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審決分類 審判 一部無効 商4条1項11号一般他人の登録商標 無効としない Y30
審判 一部無効 商4条1項15号出所の混同 無効としない Y30
管理番号 1179260 
審判番号 無効2007-890104 
総通号数 103 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2008-07-25 
種別 無効の審決 
審判請求日 2007-06-29 
確定日 2008-05-26 
事件の表示 上記当事者間の登録第4921699号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
本件登録第4921699号商標(以下「本件商標」という。)は、「オレンジポップ」及び「ORANGE POP」の文字を上下二段に横書きしてなり、平成17年5月27日に登録出願され、第30類「コーヒー及びココア,コーヒー豆,茶,調味料,香辛料,食品香料(精油のものを除く。),米,脱穀済みのえん麦,脱穀済みの大麦,食用粉類,食用グルテン,穀物の加工品,ぎょうざ,サンドイッチ,しゅうまい,すし,たこ焼き,肉まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,べんとう,ホットドッグ,ミートパイ,ラビオリ,菓子及びパン,即席菓子のもと,アイスクリームのもと,シャーベットのもと,アーモンドペースト,イーストパウダー,こうじ,酵母,ベーキングパウダー,氷,アイスクリーム用凝固剤,家庭用食肉軟化剤,酒かす,ホイップクリーム用安定剤」を指定商品として平成18年1月13日に設定登録されたものである。

2 引用商標
請求人が引用する登録第614615号商標(以下「引用商標」という。)は、「POP」の文字を横書きしてなり、昭和36年3月16日に登録出願、第30類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品を指定商品として昭和38年5月28日に設定登録され、その後、昭和48年12月25日、昭和58年6月28日、平成5年10月28日及び平成15年4月8日の4回に亘り商標権の存続期間の更新登録がされ、さらに、平成16年8月25日に指定商品を第30類「和菓子,ビスケット,クラッカー,クッキー,ウエハース,ボーロ,チョコレート,チューインガム,乾パン,マシュマロ,キャラメル,ドロップ,キャンデー,タフィー,ヌガー,ビーンズ,スポンジケーキ,カステラ,シュークリーム,パイ,ワッフル,ドーナツ,ホットケーキ,アイスクリーム,シャーベット,アイスキャンデー,焼きりんご,パン」とする書換登録がされているものである。

3 請求人の主張の要点
請求人は、本件商標の指定商品第30類中の「菓子及びパン」についての登録を無効にする、審判費用は、被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第9号証(枝番を含む。)を提出している。
(1)本件商標は、指定商品第30類中の「菓子及びパン」について、商標法第4条第1項第11号及び同第15号に該当し、商標登録を受けることができない商標であり、その登録の無効を求める。
(2)引用商標の周知・著名性
請求人は、引用商標を表示した商品「キャンディ」(子供向け棒付きキャンディ)を昭和29年(1954年)に販売を開始し、昭和38年(1963年)には、本格的な生産が開始され(甲第8号証)、少なくとも昭和39年(1964年)の時点では、北海道地区では3販売所、東北地区は6販売所、信越地区は4販売所、関東地区は11販売所、中部地区は9販売所、関西地区は7販売所、中国地区では4販売所、九州地区は6販売所、合計で全国各地の50の販売所で販売されている(甲第6号証の1)。
その後、当該商品を扱う販売所は、1963年にフランチャイズ制度を導入したこともあって徐々に拡大し、1998年には、直営店舗は210店舗、フランチャイズ店舗は899店舗までになり(甲第9号証)、さらには、当該商品は、スーパーやコンビニエンスストアにも卸されている。
引用商標「POP」は、商品発売当時から現在まで50余年の長きに亘り、商品「キャンディ」(子供向け棒付きキャンディ)に使用し、一般には「ポップキャンディ」と愛称され、子供向けおやつの代名詞となっており、さらに、近年では、子供の頃に食した懐かしさから、おやつとして女子中高生、さらにはOL(オフィスレディ)にまでその販路を広げている。
