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審判番号(事件番号) データベース 権利
無効2012890045 審決 商標

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審決分類 審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効としない Y3538
審判 全部無効 称呼類似 無効としない Y3538
審判 全部無効 商4条1項10号一般周知商標 無効としない Y3538
管理番号 1181183 
審判番号 無効2007-890049 
総通号数 104 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2008-08-29 
種別 無効の審決 
審判請求日 2007-04-19 
確定日 2008-06-30 
事件の表示 上記当事者間の登録第4959957号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
本件登録第4959957号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲(1)のとおりの構成からなり、平成17年10月7日に登録出願、第35類「広告,トレーディングスタンプの発行,経営の診断又は経営に関する助言,市場調査,商品の販売に関する情報の提供,ホテルの事業の管理,職業のあっせん,競売の運営,輸出入に関する事務の代理又は代行,新聞の予約購読の取次ぎ,速記,筆耕,書類の複製,文書又は磁気テープのファイリング,電子計算機・タイプライター・テレックス又はこれらに準ずる事務用機器の操作,建築物における来訪者の受付及び案内,広告用具の貸与,タイプライター・複写機及びワードプロセッサの貸与,求人情報の提供,自動販売機の貸与,顧客管理,顧客管理に関するコンサルティング,顧客管理に関する指導及び助言」及び第38類「電気通信(放送を除く。),放送,報道をする者に対するニュースの供給,電話機・ファクシミリその他の通信機器の貸与,電気通信に関する情報の提供」を指定役務として、同18年6月9日に設定登録されたものである。

2 請求人の引用する商標
請求人が本件商標の無効の理由に引用する商標は、以下の4件の商標である。
(a)登録第4837183号商標(以下「引用商標1」という。)は、「T-Com」の欧文字を標準文字で表してなり、平成12年9月22日に登録出願、第35類「トレーディングスタンプの発行,財務書類の作成,新聞の予約購読の取次ぎ,電子計算機・タイプライター・テレックス又はこれらに準ずる事務用機器の操作」、第38類「移動体電話による通信,テレックスによる通信,電子計算機端末による通信,電報による通信,電話による通信,ファクシミリによる通信,無線呼出し,テレビジョン放送,有線テレビジョン放送,ラジオ放送,報道をする者に対するニュースの供給,電話機・ファクシミリその他の通信機器の貸与」並びに第9類、第16類、第36類、第41類及び第42類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として、同17年2月4日に設定登録されたものである。
(b)国際登録第758623号商標(以下「引用商標2」という。)は、別掲(2)のとおりの構成からなり、2000年9月18日Germanyにおいてした商標登録出願に基づきパリ条約第4条による優先権を主張して、2001年年3月16日に国際登録され、第9類、第16類、第25類、第28類、第35類、第36類、第37類、第38類、第39類、第41類及び第42類に属する国際登録簿に記録されたとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として、我が国において、平成19年2月9日に設定登録されたものである。
(c)国際登録第834531号商標(以下「引用商標3」という。)は、別掲(2)のとおりの構成からなり、2004年4月26日に国際登録され、第9類、第16類、第25類、第28類、第36類、第37類、第38類、第39類、第41類及び第42類に属する国際登録簿に記録されたとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として、我が国において、平成18年1月31日に設定登録されたものである。
(d)登録第3281287号商標(以下「引用商標4」という。)は、別掲(3)のとおりの構成からなり、平成5年6月30日に登録出願、第35類「広告,経営の診断及び指導,市場調査,商品の販売に関する情報の提供,競売の運営,輸出入に関する事務の代理又は代行,書類の複製,速記,筆耕,文書又は磁気テープのファイリング,建築物における来訪者の受付及び案内,広告用具の貸与,タイプライター・複写機及びワードプロセッサの貸与」を指定役務として、同9年4月18日に設定登録されたものであり、その後、同19年4月18日に商標権の存続期間の満了により消滅し、その抹消の登録が同年12月26日になされているものである。

3 請求人の主張の要旨
請求人は、本件商標を無効とする、審判費用は被請求人の負担とするとの審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし同第46号証(枝番号を含む。)を提出した。
(1)請求の理由の要旨
(ア)本件商標の称呼
本件商標は、図案化された構成からなるところ、昨今は、商品や役務の取引場裡において使用される文字の図案化が盛んに行われており、かなり高度に図案化された文字であっても、その文字が配置された状態やその前後の文字との関係において、特定の文字を表したものと認識し理解され、称呼されることが少なくない。
本件商標の場合、「T」の文字部分に続く「c」及び「m」の各文字を繋ぐ斜めの線は、薄灰色の球状図形と重なるように表されてなるところ、その構成はやや不自然に間延びしていて漫然とした印象を与える点でそれ自体の特徴が乏しいのに対し、球状図形は画然としていてそれ自体が顕著であり、かつこれがその前後の「c」及び「m」の各文字とほぼ同じ大きさで表され、丁度一文字分のスペースを占め、しかも形状が英文字「O」を塗り潰したような球状であることから、英文字「O」を擬したものと無理なく認識し得るものといえる。
また、もともと「com.」は「commercial」、「commander」、「Communication」等の英語の省略形、或いは「.com」(ドットコム/インターネット関連企業のWebサイトのアドレス表示)の用例等において、世人一般に極めて馴染みの深い標章といえるところ(甲第6号証の1及び2)、特に本件指定役務中、中核をなす「通信」の分野では「Communication」の省略形として用いられるふしが見受けられる。すなわち、所管独立行政法人の電子図書館において検索商標を「?COM?」、商品・役務区分「38」をキーワードに検索したところ、1198件の商標がヒットした(甲第7号証)。こうした数字からも窺えるように、通信役務分野はもちろんのこと、通信を利用して提供する広告サービス等の第35類の役務の分野においても需要者は、本件商標の後段部分についてその構成から容易に「Communication(通信)」を想起し、これを「com」の文字と認識し理解するとみるのが自然といえよう。
また、一般に「COM」を含む商標において「COM」の部分を図案化したものは多数見受けられ、例えば甲第8号証ないし同第11号証の商標は「COM」の文字中「O」の部分を高度に図案化しているにもかかわらず、ここから「コム」という称呼が発生するであろうことは、権利者の社名等を引き合いにするまでもなく明らかと考える。
このような本件商標の指定役務の分野における取引事情に鑑みれば、本件商標に接した需要者及び取引者は、構成中の「c」及び「m」の文字に挟まれた薄灰色の球状図形を英文字「o」をやや図案化した程度のもの、すなわち該文字の表示態様の一として捉え、以って上記「com」を容易に連想、想起し、これを「コム」と称呼するというのはむしろ自然であると思われる。
