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審決分類 審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Y3233
管理番号 1177860 
審判番号 取消2007-300514 
総通号数 102 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2008-06-27 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2007-04-24 
確定日 2008-04-25 
事件の表示 上記当事者間の登録第1611727号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第1611727号商標の商標登録は取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
本件登録第1611727号商標(以下「本件商標」という。)は、「大崎八幡宮」の文字を縦書きしてなり、昭和55年1月19日に登録出願、第28類「酒類(薬用酒を除く)」を指定商品として、昭和58年8月30日に設定登録され、その後、二回にわたり商標権の存続期間の更新登録され、平成16年7月28日に、指定商品を第32類「ビール」及び第33類「日本酒,洋酒,果実酒,中国酒,薬味酒」とする指定商品の書換の登録がされたものであり、その商標権は、現に有効に存続しているものである。

2 請求人の主張の要点
請求人は、結論同旨の審決を求めると申し立て、その理由及び答弁に対する弁駁の理由を次のように述べ、証拠方法として、本件商標の商標登録原簿及び甲第1号証ないし甲第3号証を提出した。
(1)請求の理由
本件商標は、継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれによっても、その指定商品について使用された事実がない。
したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により取り消されるべきものである。
(2)答弁に対する弁駁
(ア)使用の事実
被請求人は、本件商標を使用していると主張するが、なんら使用の事実を示す証拠を提出していない。
(イ)本件商標の商標権者について
被請求人は、天賞酒造株式会社(以下「天賞酒造」という。)からまるや天賞株式会社(以下「まるや天賞」という。)への「改称」及び仙台市青葉区から柴田郡川崎町への「移転」の各手続が特許庁に対し行われ、商標登録済みの通知を受けている旨主張する。
確かに、平成17年3月7日に、天賞酒造の本店移転が仙台市青葉区から柴田郡川崎町へ移転していることは、天賞酒造の閉鎖事項全部証明書(甲第1号証及び甲第2号証)からも明らかであるが、天賞酒造からまるや天賞への「改称」は事実に反するものである。
すなわち、答弁書において被請求人となっているまるや天賞は、平成15年7月23日に成立した会社であって、天賞酒造から改称したものではない。まるや天賞の履歴事項全部証明書(甲第3号証)によれば、改称した事実は何ら記載されていない。被請求人であるまるや天賞と商標権者であった天賞酒造とは、住所及び代表取締役と清算人の氏名が一致しているが、全く別法人(会社)であることは歴然とした事実である。
仙台市青葉区から柴田郡川崎町に移転した天賞酒造は、その移転前の平成16年12月25日株主総会の決議により解散しており、平成18年2月28日仙台地方裁判所の命令により特別清算を開始して、その後の平成18年6月21日仙台地方裁判所の特別清算終結の決定確定により、平成18年6月23日登記、同日閉鎖されている(甲第2号証)。
上記の事実関係において、平成19年4月19日(乙第1号証には、平成18年となっているが、誤記と思料される。乙第3号証の1及び2には、受付年月日が平成19年4月19日と明記されている。)に改称による「登録名義人の表示変更登録申請」がなされたこと自体が重大な錯誤によるものといわざるを得ない。
(ウ)正当理由について
被請求人の主張する正当理由は、前記(イ)のように事実に反することをも含んでおり、事実の部分があるにしても、個人的な内容であって、商標法第50条第2項但し書にいうところの「正当な理由」には該当しないものである。
すなわち、正当な理由は、商標権者又は使用権者がその責めに帰すことのできない、予見困難な事情によって使用できなかった場合で、一般的には、特別立法により一定期間商標の使用が禁止された場合、天災地変などの不可抗力により使用できなかった場合、類焼、放火、破壊その他の第三者の故意又は過失により使用できなかった場合などであって、被請求人が述べる理由はこれらに該当しないものである。正当な理由として例外的に認められる理由は、厳格に解釈し適用されるべきものと思料する。