このような経緯から、引用商標は、特に国内では、殆ど知らぬ人はいない著名商標と自負するものであり(甲第6号証ないし甲第9号証)、請求人が所有する登録商標の代表的な商標である。
(3)商標法第4条第1項第11号について
(ア)請求人は引用商標の商標権者であるところ、引用商標と本件商標とは、互いに類似するものであり、かつ、その指定商品である「菓子及びパン」についても同一又は類似するものであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当するものである。
そこで、両商標の類否について、以下検討する。
(イ)引用商標は、「POP」の欧文字よりなるものであり、「ホップ」の称呼が生じる。一方、本件商標からは、「オレンジポップ」の称呼のみならず、単に「ポップ」の称呼も生じ得る。
すなわち、本件商標「オレンジポップ/ORANGE POP」の「オレンジ」及び「ORANGE」は、色彩用語であり、それが商品「菓子及びパン」に用いられる場合は、「オレンジ色をした菓子及びパン」を示すものと判断され、また、商品の原材料としての果実「オレンジ」を示すとされるところであり、前述の色彩用語としての「オレンジ色」も、そもそも果実の「オレンジ」に由来することは間違いのないところであって、「オレンジ」及び「ORANGE」は、商品の色彩・品質の表示であると容易に理解されるところである。
しかも、本件商標における「オレンジ(又はORANGE)」の語は、「(1)ミカン科の果樹およびその果実の総称。(2)オレンジ色。赤みがかった黄色。」(甲第3号証の1)などといった意味を有する英語とその片仮名表記であり、国内においては日常的に親しまれている非常に平易な内容を有する語であり、一方、「ポップ(又はPOP)」の語は、「(Popularの略から)(1)大衆的なさま。時流にのってしゃれたさま。(2)ポップ・アートの。ポップスの。ポピュラー音楽の。」(甲第3号証の2)、「ポンと鳴る。」(甲第4号証)などといった意味を有する英語とその表音であって、通常の認識では、相互に何らかの関連性を有する語ではなく、結合することによって統一的な観念を想起させるものでもない。また、「オレンジ(又はORANGE)」の語は、前述の如く、日常的に親しまれている非常に平易な語であることからすると、これを、必ずしも日常的な語とはいえない「ポップ(又はPOP)」の語の前に位置させ、本件商標のように、全体として同一書体をもって一連に書しているとしても、当該商品との関係においては、「オレンジ(又はORANGE)」の語は、「ポップ(又はPOP)」の語と比べて識別力がはるかに弱い、若しくは無いことは明らかであって、両文字は、分離して認識され易いものといえる。
(ウ)さらに、商標法第4条第1項第11号に関しては、商標審査基準に記載されているとおり、商標の類否判断には、商品又は役務の取引の実情を考慮すべきであるが、上述したように、引用商標の「POP」の欧文字及びその表音である「ポップ」は、本件商標の登録出願時及び登録査定時には、キャンディ、特に子供向け棒付きキャンディの分野においては、周知・著名となっており、かかる著名商標の識別力の強さに鑑みれば、本件商標に接した需要者・取引者は、引用商標と同一の綴り字の「POP」若しくはその表音である「ポップ」の部分に着目し、引用商標を想起するものである。
したがって、本件商標の要部は、「ポップ」「POP」の各文字部分にあるといえる。
(エ)してみれば、本件商標は、構成文字全体から「オレンジポップ」の称呼が生じるほか、本件商標構成中の「ポップ」「POP」の各文字部分に相応して、単に「ポップ」の称呼をも生ずることは疑う余地はなく、本件商標と引用商標とは、称呼において同一又は類似の関係にある。
また、本件商標と引用商標とは、「POP」の外観及び観念においても、同一又は類似する関係にあることはいうまでもないことである。
(オ)以上のとおり、本件商標と引用商標とは、称呼、外観及び観念のいずれの点においても同一又は類似の関係にあり、また、その指定商品も同一又は類似とするものであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当し、その登録は、無効にされるべきものである。
