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審決分類 審判 判定 その他 属さない(申立て不成立) Z36
管理番号 1179462 
判定請求番号 判定2007-600058 
総通号数 103 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標判定公報 
発行日 2008-07-25 
種別 判定 
2007-08-21 
確定日 2008-05-28 
事件の表示 上記当事者間の登録第4586957号商標の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 役務「提供するインターネットの画面上に、食べ歩きグルメや旅行等撮影した動画をアップロード、ブログ、ホームページ、日記、掲示板を作成する」に使用するイ号標章は、登録第4586957号商標の商標権の役務のうちの第38類に属する「電子計算機端末による通信」及び第41類に属する「図書及び記録の供覧、美術品の展示、映画の上映・製作又は配給、放送番組の制作」の効力の範囲に属しない。
理由 第1 本件商標
本件登録第4586957号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成よりなり、平成13年4月6日に登録出願され、第36類、第37類、第38類、第40類、第41類及び第42類に属する商標登録原簿に記載のとおりの役務を指定役務として、同14年7月19日に設定登録されたものである。

第2 イ号標章
被請求人が役務「提供するインターネットの画面上に、食べ歩きグルメや旅行等撮影した動画をアップロード、ブログ、ホームページ、日記、掲示板を作成する」に使用する(以下「使用役務」という。)標章として請求人が示すイ号標章は、別掲2のとおりの構成よりなるものである。

第3 請求人の主張の要旨
請求人は、「役務について使用するイ号標章は、本件商標の指定役務のうちの第38類に属する「電子計算機端末による通信」及びと第41類に属する「図書及び記録の供覧、美術品の展示、映画の上映・製作又は配給、放送番組の制作」(以下、併せて「本件役務」という。)の効力の範囲に属する。」との判定を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第2号証(枝番を含む。)を提出している。
1 判定請求の必要性
インターネット上の画面に甲第2号証の6に示すように被請求人が提供しようとしている役務を広告するために甲第2号証の1、甲第2号証の2、甲第2号証の3に示す表示態様でイ号標章を含む標章群が表示されている。このため、インターネット事業での被請求人の著名性を考慮すると、請求人が所有する甲第1号証で示す本件商標が有する特異な自他役務の識別機能や広告宣伝機能が短期間に急速に希釈化され、請求人が所有する商標権の存在価値が激減し、あたかも被請求人が所有する商標権であると世間一般に誤信を生ずる蓋然性が極めて高く、請求人が取引市場で不利益を受けるため。
2 イ号標章の説明
(1)インターネット上の画面に多数の擬人化された標章が移動しているようにみえるが、実は、甲第2号証の1ないし甲第2号証の3に示す表示態様は、一人若しくは二人の擬人化された基本的姿態の標章が、互いに所定の間隔を空けて複数で構成されて表示されていおり、前記各号証中、それぞれの矢印Aで示す標章は、二人の擬人化されたキャラクターで表示されている一の基本的姿態(この一の基本的姿態が請求人が指摘するイ号標章である。)が、請求人が所有する甲第1号証で示す商標権の商標と類似していると思われる。
(2)係る、複数の標章が時間の経過とともに同方向に活発に移動する態様で提供する役務の明るく楽しく活発的であって未体験であるが魅力的な世界に誘うようなイメージ(係るイメージは正に請求人が所有する商標権の特異な自他役務の識別機能そのものである。)を、画面を見るインターネットを利用する者に注意を引くように仕向け、提供する役務の内容を強烈に広告宣伝するものである。
3 イ号標章が商標権の効力の範囲に属するとの説明
(1)本件商標が、前記した態様でインターネット上の画面に表示されている二人一組の擬人化され希望に満ちた明るい姿態で取引者・需要者に対して広告活動をなしているイ号標章(甲第2号証の1、甲第2号証の2、甲第2号証の3それぞれの矢印Aに示す標章)とは、外観、観念において共通する類似の標章である。
(2)本件商標の役務の区分のうちの第38類に属する「電子計算機端末による通信」と第41類に属する「図書及び記録の供覧、美術品の展示、映画の上映・製作又は配給、放送番組の制作」なる役務が、甲第2号証の1、甲第2号証の2、甲第2号証の3それぞれにおいて矢印Aで示すとともに甲第2号証の6で示すように、被請求人が提供し提供しようとしている役務「食べ歩きグルメや旅行等撮影した動画をアップロード、ブログ、ホームージ、日記、掲示板を作成する」と類似する。
(3)上記した(1)及び(2)から、イ号標章を含む多数の擬人化された標章を用いて被請求人が提供し提供しようしている役務について使用する行為は、本件商標の商標権の効力の範囲に属するものである。
4 答弁に対する弁駁
請求人は、被請求人の答弁に対して次の弁駁をする。
(1)イ号標章が動画の一画面であるとしても、短時間でも、強烈な個性を持った意味内容や観念を暗示する態様の図形で構成された標章であることは、画面上、肉眼で充分識別可能であって、必ずしも、長時間静止している必要はなく、イ号標章の図形部分を商標として認識し得ると解しても不合理でない。
(2)本件商標とイ号標章は、二人一組の擬人化された、有力な集団へと発展する起爆材となる意味内容において、外観、観念において共通する類似の標章である。
(3)本件商標の指定役務中、第38類「電子計算機端末による通信」は、ネットワークを介して意思や情報を双方向で知らせる役務であるから、インターネット上での活発な宣伝広告に利用する役務である。また、同じく、第41類「図書及び記録の供覧、美術品の展示、映画の上映・製作又は配給、放送番組の制作」は、双方向型の広告配信システムの下で有用かつ効率のよい宣伝・広告をなすものである。
一方、イ号標章の使用役務は、被請求人の事業が主に宣伝・広告主から広告収入を得ることを事業の柱としていることを考慮すると、これを利用する広告・宣伝主に、有効かつ効率的な宣伝・広告の媒体であることを認識させ、第41類「図書及び記録の供覧、美術品の展示、映画の上映・製作又は配給、放送番組の制作」と同分野の宣伝広告主を募る意図が窺えるものであるから、本件商標の指定役務中の判定に係る役務と、イ号標章の使用役務は、類似の役務である。
(4)以上の検討事実から、インターネット事業での被請求人の著名性を考慮すると、イ号標章を含む多数の擬人化された標章を用いて被請求人が提供し提供しようしている役務について使用する行為は、本件商標の商標権の効力の範囲に属するものである。

