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審決分類 審判 全部無効 商3条1項3号 産地、販売地、品質、原材料など 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Y03
審判 全部無効 商4条1項16号品質の誤認 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Y03
管理番号 1174455 
審判番号 無効2007-890129 
総通号数 100 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2008-04-25 
種別 無効の審決 
審判請求日 2007-08-08 
確定日 2008-02-27 
事件の表示 上記当事者間の登録第4982693号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第4982693号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4982693号商標(以下「本件商標」という。)は、「白金」 の文字を標準文字で表してなり、平成18年1月11日に登録出願、第3類「せっけん類、化粧品」を指定商品として、同18年9月1日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求めると申し立て、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第8号証(枝番を含む。)を提出した。
1 請求の理由
(1)商標法第3条第1項第3号に掲げる商標が商標登録の要件を欠くとされているのは、このような商標は、商品の品質その他の特性を表示記述する標章であって、取引に際し必要適切な表示として何人もその使用を欲するものであるから、特定人によるその独占的使用を認めるのは公益上適当としないものであるとともに、一般的に使用される標章であって、多くの場合自他商品識別力を欠き、商標としての機能を果たし得ないものであることによると解される(昭和53年(行ツ)第129号、昭和54年4月10日最高裁判決参照)。
この趣旨に照らせば、ある登録商標がその登録査定時において、指定商品の品質、原材料等を表すものと取引者・需要者に広く認識されている場合はもとより、将来を含め、取引者・需要者にその指定商品の品質、原材料等を表すものと認識される可能性があり、これを特定人の独占させることが公益上適当でないと判断されるときにも、当該商標の登録は、商標法第3条第1項第3号に違反してなされたものとして無効にされるべきである。
(2)これを本件商標についてみるに、本件商標を構成する「白金」の文字は、「広辞苑」(甲第2号証)では、「金属元素の1。灰白色を帯び、鮮明な光沢を持つ貴金属で、展性・延性に富む。融点が高く、空気中で高温に熱しても酸化されず、ただ王水・苛性アルカリに侵される。理化学用機械・装飾品などに用いる。触媒としての用途も広い。プラチナ。」を意味する語とされている。
そして、インターネット検索情報、新聞記事情報及び特許出願情報の事実(甲第3号証ないし甲第5号証)を総合すれば、遅くとも2002年には、「白金(プラチナ)」を超微粒子(ナノコロイド)に加工した素材が製造され、それを配合した商品「化粧品、清涼飲料」等が、2004年までに数社で製造販売されていたということができ、そして、当該「白金ナノコロイド」が、皮膚のたるみやシワなどの老化、癌、動脈硬化、心臓病、糖尿病などの原因となる活性酸素を除去する効果(抗酸化作用)が非常に高いことから、化粧品やせっけん類の原料として注目され、2005年末から2006年前半にかけて、それを配合した「化粧品、せっけん」等の製造販売に大手メーカーを含む各社が参入していることが明らかである。
そして、「白金ナノコロイド」が、白金の超微粒子を溶液状にしたものであって、「白金」の一種といい得ることや、「白金ナノコロイド」を配合した商品(化粧品、せっけん等)の広告において、「白金配合」としたり、その成分表示を「白金」としたりしていることなどを併せ勘案すれば、少なくとも「化粧品,せっけん類」を取り扱う業界においては、「白金」の文字は、本件商標の登録査定時(平成18年7月20日)には、既に「化粧品、せっけん類」等の原材料(成分)を表すものとして、広く認識されていたということができる。