(カ)以上の主張を支える判例として、商標「ホワイトカップル」と「カップル」を類似する商標と認めた、昭和55年5月29日東京高等裁判所民事第六判決・昭和五四年(行ケ)一四八号)がある(甲第5号証)。
ここに抜粋を引用すると、「『ホワイト』と『カップル』の二語から成る引用商標において、『ホワイト』の語が商標の構成部分となっている場合は、一般の需要者は白色を意味するものとして商品の色彩もしくは品質を表示するものと認識理解するとみられるから、この部分には自他商品の識別力がないと解され…『ホワイトカップル』の文字を…熟語的意味合いを有する一体不可分の語として認識理解できるとは認め難いから、引用商標は「カップル」の部分において称呼、観念の生ずる場合が少なからずありうるというべきで、「カップル」の称呼、観念を有する商標は引用商標と類似しないとした審決の判断は誤りと認められる。」とあり、正に、本件請求人の主張に重なる内容であるといえる。
この判決は、引用商標「ホワイトカップル」が、一部需要者により当該商標全体を「汚れなき(清純な)恋人同士」という統一的観念で捕えられる場合があり得ることも斟酌して下されており、それに比すれば、本件商標の全体は、前述の如く何ら統一的観念をもたらすことすらないものであり、この判例から、本件商標と引用商標が類似の商標とされるべきことは、明らかである。
(4)商標法第4条第1項第15号について
上述のように、本件商標の登録出願時及び登録査定時には、引用商標は、既に周知・著名であったことに鑑みれば、被請求人が、「POP」の文字を含む本件商標を菓子及びパンに付して販売したときは、当該製品が請求人の製造・販売に係る商品であるかの如く、誤認するおそれがあることは明らかである。
また、本号に規定する「他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標」とは、当該商標をその指定商品又は指定役務に使用したときに、当該商品等が他人の商品又は役務に係るものであると誤信されるおそれがある商標のみならず、当該商品等がその他人との間にいわゆる親子会社や系列会社等の緊密な営業上の関係又は同一の表示による商品化事業を営むグループに属する関係にある営業主の業務に係る商品等であると誤信されるおそれ、すなわち、広義の混同を生ずるおそれがある商標を含むと解されるところ(最高裁平成12年7月11日第三小法廷判決・民集54巻6号1848頁参照)、本件商標と周知・著名の引用商標とを比較すれば、本件商標は、引用商標の構成文字をそのまま包含するものであり、本件商標に接した需要者・取引者をして、上記「混同」のおそれがあるものといわざるを得ないところである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当し、その登録は、無効にされるべきものである。
(5)結び
以上の理由により、本件商標は、指定商品中「菓子及びパン」について、商標法第4条第1項第11号及び同第15号の規定に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項第1号の規定により、無効にされるべきものである。

4 被請求人の答弁の要点
被請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第12号証(枝番を含む。)を提出している。
(1)引用商標の周知・著名性について
請求人は、引用商標は50余年の長きに亘り商品「キャンディ」に使用されている、著名商標である旨主張している。
しかしながら、請求人が引用商標を使用していると主張するキャンディは、「ポップキャンディ」の名称で取引されているものである。請求人の提出に係る甲第6号証ないし甲第9号証を見ても、同商品は「ポップキャンディ」と表示されている。
さらには、乙第1号証は、インターネット上の検索サイト「google」での検索結果打ち出しであるところ、確かに「ポップキャンディ」 を検索すれば請求人の商品「ポップキャンディ」は検索されるが、単に「POP」「ポップ」と検索した場合では、請求人の商品は少なくとも上位には検索されなかった。請求人が主張するように、仮に請求人の商標「POP」が周知著名であるとすれば、たとえ「POP」が既成語であることを考慮しても、請求人商品が上位に検索されて然るべきと思料する。
一方、「ポップキャンディ」を検索した場合でも、請求人の商品以外に、江崎グリコ社の「ツインポップキャンディ」、「パワーポップキャンディー」、棒付きキャンディを意味する英語「lollipop(lollypop)candy」の片仮名表記である「ローリポップキャンディー」等の商品も併せて上位に検索された(乙第1号証及び乙第2号証)。
