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審決分類 審判 全部取消 商51条権利者の不正使用による取り消し 無効としない Y33
管理番号 1177668 
審判番号 取消2007-300222 
総通号数 102 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2008-06-27 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2007-03-02 
確定日 2008-04-14 
事件の表示 上記当事者間の登録第4961520号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4961520号商標(以下「本件商標」という。)は、平成17年6月10日に登録出願され、「クジュウセンバヅル」の片仮名文字と「久住千羽鶴」の文字とを上下2段に横書きしてなり、第33類「日本酒,洋酒,果実酒,中国酒,薬味酒」を指定商品として、同18年6月16日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張
商標法第51条第1項の規定により本件商標の登録を取り消す。審判費用は、被請求人の負担とする。との審決を求めると申し立て、その理由及び被請求人の答弁に対する弁駁の理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第14号証(枝番を含む)を提出した。
1 請求の理由
(1)本件商標の手続の経緯及び態様は、上記第1のとおりである。
(2)本件商標の使用の態様
(イ)本件商標の商標権者である被請求人は、故意に、本件商標の使用の態様を、別掲(1)に示す「使用商標1」(以下「使用商標1」という。)のように改変して、これを胴ラベルに書した商品「清酒」を製造し販売している(甲第2号証)。
使用商標1は、カタカナ文字の振り仮名を省き、「久住」と「千羽鶴」とを、一連ではなく分離して別々に記載し、「久住」を小さく、かつ、「千羽鶴」を大きく記載しているものであって、「千羽鶴」の部分がことさらに目立つようになっている。
(ロ)本件商標の商標権者である被請求人は、故意に、本件商標の使用の態様を、別掲(2)に示す「使用商標2」(以下「使用商標2」という。)のように改変して、これを金属製栓覆上部に書した商品「清酒」を製造し販売している(甲第2号証)。
使用商標2は、カタカナ文字の振り仮名を省き、「久住」を省いて「千羽鶴」とのみ記載しているものであって、あたかも商標が「千羽鶴」であるかのごとく受けとられるようになっている。
以下、「使用商標1」及び「使用商標2」を併せていうときは「使用商標」という。
(3)引用商標
請求人の関連会社である兵庫県姫路市材木町35番地に所在する今井酒造合名会社は、下記の登録商標を所有している(甲第3号証の1及び甲第3号証の2、以下「引用商標」という)。

商標: 千羽鶴(縦書)
登録番号: 商標登録第1616065号
出願日: 昭和55年11月26日
出願番号: 昭和55年商標登録願第95524号
公告日: 昭和57年12月1日
公告番号: 昭和57年商標出願公告第75462号
登録日: 昭和58年9月29日
更新登録日:平成5年10月28日
更新登録日:平成15年5月27日
書換登録日:平成16年8月18日
区分: 国際分類第33類(書換後)
指定商品: 日本酒,洋酒,果実酒,中国酒,薬味酒(書換後)
(4)引用商標の請求人への使用許諾
請求人は、引用商標につき、今井酒造合名会社から通常使用権の許諾を受け、昭和58年10月1日以降現在に至るまで、商標「千羽鶴」を付した商品「清酒」を製造して販売してきているものである(甲第4号証並びに甲第5号証及び甲第6号証)。
(5)使用商標と引用商標の比較
(イ)使用商標1からは、その目立つ「千羽鶴」の部分から自然に「せんばづる」の称呼が生じる。一方、引用商標からは、当然に「せんばづる」の称呼が生じる。よって、使用商標1の称呼と引用商標の称呼とは同一である。
(ロ)使用商標2からは、当然に「せんばづる」の称呼が生じる。一方、引用商標からは、当然に「せんばづる」の称呼が生じる。よって、使用商標2の称呼と引用商標の称呼とは同一である。
(ハ)使用商標1からは、その目立つ「千羽鶴」の部分から自然に「千羽鶴(『紙で作った折鶴を糸に通し、数多く連ねたもの』又は『模様などに、多数の鶴の形を染め出したもの』、甲第7号証)」の観念が生じる。一方、引用商標からは、当然に「千羽鶴(『紙で作った折鶴を糸に通し、数多く連ねたもの』又は『模様などに、多数の鶴の形を染め出したもの』)」の観念が生じる。よって、使用商標1の観念と引用商標の観念とは同一である。
(ニ)使用商標2からは、当然に「千羽鶴(『紙で作った折鶴を糸に通し、数多く連ねたもの』又は『模様などに、多数の鶴の形を染め出したもの』)」の観念が生じる。一方、引用商標からは、当然に「千羽鶴(『紙で作った折鶴を糸に通し、数多く連ねたもの』又は『模様などに、多数の鶴の形を染め出したもの』)」の観念が生じる。よって、使用商標2の観念と引用商標の観念とは同一である。