したがって、本件商標構成中の後段若しくは右側部分はその一部がやや図案化されているとはいえ、全体として「com」の文字の域を出ないものと認識し、把握されるとみるのが至当であって、これより「コム」の称呼が自然的に生じると思料される。
現に、インターネット検索サイトにおいて「ティーコム」と入力したところ、「@T COM」が即座にヒットすることからも、本件商標は現実取引社会において需要者・取引者によって「ティーコム」と称呼されていることが窺われる(甲第12号証)。
これらの点については、甲第13号証の審決において、示されている。
また、本件商標は、上述の「Tcom」の部分の前に記号の一種である「@」が付されているが、その全体をもって特定の意味合いを有する語として親しまれているものとも言い難く、これを常に一体不可分のものとして把握しなければならないとする特段の事情も見出せないものであるから、これに接する者をして、容易にこれらを結合したものと看取されるものと認められる。
ところで「@」の記号は、従来より商品の単価を表す記号・符号として親しまれているものであり、また近時はインターネットや電子メールの普及により、電子メールのアドレス表記(「個別アドレス@その所属先を示すドメイン名」)としても普通に用いられ、広く一般に親しまれた記号であって、専ら他の文字又は語に従属して用いられる点で、それ自体は特徴の乏しいものといわなければならない。
そうすると「@」の部分は指定役務との関係で、自他役務の識別標識としての機能を有しないか、若しくはその機能が極めて弱いといわなければならない。
そうとすれば、本件商標をその指定役務に使用した場合、これに接する取引者・需要者は、商標使用者の意図の如何に関わりなく、構成中、視覚上又は意味上において強く印象に残る「Tcom」の部分に着目し、同部分をもって本件商標の主要部と認識し、把握するとみるのが至当であって、これを否定するに足りる証拠はない。
したがって、本件商標は、その構成にあって主要部と目される「Tcom」から生じる称呼「ティーコム」ないし「テイコム」をもって、取引に資される場合が決して少なくないと考えられる。
この点に関しても、甲第14号証ないし同第19号証の拒絶査定及び審決において示されている。
そして、これら被請求人出願に係る各商標の具体的構成に照らし、本件商標の後段部が「com」を意図するものであることは自ずと明らかといえる。
そうとすれば、本件商標からは全体として「アットティーコム」の称呼を生ずるほか「ティーコム」又は「テイコム」の称呼も生じるといわなければならない。そして、これを否定するに足りる事実・証拠は見出せない。
(イ)引用各商標の称呼について
引用商標1、同2及び同3からは、その構成文字に相応して「ティーコム」又は「テイコム」の自然的称呼を生じる。
また、引用商標4は、上段部分は大きく顕著に表されており、下段の文字部分とは分離独立してそれ自体が自他役務の識別標識としての機能を果たし得るものといえる。そして、上段部分の「T」及び「COM」の文字に挟まれた図形部分は、全体との対比からすれば、ハイフンないしは中点(中黒)の如く看取されるに止まり、それ自体が単独で出所標識と目されるものともいえないから、結局、引用商標4は、その構成にあって大きく顕著に表され、かつ読みやすい「T」及び「COM」の文字部分のみを捉え、これより自然的に生ずる「ティーコム」又は「テイコム」の称呼をもって取引に当たる場合も決して少なくないものといえる。この称呼の認定については、甲第13号証の審決において同様の判断が示されている。
(ウ)本件商標と引用各商標との対比
上記において述べたとおり、本件商標と引用各商標とは「ティーコム」又は「テイコム」の称呼を共通にする点ですでに互いに相紛らわしく、また、外観においても上記に示すとおり、両者は共にその主要部をなすと見られる「Tcom」ないしは「T」及び「com」の文字において構成の軌を一にするため、彼此見誤るおそれがあり、かつ、時と処を異にして離隔的に考察した場合は一層全体の印象において相紛らわしく、さらに、両者は意味的にもそれら文字から想起される事物・事柄を同じくする点で観念上も紛れるおそれがあるといわなければならない。
そうとすれば、本件商標と引用各商標とは、称呼、外観及び観念とそのほか印象・記憶・連想を含めた総合的観察において、彼此相紛らわしく、したがって、本件商標をその指定役務について使用した場合、これに接する需要者はその出所について誤認混同を生ずることは必至といわなければならない。
(エ)商標法第4条第1項第11号の該当性について
上述の如く、本件商標と引用各商標とは、その出所について混同を生ずるおそれのある互いに類似の商標であり、その指定役務も同一ないし類似することから、本件商標の登録は商標法第4条第1項第11号に該当する。
(オ)請求人商標の周知著名性について
請求人は、欧州最大の情報通信キャリアであって世界50カ国で約24万人を雇用する巨大企業である。請求人は、旧西ドイツ国有の郵政・通信公社であったブンデスポストが1990年に分割・民営化され、通信部門の株式会社化に伴いドイツ・テレコムと改称されたものである。現在、事業ごとに「T-Com:固定電話事業」、「T-Mobile:携帯電話事業」等の各社に分割して運営されており(甲第20号証)、いったん業績が低迷したものの2003年には復調している。このうち、T-Comの2003年度の四半期あたりの収入は平均して720000万ユーロ(約1兆円)であり(甲第21号証)、すなわち日本円に換算して年間約4兆円もの売り上げをあげている巨大企業である。
請求人は日本にも事務所を保有しており、1993年に特別第二種電気通信事業者の許可を取得、1996年に東京証券取引所に上場、さらに2000年に第一種電気通信事業者の許可も取得し、より幅広いケーブル及びIPサービスを多国籍企業やキャリアの顧客に提供しており(甲第22号証)、近い将来日本における活動範囲をますます拡張させる見込みである。
引用商標2及び3(以下「請求人商標」という。)は2006年6月のFIFAワールドカップで燃料電池で稼動するモバイル・テレステーションを初試用した際にも使用されており、ワールドカップのフィールド上で華々しく宣伝広告されていた請求人商標に係る「T…COM」(T-COM)のロゴは衛星中継で視聴していたわが国需要者の記憶にも刻み込まれているはずである(甲第23号証)。また、請求人が、この請求人商標によりジュニパーネットワークスやシスコシステムズと様々な提携事業を展開していることは、当該分野に属するわが国取引者・需要者間ではすでに周知の事実である(甲第24号証及び同第25号証)。
このように請求人が長年にわたり各国において多額の資金を投じて宣伝・広告を行い、営業努力を積み重ねた結果、請求人商標「T…Com」(T-COM)には多大な業務上の信用が蓄積されるに至っている(甲第26号証)。また請求人は請求人商標を世界各国で権利化しており日本においても然りであることは前述のとおりである。
近年のインターネットや光通信を始めとする国際情報通信網の発達及び市場のグローバル化によって、わが国の取引者・需要者は日本国内のみならず海外取引へも瞬時にアクセスできるようになった。したがって、ヨーロッパ最大の通信企業の1つであり、ヨーロッパのみならず米国にも多数の店舗を有し、海外に販売の拠点を置いて活動する請求人の存在は、現今の通信環境又はインターネット環境からみてわが国の取引者及び需要者は当然知り得ていたといえる。
以上に述べた如く、請求人が、本件商標が出願された2005年よりも以前から継続的に請求人商標を使用している状況からみて、請求人商標は本件商標が出願された平成17年10月7日前からその登録査定がされた同18年5月11日を含む現在に至るまでの間、わが国の通信サービスの分野を中心にそのほか通信を媒体とする広告サービス等の取引分野において、周知著名であり続けているといえる。
(カ)商標法第4条第1項第10号の該当性について