このことは、単なる「POP」のみでは、商品「キャンディ」との関係においてさえ請求人商品と他社商品を識別できないといった客観的事実を示している。
本件商標に関する異議の決定(乙第3号証)においても、「『ポップ(POP)』の文字(語)は、例えば、日常では『ポップアーチスト(pop artist)』『ポップアート(pop art)』『ポップジャズ(pop jazz)』や『ポップシンガー(pop singer)』などの用例の如く『大衆的、軽やかさ、即興的な』等の意味合いの語として理解される場合があり得ること、そして、これを指定商品との関係よりみれば、『ポップ菓子』や『ポップコーン(pop corn)』を想起しうる場合のある文字(語)ともいえる」と説示されているとおり、既成語でもある引用商標「POP」は、それのみでは指定商品との関係で自他商品識別力の強い語とはいえない。
特に、請求人使用に係る商品「棒つきキャンディ」との関係では、棒つきキャンディは英語で「ロリポップ(キャンディ)」(lollipop(candy)、lollypop(candy)」ということから(乙第4号証)、「POP」は商品「キャンディ」との関係では「棒付きキャンディ」を意味する「ロリポップ」を容易に想起させる語でもある。
よって、引用商標「POP」は、それ単独の態様では周知、著名とは認められず、「ポップキャンディ」の態様ではじめて請求人商品を認識できる程度の周知度といえる(なお、「ポップキャンディ」の態様でも他社商品と識別困難な場合があることは上述の検索結果が示すとおりである。)。
(2)本件商標の商標法第4条第1項第11号該当性について
請求人は、本件商標は、引用商標と同ー又は類似であり、商標法第4条第1項第11号に該当する旨主張する。
しかしながら、本件商標は「オレンジポップ/ORANGE POP」全体で一体の造語商標とのみ理解されるものであり、引用商標とは外観上は勿論のこと、称呼上、観念上も明確に区別される明らかに非類似の商標である。
第一に、外観上、本件商標は、同書体、同大の文字にて「オレンジポップ/ORANGE POP」と調和よく二段に表示してなるものであり、特段冗長なものでもない。よって、特に「オレンジ/ORANGE」と「ポップ/POP」に分離して考察しなければならない格別の事由が存しているものではない。
第二に、本件商標を称呼上からみても、「オレンジポップ」と一連に称呼して特別冗長でもなく、語呂も良く、部分的に軽重もない。
第三に、請求人は、本件商標構成中「オレンジ」「ORANGE」の文字は色彩用語であり、また、商品の原材料としての果実「オレンジ」を示すとも思料されるところであり、指定商品中「菓子及びパン」との関係においては、「ポップ(又はPOP)」の語と比べて識別力がはるかに弱い、若しくはないことは明らかであって、本件商標の要部は「ポップ」「POP」の各文字部分にあると主張する。
しかしながら、上述のとおり同書体、同大の文字にて調和よく二段に書された本件商標の構成よりすれば、これに接する需要者・取引者はこれが全体で一体の造語商標であることを直感するものである。その構成中の「オレンジ」「ORANGE」の文字部分を分離して抽出し、これが請求人が主張するような商品の色彩、原材料、品質の表示であると理解し、それ故「ポップ」「POP」の文字部分に照応した「ポップ」の称呼及び観念をもって取引に当たるとは到底考えられないものである。
さらに言えば、引用商標及び本件商標の構成中「POP」の文字部分は、商品「キャンディ」との関係では棒付きキャンディを意味する「ロリポップ」(lollipop、lollypop)を容易に想起させる語であること上述のとおりである。
また、「POP」「ポップ」の文字部分は、「ポンと鳴る、はじける、飛び出る」といった意味を有する英語及びその表音であり(乙第4号証)、商品「菓子及びパン」との関係では、「ポップ式容器入りの菓子」「ポップコーン」のように実際に使用されている語でもある。
したがって、商品「菓子及びパン」との関係では、「POP」は「棒付きキャンディ」や「容器から押し出すタイプの菓子」、いわゆる「ポン菓子」(コメなどの穀物に圧力をかけた後に一気に開放することによってふくらませて作った駄菓子;乙第5号証)、ポップコーン等を連想させる、識別力の乏しい語といわざるを得ない。
