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審決分類 審判 全部無効 商4条1項8号 他人の肖像、氏名、著名な芸名など 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Y03
審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Y03
審判 全部無効 商4条1項11号一般他人の登録商標 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Y03
審判 全部無効 商4条1項10号一般周知商標 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Y03
管理番号 1180934 
審判番号 無効2007-890031 
総通号数 104 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2008-08-29 
種別 無効の審決 
審判請求日 2007-03-15 
確定日 2008-06-12 
事件の表示 上記当事者間の登録第5009661号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第5009661号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
本件登録第5009661号商標(以下「本件商標」という。)は、「ミツイコーポレーション株式会社」の文字を標準文字で書してなり、平成18年3月16日に登録出願、第3類「家庭用帯電防止剤,家庭用脱脂剤,さび除去剤,染み抜きベンジン,洗濯用柔軟剤,洗濯用漂白剤,かつら装着用接着剤,つけまつ毛用接着剤,洗濯用でん粉のり,洗濯用ふのり,塗料用剥離剤,靴クリーム,靴墨,つや出し剤,せっけん類,歯磨き,化粧品,香料類,研磨紙,研磨布,研磨用砂,人造軽石,つや出し紙,つや出し布,つけづめ,つけまつ毛」及び第29類「レシチンを主成分とする粉末状・顆粒状の加工食品,大豆プロテイン・ミルクプロテインを主成分とする粉末状・顆粒状の加工食品,クロレラを主成分とする粒状・粉末状・顆粒状の加工食品,ビタミンEを主成分とする軟カプセル状の加工食品,イチゴ・オレンジ・レモン・ユズを凍結乾燥し濃縮したものを主成分とする粒状の加工食品,魚骨カルシウムを濃縮精製したものを主成分とする粉末状・顆粒状の加工食品,みつばち花粉を主成分とする粉末状・顆粒状の加工食品,食用油脂,乳製品,食肉,卵,食用魚介類(生きているものを除く。),冷凍野菜,冷凍果実,肉製品,加工水産物,加工野菜及び加工果実,油揚げ,凍り豆腐,こんにゃく,豆乳,豆腐,納豆,加工卵,カレー・シチュー又はスープのもと,お茶漬けのり,ふりかけ,なめ物,豆,食用たんぱく」を指定商品として、平成18年12月8日に設定登録されたものである。

2 引用商標
請求人が本件商標の登録の無効の理由に引用する登録第4348963号商標(以下「引用商標」という。)は、「MITSUI」の文字(「M」の文字は、他の文字に比べやや大きく表されている。)を横書きしてなり、平成8年6月20日に登録出願、第3類「化粧品,せっけん類,香料類,歯磨き」を指定商品として、平年1月7日に設定登録され、その商標権は、現に有効に存続しているものである。