上述において述べたとおり、請求人の使用にかかる請求人商標はわが国需要者・取引者間において本件商標の登録時は無論のこと、その出願当時、すでに周知であったといえる。
そして、たとえ、わが国需要者間で請求人商標を十分に知悉しない者が存するとしても、外国の商標のわが国国内における周知性の認定にあたっては、当該商標について外国で周知なこと等が十分勘案されるというのは、特許庁において既に実践されている実務である。このことは「外国の商標の我が国内における周知性の認定にあたっては、当該商標について外国で周知なこと、数カ国に商品が輸出されていること又は数カ国で役務の提供が行われていることを証する資料の提出があったとき、当該資料を十分勘案するものとする」との審査基準にも明確に記載されている(甲第27号証)。
また、裁判所も「わが国で現実にそれほど使用されていなくても、外国での使用により周知となった結果、わが国の取引者、需要者にも広く認識されている商標は、わが国で周知の商標として保護されるべきである」旨判示した例もあることから(甲第28号証)、その周知性の認定を妨げる事由はなくその証拠もない。
そして、請求人商標「T…Com」(T-COM)は、その構成からみて「ティーコム」又は「テイコム」の称呼を生ずるものであるから、これと称呼を共通にする本件商標は類似を免れず、また通信サービスその他のサービスにおいて抵触を免れない。そうとすれば、本件商標は他人の業務に係る役務を表示するものとして需要者間に広く認識されている商標と類似する商標であり、かつ類似の役務について使用するものといわなければならない。
したがって、本件商標は商標法第4条第1項第10号に該当する。
(キ)商標法第4条第1項第15号の該当性について
前述のとおり、請求人の使用にかかる商標は、請求人の数年にわたる広告宣伝及び営業努力(甲第26号証)の結果、本件商標の出願時及び登録査定時においてわが国国内の需要者が通信サービスを中心に、そのほか通信を媒体とする広告サービス等の取引分野において請求人商標を著名な標章であると認識されていた。
因みに特許庁編商標審査基準改訂第7版によれば、「『他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標』であるか否かの判断にあたっては、「(i)その他人の標章の周知度(広告、宣伝等の程度又は普及度)、(ii)その他人の標章が創造標章であるかどうか、(iii)その他人の標章がハウスマークであるかどうか」等が総合的に考慮されなければならないところ、上記請求人商標の広告や普及度については既述のとおりであり、また請求人商標は請求人のハウスマークとして国際的に周知かつ著名である。
また、同審査基準によれば、「著名標章を引用して、商標登録出願を本号に該当するものとして拒絶することができる標章には、外国において著名な標章であることが商標登録出願の時に、我が国内の需要者によって認識されており、…」とあるところ、請求人商標は本件商標の出願時及び登録査定時においてわが国においてはもちろん国際的に著名であったことから、その著名性の認定を妨げる事由はなくその証拠もない。
そうすると、被請求人が本件商標をその指定役務について使用した場合、これに接する需要者は「通信サービス」ないしは通信を利用して提供する広告サービスほかの分野において著名な請求人商標を容易に想起し、恰も請求人又は請求人と営業上何らかの関係を有する者の業務に係る役務の如くその出所について混同をきたすおそれが極めて高いと考えられる。
そして、わが国裁判所において、国際的に周知・著名な標章を使用する者の正当な利益を保護すべく、これと広義の混同を生ずるおそれがある商標についてはその登録を認めていない(甲第29号証)。また、日本における販売実績の多少にかかわらず、国際的に有名な標章については積極的に著名と認定する傾向にあることから(たとえば甲第30号証)、請求人の上記主張はこれら判例又は判決の趣旨にも合致するものである。
そうすると、本件商標は他人の業務に係る役務と混同を生ずるおそれがある商標というべきものであるから、商標法第4条第1項第15号に該当するものといわざるを得ない。
(ク)まとめ
上述の如く、本件商標は、商標法第4条第1項第11号、同第10号及び同第15号に該当するから、その登録は同法第46条第1項によって無効とされるべきである。
(2)答弁に対する弁駁の要旨
(ア)本件商標中、別掲(4)の称呼について
被請求人は、本件商標の構成中別掲(5)の部分は図形商標であって、その外観上の特異性から「コム」の称呼は生じないため、別掲(4)の部分から「ティーコム」または「テイコム」の称呼は生じないと主張して乙第1号証ないし同第5号証を提出している。
しかしながら、もともと文字商標であっても、需要者の注意を惹くためにその構成文字を図案化・デザイン化することは商慣習上よくなされることであって、このような図案化・デザイン化された文字からなる商標であっても、これら商標から文字商標と同じく特定の称呼が生じることは既存の多くの審決例が示すとおりである(甲第13号証及び同第31号証ないし同第34号証)。
特に本件商標の中心的指定役務である第38類の通信分野では「COM」が「Communication」の省略形として多用されているという社会的取引実情があることから、なおさら当該別掲(5)から欧文字「COM」が想起されやすくなる傾向が強くなる。
この点に関して被請求人が提出した乙第1号証ないし同第5号証はいずれも本件商標に係るサービスとは異種分野に係る判断事例であって、対比される商標の構成自体も著しく相違するから、それら審決をもって被請求人の主張を理由付けることはできない。
むしろ、本件商標の指定役務の分野においては「COM」を含む商標が多数出願されており、そのうち「COM」の部分を図案化したものも多く見受けられること(甲第7号証ないし同第11号証)に鑑みれば、上記別掲(5)の部分のように「COM」の部分が多少図案化されていようとも、需要者や取引者がこれを「com」の文字と認識し理解するのは必然といえる。
そうとすれば、本件商標中別掲(4)からは、別掲(5)の前部に位置する「T」の文字と相俟って「ティーコム」又は「テイコム」の称呼が生ずるとみるのが自然であろう。
よって、本件商標から「ティーコム」又は「テイコム」の称呼が生じない旨述べる被請求人の主張は失当であって採用されるべきではない。
(イ)本件商標の称呼について
本件商標と同様に「@」と「T」と「com」の組み合わせからなる3件の被請求人出願にかかる商標「@TCOM」ないし「@T COM」のいずれもが、本件審判事件における引用各商標「T-COM」、「T・・COM」等(甲第2号証ないし同第4号証)との類似を理由に拒絶されており(甲第14号証ないし同第18号証)、かつ、対比される商標が「@」の有無でしかない案件について類似と判断した審決例(甲第19号証)もあることは、請求書で述べたとおりである。
さらに、今回、本件商標と略同一の構成の被請求人出願にかかる商標(商願第2005-109133号)も同様に、引用各商標を根拠として拒絶理由通知がなされていることが判明した(以下「拒絶理由商標」という。甲第35号証及び同第36号証)。
これは、「@」と「T」と「com」の組み合わせからなる商標が、たとえその一部が多少図案化されていようとも、その構成全体をもって特定の意味合いを有する語とはいい難く、これらを常に一体不可分のものとして把握しなければならない特段の理由も見出せないこと、また、「@」部分が指定役務である「通信」との関係で識別力が希薄であること、さらにこれら構成が文字と記号の組み合わせであることから視覚上又は意味上において自ずとこれら商標の主要部と目されるのは「TCOM」となり、その結果「ティーコム」または「テイコム」の称呼をもって取引に資される場合があるとする所以である。
これら一連の特許庁の取扱い・判断例からすれば、拒絶理由商標よりもさらにその外観構成又は全体印象が引用各商標に近いというべき本件商標からは、拒絶理由商標ほか上記「@TCOM」ないし「@T COM」等と同様に、単に「ティーコム」又は「テイコム」の称呼が生じるのは自明であるといわなければならない。