因みに、後述する登録第4629483号商標「ボトルポップ」(乙第6号証)、登録第4629484号商標「BOTTLE POP」(乙第7号証)は、「瓶容器から飛び出す(押し出す)」旨の意味合いを認識させるものであり、自他商品の識別力を有しないとして拒絶査定された経緯がある(その後、査定不服審判を経て登録。乙第6号証の2、乙第7号証の2)。
よって、本件商標中の「ポップ」「POP」の文字部分も識別力の乏しい文字部分に該当することとなり、本件商標は自他商品の識別力の乏しい語を結合してなる造語商標という他なく、「オレンジポップ/ORANGE POP」全体でのみ識別力を発揮し得る商標といえる。
加えて、ある商標を略称する場合には、構成中の前半部をもって略称されるのが通常であり、構成中の後半部をもって略称することは通常はあり得ないので、本件商標構成中の後半部「ポップ/POP」 の文字部分に照応した単に「ポップ」の称呼及び観念をもって取引に当たることはない。
よって、同書体、同大の文字にて調和よく二段に書された本件商標の構成においては、これに接する需要者・取引者は当然「オレンジポップ/ORANGE POP」全体で一連の、造語商標とのみ認識するものである。
してみれば、本件商標と引用商標とは語頭部における「オレンジ」「ORANGE」の有無により称呼及び観念上明確に識別され、彼此相紛れるおそれは皆無である。
因みに、本件商標と同様、「菓子、パン」等を指定商品とし、「?ポップ」「?POP」といった商標が引用商標と多数併存しており、その一部を以下に挙げる(乙第6号証ないし乙第12号証)。
・登録第4629483号「ボトルポップ」
・登録第4629484号「BOTTLE POP」
・登録第4765630号「おからポップ」
・登録第4225053号「パンプキンポップ」
・登録第4007955号「カリンポップ」
・登録第3294048号「CRUNCH POP」
・登録第4066665号「マーブルポップ」
これらの商標は、仮に前半部と後半部「ポップ」「POP」の文字部分に分離考察すれば、前半部は商品の品質表示等と理解されうる商標であるといえる。
特に、登録第4765630号「おからポップ」は本件と同様、請求人により異議申立がなされたが、当該商標からは「オカラポップ」の称呼のみが生ずるとして、称呼上も非類似の商標であるとしてその登録が維持されている(乙第8号証の2)。
上記のような商標が引用商標とは非類似と判断されて併存して登録されている状況において、本件商標がこれらの併存例と異なった判断をなされるべき合理的な理由は一切見当らない。上記併存例は本件商標も同様に引用商標とは区別されるものであることを示す客観的な証左であり、商標の併存登録例は、事例がまったく異なるとか、取引事情が著しく変化した等の特別な事情の変更のない限り、審査・審判の衡平、登録の予測可能性等の観点からも、上記登録例は尊重されるべきであることはいうまでもない。
本件商標は、既に異議の決定(乙第3号証)で明確に判断されているように、「全体で不可分一体の造語と認識し把握される」商標である。
よって、本件商標は、引用商標と明確に区別される明らかに非類似の商標であるから、商標法第4条第1項第11号には該当しない。
(3)本件商標の商標法第4条第1項第15号該当性について
請求人は、本件商標の登録出願時には既に引用商標は周知・著名であったとして、被請求人が「POP」の文字を含む本件商標を菓子及びパンに付して販売したときは、当該商品が請求人の製造・販売に係る商品であるかの如く、誤認するおそれがある旨主張する。
しかしながら、商標法第4条第1項第15号の混同のおそれがあるか否かは取引の実情などに照らし総合的に判断すべきであること、最高裁判決(最判平成12年7月11日民集54巻6号1848頁)が示すとおりである。
そこで、引用商標に関する取引の実情を考察するに、請求人が引用商標を使用していると主張するキャンディは、「ポップキャンディ」の名称で取引されているものであること、それ故引用商標「POP」の態様では周知・著名とはいえないこと上記のとおりであるから、本件商標が「POP」の文字部分を含むものであるとしても、これが請求人の業務に係る商品であると誤認されるおそれは皆無である。
