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審決分類 審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない Z14
審判 全部取消  無効としない Z14
管理番号 1175968 
審判番号 取消2005-30613 
総通号数 101 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2008-05-30 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2005-05-24 
確定日 2008-04-11 
事件の表示 上記当事者間の登録第4439059号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
本件登録第4439059号商標(以下「本件商標」という。)は、「UNITED」の文字を標準文字で書してなり、平成11年9月28日に登録出願、第18類「革ひも,かばん類,袋物」を指定商品として、平成12年12月8日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。

2 請求人の主張
請求人は、「本件商標の登録を取り消す。審判費用は、被請求人の負担とする。」との審決を求めると申し立て、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のとおり述べ、証拠方法として、甲第1号証及び甲第2号証を提出した。
(1)請求の理由
本件商標は、その指定商品について、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれによっても継続して3年以上日本国内において使用された事実がないから、商標法第50条の規定により、取り消されるべきである。
(2)答弁に対する弁駁
被請求人は、2004年12月26日のインドネシア、スマトラ-アマダン海底地底地震により発生した大津波(以下「スマトラ沖地震による大津波」という。)によって被害を蒙り事業が中断した事実を述べ、かかる自然災害による事業中断は、商標法第50条第2項にいう「正当な理由」に該当し、本件商標には取り消される理由がない旨主張する。
被請求人がかかる被害を蒙ったという事実に同情する余地はあるものの、自然災害による事業中断と本件商標の不使用については全く関係がなく、被請求人の主張には理由がない。
なぜなら、仮に自然災害がなかった場合に本件商標を使用したという具体的な計画、予定に関する疎明があれば格別、被請求人はこのような疎明を一切しておらず、自然災害による事業中断と本件商標の不使用の関連性は全くないからである。
被請求人は、本件取消に係る指定商品について、現在まで本件商標を使用した事実を何ら証明しておらず、前記津波が発生した時点でさえも、本件商標の登録後4年以上経過しており、被請求人は本件商標を登録後漫然と放置していたものである。仮に自然災害による被害が生じなかった場合、被請求人が本件商標を本件指定商品に使用していたであろうという具体的事情は一切見当たらない。
そもそも、商標法第50条第1項不使用取消の制度趣旨は、使用していない商標については保護すべき信用が発生していないと同時にそのような商標権者に対して排他的独占権を与えておくのは国民一般の利益を害するという点にあるところ、この不使用取消を覆す「正当な事由」が認められるためには、その商標を使用する予定の商品の生産を準備中に天災地変等によって工場等が損壊した結果、その使用ができなかったような場合など、その使用の実現可能性が具体化していることを要すると思料される。つまり、商標の商品化について具体的な計画が存在し、生産準備中で審判請求登録時までに商標を使用したのは確実なのに、天災による事業中断のため実現できなかったという、天災と不使用との間に原因と結果の関係が存在しなければならない。
本件では、前述のように、本件商標をその指定商品について使用する準備中であった事実が全く疎明できておらず、本件商標の不使用と天災の間に「天災がなければ使用した」という原因と結果の関係が認められない。
したがって、本件商標の不使用について「正当な理由」は存在しない。
(3)第二答弁に対する弁駁
不使用について「正当な事由」が認められるためには、その使用の実現可能性が具体化していることを要するところ、被請求人は、仮に各災害がなかった場合に本件商標を使用したことを認めるに足る具体的な計画、予定に関する疎明を一切していない。
被請求人が何の商品にせよ生産を継続できなかった直接の原因は、アチェの津波でもなく、ニアスの大地震でもなく、2004年4月の本社・工場の火災にあるというが、単なる火災の発生が不使用の「正当な事由」に当たらないことは明らかであり、被請求人は、自らの不使用については「正当な事由」がなかったことを自白しているに過ぎない。
実際、今回被請求人が提出した乙第2号証の4、5を見ると、アチェの施設、ニアスの施設には何らの生産設備もなく、単なる営業所であったことがよりハッキリする。これらの営業所が壊滅的な打撃を受けたことと、被請求人が本件商標を使用しなかったこととの間には、何らの因果関係も認められない。