よって、確たる根拠もなく本件商標からは「アットティーコム」の称呼のみしか生じないとする被請求人の主張は失当であって、採用されるべきではない。
(ウ)本件商標の使用に関する被請求人の主張について
被請求人は、現実の取引界における本件商標の称呼が「アットティーコム」である旨述べ、乙第6号証ないし同第17号証を提出している。
しかしながら、例え「@…」とする第三者商標が偶々それぞれ「アット…」と称呼されているとしても(乙第6号証ないし同第9号証)、その事情はそれ限りのものであって、本件商標がどのように称呼されるかとは直接関係がなく、従ってそれらを恰も本件商標が「アットティーコム」と称呼される根拠の如く述べる被請求人の主張は失当といわざるを得ない。
また、被請求人は、本件商標が「アットティーコム」の称呼をもって現実取引に資されていると主張するが、そうとすれば本件商標の構成中需要者・取引者の誰しもが「アット」と称呼する「@」以外を除いた残りの部分である別掲(4)の部分について「ティーコム」と称呼されていることを被請求人自身が自ら露呈したに等しい。これは、上記(ア)に触れた被請求人の主張と明白なる論理矛盾を来たすものであって、到底容認することができない。
被請求人は、本件商標が「アットティーコム」の称呼をもって取引に資されている証拠として、当該通信関連ウエブページ(乙第10号証ないし同第17号証)を提出しているが、この証拠の中に本件商標そのものの使用例は見当たらず、ここで使用されている商標の殆どは、被請求人に係る別件の「アットティーコム」の仮名文字を有する商標(以下「アットティーコム商標」という。)(乙第18号証)及び上述の拒絶理由商標ないしこれらの変形商標に係るものであるに過ぎない。たとえ、これらアットティーコム商標等が「アットティーコム」と称呼されることがあるとしても、商標の構成自体を異にする本件商標の場合も同様であるとは限らないから、それらに基づく被請求人の主張は失当といわざるを得ない。
因みに、本件商標は「@T」と別掲(5)との間に空隙を有してなるところ、これらウエブページに掲載された拒絶理由商標はこのような空隙を有さずに一連一体に表示してなるものであって、必ずしも本件商標の使用とはいい難く、況やアットティーコム商標の使用をもって本件商標の使用とみるのは到底困難というほかない。したがって、これらに基づく被請求人の主張は失当である。
そして、これらアットティーコム商標又は拒絶理由商標ないしこれらの変形商標の使用に基づき「現実の取引界における本件商標の称呼」を述べる被請求人主張は、事実を欺瞞させる不当な主張であって、特にアットティーコム商標や拒絶理由商標の使用を笠に着る如く本件商標の使用を述べる被請求人主張は事実に反するものであって、到底容認されるべきものではない。
なお、被請求人が拒絶理由商標を使用している点は、引用各商標にかかる権利の侵害可能性を惹起させる点で問題なしとしない。
よって、本件商標が現実の取引において「アットティーコム」と称呼される旨を述べる被請求人主張は何ら根拠がなく、また事実を歪曲するものであって失当である。
(エ)登録例・審決例について
被請求人提出にかかる商標登録例(乙第19号証ないし同第46号証)は、元々、識別力の弱い日常用語が「@」と結合することで一定の識別力が認められ、区別されたと考えられるものばかりであって、本件商標のように「@」と造語との結合商標ではないから、それら登録例は事案を異にするものというほかはない。
逆に、「@」の有無による差異を認めていない商標審決例も多数存在しているのであり(例えば、甲第37号証ないし同第39号証)、「@」の有無による類似性判断は一概に論じることはできないのである。
また、被請求人提出にかかる商標登録例(乙第19号証ないし同第45号証)は別掲(5)の標章の存在を特徴とする本件商標とは構成自体において著しく異にする上、本件商標の指定役務である第35類及び第38類に関わるものは僅か4例に過ぎず、必ずしも本件商標を一体のものとしてのみ把握すべき根拠理由とはならない。
そして、むしろ請求人提出にかかる甲第14号証ないし同第18号証の拒絶理由通知・拒絶査定及び甲第29号証並びに同第31号証ないし同第34号証に示す特許庁の各判断例にあるとおり、「@」の部分を除いた、いわば要部において「類似」と判断した事例の方が多く見受けられるのである。
なお、乙第46号証についても、上記各理由から必ずしも本件商標の一体性を理由づける根拠とすることはできない。
さらに、被請求人はアットティーコム商標が引用各商標と併存登録されたことを主張しているが、これは上段に大書された「アットティーコム」の仮名文字を無視できないこと等の理由から、かろうじて登録になったのであろう程度のものであって、これを本件商標と同列に論じることはできない。
なお、請求人は、このアットティーコム商標自体も請求人保有の引用各商標、とりわけ「T-Com」商標と極めて紛らわしい類似の商標であると考えているので、その旨付言しておきたい。
よって、上記乙各号証をもって本件商標の不可分一体性を述べる被請求人主張はいずれも根拠理由がなく、その主張は失当であって採用されるべきでない。
(オ)本件商標の称呼に関するその他の被請求人主張について
被請求人は、本件商標は不可分一体であって「アットティーコム」の称呼のみによって取引される旨述べているが、被請求人主張はいずれにおいても根拠薄弱であって、むしろアットティーコム商標ないし拒絶理由商標に名を借り又はそれらの変形商標の使用に基づく不当な主張が目に付く点で失当である。よってその主張は採用されるべきではない。
(カ)本件商標と引用各商標との類否に関する被請求人主張について
被請求人は、本件商標より「ティーコム」又は「テイコム」の称呼を生ずるとしても、外観が明白に相違し、かつ観念も共通しない点で非類似である旨述べている。
しかしながら、請求人が請求書において述べたとおり、本件商標と引用各商標とは、称呼・観念及び外観とそのほか印象・記憶・連想を含めた総合的観察において彼此相紛らわしく、したがって本件商標をその指定役務について使用した場合、需要者において、その出所について誤認混同を来すことは必至である。
そして、特に「T-Com」商標(甲第2号証)との関係においては出所混同の可能性が極めて高いということができる。
また、とりわけ本件商標にあって「@」の標章はこの種のサービスの業界において普通一般に用いられる単なる記号表示でしかない点をもって銘すべきものであると考える。
なお、被請求人摘示の「乙第9号証ないし同第11号証」に係る「審決例・裁判例」は照応する証拠が提出されていない。
よって、被請求人の主張は根拠が薄弱であって失当である。
したがって、本件商標と引用各商標とは、その出所について混同を生じる虞がある互いに類似の商標であって、その指定役務も同一ないし類似であることから本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号に違反してなされたものである。
(キ)請求人商標の周知著名性について
被請求人は、請求人商標(引用商標1ないし引用商標3、以下同じ。)の使用について、何時の時点での使用例であるかが立証されていない旨主張する。
しかしながら、請求書において提出したT-Comの売り上げ等に関する証拠(甲第21号証)には「DRI テレコムウォッチャー」の「2003年12月15日号」及び「2003年9月15日号」であることが冒頭部分に明記されている。また、「T-Com」が第三者との事業展開において「通信サービス」を提供している記事(甲第24号証)に関しては、その記事中に「詳細については2004年1月19日の記事『シーメンス、ジュニパーネットワークス製ルーティング・プラットフォームT640を核にT-Com向けに最大級のインターネット中央ノードを構築』をご覧下さい」とあるが当該部分をクリックすると下段に「pr-040119」とあることからして(甲第40号証)、当該記事の下段に記載された「pr-040831」の表示は「2004年8月31日付」の記事であることが容易に推察できる。さらに、「T-Com」がその通信サービスにおいてヨーロッパ最大規模の次世代IPネットワークを拡張する旨の記事(甲第25号証)においては、「2005年7月18日」との日付が記載されているので、これら時日からして本件商標登録出願(2007年10月7日)前の記事であることは明白である。