さらには、これも上記のとおり、本件商標は、「オレンジポップ/ORANGE POP」で一体不可分であり、単に「ポップ」「POP」と略称されるおそれはないこと、請求人以外の「キャンディ」にも「ポップキャンディ」の文字を含む他の商品(一般名称である「ローリーポップキャンディ」や、江崎グリコ社の「ツインポップキャンディ」、「パワーポップキャンディー」等の商品)が存し、それ故「ポップキャンディ」といった態様でも他社商品と識別できない場合が存すること、一方で、これらのキャンディが請求人或いは請求人と何らかの関係のあるものの業務に係る商品であると混同されている事実は見当たらないこと、「POP」の語自体、棒付きキャンディとの関係では勿論、商品「菓子及びパン」との関係においても自他商品識別力の乏しい語であること、等の理由から、本件商標はその構成中に「POP」「ポップ」の文字を含むものであるとしても、本件商標を付した商品が請求人の業務に係る商品であると混同を生じるおそれがあるとする請求人の主張は、明らかに失当である。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するものではない。
(4)以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同第15号の規定に違反して登録されたものでもない。
よって、本件審判の請求は成り立たない。

5 当審の判断
(1)引用商標の周知・著名性について
請求人は、引用商標が商品「キャンディ」(子供向け棒付きキャンディ)に永年使用された結果、殆ど知らぬ人はいない程に著名になっている旨主張し、証拠を提出している。
そこで、検討するに、甲第6号証の1ないし41は、請求人の年次カタログの写しであり、甲第7号証の1ないし19は、請求人の商品を紹介するための「FUJIYA NEWS」と題するパンフレットの写しであり、甲第8号証は、請求人のインターネットホームページの写しと認められるところ、これらに請求人の取扱いに係る各種商品が掲載されていることが認められる。その他、請求人の商品又は引用商標を具体的に示す証拠はない。
しかしながら、これらの証拠を精査しても、商品「子供向け棒付きキャンディ」については、引用商標を構成する「POP」の文字が単独で使用されている例は殆ど見当らず、上記商品を特定するために、「ポップキャンデー」、「ポップキャンディ」、「POP CANDY」、「popcandy」、「ポップ/キャンディ」(二段書又は文字の大きさが異なる。)、「POP/CANDY」(二段書又は文字の大きさが異なる)、「ポップキャンディシリーズ」、「ジェラートポップキャンディ」、「GelatoPop」の如く、常に「キャンディ」、「CANDY」等の文字と共に表示されているのが実情である。
そうすると、請求人の上記商品は、「ポップキャンディ」又は「POP CANDY」の一連の態様・名称で取引されているとみるのが自然であるから、仮に、上記商品に使用する商標が取引者・需要者間に広く認識されているとしても、その商標はあくまでも一連一体のものとして認識し把握されているにとどまり、「POP」の文字のみからなる引用商標自体が取引者・需要者間に広く認識されているものとはいえない。
(2)本件商標の商標法第4条第1項第11号該当性について
(ア)請求人は、本件商標が「オレンジ」及び「ORANGE」の文字部分と「ポップ」及び「POP」の文字部分とに分離して認識され、単に「ポップ」の称呼をも生ずるとして、本件商標と引用商標とは類似するものである旨主張する。
しかしながら、本件商標は、上記1のとおりの構成からなるところ、各構成文字は同書、同大で外観上まとまりよく一体的に看取されるものであり、これより生ずる「オレンジポップ」の称呼も、冗長という程のものでなく、よどみなく一連に称呼し得るものである。
確かに、本件商標を「オレンジ」及び「ORANGE」の文字部分と「ポップ」及び「POP」の文字部分とに分離してみれば、「オレンジ(ORANGE)」の文字は、果実の「オレンジ」又は色彩用語としての「オレンジ色」を意味し、商品の色彩・品質表示として使用される場合があることは否めない。
一方、「ポップ(POP)」の文字は、「<物が>ポンと鳴る(はじける、破裂する)、ポン(パン)とはじける(破裂する)こと」等の意味を有する英語及びその表音であり、商品「菓子及びパン」との関係においては、「ロリポップ(lollipop、lollypop)」(「棒付きキャンディ」の意味)、「ポップコーン(popcorn)」、「ポップ式容器入りの菓子」、「ポン菓子」(コメなどの穀物に圧力をかけた後に一気に開放することによって膨らませて作った駄菓子の一種)等の商品が現に存在することから、これらの商品を連想・想起させる語であって、自他商品の識別力が比較的弱いものといえる。
