称として、他の業者の使用する『メロン』(ネットメロン)と確実に区別されている名称である。また、『アンデスメロン』と偽った商品の流通から、需要者の利益を保護するためにも、商標権が付与されるべきものである。」旨主張し、甲第1号証ないし甲第12号証を提出している。 しかしながら、当該自主登録制度は、請求人の提出による甲第3号証「野菜品種名鑑」によれば、「品種名の重複を防止するための対応に迫られる事態となったことから、法律によることなく、自社の品種名を守り、他者の品種名を尊重するという、相互理解と信頼に根ざした自主的事業」(発刊のことば)であり、その指針として「野菜品種命名基準」を設け、その中に「品種名は、本来一般名称となり得る性格をも有し、諸外国の例に照らしても、商標とは関係なく成立独立したものと理解される。品種名に商標を冠する場合は商標が品種自身の名称のようにみえることは防がなければならない。(注)銘柄については商標に準じた取扱をする。」(同基準中「5.商標との関連」)と記載されている。そして、「アンデス」は、「メロン・マクワ」の表示のもとに「品種名 アンデス 発表年1976 銘柄サカタ交配 商社名サカタ」として記載されているから(甲第3号証「野菜品種名鑑」における「メロン・マクワ」の項中第3頁目)、「メロン・マクワ」の種類の「品種」の一つとして登録されたものであると認められる。 上記甲第3号証の記載よりすれば、請求人が主張する「アンデス」の文字をメロンの品種として登録した請求人のみが、自主登録以降、その制度のもと当該表示を品種名として使用していることは、上記制度の趣旨に則したものであるというべきことである。一方で、当該制度は、「野菜品種命名基準」において「品種名は、本来一般名称となり得る性格をも有し、銘柄は、商標に準じた取扱をする。」と解説している。 以上は、当該自主登録制度のもとにおける業界の取引の実情であるというべきである。 してみると、当業界において、品種名「アンデス」は、本来、メロン・マクワの一般名称となり得る性格をも有するものとして登録されたものである。そして、前記第3の事実によれば、「アンデス」の文字は、メロンの品種を表示するものとして普通に使用されていることが認められるから、本願指定商品との関係において、メロンの特定の品種を表示する一般的な名称として取引者、需要者に広く認識、理解されるものとなったというべきである。 したがって、本願商標は、上記のとおり、その取引者、需要者をして自他商品の識別標識としての機能を有する商標として認識されるものではなく、メロンの品質を表すものとして理解されると判断するのが相当である。 また、「アンデス(メロン)」の表示を偽った商品を販売する行為の防止は、その法目的に照らし、商標登録に委ねるべき問題でない。 なお、請求人の提出に係る上記の証拠からは、「アンデス」の文字がメロンの品種名として自主登録されていることは認め得るものであるが、請求人の商標として自他商品の識別機能を果たし得るものであることを何等証明するものではない。 したがって、上記、請求人の主張は、いずれも採用することができない。 (2)次に、請求人は、上記第4の証拠調べ通知に対する上申書において、「本願商標が、商品『メロンの種子,メロンの苗』の表示として、どの様に理解されるかは、当該業界の実情により、かなり異なっている。」と述ているが、本願商標を構成する「アンデス」の文字が、前記第3のとおり、例えば、メロンの栽培において、その品種を表示するものとして普通に使用されていることが認められる。 そして、近年においては、メロンの種子、メロンの苗が、他の野菜や果樹の種子及び苗とともに一般の種苗店あるいはホームセンター等においても販売されていることが見受けられ、また、果実「アンデス(メロン)」は、ネット系メロンの品種として人気が高く、盛んに取引されている。 してみると、本願の指定商品の取引者、需要者は、種苗会社のほか、一般の種苗販売店・園芸店等・農業経営者・園芸愛好家も少なからず含まれるものであり、必ずしも、業界の自主登録制度及びその実情を十分に認識、理解しているとはいい得ないとみるのが相当であるから、前記第3の事実に加えて、上述した、種苗の自主登録事業において「品種名は、本来一般名称となり得る性格をも有し、銘柄については商標に準じた取扱をする」こと、果実「アンデス(メロン)」が、品種名として一般に広く認識されていることを併せ考えると、本願商標を、その指定商品に使用するときは、これに接する取引者、需要者が、その通常の知識、注意力からすると、ネット系のメロンの一つの品種を表したものとして理解するにとどまるものであって、自他商品の識別標識としての機能を有するものとして認識し得ないというべきである。 したがって、上記、請求人の主張も、採用することはできない。 3.結び したがって、本願商標は、これをその指定商品に使用するときは、単に商品の品質を表示するにすぎないものであるから、商標法第3条第1項第3号に該当する。 なお、原査定において、本願商標は、商標法第3条第1項第1号に該当するとして拒絶したものであるが、前記第3のとおり、当審における職権証拠調べ通知において、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当すると通知しており、上記のとおり、自他商品の識別標識としての機能を果たさない商標であり、この認定において原査定と相違するものでないから、結局、原査定は妥当なものであって取り消すことはできない。 また、請求人は、上記第4の上申書において、本願商標が、自他商品の識別力を有することの主張及び立証をする予定であることを述べているが、その後、相当の期間を経過するも、その主張及び立証を示す書面等何らの手続もなされなかったものである。そして、ほかに本件審理の進行を猶予すべき合理的事情は認められず、これ以上、本件の審理を遅滞させるべき事由はないものと判断し、審理を終結した。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2007-11-06 |
結審通知日 | 2007-11-19 |
審決日 | 2007-12-06 |
出願番号 | 商願2002-5435(T2002-5435) |
審決分類 |
T
1
8・
13-
Z
(Z31)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 稲村 秀子、福田 洋子 |
特許庁審判長 |
中村 謙三 |
特許庁審判官 |
堀内 仁子 小林 和男 |
商標の称呼 | アンデス |
代理人 | 近藤 史代 |
代理人 | 松田 治躬 |
代理人 | 松田 雅章 |