3 請求人の主張の要点
請求人は、結論同旨の審決を求めると申し立て、その理由を次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第14号証(枝番を含む。)を提出した。
(1)三井グループの沿革、三井の商号、商標等について
(ア)三井家の事業は、三井高利が延宝元年(1673年)伊勢松坂より京都、江戸に出て越後屋呉服店を開いたことに始まる。また、呉服業と併せ営む両替業も三井の二大事業としてその繁栄の基礎となり、明治9年には、日本で初の民間銀行である私盟三井銀行を開業するとともに、三井物産会社を設立し、近代的企業の軌道が敷かれた。日清戦争、日露戦争後の好景気により、三井傘下の各企業はいずれも急成長し、明治42年に、三井合名会社が設立し、三井一族が株式を通じて傘下の企業を支配するという財閥の体制を整えた。
その後、昭和19年に、三井財閥の中枢機構として株式会社三井本社が設立されたが、第二次世界大戦後、連合国の財閥解体の政策により解体した。その結果、三井財閥は消滅し、財閥本社を通じての組織的な統括力を失ったが、その後の我が国の経済復興に伴い、三井財閥傘下にあった諸会社は、「三井グループ」として、引き続き日本経済において重要な地位を占めている。
請求人は、三井商号商標保全会など三井グループの世話役を努めている。
本件商標が出願された平成18年以前における三井商号商標保全会及び三井グループの状況については、「三井商号商標保全会年報」(甲第8号証)、「MITSUI GROUP 2001」(甲第9号証)に記載のとおりである。
(イ)三井家の店章「丸に井ゲタ三文字」は、三井高利が延宝5年(1676年)ころ、越後屋の暖簾に紋所として使い始め、以来、三井の重要な事業は、「三井」を商号中に使用してきた。
上記(ア)で述べた第二次世界大戦後の財閥解体により、本社機構が解体された後、100社を超す三井系各企業は、その大半が引き続き商号中に「三井」の名前を冠しており、「三井」の商号、商標は、三井グループ各社の結束の精神的支柱となっているところであり、300余年もの間「丸に井ゲタ三文字」及び「三井」の商号、商標を使用し蓄積された信用、価値を守るべく昭和31年、「三井商号商標保全会」を発足させ、三井グループ共通の財産である三井の商号、商標の保全を図ることとした。
三井グループ各社は、その多くの企業が「三井」を商号の一部とするところから、その取扱いに係る商品・役務の商標中にも「三井」「ミツイ」「MITSUI」を含む例が多く、三井グループの著名性を基礎に、商標「三井」「みつい」「ミツイ」「MITSUI」は、産業界において強い自他商品識別力を有する商標として機能している。そして、この事情を背景として、商標「MITSUI」「三井」について、商品・役務の各分類において、三井グループ構成各社のために商標登録が認められている(甲第6号証、甲第7号証)。これらの登録は、永年にわたる信用の蓄積を背景として三井グループ各社に登録を認められたものであり、同グループの商標は極めて価値ある商標として保護されるべきものである。
このような考え方は、審判決例(甲第3号証ないし甲第5号証、甲第11号証、甲第12号証)、多数の登録異議の決定においても支持されている。
(2)商標法第4条第1項第15号及び同第10号 前記(1)のとおり、「三井」「ミツイ」「MITSUI」「みつい」といえば、三井グループを指称するものとして認識されていることは、公知の事実である。
「三井」は、一般的な氏姓としての側面をも有するが、商標は、商品流通あるいは役務の提供に際し、識別標識として機能する標識である。このような取引の場において、「三井」「ミツイ」「MITSUI」「みつい」が使用されれば、かかる商標はあたかも三井グループに属する企業の商標であるかのように認識される可能性が高いものである。
本件商標中の「コーポレーション」は、法人、株式会社を意味する英語の「corporation」、あるいは、その略語である「Corp.」の発音を表したものであり、また、「株式会社」は、資本金が株式という均等な形式に分割され、株主が組織する有限責任会社をいい、株式会社の商号の表示である。
よって、本件商標は、「ミツイ」を要部とし、それに株式会社の表示、商号表示を付加したにすぎない構成からなるところ、その要部「ミツイ」が意味する「三井」「MITSUI」は、前述した三井グループの名称、著名な商標、商号と共通するものであるから、これより「ミツイ」の称呼、「三井」の観念を生じ、「三井グループ」との関連で理解されるおそれが大きい。
したがって、被請求人が本件商標をその指定商品について使用すれば、これに接する取引者、需要者は、これはあたかも三井グループを構成する企業の取り扱いに係る業務、あるいは、その関連企業の業務に係るものであるごとく、混同を生ずるおそれが大きい。
以上のように、本件商標は、商標法第4条第1項第15号及び同第10号に該当するものである。
(3)商標法第4条第1項第8号について
前記(1)で述べたように、三井グループ各社は「三井」の商号、商標を保護すべく三井商号商標保全会を設立し結集している。平成14年3月現在、三井商号商標保全会に結集する法人219社中、200社を越える企業が「三井」をその商号中に使用している。
三井商号商標保全会は、「三井」商号商標の適正な管理のため、「三井」「ミツイ」MITSUI」「みつい」を商標、商号の一部として使用するに際しては、事前に同会の承認を得ることとしているところ、同会は、「ミツイ」を含む本件商標の出願及び使用に際し、承認を与えた事実はない。
「三井グループ」と関係のない被請求人が本件商標をその指定商品について使用すれば、三井グループ及び構成各社の人格権が毀損されるおそれがある。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第8号にも該当するものである。
(4)商標法第4条第1項第11号について
本件商標は、前記(2)のとおり、その構成中の「コーポレーション」及び「株式会社」が単なる株式会社、その商号表示にすぎないものであるから、「ミツイ」の称呼及び「三井」の観念をもって認識される。
他方、引用商標は、その構成文字より「ミツイ」の称呼及び「三井」の観念を生じるものである。
よって、本件商標は、引用商標とその称呼及び観念を共通にする類似の商標であり、また、本件商標の指定商品中、第3類に属する商品は、引用商標の指定商品とすることが明らかである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。
(5)利害関係の存在について
本件商標が使用されれば、請求人の業務と混同を生ずるおそれが大きい。
また、請求人は、「三井グループ」の商号、商標を管理、保全する三井商号商標保全会の幹事会社としてその保全を図る責務を負っている。
よって、請求人は、本件審判を請求するにつき利害関係を有する者である。
(6)むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第15号、同第10号、同第8号及び同第11号に該当し、同法第46条に基づき、その登録を無効とすべきものである。