請求人が、国際的に著名な大企業であって、わが国でも第一種電気通信事業者として多国籍企業向けデータ伝送サービスを提供していることは既に請求書において述べたとおりであって、その状況は甲第41号証ウエブページに示すとおりであるところ、請求人の固定電話部門「T-COM」はその主力部門であって、この通信役務提供主体である「T-COM」に言及した記事は朝日新聞の2005年11月3日付記事等、わが国内新聞紙でもたびたび掲載されている(甲第42号証及び同第43号証)。
また、日本エフ・セキュア株式会社が請求人の「T-Com」部門を通じて2002年11月からセキュリティサービスを提供する記事(日本エフ・セキュア株式会社のホームページ2002年の記事)やエリクソンが「T-Com」と締結した技術提供契約の2006年9月22日付け記事、及びIBMが「T-COM」と締結した開発業務契約を発表した記事(甲第44号証ないし同第46号証)等、請求人が永年にわたり行ってきた事業努力の結果、請求人商標が国際的にも国内的にも注目され、周知・著名化している事実を示すものであることに他ならずこれに反する客観的情勢も証拠もない。
よって、請求人商標の使用時日について疑義を述べる被請求人の主張は適切ではなく、従ってその主張は採用されるべきではない。
(ク)商標法第4条第1項第10号の該当性について
上述のとおり請求人の「T-COM」商標はその指定役務である通信分野を中心に多国間にまたがるサービスを提供していることから、国際的に著名であることは顕著な事実である。特に通信の分野はそのサービス向上の必要に迫られて国際的ボーダーレス化が加速化されていることから、国際的に著名なサービス名称である「T-COM」が国内需要者や取引者においても周知・著名であることは疑いをはさむ余地はない。
以上の点を総合的に考察すれば、請求人が、本件商標出願がなされた2005年より随分以前から継続的に請求人商標を使用している状況からみて、請求人商標は本件商標の出願日前からその登録査定がされた平成18年5月11日を含む現在に至るまでの間、わが国の通信サービス分野を中心に周知著名であり続けてきているといえよう。
よって、本件商標の商標法第4条第1項第10号非該当を述べる被請求人の主張は妥当ではなく、採用されるべきではない。
(ケ)商標法第4条第1項第15号の該当性について
上述のように国際的にも国内的にも著名となった請求人商標と明らかに類似する本件商標登録が、万が一維持されるとすれば、わが国需要者・取引者間において両商標下で提供される通信サービスに関する広義の混同を招来せしめるのは必至であり、国際的に著名な商標と広義の混同を生じるおそれのある商標の登録を禁じた最高裁判例(甲第29号証)の趣旨に背くばかりか、国際信義上も好ましくない。
よって、本件商標の商標法第4条第1項第15号非該当を述べる被請求人の主張は妥当ではなく、採用されるべきではない。
(コ)むすび
以上のとおり、被請求人の答弁はいずれも理由のないものであって採用されるべきものではない。
そして、本件商標は引用各商標(特に「T-Com」商標(甲第2号証))と類似を免れないものであって、被請求人提出の乙各号証をもってしてもこれを覆すには足りないから、結局、本件商標は商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものといわざるを得ない。

4 被請求人の答弁の要旨
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし同第46号証を提出した。
(1)本件商標の称呼
(ア)請求人は、「本件商標からは全体として『アットティーコム』の称呼を生ずるほか「ティーコム」又は「テイコム」の称呼も生じる」と主張する。
しかしながら、請求人の主張は、本件商標の外観構成上の特異性を無視するものであり、また、取引の実情を全く考慮していないものであるから、妥当ではない。すなわち、本件商標は、「@」の記号と「T」の欧文字と別掲(5)の図形とを一連に表してなるものであるところ、その右側に配された別掲(5)の図形部分は、「c」と思しき図形と「m」と思しき図形を連綴して、これらを黒色で表し、前記「c」と「m」との接続部分の背後に表れるように灰色の球状の図形を配置してなるものである。本件商標の構成要素中の別掲(5)の左側の欧文字は「T」を表したものと看取できるが、少なくとも、別掲(5)の部分にあっては渾然一体となった極めて特異な構成となっているものである。特に、灰色の球状の図形部分については、「c」と「m」との接続部分が球状の表面に沿うように緩やかな曲線状に表されている。そのため、当該球状部分は、球状の図形とその表面に表された黒色の曲線部分とが一体感をもった構成となっている。そして、本件商標における「c」と「m」の部分は「cm」が連なって表されているので、この連なった「cm」の間に何らかの文字を介在させて称呼することは不自然である。
また、欧文字の「O」の文字としての本質的な特徴は、やや縦長の楕円であり、その楕円の内側及び外側には他の線を配しないものであると思料されるところ、本件商標の構成要素中の「灰色球体」の図形部分には前記のとおり、球状図形に左下から右上方向に斜めに表された曲線が一体感を持って付加されていることから、当該図形は、欧文字「O」の本質的特徴を備えていないというべきである。したがって、本件商標の構成要素中の灰色球状の図形は、欧文字の「O」とは認識されない。
さらに、商標が具体的構成を抜きにして存在し得ないものであることは言うまでもないところである。嘗ては電話による商取引やラジオ放送による広告等が多く用いられ音声(称呼)による識別が重視されていた事実があるにせよ、今日の通信手段の格段の進歩によって、特に商取引の場では音声(称呼)だけによることはむしろ稀であり、商標は、そのままの形で表現され、把握されるのが殆どである。そして、商標の外観が重視されることは、転々流通する商品の商標よりも提供者と需要者の結びつきが密接なサービスにおいて特に顕著である。文字と図形とが渾然一体となった本件商標のような場合には、これを無視して何らかの称呼で表現するよりも、これをそのままの形で一種のロゴマークとして認識し、取引に資されるというのが自然である。
そして、本件商標の構成要素中の別掲(5)の図形部分から、「コム」の称呼が生じ得るとした場合であっても、このような外観構成において顕著な特徴を有する図形商標については、需要者に対して図形商標特有のイメージ、認識を与えるものであり、形式的に「コム」の称呼が生じ得ることのみに着目して、図形商標独特の印象を無視することは妥当ではない。
よって、本件商標の構成要素中の別掲(5)の図形部分は、特定の称呼及び観念を生じさせない図形として把握認識されるものであり、本件商標は特定の称呼の生じない図形とみるべきものであるから、本件商標の構成要素中の別掲(4)の部分から「ティーコム」又は「テイコム」の称呼は生じ得ない。
かかる被請求人の主張が独自のものでないことを示す証拠として、商標の構成要素中に本件商標と同程度若しくは低度の図案化が施された欧文字の「O」と思しき図形を含む商標について、その図形が欧文字「O」と認識されるか否かが商標の類否判断の前提となった事案において、当該部分が「O」の欧文字とは認識されず、図形として認識されるとの認定の下に商標が非類似と判断された審決例を提出する(乙第1号証ないし同第5号証)。
(イ)次に、本件商標の構成要素中の別掲(5)の部分から「コム」の称呼が生じ得るとした場合について検討するに、本件商標は、纏まり良く一体的に構成されるものであり、かつ、本件商標全体より生じ得る称呼の「アットティーコム」は促音及び長音を含めても7音構成のものであり、冗長ではなく澱み無く一気に称呼し得るものであるから、本件商標から生じ得る称呼は、「アットティーコム」のみである。