そうとすると、本件商標は、これをその指定商品中「白金(又は、白金ナノコロイド)を配合若しくは原材料とする商品」に使用するときは、取引者・需要者をして、その商品が「白金(又は、白金ナノコロイド)」を配合又は原材料とするものであること、即ち、単に商品の品質、原材料(成分)を表示するにすぎないものと理解するにとどまり、自他商品の識別標識とは認識し得ないものといわなければならない。
(3)なお、仮に本件商標を構成する「白金」の文字がその登録査定時において、商品の原材料(成分)を表示するものとして一般に親しまれているものとまではいえないとしても、当該「白金(又は、白金ナノコロイド)」 の文字が「化粧品、せっけん類」の原材料(成分)を表すものとして現に広く使用されていることは、甲第4号証及び同第6号証に示すとおりであり、例えば、「白金ナノコロイドを配合した化粧品」について、「2006年の販売見込み3,000億円。今後セルフブランドの投入が相次げば、市場が急拡大する可能性が高い。」(甲第3号証の4)とされていることや、我が国においては、近年、健康に良いとされる様々な成分や物質(例えば、「コエンザイムQ10」「アスタキサンチン」等)が注目を集め、これらの成分(物質)を配合した化粧品やせっけん類が次々と開発、販売されていて一般の消費者の関心を集めていることも併せ考慮すると、本件商標は、その登録査定時において、近い将来、その指定商品の原材料(成分)を表すものとして取引者・需要者に広く認識される可能性は十分にあったというべきである。
そうすると、前記(1)で述べるとおり、ある登録商標を商標法第3条第1項第3号のに違反して登録されたものとするには、その登録査定時において、必ずしも当該商標がその指定商品の品質、原材料を表すものとして取引者・需要者に広く認識されている必要はなく、その商品の品質、原材料を表すものと認識される可能性があれば足りると解されるところ、本件商標は、これをその指定商品中「白金(又は、白金ナノコロイド)を配合若しくは原材料とする商品」 に使用するときは、これに接する取引者・需要者をして、その商品の原材料(成分)名を表示したものと把握、理解される可能性は将来を含め極めて高いものといえ、さらに、このような商標は、取引に際し必要適切な表示として何人もその使用を欲するものであって、特定人によるその独占使用を認めるのは公益上適当ではないから、本件商標の登録は、商標法第3条第1項3号に違反してなされたものとして無効にされるべきである。
(4)加えて、本件商標は、「白金(又は、白金ナノコロイド)」が現に商品の原材料(成分)表示として使用されているものであり、取引者・需要者に商品の原材料(成分)を表したものと理解される可能性があるから、その指定商品中「白金(又は、白金ナノコロイド)を配合若しくは原材料とする商品」以外の商品に使用するときは、商品の品質について誤認を生じさせるおそれがある。
(5)以上のとおり、本件商標は、その指定商品中「白金(又は、白金ナノコロイド)を配合若しくは原材料とする商品」 について使用するときは、単にその商品の品質、原材料(成分)を表示するにすぎないものであり、前記商品以外の商品について使用するときは、その商品の品質について誤認を生じさせるおそれがあるものである。
(6)結論
本件商標は、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすべきものである。
2 答弁に対する弁駁
被請求人の答弁書及び各乙号証をもってしては、「本件商標は、その指定商品中『白金(又は白金ナノコロイド)を配合若しくは原材料とする商品』について使用するときは、単にその商品の品質、原材料(成分)を表示するにすぎないものであり、前記商品以外の商品について使用するときは、その商品について誤認を生じさせるおそれがあるものである。」とする請求人の主張は覆せない。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第3号証を提出した。
答弁の理由
(1)請求人は、本件商標は、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とされるべきである、と主張している。しかしながら、以下に述べる理由により請求人の上記主張は何ら理由がない。
(2)請求人は、昭和53年(ツ)第129号の最高裁判例を引用して次のように主張している。すなわち、取引者・需要者にその指定商品の品質、原材料等を表すものと取引者、需要者に広く認識されている場合はもとより、将来を含め、取引者、需要者に認識される可能性があり、これを特定人に独占させることが公益上適当でないと判断されるときにも、当該商標の登録は、商標法第3条第1項第3号の規定に違反してなされたものとして無効にされるべきである、というのである。しかし、前記最高裁判例は、商標法第3条第1項第3号に掲げる商標は、商標登録要件を欠くと判断する理由として、要するに、商品の品質その他の特性を記述する標章は、取引に際し、必要適切な表示として何人もその使用を欲するものであるから、特定人に使用を独占させることは公益上適当ではないだけでなく、多くの場合、自他商品の識別力を欠き、商標の機能を果たしえないからであることを説示しているのであって、必ずしも請求人が主張するような趣旨が説明されているとは認められない。
