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審決分類 審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) 111
管理番号 1172874 
審判番号 取消2006-30063 
総通号数 99 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2008-03-28 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2006-01-17 
確定日 2008-02-29 
事件の表示 上記当事者間の登録第2330246号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第2330246号商標の商標登録は取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第2330246号商標(以下「本件商標」という。)は、「オリックス」の文字を書してなり、昭和62年12月11日に登録出願、第19類「便器、和式便器用椅子、家庭用し尿処理そう、家庭用汚水浄化そう」を指定商品として、平成3年8月30日に設定登録され、その後、指定商品については、平成16年1月21日に第11類「便器,和式便器用いす,家庭用汚水浄化槽,家庭用し尿処理槽」とする書換登録がされたものである。

第2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁の理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第3号証(枝番を含む。)を提出した。
1 請求の理由
本件商標は、第11類「全指定商品」について、商標権者、専用使用権者若しくは通常使用権者によって継続して3年以上日本国内において使用された事実がないので、商標法第50条第1項の規定により登録が取り消されるべきものである。
2 答弁に対する弁駁
(1)登録前3年以内の使用証明
乙第1号証の1及び2は、被請求人ホームページの一部写しとして、指定商品に係わるものと更新情報に係わるものであるが、これらには日付けの記載もなく、被請求人は本審判請求の予告登録日前3年以内に本件商標を使用していたことを何ら立証していない。
被請求人は、2002年にホームページをリニューアルしてから、更新を反復継続した旨主張し、乙第1号証の1からは「Orihara&Orix」の表示が、乙第1号証の2からは被請求人のホームページの更新記録が確認できる。
しかしながら、乙第1号証の1は、最新情報として「2006/3/23[イベント情報]「Sea Japan 2006」出展のお知らせ」が記録されており、明らかに本審判請求の予告登録日である平成18年2月3日以後の資料である。
また、乙第1号証の2をもってしても、乙第1号証の1の「Orihara&Orix」の表示が本審判請求の予告登録日前3年以内になされていたのか、客観的に認めることができない。
(2)「登録商標」の使用について
被請求人は、乙第1号証の1をもって「Orix」を「便器」等の商品に使用しており、商標法第50条第1項カッコ書きより「Orix」は本件商標「オリックス」と同一である旨主張している。被請求人は、さらに「Orix」と「オリックス」とは、被請求人会社名である「折原製作所」から創造されたものであり、観念・称呼が同一である旨主張している。
しかしながら、以下に述べるとおり、乙第1号証の1によれば登録商標「オリックス」を使用していることは何ら証明されていない。
乙第1号証の1の左上には図形と「Orihara&Orix」の文字が同一書体で表示されている。このうち「&」は「英語の「and」の意を表す記号」(甲第1号証の1:オンライン国語辞書の写し)であって、英語の「and」は「?と…」などの意味を有する接続語で(甲第1号証の2:オンライン英和辞書の写し)、名詞と名詞を結びつける用法が最も良く知られている。
「Orihara」と「Orix」とは接続語「&」を間に用いて構成され、かつ、両者の書体が同一であることからも、不可分一体の商標であるといえる。したがって、当該表示を使用することは、「Orix」の文字を一部に含むとはいえ「Orix」を使用していることにはならない。
次に、「オリックス」と「Orix」とが同一の称呼及び観念を有するかについて考察する。
被請求人は、答弁書の中で会社名称「折原製作所」から商標「オリックス」と「Orix」を創造した旨述べているが、これらの商標には固有の観念は存在しない。なお、「オリックス」を国語辞典で調べたところ、「ORYX=偶蹄目ウシ料オリックス属の哺乳類の総称」を意味するものと記載されており(甲第2号証の1)、本件商標はこの語義を有する可能性がある。