(6)商標法第51条第1項の該当性
本件商標の商標権者である被請求人は、故意に、本件商標の態様を使用商標1又は使用商標2のごとくに改変して商品「清酒」に使用し、請求人が製造し販売している商品「清酒」に付している引用商標(甲第5号証及び甲第6号証)と商標の称呼及び観念を同一のものにし、被請求人の商品を請求人の商品と混同が生じるようにしているのであるから、「商標権者が故意に指定商品・・・についての登録商標に類似する商標の使用・・・であって・・・他人の業務に係る商品・・・と混同を生ずるものをしたとき・・・」に該当する。
(7)本件審判請求に至った経緯
請求人は、平成17年4月に、被請求人が標章「千羽鶴」を付した商品「清酒」を製造し販売している事実に気づき、同月末に、内容証明郵便にて、被請求人に対して、商標権侵害に該当するから標章「千羽鶴」の使用を止めるように、と通知した。
すると、平成17年5月中旬になって、被請求人から、内容証明郵便にて、「被請求人には、標章『千羽鶴』について『先使用権』がある」との抗弁を記載した回答書が、請求人に送られてきた。
折り返し、平成17年5月下旬に、請求人は、被請求人に対して、「『先使用権』を有するためには、商標法第32条に規定されている要件を満たさねばならず、引用商標の出願日前(注:昭和55年11月26日前)において被請求人の標章『千羽鶴』が『需要者の間に広く認識されている』状態には無かったものと思われるから、もし、被請求人が『「需要者の間に広く認識されている」状態にあった』と言うならば、その証拠を示されたい、また、標章は『同一』でなくてはならず、裁判の判決先例によると、文字商標の場合、原告商標の出願前に被告が使用し需要者間に広く認識されていた標章と現在被告が使用中の標章とでは文字の字体が異なっているときには『先使用権』の成立を否定しているから、どの文字の字体の標章『千羽鶴』につき『先使用権』を有すると言うのか字体を特定して明らかにされたい」等々を、内容証明郵便により伝えたところ、以降、連絡が絶えてしまった。
本件商標の出願日が平成17年6月10日であることからして、被請求人は、商標法第32条に規定されている要件は満たしておらず、「先使用権」を有していないため、標章「千羽鶴」は使用できないことに気づき、本件商標の出願をなしたものと思われる。
しかしながら、被請求人は、本件商標の登録を得た後において、「『久住』を小さく記載し『千羽鶴』を大きく記載する」という姑息な改変を行なった使用商標1を使用し続けているのである。
請求人は、本件商標の存在に気づいて、被請求人の商品「清酒」の現物(甲第2号証)を入手し、さらに追加して調べてみたところ、被請求人の製造・販売にかかる標章「千羽鶴」を付した商品「清酒」や商標「『久住』を小さく記載し『千羽鶴』を大きく記載した『久住千羽鶴』」を付した商品「清酒」は、現在では、様々な字体で標章・商標を書いたものが、九州地方を中心に販売され続けていることが判明した(甲第8号証の1乃至甲第8号証の6)。
今井酒造合名会社及び請求人としては、このような事態は、もはや黙認して放置することはできないので、被請求人に対して民事・刑事を問わず法的な全責任を追及する予定であるが、その前提として、被請求人が「自分は、自己が所有している登録商標である登録第4961520号『久住千羽鶴』を使っているつもりでいた」などとの「侵害の故意」を否定する言い逃れをするかもしれないので、このような言い逃れをあらかじめ封じておく必要があり、そのために本件審判の請求に及んだ次第であり、被請求人の「『久住』を小さく記載し『千羽鶴』を大きく記載した『久住千羽鶴』」は数種類のバリエーションが存在していることが確認されているが(甲第8号証の2、甲第8号証の4乃至甲第8号証の6)、その中でも最も「久住」の文字が大きいものを選んで本件審判の使用商標1及び使用証拠(甲第2号証)とするのであり、これについて「違法」と判断されれば、これよりも「久住」の文字が小さい『久住』を小さく記載し『千羽鶴』を大きく記載した『久住千羽鶴』」も違法であることは、論をまたないこととなるであろう。
(8)結論
上述のとおりであるから、商標法第51条第1項により、本件商標の登録は取り消されて然るべきである。
2 弁駁の理由
(l)請求人適格について
被請求人は、請求人適格を争っているものと解釈して、請求人の見解を述べる。
本件審判は商標法第51条第1項に基づく審判請求であり、商標法第51条第1項は「・・・何人も、その商標登録を取り消すことについて審判を請求することができる・・・」と明文で規定しているのであるから、商標権者だけでなく「誰であっても」商標法第51条第1項に基づく審判を請求することが可能である。したがって、請求人適格を争う趣旨であれば、条文の文言に反し、理由はない。
(2)改変の故意について