(3)本件商標は「白金」の標章を指定商品「せっけん類、化粧品」について使用するものであり、「白金」の文字は「シロガネ」、「ハッキン」と呼称されることは、甲第1号証に記載されたとおりである。乙第1号証によれば「シロガネ」は、「銀」「銀色」「銀貨」の意味に用いられているが、本来は白い金属、つまり「白金」の意味であったようである。そして「ハッキン」と称呼するときには、「広辞苑」(甲第2号証)の「白金」の項に記載されているとおりである。ちなみに、「白金」をキーワードとしてインターネット検索してみると、乙第2号証に示すように、「白金(しろかね)は、東京都港区の地名」「北海道美瑛町白金温泉?」「『白金豚』は高源精麦株式会社の登録商標」「明治学院大学白金祭」などの用例がヒットする。これらの用例からわかるように「白金」の用語は、地名、商標、その他の固有名詞を意味する用語でもあって、必ずしも甲第2号証の辞書にあるような「融点が高く、空気中で高温に熱しても酸化されず、ただ王水、苛性アルカリに侵される」といった性質を有する金属元素の一つだけを意味する用語であるというのではなく、多様な意味を有する用語でもあることがわかる。
(4)請求人は、「白金」「化粧品」をキーワードとしてインターネット検索し、「白金」「化粧品」のキーワードでヒットしたウェブサイトを甲第3号証の1ないし10として提出している。「白金」「化粧品」のキーワードで検索してヒットしたものは、要するに、白金ナノコロイドが含まれた水を元に医療品、化粧品、飲料などが開発されたこと、白金ナノコロイドは、抗酸化素材の決定版として化粧品や食品の業界で注目されていること、白金ナノコロイド配合の化粧品が各社で販売されていることなどが述べられたまでのものである。また、甲第4号証として、アイノベックスが銅、銀金属ナノサイズ微粒子を溶液中から析出して清涼飲料水向けの販売を行っており、1月末には化粧品向けも発売する予定であるという記事が掲載された2002年1月16日、同年10月1日付け日刊工業新聞の記事や白金コロイドを配合した健康食品、スキンケア製剤、化粧品、ミネラルウオー夕やチューインガムなどの商品が各社で商品化され、あるいは製造販売された事実を伝える新聞記事を掲載したサイトを提出し、さらには、甲第5号証として白金(微粉末又はナノコロイド)を配合または含有した、化粧品、化粧料、せっけん、シャンプー、リンス、入浴剤、高酸化剤に関する特許出願の公報を提出している。
そして、請求人は、これらの証拠を根拠として、遅くとも2002年には、「白金(プラチナ)」を超微粒子(ナノコロイド)に加工した素材が製造され、それを配合した商品(化粧品、清涼飲料)等が2004年までに各社で製造販売されていたこと、そして、当該「白金ナノコロイド」は、抗酸化作用が非常に高いことから、化粧品やせっけん類の原料として注目されたこと、2005年末から2006年前半にかけて、それを配合して「化粧品、せっけん」などの製造販売に大手メーカーを含む各社が参入していたから、白金の文字は、「化粧品、せっけん類」の原材料(原料)をあらわすものとして広く認識されていたということができると主張するのである。
(5)しかしながら、請求人の上記主張は理由がない。白金ナノコロイドは、皮膚のたるみやシワなどの老化、癌、動脈硬化、心臓病、糖尿病などの原因となる活性酸素を除去する効果である抗酸化作用を有していることは、請求人も主張しているが、これだけではなく、乙第3号証に説明されているように抗酸化作用の効果には持続性があり、白金ナノコロイドを配合したコスメや美容機器も多数販売されるようになったのである。このように、商品の抗酸化作用を高める目的で化粧品やせっけん類に白金ナノコロイドを配合された事実があるから、白金ナノコロイドは、化粧品やせっけん類の原材料(成分)を表すものであるということができないし、白金ナノコロイドが抗酸化作用を有することから化粧品などに添加されることが広く認識されたとしてもその事実をもって白金ナノコロイドが化粧品やせっけん類の原材料(成分)を表すものになることもない。