一方、「Orix」を英和辞書で調べたところ、請求人の英文商号である「Orix Corporation」や請求人の子会社等「Orix Blue Wave(現在、ORIX Buffaloes)」、「Orix Interior Corporation」、「ORIX Life Insurance Corporation」、等を意味するものと記載されている(甲第2号証の2及び3)。さらに、「ORIX」の表示は日本国内における請求人の商標として著名性を有しており(甲第3号証)、「OriX」の表示は請求人ないし請求人グループ会社を意味するものといえる。
これらの事実関係から、被請求人の登録商標「オリックス」は「Orix」と同一の称呼があるということは認められるが、同一の観念を生じるということまでは到底認められず、「Orix」は商標法第50条に規定される登録商標には該当しない。
なお、被請求人は乙第2号証ないし乙第5号証には、「Orihara」と「Orix」とは明確に分離して使用されてきた旨主張するが、これらの証拠は本件商標をその指定商品「便器」等に使用していることを立証するものではない。
以上の点より、乙第1号証の1における「Orihara&Orix」の表示からは登録商標「オリックス」を使用していることは立証されていない。
(3)指定商品についての使用
商標法第2条第3項第8号の規定によれば、商品に関する広告等を内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供する行為が「商標の使用」に該当することが規定されている。
しかし、乙第1号証の1によれば、被請求人ホームページのトップページや「便器」等の商品紹介ページには全て「Orihara&Orix」の表示があるが、当該表示がどの商品について使用されているのか判然としておらず、「便器」や「和式便器用いす」などの実体商品についての広告や取引において使用されているものとは認められない。
さらに、乙第1号証の1を参照すると、「便器」の商標として、「アクアサイクル和風」が、「トイレカー」の商標として「オリポンリフレッシュカー」が、「ポータブルトイレ」の商標として「エレクトラマジック-オリポッテ」が使用されていることなどからしても、各ページに表示されている「Orihara&Orix」はどの商品について使用しているのか判然としない。
なお、その他の証拠によっても、本件商標に係る指定商品「便器」等に登録商標「オリックス」を使用していることは立証されていない。
(4)以上のとおり、被請求人は本件審判請求の予告登録日である平成18年2月3日以前3年以内に日本国内で本件商標を指定商品「便器」等に使用していることを何ら立証していない。
したがって、本件商標は、商標法第50条第1項の規定により登録が取り消されるべきものである。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、本件審判の請求は、成り立たない。審判費用は、請求人の負担とする。との審決を求める、と答弁し、その理由及び弁駁に対する答弁の理由を要旨次のように述べ証拠方法として、乙第1号証ないし乙第8号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 答弁の理由
(1)被請求人は、トイレサニタリー製品の開発・製造・販売を目的として、昭和13年に代表取締役である折原征一によって設立された株式会社であり、本件指定商品である便器等の世界では周知の存在である。
(2)被請求人は、2002年10月30日に被請求人のホームページをリニューアルしてから、更新を反復継続し、そのホームページ上において、「Orix」を、被請求人の販売する指定商品である便器等の商品識別標識として使用してきたものであり(乙第1号証の1,2)、商標法50条第1項カッコ書から、「Orix」は、本件商標である「オリックス」と同一であることは明らかである。
「Orix」と「オリックス」は、被請求人会社名である「折原製作所」から創造されたものであり、観念・称呼において同一である。
また、ホームページにおいて、「Orix」の表示を使用することは、商品を表示するために登録商標を使用する行為であることも明らかである(商標法第2条第3項)。
(3)従って、被請求人は、以上のように、ホームページ上において指定商品を識別する標識として「Orix」の表示を遅くても2002年10月30日以後、継続して使用してきたものであるから、被請求人は、その請求に係わる指定商品について、本件商標と同一と認められる商標を、本件審判の請求登録前3年以内に使用しているものであり、請求人の本件請求は理由がない。