(エ)信義則違反(正当事由を含む。)について
被請求人が主張する譲渡交渉を行っていた事実は請求人も認めるし、請求人は円満解決による譲渡を希望していた。そのため、平成19年2月に特許庁に対して商標登録原簿及び商標権者である天賞酒造の会社謄本を入手したが、前述のように、商標権者である天賞酒造が解散して法律的に閉鎖されている事実が判明した。したがって、もはや譲渡交渉が不可能と判断した。さらには、商標権者ではない第三者と仮に交渉しそれが成立しても、その対価を閉鎖された商標権者(会社)に支払うことは不可能で、その第三者に支払うことの不当性から、もはや譲渡交渉ができないために、本件の不使用取消審判を請求した次第であり、何ら信義則に違反するものではない。何ら権原を有しない被請求人と譲渡交渉を行っても法律的に意味はなく、そのこと自体が有効な交渉ではないと思料する。
以上のとおりであるから、本件商標の登録を取り消すべきものである。

3 被請求人の答弁の要点
被請求人は、「本件審判の請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。」との審決を求めると答弁し、その理由及び弁駁に対する答弁の理由を次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第12号証(枝番を含む。)を提出した。
(1)本件商標の使用
本件商標の商標権(以下「本件商標権」という。)は、平成19年4月19日に、天賞酒造からまるや天賞への「改称」及び仙台市青葉区八幡3丁目1番48号から宮城県柴田郡川崎町大字今宿字小銀沢山1番地115への「移転」の各手続が特許庁に対し行われ、同年5月7日付けで、被請求人は、特許庁より上記商標登録済の通知を受けている(乙第1号証ないし乙第3号証の2)。
すなわち、本件審判は、その請求日である平成19年4月25日より前3年内に本件商標の使用がないことを理由とするものであるところ、前述のとおり、被請求人は、平成19年4月19日に特許庁に対し本件商標権について、上記「移転」及び「改称」の手続を行なって、本件商標を使用していることが明らかである。
(2)本件商標の商標権者について
天賞酒造とまるや天賞とは実質的に同一の会社であり、このことは乙第1号証ないし乙第3号証の2のとおり、当庁において登録名義人の表示変更・改称が認められ、平成19年4月19日商標登録済みの通知が被請求人に通知されていることからも明らかである。
(3)正当理由の存在
被請求人は、仙台市青葉区八幡3丁目1番48号で酒造業を営んでいたが、酒造業界の不況もあり、平成17年2月に、宮城県柴田郡川崎町大字今宿字小銀沢山1番地115へ移転し、機械・設備を更新して事業の再出発をすることとした。そのため、一時酒造業を休業したが、酒造製造業の免許移転に日時を要し、大河原税務署長より清酒製造免許通知を得たのは、平成18年5月11日であった(乙第4号証、乙第5号証)。
しかし、その間も被請求人は本件商標を使用する意思を有しており、平成15年3月20日に10年分の更新登録料を納付し、平成15年4月1日更新登録、平成16年7月28日に指定商品の書換登録を行なっている(商標登録原簿参照)。
したがって、被請求人は、本件商標の使用につき、真摯な意思を存しながら会社移転という止むを得ざる理由により酒類の製造及び商標の使用ができなかったものであり、商標法第50条第2項但し書にいう正当な理由がある。
(4)信義則違反(正当理由を含む。)
請求人と被請求人との間における本件商標についての譲渡交渉は以下のとおりである。
請求人は、平成16年5月に、被請求人が本件商標権を有することを認めて、被請求人に対し、本件商標の譲渡の申し入れを行なった(但し、その理由が昭和58年登録の本件商標が請求人の承諾を得ることなく行われたとするなど過去の経緯を全く無視するものであったため、過去の経緯の説明(当時の宮司の了解があったことなど)と商標使用の条件などについて最近まで交渉中であったものである。)。これに対し、被請求人は、平成16年5月26日付けの文書で「ご要望にはお応えすることが出来ない」旨回答した(乙第6号証)。
その後、請求人は、平成16年8月3日に、被請求人に対し「覚書」を示し、被請求人が引続き本件商標を使用することに同意するとして、その条件を提示した(乙第7号証)。これに対し、被請求人は、請求人の上記覚書を一部修正した「覚書」を請求人に提示した(乙第8号証)。
しかし、請求人から何の回答もないまま推移し、前記のとおり、平成17年2月に、被請求人は、仙台市より柴田郡川崎町に移転し、平成18年5月に酒造製造業の免許通知を得た。そして、平成18年7月13日に、竣工出荷初め式及び直会を行った(乙第9号証、乙第10号証)。