(6)そもそも、商標法第3条第1項第3号にいう「商品の原材料を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標」とは、わかりやすい例でいえば、商品洋服について、「ウール」という商標を使用するような場合、あるいは商品ブラウスについて「シルク」という商標を使用するような場合をいうのであって、白金ナノコロイドが抗酸化剤として化粧品などに添加、配合されるからその抗酸化剤が化粧品の品質・原材料(成分)を表示していることにはならず、まして「白金」という標章を「化粧品やせっけん類」に使用することがこれら商品の品質・原材料(成分)を表示することにはならない。
(7)次に請求人は、本件商標を構成する「白金」の文字がその登録査定時において、商品の原材料(成分)を表示するものとして一般に親しまれているものといえないとしても、近い将来、その指定商品の原材料(成分)を表すものとして取引者、需要者に広く認識される可能性は十分にあると主張し、その根拠として甲第4号証、甲第6号証を引用し、さらに甲3号証の4には、「2006年の販売見込み3,000億円。今後セルフブランドの投入が相次げば、市場が急拡大する可能性が高い」という記事が掲載されていることを指摘している。
(8)甲第3号証の4は、富士経済のPRESS RELEASEであって、注目成分市場として、「コラーゲン」「アスタキサンチン」「白金ナノコロイド」を取り上げ、それぞれの成分について、「化粧品」と「健康食品」について、2006年見込み、対前年比、2007年予測、対前年比が示されたものである。白金ナノコロイドについて、その予測をみると、2006年見込み、2007年見込みでは、化粧品が健康食品を圧倒しているようであるが、対前年比では健康食品が化粧品を上回っていることになっている。PRESS RELEASEの記事において、2006年見込み、2007年見込みが健康食品についての予測を単に上回っているという記載内容を捉えて、その記載を根拠に、白金ナノコロイドが直ちに近い将来、化粧品の原材料(成分)を表すものとして取引者、需要者に広く認識される可能性は十分にあったというべきとする結論には直ちに結びつかない。請求人の主張に従えば、PRESS RELEASEの、注目成分市場として取り上げられた「白金ナノコロイド」以外の「コラーゲン」「アスタキサンチン」についても健康食品よりも化粧品の方が2006年、2007年の予測値が高いから「コラーゲン」「アスタキサンチン」は、「化粧品」の原材料(成分)を表すものとして取引者、需要者に広く認識される可能性が十分にあるということになるが、そのような議論はおよそ無意味であるといわなければならない。
(9)最後に請求人は、本件商標は、「白金(又は、白金ナノコロイド)が現に商品の原材料(成分)表示として使用されているものであり、取引者・需要者に商品の原材料(成分)を表したものと理解される可能性があるから、その指定商品中「白金(又は、白金ナノコロイド)を配合もしくは原材料とする商品」以外の商品に使用するときは、商品の品質について誤認を生じさせるおそれがある」と主張するが、商品の品質について誤認を生じさせるおそれがあるかどうかは、将来の可能性の問題ではなく、現実問題として登録査定時に、「白金」の語が、本件商標の指定商品の原材料、品質を表示するものであったか、どうかが登録査定時において判断されるべき問題である。前述のとおり、本件商標の登録査定時に、取引上普通に使用されていたという事実がないことが明らかである以上、本件商標は、商品の品質について誤認を生じさせるおそれがあるということはできない。
(10)結び
以上に明らかなとおり、本件商標は、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に違反して登録されたものではない。よって、請求の趣旨のとおりの審決を希求するものである。

第4 当審の判断
1 本件商標は、「白金」の文字よりなるところ、「白金」は、請求人の提出に係る証拠によれば、以下の事実が認められる。
(1)「白金」の文字は、「金属元素の1。灰白色を帯び、鮮明な光沢を持つ貴金属で、展性・延性に富む。融点が高く、空気中で高温に熱しても酸化されず、ただ王水・苛性アルカリに侵される。理化学用機械・装飾品などに用いる。触媒としての用途も広い。プラチナ。」を意味する語である(甲第2号証:広辞苑)。
(2)インターネット情報
ア 「NIKKEI NET BizPlus」のウェブサイトの「『活発化する大学発ベンチャーの行方』『日本マーケティング協会『マーケティングホライズン2005年6月号より』」(更新日:2005/08/19)のページに、「東大発のベンチャー1号であるシーテックでは、ナノコロイドの白金が含まれた水をもとに、医療品や化粧品、飲料等の分野に進出して収益を上げ・・・」との記載がある(甲第3号証の2)。