4 被請求人の答弁
被請求人は、前記3の請求人の主張に対し、何ら答弁するところがない。

5 当審の判断
(1)甲第3号証、甲第8号証ないし甲第10号証及び請求の理由によれば、次の事実が認められる。
三井系企業の事業は、江戸時代の延宝元年(1673年)に、三井高利が伊勢松坂から江戸に出て家業として呉服業、両替業を営んだことに始まる。
明治9年に、我が国で初めて民間銀行である三井銀行を設立し、これと並行して、同年、三井物産を創立した。日清戦争、日露戦争後の好景気により、三井傘下の各企業はいずれも急成長し、明治42年に、三井合名会社を設立し、三井一族が株式通じて傘下の企業を支配するという財閥の体制を整えた。
しかし、第二次世界大戦後、連合国の財閥解体の政策により三井本社も解体し、その結果、三井財閥は消滅した。その後、三井財閥傘下にあった多数の会社は、「三井グループ」として、企業グループを形成し、現在に至っている。
三井一族は、創業以来、丸の中に井桁三のマークを配した標章を商号、商標として使用してきたところ、三井系企業の多くは、三井財閥の傘下にあった時代、その後の三井グループを形成した現在を通じて、「三井」の文字を含む商号、丸の中に井桁三のマーク、「三井」、「MITSUI」、「ミツイ」の文字からなる商標を使用し、広範な分野において営業活動を行っている。
そして、これら三井グループに属する企業は、上記商号、商標の使用によって築き上げられてきた名声及び信用を保護し、これらの有する出所識別機能を維持するために、三井商号商標保全会という組織を開設し、請求人が三井商号商標保全会の幹事会社となっている。
(2)前記(1)で認定した事実によれば、三井グループに属する企業は、三井財閥の傘下にあった時代以来、「三井」、「MITSUI」、「ミツイ」の文字からなる商標を自己の業務に係る商品又は役務について永年にわたり使用して、三井系企業としての名声と信用を築き上げてきたものであって、三井グループに属する企業全体としての事業規模の大きさ、営業活動の期間の長さを考慮すると、「三井」、「MITSUI」、「ミツイ」の文字からなる商標は、本件商標の登録出願前より、三井グループに属する企業の業務に係る商品又は役務を表示するものとして、取引者、需要者の間に広く認識され、全国的に著名となっていたことが認められる。
(3)本件商標は、前記のとおり、「ミツイコーポレーション株式会社」の文字を書してなるものであるところ、その構成中の「コーポレーション」の文字部分は、「法人、有限会社、株式会社」等を意味する外来語として、我が国の経済社会において広く使用されているものであり、また、「株式会社」の文字部分は、法人の組織を表すものとして普通に使用されているものであるから、これらの語自体は、強い自他商品の識別機能を有しない部分であるのに対し、「ミツイ」の文字部分は、前記(2)で認定したとおり、三井グループに属する企業の商号の一部に使用されるものとして、また、これら企業の業務に係る商品又は役務を表示する商標として、取引者、需要者の間に広く認識されている「三井」、「MITSUI」、「ミツイ」のうちの「ミツイ」と同一の綴り字よりなるばかりでなく、上記「三井」、「MITSUI」、「ミツイ」の商標より生ずる「ミツイ」の称呼と同一の称呼を生ずるものである。
そうすると、本件商標に接する取引者、需要者は、前記した三井グループに属する企業の使用に係る「三井」、「MITSUI」、「ミツイ」の文字よりなる商標の著名性ゆえに、その構成中の「ミツイ」の文字部分に強く印象づけられ、これを本件商標中の要部として捉えて、三井グループに属する企業の使用に係る商標を直ちに想起又は連想するというのが相当である。
したがって、本件商標は、これをその指定商品について使用するときは、該商品が三井グループに属する企業の業務に係る商品であるかのように、取引者、需要者をして、商品の出所について混同を生じさせるおそれのある商標といわざるを得ない。
(4)むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第15号に違反してされたものであるから、同法第46条第1項の規定に基づき、無効とすべきものである。
審理終結日 2007-12-05 
結審通知日 2007-12-11 
審決日 2008-04-30 
出願番号 商願2006-23609(T2006-23609) 
審決分類 T 1 11・ 25- Z (Y03)
T 1 11・ 23- Z (Y03)
T 1 11・ 26- Z (Y03)
T 1 11・ 271- Z (Y03)
最終処分 成立  
前審関与審査官 福島 昇 
特許庁審判長 井岡 賢一
特許庁審判官 岩崎 良子
渡邉 健司
登録日 2006-12-08 
登録番号 商標登録第5009661号(T5009661) 
商標の称呼 ミツイコーポレーション、ミツイ 
代理人 高橋 康夫 

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