第4 被請求人の答弁
被請求人は、「本件判定の請求は成り立たない。」との判定を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証の1ないし4を提出した。
(1)イ号標章の標章性について
商標法にいう「標章」とは「文字、図形、記号若しくは立体的形状若しくはこれらの結合又はこれらと色彩との結合」と定義される(商標法第2条第1項)。しかしながらイ号標章は甲第2号証より明らかなように「動画」の一画面であり、動画は標章に該当しない。
「動画」の一画面は肉眼で「静止画」として捉えることはできないし、また甲第2号証の1ないし3に示されたイ号標章は常に動いている状態であって長時間静止することもないから、イ号標章が「図形」に該当すると解しなければならない特殊な事情も存在しない。
(2)イ号標章の自他役務識別機能について
イ号標章は、甲第2号証及び当該動画が表示されるURLにより示されるように、動画で構成されたバナー広告(但し自社広告)に含まれる一画面の一部である。このバナー広告は、まず抽象化された複数の人(17人)が「わたしの志集」「俺はレオ」「たいやきベイベー」などと叫びながら右から左へ移動し(甲第2号証の1及び2、乙第1号証の1)、次に反対に左から右へと移動してきて(甲第2号証の3、乙第2号証の2)、「動画を撮って/見つけてホームページに」と「はろう。」との文字列の間で一塊になり(甲第2号証の4、乙第1号証の3)、最後に「世の中動いているほうがおもしろい。」の文字の下方で左右5人に別れて両腕を広げ、その間に「YAHOO!/JAPAN/ビデオキャスト」の文字を配した状態となる(甲第2号証の5、乙第1号証の4)。
したがって、イ号標章は、仮に図形に該当するとしても、バナー広告中において役務の効能・用途等、役務の質を需要者に説明して利用を促進するための一要素として記述的に使用されているにすぎず、商標法第26条第1項第3号に該当するので、商標権の効力が及ばない。