イ 「nikkei BPnet」のウェブサイトの「『白金ナノコロイド』、コエンザイムQ10を超えるか 2005年12月15日」と題するページに、「たるみやシワなどの老化はおろか、ガン、動脈硬化、心臓病、糖尿病などの原因とされる活性酸素。この活性酸素を除去する抗酸化素材の決定版として、白金ナノコロイドが今、化粧品や食品の業界で注目を集めている。白金ナノコロイドとは、白金を2ナノメートル(ナノは10億分の1 )という極小の粒径にした素材。」「シーナックは2004年から、白金ナノコロイドを基礎化粧品や飲料水、ガムなどに混ぜた商品を自社間発し発売してきた。」「最も大手企業の注目度が高いのは、化粧品分野だ。・・・白金ナノコロイドは、たるみやシワを改善する美容液から、日焼けやシミを防止する基礎化粧品まで応用範囲は広い。」「ロート製薬はスキンケア商品を開発中で、2006年2月にも発売する模様だ。さらに、国内大手化粧品メーカーが2006年半ばをメドに、化粧水から乳液、クリームなど、一通りの化粧品に白金ナノコロイドを配合した新ブランドを投入するという。」との記載がある(甲第3号証の3)。
ウ 「富士経済GROUP PRESS RELEASE」のウェブサイトの「エイジングケアに関する市場調査を実施」と題するページの「■白金ナノコロイド」の項に、「2006年見込 化粧品3,000億円」「白金ナノコロイドは、白金を2ナノメートルという極めて小さな粒子にし、液体の中に白金が均一に分散した状態のものである。体や肌イオンバランスを正常に整えるのに適しているとされている。・・・2005年までは、一部展開するブランドも見られたものの、大手メーカーによる参入がなかったことで極めて限られた規模での展開であった。化粧品の分野では原料価格の高さからセルフブランドでの展開は困難と予想されていたが、2006年以降発売された『リベルテージ(ナリスアップコスメティックス)』や『DHCプラチナシルバー(ディエイチシー)』シリーズでは美容液・クリームでも2,500円以下となっており、今後セルフブランドの投入が相次げば、市場が急拡大する可能性が高い。」との記載がある(甲第3号証の4)。
エ 「プラチナ!あるある大事典!?白金ナノコロイド」と題するウェブサイトの「プラチナナノコロイド 化粧品 2005年12月17日」のページ及び「プラチナナノコロイド配合マイルドクレンジング 2005年12月17日」のページ、プラチナナノコロイド(白金ナノコロイド)で高めろ抗酸化作用!・・・」と題するウェブサイトの2006年06月07日、同08日、同09日、同14、同15日、同23日、同25日の項に、「白金ナノコロイド」「プラチナナノコロイド」を配合した商品「IASO(イアソー)化粧品プラチナシリーズ スターターキット(エッセンス、ローション、クリーム、シャンプー)「イアソーPtウォッシングフォーム」「IASO(イアソー)シャンプー」「プラチナゴールドシャンプー」「プラチナゴールドコンディショナー」「イアソーソープ(プラチナナノコロイド(白金ナノコロイド)配合)」及び「プラチナソープ」の紹介があり、また、「白金ナノコロイドがお肌の敵『活性酸素』を除去!」「プラチナナノコロイド(白金ナノコロイド)のもつ強力な抗酸化作用が、お肌を若返らせます」「抗酸化作用で老廃物や、毒素のたまりやすい頭皮や、髪の毛先からアンチエイジング」などの説明の記載がある(甲第3号証の5)。
オ 「イアソー化粧品(IASO化粧品)販売専門店IASO-LIFEイアソーライフ送料無料」のウェブサイトに「白金(プラチナ)ナノコロイド・IASO化粧品最新情報」と題して、'6年5月1日「TV東京ワールドビジネスサテライト」、'6年2月「美的BITEKI」、'5年11月「日経TRENDY」、同月「Oggi('5年12月号)」、「Dr.ar」('4年6月増刊号)及び「FRaU」('4年4月27日号)に、白金ナノコロイドが配合された化粧品が紹介された旨の記載がある(甲第3号証の6)。
カ 「Sunny Healthオフィシャルサイトのウェブページの「ノアージュ プラチナクリーム」の紹介に「発売 2002年4月5日」「ヒアルロン酸とプラチナ微粒子を配合した保湿効果・皮膚トリートメント効果の高いクリーム」「プラチナ微粒子(コロイド)が皮膚の電子バランスを整えて潤し、乾燥ストレスから肌を守ります。」との記載がある(甲第3号証の7)。