(4)なお、商品識別標識である「Orix」は、他の商品識別表示である「Orihara」とは明確に分離して使用されてきたし、現在においても、そのように使用されている(乙第2号証ないし乙第4号証)。被請求人が使用する業務用車輌の側面及び背面にも「Orix」の表示が「Orihara」の表示とは明確に分離して使用されている(乙第5号証)。
また、被請求人のホームページ上にある「Orix」の表示は「Orihara」の表示と併存しているが、両表示の間には「&」の文字が存在し、音節上も明確に区別されているから、これらは明確に分離された表示が併存するものに過ぎない。
2 弁駁に対する答弁
(1)登録前3年以内の使用証明
請求人は、所定のホームページの更新情報には日付の記載もなく、また乙第1号証の1は、平成18年2月3日以後の資料である旨指摘するが、請求人の前記主張は次の理由により失当である。
ホームページの更新履歴は、その都度の更新の経緯を反映するものであり、乙第1号の2の「new 2006 03/23」の表示は、最新の更新年月日が2006年3月23日であることを意味するにすぎない。当該ホームページが作成された時期を意味するものではない。
また、被請求人が、本件審判請求の予告登録日前3年以内に本件登録商標を使用していたことは、乙第6号証からも明かである。これは、被請求人の2005年5月項のホームページ(http!/www.orihma.co.jp/y2005m01/index.html)であるが、「最新情報」欄をみると、「2005/05/19[更新情報]」と記録され、又、ホームページ画面の表示レイアウトも、乙1号証の1、2と同様である。
(2)「登録商標」の使用について
(ア)請求人は、「Orihara&Orix」の文字は、接続語「&」を間に用いて構成され、かつ、両者の書体が同一であることからも不可分一体の商標であると言えるから、当該表示を使用することは、「Orix」の文字を一部に含むとは言え、「Orix」を使用していることにはならないと主張する。
しかし、「Orihara」と「Orix」が「&」(=and)で接続されずに、「OriharaOrix」という表示がされているのであれば、あるいは不可分一体と言えるかも知れないが、当該表示は、「Orihara」という名詞と「Orix」という名詞が「&」(=and)で接続され、かつ、「and」には、「そして、及び、かつ、また」と言った意味があるから、両者が不可分一体ではないことは明かである。
請求人が引用する甲第1号証の2(オンライン英和辞典)の例文に「My father and mother are kind to everyone」(父と母は誰に対しても親切だ。)とあるが、これは「父と母」が一体不可分ではなく、「父は誰に対しても親切だ」、そして「母は誰に対しても親切だ」を意味していることは当然である。
(イ)請求人は、「オリックス」と「Orix」には固有の観念は存在しないと主張し、例証として、国語辞典によると、「オリックス」は「ORIX=偶蹄目ウシ科オリックス属の哺乳類の総称」を意味するとし、被請求人の登録商標「オリックス」は「Orix」と同一の観念を生じるということまでは到底認められないと主張する。
しかし、被請求人の「Orix」(=オリックス)の商標は、被請求人である株式会社折原製作所=「Orihara」の響きを残しつつ、同社の一層の発展可能性を標榜して、未知数を意味する「X」を語尾に付加して案出されたものである。「X」が未知数を表すことは権威のある英和辞典(乙第7号証)からも明らかである。そして、この商標を商品識別標章として、長年に亘って使用を継続してきたのであり、それゆえに、この商標には被請求人の商品の優秀さを示す標章として永年に亘る信用が蓄積されてきたのである。
(ウ)このように、会社名の響きを残したまま、語尾に「X」を付加することで商品や役務を識別する新たな標章を創出することは決して珍しいものではない。
例えば、乙第8号証の1乃至7のとおり、同様な名称変更の実例は頻繁にある。
かくいう、オリックス株式会社も、旧社名のオリエント・リースの「オリエント」の響きを残し、更に独創性を意味する「ORIGINAL」と柔軟性や多様性を象徴する「X」を組み合わせたものである。「ORIX=偶蹄目ウシ科オリックス属の哺乳類の総称」を意味すると考える者は極めて僅少であると思われる。
(エ)被請求人は、本件商標を継続して使用することで、この商標に係る商品の信用性が蓄積されてきたのであり、別段、同商標の称呼や外観に変化があったわけではない。「使用されている商標が称呼に変化がなかったり、外観に(有意な)変化がないという場合には、それで混同の可能性が増大するとはいいがたいので」あるから、「引用が化体した商標に関る登録を徒に取り消すことを避けるという結論の方が、具体の信用の化体を促す商標法の趣旨に適う」のである(田村善之「商標法概説(第2版)26、27頁)。