被請求人は本件商標を本件指定商品に使用している事実について一切反論せず、さらに商品化の計画が存在していた旨の疎明さえも一切なされていない。
被請求人は、日本国内において本件商標を「灰皿」、「ベルト」、「革財布」に使用している旨主張しているが、乙第4号証を見ても乙第5号証を見ても、被請求人の名称は何ら現れておらず、被請求人がこれらに本件商標を使用している事実は認められない。さらに、仮にこれらについての現段階での使用が認められたとしても、そのことによって本件指定商品についてまでも、過去に使用に関する具体的な計画があったとはいえない。

3 被請求人の答弁
(1)被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のとおり述べ、「登録商標不使用理由宣言書」を提出した。
インドネシア在住の被請求人は、2004年12月26日のスマトラ沖地震による大津波に襲われ、甚大な被害を蒙り、津波による被害の情況と本件商標を使用しての事業、すなわち商品の製造及び日本への輸出に係る事業が大津波の被害により中断の止むなきに至った情況を、被請求人の代表者による「宣言書」をもって説明する。
被請求人は、本件商標の使用再開に向けて事業を再構築しなければならず、あらゆる努力をしているところであるが、事業の再開にはまだかなりの時間を要する。
したがって、このような被請求人の不可抗力による自然災害による事業中断は、商標法第50条第2項にいう、本件商標の指定商品について、本件商標を使用していないことについての正当な理由に該当する。
(2)弁駁に対する第二答弁
インドネシアを襲った巨大地震による津波は一瞬にして全てを破壊尽くした未曾有の大災害だったのであり、アチェ州にある被請求人の営業所は壊滅的な被害を受けた。
更に、2004年3月には北スマトラ、ニアスに大地震があり、ニアスにある被請求人の営業所も甚大なる被害を蒙った。
このように営業所における被害によって、被請求人の事業が中断せざるを得なかった理由は、ペマタング、シィアンタールに所在する本社及び工場が、2004年4月13日に発生した火災によって全焼したため本社機能が失われ、かつ、商品生産のための操業が完全にできなくなったという被請求人にとって致命的な事態となっていた。本社と工場の再建にはかなりの月日を要すると思わていた。
被請求人は、このように度重なる大災害に直面して全ての事業継続が危ぶまれた。再建には相当の月日を要するであろうことは、乙第2号証の3ないし5の各写真から見て取れるが、取引書類もほとんど失われたので、例え、本件商標を使用した商品サンプルや日本への輸出企画書なり具体的な計画書があっても到底提出することが出来ない状況であった。現実には、2005年からの具体的な事業再開へ向けて、準備すべく検討していたが、アチェの大津波で営業所が破壊されその対応におわれ、事業計画は棚上げになってしまった。
もし、本件審判を請求されたことを受けて、企画書なり具体的な計画書を提出したとすれば、それは、後日作成したものとなり、被請求人の本意ではない。
被請求人の本社及び工場の火災は自然災害ではないが、本社機能が失われ、商品生産のための操業が完全に不可能となり、その再建もまだなされないうちに、未曾有の大災害に2度も遭遇したのである。このような状況の中で、被請求人は、生産はもちろん、商品取引や商品輸出など通常の事業を行うことは到底できなかった。
本件審判の予告登録は、平成17年(2005年)6月6日であるが、これまで詳細に説明のとおり、被請求人にとっては、予告登録日の1年と約2ケ月前からは大災難と大災害に遭遇して事業を中断せざるを得ない時期であった。
登録商標を継続して3年以上使用していないときは、取り消しの対象にはなるが、登録後直ちに使用開始しなければならないとの法はない。予告登録前3年以内であれば、1ケ月前でも2ケ月前でも、極端な場合、数週間前であっても使用開始したことが立証されれば取り消されることはない。
被請求人は、不可抗力による災難や自然災害によって、本件審判請求の予告登録前1年以上も前から商品の生産が出来ず、事業継続が危ういという深刻な事態に陥っていたのであり、このような事情による事業中断は、商標法第50条第2項ただし書きの規定による本件商標の指定商品について、本件商標を使用していないことについての正当な理由に該当するものであり、それについて被請求人は疎明若しくは立証し得たものと確信する旨主張し、被請求人は、乙第1号証ないし乙第5号証(枝番を含む。)を提出している。

4 当審の判断
(1)使用の事実について
商標法第50条第1項による商標登録の取消審判の請求があったときは、同条第2項の規定により、被請求人が、その審判の請求の登録前3年以内に、その請求に係る指定商品について当該商標を使用していることを証明し、又は、使用していないことについて正当な理由があることを明らかにしない限り、その指定商品に係る商標登録の取消しを免れない。
そこで、本件商標に係る商標権の取消審判の請求の予告登録日について、職権をもって調査するに、平成17年(2005年)6月9日であることを確認し得た。
被請求人は、スマトラ沖地震による大津波に襲われ、甚大な被害を蒙り、事業の中断を止むなきに至ったものであるから、商標法第50条第2項ただし書きでいう「正当な理由」に該当する旨主張し、「登録商標不使用理由宣言書」及び乙第1号証ないし乙第5号証(枝番を含む。)を提出している。