キ ロート製薬株式会社のウェブサイトの「プレスリリース 2006年05月17日」のページに、「いま注目の白金ナノコロイドを配合した機能性化粧品が誕生しました。新登場 !」「ロート製薬株式会社は、白金ナノコロイドを配合したオバジプラチナイズドローション、オバジプラチナイズドマスクの2品を7月10日(月)、全国の薬局、売店等で新発売します。」との記載がある(甲第3号証の8)。
ク 「Sample shop(サンプルショップ)のウェブサイトに、「XAFFA(サファ )プラチナムゲルクリーム」(総発売元 XAFFA Incorporated)に白金ナノコロイドを配合していること及び同商品が2006年5月5日、同17日及び同年5月31日から6月13日にかけて、「サンプルショップ」のクリーム部門でランキング1位である旨が記載されている(甲第3号証の9)。
ケ 「2006年美容業界注目ワードを振り返る!『白金(プラチナ)』」と題するウェブサイトに、「2006年は美容業界ではたくさんの新商品が発売されました。その中でも抗酸化アンチエイジング成分としてもっとも注目されたのは『白金(プラチナ)』でした。」との記載がある(甲第3号証の10)。
(3)新聞記事情報(甲第4号証)
ア 2002年1月16日付け日刊工業新聞に「アイノベックス、銅・銀金属ナノサイズ微粒子を溶液中から析出」の見出しで、「白金(プラチナ)のナノサイズ微粒子を製造し、清涼飲料水向けに商品化している。 ・・・白金のナノサイズ微粒子は電気的性質を持ちマイナスイオン化することから、健康関連品として清涼飲料水向けの販売を行っており、1月末には化粧品向けも販売する予定。」との記載がある。
イ 2006年1月16日付け日経産業新聞に「ハーバー研究所、活性酸素除去、美容液を発売」の見出しで、「ハーバー研究所は、二十五日、抗加齢成分、白金ナノコロイドなど七種類の美容成分を配合した美容液「うるおい伝説2」を発売する。白金ナノコロイドには、シミ、シワなど老化現象の要因である活性酸素を除去する効果があるという。」との記載がある。
ウ 2006年4月20日付け日刊工業新聞に「ロート製薬、白金ナノコロイド配合製剤でシワ改善効果を実証」の見出しで、「ロート製薬は、白金ナノコロイドを配合したスキンケア製剤が皮膚の水分量を上昇させ、シワの改善に効果があることを実証したと発表した。白金ナノコロイドの持つ抗酸化作用と保湿成分の組み合わせで皮膚機能改善効果を確認した。同社は、今回の成果を生かした新製品を開発。」との記載がある。
(4)公開特許公報(甲第5号証)
化粧品(化粧料)、石鹸に係る発明において、発明の課題、解決手段の項に白金、白金コロイドを配合したものであることが記載されている。
ア 特開2001-122723(特願平11-306098 平成11(1999)年10月27日出願)
イ 特開2002-241288(特願2001-88759 平成13(2001)年2月20日出願)
ウ 特開2003-81768(特願2001-281358 平成13(2001)年9月17日出願)
エ 特開2004-131611(特願2002-298203 平成14(2002)年10月11日出願)
オ 特開2004-210761(特願2003-35815 平成15(2003)年1月7日出願)
カ 特開2005-139102(特願2003-375541 平成15(2003)年11月5日出願)
さらに、「白金(微粉末又はナノコロイド)」を配合又は原材料とする商品(化粧品、化粧料、石鹸、抗酸化剤)やその商品の製造方法が、1999年10月?2003年12月にかけて、特許出願されている(甲第5号証)。
2 以上の事実を総合すれば、白金の微粒子である白金ナノコロイドは、活性酸素を除去する効果(抗酸化作用)が非常に高く、皮膚のたるみやシワなどの老化を防ぐ効果があるものであり、2002年頃から、白金ナノコロイドを配合した化粧品が複数の社によって製造販売され、また、新聞、雑誌等で報道されたことが認められる。
そうとすると、本件商標の登録査定時(平成18(2006)年7月20日)には、本件商標の指定商品である「化粧品、せっけん類」を取り扱う業界においては、「白金」の文字は、既に「化粧品、せっけん類」等の原材料(成分)を表すものとして、理解、認識されていたとみるのが相当である。
3 被請求人の反論について
(1)被請求人は、「白金」の用語は、地名、商標、その他の固有名詞を意味する用語であって、必ずしも金属元素の一つである「白金」だけを意味する用語であるというのではなく、多様な意味を有する用語である旨主張しているが、「白金」が一般には、上記元素以外の意味を有する語であるとしても、前記1における事実からすると、「化粧品及び石けん」に係る取引者、需要者は、「白金」の文字を、当該商品に使用したときは、化粧品等に配合される金属元素の一つである「白金」を認識するというべきであるから、本件商標についての上記判断が左右されることにはならない。