第5 当審の判断
1 本件商標とイ号標章の類否について
本件商標は、別掲1のとおりの構成よりなるところ、動きのあるやや太い線で二人の人型の図形が右向きに走っている様子を看取させるが、その構成からは、直ちに、親しまれた特定の観念及び称呼は生じないものである。
他方、イ号標章は、別掲2のとおりの構成よりなるものである。
そして、その構成は、大小二人の人型が左向きに走っている様子を看取させる図形であり、これからも、直ちに、親しまれた特定の観念及び称呼は生じないというのが相当である。
そこで、両者を比較するに、いずれも、人型の図形が二つ並んで走っている様子が看取されるものであるが、本件商標は、太い明瞭な線で表されたほぼ同じ大きさの人型が、大きな歩幅で右向きに走っているものであるのに対して、イ号標章は、輪郭が不明瞭な線で表された大小二つの人型が、小さな歩幅で左向きに走っているものであり、本件商標とイ号標章は、図形全体の構成、筆触等が明らかに相違し、両者の構成全体が看者に与える視覚的な印象において大きく異なるものものであるから、これらを時と所を異にして離隔的に観察した場合において、相紛れるおそれはないというのが相当である。また、ともに、特定の観念及び称呼は生じないものであるというべきであるから、両者は、観念及び称呼について、比較することができない。
さらに、第38類に属する「電子計算機端末による通信」は、移動体通信回線及び有線通信回線を用いて提供される役務形態を表示ものであり、また、第41類に属する「図書及び記録の供覧、美術品の展示、映画の上映・製作又は配給、放送番組の制作」は、一般公衆の利用に供する施設が提供する、あるいは、映画製作会社や番組製作会社が提供する役務であり、コンピュータプログラムの提供等による「食べ歩きグルメや旅行等撮影した動画をアップロード、ブログ、ホームページ、日記、掲示板を作成する」役務とは、その役務の質及び取引者、需要者を異にするものである。
そうすると、本件商標とイ号標章とは、外観、称呼及び観念のいずれの点においても相紛れるおそれのないものであり、かつ、本件役務と使用役務は、類似しない役務というべきである。
なお、被請求人の提供する役務において、被請求人はイ号標章の図形を含む動画をインターネットの画面に表示して使用していると主張するものであるところ、この動画に接する需要者等が、線で描かれた人型図形からなるものと理解するにしても、本件商標と被請求人がインターネットの画面で使用している動画とは、取引者、需要者に与える印象、記憶等は、著しく異なるものとなり、役務の出所につき誤認、混同を生じるおそれはないものというべきである。
2 まとめ
したがって、役務「提供するインターネットの画面上に、食べ歩きグルメや旅行等撮影した動画をアップロード、ブログ、ホームページ、日記、掲示板を作成する」に使用するイ号標章は、本件商標の商標権の役務のうちの第38類に属する「電子計算機端末による通信」及び第41類に属する「図書及び記録の供覧、美術品の展示、映画の上映・製作又は配給、放送番組の制作」の効力の範囲に属しないものといわざるを得ない。
よって、結論のとおり判定する。
別掲 別掲1(本件商標)


別掲2(イ号標章)

判定日 2008-05-16 
出願番号 商願2001-32342(T2001-32342) 
審決分類 T 1 2・ 9- ZB (Z36)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 熊谷 道夫 
特許庁審判長 井岡 賢一
特許庁審判官 堀内 仁子
鈴木 修
登録日 2002-07-19 
登録番号 商標登録第4586957号(T4586957) 
代理人 初瀬 俊哉 
代理人 網野 友康 

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