(3)指定商品についての使用
請求人の主張は要するに、被請求人ホームページのトップページや「便器」等の商品紹介ページに全て「Orihara&Orix」の表示があるが、当該表示とホ一ムページ上で紹介されている個々の実体商品との関係が不明確であり、当該表示が個々の実体商品についての広告や取引において使用されているものとは認めれらない、ということであると思われる。しかし、乙第1号証の1、乙第6号証の個々の商品が紹介されている各ホームページ上の最上段ヘッダー部分には、「Orihara&Orix」の表示が大きな文字で明瞭に記載され、かつ、各ホームページを一瞥すればこれらの表示が個々の商品を標章するものであることは明らかである。

第4 当審の判断
被請求人は、乙第1号証ないし乙第8号証(枝番号を含む。)を提出し、ホームページ上において指定商品を識別する標識として「Orix」の表示を遅くても2002年10月30日以後、継続して使用してきたものである旨主張している。
そこで、被請求人の提出に係る上記証拠についてみるに、乙第1号証の1及び2及び乙第6号証の被請求人のホームページによれば、そのホームページ上に掲載されている商品「便器」等(以下「使用商品」という。)の製造年月日等の表示はなく、ホームページが2002年10月30日にリニューアルされ、更新を反復継続したとしても、使用商品がいつ製造され、いつ販売されたのか見出すことができないばかりでなく、また、乙第2号証ないし乙第5号証、乙第7号証及び乙第8号証(枝番を含む。)は、本件審判の請求に係る指定商品について何等立証していないから、本件審判請求の登録前3年以内に、本件商標をその指定商品について使用していたものということはできない。
また、本件商標は、上記のとおり「オリックス」の片仮名文字を横書きしてなるものであり、これに対し、乙第1号証の1及び2及び乙第6号証の被請求人のホームページには、標章「Orihara & Orix」(以下「使用標章」という。)が表示されていることが認められる。
そこで、使用標章についてみるに、使用標章を構成する「Orihara & Orix」の文字全体は、同一の書体をもって、外観上まとまりよく一体的に表されていて、これより生ずると認められる「オリハラアンドオリックス」の称呼も格別冗長というべきものでなく、よどみなく一連に称呼し得るものであるから、使用標章は、その構成文字全体をもって一体不可分のものと認識し把握されるとみるのが相当である。
そうすると、「オリックス」の称呼を生ずる本件商標と、「オリハラアンドオリックス」の称呼のみを生ずるものと認められる使用標章とは、その称呼が同一のものと認めらず、また、その外観及び観念においても同一のものとは認められないから、使用標章は、本件商標と社会通念上同一の商標とはいい得ない。
してみれば、被請求人が提出した証拠によっては、被請求人により使用されていたことを証明する証拠とはなり得ないものであるから、本件商標は、被請求人により、継続して本件審判請求の登録前3年以内に日本国内において、その指定商品について使用していなかったものといわいわなければならない。
なお、被請求人は、乙第2号証ないし乙第5号証、乙第7号証及び乙第8号証(枝番を含む。)を提出し、商品識別標識である「Orix」は、他の商品識別表示である「Orihara」とは明確に分離して使用されてきたし、現在においても、そのように使用されている旨主張しているが、それらの証拠は、いずれも本件商標の指定商品の範疇に属する商品について使用しているものとは認められないから、本件商標の指定商品に使用していることを立証するものではなく、この点に関する被請求人の主張は採用の限りでない。
したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により、取り消すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2007-03-01 
結審通知日 2007-03-07 
審決日 2007-03-20 
出願番号 商願昭62-138213 
審決分類 T 1 31・ 1- Z (111)
最終処分 成立  
前審関与審査官 江崎 静雄中村 欽五飯山 茂 
特許庁審判長 山口 烈
特許庁審判官 山本 良廣
小林 由美子
登録日 1991-08-30 
登録番号 商標登録第2330246号(T2330246) 
商標の称呼 オリックス 
代理人 渡邉 正昭 

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