被請求人は、改変の故意について争っているが、仮に、被請求人が主張しているとおり使用商標が本件商標の出願前から使用されていたとしても、被請求人の主張は、「故意の有無」の問題と「作為・不作為」の問題を誤解して混同しているだけのことであって、失当である。例えば、「故意」犯の「殺人罪」であっても「不作為」によって行なわれることがあるのである(甲第9号証)。
本件商標の登録後は、被請求人は、登録した態様にしたがって本件商標を使用する義務を負っているのであり、「使用している商標の態様」が「登録商標の態様」と食い違っていて、すでに被請求人が知っている今井酒造/請求人の「千羽鶴」と混同を生じるおそれがある場合には、被請求人は、本件商標の登録後可及的速やかに「登録商標の態様」に合わせて「使用している商標の態様」を訂正しなければならない「作為義務」を負っている。
それにもかかわらず、訂正をすることなく「従前のままの態様の商標」の使用を継続すれば、かかる「『故意に訂正をしない』という『不作為』」により商標法第51条第1項に該当することとなるのである。
ちなみに、商標法第51条第1項については「……当初過失であってもその後このような事態を認識しながら〔訂正せずに〕その使用を続ければ、もちろん本条に該当する……」と解釈されており、訂正する「作為義務」があること、訂正することなく「従前のままの態様の商標」を継続して使用すれば「不作為」により商標法第51条第1項に該当すること、がすでに明らかとなっている(甲第10号証)。
よって、仮に、被請求人が主張しているとおり使用商標が本件商標の出願前から使用されていたとしても、被請求人は「不作為」による「故意の改変」に該当することとなり、商標法第51条第1項に該当するのである。
(3)使用商標2について
被請求人は、「・・・使用商標2は、『千羽鶴』のみの構成態様であり、本件商標『久住千羽鶴』とは類似するものではない……」と主張する。確かに、使用商標2だけを切り離し、これのみを観察するならば「『千羽鶴』のみの構成態様である」と言う余地はあろうが、本件については、「使用商標1が記載された『胴ラベル』が貼付されている一升瓶の『金属製栓覆上部』に使用商標2が記載されている」という事実が存在し、この点が重要である。
商標は、取引者・需要者にとって商品の出所を示す識別標識であるから、使用商標2の解釈に際しては、使用商標2を「金属製栓覆上部」に付した被請求人の主観的な意思・目的ではなく、取引者・需要者の見地から判断するのが相当である(この問題については、浦和地方裁判所平成3年1月28日判決(判例時報1394号掲載)が、ある標章を自他商品の識別標識として使用したかどうかにつき「これを使用した者の主観的な意思・目的によるものではない」と判示しており(甲第11号証)、残念ながら公式判例集に登載された判例ではないものの、十分に参考となるものである。したがって、仮に被請求人が主観的な意思としては別個の商標を使用したつもりであったとしても、取引者・需要者の見地から使用商標2について判断するのが相当である)。
請求人が市場を調査した範囲では、商品「清酒」につき、「胴ラベル上の文字商標」と「金属製栓覆上部の文字商標」とで異なったものを使用した例は全く発見できなかった。このような市場慣行からすれば、取引者・需要者が使用商標2に接したときは、取引者・需要者は、その胴ラベルの使用商標1の文字を一部省いたもの、と認識するのが自然であって、胴ラベルの商標とは異なった商標が付してあるとは認識しないであろう。
よって、現実の使用状況を考慮して判断すれば、使用商標2は本件商標を改変し「久住」を省いたものであって、本件商標と類似する範囲である、と言えるものである。
(4)使用商標1の称呼について
被請求人は、使用商標1の称呼について、「・・・『センバヅル』の称呼が生ずるとしても・・・『クジュウセンバヅル』の称呼をも生ずる・・・」と主張しているが、使用商標1から「センバヅル」の称呼が生じる以上は、登録第1616065号商標「千羽鶴」の称呼「センバヅル」と同一であり、「他に『クジュウセンバヅル』の称呼も生ずる」ことをもってしても、使用商標1と登録第1616065号商標「千羽鶴」との称呼上の同一性を否定することはできない。よって、被請求人のかかる主張は全く意味が無い。
(5)「混同」について
被請求人は、「混同」について争い「・・・実際の商取引の現場においては、出所の混同は生じていないと推認し得るを相当と思料する・・・」と主張しており、かかる主張は「現実の『混同』は生じていないから、『混同』の要件を欠くため、商標法第51条第1項には該当しない」旨の主張と受け取れる。
しかしながら、商標法第51条第1項の「混同」については、「・・・商品若しくは役務の出所の混同を生じるおそれ・・・」と解釈されており(甲第10号証)、「現実の混同」が生じていなくとも「混同のおそれ」があれば足りるものである。
称呼「センバヅル」及び観念「千羽鶴」の同一性に照らし、本件では「混同のおそれ」は十分に存在するから、被請求人のかかる主張は失当である。
(6)「現在では使用商標1は使用していない」ことについて