この点について、請求人は「@」の部分は指定役務との関係で自他役務としての機能を有しないか、若しくはその機能が極めて弱い部分であり、別掲(4)の部分が本件商標の要部であるから、本件商標からは「ティーコム」又は「テイコム」の称呼が生じ得る旨を主張する。
しかしながら、本件商標は「@」と「T」と別掲(5)より構成されるものであるところ、その構成要素中の「@」が自他役務の識別力が弱い部分であったとしても、他の構成要素である「T」についても、欧文字1文字というそれ自体では自他役務の識別力を有しないものであり、そして、他の構成要素である別掲(5)についても、これが請求人の主張するように「communication」に通じる「COM」として需要者・取引者をして把握、認識されるのであれば、当該部分についても左程自他役務の識別力が強い部分とはいえないことになる。
そうとすると、本件商標の各構成要素である「@」、「T」、「com(別掲(5))」は、そのいずれについても単独では自他役務の識別標識としての機能を有しないか、又は極めて微弱なものであるから、本件商標は、自他役務識別力の弱いもの同士を纏まり良く不可分一体に結び付いた商標であり、このような商標については、その一部分のみが着目されて取引に供されることはなく、常に全体が一連一体のものとして把握、認識されて機能するというのが経験則に照らして妥当である。特に、本件商標については、後記のとおり、「アットティーコム」の片仮名文字と共に使用されることが多く、被請求人のみならず、需要者・取引者間においても、「アットティーコム」とのみ称呼されているものである。
したがって、本件商標の構成全体から、「@」の部分のみが捨象され、別掲(4)の構成部分のみが独立して商標の要部として機能することはあり得ないから、本件商標より生ずる称呼は、「アットティーコム」のみであり、「ティーコム」又は「テイコム」の略称は生じ得ない。
(ウ)現実の取引界における本件商標の称呼
商標の類否判断においては、その商標が使用される役務の需要者層その他役務の取引の実情を考慮し、需要者の通常有する注意力を基準として商標の類否を判断すべきものとされているところ、本件商標が使用される役務の分野は、インターネットに関連する分野であり、当該分野の需要者は、当然にインターネット、コンピュータ等にある程度の知識を有するものであることから、本件商標の構成要素中の「@」を無理なく「アット(マーク)」と称呼することができる。このことは、業務の内容が「インターネット」等の通信手段を利用したサービス、又は、それが従来にない新しい商品又はサービスであることを暗示させることを意図して、多くの企業等が好んで「@」の文字をその構成要素中に含む商標を多数採択し、現に使用されている取引の実情も存在する。例えば、三井住友銀行グループの「@LOAN(アットローン)」、NTTドコモの通信サービスにおける「@FreeD(アットフリード)」、ニフティの「@サーチ(アットサーチ)」、求人広告関連における「@-works!(アットワークス)」のように、この「@」を「アット」と称呼させ、商標の構成全体を不可分一体に称呼させている実例が多数存在していることからも窺える(乙第6号証ないし同第9号証)。
特に、本件商標については、被請求人は、本件商標を「アットティーコム」の片仮名文字を併記して使用することが多く、被請求人のみならず、需要者及び取引者間においても、本件商標は「アットティーコム」と称呼されている。例えば、被請求人発行の「アットティーコム/@TCOM/総合カタログ」、「インターネットまる活ガイド」(乙第10号証及び同第11号証)等では、本件商標に「アットティーコム」の片仮名文字を併記して使用されており、また、被請求人発行の「ADSLかんたんガイドブック」、「Bフレッツコース(パンフレット)」、「@TCOM(アットティーコム)ひかりoneプラン(パンフレット)」(乙第10号証ないし同第15号証)等では、本件商標が単独で使用されているものでも、各パンフレット中に「アットティーコム」の片仮名文字が表示されている。さらに、被請求人だけでなく、取引者間でも、例えば、USENのウエブサイトの「プロバイダー一覧:プロバイダナビ」及びKDDIの「ひかりone」のウエブサイトの「プロバイダー一覧」において本件商標と「@TCOM(アットティーコム)」と記載されている(乙第16号証及び同第17号証)から、本件商標は、その需要者・取引者間において「アットティーコム」とのみ称呼され、「ティーコム」又は「テイコム」の略称で称呼されないことは明白である。
なお、請求人は、「インターネット検索サイトにおいて『ティーコム』と入力したところ、『@T COM』が即座にヒットすることからも、本件商標は現実の取引社会において需要者・取引者によって『ティーコム』と称呼されていることが窺われる」と主張し、甲第12号証を提出するが、甲第12号証のインターネット検索結果は、単に「ティーコム」の文字列を含む記載のあるウエブサイトを検出するものであり、本件商標が「ティーコム」の称呼で取引界において需要者・取引者によって称呼されている事実を示すものではない。
以上より、本件商標は、現実の取引界においても、その構成全体より生ずる「アットティーコム」とのみ称呼されているものであり、これが「ティーコム」又は「テイコム」のような略称で取引に資することはない。よって、本件商標は、特定の称呼を生じさせないものであり、「ティーコム」又は「テイコム」の称呼を生じさせるものではない。
(エ)登録例・審決例について
また、請求人は、「『@』と『〇〇』との結合商標について『〇〇』と類似するとの判断も示されている」と主張し、審決を提出している。
しかしながら、当該審決は、普通の書体より構成される「@value」と「VALUE」との類似性を判断したものであり、本件審判のように、図案化された商標と普通の書体より構成される商標との類似性を判断したものではないから、事案を異にしている。また、普通の書体より構成される商標においても、乙第18号証ないし同第46号証に示すとおり、「@」と「〇〇」との結合商標と「〇〇」とが非類似と判断された結果として登録が認められている併存登録例、審決例も多数存在している。
(オ)まとめ
以上の事実を総合的に考慮すれば、本件商標は、その構成全体が常に不可分一体のものとしてのみ把握、認識されるものであり、「アットティーコム」の称呼のみによって取引に資するものである。
したがって、本件商標より生ずる称呼は、「アットティーコム」のみであり、「ティーコム」の称呼は生じ得ない。
(2)引用各商標より生ずる称呼
引用各商標は、それらの構成文字に照応して、「ティーコム」又は「テイコム」の称呼を生じさせ得るものである。
(3)本件商標と引用各商標の類否
(ア)前述のとおり、本件商標からは「ティーコム」又は「テイコム」の称呼は生じ得ない以上、本件商標と引用各商標とは、その称呼において類似するところがない。また、本件商標は、前述のとおり、極めて特異な図形より構成されるものであるから、その外観において、本件商標と引用各商標とは、明白な差異を有する。さらに、本件商標からは特定の観念は生じないから、その観念においても、両者は共通するところがない。
したがって、本件商標と引用各商標とは、その称呼、外観及び観念のいずれにおいても共通するところのない非類似の商標である。
(イ)また、仮に本件商標の構成要素中の別掲(5)の部分から「ティーコム」又は「テイコム」の称呼が生じ得るとした場合でも、本件商標と引用各商標とはその外観において顕著な差異を有するものであるから、両商標は、相紛れることのない非類似のものである。すなわち、商標の類似判断においては、対比される両商標が同一又は類似の商品に使用された場合に、商品の出所につき混同を生ずる虞があるか否かによって決すべきものであり、両商標それぞれが有する称呼、観念及び外観を観察し、それらが取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察されるべきであって、前記3要素の特定の1つを対比することのみによってなされるべきではない。つまり、対比される両商標が、その称呼において近似するものであるとしても、その外観等において顕著に相違し、その差異が称呼上の近似性を上回り、全体的には相紛らわしくなく出所の混同が生ずる虞がないときには、非類似の商標と判断されるべきである。この観察方法に基づく類否判断は、多くの審決例、裁判例においても、広く採用されているものである(乙第9号証ないし同第11号証)。