一方、請求人と被請求人との間においては、直接本件商標権の譲渡についての話し合いが引続き行われており、円満解決を計る立場から被請求人は本件商標の使用を控えてきた。平成19年2月23日に、請求人は、被請求人代理人に対し、FAXによる文書を送付してきた(乙第11号証の1及び2)。これに対し、被請求人は、平成19年3月9日に、請求人より提案された覚書(乙第7号証)及び要望事項(乙第11号証の2)を勘案して覚書を作成して、請求人に提示した(乙第12号証の2)。
以上のとおり、被請求人は、本件商標を継続して使用する意思があり、その譲渡を望む請求人との間で円満解決を計るべく努力して交渉中に、請求人は、平成19年4月24日に本件審判を請求したのである。
被請求人が請求人との間の交渉中に、本件商標を使用したならば、請求人との交渉は決定的に決裂することは明らかである。然るに、請求人は、以上の交渉の経過から被請求人が本件商標を引続き使用する意思を有しているのを十分知りながら、本件審判の請求に及んだものであって、これは、上記法の趣旨に反するのは勿論、商標法第50条第2項但し書の正当理由に該当する。少なくとも請求人の本件審判請求は、信義則上からも許されないというべきである(乙第6号証ないし乙第12号証の2)。
(5)むすび
したがって、本件商標の使用が仮りに3年間認められないとしても、その不使用の間、被請求人は、継続して使用の意思を有していたものであり、その不使用につき商標法第50条第2項但し書にいう正当な理由がある。

4 当審の判断
(1)本件商標の商標権者等と本件商標を使用していたという証明等について
商標権について移転(相続その他一般承継によるものを除く。)があったときは、商標法第35条において読み替えて準用する特許法第98条第1項第1号により、登録しなければ、移転の効力を生じないとしているところ、職権において、本件商標権の移転(相続その他一般承継によるものを除く。)について、商標登録原簿を調査したところ、その旨の登録はない。
また、相続その他一般承継の移転については、商標法第35条において読み替えて準用する特許法第98条第1項第1号括弧書により、登録しなくても移転の効力は生ずるが、遅滞なく、その旨を特許庁長官に届け出なければならない(商標法第35条において準用する特許法第98条第2項)ところ、職権において、相続その他一般承継の移転について、本件商標の商標登録原簿を調査したが、その旨の登録もない、かつ、甲第3号証によれば、一般承継があった旨の登記もない。
そうとすると、本件商標権の商標権者は、天賞酒造であるとみるのが相当である。
しかし、天賞酒造とまるや天賞とは、住所及び清算人と代表取締役の氏名が一致している(甲第2号証及び甲第3号証)ことから、天賞酒造がまるや天賞に通常使用権を許諾し、まるや天賞が通常使用権者とも推認できる。
そこで、商標権者(天賞酒造)、専用使用権者又は通常使用権者(まるや天賞)のいずれかが、本件審判の請求の登録(平成19年5月18日)前3年以内に日本国内において、請求に係る指定商品のいずれかについて本件商標を使用していたか否かについて検討する。
ところが、被請求人は、本件審判の請求の登録(平成19年5月18日)前3年以内に日本国内において、商標権者(天賞酒造)、専用使用権者又は通常使用権者(まるや天賞)のいずれかが請求に係る指定商品のいずれかについて本件商標を使用していたという事実を証明していない。
なお、被請求人は、まるや天賞が、平成19年4月19日に、特許庁に対し本件商標権についての「移転」及び「改称」の手続を行なっていたから、本件商標の使用をしていた旨主張する。
しかし、上記「移転」及び「改称」の手続を行なったことが、本件商標をその指定商品について使用したものとみることは、商標法第50条第2項の規定から到底認めることができないのみならず、前記のとおり、被請求人は、本件審判の請求の登録(平成19年5月18日)前3年以内に日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが請求に係る指定商品のいずれかについて本件商標を使用していたという事実を証明する証拠を何ら提出していないから、その旨の主張は採用できない。
(2)正当な理由の存否について
天賞酒造とまるや天賞とは、前記のとおり、住所及び清算人と代表取締役の氏名が一致している(甲第2号証及び甲第3号証)ことから、天賞酒造がまるや天賞に通常使用権を許諾していたとも推認できることから、正当な理由の存否について検討する。
(ア)被請求人は、本件商標を使用していないことについて正当な理由が存在するとして、以下のように主張する。