被請求人は、「・・・請求人は使用商標として使用商標1を示しているが、被請求人においては、乙第7号証3乃至乙第7号証6に示すラベル及び胴張りを現在使用している。又、その内、乙第7号証3に示す『久住千羽鶴』の胴張りは平成18年9月25日に納品・販売を開始し、乙第7号証4に示す『久住/千羽鶴』の胴張りは平成14年3月1日に納品・販売を開始している・・・」と主張する。
請求人が入手した「使用商標1が記載された『胴ラベル』の瓶入り」のものは、甲第2号証の3枚目の写真から判読できるように、「製造年月」の箇所には「18.9.」と記載されていて、平成18年9月の製造であることが明らかである。
ところで、商標法52条は、「前条第一項の審判は、商標権者の同項に規定する商標の使用の事実がなくなった日から五年を経過した後は、請求することができない」と規定している。
仮に、甲第2号証の写真の「一升瓶入り清酒」を製造・販売した直後に被請求人が使用商標1の使用を止めた、と仮定しても、いまだに平成18年9月から5年は経過していないので、商標法52条に照らし、被請求人のかかる主張は失当である。
(7)先使用権の成否について
請求人としては、商標法第51条第1項に基づく登録取消審判において、商標法第32条の「先使用権」が「抗弁」となり得るのか疑問であるが、請求人(及び今井酒造)と被請求人との間の紛争の中核の問題が「『先使用権』が成立するか否か」であるので、この問題について論じる。
国家の制度としては、商標は登録した上で使用するのが大原則であり、登録を取得した者が独占権を取得し、他の者は登録を取得した商標権者から使用許諾を受けるのでなければ使用できないのが大原則である。
商標登録制度は明治時代から始まっており、商標登録制度について「知らなかった」では済まされない問題であることは、被請求人も了解しているであろうと思料する。
出願・登録を懈怠し、商標を登録しなかった者は、第三者が同ー又は類似の商標を登録して独占権を取得した後については、商標権者である第三者から使用許諾を受けるのでなければ、使用を止めなければならないのが大原則である。
ただ、その例外として、第三者の登録商標の出願前において未登録ながら周知になっていたものについては、商標法第32条の要件を満たせば、使用許諾を受けなくても(使用の対価を商標権者に支払わなくても)継続して使用し続けることができることとなっている。
このことは、国家の法律を順守して出願・登録し、きちっと商標権を得た商標権者にとっては、いわれのない権利の制限であり、使用の対価も受けずに強制的に他者の使用を承認せざるを得なくなり、商標権者の犠牲・負担のもとに、法律を順守せず出願・登録を懈怠した他者が継続して無償で使用し続けることを意味するのである。
いずれにしても、「先使用権」は、商標登録制度の大原則の「例外」であり、法律を順守した商標権者の犠牲・負担のもとに法律を順守せず懈怠した他者の使用を保護するのであるから、「先使用権」の範囲については、狭く、極めて限定的であって「商標権者の犠牲・負担」を可能な限り少なくするのが、その制度趣旨上明らかである。
(8)むすび
上記のとおり、被請求人の主張は、条文に反するか、判例に反するか、のいずれかであり、被請求人の独自の見解を述べているに過ぎないものであって、全く理由がないのは明らかであるから、商標法第51条第1項により、本件商標の登録は取り消されて然るべきである。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第7号証(枝番を含む。)を提出した。
〔答弁の理由〕
(1)被請求人の登録商標の手続の経緯及び本件商標の態様については、認める。
(2)使用商標の態様については、使用商標を使用している点は認めるが、請求人が示した使用商標1は、本件商標の出願前から使用を行なっているものであり、後述するように、被請求人は、昭和29年の会社設立以来、「千羽鶴」「久住/千羽鶴」の標章を付した製品である「清酒」を製造し、主に九州を中心に販売を行なって来たものであるから、故意に本件商標の態様を改変したものではない。
又、使用商標2は、「千羽鶴」のみの構成態様であり、本件商標の「久住千羽鶴」とは類似するものではないから、商標法第51条第1項の規定による使用には該当するものではないと思料する。
(4)引用商標の経緯は認める。
(5)引用商標の請求人への使用許諾については、請求人が、引用商標である登録第1616065号商標の通常使用権の許諾を昭和58年10月1日に商標権者である今井酒造合名会社から受けていることは、甲第4号証の証明書により認められるが、被請求人としては、商標登録原簿謄本に通常使用権の設定登録がなされていないことから、これを知る術はなく、原則として、登録第1616065号商標の商標権の権利を行使し得るものは、商標権者である今井酒造合名会社であると思料する。
又、証明書には、「当該使用権者は、昭和58年10月1日以降現在に至るまで下記の登録商標を使用しております。」との記載はあるものの、これを証する何等具体的な証明はなされていない。
(6)使用商標と引用商標の比較については、「千羽鶴」の部分からは「センバヅル」の称呼が生ずるとしても、使用商標1からは「クジュウセンバヅル」の称呼も生ずるものと思料する。