ここで、本件商標と引用各商標とを総合的に考察するに、本件商標と引用各商標とは、その外観において明確な差異を有することは明らかである。このように、両商標の観念及び外観は著しく相違し、両商標がその取引者、需要者に与える印象、記憶及び連想は著しく相違している。特に、本件商標が使用される通信サービスの分野においては、前記のとおり、「com」の文字を含む商標が多数存在していることから、商標の僅かな違いについても、十分な注意が払われると考えられ、その選択に際して、取引者、需要者が、単に称呼のみによって商品を識別し購入するとは考え難く、両商標の外観構成を連想するなど、役務の出所につき十分注意を払って取引にあたると考えられる。
また、役務の分野においては、役務の提供者と需要者の結びつきが密接であるため、本件商標のように文字と図形とが渾然一体となった商標の場合には、これを無視して何らかの称呼で表現するより、これをそのままの形でロゴマークとして把握、認識されるというのが自然であり、商標の有する外観及びイメージが他の商標と比較する際に極めて重要な要素となる。
したがって、本件商標と引用各商標とは、その観念及び外観において顕著な差異を有するものであり、その取引者、需要者に与える印象、記憶、連想は著しく相違するものであるから、これらを総合的に考慮すれば、両商標は、その指定役務に使用しても、取引者、需要者が役務の出所につき混同を生ずる虞のないものである。
また、商標の類否判断において参酌すべき特定の称呼が本件商標から生ずるとした場合であっても、その称呼は「アットティーコム」のみであり、「ティーコム」又は「テイコム」の称呼は生じ得ない。
(ウ)以上より、本件商標と引用各商標とは、その称呼、観念及び外観のいずれにおいても相紛れることのない非類似のものである。また仮に、本件商標と引用各商標とは、その称呼において共通するところがあるとした場合であっても、その外観において顕著な差異を有するものであるから、外観、称呼及び観念を総合的に考察すれば、その指定役務に使用しても出所の混同を生ずる虞のない非類似の商標である。
(4)請求人商標の周知著名性について
請求人の提出した証拠に示されているのは、請求人がヨーロッパ有数の通信企業であること程度であり、請求人商標「T…COM」の周知著名性については全く立証されていない。すなわち、請求人が提出する甲第26号証にあっては、いずれも海外(おそらくドイツ国と推測する)向けのウエブサイトであり、日本語で表示された日本向けのウエブサイトは一つも存在していない。特に、これらウエブサイトのプリントアウトの殆どはウエブサイトのアドレス及び日付が記載されていないものであり、何時の時点の使用例であるのかは全く立証されていない。
これらの資料よりしても、本件商標は、日本国内においては全く使用されておらず、また、海外における使用開始日ですら不明であるから、本件商標の出願時(平成17年10月7日)及び査定時(平成18年5月11日)において、請求人商標が周知著名性を獲得していたとの請求人の主張は、明らかに失当である。
(5)商標法第4条第1項第10号の該当性について
前述のとおり、本件商標と請求人商標とは非類似の商標であり、また、本件商標の出願時及び査定時において、請求人の商標が周知著名性を獲得していたような事実は何ら立証されていない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に違反して登録されたものではない。
(6)商標法第4条第1項第15号の該当性について
前述のとおり、本件商標と請求人商標とは全く別異の商標であり、また、本件商標の出願時及び査定時において、請求人の商標が周知著名性を獲得していたような事実は何ら立証されていない。
加えて、前述のとおり、本件商標は、被請求人の通信サービスを表示する商標として継続的かつ広範に使用されており、日本国内においては、被請求人の業務を表示する商標として需要者・取引者間において広く認識されている商標であり、そして、被請求人は、その事業において今日に至るまで、本件商標と引用各商標との間で実際に混同が生じた事実は一切存在していない。そうとすれば、現実の取引界においても、本件商標と引用各商標とはその役務の出所につき誤認混同のおそれはないものというべきである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものではない。
(7)むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第10号、同第11号又は同第15号に違反して登録されたものではない。

5 当審の判断
(1)商標法第4条第1項第11号について
(ア)本件商標は、別掲(1)のとおり、「T」と別掲(5)の部分との間が半文字程度空いていることから、視覚上、「@T」と別掲(5)とを組み合わせた構成からなるものであると把握されるところ、該構成全体は、外観上まとまりよく表現されているものであり、また、該構成中の右側に配された別掲(5)の部分は、「c」と思しきものと「m」と思しきものを同じ太さの線でつなげて、該「c」と「m」との接続部分の背後に灰色の球状の図形を配置してなるものである。そして、別掲(5)の部分は、「c」と「m」とをつなげた線部分が球状の図形の表面に沿うように緩やかな曲線状に表され、球状の図形とその表面に表された曲線部分とが一体感をもった構成となっているといえるから、別掲(5)の部分は、特定の称呼及び観念を生じさせないものとして把握されるとみるのが相当である。
そうとすれば、本件商標は、前半部の「@T」の部分に相応して「アットティー」又は「アットテイ」の称呼を生ずるものとみるのが自然であり、また、仮に、本件商標中の後半部にある別掲(5)の部分が「com」の文字からなるものとして把握され、これのみを捉えて「コム」の称呼を生ずる場合があるとしても、この場合、本件商標は、構成全体から生ずる「アットティーコム」又は「アットテイコム」の称呼が格別冗長ではなくよどみなく称呼し得るものであって、単に「コム」と称呼されることはないというべきである。
してみれば、本件商標は、該構成全体に相応して「アットティーコム」又は「アットテイコム」の一連の称呼を生ずるほか、該構成中の「@T」の部分に相応して「アットティー」又は「アットテイ」の称呼を生ずるものと認められる。
(イ)この点について、請求人は、「@」の部分は指定役務との関係で、自他役務の識別標識としての機能を有しないか若しくはその機能が極めて弱いから、商標使用者の意図の如何に関わりなく、構成中、視覚上又は意味上において強く印象に残る「Tcom」の部分に着目し、同部分をもって本件商標の主要部と認識し、把握するとみるのが至当である旨主張している。
しかしながら、たとえ、「@」が電子メールのアドレス表記として普通に用いられる記号であるとしても、本件商標は、前記したとおり、「T」と別掲(5)の部分との間が半文字程度空いていることから、視覚上、「@T」と別掲(5)とを組み合わせた、いわば、2つのブロックからなるものとして分離して、「@T」が一体不可分のものとして認識し把握されるとみるのが自然であり、前半部にある記号と文字の僅か2つからなる「@T」を、さらに「@」と「T」に分離し、この「T」と後半部の別掲(5)を結合したものとして捉えて、「@」と分離して認識されることは自然ではないというべきである。
加えて、前述のとおり、本件商標は、その構成全体から生ずる「アットティーコム」又は「アットテイコム」の称呼が格別冗長ではなくよどみなく称呼し得るものである。