(2)被請求人は、「商品の抗酸化作用を高める目的で化粧品やせっけん類に白金ナノコロイドを配合された事実があるから、白金ナノコロイドには、化粧品やせっけん類の原材料(成分)を表すことはできないし、白金ナノコロイドが抗酸化作用を有することから化粧品などに添加されることが広く認識されたとしてもその事実をもって白金ナノコロイドが化粧品やせっけん類の原材料(成分)を表すことになることもない。」「白金ナノコロイドが抗酸化剤として化粧品などに添加、配合されるからその抗酸化剤が化粧品の品質・原材料(成分)を表示していることにはならず、まして「白金」という標章を「化粧品やせっけん類」に使用することがこれら商品の品質・原材料(成分)を表示することにはならない。」旨主張してる。
しかしながら、被請求人も認めているとおり、白金の微粒子である「白金ナノコロイド」は、抗酸化作用を有し、化粧品等に配合されるものであるから、化粧品等の原材料であることは否定できない。
(3)被請求人は、富士経済のPRESS RELEASEの記事(甲第3号証の4)について、「2006年見込み、2007年見込みが健康食品についての予測を単に上回っているという記載内容を捉えて、その記載を根拠に、白金ナノコロイドが直ちに近い将来、化粧品の原材料(成分)を表すものとして取引者、需要者に広く認識される可能性は十分にあったというべきとする結論には直ちに結びつかない。」と主張している。
しかしながら、上記PRESS RELEASEは、2006年12月28日付けの記事であり、市場調査の結果予測として、白金ナノコロイドについて、化粧品の2006年見込みを「3,000億円」としていることから、本件商標の登録査定時には、白金ナノコロイドを配合した化粧品が相当程度製造、流通していたものと優に推認できるというべきであるから、本件商標に対する取引者・需要者の認識について判断するに当たって、その証拠となり得ることは否定できない。
(4)被請求人は、「商品の品質について誤認を生じさせるおそれがあるかどうかは、将来の可能性の問題ではなく、現実問題として登録査定時に、『白金』の語が、本件商標の指定商品の原材料、品質を表示するものであったか、どうかが登録査定時において判断されるべき問題である。本件商標の登録査定時に、取引上普通に使用されていたという事実がないことが明らかである以上、本件商標は、商品の品質について誤認を生じさせるおそれがあるということはできない。」と主張している。
しかしながら、「商標法3条1項3号は、取引者、需要者に指定商品の品質等を示すものとして認識され得る表示態様の商標につき、それ故に登録を受けることができないとしたものであって、該表示態様が、商品の品質を表すものとして必ず使用されるものであるとか、現実に使用されている等の事実は、同号の適用において必ずしも要求されないものと解すべきである」(東京高裁平成12年9月4日 平成12年(行ケ)76号)のみならず、前記1のとおり、本件商標の登録査定時において、「白金ナノコロイド」(白金)が本件商標の原材料を示すものとして、現実に使用されていたものと認めることができるのであるから、被請求人の上記主張は採用できない。
4 結び
そうとすると、本件商標は、これをその指定商品中「白金(又は、白金ナノコロイド)を配合する商品」 に使用するときは、これに接した取引者、需要者は、その商品が「白金(又は、白金ナノコロイド)」を原材料とするものであることを表したものと理解し、自他商品の識別標識とは認識しないものというのが相当であるから、単に商品の原材料、品質を表示するにとどまり、また、上記商品以外の指定商品に使用するときは、商品の品質について誤認を生じさせるおそれがあるものといわざるを得ない。
したがって、本件商標は、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2007-12-26 
結審通知日 2008-01-04 
審決日 2008-01-16 
出願番号 商願2006-1105(T2006-1105) 
審決分類 T 1 11・ 13- Z (Y03)
T 1 11・ 272- Z (Y03)
最終処分 成立  
前審関与審査官 小川 敏 
特許庁審判長 井岡 賢一
特許庁審判官 森山 啓
内山 進
登録日 2006-09-01 
登録番号 商標登録第4982693号(T4982693) 
商標の称呼 シロガネ、ハッキン 
代理人 成合 清 
代理人 菅野 中 
代理人 為谷 博 

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