即ち、後述する鑑評会等における入賞の際の賞状においても、「千羽鶴」と「久住千羽鶴」と記載されていることから、例え、「久住」の部分が小さく書されていたとしても、継続的に使用した結果、取引者あるいは需要者等において「久住千羽鶴」と認識され、「クジュウセンバヅル」の称呼をも生ずると解するを相当と思料する。
尚、請求人の主張する前記第2、1、「(5)使用商標と引用商標の比較」中の(ロ)は「千羽鶴」から生ずる「センバヅル」の称呼の説明であり、(ハ)(ニ)は、「千羽鶴」についての観念の記載である。
(7)商標法第51条第1項の該当性について、被請求人は、自己の使用する標章「千羽鶴」及び「久住/千羽鶴」を既に50数年に亘って使用しており、請求人から警告書が送付されるまで登録商標の存在すら知らなかったものである。確かに、現在では、インターネットで特許庁のホームページから容易に検索することは出来るとしても、これから使用する標章の検索を行なうことはあっても、永年使用している標章をわざわざ検索することはありえず、ましてや、後述の通り、既に全国新酒鑑評会や熊本国税局主催の鑑評会において入賞し、少なくとも大分県及び九州地方においては既に周知・著名な標章になっている自己の標章を、わざわざ改変して周知・著名とも思われない請求人の引用商標と同一・類似の構成態様にしたところで被請求人において何等得るべきものはないことは明らかである。
そして、請求人が指摘する使用商標は、本件商標の出願日以前から使用しているものであるから、使用商標の使用に当たって被請求人には故意はない。
(8)本件審判請求に至った経緯については、乙第1号証1乃至乙第1号証5に示すように、請求人から被請求人宛てに、「警告書」「通知書」「ご連絡」と題する書面が平成17年4月27日付け、平成17年5月23日付け、平成18年2月27日付け、平成18年3月6日付け、平成18年9月5日付け内容証明郵便で計5回送達されている。これに対して、被請求人は請求人宛てに、乙第2号証1乃至乙第2号証3に示すように、平成17年5月16日付け、平成17年7月22日付け、平成18年2月7日付けで「回答書」を送付している。
そして、被請求人は、「千羽鶴」「久住/千羽鶴」が自社の主力商品であることから平成17年7月22日付け回答書において、請求人に対して、「…、商標権を譲渡戴けるようでしたら貴社に対しましては、無償で通常使用権を許諾致しますので、再度、ご検討を戴きたくお願い申し上げる次第です。…」旨の商標権の譲渡の申し入れを行なったが、請求人においては商標権は譲渡できないとのことであり、平成18年2月7日付け回答書において、「つきましては、貴社もご承知の通り、弊社の先代と貴社との間でこの件について話し合いが持たれた経緯もありますので、貴社の主張を認めたものではありませんが、取り敢えず、一年間の使用料という名目で20万円をお支払いさせて戴きたいと思っております。貴社からの申し出は30万でしたが、諸般の事情もお察し戴き20万円でお願い出来ればと考えております。」と回答したが、請求人から平成18年3月6日付けの「ご連絡」において、「1.貴社からの平成18年2月27日付書面によりますと、貴社は商標使用料として1年間20万円を支払うとの申し出でありますが、当社は貴社の申し出を承諾できません。」「2.当社は、すでに提案しておりますように1カ年30万円に、今年度は弁理士に対する調査費用10万円を加え、合計40万円の提案を致します。」との連絡を受けたものである。
したがって、被請求人としても、昭和29年から約50年に亘って平穏に使用してきた「千羽鶴」「久住/千羽鶴」であることから、当初は、商標権を譲り受けることが出来るのであればと金銭的解決も考えていたが、商標権を譲り受けることが出来ず、使用料についても妥協することができないとのことなので、その間、本件商標を平成17年6月10日付けで出願し、被請求人もこれ以上の妥協は出来ないとの判断により、今日に至っているものであって、請求人の「…内容証明郵便により伝えたところ、以降、被請求人は黙んまりを決め込み、連絡が絶えてしまった。」との主張は事実に反するものである。
次に、請求人は『本件商標の出願日が平成17年6月10日であることからして、被請求人は、商標法第32条に規定されている要件は満たしておらず、「先使用権」を有していないため、標章「千羽鶴」は使用できないことに気づき、本件商標の出願をなしたものと思われる。しかしながら、被請求人は、本件商標の登録を得た後において、「『久住』を小さく記載し『千羽鶴』を大きく記載する」という姑息な改変を行なった使用商標1を使用し続けているのである。』と主張している。
そこで、被請求人の標章「千羽鶴」及び「久住/千羽鶴」の周知著名性については、乙第3号証1乃至乙第3号証18に示した
ア 「全国清酒品評会」(昭和31年11月13日 第3回全国清酒品評会において「優等賞」、昭和33年11月12日 第4回全国清酒品評会において「優等賞」)。