そうすると、本件商標は、「オレンジ」及び「ORANGE」の文字部分と「ポップ」及び「POP」の文字部分とは、自他商品の識別機能においては軽重の差はないというべきであり、上記のとおり、外観上一体的に看取されるという構成において、後半の「ポップ」及び「POP」の文字部分のみが分離抽出され、独立した自他商品の識別標識として認識されるものとはいい難く、むしろ、全体として不可分一体の一種の造語として認識し把握されるものとみるのが自然である。
してみれば、本件商標は、「オレンジポップ」の一連の称呼のみを生ずるものと判断するのが相当である。
(イ)なお、請求人は、引用商標が周知著名になっているために、取引者・需要者が引用商標と同綴りの「POP」の文字又は「ポップ」の文字に着目し、引用商標を想起することから、本件商標の要部は「ポップ」及び「POP」の文字部分である旨の主張もするが、上記(1)のとおり、引用商標自体は取引者・需要者間に広く認識されているものとまではいえないから、請求人の主張は前提を欠くことになり、認めることはできない。
(ウ)他方、引用商標は、「<物が>ポンと鳴る(はじける、破裂する)、ポン(パン)とはじける(破裂する)こと」等の意味を有する英語を表し、「ポップ」の称呼を生ずるものである。
(エ)しかして、本件商標から生ずる「オレンジポップ」の称呼と引用商標から生ずる「ポップ」の称呼とは、「オレンジ」の音の有無という顕著な差異により明瞭に区別することができるものである。
そして、本件商標と引用商標とは、それぞれの構成に照らし、外観上判然と区別し得る差異を有するものであり、また、本件商標は親しまれた既成の観念を有しない一種の造語である以上、観念上引用商標と比較すべくもない。
したがって、本件商標と引用商標とは、称呼、外観及び観念のいずれの点からみても相紛れるおそれのない非類似の商標といわなければならないから、本件商標は商標法第4条第1項第11号に該当するものではない。
(3)本件商標の商標法第4条第1項第15号該当性について
請求人は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において引用商標が周知著名であったことを根拠に、引用商標と同綴りの「POP」の文字を含む本件商標が商品「菓子及びパン」について使用されると商品の出所の混同を生ずるおそれがある旨主張する。
しかしながら、上記(1)のとおり、引用商標自体が取引者・需要者間に広く認識されているものとまではいえないし、上記(2)のとおり、本件商標と引用商標とは非類似の商標であって、別異のものというべきであるから、本件商標をその指定商品中の「菓子及びパン」について使用しても、これに接する取引者・需要者が「POP」又は「ポップ」の文字部分に注目して引用商標を連想、想起するようなことはないというべきであり、該商品が請求人又は同人と経済的・組織的に何等かの関係を有する者の業務に係る商品であるかの如く、その出所について混同を生ずるおそれはないものと判断するのが相当である。
したがって、本件商標は商標法第4条第1項第15号に該当するものではない。
(4)まとめ
以上のとおり、本件商標は、その指定商品中「菓子及びパン」について、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号のいずれの規定にも違反して登録されたものではないから、同法第46条の規定により、その登録を無効にすべき限りでない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2008-03-27 
結審通知日 2008-04-02 
審決日 2008-04-15 
出願番号 商願2005-47048(T2005-47048) 
審決分類 T 1 12・ 271- Y (Y30)
T 1 12・ 26- Y (Y30)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 林 栄二 
特許庁審判長 林 二郎
特許庁審判官 杉山 和江
鈴木 修
登録日 2006-01-13 
登録番号 商標登録第4921699号(T4921699) 
商標の称呼 オレンジポップ、ポップ、ピイオオピイ 
代理人 水野 勝文 
代理人 加藤 恒久 
代理人 岸田 正行 

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