被請求人は、仙台市青葉区八幡3丁目1番48号で酒造業を営んでいたが、酒造業界の不況もあり、平成17年2月に、宮城県柴田郡川崎町大字今宿字銀沢山1番地115へ移転し、機械・設備を更新して事業の再出発をした。そのため、一時酒造業を休業したが、酒造製造業の免許移転に日時を要し、大河原税務署長より清酒製造免許通知を得たのは、平成18年5月11日であった。しかし、その間も、被請求人は、本件商標を使用する意思を有しており、平成15年3月20日に10年分の更新登録料を納付し、平成15年4月1日更新登録、平成16年7月28日に指定商品の書換登録を行なっている。したがって、被請求人は、本件商標の使用につき、真摯な意思を存しながら会社移転という止むを得ざる理由により酒類の製造及び商標の使用ができなかったものであり、商標法第50条第2項但し書にいう正当な理由がある。
(イ)しかしながら、上記(ア)の被請求人の主張は、以下の理由により採用することができない。
商標は、商品・役務について継続的に使用されることにより、商標に商標使用者の業務上の信用が化体され、顧客吸引力が高まり、財産的価値が発揮されるものであるから、商標法により商標権者に登録商標を独占的に使用させることを保護しているものであり、登録商標をその指定商品等について使用する意思のみをもって、当該登録商標の使用を認めることとすれば、上記商標法の目的に反するばかりでなく、当該商標の使用を欲する者の商標採択の範囲を狭め、国民一般の利益を損なう結果ともなり、請求により、このような商標登録を取り消そうとする不使用取消の審判制度の趣旨にも反するものであるから、例え、登録商標の使用の意思を有していたとしても、本件審判の請求の登録前3年以内に現実の使用がない限り、その商標登録を取り消されてもやむを得ないといわざるを得ないところである。
上記商標法の目的及び商標登録不使用取消の審判制度の立法趣旨からみれば、商標法第50条第2項但し書にいう「正当な理由」があるといえるためには、例えば、その商標の使用をする予定の準備を進めていたにもかかわらず、天災地変等によって工場が等が損壊した結果、その使用ができなかったような場合や時限立法によって一定期間(3年以上)その商標の使用が禁止されたような場合など、登録商標を使用しないことについて、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者の責めに帰することができない特別の事情が存在することが不可欠と解される。
これを本件についてみると、被請求人のいう登録商標の不使用についての正当な理由は、前記(ア)のとおり、酒造業界の不況、会社の移転、酒造製造業の免許移転につき日時を要したことなどである。しかし、不況により商品の売れ行きが伸びず、やむなく本件商標の使用を停止したことは、いわば企業の内部的事情にすぎず、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者の責めに帰することができない特別の事情に該当するものとは認められない。
(ウ)以上によれば、被請求人が、本件商標を使用しないことについて、被請求人の責めに帰することができないやむを得ない事情があり、不使用を理由に本件商標を取り消すことが社会通念上酷であるとまで認めることはできない。
なお、被請求人は、請求人との間で、本件商標についての譲渡交渉を進めていたものであるから、本件商標の使用を控えてきたのであり、請求人は、被請求人が本件商標を引続き使用する意思を有しているのを十分知りながら、本件審判の請求に及んだものであるから、不使用の正当理由に該当するし、少なくとも請求人の本件審判請求は、信義則上からも許されない旨主張するが、前記商標法の目的及び商標登録不使用取消の審判制度の立法趣旨からみれば、本件商標についての譲渡交渉と不使用の正当理由とは何ら関係を有しないものというべきである。また、譲渡交渉中に本件審判を請求することのみをもって、信義則に反するということもできない。
したがって、本件商標を請求に係る指定商品に使用していないことについて、商標法第50条第2項但し書にいう「正当な理由」があると認めることはできない。
(4)むすび
以上のとおりであるから、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により、取り消すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2008-02-28 
結審通知日 2008-03-03 
審決日 2008-03-14 
出願番号 商願昭55-2681 
審決分類 T 1 31・ 1- Z (Y3233)
最終処分 成立  
特許庁審判長 中村 謙三
特許庁審判官 津金 純子
小畑 恵一
登録日 1983-08-30 
登録番号 商標登録第1611727号(T1611727) 
商標の称呼 オーサキハチマングー、ハチマングー 
代理人 特許業務法人英知国際特許事務所 
代理人 阿部 長 

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