イ 「熊本国税局主催の酒類鑑評会」(昭和36年3月29日 昭和35酒造年度酒類鑑評会において「優等賞」、昭和38年3月23日 昭和37酒造年度酒類鑑評会において「優等賞」、昭和40年3月30日 昭和39酒造年度酒類鑑評会において「優等賞」、昭和43年3月29日 昭和42酒造年度酒類鑑評会において「優等賞」、昭和44年3月26日 昭和43酒造年度酒類鑑評会において「優等賞」、昭和50年3月20日 昭和49酒造年度酒類鑑評会において「優等賞」、昭和51年3月30日 昭和50酒造年度酒類鑑評会において「優等賞」、昭和53年4月4日 昭和52酒造年度酒類鑑評会において「優等賞」、昭和54年4月9日 昭和53酒造年度酒類鑑評会において「優等賞」、昭和55年11月26日 昭和54酒造年度酒類鑑評会において「優等賞」、昭和58年4月8日 昭和58酒造年度酒類鑑評会において「優等賞」、昭和59年12月14日 昭和59年度秋期清酒鑑評会において「優等賞」、昭和60年4月17日 昭和60年酒類鑑評会において「優等賞」、昭和60年12月12日 昭和60年度秋期清酒鑑評会において「優等賞」、昭和61年4月15日 昭和61年酒類鑑評会において「優等賞」、昭和61年12月12日 昭和61年度秋期清酒鑑評会において「優等賞」、昭和62年4月16日 昭和62年酒類鑑評会において「優等賞」、昭和63年4月15日 昭和63年酒類鑑評会において「優等賞」、昭和63年12月9日 昭和63年度秋期清酒鑑評会において「優等賞」、平成元年4月14日 平成元年酒類鑑評会において「優等賞」、平成11年4月15日 平成11年酒類鑑評会において「優等賞」、平成16年4月8日 平成16年酒類鑑評会において「優等賞」)。
ウ 「大分県酒類品評会」(昭和33年3月20日 第1回大分県酒類品評会において「優等賞」)。
エ 「全国酒類調味食品品評会」(昭和44年11月22日 第9回全国酒類調味食品品評会において「金賞」)。
オ 「国税庁醸造試験所主催の全国新酒鑑評会」(昭和55年5月16日 国税庁醸造試験所主催の全国新酒鑑評会において「金賞」、昭和56年5月15日 国税庁醸造試験所主催の全国新酒鑑評会において「金賞」、昭和57年5月14日 国税庁醸造試験所主催の全国新酒鑑評会において「金賞」、昭和58年5月20日 国税庁醸造試験所主催の全国新酒鑑評会において「金賞」)。
カ 「独立行政法人 酒類総合研究所主催の全国新酒鑑評会」(平成13年5月30日 全国新酒鑑評会において「金賞」、平成14年5月29日 全国新酒鑑評会において「金賞」)において、それぞれ「金賞」並びに「優等賞」を受賞している。
尚、上記の点については、乙第4号証1乃至乙第4号証3に示すように独立行政法人酒類総合研究所のホームページ(http://www.nrib.go.jp/)においても、平成14年度及び平成16年度の全国新酒鑑評会の入賞酒一覧表が掲載されており、熊本国税局(http://www.kumamoto.nta.go.jp/)のホームページにおいて、平成16年度酒類鑑評会結果が掲載されている。そして、酒類総合研究所において、平成14年度に「価格及び商品ラベルに関する研究」が実施された際に、日本酒ラベルコレクションとして被請求人の「千羽鶴」「久住/千羽鶴」のラベルを寄贈し、公開されている(乙第4号証4)。
又、乙第5号証1乃至乙第5号証16に示すように、刊行物においても株式会社技興社発行の「全国清酒地酒大名鑑」、株式会社醸会タイムス発行の「全国 酒類醸造家名鑑」(昭和36年度及び昭和46年度)及び「全国 酒類製造名鑑」(1997、2000、2001、2003、2004)のサ行「千羽鶴(センバヅル)」の索引と該当頁、株式会社主婦と生活社発行の「最新 日本酒名鑑 厳選542蔵元」、株式会社フルネット発行の「日本酒 酒蔵電話帳 2001年版」、株式会社講談社発行の「日本の名酒辞典」、廣済堂出版発行の「日本の酒 銘酒 名鑑447酒造」、日本経済新聞社発行の「名酒大全」、マキノ出版ムック発行の「全国日本酒コンテスト 2001」、日本経済新聞社発行の「吟醸 名酒辞典」、日本経済新聞社発行の「美酒・割烹・旅 事典」等に、被請求人の「千羽鶴」「久住/千羽鶴」に係る記事が掲載されている。
したがって、被請求人の「千羽鶴」、「久住/千羽鶴」は、請求人の引用商標の出願日である昭和55年11月26日迄に、全国的な新酒の品評会及び鑑評会で入賞しており、熊本国税局が主催する鑑評会においては9度入賞していることからも、昭和55年11月26日迄には、被請求人の「千羽鶴」「久住/千羽鶴」は、取引者及び需要者において周知・著名な標章として十分に認識されていたと推認し得るものと思料する。
次に、先使用権(商標法第32条第1項)に基づき先使用によって先使用権の認められる商標は、他人の登録出願前から使用されていた商標と同一の商標、同一の商品に限られることは、先使用権が抗弁権であるかに他ならないことは承知しているものの、この点においては登録商標の効力(商標法第25条)においても同様であると思料する。そして、本条に言う同一の商標とは、完全同一を意味するのか、物理的同一を意味するのかということになれば、取引者あるいは需要者等が同一の商標として認識し得る程度である物理的同一であれば先使用権は認められるべきであると思料する。即ち、永年に亘る使用の結果により、先使用標章の周知性が登録商標のそれよりも高いような場合には、標章の外観上の書体のみに商標の出所識別機能を有すると解するのではなく、本件の場合には、「千羽鶴」という標識それ自体に商標の出所識別機能を有すると解するを相当と思料する。