そこで、被請求人が主張する理由が商標法第50条第2項ただし書きでいう「正当な理由」に該当するものであるか否かについて検討する。
(2)不使用についての正当な理由の存否について
商標法第50条第2項ただし書きでいう「正当な理由」に該当するものであるといえるためには、地震、水害等の不可抗力、放火、破壊等の第三者の故意又は過失による事由、法令による禁止等の公権力の発動に係わる事由等の商標権者、専用使用権者又は通常使用権者の責めに帰すことができない事由が発生したために使用をすることができなかった場合をいうものと解される【東京高等裁判所平成8年11月26日判決〔平成7年(行ケ)124号〕】ところ、職権において調査した以下の新聞記事情報によれば、本件審判の請求の登録前3年以内の2004年12月末と2005年3月末に、インドネシアで地震があったことは公知の事実と認められる。
「アチェ報告 国の威信より人の命だ(社説)」と題する2005年1月31日付け朝日新聞記事情報東京朝刊3頁によれば、「スマトラ沖地震と巨大津波からひと月余りが過ぎた。インド洋を囲む国々の犠牲者は約30万人に達し、未曽有(みぞう)の惨禍はなお広がっている。その7割を超す23万人近くが犠牲となったインドネシアのアチェ地方に入り、その現状を見た。州都バンダアチェの沿岸部は、泥とがれきだらけの荒涼とした土地が見渡す限り広がる。」旨記載されている。また、「スマトラ沖地震・3月 津波?逃げろ! 車殺到、パニック『波怖い』泣く住民」と題する2005年3月29日付け読売新聞東京夕刊27頁によれば、「31万人以上の死者・行方不明者を出した昨年12月のスマトラ島沖地震から3か月余り。インド洋沿岸の住民に、再び津波の悪夢がよみがえった。同島沖を震源とする28日夜(日本時間29日未明)の地震は、12月の地震以後最大の規模となり、津波におびえた住民たちはわれ先に避難した。これまでに津波による被害は確認されていないが、震源地に近いニアス島では、家屋の崩壊で多数の死者が出ている。(中略)震源域に近いニアス島では状況は深刻さを増している。現地からの報道では、島の中心街では建物の8割以上が倒壊し、多数の住民らが生き埋めとなっている模様だ。島内全域が停電している上に、医師や看護師も住民らと一緒に高台に避難してしまい、患者の手当てが出来なくなっているという。」旨記載されている。また、「インド洋津波から半年つめ跡深く、進まぬ復興=見開き特集」と題する2005年6月26日付け読売新聞東京朝刊34頁によれば、「◎インドネシア ◆「家が欲しい」 放浪生活8万人 最も大きな被害を出したインドネシア・スマトラ島のナングロアチェ・ダルサラム州では、インドネシア政府の復興計画がようやく具体化し始めた。しかし、家を失った約55万人の被災者のための住宅建設事業は大幅に遅れ、多くの人々が不自由なテント生活を強いられている。」旨記載されている。また、「インド洋大津波から1年、被災地経済、なお苦境」と題する2005年12月26日付け日本経済新聞朝刊7頁によれば、「二十三万人以上の死者・行方不明者を出したインド洋大津波から二十六日で一年。インドネシアやスリランカ、インドの被災地の経済は今なお苦境が続いている。最大の被災地インドネシア・アチェ州では主力の石油ガス産業も不振に陥り、失業率が上昇。その他の各地でも住宅建設が遅れ、復興資金拠出は計画の二から三割にとどまるなど、生活基盤再建のメドが立たない。(中略)十六万人以上の犠牲者を出したアチェ州では二〇〇五年の完全失業率が前年比三・二ポイント増の一二・五%前後に跳ね上がる見通しだ。」旨記載されている。
また、被請求人が提出した「登録商標不使用理由宣言書」及び乙第2号証(乙第2号証の3を除く。)ないし乙第3号証によれば、被請求人の営業所は、インドネシアのアチェ州にあり、本件審判の請求の登録前3年以内の2004年12月末と2005年3月末の二度にわたる地震によって破壊され、指定商品について登録商標の使用ができなかったものと推認される。
してみれば、被請求人は、地震、津波等の不可抗力によって、同人の責めに帰すことができない事由が発生したために本件商標の使用をすることができなかったことを明らかにしたものと判断するのが相当である。
したがって、被請求人が、本件審判の請求の登録前3年以内に、本件商標をその指定商品に使用していないことについて正当な理由があるものと認める。
よって、請求人の主張は、採用することができない。
(3)むすび
以上のとおりであるから、本件商標の登録は、商標法第50条第2項ただし書きの規定により、これを取り消すべき限りでない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2007-04-27 
結審通知日 2007-05-02 
審決日 2007-05-15 
出願番号 商願平11-86900 
審決分類 T 1 31・ 1- Y (Z14)
T 1 31・ 09- Y (Z14)
最終処分 不成立  
特許庁審判長 中村 謙三
特許庁審判官 井岡 賢一
渡邉 健司
登録日 2000-12-08 
登録番号 商標登録第4439059号(T4439059) 
商標の称呼 ユナイテッド 
代理人 川村 恭子 
代理人 佐々木 功 
代理人 窪田 英一郎 

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