さらに、他に、本件商標の構成中の別掲(4)の部分のみが独立して認識されるとみるべき特段の事情は見いだし得ない。
そうすると、本件商標は、その構成全体から「@」の部分のみが捨象され、別掲(4)の部分のみが独立して商標の要部として機能することはないといわざるを得ないから、前記請求人の主張は採用することはできない。
(ウ)他方、引用商標1は、前記したとおりであって、該構成文字に相応して「ティーコム」又は「テイコム」の称呼を生ずるものである。
また、引用商標2及び引用商標3は、別掲(2)のとおりの構成からなるものであって、該構成中の文字部分に相応して「ティーコム」又は「テイコム」の称呼を生ずるものである。
さらに、引用商標4は、別掲(3)のとおりの構成からなるところ、上段部分は、大きく顕著に表されており、下段の文字部分とは分離独立してそれ自体が自他役務の識別標識としての機能を果たし得るものである。そして、上段部分の「T」及び「COM」の文字に挟まれた図形部分は、全体との対比からすれば、ハイフン又は黒点のように看取されるに止まり、それ自体を抽出して称呼、観念されるものともいえないから、引用商標4は、上段と下段を含めた全体の文字部分より、「ティーコムコーポレートコミュニケーション」及び「テイコムコーポレートコミュニケーション」の称呼を生ずる他に、大きく顕著に表され、読み易い上段の「T」及び「COM」の文字を捉え、「ティーコム」又は「テイコム」の称呼をも生ずるものといえる。
(エ)しかして、本件商標から生ずる「アットティーコム」、「アットテイコム」、「アットティー」及び「アットテイ」の称呼と引用商標1ないし引用商標4から生ずる「ティーコム」、「テイコム」、「ティーコムコーポレートコミュニケーション」及び「テイコムコーポレートコミュニケーション」の称呼とは、「アット」の音の有無等に明らかな差異が認められるものであるから、両称呼は相紛れるおそれはない。
そして、その他、本件商標と引用商標1ないし引用商標4とは、本件商標が特定の観念を生じないものであり、両商標の構成態様においても全く異なるから、観念及び外観においても相紛れるおそれはないものである。
してみれば、本件商標と引用商標1ないし引用商標4とは、外観、称呼及び観念のいずれの点においても紛れるおそれのない非類似の商標というべきである。
したがって、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号に違反してされたものとはいえない。
(2)商標法第4条第1項第10号について
請求人の提出に係る証拠によれば、請求人商標を役務「通信サービス」について使用する商標として我が国において紹介されていることは認められるが、その事実が確認できるのは、僅かに請求人の会社概要を紹介したホームページ(甲第22号証)のみである。なお、該証拠中、甲第26号証は、1頁ないし4頁は日本向けの記事等とは特定することができないばかりでなく、右下の「2007/02/08」の表示からすると、本件商標の登録出願後の2007年2月8日にプリントアウトしたものと認められる。同5頁以降は、5頁に「Produktkatalog Oktober2006」の表示からすると、2006年10月に発行されたドイツ語版の製品カタログと認められるものの、その発行は本件商標の登録出願後である。
つぎに、請求人は、本件商標の登録出願前の記事等を提出しているが、甲第21号証は、2002年及び2003年の請求人の業績額を示すものの、我が国における業績額を示すものではない。甲第24号証、同第25号証及び同第40号証は、2004年1月19日及び2005年7月18日当時の請求人とシスコシステムズ等と提携して事業を展開している記事であること、甲第42号証及び同第43号証は、2005年11月2日及び同3日付けの朝日新聞及び共同通信記事であり、請求人に関する固定電話部門(T-COM)の従業員を削減する内容であること、甲第44号証及び同第45号証は、2002年11月1日から請求人のT-com部門を通じてセキュリティサービスを開始する内容等であることの各事実は認められる。
しかしながら、請求人商標が請求人の商標として請求人の業務に係る通信サービスについて我が国において紹介されていることが確認できるのは、会社概要を紹介したホームページのみであり、また、引用商標1に相応する「T-COM」「T-com」の標章(以下、請求人商標と「T-COM」「T-com」の標章をまとめて「請求人商標等」という。)が請求人の業務に係る通信サービスを表示するものとして我が国において記事中に紹介されているのは前記証拠にとどまること、「T-COM」に関する我が国における業績額や広告宣伝の実績等も明らかでないこと等を総合すると、該証拠をもって、本件商標の登録出願時及び登録査定時に請求人商標等が請求人の業務に係る通信サービスについて使用する商標として我が国の取引者・需要者の間に広く認識されているとまでは認めることはできない。
また、請求人の提出に係る前記以外の証拠によっても、請求人商標等が取引者・需要者の間に広く認識されているとはいえない。
してみれば、その余の要件について判断するまでもなく、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第10号に違反してされたものとはいえない。
(3)商標法第4条第1項第15号について
本件商標と請求人商標等とは、前記したところと同様の理由により、互いに区別し得る別異の商標と認められるものであり、しかも、前記したとおり、請求人の提出に係る証拠によっては、請求人商標等が請求人の業務に係る通信サービスについて使用する商標として我が国の取引者・需要者の間に広く認識されているとまでは認めることはできないから、本件商標をその指定役務に使用した場合、これに接する取引者・需要者をして、請求人商標等を連想又は想起させるものとは認められず、その役務が請求人又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかの如く、その役務の出所について混同を生じさせるおそれはないものといわなければならない。
したがって、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第15号に違反してされたものとはいえない。
(4)まとめ
したがって、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第10号、同第11号及び同第15号のいずれにも違反してされたものではないから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効にすべき限りでない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 (別掲)
(1)本件商標



(2)引用商標2及び同3(色彩については原本参照)



(3)引用商標4



(4)本件商標中の一部



(5)本件商標中の一部


審理終結日 2008-01-30 
結審通知日 2008-02-05 
審決日 2008-02-19 
出願番号 商願2005-94301(T2005-94301) 
審決分類 T 1 11・ 25- Y (Y3538)
T 1 11・ 262- Y (Y3538)
T 1 11・ 271- Y (Y3538)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 渡口 忠次 
特許庁審判長 田代 茂夫
特許庁審判官 伊藤 三男
酒井 福造
登録日 2006-06-09 
登録番号 商標登録第4959957号(T4959957) 
商標の称呼 アットテイ、エイテイコム、アット、エイテイ、アットテイ、アットマークテイ、コム、シオオエム 
代理人 稲葉 良幸 
代理人 青木 篤 
代理人 田中 克郎 
代理人 田島 壽 

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