そして、乙第7号証1として請求人の引用商標の出願前に被請求人が使用していた胴張ラベルを添付したが、このラベルはラベルの上部の「全国清酒品評会連続優等入賞」の文字から上述した「全国清酒品評会」(昭和31年11月13日 第3回全国清酒品評会において「優等賞」、昭和33年11月12日 第4回全国清酒品評会において「優等賞」)に入賞した当時のものと思料されることから、少なくとも昭和34年当時に使用されていたものである。
したがって、請求人の引用商標と請求人の製品に使用されている商標が同一の商標であるのに対し、被請求人の使用する標章が同一でないとすることは著しく不合理であって、両商標の並存状態を認めることにより、請求人の受ける不利益とこれを認めないことによる被請求人の不利益を対比すれば、後者の場合にあっては、被請求人は全く商標を使用することが出来なくなるのであるから、後者の不利益が前者に比して大きいことは容易に理解し得るものである。
よって、被請求人は、乙第6号証1乃至乙第6号証2の証明願に示すように、昭和29年から現在に至るまで清酒「千羽鶴」、「久住/千羽鶴」を製造販売し、大分県酒類卸株式会社殿、有限会社さとう商店殿等に商品の取り扱いを依頼し、不正競争の目的なく、又、出所の誤認混同も来すことなく50数年に亘って平穏に使用して来たものであるから、当然に「先使用権」を有するものと考える(尚、現行の商標の審査運用であれば、請求人の引用商標は、商標法第4条第1項第10号の規定に該当するとして拒絶されるものと思料する。)。
(9)引用商標に係る商品との出所の混同について
引用商標に係る商品は、甲第5号証及び甲第6号証に掲載されているパック酒であって、独特の書体からなる使用であって、被請求人が使用する使用商標とは、明らかに相違する。
又、上述したように被請求人の「千羽鶴」、「久住/千羽鶴」は周知・著名であるのに対し、引用商標に係る商品にあっては、例えば、日本酒造組合中央会のホームページにおいて「千羽鶴」で検索した場合にも検索結果には見当たらず(乙第4号証5)、先に引用した「全国 酒類製造名鑑」(1997、2000、2001、2003、2004)のサ行「千羽鶴(センバヅル)」の索引と該当頁にもその記載が見当たらず、請求人の所在地である姫路市内の百貨店及び小売店(山陽百貨店 兵庫県姫路市南町1番地、ボンマルシェ姫路店 兵庫県姫路市南町31、ヤマトヤシキ姫路店 兵庫県姫路市二階町55、カワシマヤ 兵庫県姫路市城東町京口台25、荒木酒店 兵庫県姫路市東駅前町57、秋本商店 兵庫県姫路市白浜町甲336-7、酒工房・ぬのたに 兵庫県高砂市伊保崎5-1-5)に電話で「千羽鶴」が店頭にあるか確認したところ、いずれの店においても店頭での取り扱いはなく、取寄せは出来るとの回答を得た店が2件あるに過ぎなかった。
してみれば、実際の商取引の現場においては、出所の混同は生じていないと推認し得るを相当とする。
そして、請求人は使用商標1を示しているが、被請求人においては、乙第7号証3乃至乙第7号証6に示すラベル及び胴張りを現在使用している。又、その内、乙第7号証3に示す「久住千羽鶴」の胴張りは平成18年9月25日に納品・販売を開始し、乙第7号証4に示す「久住/千羽鶴」の胴張りは平成14年3月1日に納品・販売を開始している。
(10)結論
以上のように、被請求人は、「千羽鶴」及び「久住/千羽鶴」において先使用権を有し、故意に指定商品「清酒」について本件商標に類似する使用商標を使用するものではなく、他人の業務に係る商品と混同を生ずるものではないから、商標法第51条第1項の規定に該当するものではないと考えるので、答弁の趣旨の通りの審決を求める。

第4 当審の判断
(1)被請求人(本件商標権者)は、使用商標1を使用した商品「清酒」を昭和29年頃より販売を開始し、本件商標が登録された平成18年6月16日以降においても商品「清酒」に使用商標1を使用して販売していたことが認められる。同じく使用商標2を平成18年9月に使用商標1を使用した商品「清酒」(1.8リットル瓶)の金属製栓上部に表示して使用していたことが認められる。
(2)本件商標と使用商標との類否について
本件商標は、前記したとおり「クジュウセンバヅル」の片仮名文字と「久住千羽鶴」の文字よりなるものであるから、その構成文字に相応して、「クジュウセンバヅル」の称呼及び「久住の千羽鶴」との観念を生ずるものである。他方、使用商標1は、その構成中の片仮名文字部分を削除し、かつ、「久住」の文字部分は「千羽鶴」の文字に比べ、左側に小さく書してなり看過され易い構成になっており、かかる構成においては、顕著に大きく書してなる「千羽鶴」の文字部分も独立して商品の出所識別機能を有するものと認められるから、使用商標1については、全体より生ずる「クジュウセンバヅル」の称呼及び「久住の千羽鶴」との観念のほか、「センバヅル」の称呼及び「千羽鶴」の観念をも生ずるものと認められる。
そうすると、本件商標と使用商標1とは、上記の称呼及び観念において共通にする類似の商標といわなければならない。
次に、本件商標と使用商標2とを比較すると、本件商標は、「クジュウセンバヅル」の称呼及び「久住の千羽鶴」との観念を生ずるものであるのに対し、使用商標2は、その構成中の片仮名文字及び「久住」の文字部分を削除して「千羽鶴」の漢字のみの構成であるから、使用商標2からは「センバヅル」の称呼及び「千羽鶴」の観念をも生ずるものである。
そうとすれば、本件商標は、使用商標1とは、外観はもとより、上記の称呼及び観念において顕著な差異を有するものであるから、両者は、互いに相紛れるおそれのない非類似の商標と判断するのが相当である。
(3)引用商標に係る商品との出所の混同のおそれの有無について
請求人は、引用商標(登録第1616065号商標)について、商標権者(今井酒造合名会社)から通常使用権の許諾を受け、昭和58年以降現在に至るまで、商標「千羽鶴」を付した商品「清酒」(紙パック容器入り)を製造・販売してきたことが認められる(甲第4号証ないし同第6号証)。
そして、使用商標1と引用商標とを、その外観、称呼、観念において対比してみると、両商標は、「センバヅル」の称呼及び「千羽鶴」の観念を共通にする類似の商標と認められ、また、使用商標1を付した商品と請求人の引用商標を付した商品とは、同一のものと認められる。
しかしながら、請求人が使用許諾を受け引用商標を使用し始めたのは昭和58年であり、被請求人が「千羽鶴」「久住/千羽鶴」等の標章を付した商品「清酒」を製造し、販売した昭和29年からすると、約30年後であって、かつ、請求人が引用商標を付した商品は請求人及び商標権者の住所からして、兵庫県姫路市界隈と推認し得るものであるが、提出に係る甲各号証によっては、これら販売実績及び広告実績等の何ら提出のないものであるから、本件商標の設定登録時(平成18年6月)はもとより被請求人による使用商標1の使用が開始された時点(昭和29年ころ)において、請求人らの引用商標が商標権者ないしそのライセンシーの商品を表示するものとして取引者及び需要者の間に広く知られ、周知性を獲得するに至っていたものということは認められず、他にこれを認めるべき証拠は見出せない。
そうとすると、使用商標1に係る商品及び引用商標に係る商品は、共に「清酒」であるが、引用商標が周知性を獲得するに至っていなかったことからすれば、かつ、被請求人の酒造会社が大正9年に創業した九州でも名の通った酒造会社であり、請求人の商品との販売地域及び商品の種類(紙パック容器の清酒)等の違いを併せ考慮すると、被請求人が商品「清酒」に使用商標1を使用したものとしても、取引者及び需要者がこれを請求人と何らかの関連を有する者の業務に係る商品であるかのように、その出所につき混同を生ずるおそれがあったものということはできない。
(4)故意について
以上のとおり、引用商標は使用商標1の使用開始以前はもとより、本件商標の登録時に周知著名となっていたものとはいえず、加えて、両者の企業規模、販売実績の差及び商品の製造、販売場所の違い、かつ、被請求人は、使用商標1の使用開始時には引用商標を知悉していない等を総合的に勘案すると、仮に、請求人が商品「清酒」に使用商標1を使用した場合に、出所の混同を生ずるおそれがあったものとしても、被請求人がそのおそれがあることを認識しつつ、故意に、使用商標1を使用したと認めることは到底できない。
(5)まとめ
以上のとおり、被請求人(本件商標権者)は、故意に、本件商標の指定商品中の「清酒」について、本件商標に類似する使用商標1を使用したものではなく、かつ、他人の業務に係る商品と混同を生ずるものをしたとは認められない。
追って、前記(2)で認定・判断したとおり、使用商標2は、本件商標とは類似しないものであるから、被請求人による使用商標2の使用は、商標法第51条第1項の要件に該当しないものというべきである。
したがって、本件商標の登録は、商標法第51条第1項の規定により、その登録を取り消すべきものではない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲
別掲(1)使用商標1



別掲(2)使用商標2

審理終結日 2008-02-21 
結審通知日 2008-02-26 
審決日 2008-03-11 
出願番号 商願2005-52196(T2005-52196) 
審決分類 T 1 31・ 3- Y (Y33)
最終処分 不成立 
前審関与審査官 林 栄二井出 英一郎 
特許庁審判長 中村 謙三
特許庁審判官 小畑 恵一
津金 純子
登録日 2006-06-16 
登録番号 商標登録第4961520号(T4961520) 
商標の称呼 クジュウセンバズル、クジューセンバズル、センバズル 
代理人 吉村 仁 
代理人 吉村 悟 
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